(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】加工装置、加工方法、及び加工システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4155 20060101AFI20231211BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20231211BHJP
B23Q 15/00 20060101ALI20231211BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G05B19/4155 V
G05B19/18 W
B23Q15/00 301C
B23Q17/09 A
(21)【出願番号】P 2019173527
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】中谷 尊一
(72)【発明者】
【氏名】解良 康弘
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-032649(JP,A)
【文献】特開2014-022837(JP,A)
【文献】特開2018-028512(JP,A)
【文献】特開2014-140918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/12
B23Q 15/00
B23Q 17/09
G05B 19/18
G05B 19/4155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を用いてワークを加工する加工装置であって、
加工中の前記ワークの振動を測定する測定部と、
前記振動について周波数解析により振動波形のピークを取得し、該ピークの度合いに応じたスコアを算出し、前記スコアが第1の所定値以下の場合には良と判定し、前記スコアが第2の所定値超えの場合には不良と判定し、前記スコアが第1の所定値超え、かつ第2の所定値以下の場合には良否いずれにも属しないと判定して、前記ワークの加工結果の良否判定を行う判定部と、
前記加工結果のうち良否いずれにも属しない
と判定されたワークであって、再検査により加工結果が良と判定されたワークの加工結果と
、前記振動とに基づき学習モデルを作成する学習部と、
を備える加工装置。
【請求項2】
前記学習モデルに基づいて、加工中の前記ワークの前記振動に応じた加工結果を予測する予測部をさらに備える、請求項1の加工装置。
【請求項3】
工具を用いてワークを加工する加工方法であって、
加工中の前記ワークの振動を測定するステップと、
前記振動について周波数解析により振動波形のピークを取得し、該ピークの度合いに応じたスコアを算出し、前記スコアが第1の所定値以下の場合には良と判定し、前記スコアが第2の所定値超えの場合には不良と判定し、前記スコアが第1の所定値超え、かつ第2の所定値以下の場合には良否いずれにも属しないと判定して、前記ワークの加工結果の良否判定を行うステップと、
前記加工結果のうち良否いずれにも属しない
と判定されたワークであって、再検査により加工結果が良と判定されたワークの加工結果と
、前記振動とに基づき学習モデルを作成するステップと、
を含む加工方法。
【請求項4】
前記学習モデルに基づいて、加工中の前記ワークの前記振動に応じた加工結果を予測するステップをさらに含む、請求項3に記載の加工方法。
【請求項5】
工作機械と制御装置とを備える加工システムにおいて、
前記工作機械は、
工具を用いてワークを加工する加工部と、
加工中の前記ワークの振動を測定する測定部と、
を有し、
前記制御装置は、
前記振動について周波数解析により振動波形のピークを取得し、該ピークの度合いに応じたスコアを算出し、前記スコアが第1の所定値以下の場合には良と判定し、前記スコアが第2の所定値超えの場合には不良と判定し、前記スコアが第1の所定値超え、かつ第2の所定値以下の場合には良否いずれにも属しないと判定して、前記ワークの加工結果の良否判定を行う判定部と、
前記加工結果のうち良否いずれにも属しない
と判定されたワークであって、再検査により加工結果が良と判定されたワークの加工結果と
、前記振動とに基づき学習モデルを作成する学習部と、
を有する、加工システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記学習モデルに基づいて、加工中の前記ワークの前記振動に応じた加工結果を予測する予測部をさらに備える、請求項5に記載の加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置、加工方法、及び加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
加工装置を用いたワークの加工では、加工条件が同じであっても、周辺環境などの影響によって加工結果がワーク毎に異なる場合がある。特許文献1には、ワークの加工時の振動などが加工結果に及ぼす影響を機械学習によって予測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、例えばワークの加工時の振動と、加工済みワークの合否判定を示す結果とに基づいて、機械学習を実行している。しかしながら、加工済みワークの歩留まり率を向上させるためには、改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、加工済みワークの歩留まり率を向上させることができる加工装置、加工方法、及び加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1)工具を用いてワークを加工する加工装置であって、
加工中の前記ワークの振動を測定する測定部と、
前記ワークの加工結果の良否判定を行う判定部と、
前記振動と、前記加工結果のうち良否いずれにも属しない加工結果とに基づき学習モデルを作成する学習部と、
を備える加工装置。
【0007】
(2)前記学習モデルに基づいて、加工中の前記ワークの前記振動に応じた加工結果を予測する予測部をさらに備える、上記(1)に記載の加工装置。
【0008】
(3)工具を用いてワークを加工する加工方法であって、
加工中の前記ワークの振動を測定するステップと、
前記ワークの加工結果の良否判定を行うステップと、
前記振動と、前記加工結果のうち良否いずれにも属しない加工結果とに基づき学習モデルを作成するステップと、
を含む加工方法。
【0009】
(4)前記学習モデルに基づいて、加工中の前記ワークの前記振動に応じた加工結果を予測するステップをさらに含む、上記(3)に記載の加工方法。
【0010】
(5)工作機械と制御装置とを備える加工システムにおいて、
前記工作機械は、
工具を用いてワークを加工する加工部と、
加工中の前記ワークの振動を測定する測定部と、
を有し、
前記制御装置は、
前記ワークの加工結果の良否判定を行う判定部と、
前記振動と、前記加工結果のうち良否いずれにも属しない加工結果とに基づき学習モデルを作成する学習部と、
を有する、加工システム。
【0011】
(6)前記制御装置は、前記学習モデルに基づいて、加工中の前記ワークの前記振動に応じた加工結果を予測する予測部をさらに備える、上記(5)に記載の加工システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加工済みワークの歩留まり率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る加工装置を説明する概略図である。
【
図2】
図1の加工装置の学習過程を説明するフローチャートである。
【
図3】
図1の加工装置の予測過程を説明するフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る加工システムを説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一符号は、同一または同等の構成要素を示す。
【0015】
(加工装置)
図1を参照して、本実施形態に係る加工装置1を説明する。加工装置1は、加工部10と、測定部11と、判定部12と、学習部13と、予測部14と、制御部15と、記憶部16と、入力部17と、出力部18と、を備えることができる。
【0016】
加工部10は、一例として任意の1つ以上のワークを加工する工具を保持した刃物台と、ワークを回転可能に保持する主軸とを備えることができる。加工部10は、例えば主軸がワークを回転させ、刃物台がワークの外径に沿って工具を外径方向に沿って送り動作させることによって、ワークの加工を行うことができる。工具は、自動旋盤などの工作機械に用いられる切削工具などであるが、これに限られない。ワークは、丸棒材などの被加工材などであるが、これに限られない。
【0017】
測定部11は、任意の1つ以上の振動センサを含むことができる。測定部11は、例えば加工装置1の所定の場所に設置された振動センサを用いて、加工中の加工装置1全体の振動によるワークの振動を測定することができる。測定部11によって測定された振動は、測定時間と関連付けられ、例えば振動波形として記憶部16に記憶される。
【0018】
判定部12は、加工済みワークの加工結果の良否判定を行う。具体的には、判定部12は、振動波形のレベル、または振動波形の周波数解析により得られるピークの少なくとも1つに基づいて、加工済みワークの加工結果の良否判定を行ってもよい。より具体的には、判定部12は、振幅またはピークが小さいほど良いスコアとなり、振幅またはピークが大きいほど悪いスコアとなるように、振幅またはピークの度合いに応じたスコアを算出し、スコアが第1の所定値以下の場合には「良」と判定し、スコアが第2の所定値超えの場合には「不良」と判定し、スコアが第1の所定値超え、かつ第2の所定値以下の場合には「良否いずれにも属しない」と判定してもよい。なお、第1、2の所定値は、ワークに求められる加工精度に応じて適宜決定される。また、スコアが第1の所定値以下の場合には「良」と判定し、それ以外の場合には「良否いずれにも属しない」と判定してもよい。
【0019】
学習部13は、任意の学習アルゴリズムを用いて、教師ありの学習を行う。「教師ありの学習」とは、入力データと出力データとを含む教師データから、入力データと出力データとの相関関係を抽出することによって、新たな入力に対する出力を予測するための学習モデルを機械学習する手法である。学習部13は、「ワークの振動」を入力データとし、「加工結果のうち良否いずれにも属しない加工結果」を出力データとして、この入出力データに基づいて、学習モデルを作成する。このように、学習モデルの作成にあたり、特に「良否いずれにも属しない加工結果」を用いることで、新たな良否判定のモデルを抽出することができ、加工済みワークの歩留まりが向上する。より好ましくは、学習部13は、ワークの振動と、加工結果のうち良否いずれにも属しない加工結果のみとに基づいて、学習モデルを作成する。
【0020】
予測部14は、学習部13によって作成された学習モデルに基づいて、加工中の加工装置1全体の振動によるワークの振動に応じた加工結果を予測する。例えば、後述する制御部15が、アラートなどによって予測部14による予測結果をユーザに通知してもよい。また、予測結果が「不良」となる場合が所定の回数以上連続したら、制御部15は、ワークの加工を中断してもよい。なお、「所定の回数」は、ユーザが入力部17を介して適宜設定することができる。また、制御部15は、予測結果に応じて設けられた任意の回収箱に加工済みワークを適宜振り分けてもよい。
【0021】
制御部15は、加工装置1全体の動作を制御することができる。
【0022】
なお、判定部12、学習部13、予測部14、および制御部15は、1つ以上のプロセッサを含むことができる。プロセッサは、汎用のプロセッサ、または特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限られない。
【0023】
記憶部16は、加工装置1を動作させるための任意のプログラム、測定部11による測定結果、判定部12による判定結果、学習部13による学習結果、および予測部14による予測結果などが記憶される。なお、記憶部16は、1つ以上のメモリを含む。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られない。
【0024】
入力部17は、例えば加工装置1全体の制御を行うための各種の設定等を行う加工装置1に設置された操作盤であり、ユーザ入力を検出することができる任意の1つ以上の入力インタフェースを含むことができる。入力インタフェースは、操作盤が備えた専用のキーボードのような物理キー若しくは静電容量キー、又は操作盤が備えた制御の設定状態若しくは加工結果等を表示する表示装置のタッチスクリーンなどであるが、これらに限られない。ユーザは、入力部17を介して、加工条件などの入力を行うことができる。
【0025】
出力部18は、ユーザに対して加工結果および予測結果などを含む情報を出力することができる任意の1つ以上の出力インタフェースを含むことができる。例えば、出力インタフェースは、情報を映像で出力するディスプレイ(入力部17を兼ねるタッチスクリーン)、または情報を音声で出力するスピーカなどであるが、これらに限られない。
【0026】
(加工方法)
次に、
図2および
図3を参照して、上述した加工装置1を用いて行うことが可能な加工方法を説明する。本実施形態による加工方法は、
図2に示す学習過程と、
図3に示す予測過程とを含むことができる。
【0027】
図2を参照して、ステップS100において、加工部10は、ワークの加工を開始する。
【0028】
続いて、ステップS110において、測定部11は、加工中のワークの振動を測定する。
【0029】
続いて、ステップS120において、判定部12は、加工済みワークの良否判定を行う。
【0030】
続いて、ステップS130において、学習部13は、ワークの振動と、加工結果のうち良否いずれにも属しない加工結果とに基づいて、学習モデルを作成する。
【0031】
例えば、判定部12によって一旦「良否いずれにも属しない」と判断された加工結果となったワークの加工面の状態等を再検査する。一例として、表面粗さ等の加工精度が公差の範囲内にあるか否かが再検査される。その結果、例えば、加工精度が公差の範囲内にある等、再検査によって加工結果が「良」に属すると判定された場合に、そのワークの振動結果及び/又は振動波形の周波数解析の結果を参照する。振動波形及び/又は周波数解析の結果に特有の傾向があるような場合、この特有の傾向を検知するように学習が行われる。なお、再検査では、加工精度に限られず、ワークの加工面の疵の有無等を見てもよい。
【0032】
図2に示す学習過程では、1つのワークの加工が終了する度に1回の学習サイクルが実行される。したがって、所望の精度の学習モデルを得るために十分な入出力データが得られるまで、ステップS100~S130が繰り返される。「所望の精度」は、ワークに求められる加工精度に応じて適宜決定される。このようにして学習過程が終了すると、
図3に示す予測過程に移行する。
【0033】
図3を参照して、ステップS200において、加工部10は、ワークの加工を開始する。
【0034】
続いて、ステップS210において、測定部11は、ワークの振動を測定する。
【0035】
続いて、ステップS220において、予測部14は、
図2に示す学習過程で作成した学習モデルとワークの振動とに基づいて、加工結果を予測する。例えば、ステップS220は、ワークの加工を開始してから所定の時間が経過すると、加工途中のワークの振動と学習モデルとを比較することによってリアルタイムで実行されてもよい。「所定の時間」は、ユーザが入力部17を介して適宜設定することができる。また、これに限らず、ステップS220は、1つのワークの加工が終了した時に、当該ワークの加工時における全体の振動の傾向と学習モデルとを比較することによって実行されてもよい。
【0036】
以上、本発明を諸図面および実施形態に基づき説明したが、当業者であれば本発明に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形または修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数のステップ等を1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。
【0037】
例えば、
図4を参照して、加工部10および測定部11を有する工作機械2と、判定部12、学習部13、予測部14、制御部15、記憶部16、入力部17、および出力部18を有する制御装置3とを備える加工システムSを用いて、上述した加工方法を実行してもよい。この場合、工作機械2と制御装置3とは、任意の1つ以上の通信インタフェースを用いて相互に通信することができる。なお、工作機械2および制御装置3における各部の構成および機能については、既述の説明を援用する。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、加工済みワークの歩留まり率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 加工装置
2 工作機械
3 制御装置
10 加工部
11 測定部
12 判定部
13 学習部
14 予測部
15 制御部
16 記憶部
17 入力部
18 出力部
S 加工システム