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特許7399678光半導体装置用樹脂成形体及び光半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】光半導体装置用樹脂成形体及び光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/60 20100101AFI20231211BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20231211BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H01L33/60
H01L23/30 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019195431
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021068874
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】平川 裕之
(72)【発明者】
【氏名】山本 康雄
【審査官】八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-201408(JP,A)
【文献】特開2012-44206(JP,A)
【文献】特表2012-530342(JP,A)
【文献】特開2009-54593(JP,A)
【文献】特開2016-106431(JP,A)
【文献】特表2019-530970(JP,A)
【文献】特表2015-537348(JP,A)
【文献】登録実用新案第3214714(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00
H01L 33/48-33/64
H01L 23/28-23/31
F21V 1/00- 8/00
F21V 9/00-15/04
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光半導体装置用樹脂成形体であって、
厚さ方向において互いに反対側を向く表面および裏面を有し、
前記表面に、開口部から裏面に向かって窪んだ凹部を有し、
前記凹部は、内壁にn枚(nは5以上の整数を示す)の反射面と、底面を有し、
前記凹部の開口部の形状は、以下の条件(1)及び(2)を満たす略n角形(nは前記nと同一の整数)であり、
(1)前記略n角形の全ての内角は鈍角である。
(2)前記略n角形の全ての辺は、互いに平行ではない。
前記略n角形は、非対称な形状であり、
前記開口部と平行な任意な面と前記凹部の内壁とで形成される形状が、前記凹部の前記開口部と略相似形の略n角形である、光半導体装置用樹脂成形体。
【請求項2】
前記凹部の底面が、前記凹部の前記開口部と略相似形の略n角形である、請求項1に記載の光半導体装置用樹脂成形体。
【請求項3】
前記凹部の前記開口部の面積が、前記凹部の前記底面の面積より広い、請求項1又は2に記載の光半導体装置用樹脂成形体。
【請求項4】
前記開口部と平行な任意な面と前記凹部の側面とで形成される形状の面積が、前記凹部の開口部から底面にかけて漸減する、請求項1~3の何れか1項に記載の光半導体装置用樹脂成形体。
【請求項5】
互いに離隔している第1リードおよび第2リードと一体化されている、請求項1~4の何れか1項に記載の光半導体装置用樹脂成形体。
【請求項6】
前記第1リードは、前記光半導体装置用樹脂成形体の前記凹部の前記底面の一部をなす第1露出面を有し、且つ、前記第1の露出面とは反対の側にて露出している第2露出面を有し、
前記第2リードは、前記光半導体装置用樹脂成形体の前記凹部の前記底面の一部をなし、前記第1露出面と離隔する第3露出面を有し、且つ、前記第3の露出面とは反対の側にて露出している第4露出面を有する、請求項5記載の光半導体装置用樹脂成形体。
【請求項7】
前記第1リードおよび第2リードは、それぞれ、前記光半導体装置用樹脂成形体から外部に延出している電極部を有する、請求項に記載の光半導体装置用樹脂成形体。
【請求項8】
光半導体素子と、
樹脂成形体と、を備え、
前記樹脂成形体が、請求項6又は7に記載の光半導体装置用樹脂成形体であり、
前記光半導体素子は、前記第1リードの前記第1露出面に搭載され、且つ前記第2リードの前記第3露出面にボンディングワイヤを介して接続されている、光半導体装置。
【請求項9】
前記光半導体素子は、前記凹部の前記底面の略中央部に接続されている、請求項8記載の光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードなど光半導体素子を備える光半導体装置に用いられる樹脂成形体、及び当該樹脂成形体を備える光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードなど光半導体素子を備える光半導体装置は、電球や蛍光灯、ネオン管、ハロゲンランプなど他の光源と比較して、寿命が長いことや、動作が安定していること、応答速度が速いことなどの特長を有する。このような光半導体装置については、様々な用途において実用化が進んでいる。例えば、照明用途(家庭・オフィスの一般屋内照明や街路灯など)、表示用途(交通信号機など)、光源用途(液晶テレビのバックライトなど)、および通信用途(赤外線リモコンなど)においてである。このような光半導体装置については、例えば下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-012854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光半導体装置は様々なデザインのものが存在し、同じ外形サイズの光半導体装置でもより明るい光度を得るデザインが求められる。しかしながら、従来の光半導体装置では光の取り出しにロスが多く、光半導体素子が本来有する光度を十分に活かしきれていないのが現状である。
【0005】
また、従来の光半導体装置では、発光表面の一部が暗くなる、いわゆるデッドスペースが存在し、明るさが均一にならない問題を抱えており、光半導体装置の大型化によりその傾向は顕著になってきている。近年、より大きい光半導体装置表面でもデッドスペースを少なくして、より均一な明るさが求められている。
【0006】
本発明は、以上のような事情のもとで考え出されたものであって、その目的は、光のロスを減少してより明るく、より均一な光を出射するための光半導体装置に用いられる光半導体装置用樹脂成形体、及び当該光半導体装置用樹脂成形体を備える光半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、光半導体装置における光のロス及びデッドスペースの主な原因が、光半導体装置内での反射光の進路が制限されている結果、反射光同士の衝突が多くなり、光が減衰(消滅)していることに起因していることを突き止めた。そして、光半導体装置に用いられる樹脂成形体のデザインを検討して、光半導体装置内の全体に光が均一に反射して、反射光同士の衝突が少なくなってより明るく、デッドスペースを最小化してより均一な光が得られるデザインを見出した。本発明は、これらの知見により完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明の一の実施形態は、光半導体装置用樹脂成形体であって、
厚さ方向において互いに反対側を向く表面および裏面を有し、
前記表面に、開口部から裏面に向かって窪んだ凹部を有し、
前記凹部は、内壁にn枚(nは5以上の整数を示す)の反射面と、底面を有し、
前記凹部の開口部の形状は、以下の条件(1)及び(2)を満たす略n角形(nは前記nと同一の整数)であり、
(1)前記略n角形の全ての内角は鈍角である。
(2)前記略n角形の全ての辺は、互いに平行ではない。
前記開口部と平行な任意な面と前記凹部の内壁とで形成される形状が、前記凹部の前記開口部と略相似形の略n角形である、光半導体装置用樹脂成形体を提供する。
【0009】
前記光半導体装置用樹脂成形体において、前記凹部の底面は、前記凹部の前記開口部と略相似形の略n角形であってもよい。
【0010】
前記光半導体装置用樹脂成形体において、前記凹部の前記開口部の面積は、前記凹部の前記底面の面積より広いことが好ましい。
【0011】
前記光半導体装置用樹脂成形体において、前記開口部と平行な任意な面と前記凹部の側面とで形成される形状の面積は、前記凹部の開口部から底面にかけて漸減することが好ましい。
【0012】
前記光半導体装置用樹脂成形体は、互いに離隔している第1リードおよび第2リードと一体化されているものであってもよい。
【0013】
前記光半導体装置用樹脂成形体において、前記第1リードは、前記凹部の前記底面の一部をなす第1露出面を有し、且つ、前記第1の露出面とは反対の側にて露出している第2露出面を有し、
前記第2リードは、前記凹部の前記底面の一部をなし、前記第1露出面と離隔する第3露出面を有し、且つ、前記第3の露出面とは反対の側にて露出している第4露出面を有していてもよい。
【0014】
前記光半導体装置用樹脂成形体において、前記第1リードおよび第2リードは、それぞれ、前記光半導体装置用樹脂成形体から外部に延出している電極部を有していてもよい。
【0015】
また、本発明の他の実施形態は、光半導体素子と、
樹脂成形体と、を備え、
前記樹脂成形体が、前記の光半導体装置用樹脂成形体であり、
前記光半導体素子は、前記第1リードの前記第1露出面に搭載され、且つ前記第2リードの前記第3露出面にボンディングワイヤを介して接続されている、光半導体装置を提供する。
【0016】
前記光半導体装置において、前記光半導体素子は、前記凹部の前記底面の略中央部に接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光半導体装置用樹脂成形体は、上記の構成を有するため、当該樹脂成形体を備える光半導体装置は、光半導体装置内の全体に光が均一に反射して、反射光同士の衝突が少なくなってより明るく、デッドスペースを最小化してより均一な光が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一の実施形態に係る光半導体装置用樹脂成形体の斜視図(模式図)である。
図2図1に示す光半導体装置用樹脂成形体の平面図(模式図)である。
図3図2に示す光半導体装置用樹脂成形体における線X-X’に沿った断面図(模式図)である。
図4】本発明の他の実施形態に係る光半導体装置用樹脂成形体の平面図(模式図)である。
図5図4に示す光半導体装置用樹脂成形体における線Y-Y’に沿った断面図(模式図)である。
図6図4に示す光半導体装置用樹脂成形体の裏面図(模式図)である。
図7】本発明の一の実施形態に係る光半導体装置の平面図(模式図)である。
図8図7に示す光半導体装置における線Z-Z’に沿った断面図(模式図)である。
図9】従来型の一の光半導体装置の平面図(模式図)である。
図10図9に示す光半導体装置における線V-V’に沿った断面図(模式図)である。
図11】従来型の光半導体装置における反射光についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、従来型の光半導体装置で、光のロスが多く、デッドペースが生じる原因について、図9~11を参照しながら説明する。
図9及び図10は、従来型の光半導体装置の一例である光半導体装置100の模式図を示し、図9は上部からの平面図、図10は、図9に示す光半導体装置における線V-V’に沿った断面図である。光半導体装置100は、いわゆるモールドアレイパッケージ(MAP)の形態で形成されるものであって、樹脂成形体110と、一組のリード120、130と、発光ダイオードであるLED素子140と、透明樹脂部150とを備える。
【0020】
樹脂成形体110は、リード120、130を伴ういわゆるインサート成形によってリード120、130を保持する形態に成形された樹脂体であり、傾斜面111によって凹形状が規定される凹部112を有する。樹脂成形体110における少なくとも傾斜面111には、所定の態様によって光反射性が付与されている。LED素子140は、凹部112内のリード120に対して電気的かつ機械的に接続されている。これとともに、LED素子140は、リード130に対してボンディングワイヤ160を介して電気的に接続されている。透明樹脂部150は、樹脂成形体110の凹部112に充填されて硬化された透明樹脂体であり、凹部112内のLED素子140等を封止している。リード120、130が外部電極120a、130aから通電されると、LED素子140が発光する。その光は透明樹脂部150を通過して、光半導体装置100の凹部112から外部に出射される。
【0021】
このような構成の光半導体装置100において、光はLED素子140から立体的にあらゆる方向に発せられる。凹部112の上部開口部から直接凹部112外に出る光もあるが、光の多くは凹部112内で傾斜面111等の反射面での反射を繰り返しながら凹部112外に出る。その際に、凹部112内部で、反射光同士がぶつかり合うと、光が減衰(消滅)し、開口部より出射する光が少なくなり、照度が低下する。
【0022】
凹部112において、隣接する反射面(傾斜面111)がなす角度が直角(90°)であったり、対向する反射面が平行である場合は、反射光の進路が限定される結果、衝突する反射光が多くなる。図11を参照して説明する。隣接する反射面がなす角度が直角である1つの反射面に45°で入射した光は、当該隣接する2つの反射面で反射して、入射光と平行な反射光となり、入射光と衝突しやすい(図11のL1参照)。また、対向する平行な2つの反射面の場合は、垂直(90°)に入射した光同士が衝突して相殺され、照度が著しく減衰する(図11のL2、L3参照)。
【0023】
特に、光半導体装置100のように、凹部112の形状が方形(長方形及び正方形を含む)の場合は、反射光が最短距離で衝突し、すなわち光エネルギーが大きい反射光が衝突するために減衰(ロス)が大きくなる。また、四隅に光が届きにくく、暗いデッドスペースとなり、発光表面の明るさが不均一になりやすい。
【0024】
次に、本発明の典型的な実施形態について図面を参照しつつ以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、例示に過ぎない。
図1~3は、本発明の一の実施形態に係る光半導体装置用樹脂成形体1を表す模式図である。図1は当該実施形態に係る光半導体装置用樹脂成形体1の斜視図であり、図2は光半導体装置用樹脂成形体1の平面図である。図3は、図2の線X-X’点線に沿った光半導体装置用樹脂成形体1の断面図である。
【0025】
光半導体装置用樹脂成形体1は、光半導体装置の製造に用いられる限り特に限定されないが、光半導体装置の基板を構成する樹脂成形体であることが好ましく、厚さ方向において互いに反対側を向く表面10および裏面11を有するものである。光半導体装置の基板とは、後述の光半導体素子などの構成部材を実装するための板状物を言う。なお、表面10および裏面11は、本発明で規定する場合(例えば、後述の凹部13)を除き、原則として平坦な面であるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の凹凸形状などを有していてもよい。
【0026】
光半導体装置用樹脂成形体1は、例えばインサート成形法などにより成形されるものである。このような半導体装置用樹脂成形体1は、例えば、白色顔料を含有する熱硬化性樹脂組成物よりなる。その熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂に配合される白色顔料としては、例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、および酸化ジルコニウムが挙げられる。半導体装置用樹脂成形体1形成用の樹脂材料の市販品としては、例えば、株式会社ダイセル製の「AEW-700」が挙げられる。
【0027】
光半導体装置用樹脂成形体1は、表面10に、開口部12から裏面11に向かって窪んだ凹部13を有する。凹部13は、光半導体装置のリフレクタ開口部を構成するものであり、内壁にn枚(nは5以上の整数を示す)の反射面14と、底面15を有する。凹部13の反射面14及び底面15は、凹部13の凹形状を規定するものであり、本実施形態では、凹部13における底面15から開口部12にかけて凹形状が広がるように、n枚の反射面14が傾斜している。
【0028】
反射面14は、例えば、上記の白色顔料を含む樹脂体により光反射性を付与されたものである。このような反射面としては、平坦な面が好ましいが、光反射性を損なわない範囲で微細な凹凸形状を有していてもよい。凹部13の底面15も前記樹脂体が露出している面は、同様に光反射性を有していてもよい。
【0029】
凹部13の内壁に存在する反射面14の枚数は、5枚以上であれば、特に限定されないが、反射光同士の衝突を減少させ、明るさと光の均一性を向上させるという観点から、好ましくは6枚以上であり、より好ましくは7枚以上、より好ましくは8枚以上、より好ましくは9枚以上、より好ましくは10枚以上、より好ましくは11枚以上、より好ましくは12枚以上、さらに好ましくは13枚以上、特に好ましくは14枚以上である。反射面14の枚数は、特に限定されないが、光半導体装置のデザイン、製造の容易性などの観点から、30枚以下が好ましく、25枚以下がより好ましく、20枚以下がさらに好ましい。
【0030】
n枚の反射面14は、同一(合同)の形状を含んでいていてもよく、全て異なる形状であってもよい。反射光同士の衝突を減少させ、明るさと光の均一性を向上させるという観点から、全て異なる形状であることが好ましい。
【0031】
凹部13の開口部12の形状(すなわち、凹部13の開口端部の形状)は、以下の条件(1)及び(2)を満たす略n角形である。
(1)前記略n角形の全ての内角は鈍角である(以下、条件(1)という)。
(2)前記略n角形の全ての辺は、互いに平行ではない(以下、条件(2)という)。
【0032】
ここで、当該略n角形の「n」は、上述の反射面14の枚数(n枚)と同一の整数である。例えば、凹部13の内壁が6枚の反射面14を有する場合、開口部12の形状は略6角形である。また、前記「略n角形」とは、n角形、又は該n角形に近い形、例えば、n角形の角の全て又は一部を丸めたような形などを指す。
【0033】
半導体装置用樹脂成形体1において、開口部12と平行な任意な面と凹部13の内壁とで形成される形状16は、凹部13の開口部12と略相似形の略n角形である。開口部12と平行な任意な面とは、半導体装置用樹脂成形体1を開口部12と水平方向に切断する仮想の面であり、形状16は、当該面と凹部13の内壁が交わる線で構成される形状である。形状16が開口部12と略相似形の略n角形とは、形状16が開口部12の相似形である場合、形状16が開口部12の相似形に近い場合を含む趣旨である。形状16が開口部12の相似形に近い場合とは、例えば、開口部12がn角形であり、形状16が当該n角形の相似形であって、角の全て又は一部を丸めたような形を指す場合、形状16がn角形であり、開口部12が当該n角形の相似形であって、角の全て又は一部を丸めたような形を指す場合を含む趣旨である。
【0034】
開口部12と形状16とが、略相似形の略n角形の関係にあることにより、n枚の反射面14全面において、前記条件(1)及び(2)の条件を満たすことが規定されるものである。
【0035】
前記条件(1)は、開口部12及び形状16を規定する前記略n角形の全ての内角が鈍角、すなわち90°を超え、180°未満である角度であることを規定する。条件(1)により、隣接する2つの反射面14うちの1つで反射した光が、さらに他方の反射面で反射したとしても、入射光と平行な反射光とはならない。従って、条件(1)を満たす限り、反射光同士の衝突が減少し、明るさと光の均一性を向上させることができる。
略n角形がn角形に近い形(n角形の角の全て又は一部を丸めたような形)の場合の内角は、略n角形の隣接する辺の延長線同士がなす角度である。
【0036】
略n角形の全ての内角は、90°を超え、180°未満であるかぎり特に限定されないが、反射光同士の衝突を減少させ、明るさと光の均一性を向上させるという観点から、好ましくは95°以上、より好ましくは100°以上、より好ましくは110°以上、より好ましくは120°以上、より好ましくは120°以上、より好ましくは130°以上、より好ましくは140°以上、より好ましくは150°以上、さらに好ましくは160°以上である。
【0037】
前記条件(2)は、開口部12及び形状16を規定する前記略n角形の全ての辺は、互いに平行ではないことを規定する。条件(2)により、凹部13内で対向する位置関係にある2つの反射面14で反射する光同士の衝突を最小限とすることができる。従って、条件(2)を満たす限り、反射光同士の衝突が減少し、明るさと光の均一性を向上させることができる。
【0038】
開口部12及び形状16を規定する前記略n角形は、上記条件(1)、(2)を満たす限り、対称な形状であっても、非対称な形状であってもよいが、反射光同士の衝突が減少し、明るさと光の均一性を向上させるという観点からは、非対称であることが好ましい。
【0039】
半導体装置用樹脂成形体1において、凹部13の底面15が、凹部13の開口部12と略相似形の略n角形であることが好ましい。「略相似形の略n角形」の意義は、上記と同様である。
また、凹部13の開口部12の面積は、凹部13の底面15の面積より広いことが好ましい。さらに、形状16の面積が、凹部13の開口部12から底面15にかけて漸減することが好ましい。
当該好ましい実施形態は、凹部13における底面15から開口部12にかけて凹形状が広がるように、n枚の反射面14が傾斜している態様を規定するものである。当該好ましい実施形態により、光は上方に反射しやすくなり、且つ反射光同士の衝突を減少させ、明るさと光の均一性を向上させることができる。
【0040】
図4~6は、本発明の他の実施形態に係る光半導体装置用樹脂成形体2を表す模式図である。図4は当該実施形態に係る光半導体装置用樹脂成形体2の平面図であり、図5図4の線Y-Y’点線に沿った光半導体装置用樹脂成形体2の断面図であり、図6は光半導体装置用樹脂成形体2の裏面図である。
【0041】
本実施形態にかかる光半導体装置用樹脂成形体2は、半導体装置用樹脂成形体1と互いに離隔している第1リード21および第2リード22と一体化(一体成形)されたものである。すなわち、光半導体装置用樹脂成形体2は、例えばインサート成形により、第1リード21および第2リード22を部分的に内部に取り込みつつ成形された樹脂体である。
光半導体装置用樹脂成形体2において、第1リード21及び第2リード22は、光半導体装置における外部接続用の一対の端子をなすものである。
【0042】
リード21(第1リード)は、図4~6に示すように、光半導体装置用樹脂成形体2の凹部13に臨んで凹部13の底面15の一部をなす露出面21a(第1露出面)を有し、且つ、凹部13とは反対の側にて露出している露出面21b(第2露出面)を有する。また、リード21は、光半導体装置用樹脂成形体2から外部に延出している電極部21cを有する。光半導体装置用樹脂成形体2からの電極部21cの延出長さは、例えば0.1~2mmである。このような態様で、リード21は光半導体装置用樹脂成形体2によって部分的に被覆されつつ保持されている。
【0043】
リード22(第2リード)は、図4~6に示すように、光半導体装置用樹脂成形体2の凹部13の底面15上の露出面21aと離隔する位置に凹部13に臨む露出面22a(第3露出面)を有し、且つ、凹部13とは反対の側にて露出している露出面22b(第4露出面)を有する。また、リード22は、光半導体装置用樹脂成形体2から外部に延出している電極部22cを有する。光半導体装置用樹脂成形体2からの電極部22cの延出長さは、例えば0.1~2mmである。このような態様で、リード22は光半導体装置用樹脂成形体2によって部分的に被覆されつつ保持されている。
【0044】
本実施体態様のリード21及びリード22の上記構成は、電極(露出面21a、露出面21b、露出面22a、及び露出面22bなど)の面積を大きくできるので、熱を逃がしやすく、熱抵抗を小さくできる点で好ましい。
【0045】
リード21及びリード22は、それぞれ、導電性を有する金属材料よりなる。リード用の金属材料としては、例えば、Cu、Cu合金、および42%Ni-Fe合金が挙げられる。また、リード21及びリード22の厚さは、それぞれ、例えば0.1~0.3mmである。このようなリード21及びリード22は、例えば、金属プレートに対するエッチング加工や打ち抜き加工を経て形成することができる。リード21及びリード22の表面は、Agめっき処理など所定のめっき処理が施されていてもよい。
【0046】
光半導体装置用樹脂成形体2において、リード21およびリード22における凹部13内での露出面21a及び露出面22aの面積は、凹部13内での底面15の面積の好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上である。このような構成は、電極の面積を大きくなり、熱を逃がしやすく、熱抵抗を小さくできる点で好ましい。露出面21a及び露出面22aの面積は、凹部13内での底面15の面積の好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。このような構成は、露出面21a及び露出面22aを十分に離隔すると共に、凹部13の底面15の一部に光反射性を有する領域の面積を確保するうえで好適であり、ひいては、光半導体装置において高い光利用効率を実現するうえで好適である。
【0047】
このような光半導体装置用樹脂成形体2は、例えば次のようないわゆるラインモールド方式で製造される。まず、所定のリードフレームを用意する。このリードフレームは、平面視矩形の枠体と、その枠体内に一列に並ぶ光半導体装置形成区域ごとの、所定のパターン形状を有するパターン部とを有する。パターン部は、上述のリード21及びリード22をなすこととなるリード部、リード部と枠体とを連結する連結部、および、リード部間を連結する連結部を含む。このようなリードフレームは、例えばエッチング加工によって作製することが可能である。次に、リードフレームの光半導体装置形成区域ごとに上述の光半導体装置用樹脂成形体2を形成する。具体的には、リードフレームにおける複数の光半導体装置形成区域にわたって複数の光半導体装置用樹脂成形体2を一括的に成形するための成形面を有する一組の金型について前記リードフレームを介在させつつ型締めした後、所定の温度条件および圧力条件の下、光半導体装置用樹脂成形体2形成用の上述の白色顔料含有の熱硬化性樹脂組成物を、金型内に供給して成形する(インサート成形)。これにより、各光半導体装置形成区域に、上述の凹部13を伴う光半導体装置用樹脂成形体2が形成される。成形法としては、例えばトランスファ成形やインジェクション成形が採用される。
【0048】
図7及び8は、本発明の一の実施形態に係る光半導体装置3を表す模式図である。図7は当該実施形態に係る光半導体装置3の平面図であり、図8図7の線Z-Z’点線に沿った光半導体装置3の断面図である。
【0049】
本実施形態に係る光半導体装置3は、光半導体素子31と、光半導体装置用樹脂成形体2を備え、光半導体素子31が、リード21の露出面21aに搭載され、且つリード22の露出面22aにボンディングワイヤ32を介して接続されているものである。光半導体素子31の凹部13は、透明樹脂部33で封止されていてもよい。光半導体装置3は、本実施形態では、いわゆるモールドアレイパッケージ(MAP)の形態で形成されるものである。
【0050】
光半導体素子31は、発光機能を有する素子であって、本実施形態では具体的には発光ダイオード(LED)素子である。LED素子を構成するための半導体材料としては、例えば、GaAlAs、AlInGaP、InGaN、GaP、GaAs、およびGaAsPが挙げられる。また、本実施形態では、光半導体素子31は、その図8中の上面側と下面側にそれぞれ電極部(図示せず)を有する。
【0051】
光半導体素子31は、光半導体装置3の凹部13に充填されて硬化された透明樹脂体であり、透明性を有する半導体用封止材料よりなる。そのような封止材料としては、例えば、エポキシ系封止材およびシリコーン系封止材が挙げられる。エポキシ系封止材の市販品としては、例えば、株式会社ダイセル製の「CELVENUS W0973」および「CELVENUS W0925」が挙げられる。シリコーン系封止材の市販品としては、例えば、株式会社ダイセル製の「CELVENUS A2045」および「CELVENUS A0246」が挙げられる。
【0052】
このような光半導体装置3は、上述のラインモールド方式で製造される。まず、上述の方法により光半導体装置用樹脂成形体2を製造する。その後、各光半導体装置形成区域の凹部13において、リード21の上述の露出面21aに対する導電性接合材料を介しての光半導体素子31のマウント、当該光半導体素子31とリード22の上述の露出面22aとのワイヤボンディング、および、上述の透明樹脂部33の例えばポッティングによる形成を経る。次に、光半導体装置形成区域ごとに、リードフレームにおけるパターン部の上述の連結部を切断してリード21及びリード22の分離を行い、光半導体装置3を単離する。例えば以上のようにして、光半導体装置3を製造することができる。
【0053】
光半導体装置3の駆動時には、リード21及びリード22を介して光半導体素子31に所定の電力が供給され、これによって当該光半導体素子31が発光する。光半導体素子31からの出射光の一部は光半導体装置用樹脂成形体2の凹部13内での反射を経て、光半導体素子31からの出射光の他の一部は凹部13内での反射を経ずに、透明樹脂部33を通過して凹部13外に出射される。
【0054】
上述の通り、光半導体素子31からの出射光の多くは、凹部13の反射面14での反射を繰り返して、凹部13外に出射される。本実施形態の光半導体装置3は、反射光同士の衝突を減少させ、明るさと光の均一性を向上させることができる点で好適である。
【0055】
光半導体装置3において、光半導体素子31は、凹部13の底面15の略中央部に接続されていることが好ましい。この構成は、光半導体素子31からの出射光が、均一にn枚の反射面14で反射され、反射光同士の衝突を減少させ、明るさと光の均一性を向上させるという観点から好ましい。
【0056】
光半導体素子31が底面15の略中央部に接続されているとは、底面15の中心(重心)と光半導体素子31の全面の少なくとも一部が重なるように配置することを意図するものであり、光半導体素子31の中心(重心)と底面15の中心(重心)とが一致するように配置することがより好ましい。
【0057】
光半導体素子31の凹部13の内壁を構成するn枚の反射面14において、開口部12及び形状16を規定する前記略n角形が前記条件(1)及び(2)を満たすことにより、光半導体素子31から発せられた光はn枚の反射面14により非常に複雑な反射を繰り返して、凹部13の外部に出射される。従って、反射光同士の衝突による減衰(ロス)は最小限に抑えられ、より明るい光が出射される。また、反射光は凹部13内部の隅々まで行き渡り、デッドスペースのない均一な光として出射される。
【符号の説明】
【0058】
1、2 光半導体装置用樹脂成形体
10 表面
11 裏面
12 凹部の開口部
13 凹部
14 凹部内壁の反射面
15 凹部の底面
16 開口部に平行な面と凹部の内壁で形成される形状
21 リード(第1リード)
22 リード(第2リード)
21a 露出面(第1露出面)
21b 露出面(第2露出面)
22a 露出面(第3露出面)
22b 露出面(第4露出面)
21c,22c 電極部
3 光半導体装置
31 光半導体素子
32 ボンディングワイヤ
33 透明樹脂部
図1
図2
図3
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図5
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図11