(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】成形シート
(51)【国際特許分類】
B65D 63/10 20060101AFI20231211BHJP
B65D 75/34 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B65D63/10 G
B65D75/34
(21)【出願番号】P 2019218146
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】591025082
【氏名又は名称】日泉化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】長野 亮二
(72)【発明者】
【氏名】北野 勝久
(72)【発明者】
【氏名】宮野 友大
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-010263(JP,U)
【文献】特開2002-327074(JP,A)
【文献】特開2008-239641(JP,A)
【文献】特開2005-041525(JP,A)
【文献】特開2002-338704(JP,A)
【文献】特開2008-221813(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103587(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/34
B65D 63/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物を成形してなるシートであって、
該樹脂組成物の動的粘弾性測定において、-20℃における損失正接(tanδ)の値が0.05~0.4であり、
該樹脂組成物の動的粘弾性測定において、-30℃におけるtanδの値と、-10℃におけるtanδの値との差が、0.10以下であり、
該シートが、平坦部と、互いに同じ形状を有する複数の凸部とを有し、
該凸部が、錐台の形状を有する、
前記シート。
【請求項2】
該オレフィン系樹脂が、高圧法低密度ポリエチレン(HP-LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、易加工性ポリエチレン(EPPE)、およびこれらの組み合わせからなる混合物からなる群より選択される、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
該凸部が、互いに所定の幅の該平坦部を介して、列をなすように配置されている、請求項1または2に記載のシート。
【請求項4】
該錐台は、円錐台、楕円錐台、三角錐台、四角錐台、五角錐台および六角錐台からなる群より選択される、請求項1~3のいずれかに記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊な構造を有する成形シートに関する。本発明は、特に、物品を容易に長期間安定に緊縛することが可能で、かつ緩衝性に富む成形シートに関する。
【背景技術】
【0002】
細長い物品を束ねたりまたは包装紙の紙端を留めたり、あるいは、物品にタグや値札を取りつけたりする目的で、ゴム製の緊縛用バンドが従来から広く利用されている。しかしゴム製のバンドは、一般に緩衝効果が不充分である。したがってゴム製のバンドで壊れやすい物品を緊縛する場合には、別個に、板紙や紙製コルゲーション、あるいはその他の緩衝材で保護する必要がある。特に、公知のゴム製のバンドにおける最大の問題点は、ゴム材料の永久歪に因る抗張力の低下である。物品の緊縛の初期には、ゴムの強い緊縮力により物品を緊縛していても、長期間経過する間には、緊縛の用を果たさなくなることがある。
【0003】
物品の緊縛には、ゴム製のバンドのほか、面ファスナー付きの帯状テープ、プラスチック製の結束バンドやケーブルタイ、粘着テープ等を用いることができる。面ファスナー付きの帯状テープは、面ファスナー部分にゴミが付着すると結束力が弱くなることあるほか、面ファスナー部分のカギ状フックが衣類等の繊維表面に密着してしまい、緊縛物品を汚損してしまうことがある。結束バンドやケーブルタイは、一般に、幅が狭いため、物品をしっかり固定しようとすると物品にめり込んでしまうため、長尺物品や柔軟な物品の緊縛には好適ではない。また結束バンドやケーブルタイは、通常一度結束すると切断する以外取り外すことができないか、容易に緊縛を解除することができない。粘着テープは、緊縛した物品に貼り付くことになるので、強い結束力を維持できるが、物品に接着剤が付着して物品を汚損する場合がある。
【0004】
上記の緊縛用器具のほか、表面に種々の凹凸模様を有するポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等から作られた帯状体も、物品の梱包の目的に広く利用されている。しかしこのような帯状体は、端末部を強く引っ張り溶着する必要があり、物品の緊縛には特別の器具が必要である。したがって、ゴム製のバンド等のように手軽に用いることはできない。
【0005】
特許文献1には、エラストマーから構成された薄い環状体であって、円周方向に沿う平坦部分と、直行方向に沿う波状部分とを含むことを特徴とする環状体が開示されている。
【0006】
特許文献2には、互いに同様の形状の凹部及び/又は凸部を有する帯状体の包装用シートであって、当該帯状体が環状に巻かれ、あるいは折り曲げられて両端が接触したときに、凹部と凸部が互いに嵌合するように位置づけ及び配列されていることを特徴とする包装用シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特関昭58-125461号公報
【文献】実開昭59-10263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の環状体は、エラストマー(すなわちゴム)から構成されているため、上記のゴム製のバンドに見られる不都合が発生しうる。一方特許文献2の包装用シートは、重なり合う部分が嵌合することにより着脱、係止するものである。しかしながら、当該包装用シートの嵌合力は不足しており、緊縛が解けて物品がバラバラになったりするという問題があった。
【0009】
本発明は、上述したような従来の緊縛器具の欠点を改良し、緊縛操作が容易で、緩衝性に富み、しかも初期緊縮力の経時低下が少なく、かつ繰り返し嵌合・脱着ができる成形シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の実施形態は、オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物を成形してなるシートであって、該樹脂組成物の動的粘弾性測定において、-20℃における損失正接(tanδ)の値が0.05~0.4であり、該シートが、平坦部と、互いに同じ形状を有する複数の凸部とを有し、該凸部が、錐台の形状を有する、前記シートである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の成形シートは、成形シートの材料と凸部の形状とを併せて検討することにより、凸部と凹部とがスムーズに嵌合し、嵌合した成形シートは容易に外れることなく長期にわたり安定して物品を緊縛することができる。また本発明の成形シートは、緊縛の必要がなくなれば容易に脱着することができ、再度物品の緊縛に使用することができるので、繰り返し使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1-a】
図1-aは、実施形態のシートの正面図である。
【
図1-b】
図1-bは、実施形態のシートの幅方向に形成されている凸部の列を側面から見た図である。
【
図1-c】
図1-cは、実施形態のシートの長さ方向に形成されている凸部の列を側面から見た図である。
【
図2】
図2は、実施形態のシートの凸部の拡大正面図(2-a)と、拡大側面図(2-b)である。
【
図3】
図3は、実施形態のシートの拡大側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態のシートの利用方法の例を表す図である。
【
図5】
図5は、実施形態のシートをの端部を重ね合わせて、凸部を嵌合した様子を表す側面図である。
【
図6】
図6は、実施例ならびに比較例のシートに用いた樹脂組成物の損失正接(tanδ)の温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一の実施形態は、オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物を成形してなるシートである。
本明細書では、フィルム状あるいはシート状のような、薄膜形状のものを総称して「シート」あるいは「成形シート」と呼ぶこととする。
【0014】
実施形態においてオレフィン系樹脂とは、オレフィン類を重合させて得られる高分子化合物のことであり、一般的には、ポリオレフィンと称される。重合させるオレフィン類として、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、ノネンおよびこれらの異性体等が挙げられ、これらの中から一種または二種以上を組みあわせて用いることができる。オレフィン系樹脂として、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂;アイソタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、プロピレンを単独重合した後にエチレンとプロピレンを共重合して得られるプロピレンブロック共重合体等のプロピレン系樹脂;炭素数4以上のα-オレフィンを主な成分とするα-オレフィン樹脂;等が挙げられ、これらの中から一種または二種以上を混合して用いることができる。すなわち本明細書においてオレフィン系樹脂という場合は、単独重合体、共重合体、これらの混合物のいずれの意味も包含するものとする。なお、実施形態において、樹脂組成物とは、上記のオレフィン系樹脂を少なくとも一種類含む樹脂混合物のことである。実施形態のオレフィン系樹脂組成物には、上記のオレフィン系樹脂のほか、安定剤、耐熱剤、帯電防止剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、染料、顔料、油、ワックス、充填材、酸化防止剤、中和剤等の、樹脂組成物用として既知の添加剤を適宜配合することができる。
【0015】
実施形態において、オレフィン系樹脂が、高圧法低密度ポリエチレン(HP-LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、易加工性ポリエチレン(EPPE)、およびこれらの組み合わせからなる混合物からなる群より選択されることが特に好ましい。具体的には、ノバテック-LL(日本ポリエチレン)、ノバテックC6(日本ポリエチレン)、ウルトラゼックス(プライムポリマー)、ネオゼックス(プライムポリマー)、エボリュー(プライムポリマー)、スミカセンL(住友化学)、スミカセンE(住友化学)などを、単独でまたは適宜混合して用いることができる。
【0016】
実施形態に用いる樹脂組成物は、動的粘弾性測定において、-20℃における損失正接(tanδ)の値が0.05~0.4、好ましくは0.05~0.3、より好ましくは0.05~0.2、特に好ましくは0.06~0.2である。動的粘弾性測定(「DMA」と称する。)とは、試料に時間によって変化する歪みまたは応力を与えて、それによって発生する応力または歪みを測定することにより試料の力学的な性質を測定する方法である。DMAは、高分子物質の粘弾性特性の分析に用いられる。DMAにおいて、損失正接とは、損失弾性率と貯蔵弾性率の比率(E/E’)あるいは損失剪断弾性率と貯蔵剪断弾性率の比率(G/G’)であり、「tanδ」と記載される。tanδの値は、材料が変形する際に材料がどれだけのエネルギーを吸収するかを示しており、一般的には、材料の粘性を表す値である。実施形態に用いる樹脂組成物のDMAにおいて、-20℃におけるtanδの値は0.05~0.4、好ましくは0.05~0.3、より好ましくは0.05~0.2、特に好ましくは0.06~0.2である。-20℃におけるtanδの値とは、樹脂組成物から成形されたシートが、互いに接触した際に、シート同士が付着する力(粘着力)の目安であるとされる。一般に、タイヤ用ゴム部材の検討をする際には、-20℃付近のtanδの値の大きさからタイヤのグリップ特性を見積もり、60℃付近のtanδの値の大きさからタイヤの転動特性を見積もることが知られている(「高性能タイヤ用新規溶液重合SBR」、今井ら、住友化学1999-I)。一方、実施形態のシートの材料としては、主にグリップ特性が高い樹脂組成物を用いることが好適であると考えられる。そこで、本発明の実施形態を検討するにあたり、タイヤ用ゴム部材における上記の見地を利用して、DMAにおける-20℃におけるtanδの値を目安に樹脂組成物を選択するものとする。樹脂組成物の-20℃におけるtanδの値が0.05~0.4であると、実施形態のシートの凸部を嵌合した際に、互いに付着したシート同士が滑らないため、これらが容易に外れない。したがって、実施形態のシートにより物品を確実に緊縛することができる。また、物品の緊縛が必要なくなったときには、凸部の嵌合を取り外せば容易に緊縛を解くことができる。
【0017】
実施形態のシートは、平坦部と、互いに同じ形状を有する複数の凸部とを有し、該凸部が、錐台の形状を有している。錐台とは、錐体から頂点を共有し相似に縮小した錐体を取り除いた立体のことである。円錐体から頂点を共有し相似に縮小した円錐体を取り除いた図形は円錐台であり、角錐体から頂点を共有し相似に縮小した角錐体を取り除いた図形は角錐台である。本実施形態において、いかなる錐台の形状を有する凸部を形成してもよいが、特に円錐台、楕円錐台、三角錐台、四角錐台、五角錐台および六角錐台からなる群より選択される錐台の形状を有する凸部は、成形しやすく、後述する嵌合性能を発揮する上でも好適である。
【0018】
実施形態のシートは、凸部が、互いに所定の幅の平坦部を介して、列をなすように配置されている。すなわち、実施形態のシートにおいて、ほぼ等しい形状の複数の凸部がシートの長さ方向に列を形成するように並んでおり、各列は、所定の幅の平坦部により隔てられている。複数の凸部は、シートの長さ方向だけでなく、シートの幅方向においても列をなすように配置されていることが好ましい。そして、複数の凸部により形成されたシートの幅方向の列も、所定の幅の平坦部により隔てられていることが好ましい。実施形態のシートの具体的な形状については、図面を用いて詳細に後述する。
【0019】
実施形態のシートの具体例を図面を用いて詳しく説明する。なお図面に表されたシートは、本発明を具現化するための一例であって、本発明のシートの形態を限定することを意図するものではない。
【0020】
図1は、実施形態のシートの図面である。
図1-aは、シートを正面から見た図(一部)、
図1-bは、
図1-aのa-a線に沿った側面図、
図1-cは、
図1-aのb-b線に沿った側面図である。
図1中、10はシート、11は凸部、12および13は平坦部である。凸部11は、シート10に複数形成されており、全て同じ形状をしている。凸部11は平坦部12を介して、シートの長さ方向(
図1-aでは縦方向)に列をなすように形成され、シートの幅方向(
図1-aでは横方向)にも、平坦部13を介して列をなすように形成されている。シートの長さ方向に形成されている各列同士の間にある平坦部12の幅はどれも所定の長さの幅を有している。すなわち
図1-bにおいて、凸部11の間の平坦部12の幅の長さはいずれも同じである。一方、シートの幅方向に形成されている各列同士の間にある平坦部13の幅はどれも所定の長さの幅を有している。すなわち
図1-cにおいて、凸部11の間の平坦部13の幅の長さはいずれも同じである。
【0021】
図2は、実施形態のシートの凸部の拡大図である。
図2中、21は凸部であり、22は平坦部である。
図2-aは凸部21を上から見た図であり、
図2-bは、
図2-aの凸部21を側面から見た図であり、
図1のa-a線に沿う側面図である。
図2-aからも明らかなとおり、シートには、四角錐台の凸部21が形成されている。凸部21は、同じ幅の平坦部22と22との間に形成されている。
【0022】
図3は、
図1のシートのa-a線に沿う側面図(拡大)である。
図3中、31は凸部、32は平坦部である。凸部31は、同じ幅の平坦部32と32との間に形成されている。
【0023】
図4は、実施形態のシートの利用方法の例を表す図である。実施形態のシートは、
図4に表されるように、丸めて、両端同士を重ね合わせ、凸部と凸部を嵌合させることができる。これによりシートの両端が係止されるため、形成された輪の中に物品を緊縛することができる。実施形態のシートは、緊縛する物品の形状や大きさに応じて自由に切断して使用することができる。また
図4では、実施形態のシートの凸部の列のうち、一端部の2列と、もう一端の2列とを嵌合させているが、緊縛する物品の形状や大きさに応じて、もっと多くの列同士を嵌合させることもできし、1列同士を嵌合させることもできる。
【0024】
図5は、
図4のシートのc-c線に沿う側面の一部を拡大した図である。
図5中、51は凸部、52は平坦部である。
図5中、上側のシートと下側のシートとが互いに離れているように描かれているが、実際には、これらのシートはほぼ密着している。凸部51は同じ幅の平坦部52と52との間に形成されている。
図4のシートを丸めて、重なった両端部では、凸部51同士が嵌合し、平坦部52同士が密着して、シートの両端部が係止される。
【0025】
図4または
図5に表されるように、本実施形態のシートを物品の緊縛のために使用する際には、重なり合ったシートの両端の凸部51同士が嵌合し、容易に外れないことが重要である。実施形態のシートは、オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物を成形してなり、樹脂組成物の動的粘弾性測定において、-20℃における損失正接(tanδ)の値が0.05~0.4であることにより、互いに嵌合した凸部51同士が外れにくくなっている。樹脂組成物の動的粘弾性測定において、-20℃におけるtanδの値は、上記の通り、樹脂組成物から成形されたシートが、互いに接触した際に、シート同士が付着する力(粘着力)の目安である。樹脂組成物の-20℃におけるtanδの値が0.05~0.4であると、嵌合した凸部51同士および密着した平坦部52同士が粘着し、容易に外れない。また、樹脂組成物の動的粘弾性測定において、-30℃におけるtanδの値と、-10℃におけるtanδの値との差が、0.10以下であることが特に好ましい。
【0026】
一方、実施形態のシートにおいて、凸部51が錐台の形状を有しているため、シートを丸めて一端の凸部51をもう片方の一端の凸部51の裏面に嵌合させる際に、スムーズに嵌めることができる。凸部51の形状が錐台、すなわち、下底面に比べて上底面の面積が狭く、窄まった形状となっていることから、シートの一端の凸部51はもう一端の凸部51の裏面に簡単に嵌合させることができる。凸部の形状は、いかなる錐台形であっても良いが、特に、円錐台、楕円錐台、三角錐台、四角錐台、五角錐台および六角錐台からなる群より選択することが好ましい。
【0027】
実施形態のシートは、適切な樹脂組成物を用いて、従来から用いられているシート加工方法およびシート製造方法により一度平坦なシートを形成した後、形成したい凸部の形状を有する雄型(コア)と、それにかみ合う雌型(キャビティ)との組み合わせを用いて凸部を圧縮成形法、真空成形法等の熱成形法により形成することにより製造することができる。シートの成形は、雄型と雌型の組合せにより行っても、雄型だけまたは雌型だけで行ってもよい。あるいは、従来から用いられているシート加工方法およびシート製造方法により、ダイから押し出されたシート状の樹脂組成物が固化する前に、一対の凹凸形状賦形ロールの間を通して、凹凸形状を賦形したシートを製造することもできる。
【0028】
[実施例]
異なる樹脂を用いて、凸部を有するシートを製造し、シートの取り扱い性と、嵌合特性を評価した。
用いた樹脂は、EPPE(エクセレンGH030、住友化学)、LDPE(スミカセンF101、住友化学)、EPゴム(エチレンプロピレンゴム)(タフマーPN3560、三井化学)、およびPP(ポリプロピレン)(住友ノーブレンD101、住友化学)であった。各樹脂のtanδの値を表1に示した。
各樹脂をTダイ成形法にて成形して厚さ500μmの樹脂シート(平面)を得た。次いで凸部の形状を有するコアを有するローラと、それにかみ合うキャビティを有するローラとの間に得られた各平面樹脂シートを通し、凸部を形成した。凸部は、下底面が4mm×5mmの長方形、上底面が1.5mm×2.2mmの長方形、高さが3.2mmの四角錐台形のものとした。
【0029】
シートの取扱い性の評価は、各シートを丸めて凸部と凹部とを重ね嵌合する際に柔軟で簡便に嵌合作業が出来るものを「良」、シートが硬く巻き付け難いものや引っ張ると伸びてしまい作業性が悪いものを「不良」と評価した。
【0030】
シートの嵌合特性の評価は、各シートを丸めて端部と端部とを重ね嵌合することにより行った。このとき、一端にある1個の凸部ともう一端にある1個の凸部とを嵌合して留めることができたものを「良」、一端にある2個以上の凸部ともう一端にある2個以上の凸部とを嵌合して留めることができたものを「可」、留めることが困難または留めることができないものを「不可」と評価した。
【0031】
【0032】
実施例1、2および比較例1、2で用いた各樹脂のtanδ温度特性を
図6に示す。-20℃におけるtanδの値が0.05~0.4の樹脂を用いた実施例1および2のシートは、取り扱い性ならびに嵌合特性共に良好であった。-20℃におけるtanδの値が上記の範囲にない比較例1および2のシートは、取り扱い性や嵌合特性に難が見られた。
図6を検討すると、実施例1、2の樹脂のtanδの温度特性のグラフにおいて、-30℃~-10℃の勾配が小さいことがわかる。上記の通りtanδの値は、樹脂の粘着性の目安であるが、特に-30℃~-10℃付近におけるtanδの値は、常温時の樹脂のグリップ性に影響していると考えられる。実施例1、2のように、この温度範囲においてtanδの値が特定の範囲にある樹脂は、常温でのグリップ性が高い。よってこのような樹脂で形成した凸部同士を嵌合した場合、樹脂同士が滑ることなく粘着するので、嵌合した凸部が外れにくくなると考えられる。