(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】加圧ガスタンクを充填するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
F17C 5/06 20060101AFI20231211BHJP
F17C 13/04 20060101ALI20231211BHJP
F17C 13/02 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/04 301B
F17C13/02 301A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019169196
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-07-05
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】シモン・クリスペル
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・バック
(72)【発明者】
【氏名】アン・タオ・ティエウ
(72)【発明者】
【氏名】バンサン・フェアリー
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03270033(EP,A1)
【文献】特開2012-167767(JP,A)
【文献】特開2013-231457(JP,A)
【文献】特開2005-299819(JP,A)
【文献】特開2018-084329(JP,A)
【文献】国際公開第2017/186337(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 5/06
F17C 13/04
F17C 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ガスタンクを充填するための充填装置(1)であって、
前記充填装置(1)は、
液化ガス源(2)と、
それぞれが前記液化ガス源(2)にリンクされている上流端(3)を有する2本の並行の移送ラインを備える移送回路(3)と、を備え、
各移送ラインは、充填されるべきタンク(22)に取り外し可能に接続されるように意図されている下流端(4)を備え、
前記2本の並行の移送ラインのそれぞれは、
ポンプ(5)と、
送り出される流体を蒸発させるための蒸発ユニット(6)と、
前記蒸発ユニット(6)をバイパスするためのバイパスブランチ(13)と、
送り出され、前記蒸発ユニット(6)と前記バイパスブランチ(13)との間で分配される流体の流れを制御するように構成されている分配弁(7、8)のセットとを備え、
前記充填装置(1)は、バッファ貯蔵装置(9、10)のセットをさらに備え、前記バッファ貯蔵装置は、弁(11~16)のセットを介して前記2本の並行の移送ラインのそれぞれに並行に接続されている、充填装置(1)。
【請求項2】
前記バッファ貯蔵装置(9、10)のセットは、前記蒸発ユニット(6)と、前記蒸発ユニット(6)を通過した流体及び前記バイパスブランチ(13)を通過した流体の間の混合のポイントとの間で各移送ラインに接続されることを特徴とする、請求項1に記載の充填装置(1)。
【請求項3】
前記バッファ貯蔵装置(9、10)のセットは、それぞれの膨張弁(15、16)を介して各移送ラインに接続されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の充填装置(1)。
【請求項4】
各移送ラインの前記分配弁(7、8)のセットは、前記蒸発ユニット(6)の下流であり、前記バイパスブランチ(13)を通過した前記流体との混合のポイントの上流に位置付けられている第1の分配弁(7)を備え、
前記分配弁(7、8)のセットは、前記バイパスブランチ(13)中に第2の分配弁(8)を備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の充填装置(1)。
【請求項5】
前記バッファ貯蔵装置(9、10)のセットは、各移送ラインに並行して接続されている2つ以上のバッファ貯蔵装置を備え、
各バッファ貯蔵装置(9、10)は、それぞれの分離弁(11、12)を介して各移送ラインに接続されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の充填装置(1)。
【請求項6】
前記移送回路(3)は、2つの前記ポンプ(5)の出口で前記2本の並行の移送ラインをリンクさせる接続ダクト(17)を備え、
前記接続ダクト(17)は、分離弁(18)を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の充填装置(1)。
【請求項7】
前記2本の並行の移送ラインは、少なくとも1つの熱的に絶縁された部分(19)を備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の充填装置(1)。
【請求項8】
前記2本の並行の移送ラインは、圧力と温度それぞれを測定する、少なくとも1つの圧力センサ(20)及び/又は少なくとも1つの温度センサ(21)を前記下流端(4)に近接して備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の充填装置(1)。
【請求項9】
前記タンクに定められた充填勾配で充填することを確立するために、定められた温度で定められたガス流量により少なくとも1つの加圧ガスタンクを充填する方法であって、
前記方法は、請求項1~8のいずれか1項に記載の充填装置(1)を使用する、充填方法。
【請求項10】
前記ガス流量は、可変であり、経時的に変更されることを特徴とする、請求項9に記載の充填方法。
【請求項11】
前記定められたガス流量が前記ポンプ(5)の最大流量よりも大きいとき、
前記タンクに移送される前記ガス流量は、第1に、前記ポンプ(5)によって提供され、前記蒸発ユニット(6)と前記バイパスブランチ(13)との間で分配されるガス流量と、第2に、前記バッファ貯蔵装置(9、10)のセットによって提供される追加のガス流量との合計であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の充填方法。
【請求項12】
前記定められたガス流量が前記ポンプ(5)の最大流量よりも小さいか、又は等しいとき、
前記タンクに移送されるガス流量は、前記ポンプ(5)によって提供され、前記蒸発ユニット(6)と前記バイパスブランチ(13)との間に分配されるガス流量のみから形成されることを特徴とする、請求項9から11のいずれか1項に記載の充填方法。
【請求項13】
1本の移送ラインからもう1本の移送ラインにガス流を移送することにより、2本の移送ラインの前記ポンプ(5)によって提供されるガス流の合計を備えたガス流でタンクを充填するステップを含むことを特徴とする、請求項9から12のいずれか1項に記載の充填方法。
【請求項14】
タンク(22)の充填に先立って、又は、充填を開始するときに、前記移送ラインを冷却するステップを備えることを特徴とし、前記移送ラインを冷却するステップは、前記蒸発ユニット(6)を通過する比較的高温のガスと、前記バイパスブランチ(13)を通過する比較的低温のガスとの間の相対的な分配を管理することによって制御される定められた温度でのガスの移送を含む、請求項9から13のいずれか1項に記載の充填方法。
【請求項15】
前記移送ラインを冷却するステップは、前記蒸発ユニット(6)と前記バイパスブランチ(13)との間の前記分配弁の開口を制御することによって実行されることを特徴とする、請求項14に記載の充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧ガスタンクを充填するための装置に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、加圧ガスタンクを、具体的には、車両加圧水素タンクを充填するための装置に関し、本装置は、液化ガス源と、それぞれが液化ガス源にリンクされている上流端を有する2本の並行移送ラインを備える移送回路を備え、各移送ラインは、充填されるべきタンクに取り外し可能に接続されるように意図されている下流端を備えている。
【背景技術】
【0003】
液体水素源を使用する水素ガス燃料補給ステーションは、既知である。これらの既知の装置は、充填の間、タンク中のガスの温度を過度に増加させることなく、急速な充填のために、事前に冷却された加圧ガスを生成するための液体水素からの冷気を使用することを可能にする。
【0004】
例えば、US5934081、または、V Raman、D.Farese、および、J Hanselによる「燃料セルバスのための急速充填水素燃料ステーション」(第12回世界エネルギー会議 水素エネルギーの向上2 p.1629-1642)を参照する。D.E.Daney他による論文「水素車両燃料ステーション」(低温工学における進化 第41巻、1996)も参照する。
【0005】
これらの既知の配置は、設備の十分な性能もそのモジュール方式も保証することを可能にはしない。
【0006】
本発明の目的は、上述した先行技術の不利益のうちのすべてまたはそのいくつかを克服することである。
【発明の概要】
【0007】
この目的のために、本発明にしたがう、さらには、上記序文によって与えられた一般的定義にしたがう装置は、本質的に、2本の移送ラインのそれぞれが、ポンプと、送り出される流体を蒸発させるためのユニットと、蒸発ユニットをバイパスするためのブランチと、送り出され、蒸発ユニットとバイパスブランチとの間で分配される流体の流れを制御するように構成されている分配弁のセットとを備え、装置は、バッファ貯蔵装置のセットをさらに備え、バッファ貯蔵装置は、弁のセットを介して2本の移送ラインのそれぞれに並行で接続されることを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明の実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる:
-バッファ貯蔵装置のセットは、蒸発ユニットと、蒸発ユニットを通過する流体およびバイパスブランチを通過する流体の間の混合のポイントとの間で各移送ラインに接続される、
-バッファ貯蔵装置のセットは、それぞれの膨張弁を介して各移送ラインに接続される、
-各移送ラインの分配弁のセットは、蒸発ユニットの下流とバイパスブランチを通過する流体との混合のポイントの上流とに位置付けられている第1の分配弁を備え、分配弁のセットは、バイパスブランチ中に第2の分配弁を備える、
-バッファ貯蔵装置のセットは、各移送ラインに並行して接続されている2つ以上のバッファ貯蔵装置を備え、各バッファ貯蔵装置は、それぞれの分離弁を介して各移送ラインに接続される、
-移送回路は、2つのポンプの出口に2本の移送ラインをリンクさせる接続ダクトを備え、前記接続ダクトは、分離弁を備える、
-2本の移送ラインは、少なくとも1つの熱的に絶縁された部分を備える、
-2本の移送ラインは、特に、下流端に近接して、圧力と温度それぞれを測定する、少なくとも1つの圧力センサおよび/または少なくとも1つの温度センサを備える、
-充填動作の少なくとも一部分の間、特に、定められたガス流量がポンプの最大流量よりも小さいまたは等しいとき、
タンクに移送されるガス流量は、ポンプによって提供され、蒸発ユニットとバイパスブランチとの間で分配される、ガス流量だけから形成される、
-タンクを充填するために定められた流量は、0と100g/秒の間で、特に10と60g/秒の間で可変である、
-ポンプは、可変スピードポンプであり、充填の間タンクに移送されるガス流量は、ポンプのスピードと、場合によってはバッファ貯蔵装置のセットによって提供されるガスの量とを制御することによって制御される、
-充填の間にタンクに移送される加圧ガス温度は、蒸発ユニットを通過する比較的高温のガスとバイパスブランチを通過する比較的低温のガスとの間の相対分配を、場合によっては、バッファ貯蔵装置のセットから到来する比較的高温のガスの量を管理することによって制御される、
-バッファ貯蔵装置のセットによって提供される追加のガス流量は、移送ラインの下流端で測定される圧力信号に応答して制御される、
-バッファ貯蔵装置のセットは、各移送ラインに並行して接続されているいくつかのバッファ貯蔵装置を備え、移送ラインにガスを提供するために、カスケードプロセスにしたがって連続して使用される。
【0009】
本発明は、タンク中に充填決定勾配を確立するための定められた温度で定められたガス流量により少なくとも1つの加圧ガスタンクを充填する方法にも関し、方法は、上記のまたは以下の特徴のうちのいずれか1つにしたがう充填装置を使用する。
【0010】
他の可能性のある特性にしたがうと:
-ガス流量は、可変であり、経時的に修正される、
-充填動作の少なくとも一部分の間、特に、定められたガス流量がポンプの最大流量よりも大きいとき、タンクに移送されるガス流量は、第1に、ポンプによって提供され、蒸発ユニットとバイパスブランチとの間で分配されるガス流量の、第2に、バッファ貯蔵装置のセットによって提供される追加のガス流量の、合計である、
-本方法は、1本の移送ラインからもう1本の移送ラインにガス流を移送することにより、2本の移送ラインのポンプによって提供されるガス流の合計を備えるガス流で、タンクを充填するステップを含む、
-本方法は、タンクを充填するより前に、または、充填することを開始するとき、蒸発ユニットを通過する比較的高温のガスとバイパスブランチを通過する比較的低温のガスとの間の相対分配を、場合によっては、バッファ貯蔵装置のセットから到来する比較的高温のガスの量を管理することによって制御される定められた温度でのガスの移送を備える前記移送ラインを冷却するステップを備える、
-前記移送ラインを冷却するステップは、蒸発ユニットとバイパスブランチとの間の分配弁の開口を、場合によっては、「開ループ」(「正方向送り」)タイプ制御にしたがって、および/または、移送ラインにおいて測定された温度に基づいた制御ループにしたがって、バッファ貯蔵装置のセットによって提供される追加のガス流量を制御することによって実行される、
-前記移送ラインを冷却するステップは、外側に向けて、または、冷却される移送ライン中で制御される定められた温度で移送されるガスを戻すためのユニットに向けて、流すステップを備える。
【0011】
本発明は、特許請求の範囲内の上記または下記特徴の任意の組合せを備える任意の代替装置または方法に関することもできる。
【0012】
他の特徴および利点は、図を参照して以下の説明を読むと明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明にしたがった例示的な装置の構造と動作例とを図示した概略および部分図を示している。
【
図2】
図2は、本発明にしたがった可能性ある充填の例にしたがった、パラメータの進展のグラフを示している。
【詳細な説明】
【0014】
図1中に示されている加圧ガスタンク(特に、車両加圧ガス水素タンク)を充填するための装置1は、液化ガス源2を備えている。液化ガス源は、例えば、少なくとも真空断熱液化ガス貯蔵装置および/または液化ガス源(液化機または他の何らかの適切な装置)を備えている。
【0015】
ガスが水素(H2)であるケースでは、簡略化のために、流体の状態は、習慣的に使用される用語「ガス」または「流体」によって表されるだろうが、後者は、流体の圧力に依存して、実際には超臨界流体になるであろうことに留意すべきである。
【0016】
装置1は、2本の流体移送並行ラインを備える移送回路3を備えており、それぞれは、液化ガス源2から液化ガスを引くために、液化ガス源2にリンクされている上流端3を有している。各移送ラインは、(必要な場合、例えば、適切な急速コネクタおよびフラップが提供される柔軟部分を介して)充填されるタンク22に取り外し可能にそれぞれが接続されるように意図される下流端4をそれぞれ有している。
【0017】
図1の例は、2本の移送ラインを有しているが、2本より多くの移送ラインを有することができることに留意すべきである。
【0018】
2本の移送ラインのそれぞれは、ポンプ5、送り出される流体を蒸発させるための蒸発ユニット6、蒸発ユニット6を選択的にバイパスするためのバイパスブランチ13を備えている。
【0019】
さらに、ラインそれぞれは、送り出され、蒸発ユニット6(流体が加熱され、蒸発し、したがって、比較的より高温であり、比較的高い圧力である)とバイパスブランチ13(ポンプ5から出るとき、流体は実質的に熱力学的状態であり、したがって、比較的低温である)との間で分配される流体の流れを制御するように構成されている分配弁7、8のセットを備えている。
【0020】
蒸発ユニット6の下流では、2つの並行な部分は、2つの比較的高温および低温の流体を混合するポイントで会う。
【0021】
各移送ラインの分配弁7、8のセットは、例えば、好ましくは蒸発ユニット6の下流と、バイパスブランチ13を通過する流体との混合のポイントの上流に位置付けられている第1の分配弁7を備えている。分配弁7、8のセットは、バイパスブランチ13中(混合のポイントの上流)に第2の分配弁8をさらに備えることができる。
【0022】
もちろん、他の何らかの分配システムを、特に、3方向弁システムを想定できる。
【0023】
分配弁7は、加熱ユニット6の下流と混合のポイントの上流に位置付けられていることから、これは、周囲温度(非低温)で作動する弁を使用することを可能にし、これは、比較的低い流量を管理する。これは、設備の信頼性を増加させ、そのコストを限定する。
【0024】
回路は、各移送ラインにおいて、好ましくは、ポンプ5の出口と蒸発およびバイパスブランチの前との間に位置付けられている上流弁23も備えている。
【0025】
従来、充填器の出口(端4)の流体の温度を、例えば、特に-33℃と-40℃との間で定められた温度に維持するために、この混合を介して、制御することもできる。
【0026】
これは、後者で加熱することを制限している間、タンク22を充填するために提供される定められた圧力および温度でガス流を得ることを可能にする。
【0027】
蒸発ユニット6は、例えば、加熱源(空気または別の加熱要素)で液体水素の熱交換を提供する交換器を加熱する加熱器である。
【0028】
装置1は、それぞれの弁11-16のセットを介して、移送ラインのそれぞれに並行して接続されている1つ以上の加圧ガスバッファ貯蔵装置9、10をさらに備えている。
【0029】
各移送ラインに対して(タンク22を充填するための各移送ラインに対して)ポンプ5を提供するこの構成は、既知のシステムに関して多くの利点を有している。これは、ステーションの完全なモジュール方式(いくつかの可能な同時の充填動作、別のラインの性能に影響を及ぼすことなく、移送ラインを追加または除去する可能性等)を可能にする。
【0030】
さらに、この解決法は、装置の性能を向上させる。実際に、この配置にしたがうと、移送ラインのそれぞれのポンプ5は、したがって、特に、低い圧力で、より良い容量とエネルギー効率を有する。
【0031】
実際に、移送ライン毎の専用の1つのポンプ5(「ディスペンサー」)は、性能損失、ポンプ5の損耗、ジュールトムソン膨張損失を限定させることにより、充填されるタンク22によって必要とされる圧力で水素を提供することを可能にする。
【0032】
したがって、(単一のポンプが直接バッファ貯蔵装置に接続され、いくつかの移送ラインに対して使用されるとき、700と900バールとの間の範囲の代わりに)200バールと900バールとの間の比較的低い圧力でその最良のエネルギーおよび容量効率を提供する使用のエリアで、各ポンプ5を完全に使用することができる。本発明によって可能にされるこのような低圧動作は、ポンプのエネルギー消費を50%も低減させることが可能である。
【0033】
図1中に図示しているように、バッファ貯蔵装置9、10は、好ましくは、蒸発ユニット6と、蒸発ユニット6を通過する流体およびバイパスブランチ13を通過する流体の間の混合ポイントとの間の各移送ラインに接続されている。
【0034】
例えば、バッファ貯蔵装置9、10は、それぞれの膨張弁15、16を介して各移送ラインに並行で接続されることができる。さらに、各バッファ貯蔵装置9、10は、貯蔵装置9、10の入口/出口と各膨張弁15、16との間に位置付けられているそれぞれの分離弁11、12を備えることができる。
【0035】
各ディスペンサ移送ラインに対して離されるこれらの貯蔵装置分離弁11、12、25、14は、移送ラインを独立して保持している間、バッファ貯蔵装置を共有することを可能にする。
【0036】
図1中に示すように、移送回路3は、ポンプ5の出口において2本(またはそれ以上)の移送ラインをリンクする少なくとも1つの接続ダクト17を有利に備えることができる。接続ダクト17は、例えば、分離弁18を備えている。この接続ダクトとその弁18は、適用可能な場合、必要とされるとき(例えば、大きなタンクに充填するときおよび/またはポンプが故障したとき)、送り出される流れを共有(追加)することを可能にする。
【0037】
図1中のダイヤグラムに示すように、各移送ラインの少なくとも一部分19は、熱的に絶縁されることができる(必ずしも真空下および/または冷却下でない)。さらに、各ラインは、特に、タンク22に接続するために下流端に近接して、そこの圧力/温度を測定する、少なくとも1つの圧力センサ20および/または少なくとも1つの温度センサ21を備えることができる。
【0038】
弁のすべてまたはそのいくつかは、例えば、データ獲得、保管、および、処理システムが設けられた、マイクロプロセッサおよび/またはコンピュータを備える電子制御装置24によって管理される弁であることがある。データを獲得し、これらのユニットを制御して管理するために、制御装置24は、センサ、および、装置のさまざまな他のユニット(特にポンプ5)にリンクされることができる。
【0039】
図2中に図示したように、限定しない例として、タンクの充填は、好ましくは、(事前に)規定された勾配充填にしたがって生成される。例えば、ポンプ5と弁のセットは、例えば、主に線形で、タンク中の定められた圧力増加スピード(P22=タンク中の圧力)を提供するように管理される。例えば、移送ダクト4で測定される(そしてタンク22中の圧力P22を表す)圧力P4は、経時的に線形で増加するように制御される。これは、経時的Tに容器22中の量M22を制御することによって取得でき、したがって、ガスの流量Qは経時的に移送される。この流量は、充填状況(量、タンクの容量、温度等)にしたがって規定される。
【0040】
必要とされるガス流量の移送は、ポンプ5によって提供されることができ、場合によっては、バッファ貯蔵装置9、10によって提供される追加のガス流量によって捕足されることができる。
【0041】
通常の充填ケースでは、タンクは、例えば、充填プロトコルによって規定された充填勾配にしたがって、数分(例えば、3分)後に15℃の周囲温度で、水素の5~7kgで充填されなければならない。
【0042】
例えば、充填の開始において、ポンプ5は、単独で車両を充填するために必要な流量を提供するのに十分であることができる。圧力勾配に依存して、この流量は、充填の開始からの0から、ポンプの最大流量まで増加する。
【0043】
圧力勾配は、例えば、ポンプ5のスピードを変調することによって、管理(取得)される。ポンプ5によって提供される圧力は、充填されるタンク22によって移送ラインの端で必要とされる圧力である。この圧力は、タンク22の初期圧力に応じて、典型的におおよそ50から300バールであることができる。
【0044】
水素は、加熱された蒸発ユニット6を介して通過する一方で、ポンプ5からその出口温度で極低温水素をバイパスブランチ13が移送することを可能にする。
【0045】
下流端4でターゲットガス温度に達するために、2つの弁7、8の開口は、適切な分配に達するように管理されることができる。
【0046】
ラインが高温すぎる(測定される温度21がターゲット温度を上回る)場合、特に、「高温」側の弁7は、完全に閉じられることができ、「低温」側の弁8は、例えば、ラインを冷却するための100%低温の流量を可能にするために、完全に開かれることができる。
【0047】
ラインが低温すぎる場合、低温流量/高温流量の比は、例えば、ポンプ5のおよび/または周囲温度の性能に応じて、30%と50%の間で弁7、8によって調整されることができる。
【0048】
タンク22が充填されると、充填流量は、増加することができ、特に、ポンプ5の容積を超えることがある。
【0049】
制御装置は、ターゲット圧力に関してラインにおける圧力の欠如を検出すること20ができ、これを克服するために、バッファ貯蔵装置の弁11、15を開くことができる。
【0050】
これは、ポンプの流量の制御を意味し、バッファ貯蔵装置によって提供される流量は、(特に、下流端における)移送ラインで測定される圧力セットポイントを提供するために制御されることができる。
【0051】
この構成において、ポンプ5は、その最大流量(最大スピード)になることができ、圧力勾配は、膨張弁15によって管理される。
【0052】
(移送ラインにおける圧力のような)ポンプ5によって提供される圧力は、充填限界圧(例えば、700から850バール)に達するまで増加する。適用可能な場合、貯蔵装置9、10は、カスケードとして使用されることができる(貯蔵装置に関係付けられている弁11、12;25、14は、1つの貯蔵装置からもう1つへの切り替えを可能にする)。
【0053】
バッファ貯蔵装置9、10によって提供される水素は、対応する弁15、16で膨張した後、ポンプ5から到来する流量と合わさる。弁7、8は、提供されるガスの温度を常に制御する。
【0054】
この第2の充填段階で提供される流量は、より大きく、例えば、おおよそ25-45g/sであり、例えば、ピークに60g/sに達することができる。
【0055】
バッファ貯蔵装置9、10によって提供される高温ガス流量はまた、可変であり、大きく、ポンプ5によって提供される低温ガスと高温ガスとの間の比は、充填の開始の間よりも大きい。この比は、充填総流量に依存して、例えば、30%と100%の間で変化することができる。
【0056】
充填が終了したとき、貯蔵装置9、10をその公称圧力まで充填するためにポンプ5を使用できる。送り出される水素のすべては、貯蔵圧力(中間圧力バッファ貯蔵装置に対して400-500バール、高圧力バッファ貯蔵装置に対して700-1000バール)まで加熱できる。
【0057】
あるケースでは、充填は、低い流量のみを必要とし、これは、ポンプ5によって完全に提供されるように十分低い(例えば、4kgの水素より少ない容積を有する小さなタンク)。周囲温度が(極めて)高い、例えば、30℃または40℃を上回るとき、低流量充填を提供することもできる。
【0058】
このケースでは、膨張弁15、16は、充填の間、閉じたままであることができる。圧力勾配は、ポンプ5のスピードによって完全に管理できる。低温流量/高温流量の比は、対応する弁7、8によって調整され、上記で説明したようにラインを冷却することを除き、例えば、30%と50%の間で変化することができる。
【0059】
(10kgの水素より多くを貯蔵するバスタンクのような)大きなタンク22を充填するのに必要とされる高い流量のケースでは、必要とされる流量と必要な冷却力は、比較的大きい。このような急速な充填は、移送ラインにおいて高充填流量を提供することにより、常に可能である。これは、2つのポンプ5を使用し、適切な弁を制御し、特に、接続ダクト17の弁18を開くことによって達成できる。
【0060】
したがって、このレイアウトは、移送ラインの容積を倍にし、ステーション1に使用の際の柔軟性を提供する。
【0061】
上記で述べたように、この配置は、移送ラインの効果的な冷却も可能にする。
【0062】
実際に、長期にわたる待機時間の後、移送ラインを加熱できる。冷却は、先行技術からのステーション上で問題をもたらすことがある。
【0063】
提案した構成にしたがうと、移送ラインは、いくつかの方法で容易に冷却できる。
【0064】
例えば、充填のまさに開始において、低温流体をタンク22に移送することにより、いわゆる「直接」冷却を使用して、ラインを冷却できる。実際に、充填の開始において、公差時間ウインドウ(おおよそ30秒であることが多い)があることがあり、その間、タンク22は、十分に冷却されていない(ターゲット温度を上回る)ガスで充填されることがある。移送ラインが十分に短い(例えば、30または20メートル未満)場合、ポンプ5の出口における極低温水素は、公差ウインドウ(tolerance window)の間ラインを冷却した後、タンク22に直接送られることができる。
【0065】
ラインの温度の温度制御は、開ループ(「フィードフォワード」)タイプの補正を使用して、または、ラインの測定された温度21(例えば、ライン中のガスの温度)に応じて「カスケードで」達成することができる。これは、特に、弁7、8に対する開口セットポイントが、自動的に下流で測定された温度の値に制御されるまたは強いられることを意味する。
【0066】
別の可能性ある冷却モード(「いわゆる低温フラッシング」)にしたがうと、ラインがタンク22を充填するために使用されない専用冷却ガス流によって冷却されることができる。
【0067】
実際に、「直接冷却」は、より長い移送ラインに対して不十分であることが判明することがある。その後、フラッシングラインを追加することが予想できる。したがって、タンク22を充填する前に、ラインは、ポンプ5によって提供され、(簡略化のために示していない)フラッシングラインによってバッファ貯蔵装置9、10に送り戻される低温水素で流されることができる。
【0068】
このフラッシング段階は、いったんタンクが移送ラインの下流端に接続されると、実際の充填の前にユーザがインタフェースを動作する間、実行されることができる。これは、クライアント/ユーザ/車両の到着を検出することによって、前もって実行されることすらできる。このフラッシング段階は、ラインの長さと周囲温度に依存して、数十秒必要とすることがある。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 加圧ガスタンク、特に車両加圧水素タンクを充填するための充填装置であって、
前記充填装置は、
液化ガス源(2)と、
それぞれが前記液化ガス源(2)にリンクされている上流端(3)を有する2本の並行移送ラインを備える移送回路(3)とを備え、
各移送ラインは、充填されるべきタンク(22)に取り外し可能に接続されるように意図されている下流端(4)を備え、
前記2本の並行移送ラインのそれぞれは、
ポンプ(5)と、
送り出される流体を蒸発させるための蒸発ユニット(6)と、
前記蒸発ユニット(6)をバイパスするためのバイパスブランチ(13)と、
送り出され、前記蒸発ユニット(6)と前記バイパスブランチ(13)との間で分配される流体の流れを制御するように構成されている分配弁(7、8)のセットとを備え、 前記充填装置(1)は、バッファ貯蔵装置(9、10)のセットをさらに備え、前記バッファ貯蔵装置は、弁(11~16)のセットを介して前記2本の並行移送ラインのそれぞれに並行に接続される、充填装置。
[2] 前記バッファ貯蔵装置(9、10)のセットは、前記蒸発ユニット(6)と、前記蒸発ユニット(6)を通過する流体および前記バイパスブランチ(13)を通過する流体の間の混合のポイントとの間で各移送ラインに接続されることを特徴とする、[1]に記載の充填装置。
[3] 前記バッファ貯蔵装置(9、10)のセットは、それぞれの膨張弁(15、16)を介して各移送ラインに接続されることを特徴とする、[1]または[2]に記載の充填装置。
[4] 各移送ラインの前記分配弁(7、8)のセットは、前記蒸発ユニット(6)の下流であり、前記バイパスブランチ(13)を通過した前記流体との混合のポイントの上流に位置付けられている第1の分配弁(7)を備え、
前記分配弁(7、8)のセットは、前記バイパスブランチ(13)中に第2の分配弁(8)を備えることを特徴とする、[1]から[3]のうちのいずれか1項に記載の充填装置。
[5] 前記バッファ貯蔵装置(9、10)のセットは、各移送ラインに並行して接続されている2つ以上のバッファ貯蔵装置を備え、
各バッファ貯蔵装置(9、10)は、それぞれの分離弁(11、12)を介して各移送ラインに接続されることを特徴とする、[1]から[4]のうちのいずれか1項に記載の充填装置。
[6] 前記移送回路(3)は、2つのポンプ(5)の出口に前記2本の並行移送ラインをリンクさせる接続ダクト(17)を備え、
前記接続ダクト(17)は、分離弁(18)を備えることを特徴とする、[1]から[5]のうちのいずれか1項に記載の充填装置。
[7] 前記2本の並行移送ラインは、少なくとも1つの熱的に絶縁された部分(19)を備えることを特徴とする、[1]から[6]のうちのいずれか1項に記載の充填装置。
[8] 前記2本の並行移送ラインは、圧力と温度それぞれを測定する、少なくとも1つの圧力センサ(20)および/または少なくとも1つの温度センサ(21)を、特に、前記下流端(4)に近接して備えることを特徴とする、[1]から[7]のうちのいずれか1項に記載の充填装置。
[9] タンクに定められた充填勾配で充填することを確立するために、定められた温度で定められたガス流量により少なくとも1つの加圧ガスタンクを充填する方法であって、
前記方法は、[1]~[8]のうちのいずれか1項に従う充填装置を使用する、充填方法。
[10] 前記ガス流量は、可変であり、経時的に変更されることを特徴とする、[9]に記載の充填方法。
[11] 充填動作の少なくとも一部分の間、特に、前記定められたガス流量が前記ポンプ(5)の最大流量よりも大きいとき、
前記タンクに移送される前記ガス流量は、第1の、前記ポンプ(5)によって提供され、前記蒸発ユニット(6)と前記バイパスブランチ(13)との間で分配されるガス流量と、第2の、前記バッファ貯蔵装置(9、10)のセットによって提供される追加のガス流量との合計であることを特徴とする、[9]または[10]に記載の充填方法。
[12] 充填動作の少なくとも一部分の間、特に、前記定められたガス流量が前記ポンプ(5)の最大流量よりも小さいか、又は等しいとき、
前記タンクに移送されるガス流量は、前記ポンプ(5)によって提供され、前記蒸発ユニット(6)と前記バイパスブランチ(13)との間に分配されるガス流量のみから形成されることを特徴とする、[9]から[11]のうちのいずれか1項に記載の方法。
[13] 1本の移送ラインからもう1本の移送ラインにガス流を移送することにより、2本の移送ラインの前記ポンプ(5)によって提供されるガス流の合計を備えたガス流でタンクを充填するステップを含むことを特徴とする、[9]から[12]のうちのいずれか1項に記載の方法。
[14] タンク(22)の充填に先立って、又は、充填を開始するときに、移送ラインを冷却するステップを備えることを特徴とし、前記移送ラインは、前記蒸発ユニット(6)を通過する比較的高温のガスと、前記バイパスブランチ(13)を通過する比較的低温のガスとの間の相対的な分配を管理することによって、場合によっては、これに加えて、前記バッファ貯蔵装置(9、10)のセットから到来する比較的高温のガスの量を管理することによって制御される定められた温度でのガスの移送を含むものである、[9]から[13]のうちのいずれか1項に記載の方法。
[15] 前記移送ラインを冷却するステップは、前記蒸発ユニット(6)と前記バイパスブランチ(13)との間の前記分配弁の開口を制御することによって、加えて、場合によっては、「開ループ」(「フィードフォワード」)タイプ制御にしたがって、および/または、前記移送ラインにおいて測定された温度に基づいた制御ループにしたがって、前記バッファ貯蔵装置(9、10)のセットによって提供される追加のガス流量を制御することによって、実行されることを特徴とする、[14]に記載の方法。
[16] 前記移送ラインを冷却するステップは、冷却されるべき前記移送ライン中で制御される定められた温度で移送されるガスを回収するためのユニットに向けて、又はその外側に向けてフラッシングするステップを備えることを特徴とする、[14]または[15]に記載の方法。