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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】作業支援システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20231211BHJP
   G01S 17/93 20200101ALI20231211BHJP
   G01S 19/43 20100101ALI20231211BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20231211BHJP
   G06Q 50/02 20120101ALI20231211BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20231211BHJP
   A01C 21/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
A01B69/00 303D
G01S17/93
G01S19/43
A01G7/00 603
G06Q50/02
G01N21/27 A
A01C21/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019196599
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021069294
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 文典
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 卓也
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-114138(JP,A)
【文献】特開2019-174347(JP,A)
【文献】再公表特許第2019/003400(JP,A1)
【文献】再公表特許第2018/096840(JP,A1)
【文献】特開2019-046149(JP,A)
【文献】特開2017-216524(JP,A)
【文献】特開2001-120042(JP,A)
【文献】特開2019-129178(JP,A)
【文献】特開2016-049102(JP,A)
【文献】特開2001-025306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G01S 17/93
G01S 19/43
A01G 7/00
G06Q 50/02
G01N 21/27
A01C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場で作業する作業車両に搭載され、当該作業車両の周辺に設定された撮像範囲の可視光を撮像してカラー画像情報を取得する撮像ユニットと、
前記作業車両に搭載され、当該作業車両の周辺に設定された測定範囲に対する近赤外光の投受光により近赤外光の反射強度を含む測定情報を取得し、取得した前記測定情報に基づいて障害物を検出する障害物センサと、
前記カラー画像情報と前記測定情報とに基づいて前記作業車両による作業を支援する作業支援部と、
前記作業車両の位置を測定して位置情報を取得する測位ユニットと、
前記カラー画像情報と前記測定情報とに基づいて前記圃場で栽培された作物の生育情報を取得する生育情報取得部と、
前記生育情報を前記位置情報に関連付けて記憶する記憶部と、を備えている作業支援システム。
【請求項2】
前記障害物センサは、前記測定範囲に存在する測定対象物までの距離を3次元で測定するライダーセンサであり、
前記生育情報取得部は、前記ライダーセンサの距離情報に基づいて、前記生育情報として作物の草丈値を取得する請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項3】
前記生育情報取得部は、前記カラー画像情報から可視赤色光の反射率を取得し、かつ、前記測定情報から前記近赤外光の反射率を取得して、前記生育情報として正規化植生指標を取得する請求項1又は2に記載の作業支援システム。
【請求項4】
前記作業支援部には、前記位置情報に基づいて、前記圃場に応じて生成された目標経路に従って前記作業車両を自動走行させる自動走行制御部が含まれており、
前記生育情報取得部は、前記作業車両の自動走行に伴って、前記圃場内を複数に区画して設定された所定区域ごとの前記生育情報を取得する請求項1~3のいずれか一項に記載の作業支援システム。
【請求項5】
前記生育情報取得部は、前記所定区域ごとの前記生育情報に基づいて前記所定区域ごとの施肥量を算出し、
前記自動走行制御部は、前記作業車両の自動走行にて施肥作業を行う場合には、前記位置情報と前記施肥量とに基づいて前記所定区域ごとの施肥量を自動調節する請求項4に記載の作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタや乗用管理機などの作業車両による作業を支援する作業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両の一例であるトラクタにおいては、トラクタに、作物(植物)の生育情報(生育状況に関する情報)を取得する専用の植物用センサ装置を設置することで、圃場でのトラクタの走行に伴って、圃場で栽培された作物の生育状況を測定するように構成されたものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の植物用センサ装置は、生育状況測定対象の作物が栽培されている同一の照射領域に第1測定光と第2測定光とを照射し、その生育状況測定対象からの第1測定光及び第2測定光の反射光を取得する。そして、その測定光及び反射光を用いて、生育状況の測定対象となる作物の生育情報として、分光植生指標の一例である正規化植生指標(NDVI:Normalized Difference Vegetation Index)や草丈値を取得する。
【0004】
これにより、特許文献1に記載の技術においては、植物用センサ装置が取得した正規化植生指標や草丈値に基づいて作物の生育状況に応じた肥料の散布量を求めることが可能になっている。その結果、トラクタに肥料散布機が搭載された散布作業時には、作物に対する肥料の散布量を作物の生育状況に応じて調節することができる、といった作業支援が可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6526474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術においては、前述した作業支援を可能にするために、生育情報の一例である正規化植生指標や草丈値などを取得する専用の植物用センサ装置をトラクタに設置することから、作業支援を可能にする上においてコストの高騰や構成の複雑化などを招くことになる。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、作物の生育情報を利用した作業支援を、コストの高騰や構成の複雑化などを抑制しながら行えるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、作業支援システムにおいて、
圃場で作業する作業車両に搭載され、当該作業車両の周辺に設定された撮像範囲の可視光を撮像してカラー画像情報を取得する撮像ユニットと、
前記作業車両に搭載され、当該作業車両の周辺に設定された測定範囲に対する近赤外光の投受光により近赤外光の反射強度を含む測定情報を取得し、取得した前記測定情報に基づいて障害物を検出する障害物センサと、
前記カラー画像情報と前記測定情報とに基づいて前記作業車両による作業を支援する作業支援部と、
前記作業車両の位置を測定して位置情報を取得する測位ユニットと、
前記カラー画像情報と前記測定情報とに基づいて前記圃場で栽培された作物の生育情報を取得する生育情報取得部と、
前記生育情報を前記位置情報に関連付けて記憶する記憶部と、を備えている点にある。
【0009】
本構成によれば、作業支援部は、例えば、撮像ユニットのカラー画像情報に基づいて、作業車両の周囲画像を表示部に表示させて作業車両の周囲の状況を視認し易くする、といった作業支援が可能になる。又、作業支援部は、例えば、障害物センサによる障害物の検出に基づいて、作業車両の周囲に障害物が存在することを報知して障害物との衝突を回避し易くする、といった作業支援が可能になる。そして、障害物に関する作業支援においては、測定情報に近赤外光の反射強度が含まれていることにより、障害物センサが、その近辺に発生した反射強度が非常に弱い埃や霧などの浮遊物を障害物として誤検出する虞を回避することができる。
【0010】
生育情報取得部は、作業支援部が上記の作業支援を可能にするために取得したカラー画像情報と測定情報とを利用して作物の生育情報を取得する。記憶部は、生育情報取得部が取得した作物の生育情報を測位ユニットの位置情報に関連付けて記憶する。
【0011】
これにより、例えば、記憶部において位置情報に関連付けて記憶された作物の生育情報を基に、圃場における所定区域ごとの作物の生育状況を評価することができ、評価した所定区域ごとの作物の生育状況に基づいて、所定区域ごとの作物に対する施肥量を算出することができる。そして、肥料散布用の作業車両による肥料散布作業を行う場合には、算出した施肥量に基づいて、所定区域ごとの作物に対する肥料の散布量を調節するようにすれば、圃場における所定区域ごとの作物の生育状態のばらつきを改善することができ、圃場で栽培される作物の品質向上や収穫量の安定化などを図ることができる。
【0012】
つまり、作業車両の周囲の状況を視認し易くする、及び、障害物との衝突を回避し易くする、といった作業支援を可能にするために備えられた撮像ユニットと障害物センサとを利用することで、作物の生育情報を取得するための専用のセンサを備えることなく作物の生育情報を取得することができる。その結果、作物の生育情報を取得することで可能になる、作物の品質向上や収穫量の安定化などを図るための作業支援を、コストの高騰や構成の複雑化などを抑制しながら行うことができる。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、
前記障害物センサは、前記測定範囲に存在する測定対象物までの距離を3次元で測定するライダーセンサであり、
前記生育情報取得部は、前記ライダーセンサの距離情報に基づいて、前記生育情報として作物の草丈値を取得する点にある。
【0014】
本構成によれば、ライダーセンサは測距精度が高いことから、作物の生育情報として精度の高い作物の草丈値を取得することができる。そして、取得した作物の草丈値を含む作物の生育情報を基に、圃場における所定区域ごとの作物の生育状況をより精度良く評価することができ、評価した所定区域ごとの作物の生育状況に基づいて、所定区域ごとの作物に対する適正な施肥量をより精度良く算出することができる。
【0015】
その結果、作物の品質向上や収穫量の安定化などを図るための作業支援を、精度の高い作物の草丈値を含む作物の生育情報に基づいてより適正に行うことができる。
【0016】
本発明の第3特徴構成は、
前記生育情報取得部は、前記カラー画像情報から可視赤色光の反射率を取得し、かつ、前記測定情報から前記近赤外光の反射率を取得して、前記生育情報として正規化植生指標を取得する点にある。
【0017】
本構成によれば、作物の生育情報として代表的な正規化植生指標を含む作物の生育情報を基に、圃場における所定区域ごとの作物の生育状況を適正に評価することができ、評価した所定区域ごとの作物の生育状況に基づいて、所定区域ごとの作物に対する適正な施肥量を算出することができる。
【0018】
その結果、作物の品質向上や収穫量の安定化などを図るための作業支援を、正規化植生指標を含む作物の生育情報に基づいて適正に行うことができる。
【0019】
本発明の第4特徴構成は、
前記作業支援部には、前記位置情報に基づいて、前記圃場に応じて生成された目標経路に従って前記作業車両を自動走行させる自動走行制御部が含まれており、
前記生育情報取得部は、前記作業車両の自動走行に伴って、前記圃場内を複数に区画して設定された所定区域ごとの前記生育情報を取得する点にある。
【0020】
本構成によれば、圃場において作業車両を手動走行させる手間を要することなく、圃場内における所定区域ごとの作物の生育情報を取得することができる。
【0021】
その結果、作物の生育情報を取得するための労力を不要にしながら、作物の品質向上や収穫量の安定化などを図るための作業支援を良好に行うことができる。
【0022】
本発明の第5特徴構成は、
前記生育情報取得部は、前記所定区域ごとの前記生育情報に基づいて前記所定区域ごとの施肥量を算出し、
前記自動走行制御部は、前記作業車両の自動走行にて施肥作業を行う場合には、前記位置情報と前記施肥量とに基づいて前記所定区域ごとの施肥量を自動調節する点にある。
【0023】
本構成によれば、圃場における所定区域ごとの作物の生育情報に応じた施肥作業を、作業車両の自動走行によって行うことができる。
【0024】
その結果、ユーザにかかる労力を大幅に削減しながら、作物の品質向上や収穫量の安定化などを図るための作業支援を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】作業車両用の自動走行システムの概略構成を示す図
図2】各カメラの撮像範囲を示すトラクタの平面図
図3】各障害物センサの測定範囲などを示すトラクタの側面図
図4】各障害物センサの測定範囲などを示すトラクタの平面図
図5】自動走行用の目標経路の一例を示す平面図
図6】作業車両用の自動走行システムの概略構成を示すブロック図
図7】障害物検出システムなどの概略構成を示すブロック図
図8】各カメラの搭載位置と車体座標原点及び距離算出基準点との位置関係などを示す平面図
図9】第1障害物センサの距離画像における障害物の検出範囲と非検出範囲とを示す図
図10】第2障害物センサの距離画像における作業装置下降状態での障害物の検出範囲と非検出範囲とを示す図
図11】第2障害物センサの距離画像における作業装置上昇状態での障害物の検出範囲と非検出範囲とを示す図
図12】障害物情報取得制御における情報統合処理部の制御作動を示すフローチャート
図13】第1衝突回避制御における障害物用制御部の制御作動を示すフローチャート
図14】汚れ対応制御処理における自動走行制御部の制御作動を示すフローチャート
図15】圃場において複数に区画設定された生育情報取得区域を示す平面図
図16】撮像ユニットの前カメラが撮像したカラー画像情報から生成された車体前方のカラー画像の一例を示す図
図17】第1障害物センサの測定情報から生成された車体前方の距離画像の一例を示す図
図18】第1障害物センサの測定情報から生成された車体前方の近赤外画像の一例を示す図
図19】生育情報取得制御における生育情報取得部の制御作動を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態の一例を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1~5に示すように、本実施形態に例示された作業車両Vは、走行車体の一例であるトラクタ1と、その後部にリンク機構2を介して着脱可能に連結された作業装置の一例であるロータリ耕耘装置3とを有している。これにより、この作業車両Vは、ロータリ耕耘装置3による耕耘作業が可能なロータリ耕耘仕様に構成されている。ロータリ耕耘装置3は、トラクタ1の後部に、リンク機構2を介して昇降可能かつローリング可能に連結されている。
【0028】
尚、走行車体は、トラクタ1以外の、最低地上高が高く設定された乗用管理機などであってもよい。作業装置は、ロータリ耕耘装置3以外の、プラウ、ディスクハロー、カルチベータ、サブソイラ、播種装置、散布装置、草刈装置、などであってもよい。
【0029】
トラクタ1は、作業車両用の自動走行システムを使用することにより、図5に示す圃場Aなどにおいて自動走行させることができる。図1図6に示すように、作業車両用の自動走行システムには、トラクタ1に搭載された自動走行ユニット4、及び、自動走行ユニット4と無線通信可能に通信設定された無線通信機器の一例である携帯通信端末5、などが含まれている。携帯通信端末5には、自動走行に関する各種の情報表示や入力操作などを可能にするマルチタッチ式の表示デバイス(例えば液晶パネル)50などが備えられている。
【0030】
尚、携帯通信端末5には、タブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォンなどを採用することができる。又、無線通信には、Wi-Fi(登録商標)などの無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信などを採用することができる。
【0031】
図1~3、図6に示すように、トラクタ1には、駆動可能で操舵可能な左右の前輪10、駆動可能な左右の後輪11、搭乗式の運転部12を形成するキャビン13、コモンレールシステムを有する電子制御式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)14、エンジン14などを覆うボンネット15、及び、エンジン14からの動力を変速する変速ユニット16、などが備えられている。尚、エンジン14には、電子ガバナを有する電子制御式のガソリンエンジンなどを採用してもよい。
【0032】
図6に示すように、トラクタ1には、左右の前輪10を操舵する全油圧式のパワーステアリングユニット17、左右の後輪11を制動するブレーキユニット18、ロータリ耕耘装置3への伝動を断続する電子油圧制御式の作業クラッチユニット19、ロータリ耕耘装置3を昇降駆動する電子油圧制御式の昇降駆動ユニット20、ロータリ耕耘装置3のロール方向への駆動を可能にする電子油圧制御式のローリングユニット21、トラクタ1における各種の設定状態や各部の動作状態などを検出する各種のセンサやスイッチなどを含む車両状態検出機器22、及び、各種の制御部を有する車載制御ユニット23、などが備えられている。尚、パワーステアリングユニット17には、操舵用の電動モータを有する電動式を採用してもよい。
【0033】
図1図3に示すように、運転部12には、手動操舵用のステアリングホイール25と、搭乗者用の座席26と、各種の情報表示や入力操作などを可能にする操作端末27とが備えられている。図示は省略するが、運転部12には、アクセルレバーや変速レバーなどの操作レバー類、及び、アクセルペダルやクラッチペダルなどの操作ペダル類、などが備えられている。操作端末27には、マルチタッチ式の液晶モニタやISOBUS(イソバス)対応のバーチャルターミナルなどを採用することができる。
【0034】
図示は省略するが、変速ユニット16には、エンジン14からの動力を変速する電子制御式の無段変速装置、及び、無段変速装置による変速後の動力を前進用と後進用とに切り換える電子油圧制御式の前後進切換装置、などが含まれている。無段変速装置には、静油圧式無段変速装置(HST:Hydro Static Transmission)よりも伝動効率が高い油圧機械式無段変速装置の一例であるI-HMT(Integrated Hydro-static Mechanical Transmission)が採用されている。前後進切換装置には、前進動力断続用の油圧クラッチと、後進動力断続用の油圧クラッチと、それらに対するオイルの流れを制御する電磁バルブとが含まれている。
【0035】
尚、無段変速装置には、I-HMTの代わりに、油圧機械式無段変速装置の一例であるHMT(Hydraulic Mechanical Transmission)、静油圧式無段変速装置、又は、ベルト式無段変速装置、などを採用してもよい。又、変速ユニット16には、無段変速装置の代わりに、複数の変速用の油圧クラッチとそれらに対するオイルの流れを制御する複数の電磁バルブとを有する電子油圧制御式の有段変速装置が含まれていてもよい。
【0036】
図示は省略するが、ブレーキユニット18には、左右の後輪11を個別に制動する左右のブレーキ、運転部12に備えられた左右のブレーキペダルの踏み込み操作に連動して左右のブレーキを作動させるフットブレーキ系、運転部12に備えられたパーキングレバーの操作に連動して左右のブレーキを作動させるパーキングブレーキ系、及び、左右の前輪10の設定角度以上の操舵に連動して旋回内側のブレーキを作動させる旋回ブレーキ系、などが含まれている。
【0037】
車両状態検出機器22は、トラクタ1の各部に備えられた各種のセンサやスイッチなどの総称である。図7に示すように、車両状態検出機器22には、トラクタ1の車速を検出する車速センサ22A、前後進切り換え用のリバーサレバーの操作位置を検出するリバーサセンサ22B、及び、前輪10の操舵角を検出する舵角センサ22C、が含まれている。又、図示は省略するが、車両状態検出機器22には、エンジン14の出力回転数を検出する回転センサ、アクセルレバーの操作位置を検出するアクセルセンサ、及び、変速レバーの操作位置を検出する変速センサ、などが含まれている。
【0038】
図6~7に示すように、車載制御ユニット23には、エンジン14に関する制御を行うエンジン制御部23A、トラクタ1の車速や前後進の切り換えなどの変速ユニット16に関する制御を行う変速ユニット制御部23B、ステアリングに関する制御を行うステアリング制御部23C、ロータリ耕耘装置3などの作業装置に関する制御を行う作業装置制御部23D、操作端末27などに対する表示や報知に関する制御を行う表示制御部23E、自動走行に関する制御を行うことで作業支援部として機能する自動走行制御部23F、及び、圃場Aに応じて生成された自動走行用の目標経路P(図5参照)などを記憶する不揮発性の車載記憶部23G、などが含まれている。各制御部23A~23Fは、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。各制御部23A~23Fは、CAN(Controller Area Network)を介して相互通信可能に接続されている。
【0039】
尚、各制御部23A~23Fの相互通信には、CAN以外の通信規格や次世代通信規格である、例えば、車載EthernetやCAN-FD(CAN with FLexible Data rate)などを採用してもよい。
【0040】
エンジン制御部23Aは、アクセルセンサからの検出情報と回転センサからの検出情報とに基づいて、エンジン回転数をアクセルレバーの操作位置に応じた回転数に維持するエンジン回転数維持制御、などを実行する。
【0041】
変速ユニット制御部23Bは、変速センサからの検出情報と車速センサ22Aからの検出情報などに基づいて、トラクタ1の車速が変速レバーの操作位置に応じた速度に変更されるように無段変速装置の作動を制御する車速制御、及び、リバーサセンサ22Bからの検出情報に基づいて前後進切換装置の伝動状態を切り換える前後進切り換え制御、などを実行する。車速制御には、変速レバーが零速位置に操作された場合に、無段変速装置を零速状態まで減速制御してトラクタ1の走行を停止させる減速停止処理が含まれている。
【0042】
作業装置制御部23Dには、運転部12に備えられたPTOスイッチの操作などに基づいて作業クラッチユニット19の作動を制御する作業クラッチ制御、運転部12に備えられた昇降スイッチの操作や高さ設定ダイヤルの設定値などに基づいて昇降駆動ユニット20の作動を制御する昇降制御、及び、運転部12に備えられたロール角設定ダイヤルの設定値などに基づいてローリングユニット21の作動を制御するローリング制御、などを実行する。PTOスイッチ、昇降スイッチ、高さ設定ダイヤル、及び、ロール角設定ダイヤルは、車両状態検出機器22に含まれている。
【0043】
図6に示すように、トラクタ1には、トラクタ1の位置や方位などを測定する測位ユニット30が備えられている。測位ユニット30には、衛星測位システムの一例であるGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用してトラクタ1の位置と方位とを測定する衛星航法装置31、及び、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサなどを有してトラクタ1の姿勢や方位などを測定する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)32、などが含まれている。GNSSを利用した測位方法には、DGNSS(Differential GNSS:相対測位方式)やRTK-GNSS(Real Time Kinematic GNSS:干渉測位方式)などがある。本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK-GNSSが採用されている。そのため、図1に示すように、圃場周辺の既知位置には、RTK-GNSSによる測位を可能にする基地局6が設置されている。
【0044】
図1図6に示すように、トラクタ1と基地局6とのそれぞれには、測位衛星7(図1参照)から送信された電波を受信するGNSSアンテナ33,60、及び、トラクタ1と基地局6との間における測位情報を含む各情報の無線通信を可能にする通信モジュール34,61、などが備えられている。これにより、測位ユニット30の衛星航法装置31は、トラクタ1のGNSSアンテナ33が測位衛星7からの電波を受信して得た測位情報と、基地局6のGNSSアンテナ60が測位衛星7からの電波を受信して得た測位情報とに基づいて、トラクタ1の位置及び方位を高い精度で測定することができる。又、測位ユニット30は、衛星航法装置31と慣性計測装置32とを有することにより、トラクタ1の位置、方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高精度に測定することができる。
【0045】
このトラクタ1において、測位ユニット30の慣性計測装置32、GNSSアンテナ33、及び、通信モジュール34は、図1に示すアンテナユニット35に含まれている。アンテナユニット35は、キャビン13の前面側における上部の左右中央箇所に配置されている。
【0046】
図示は省略するが、トラクタ1の位置を特定するときの車体位置は後輪車軸中心位置に設定されている。車体位置は、測位ユニット42からの測位情報、及び、トラクタ1におけるGNSSアンテナ45の取り付け位置と後輪車軸中心位置との位置関係を含む車体情報から求めることができる。
【0047】
図6に示すように、携帯通信端末5には、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどを有する端末制御ユニット51などが備えられている。端末制御ユニット51には、表示デバイス50などに対する表示や報知に関する制御を行う表示制御部51A、自動走行用の目標経路Pを生成する目標経路生成部51B、及び、目標経路生成部51Bが生成した目標経路Pなどを記憶する不揮発性の端末記憶部51C、などが含まれている。端末記憶部51Cには、目標経路Pの生成に使用する各種の情報として、トラクタ1の旋回半径やロータリ耕耘装置3などの作業装置の作業幅又は作業畝数などの車体情報、及び、前述した測位情報から得られる圃場情報、などが記憶されている。圃場情報には、圃場Aの形状や大きさなどを特定する上において、トラクタ1を圃場Aの外周縁に沿って走行させたときにGNSSを利用して取得した圃場Aにおける複数の形状特定地点(形状特定座標)となる4つの角部地点Cp1~Cp4(図5参照)、及び、それらの角部地点Cp1~Cp4を繋いで圃場Aの形状や大きさなどを特定する矩形状の形状特定線SL(図5参照)、などが含まれている。
【0048】
図6に示すように、トラクタ1及び携帯通信端末5には、車載制御ユニット23と端末制御ユニット51との間における測位情報などを含む各情報の無線通信を可能にする通信モジュール28,52が備えられている。トラクタ1の通信モジュール28は、携帯通信端末5との無線通信にWi-Fiが採用される場合には、通信情報をCANとWi-Fiとの双方向に変換する変換器として機能する。端末制御ユニット51は、車載制御ユニット23との無線通信にてトラクタ1の位置や方位などを含むトラクタ1に関する各種の情報を取得することができる。これにより、携帯通信端末5の表示デバイス50にて、目標経路Pに対するトラクタ1の位置や方位などを含む各種の情報を表示させることができる。
【0049】
目標経路生成部51Bは、車体情報に含まれたトラクタ1の旋回半径や作業装置の作業幅又は作業畝数、及び、圃場情報に含まれた圃場Aの形状や大きさ、などに基づいて目標経路Pを生成する。
【0050】
例えば、図5に示すように、矩形状の圃場Aにおいて、自動走行の開始位置p1と終了位置p2とが設定され、トラクタ1の作業走行方向が圃場Aの短辺に沿う方向に設定されている場合は、目標経路生成部51Bは、先ず、圃場Aを、前述した4つの角部地点Cp1~Cp4と矩形状の形状特定線SLとに基づいて、圃場Aの外周縁に隣接するマージン領域A1と、マージン領域A1の内側に位置する作業可能領域A2とに区分けする。
【0051】
次に、目標経路生成部51Bは、トラクタ1の旋回半径や作業装置の作業幅又は作業畝数などに基づいて、作業可能領域A2を、作業可能領域A2における各長辺側の端部に設定される一対の端部領域A2aと、一対の端部領域A2aの間に設定される中央側領域A2bとに区分けする。その後、目標経路生成部51Bは、中央側領域A2bに、圃場Aの長辺に沿う方向に作業幅又は作業畝数に応じた所定間隔を置いて並列に配置される複数の並列経路P1を生成する。又、目標経路生成部51Bは、各端部領域A2aに、複数の並列経路P1をトラクタ1の走行順に接続する複数の接続経路P2を生成する。
【0052】
これにより、目標経路生成部51Bは、図5に示す圃場Aに設定された自動走行の開始位置p1から終了位置p2にわたってトラクタ1を自動走行させることが可能な目標経路Pを生成することができる。
【0053】
図5に示す圃場Aにおいて、マージン領域A1は、トラクタ1が作業可能領域A2の端部を自動走行するときに、作業装置などが圃場Aに隣接する畦や柵などの他物に接触するのを防止するために、圃場Aの外周縁と作業可能領域A2との間に確保された領域である。各端部領域A2aは、トラクタ1が現在走行中の並列経路P1から次の並列経路P1に向けて接続経路P2に従って方向転換移動するときの方向転換領域である。中央側領域A2bは、トラクタ1が各並列経路P1に従って作業状態で自動走行する作業領域である。
【0054】
図5に示す目標経路Pにおいて、各並列経路P1は、トラクタ1がロータリ耕耘装置3などの作業装置による作業を行いながら自動走行する作業経路である。各接続経路P2は、トラクタ1が作業装置による作業を行わずに自動走行する非作業経路である。各並列経路P1の始端位置p3は、トラクタ1が作業装置による作業を開始する作業開始位置である。各並列経路P1の終端位置p4は、トラクタ1が作業装置による作業を停止する作業停止位置である。各並列経路P1の始端位置p3のうち、トラクタ1の走行順位が一番目に設定された並列経路P1の始端位置p3が自動走行の開始位置p1である。そして、残りの並列経路P1の始端位置p3が、接続経路P2の終端位置との接続位置である。又、トラクタ1の走行順位が最後に設定された並列経路P1の終端位置p4が自動走行の終了位置p2である。そして、残りの並列経路P1の終端位置p4が、接続経路P2の始端位置との接続位置である。
【0055】
尚、図5に示す目標経路Pはあくまでも一例であり、目標経路生成部51Bは、トラクタ1の機種や作業装置の種類などに応じて異なる車体情報、及び、圃場Aに応じて異なる圃場Aの形状や大きさなどの圃場情報、などに基づいて、それらに適した種々の目標経路Pを生成することができる。
【0056】
目標経路Pは、車体情報や圃場情報などに関連付けされた状態で端末記憶部51Cに記憶されており、携帯通信端末5の表示デバイス50にて表示することができる。目標経路Pには、各並列経路P1におけるトラクタ1の目標車速、各接続経路P2におけるトラクタ1の目標車速、各並列経路P1における前輪操舵角、及び、各接続経路P2における前輪操舵角、などが含まれている。
【0057】
端末制御ユニット51は、車載制御ユニット23からの送信要求指令に応じて、端末記憶部51Cに記憶されている圃場情報や目標経路Pなどを車載制御ユニット23に送信する。車載制御ユニット23は、受信した圃場情報や目標経路Pなどを車載記憶部23Gに記憶する。目標経路Pの送信に関しては、例えば、端末制御ユニット51が、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階において、目標経路Pの全てを端末記憶部51Cから車載制御ユニット23に一挙に送信するようにしてもよい。又、端末制御ユニット51が、目標経路Pを所定距離ごとの複数の分割経路情報に分割して、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階からトラクタ1の走行距離が所定距離に達するごとに、トラクタ1の走行順位に応じた所定数の分割経路情報を端末記憶部51Cから車載制御ユニット23に逐次送信するようにしてもよい。
【0058】
車載制御ユニット23において、自動走行制御部23Fには、車両状態検出機器22に含まれた各種のセンサやスイッチなどからの検出情報が、変速ユニット制御部23Bやステアリング制御部23Cなどを介して入力されている。これにより、自動走行制御部23Fは、トラクタ1における各種の設定状態や各部の動作状態などを監視することができる。
【0059】
自動走行制御部23Fは、搭乗者や管理者などのユーザにて、自動走行開始条件を満たすための各種の手動設定操作が行われて、トラクタ1の走行モードが手動走行モードから自動走行モードに切り換えられた状態において、携帯通信端末5の表示デバイス50が操作されて自動走行の開始が指令された場合に、測位ユニット30にてトラクタ1の位置や方位などを取得しながら目標経路Pに従ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を開始する。
【0060】
自動走行制御部23Fは、自動走行制御の実行中に、例えば、ユーザにより携帯通信端末5の表示デバイス50が操作されて自動走行の終了が指令された場合や、運転部12に搭乗しているユーザにてステアリングホイール25やアクセルペダルなどの手動操作具が操作された場合は、自動走行制御を終了するとともに走行モードを自動走行モードから手動走行モードに切り換える。
【0061】
自動走行制御部23Fによる自動走行制御には、エンジン14に関する自動走行用の制御指令をエンジン制御部23Aに送信するエンジン用自動制御処理、トラクタ1の車速や前後進の切り換えに関する自動走行用の制御指令を変速ユニット制御部23Bに送信する車速用自動制御処理、ステアリングに関する自動走行用の制御指令をステアリング制御部23Cに送信するステアリング用自動制御処理、及び、ロータリ耕耘装置3などの作業装置に関する自動走行用の制御指令を作業装置制御部23Dに送信する作業用自動制御処理、などが含まれている。
【0062】
自動走行制御部23Fは、エンジン用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた設定回転数などに基づいてエンジン回転数の変更を指示するエンジン回転数変更指令、などをエンジン制御部23Aに送信する。エンジン制御部23Aは、自動走行制御部23Fから送信されたエンジン14に関する各種の制御指令に応じてエンジン回転数を自動で変更するエンジン回転数変更制御、などを実行する。
【0063】
自動走行制御部23Fは、車速用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた目標車速に基づいて無段変速装置の変速操作を指示する変速操作指令、及び、目標経路Pに含まれたトラクタ1の進行方向などに基づいて前後進切換装置の前後進切り換え操作を指示する前後進切り換え指令、などを変速ユニット制御部23Bに送信する。変速ユニット制御部23Bは、自動走行制御部23Fから送信された無段変速装置や前後進切換装置などに関する各種の制御指令に応じて、無段変速装置の作動を自動で制御する自動車速制御、及び、前後進切換装置の作動を自動で制御する自動前後進切り換え制御、などを実行する。自動車速制御には、例えば、目標経路Pに含まれた目標車速が零速である場合に、無段変速装置を零速状態まで減速制御してトラクタ1の走行を停止させる自動減速停止処理などが含まれている。
【0064】
自動走行制御部23Fは、ステアリング用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた前輪操舵角などに基づいて左右の前輪10の操舵を指示する操舵指令、などをステアリング制御部23Cに送信する。ステアリング制御部23Cは、自動走行制御部23Fから送信された操舵指令に応じて、パワーステアリングユニット17の作動を制御して左右の前輪10を操舵する自動ステアリング制御、及び、左右の前輪10が設定角度以上に操舵された場合に、ブレーキユニット18を作動させて旋回内側のブレーキを作動させる自動ブレーキ旋回制御、などを実行する。
【0065】
自動走行制御部23Fは、作業用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた各作業開始位置(各並列経路P1の始端位置p3)へのトラクタ1の到達に基づいてロータリ耕耘装置3などの作業装置の作業状態への切り換えを指示する作業開始指令、及び、目標経路Pに含まれた各作業停止位置(各並列経路P1の終端位置p4)へのトラクタ1の到達に基づいて作業装置の非作業状態への切り換えを指示する作業停止指令、などを作業装置制御部23Dに送信する。作業装置制御部23Dは、自動走行制御部23Fから送信された作業装置に関する各種の制御指令に応じて、昇降駆動ユニット20などの作動を制御して、作業装置を作業高さまで下降させて作用させる自動作業開始制御、及び、作業装置を非作業高さまで上昇させて待機させる自動作業停止制御、などを実行する。
【0066】
つまり、前述した自動走行ユニット4には、パワーステアリングユニット17、ブレーキユニット18、作業クラッチユニット19、昇降駆動ユニット20、ローリングユニット21、車両状態検出機器22、車載制御ユニット23、測位ユニット30、及び、通信モジュール28,34、などが含まれている。そして、これらが適正に作動することにより、トラクタ1を目標経路Pに従って精度良く自動走行させることができるとともに、ロータリ耕耘装置3などの作業装置による作業を適正に行うことができる。
【0067】
図6~7に示すように、トラクタ1には、トラクタ1の周囲を監視して、その周囲に存在する障害物を検出する障害物検出システム80が備えられている。障害物検出システム80が検出する障害物には、圃場Aにて作業する作業者などの人物や他の作業車両、及び、圃場Aに既存の電柱や樹木などが含まれている。
【0068】
図7に示すように、障害物検出システム80には、トラクタ周辺の可視光を撮像してカラー画像情報を取得する撮像ユニット80A、トラクタ1の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出ユニット80B、及び、撮像ユニット80Aからのカラー画像情報と障害物検出ユニット80Bからの検出情報とを統合して処理する情報統合処理部80C、が含まれている。
【0069】
図1~3、図7に示すように、撮像ユニット80Aには、キャビン13から前方の第1撮像範囲Ri1が撮像範囲に設定された前カメラ81、キャビン13から後方の第2撮像範囲Ri2が撮像範囲に設定された後カメラ82、キャビン13から右方の第3撮像範囲Ri3が撮像範囲に設定された右カメラ83、キャビン13から左方の第4撮像範囲Ri4が撮像範囲に設定された左カメラ84、及び、各カメラ81~84からのカラー画像情報を処理する画像処理装置85(図7参照)、が含まれている。
【0070】
前カメラ81及び後カメラ82は、トラクタ1の左右中心線上に配置されている。前カメラ81は、キャビン13の前端側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の前方側を斜め上方側から見下ろす前下がり姿勢で配置されている。これにより、前カメラ81は、トラクタ1の左右中心線を対称軸とする車体前方側の所定範囲が第1撮像範囲Ri1に設定されている。後カメラ82は、キャビン13の後端側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の後方側を斜め上方側から見下ろす後下がり姿勢で配置されている。これにより、後カメラ82は、トラクタ1の左右中心線を対称軸とする車体後方側の所定範囲が第2撮像範囲Ri2に設定されている。右カメラ83は、キャビン13の右端側における上部の前後中央箇所に、トラクタ1の右方側を斜め上方側から見下ろす右下がり姿勢で配置されている。これにより、右カメラ83は、車体右方側の所定範囲が第3撮像範囲Ri3に設定されている。左カメラ84は、キャビン13の左端側における上部の前後中央箇所に、トラクタ1の左方側を斜め上方側から見下ろす左下がり姿勢で配置されている。これにより、左カメラ84は、車体左方側の所定範囲が第4撮像範囲Ri4に設定されている。
【0071】
画像処理装置85は、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。画像処理装置85は、車載制御ユニット23及び情報統合処理部80CなどにCANを介して相互通信可能に接続されている。
【0072】
画像処理装置85は、各カメラ81~84から順次送信されるカラー画像情報に対して画像処理を行う。例えば、画像処理装置85は、各カメラ81~84から順次送信されるカラー画像情報に対して、各カメラ81~84の撮像範囲に対応した前後左右の各画像を生成する画像生成処理、及び、全カメラ81~84からのカラー画像情報を合成してトラクタ1の全周囲画像(例えばサラウンドビュー)を生成する全周囲画像生成処理、などを行う。そして、生成した各画像及び全周囲画像を、車載制御ユニット23の表示制御部23Eに送信する画像送信処理を行う。表示制御部23Eは、画像処理装置85からの各画像及び全周囲画像を、CANを介して操作端末27に送信するとともに、通信モジュール28,52を介して携帯通信端末5の表示制御部51Aに送信する。
【0073】
これにより、画像処理装置85が生成した全周囲画像やトラクタ1の走行方向に対応する画像などを、トラクタ1の操作端末27や携帯通信端末5の表示デバイス50などにおいて表示することができる。そして、この表示により、トラクタ1の周囲の状況や走行方向の状況をユーザに視認させることができる。
【0074】
つまり、車載制御ユニット23の表示制御部23Eは、画像処理装置85が生成した全周囲画像やトラクタ1の走行方向に対応する画像などを、トラクタ1の操作端末27や携帯通信端末5の表示デバイス50などにおいて表示させることで、作業車両Vの周囲の状況をユーザに視認し易くする、といった作業支援を可能にする作業支援部として機能する。
【0075】
画像処理装置85には、圃場Aにて作業する作業者などの人物や他の作業車両、及び、圃場Aに既存の電柱や樹木などを障害物として認識するための学習処理が施されている。これにより、画像処理装置85は、各カメラ81~84から順次送信されるカラー画像情報に基づいて、各カメラ81~84のいずれかの撮像範囲Ri1~Ri4においてトラクタ1の走行に影響を及ぼす障害物が存在するか否かを判定する障害物判定処理を行うことができる。
【0076】
画像処理装置85は、障害物判定処理において、いずれかの撮像範囲Ri1~Ri4に障害物が存在すると判定した場合は、障害物が存在する画像上での障害物の座標を求める座標算出処理を行い、求めた障害物の座標を、各カメラ81~84の搭載位置や搭載角度などに基づいて、車体座標原点を基準にした座標に変換する座標変換処理を行う。そして、その変換後の座標と予め設定した距離算出基準点とにわたる直線距離を、距離算出基準点から障害物までの距離として求める距離算出処理を行い、変換後の座標と求めた障害物までの距離とを障害物に関する情報として情報統合処理部80Cに送信する障害物情報送信処理を行う。一方、いずれの撮像範囲Ri1~Ri4にも障害物が存在しない場合は、障害物が未検出であることを情報統合処理部80Cに送信する未検出送信処理を行う。
【0077】
このように、各カメラ81~84の撮像範囲Ri1~Ri4のいずれかに障害物が存在する場合は、画像処理装置85が、障害物に関する情報を情報統合処理部80Cに送信することから、情報統合処理部80Cは、その障害物に関する情報を受け取ることにより、各カメラ81~84のいずれかの撮像範囲Ri1~Ri4に障害物が存在することを把握することができるとともに、その障害物の位置及び障害物までの距離を取得することができる。又、各カメラ81~84の撮像範囲Ri1~Ri4のいずれにも障害物が存在しない場合は、画像処理装置85が、障害物の未検出を情報統合処理部80Cに送信することから、情報統合処理部80Cは、その未検出情報を受け取ることにより、各カメラ81~84の撮像範囲Ri1~Ri4のいずれにも障害物が存在しないことを把握することができる。
【0078】
上記の座標変換処理における車体座標原点、及び、距離算出処理における距離算出基準点は、各カメラ81~84の搭載位置に応じて設定されている。具体的には、図8に示すように、前カメラ81に対しては、その搭載位置に応じて車体座標原点O1と距離算出基準点Rp1とが設定されている。後カメラ82に対しては、その搭載位置に応じて車体座標原点O2と距離算出基準点Rp2とが設定されている。右カメラ83に対しては、その搭載位置に応じて車体座標原点O3と距離算出基準点Rp3とが設定されている。左カメラ84に対しては、その搭載位置に応じて車体座標原点O4と距離算出基準点Rp4とが設定されている。
【0079】
これにより、画像処理装置85は、例えば、前カメラ81の第1撮像範囲Ri1において障害物が存在する場合は、障害物が存在する前カメラ81の画像上での障害物の座標を求め(座標算出処理)、求めた障害物の座標を、前カメラ81の搭載位置や搭載角度などに基づいて、図8に示す車体座標原点O1を基準にした座標(x,y)に変換し(座標変換処理)、変換後の座標(x,y)と距離算出基準点Rp1とにわたる直線距離を、距離算出基準点Rp1から障害物Oまでの距離Laとして求める(距離算出処理)。
【0080】
尚、前述した車体座標原点O1~O4と距離算出基準点Rp1~Rp4と各カメラ81~84の搭載位置との関係は種々の設定変更が可能である。
【0081】
図1図3~4、図7に示すように、障害物検出ユニット80Bには、トラクタ1の前方に存在する障害物を検出する第1障害物センサ86と、トラクタ1の後方に存在する障害物を検出する第2障害物センサ87と、トラクタ1の左右に存在する障害物を検出する第3障害物センサ88とが含まれている。第1障害物センサ86及び第2障害物センサ87には、障害物の検出にパルス状の近赤外レーザ光(近赤外光の一例)を使用するライダーセンサが採用されている。第3障害物センサ88には、障害物の検出に超音波を使用するソナーが採用されている。
【0082】
図1~4、図7に示すように、第1障害物センサ86は、近赤外レーザ光を使用して測定範囲に存在する測定対象物までの距離を測定する第1測定部86Aと、第1測定部86Aからの測定情報に基づいて距離画像の生成などを行う第1制御部86Bとを有している。第2障害物センサ87は、近赤外レーザ光を使用して測定範囲に存在する測定対象物までの距離を測定する第2測定部87Aと、第2測定部87Aからの測定情報に基づいて距離画像の生成などを行う第2制御部87Bとを有している。第3障害物センサ88は、超音波の送受信を行う右側の超音波センサ88Aと左側の超音波センサ88B、及び、各超音波センサ88A,88Bでの超音波の送受信に基づいて測定範囲に存在する測定対象物までの距離を測定する単一の第3制御部88Cを有している。
【0083】
各障害物センサ86~88の制御部86B,87B,88Cは、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。各制御部86B,87B,88Cは、車載制御ユニット23及び情報統合処理部80CなどにCANを介して相互通信可能に接続されている。
【0084】
図3~4に示すように、第1障害物センサ86は、キャビン13から前方の第1測定範囲Rm1が測定範囲に設定されている。第2障害物センサ87は、キャビン13から後方の第2測定範囲Rm2が測定範囲に設定されている。第3障害物センサ88は、キャビン13から右方の第3測定範囲Rm3とキャビン13から左方の第4測定範囲Rm4とが測定範囲に設定されている。
【0085】
図1図3~4に示すように、第1障害物センサ86及び第2障害物センサ87は、前カメラ81及び後カメラ82と同様にトラクタ1の左右中心線上に配置されている。第1障害物センサ86は、キャビン13の前端側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の前方側を斜め上方側から見下ろす前下がり姿勢で配置されている。これにより、第1障害物センサ86は、トラクタ1の左右中心線を対称軸とする車体前方側の所定範囲が測定部86Aによる第1測定範囲Rm1に設定されている。第2障害物センサ87は、キャビン13の後端側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の後方側を斜め上方側から見下ろす後下がり姿勢で配置されている。これにより、第2障害物センサ87は、トラクタ1の左右中心線を対称軸とする車体後方側の所定範囲が測定部87Aによる第2測定範囲Rm2に設定されている。
【0086】
第1障害物センサ86及び第2障害物センサ87は、変速ユニット16の前後進切換装置が前進伝動状態に切り換えられたトラクタ1の前進走行時には、その切り換えに連動して、第1障害物センサ86が作動状態になり、第2障害物センサ87が作動停止状態になる。又、変速ユニット16の前後進切換装置が後進伝動状態に切り換えられたトラクタ1の後進走行時には、その切り換えに連動して、第1障害物センサ86が作動停止状態になり、第2障害物センサ87が作動状態になる。
【0087】
図2に示すように、右側の超音波センサ88Aは、右側の前輪10と右側の後輪11との間に配置された右側の乗降ステップ24に車体右外向き姿勢で取り付けられている。これにより、右側の超音波センサ88Aは、車体右外側の所定範囲が第3測定範囲Rm3に設定されている。図1~3に示すように、左側の超音波センサ88Bは、左側の前輪10と左側の後輪11との間に配置された左側の乗降ステップ24に車体左外向き姿勢で取り付けられている。これにより、左側の超音波センサ88Bは、車体左外側の所定範囲が第4測定範囲Rm4に設定されている。
【0088】
図3~4、図7に示すように、第1障害物センサ86及び第2障害物センサ87の各測定部86A,87Aは、照射した近赤外レーザ光が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式により、各測定部86A,87Aから第1測定範囲Rm1又は第2測定範囲Rm2の各測距点(測定対象物の一例)までの距離を測定する。各測定部86A,87Aは、第1測定範囲Rm1又は第2測定範囲Rm2の全体にわたって、近赤外レーザ光を高速で縦横に走査して、走査角(座標)ごとの測距点までの距離を順次測定することにより、第1測定範囲Rm1又は第2測定範囲Rm2において3次元の測定を行う。各測定部86A,87Aは、第1測定範囲Rm1又は第2測定範囲Rm2の全体にわたって近赤外レーザ光を高速で縦横に走査したときに得られる各測距点からの反射光の強度(以下、反射強度と称する)を順次測定する。各測定部86A,87Aは、第1測定範囲Rm1又は第2測定範囲Rm2の各測距点までの距離や各反射強度などをリアルタイムで繰り返し測定する。
【0089】
第1障害物センサ86及び第2障害物センサ87の各制御部86B,87Bは、各測定部86A,87Aが測定した各測距点までの距離や各測距点に対する走査角(座標)などの測定情報から、距離画像を生成するとともに障害物と推定される測距点群を抽出し、抽出した測距点群に関する測定情報を障害物候補に関する測定情報として情報統合処理部80Cに送信する。
【0090】
第1障害物センサ86及び第2障害物センサ87の各制御部86B,87Bは、各測定部86A,87Aが測定した各測距点の距離値が無効条件に適合するか否かを判定し、無効条件に適合する距離値を無効値として情報統合処理部80Cに送信する。
【0091】
具体的には、各制御部86B,87Bは、第1障害物センサ86又は第2障害物センサ87からの至近距離に存在するというセンサ表面での汚れの特徴を利用して、その特徴を有する測距点の距離値を無効値とする。これにより、センサ表面の汚れに関する測距点の距離値が、情報統合処理部80Cにおいて障害物に関する測定情報として使用されることを防止している。
【0092】
又、各制御部86B,87Bは、第1障害物センサ86又は第2障害物センサ87の近距離に存在しながら反射強度が非常に弱いという埃や霧などの浮遊物の特徴を利用して、その特徴を有する測距点の距離値を無効値とする。これにより、浮遊物に関する測距点の距離値が、情報統合処理部80Cにおいて障害物に関する測定情報として使用されることを防止している。
【0093】
図3~4、図7に示すように、第3障害物センサ88の第3制御部88Cは、左右の超音波センサ88A,88Bによる超音波の送受信に基づいて、第3測定範囲Rm3又は第4測定範囲Rm4における測定対象物の存否を判定する。第3制御部88Cは、発信した超音波が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式により、各超音波センサ88A,88Bから測定対象物までの距離を測定し、測定した測定対象物までの距離と測定対象物の方向とを、障害物に関する測定情報として情報統合処理部80Cに送信する。
【0094】
図4図9~11に示すように、第1障害物センサ86及び第2障害物センサ87の各制御部86B,87Bは、各測定部86A,87Aの測定範囲Rm1,Rm2に対して車体情報などに基づくカット処理とマスキング処理とを施すことにより、第1障害物センサ86及び第2障害物センサ87による障害物の検出対象範囲を第1検出範囲Rd1と第2検出範囲Rd2とに制限している。
【0095】
各制御部86B,87Bは、カット処理においては、車載制御ユニット23との通信によって作業装置を含む車体の最大左右幅(本実施形態ではロータリ耕耘装置3の左右幅)を取得し、この車体の最大左右幅に所定の安全帯域を加えることで障害物の検出対象幅Wdを設定している。そして、第1測定範囲Rm1及び第2測定範囲Rm2において、検出対象幅Wdから外れる左右の範囲をカット処理による第1非検出範囲Rnd1に設定して各検出範囲Rd1,Rd2から除外する。
【0096】
各制御部86B,87Bは、マスキング処理においては、第1測定範囲Rm1に対してトラクタ1の前端側が入り込む範囲、及び、第2測定範囲Rm2に対して作業装置の後端側が入り込む範囲に所定の安全帯域を加えた範囲をマスキング処理による第2非検出範囲Rnd2に設定して各検出範囲Rd1,Rd2から除外する。
【0097】
そして、このように障害物の検出対象範囲を第1検出範囲Rd1と第2検出範囲Rd2とに制限することにより、第1障害物センサ86及び第2障害物センサ87が、検出対象幅Wdから外れていてトラクタ1と衝突する虞のない障害物を検出することによる検出負荷の増大や、第1測定範囲Rm1又は第2測定範囲Rm2に入り込んでいるトラクタ1の前端側や作業装置の後端側を障害物として誤検出する虞を回避している。
【0098】
尚、図9に示す第2非検出範囲Rnd2は、左右の前輪10やボンネット15が存在する車体の前部側に適した非検出範囲の一例である。図10に示す第2非検出範囲Rnd2は、車体の後部側においてロータリ耕耘装置3を作業高さまで下降させた作業状態に適した非検出範囲の一例である。図11に示す第2非検出範囲Rnd2は、車体の後部側においてロータリ耕耘装置3を退避高さまで上昇させた非作業状態に適した非検出範囲の一例である。車体後部側の第2非検出範囲Rnd2は、ロータリ耕耘装置3の昇降に連動して適正に切り換わる。
【0099】
第1検出範囲Rd1、第2検出範囲Rd2、第1非検出範囲Rnd1、及び、第2非検出範囲Rnd2に関する情報は、前述した距離画像に含まれており、前述した距離画像とともに情報統合処理部80Cに送信されている。
【0100】
図4に示すように、第1障害物センサ86及び第2障害物センサ87の各検出範囲Rd1,Rd2は、衝突予測時間が設定時間(例えば3秒)になる衝突判定処理に基づいて、停止制御範囲Rscと減速制御範囲Rdcと報知制御範囲Rncとに区画されている。停止制御範囲Rscは、第1障害物センサ86又は第2障害物センサ87から衝突判定処理の判定基準位置までの範囲に設定されている。減速制御範囲Rdcは、判定基準位置から減速開始位置までの範囲に設定されている。報知制御範囲Rncは、減速開始位置から第1障害物センサ86又は第2障害物センサ87の測定限界位置までの範囲に設定されている。各判定基準位置は、ロータリ耕耘装置3を含む車体の前端又は後端から車体前後方向に一定の離隔距離L(例えば2000mm)を置いた位置に設定されている。
【0101】
図7に示すように、情報統合処理部80Cは、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。情報統合処理部80Cは、測距精度は低いが物体の判別精度が高い撮像ユニット80Aからの情報と、物体の判別精度は低いが測距精度が高い障害物検出ユニット80Bからの測定情報とに基づいて、障害物に関する情報を取得して出力する障害物情報出力制御を実行する。
【0102】
以下、図12に示すフローチャートに基づいて、障害物情報取得制御における情報統合処理部80Cの制御作動について説明する。
尚、ここでは、情報統合処理部80Cが、撮像ユニット80Aの前カメラ81からのカラー画像情報と障害物検出ユニット80Bの第1障害物センサ86からの測定情報とに基づいて障害物に関する情報を取得して出力する場合の制御作動についてのみ説明する。そして、これ以外の、撮像ユニット80Aの後カメラ82からの情報と障害物検出ユニット80Bの第2障害物センサ87からの測定情報とに基づいて障害物に関する情報を取得して出力する場合、及び、撮像ユニット80Aの左右のカメラ83,84からの情報と障害物検出ユニット80Bの第3障害物センサ88からの測定情報とに基づいて障害物に関する情報を取得して出力する場合での情報統合処理部80Cの制御作動も、前カメラ81からの情報と第1障害物センサ86からの測定情報とに基づく場合と同様であることから、これらの場合における情報統合処理部80Cの制御作動に関する説明は省略する。
【0103】
情報統合処理部80Cは、撮像ユニット80Aからの情報に基づいて前カメラ81のカラー画像情報から障害物が検出されているか否かを判定する第1判定処理を行い(ステップ#1)、又、障害物検出ユニット80Bからの測定情報に基づいて第1障害物センサ86の距離画像に障害物候補が含まれているか否かを判定する第2判定処理を行う(ステップ#2)。
【0104】
情報統合処理部80Cは、第1判定処理にて前カメラ81のカラー画像情報から障害物が検出され、かつ、第2判定処理にて第1障害物センサ86の距離画像に障害物候補が含まれている場合には、前述した障害物の位置と障害物候補の位置とが一致しているか否かを判定する第3判定処理を行う(ステップ#3)。
【0105】
情報統合処理部80Cは、第3判定処理にて障害物の位置と障害物候補の位置とが一致している場合は、前カメラ81及び第1障害物センサ86による障害物(障害物候補)の検出状態が、前カメラ81と第1障害物センサ86とが同じ障害物(障害物候補)を適正に検出している適正検出状態であると判定する。そして、この判定結果に基づいて、前カメラ81のカラー画像情報から検出された障害物に、第1障害物センサ86が測定した障害物候補の距離情報を適用して、この情報を障害物検出情報として取得する適正情報取得処理と、取得した障害物検出情報を出力する適正情報出力処理とを行う(ステップ#4~5)。
【0106】
情報統合処理部80Cは、障害物の位置と障害物候補の位置とが一致していない場合は、第1障害物センサ86からの距離情報において、前カメラ81のカラー画像情報における障害物の位置に対応する位置の測定値が有効か否かを判定する第4判定処理を行う(ステップ#6)。
【0107】
情報統合処理部80Cは、第4判定処理にて前述した測定値が有効である場合は、前カメラ81及び第1障害物センサ86による障害物(障害物候補)の検出状態が、前カメラ81のカラー画像情報からは障害物が適正に検出され、かつ、第1障害物センサ86による測定は適正に行われているが、第1障害物センサ86の距離画像からはその障害物を障害物候補として特定することができない準適正検出状態であると判定する。そして、この判定結果に基づいて、前カメラ81のカラー画像情報から検出された障害物に、前カメラ81が示す障害物の位置に相当する測定対象物に対して第1障害物センサ86が測定した距離情報を適用して、この情報を障害物検出情報として取得する準適正情報取得処理と、取得した障害物検出情報を出力する準適正情報出力処理とを行う(ステップ#7~8)。
【0108】
情報統合処理部80Cは、第4判定処理にて前述した測定値が有効でない場合は、前カメラ81及び第1障害物センサ86による障害物(障害物候補)の検出状態が、前カメラ81のカラー画像情報からは障害物を適正に検出しているが、第1障害物センサ86の距離画像においては、前カメラ81が示す障害物の位置に相当する測定対象位置での埃や霧などの浮遊物の発生、又は、第1障害物センサ86のセンサ表面での汚れの付着により、前カメラ81が示す障害物の位置に相当する測定対象物に対する測定値が無効になっている測定値無効状態であると判定する。そして、この判定結果に基づいて、前カメラ81のカラー画像情報から検出された障害物に、前カメラ81のカラー画像情報から算出した障害物に対する距離情報を適用して、この情報を障害物検出情報として取得するカメラ単独情報取得処理と、取得した障害物検出情報を出力するカメラ単独情報出力処理とを行う(ステップ#9~10)。
【0109】
車載制御ユニット23には、情報統合処理部80Cからの障害物検出情報に基づいて障害物に関する制御を実行する障害物用制御部23Hが含まれている。障害物用制御部23Hは、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。障害物用制御部23Hは、情報統合処理部80CなどにCANを介して相互通信可能に接続されている。
【0110】
障害物用制御部23Hは、情報統合処理部80Cからの障害物検出情報に基づいて障害物との衝突を回避する衝突回避制御を実行する。具体的には、障害物用制御部23Hは、情報統合処理部80Cからの適正情報出力処理又は準適正情報出力処理による障害物検出情報を取得した場合は、衝突回避制御として第1衝突回避制御を実行する。障害物用制御部23Hは、情報統合処理部80Cからのカメラ単独情報出力処理による障害物検出情報を取得した場合は、衝突回避制御として、第1衝突回避制御よりも衝突回避率の高い第2衝突回避制御を実行する。
【0111】
以下、図13に示すフローチャートに基づいて、第1衝突回避制御における障害物用制御部23Hの制御作動について説明する。
尚、ここでは、第1障害物センサ86の第1検出範囲Rd1に障害物が位置する場合を例示して説明する。
【0112】
障害物用制御部23Hは、障害物検出情報に含まれた障害物との距離に基づいて、障害物が、図4に示す第1検出範囲Rd1のうちの報知制御範囲Rncに位置しているか否かを判定する第5判定処理と、減速制御範囲Rdcに位置しているか否かを判定する第6判定処理と、停止制御範囲Rscに位置しているか否かを判定する第7判定処理とを行う(ステップ#11~13)。
【0113】
障害物用制御部23Hは、第5判定処理にて第1検出範囲Rd1の報知制御範囲Rncに障害物が位置することを検知した場合は、報知制御範囲Rncに障害物が位置することを、トラクタ1の操作端末27や携帯通信端末5の表示デバイス50にて報知させるための報知指令を、車載制御ユニット23の表示制御部23Eと端末制御ユニット51の表示制御部51Aとに指令する第1報知指令処理を行う(ステップ#14)。
【0114】
これにより、トラクタ1に対する第1検出範囲Rd1の報知制御範囲Rncに障害物が位置することを、運転部12の搭乗者や車外の管理者などのユーザに知らせることができる。
【0115】
障害物用制御部23Hは、第6判定処理にて第1検出範囲Rd1の減速制御範囲Rdcに障害物が位置することを検知した場合は、減速制御範囲Rdcに障害物が位置することを、トラクタ1の操作端末27や携帯通信端末5の表示デバイス50にて報知させるための報知指令を、車載制御ユニット23の表示制御部23Eと端末制御ユニット51の表示制御部51Aとに指令する第2報知指令処理を行う(ステップ#15)。又、障害物用制御部23Hは、減速制御範囲Rdcに位置する障害物がトラクタ1に近づくほどトラクタ1の車速を低下させるための減速指令を変速ユニット制御部23Bに指令する減速指令処理を行う(ステップ#16)。
【0116】
これにより、トラクタ1に対する第1検出範囲Rd1の減速制御範囲Rdcに障害物が位置することを、運転部12の搭乗者や車外の管理者などのユーザに知らせることができる。又、変速ユニット制御部23Bの制御作動により、作業車両Vが障害物に近づくに連れてトラクタ1の車速を適正に低下させることができる。
【0117】
障害物用制御部23Hは、第7判定処理にて第1検出範囲Rd1の停止制御範囲Rscに障害物が位置することを検知した場合は、停止制御範囲Rscに障害物が位置することを、トラクタ1の操作端末27や携帯通信端末5の表示デバイス50にて報知させるための報知指令を、車載制御ユニット23の表示制御部23Eと端末制御ユニット51の表示制御部51Aとに指令する第3報知指令処理を行う(ステップ#17)。又、障害物用制御部23Hは、障害物が停止制御範囲Rscに位置する間にトラクタ1を減速停止させるための減速停止指令を変速ユニット制御部23Bに指令する減速停止指令処理を行う(ステップ#18)。
【0118】
これにより、トラクタ1に対する第1検出範囲Rd1の停止制御範囲Rscに障害物が位置することを、運転部12の搭乗者や車外の管理者などのユーザに知らせることができる。又、変速ユニット制御部23Bの制御作動により、障害物が停止制御範囲Rscに位置する間においてトラクタ1を減速停止させることができ、よって、作業車両Vが障害物に衝突する虞を回避することができる。
【0119】
次に、第2衝突回避制御における障害物用制御部23Hの制御作動について説明すると、障害物用制御部23Hは、前述した第1衝突回避制御の場合よりも、前述した第1検出範囲Rd1の判定基準位置から減速制御範囲Rdcと停止制御範囲Rscとの境界までの距離、及び、判定基準位置から報知制御範囲Rncと減速制御範囲Rdcとの境界までの距離が長くなるように、減速制御範囲Rdc及び停止制御範囲Rscの前後長さを長くした状態で、第1衝突回避制御におけるステップ#11~18の各制御処理と同じ制御処理を行う。これにより、第2衝突回避制御は、第1衝突回避制御よりも早いタイミングで障害物との衝突を回避することが可能な衝突回避制御となっている。
【0120】
これにより、障害物用制御部23Hは、障害物検出ユニット80Bからの測定情報よりも測距精度が低い撮像ユニット80Aからの測定情報に基づいて障害物との衝突を回避する第2衝突回避制御においては、第1衝突回避制御よりも衝突回避率を高めた状態で障害物との衝突を回避することができる。その結果、測距精度が低い撮像ユニット80Aからの測定情報に基づく障害物との衝突回避を良好に行うことができる。
【0121】
自動走行制御部23Fの自動走行制御には、第1障害物センサ86及び第2障害物センサ87のセンサ表面に対する汚れ(測定阻害物)の付着などを検知した場合に、汚れの付着などに基づいてトラクタ1の走行を制御する汚れ対応制御処理が含まれている。
【0122】
以下、図14に示すフローチャートに基づいて、汚れ対応制御処理における自動走行制御部23Fの制御作動について説明する。
尚、ここでも、第1障害物センサ86の場合を例示して説明する。
【0123】
自動走行制御部23Fは、第1障害物センサ86の測定範囲Rm1に対して、第1障害物センサ86からの測定情報に含まれている汚れなどの測定阻害物に起因した無効値の占める割合が所定値(例えば50%)以上か否かを判定する第8判定処理を行う(ステップ#21)。
【0124】
自動走行制御部23Fは、第8判定処理にて無効値の占める割合が所定値以上である場合は、トラクタ1の車速を、トラクタ1の走行状態をクリープ走行状態に維持することが可能な超低速まで低下させるための減速指令を変速ユニット制御部23Bに指令する減速指令処理を行う(ステップ#22)。
【0125】
自動走行制御部23Fは、第8判定処理にて無効値の占める割合が所定値以上でない場合は、トラクタ1の車速を、現在の車速に維持するための車速維持指令を変速ユニット制御部23Bに指令する車速維持指令処理を行う(ステップ#23)。
【0126】
自動走行制御部23Fは、減速指令処理を行った後、トラクタ1のクリープ走行状態が所定時間継続されたか否かを判定する第9判定処理を行う(ステップ#24)。そして、自動走行制御部23Fは、クリープ走行状態が所定時間継続されるまでの間において前述した第8判定処理を行い(ステップ#25)、この第8判定処理にて無効値の占める割合が所定値未満に低下した場合は、第1障害物センサ86のセンサ表面に汚れが付着しているのではなく、第1障害物センサ86の周辺にて埃や霧などの浮遊物が舞っていただけであると判定して、トラクタ1の車速を、超低速まで低下させる前の元の車速に復帰させるための車速復帰指令を変速ユニット制御部23Bに指令する車速復帰指令処理を行い(ステップ#26)、その後、ステップ#21に戻る。
【0127】
自動走行制御部23Fは、クリープ走行状態が所定時間継続された場合は、第1障害物センサ86のセンサ表面に汚れが付着していると判定して、直ちにトラクタ1を走行停止させるための走行停止指令を変速ユニット制御部23Bに指令する走行停止指令処理を行う(ステップ#27)。
【0128】
つまり、自動走行制御部23Fの自動走行制御によるトラクタ1の自動走行中において、第1障害物センサ86の測定範囲Rm1に対して無効値の占める割合が所定値以上になった場合には、トラクタ1の車速が低速よりも遅い超低速まで低下されて、トラクタ1の走行状態がクリープ走行状態に維持されることから、トラクタ1の走行状態を低速走行状態に維持する場合に比較して、無効値の原因が、各障害物センサ86~88のセンサ表面に対する汚れなどの付着物か、各障害物センサ86~88の周辺にて舞い上がった埃や塵埃などの浮遊物かを判定するための時間を長くすることができる。
【0129】
そして、このように判定時間を長くすることにより、無効値の原因が付着物か浮遊物かを判定し易くなり、これにより、無効値の原因が浮遊物である場合に、この浮遊物に基づいてトラクタ1が走行を停止することによる作業効率の低下を抑制することができる。又、無効値の原因が付着物か浮遊物かの判定中に、作業車両Vが障害物に衝突する不都合の発生を抑制することができる。
【0130】
そして、上記の説明から明らかなように、情報統合処理部80C及び障害物用制御部23Hは、撮像ユニット80A及び障害物検出ユニット80Bによる障害物の検出に基づいて、作業車両Vの周囲に障害物が存在することを報知するとともに障害物との衝突を回避する、といった作業支援を可能にする作業支援部として機能する。
【0131】
図7図15~18に示すように、情報統合処理部80Cには、撮像ユニット80Aからのカラー画像情報と第1障害物センサ86からの測定情報とに基づいて、圃場Aで栽培された作物Zの生育評価の指標となる作物Zの生育情報を取得する生育情報取得部80Caが含まれている。生育情報取得部80Caは、圃場Aの中央側領域(作業領域)A2bを複数に分割して区画設定された生育情報取得区域(所定区域の一例)Ag(図15~18参照)ごとに作物Zの生育情報を取得する。生育情報取得部80Caは、作物Zの生育情報として、作物Zの活性度などを示す植生指標の一例である正規化植生指標(以下、NDVIと称する) 、茎数に相当する植被率、及び、作物Zの草丈値、などを取得する。
【0132】
尚、生育情報取得区域Agの区画設定は、生育情報に基づく生育評価を利用して作業する作業装置(例えば、肥料の散布などを行う肥料散布装置)の前後長さや作業幅などを考慮して設定することが好ましい。図16は、撮像ユニット80Aの前カメラ81が撮像したカラー画像情報から生成された車体前方のカラー画像の一例である。図17は、第1障害物センサ86の測定情報から生成された車体前方の距離画像の一例である。図18は、第1障害物センサ86の測定情報から生成された車体前方の近赤外画像の一例である。
【0133】
生育情報取得部80Caは、例えば、作業装置の一例である中耕作業用のカルチベータ(図示せず)などがトラクタ1の後部に連結された中耕作業状態でのトラクタ1の自動走行に伴って、生育情報取得区域Agごとの作物Zの生育情報を取得する生育情報取得制御を実行する。
【0134】
以下、図19に示すフローチャート及び図15~18に基づいて、生育情報取得制御における生育情報取得部80Caの制御作動について説明する。
【0135】
生育情報取得部80Caは、前カメラ81が撮像した第1撮像範囲Ri1のカラー画像情報を撮像ユニット80Aから取得するカラー画像情報取得処理と、前カメラ81のカラー画像情報から生育情報取得区域Ag(図16参照)での可視赤色光の反射率Rを取得する可視赤色光反射率取得処理とを行う(ステップ#31~32)。
【0136】
生育情報取得部80Caは、第1障害物センサ86による測定情報を障害物検出ユニット80Bから取得する測定情報取得処理と、第1障害物センサ86の測定情報に含まれた生育情報取得区域Agに存在する各測定対象物からの近赤外レーザ光の反射強度(図18参照)を取得する反射強度取得処理と、取得した生育情報取得区域Agでの各反射強度の平均値を生育情報取得区域Agでの近赤外光の反射率IRとして算出する近赤外光反射率算出処置とを行う(ステップ#33~35)。
【0137】
生育情報取得部80Caは、可視赤色光反射率取得処理と近赤外光反射率算出処置とで取得した同じ生育情報取得区域Agでの可視赤色光の反射率Rと近赤外光の反射率IRとを、NDVI算出用の計算式であるNDVI=(IR-R)/(IR+R)に代入して、生育情報取得区域AgでのNDVIを算出するNDVI算出処置を行う(ステップ#36)。
【0138】
これにより、生育情報取得部80Caは、撮像ユニット80Aからのカラー画像情報と第1障害物センサ86からの測定情報とに基づいてNDVIを取得することができる。NDVIの値は、-1~1の値を取り、作物Zの窒素吸収量が多く活性度が高いほど高くなる。生育情報取得部80Caは、NDVIの値に対応して、例えば黒~白を色付けすることでNDVI画像を生成することができ、作物Zの活性度などを可視化することができる。
【0139】
生育情報取得部80Caは、上記のNDVI画像に基づいて生育情報取得区域Agでの植被率を取得する植被率取得処理を行う(ステップ#37)。そして、NDVI算出処置と反射強度取得処理とで取得した同じ生育情報取得区域AgでのNDVIと植被率との積を取ることにより、生育情報取得区域Agでの作物Zの窒素吸収量を推定する窒素吸収量推定処理を行う(ステップ#38)。
【0140】
生育情報取得部80Caは、カラー画像情報取得処理にて取得した前カメラ81のカラー画像情報、トラクタ1における前カメラ81の搭載位置や搭載角度、測定情報取得処理にて取得した第1障害物センサ86の測定情報に含まれた距離値情報、及び、トラクタ1における第1障害物センサ86の搭載位置や搭載角度に基づいて、前カメラ81のカラー画像情報と第1障害物センサ86の測定情報とに含まれた同一の生育情報取得区域Ag(図16~17参照)にて栽培された各作物Zの草丈を取得する草丈算出処理と、各作物Zの草丈の平均値を生育情報取得区域Agでの作物Zの草丈値として算出する草丈値算出処理とを行う(ステップ#39~40)。
【0141】
生育情報取得部80Caは、取得した同じ生育情報取得区域AgでのNDVI、植被率、窒素吸収量、及び、作物Zの草丈値、などを、測位ユニット30が取得したトラクタ1の位置情報に関連付けて車載記憶部23Gに記憶する生育情報記憶処理を行う(ステップ#41)。
【0142】
つまり、この作業車両Vにおいては、障害物検出との衝突を回避するためにトラクタ1に備えられた障害物検出システム80を、NDVI、植被率、窒素吸収量、及び、作物Zの草丈、などの圃場Aで栽培された作物Zの生育情報を取得する生育情報取得ユニットとして兼用することができる。これにより、専用の生育情報取得ユニットをトラクタ1に備える場合に比較して、トラクタ1における構成の複雑化及びコストの高騰などを抑制しながら、作物Zの生育情報を高い精度で取得することができる。
【0143】
図7に示すように、情報統合処理部80Cには、生育情報取得部80Caが取得した作物の生育情報に基づいて、各生育情報取得区域Agにおける作物の生育状況を評価して、生育情報取得区域Agごとの施肥量の算出などを行う生育評価部80Cbが含まれている。生育評価部80Cbは、算出した生育情報取得区域Agごとの施肥量などを、測位ユニット30が取得したトラクタ1の位置情報に関連付けた状態で車載記憶部23Gに記憶する。
【0144】
自動走行制御部23Fは、作業装置の一例である肥料散布装置が連結されたトラクタ1を自動走行させて施肥作業を行う場合には、車載記憶部23Gにトラクタ1の位置情報と関連付けて記憶された生育情報取得区域Agごとの施肥量と、施肥作業時に測位ユニット30が取得するトラクタ1の位置情報とに基づいて、肥料散布装置による施肥量を生育情報取得区域Agごとに自動調節する施肥量調節制御を実行する。
【0145】
これにより、圃場Aにおける生育情報取得区域Agごとの作物の生育のばらつきを簡単かつ適正に改善することができ、結果、圃場Aで栽培される作物の品質向上や収穫量の安定化などを図ることができる。
【0146】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
なお、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0147】
(1)作業車両Vの構成は種々の変更が可能である。
例えば、作業車両Vは、左右の後輪11に代えて左右のクローラを備えるセミクローラ仕様の走行車体1を有する構成であってもよい。
例えば、作業車両Vは、左右の前輪10及び左右の後輪11に代えて左右のクローラを備えるフルクローラ仕様の走行車体1を有する構成であってもよい。
例えば、作業車両Vは、手動走行のみが可能な走行車体1を有する構成であってもよい。
例えば、作業車両Vは、エンジン14の代わりに電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両Vは、エンジン14と電動モータとを備えるハイブリッド仕様に構成されていてもよい。
【0148】
(2)作業支援部として機能する情報統合処理部80C及び障害物用制御部23Hは、障害物検出ユニット80Bのみによる障害物の検出に基づいて、作業車両Vの周囲に障害物が存在することを報知するとともに障害物との衝突を回避する、といった作業支援を行うように構成されていてもよい。
又、障害物用制御部23Hは、障害物の検出に基づいて、作業車両Vの周囲に障害物が存在することを報知する報知処理のみを行うことで障害物との衝突を回避し易くする、といった作業支援を行うように構成されていてもよい。
【0149】
(3)生育情報取得部80Caは、撮像ユニット80Aの後カメラ82からのカラー画像情報と第2障害物センサ87からの測定情報とに基づいて、圃場Aで栽培された作物Zの生育情報を取得するように構成されていてもよい。
【0150】
(4)第3障害物センサ88として、キャビン13から右方の第3測定範囲Rm3が測定範囲に設定された右側のライダーセンサと、キャビン13から左方の第4測定範囲Rm4が測定範囲に設定された左側のライダーセンサとを備えるようにしてもよい。
そして、この構成においては、生育情報取得部80Caが、撮像ユニット80Aの右カメラ83からのカラー画像情報と右側のライダーセンサからの測定情報とに基づいて、圃場Aで栽培された作物Zの生育情報を取得するように構成されていてもよい。又、生育情報取得部80Caが、撮像ユニット80Aの左カメラ84からのカラー画像情報と左側のライダーセンサからの測定情報とに基づいて、圃場Aで栽培された作物Zの生育情報を取得するように構成されていてもよい。
【0151】
(5)生育情報取得部80Caは、作物Zの生育情報として、NDVIよりも畝間の土壌の影響を受け難い緑正規化植生指標(GNDVI:Green Normalized Difference Vegetation Index)を取得するように構成されていてもよい。緑正規化植生指標は、生育情報取得区域Agでの可視緑色光の反射率Gと近赤外光の反射率IRとを、GNDVI算出用の計算式であるGNDVI=(IR-G)/(IR+G)に代入することで算出することができる。
又、生育情報取得部80Caは、作物Zの生育情報として、鉛直植生指標(PVI:Perpendicular Vegetation Index)や土壌補正正規化植生指標(SAVI:Soil Adjusted Vegetation Index)などを取得するように構成されていてもよい。
【0152】
(6)生育情報取得部80Caが取得したNDVI、植被率、窒素吸収量、及び、作物Zの草丈値、などの生育情報や、生育評価部80Cbによる評価結果などを、測位ユニット30が取得したトラクタ1の位置情報に関連付けた状態でクラウドサーバに記憶するようにしてもよい。
【0153】
(7)生育情報取得部80Ca及び生育評価部80Cbを含む情報統合処理部80Cを、車載制御ユニット23又はクラウドサーバに備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0154】
23E 表示制御部(作業支援部)
23F 自動走行制御部(作業支援部)
23G 記憶部
23H 障害物用制御部(作業支援部)
30 測位ユニット
80A 撮像ユニット
80C 情報統合処理部(作業支援部)
80Ca 生育情報取得部
86 第1障害物センサ(ライダーセンサ)
87 第2障害物センサ(ライダーセンサ)
A 圃場
Ag 生育情報取得区域(所定区域)
O 障害物
P 目標経路
Ri1 第1撮像範囲
Ri2 第2撮像範囲
Rm1 第1測定範囲
Rm2 第2測定範囲
V 作業車両
Z 作物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19