(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】蓄電システムの充放電制御方法、および、充放電制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20231211BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231211BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20231211BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20231211BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20231211BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20231211BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231211BHJP
B60L 58/22 20190101ALI20231211BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20231211BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J7/00 302C
H02J7/34 C
H02J3/38 110
H02J3/32
H01M10/44 P
H01M10/48 P
B60L58/22
B60L58/12
(21)【出願番号】P 2019222150
(22)【出願日】2019-12-09
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】519048584
【氏名又は名称】株式会社セイブ・ザ・プラネット
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アリプル ジャベル
(72)【発明者】
【氏名】清水 幸浩
(72)【発明者】
【氏名】小西 啓文
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-025746(JP,A)
【文献】特開2018-121479(JP,A)
【文献】特開2016-077139(JP,A)
【文献】特開2017-163822(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0244846(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H02J 7/00
H02J 7/34
H02J 3/38
H02J 3/32
H01M 10/44
H01M 10/48
B60L 58/22
B60L 58/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2バッテリーユニットを含む蓄電システムにおいて、前記第1および第2バッテリーユニットの充放電を制御する方法であって、
前記第1および第2バッテリーユニットのSOC(State Of Charge、電気容量値に対する残電気量の比率)の値を取得し、
取得したSOCの値を用いて、所定の演算に従って、前記第1および第2バッテリーユニットの充放電量を求めるものであり、
前記所定の演算は、
放電モードにおいて、前記第1および第2バッテリーユニットのうちSOCがより高いバッテリーユニットに、より大きな放電量を割り当て、
かつ、前記第1および第2バッテリーユニットのSOCが同じタイミングで放電目標値に達するように、前記第1および第2バッテリーユニットに放電量を割り当て、
充電モードにおいて、前記第1および第2バッテリーユニットのうちSOCがより低いバッテリーユニットに、より大きな充電量を割り当て
、かつ、前記第1および第2バッテリーユニットのSOCが同じタイミングで充電目標値に達するように、前記第1および第2バッテリーユニットに充電量を割り当てるものである
ことを特徴とする充放電制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の充放電制御方法において、
前記所定の演算は、
放電モードにおいて、前記第1および第2バッテリーユニットのSOCが下降しつつ徐々に近づくように、前記第1および第2バッテリーユニットに放電量を割り当て、
充電モードにおいて、前記第1および第2バッテリーユニットのSOCが上昇しつつ徐々に近づくように、前記第1および第2バッテリーユニットに充電量を割り当てるものである
ことを特徴とする充放電制御方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の充放電制御方法において、
取得した前記第1および第2バッテリーユニットのSOCの値を、それぞれ、前記第1および第2バッテリーユニットの電気容量値を用いて、新たなSOCの値に変換し、
前記所定の演算を、取得したSOCの値の代わりに前記新たなSOCの値を用いて、実行する
ことを特徴とする充放電制御方法。
【請求項4】
請求項3記載の充放電制御方法において、
放電モードにおいて、取得した前記第1および第2バッテリーユニットのSOCの値に、前記第1および第2バッテリーユニットの電気容量値を用いた換算係数を乗じて、前記新たなSOCの値を得るものであり、
前記第1および第2バッテリーユニットのうち電気容量値がより大きい方のSOCに乗じる前記換算係数は、他方のバッテリーユニットのSOCに乗じる前記換算係数よりも、大きい
ことを特徴とする充放電制御方法。
【請求項5】
複数のバッテリーユニットを含む蓄電システムにおいて、前記複数のバッテリーユニットの充放電を制御する方法であって、
(a)前記複数のバッテリーユニットを、2つのグループに分割し、
(b)前記2つのグループについて、それぞれ、当該グループに属するバッテリーユニットのSOC(State Of Charge、電気容量値に対する残電気量の比率)を用いて、等価的なSOCを算出し、
(c)算出した等価的なSOCを用いて、所定の演算に従って、前記2つのグループの充放電量をそれぞれ求め、
(d)前記グループに含まれる複数のバッテリーユニットをさらに2つのグループに分割して、ステップ(b),(c)を実行し、
(e)ステップ(d)を、各グループがバッテリーユニットを1個のみ含むようになるまで、繰り返し行うものであり、
前記所定の演算は、
放電モードにおいて、前記2つのグループのうち等価的なSOCがより高いグループに、より大きな放電量を割り当て、
かつ、前記2つのグループの等価的なSOCが同じタイミングで放電目標値に達するように、前記2つのグループに放電量を割り当て、
充電モードにおいて、前記2つのグループのうち等価的なSOCがより低いグループに、より大きな充電量を割り当て
、かつ、前記2つのグループの等価的なSOCが同じタイミングで充電目標値に達するように、前記2つのグループに充電量を割り当てるものである
ことを特徴とする充放電制御方法。
【請求項6】
第1および第2バッテリーユニットを含む蓄電システムにおいて、前記第1および第2バッテリーユニットの充放電を制御する制御装置であって、
前記第1および第2バッテリーユニットのSOC(State Of Charge、電気容量値に対する残電気量の比率)の値を用いて、前記第1および第2バッテリーユニットの充放電量を求める演算装置を備え、
前記演算装置は、
放電モードにおいて、前記第1および第2バッテリーユニットのうちSOCがより高いバッテリーユニットに、より大きな放電量を割り当て、
かつ、前記第1および第2バッテリーユニットのSOCが同じタイミングで放電目標値に達するように、前記第1および第2バッテリーユニットに放電量を割り当て、
充電モードにおいて、前記第1および第2バッテリーユニットのうちSOCがより低いバッテリーユニットに、より大きな充電量を割り当て
、かつ、前記第1および第2バッテリーユニットのSOCが同じタイミングで充電目標値に達するように、前記第1および第2バッテリーユニットに充電量を割り当てる
ことを特徴とする充放電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバッテリーユニットを含む蓄電システムについて、充放電を制御するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電の普及拡大に伴い、系統の安定化や需給調整力として、また災害による長期停電に備えて、蓄電池を併設した太陽光発電システムの普及拡大が進んでいる。そして、蓄電池の価格低下とともに、蓄電池を後付けで増設して、複数の蓄電池を含む太陽光発電システムとして利用する需要が高まっている。
【0003】
特許文献1では、直列接続された複数の電池セルを含む車両用のバッテリーモジュールにおいて、電池セルの充電残量を示すSOC(State Of Charge)を制御するバッテリ制御システムにおいて、電池セルのSOCの下限割れを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄電システムに複数のバッテリーユニットが含まれている場合、例えば、1つのバッテリーユニットのSOCが下限値に達したとき、そのバッテリーユニットからはそれ以上の放電ができないため、蓄電システム全体の電力容量が減ってしまう。したがって、複数のバッテリーユニットについて適切に充放電制御するためには、特定のバッテリーユニットのSOCが他のバッテリーユニットよりも先に下限値や上限値に達してしまうことがないように、各バッテリーユニットの充電状態を保つことが好ましい。
【0006】
本発明では、複数のバッテリーユニットを含む蓄電システムにおいて、適切な充放電制御を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、第1および第2バッテリーユニットを含む蓄電システムにおいて、前記第1および第2バッテリーユニットの充放電を制御する方法であって、前記第1および第2バッテリーユニットのSOC(State Of Charge、電気容量値に対する残電気量の比率)の値を取得し、取得したSOCの値を用いて、所定の演算に従って、前記第1および第2バッテリーユニットの充放電量を求めるものであり、前記所定の演算は、放電モードにおいて、前記第1および第2バッテリーユニットのうちSOCがより高いバッテリーユニットに、より大きな放電量を割り当て、かつ、前記第1および第2バッテリーユニットのSOCが同じタイミングで放電目標値に達するように、前記第1および第2バッテリーユニットに放電量を割り当て、充電モードにおいて、前記第1および第2バッテリーユニットのうちSOCがより低いバッテリーユニットに、より大きな充電量を割り当て、かつ、前記第1および第2バッテリーユニットのSOCが同じタイミングで充電目標値に達するように、前記第1および第2バッテリーユニットに充電量を割り当てるものである。
【0008】
この構成によると、蓄電システムにおいて、第1および第2バッテリーユニットの充放電量が、SOCを用いた所定の演算によって、求められる。この所定の演算は、放電モードにおいて、第1および第2バッテリーユニットのうちSOCがより高いバッテリーユニットに、より大きな放電量を割り当て、充電モードにおいて、第1および第2バッテリーユニットのうちSOCがより低いバッテリーユニットに、より大きな充電量を割り当てる。これにより、第1および第2バッテリーユニットのSOCをできるだけ近い値に保つことが可能になり、一方のバッテリーユニットのSOCが他方のバッテリーユニットよりも先んじて下限値や上限値に達してしまうことを回避できる。したがって、より適切な充放電制御を実現することができる。例えば、すでにあるバッテリーユニットとはSOCが異なるバッテリーユニットを、蓄電システムに増設した場合でも、適切な充放電制御を実現することができる。
【0009】
さらに、所定の演算は、放電モードにおいて、第1および第2バッテリーユニットのSOCが同じタイミングで放電目標値に達するように、放電量を割り当て、充電モードにおいて、第1および第2バッテリーユニットのうちSOCが同じタイミングで充電目標値に達するように、充電量を割り当てる。これにより、一方のバッテリーユニットのSOCが他方のバッテリーユニットよりも先んじて下限値や上限値に達してしまうことを確実に回避できるため、蓄電システムのエネルギーを十分に利用することが可能になる。
【0010】
そして、本態様では、前記所定の演算は、放電モードにおいて、前記第1および第2バッテリーユニットのSOCが下降しつつ徐々に近づくように、前記第1および第2バッテリーユニットに放電量を割り当て、充電モードにおいて、前記第1および第2バッテリーユニットのSOCが上昇しつつ徐々に近づくように、前記第1および第2バッテリーユニットに充電量を割り当てる、としてもよい。
【0011】
これにより、放電モードにおいて、第1および第2バッテリーユニットのSOCが下降しつつ徐々に近づき、充電モードにおいて、第1および第2バッテリーユニットのSOCが上昇しつつ徐々に近づく。これにより、第1および第2バッテリーユニットのSOCをできるだけ近い値に保つことが可能になり、一方のバッテリーユニットのSOCが他方のバッテリーユニットよりも先んじて下限値や上限値に達してしまうことを回避できる。したがって、より適切な充放電制御を実現することができる。
【0012】
さらに、本態様では、取得した前記第1および第2バッテリーユニットのSOCの値を、それぞれ、前記第1および第2バッテリーユニットの電気容量値を用いて、新たなSOCの値に変換し、前記所定の演算を、取得したSOCの値の代わりに前記新たなSOCの値を用いて、実行する、としてもよい。
【0013】
これにより、第1および第2バッテリーユニットの電気容量値が異なっている場合であっても、精度良く、充放電制御を行うことができる。例えば、すでにあるバッテリーユニットとは電気容量値が異なるバッテリーユニットを、蓄電システムに増設した場合でも、適切な充放電制御を実現することができる。
【0014】
さらに、放電モードにおいて、取得した前記第1および第2バッテリーユニットのSOCの値に、前記第1および第2バッテリーユニットの電気容量値を用いた換算係数を乗じて、前記新たなSOCの値を得るものであり、前記第1および第2バッテリーユニットのうち電気容量値がより大きい方のSOCに乗じる前記換算係数は、他方のバッテリーユニットのSOCに乗じる前記換算係数よりも、大きい、としてもよい。
【0015】
これにより、第1および第2バッテリーユニットの電気容量値が異なっている場合であっても、精度良く、放電制御を行うことができる。
【0016】
本発明の第2態様では、複数のバッテリーユニットを含む蓄電システムにおいて、前記複数のバッテリーユニットの充放電を制御する方法であって、(a)前記複数のバッテリーユニットを、2つのグループに分割し、(b)前記2つのグループについて、それぞれ、当該グループに属するバッテリーユニットのSOC(State Of Charge、電気容量値に対する残電気量の比率)を用いて、等価的なSOCを算出し、(c)算出した等価的なSOCを用いて、所定の演算に従って、前記2つのグループの充放電量をそれぞれ求め、(d)前記グループに含まれる複数のバッテリーユニットをさらに2つのグループに分割して、ステップ(b),(c)を実行し、(e)ステップ(d)を、各グループがバッテリーユニットを1個のみ含むようになるまで、繰り返し行うものであり、前記所定の演算は、放電モードにおいて、前記2つのグループのうち等価的なSOCがより高いグループに、より大きな放電量を割り当て、かつ、前記2つのグループの等価的なSOCが同じタイミングで放電目標値に達するように、前記2つのグループに放電量を割り当て、充電モードにおいて、前記2つのグループのうち等価的なSOCがより低いグループに、より大きな充電量を割り当て、かつ、前記2つのグループの等価的なSOCが同じタイミングで充電目標値に達するように、前記2つのグループに充電量を割り当てるものである。
【0017】
これにより、3個以上のバッテリーユニットを含む蓄電システムにおいて、第1態様と同様に、各バッテリーユニットに充放電量を割り当てることができるので、より適切な充放電制御を実現することができる。
【0018】
本発明の第3態様では、第1および第2バッテリーユニットを含む蓄電システムにおいて、前記第1および第2バッテリーユニットの充放電を制御する制御装置であって、前記第1および第2バッテリーユニットのSOC(State Of Charge、電気容量値に対する残電気量の比率)の値を用いて、前記第1および第2バッテリーユニットの充放電量を求める演算装置を備え、前記演算装置は、放電モードにおいて、前記第1および第2バッテリーユニットのうちSOCがより高いバッテリーユニットに、より大きな放電量を割り当て、かつ、前記第1および第2バッテリーユニットのSOCが同じタイミングで放電目標値に達するように、前記第1および第2バッテリーユニットに放電量を割り当て、充電モードにおいて、前記第1および第2バッテリーユニットのうちSOCがより低いバッテリーユニットに、より大きな充電量を割り当て、かつ、前記第1および第2バッテリーユニットのSOCが同じタイミングで充電目標値に達するように、前記第1および第2バッテリーユニットに充電量を割り当てる。
【0019】
これにより、蓄電システムにおいて、第1および第2バッテリーユニットの充放電量が、演算装置によって、SOCの値を用いて求められる。演算装置は、放電モードにおいて、第1および第2バッテリーユニットのうちSOCがより高いバッテリーユニットに、より大きな放電量を割り当て、充電モードにおいて、第1および第2バッテリーユニットのうちSOCがより低いバッテリーユニットに、より大きな充電量を割り当てる。これにより、第1および第2バッテリーユニットのSOCをできるだけ近い値に保つことが可能になり、一方のバッテリーユニットのSOCが他方のバッテリーユニットよりも先んじて下限値や上限値に達してしまうことを回避できる。したがって、より適切な充放電制御を実現することができる。
【0020】
さらに、演算装置は、放電モードにおいて、第1および第2バッテリーユニットのSOCが同じタイミングで放電目標値に達するように、放電量を割り当て、充電モードにおいて、第1および第2バッテリーユニットのうちSOCが同じタイミングで充電目標値に達するように、充電量を割り当てる。これにより、一方のバッテリーユニットのSOCが他方のバッテリーユニットよりも先んじて下限値や上限値に達してしまうことを確実に回避できるため、蓄電システムのエネルギーを十分に利用することが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、複数のバッテリーユニットを含む蓄電システムにおいて、適切な充放電制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】実施形態1に係る電力割り当てアルゴリズムの例
【
図3】実施形態2に係る電力割り当てアルゴリズムの例
【
図5】放電モードにおけるSOCおよび放電電力の変化例を示すグラフ
【
図6】充電モードにおけるSOCおよび充電電力の変化例を示すグラフ
【
図7】放電モードにおける放電電力の変化例を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用範囲あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
(実施形態1)
図1は蓄電システムの構成例である。
図1の蓄電システムは、充放電可能な2個のバッテリーユニット1,2と、パワーコンディショナ3と、を含む。各バッテリーユニット1,2はそれぞれ、蓄電池11,12と、ユニットコントローラ12,22とを備える。充放電制御装置の一例であるパワーコンディショナ3は、バッテリーユニット1,2の充放電を制御する。ユニットコントローラ12,22は、双方向DC/DCコンバータ13,23を含み、パワーコンディショナ3の指示に従って、蓄電池11,12の充放電を実行する。パワーコンディショナ3は、バッテリーユニット1,2の充放電量を演算する演算装置31を備える。この演算装置31は、例えば、プロセッサとメモリを備えたマイクロコンピュータによって実現される。
【0025】
実施形態1では、演算装置31は、バッテリーユニット1,2のSOC(State Of Charge)の値を用いて、バッテリーユニット1,2の充放電量を演算する。ここで、本開示では、SOCは、当該バッテリーユニットにおける、電気容量値に対する残電気量の比率であるものとする。パワーコンディショナ3は、この演算結果を用いて、バッテリーユニット1,2の充放電量の割り当てを行う。
【0026】
ここで、複数のバッテリーユニットを含む蓄電システムは、全てのバッテリーユニットが動作している間は、各バッテリーユニットのSOCをできるだけ近い値に保つことが好ましい。したがって、本実施形態では、放電モードでは、バッテリーユニット1,2のうちSOCがより高いバッテリーユニットに、より大きな放電量を割り当て、充電モードでは、バッテリーユニット1,2のうちSOCがより低いバッテリーユニットに、より大きな充電量を割り当てる。
【0027】
・放電モードにおける演算例
蓄電システムの総放電電力をPDschrg-Total、バッテリーユニット1,2のSOCをそれぞれSOC1,SOC2とし、バッテリーユニット1,2にそれぞれ割り当てる放電電力をPDschrg1,PDschrg2とする。演算装置31は、次式(1),(2)に従って、PDschrg1,PDschrg2を演算する。
【0028】
【0029】
上の式(1),(2)は、放電中にバッテリーユニット1,2のSOCをバランスさせるために、バッテリーユニット1,2のうちSOCがより高いバッテリーユニットに、より大きな放電量を割り当てるための演算式の一例である。
【0030】
・充電モードにおける演算例
蓄電システムの総充電電力をPChrg-Total、バッテリーユニット1,2にそれぞれ割り当てる充電電力をPChrg1,PChrg2とする。演算装置31は、次式(3),(4)に従って、PChrg1,PChrg2を演算する。
【0031】
【0032】
上の式(3),(4)は、充電中にバッテリーユニット1,2のSOCをバランスさせるために、バッテリーユニット1,2のうちSOCがより低いバッテリーユニットに、より大きな充電電力を割り当てるための演算式の一例である。
【0033】
以上のように本実施形態によると、蓄電システムにおいて、バッテリーユニット1,2の充放電量が、SOCを用いた所定の演算によって、求められる。この所定の演算は、放電モードにおいて、バッテリーユニット1,2のうちSOCがより高いバッテリーユニットに、より大きな放電量を割り当て、充電モードにおいて、バッテリーユニット1,2のうちSOCがより低いバッテリーユニットに、より大きな充電量を割り当てる。これにより、バッテリーユニット1,2のSOCをできるだけ近い値に保つことが可能になり、一方のバッテリーユニットのSOCが他方のバッテリーユニットよりも先んじて下限値や上限値に達してしまうことを回避できる。したがって、より適切な充放電制御を実現することができる。例えば、すでにあるバッテリーユニットとはSOCが異なるバッテリーユニットを、蓄電システムに増設した場合でも、適切な充放電制御を実現することができる。
【0034】
なお、式(1)~(4)の導出については、後述する。また、本実施形態における演算は、式(1)~(4)に限られるものではない。
【0035】
また、演算の結果、いずれかのバッテリーユニットの充放電量が負の値になる可能性がある。例えば、放電モードにおいて、PDschrg1が負の値になった場合、これは、バッテリーユニット2が総放電電力PDischrg-Totalよりも多く放電を行い、バッテリーユニット1が余分な電力を充電することを表す。ところが、バッテリーユニット1,2間での電力伝送が許可されていない場合は、バッテリーユニット1,2の充放電量は負の値に設定できないため、対処が必要になる。これは、バッテリーユニット間で電力伝送を行うと、エネルギーの損失が発生するため、合理的ではないからである。また、バッテリーユニット1,2に最小充電量や最小放電量が設定されている場合にも、対処が必要になる。
【0036】
図2はバッテリーユニット1,2間での電力伝送が許可されていない場合における、本実施形態に係るアルゴリズムの例である。
図2のアルゴリズムは、放電モードでの電力割り当てを行うものである。
【0037】
まず、バッテリーユニット1,2に割り当てる放電電力PDschrg1,PDschrg2を、例えば式(1),(2)に従って演算する(S101)。そして、PDschrg1が下限値(ここでは0.0とする)を下回っているか否かを判定する(S102)。PDschrg1が下限値を下回っているときは、PDschrg1を下限値に設定し、PDschrg2に(PDschrg1-下限値)を加える(S103)。PDschrg1が下限値を下回っていないときは、PDschrg2が下限値を下回っているか否かを判定する(S104)。PDschrg2が下限値を下回っているときは、PDschrg2を下限値に設定し、PDschrg1に(PDschrg2-下限値)を加える(S105)。
【0038】
例えば、PDschrg-Totalを5.0kw、SOC1を80%,SOC2を20%とする。式(1),(2)に従って演算すると、
PDschrg1=((3×0.8-0.2)/(2(0.8+0.2)))×5.0=5.5kw
PDschrg2=((3×0.2-0.8)/(2(0.2+0.8)))×5.0=-0.5kw
となる。この場合、PDschrg2が0.0を下回っているため、PDschrg2を0.0に設定し、PDschrg1に(PDschrg2-0.0)を加える。すなわち
PDschrg1=5.5-0.5=5.0
PDschrg2=0.0
とする。
【0039】
このようなアルゴリズムによって、バッテリーユニット1,2の充放電量が負の値に設定されることを回避することができる。なお、充電モードにおいても、
図2のアルゴリズムと同様に、電力割り当てを行えばよい。
【0040】
なお、上の説明では下限値を0.0としたが、例えばバッテリーユニット1,2に最小放電量が設定されている場合は、下限値として最小放電量を与えることによって、同様に対処することができる。
【0041】
(実施形態2)
蓄電システムでは、各バッテリーユニットが互いに異なる最大充電可能電力/最大放電可能電力を有している場合がある。このような場合において、実施形態1で示したように、SOCに応じて各バッテリーユニットの充放電電力を割り当てた場合、バッテリーユニットの充電/放電容量の一部が未使用のままになる可能性がある。このことは、蓄電システム全体の電力の効果的な活用の妨げとなってしまう。
【0042】
そこで、実施形態2では、SOCに加えて、各バッテリーユニットの最大充電可能電力/最大放電可能電力を考慮して、充放電電力の割り当てを行う。
【0043】
図3は本実施形態に係るアルゴリズムの例である。
図3のアルゴリズムは、放電モードでの電力割り当てを行うものであり、バッテリーユニット間での電力伝送が許可されていない場合を想定している。
【0044】
まず、バッテリーユニット1,2のSOC、最大放電可能電力PDislmt1,PDislmt2、および、蓄電システムの総放電電力PDschrg-Totalを更新する(S201)。そして、バッテリーユニット1,2の放電電力が最大放電可能電力に達したことを示すフラグをOFFにする(S202)。
【0045】
次に、バッテリーユニット1,2に割り当てる放電電力P
Dschrg1,P
Dschrg2を設定する(S10)。このステップS10は、例えば、第1実施形態で示した
図2のアルゴリズムに従って行えばよい。
【0046】
その後、PDschrg1がPDislmt1を超えているか否かを判定する(S203)。PDschrg1がPDislmt1を超えているときは、フラグをONにする。そして、PDschrg1をPDislmt1に設定し、PDschrg2を(PDschrg-Total-PDschrg1)に設定する(S204)。PDschrg1がPDislmt1を超えていないときは、PDschrg1,PDschrg2を変更しない。
【0047】
その後、PDschrg2がPDislmt2を超えているか否かを判定する(S205)。PDschrg2がPDislmt2を超えていないときは、アルゴリズムを終了する。PDschrg2がPDislmt2を超えているときは、PDschrg2をPDislmt2に設定する(S206)。そして、フラグがONであるか否かを判定する(S207)。フラグがONであるときは、アルゴリズムを終了する。フラグがOFFであるときは、PDschrg1を(PDschrg-Total-PDschrg2)に設定し(S208)、アルゴリズムを終了する。
【0048】
例えば、PDschrg-Totalを7.0kw、SOC1を30%,SOC2を80%とする。ステップS10において、例えば式(1),(2)に従って演算すると、
PDschrg1=((3×0.3-0.8)/(2(0.3+0.8)))×7.0=0.32kw
PDschrg2=((3×0.8-0.3)/(2(0.3+0.8)))×7.0=6.68kw
となる。ここで、PDislmt1が2.0kw,PDislmt2が5.0kwとすると、PDschrg2はPDislmt2を超えているので
PDschrg2=PDislmt2=5.0kw
PDschrg1=(PDischrg-Total-PDschrg2)=(7.0-5.0)=2.0kw
とする。
【0049】
すなわち、本アルゴリズムによると、SOCを用いて設定した充放電電力がバッテリーユニット1,2の最大充放電電力を超えた場合、蓄電システムの最大電力容量を利用するために、その設定が無効にされる。なお、充電モードにおいても、
図3のアルゴリズムと同様に、電力割り当てを行えばよい。
【0050】
本実施形態によると、バッテリーユニットの充電/放電容量の一部が未使用のままになる可能性を回避することができ、蓄電システム全体の電力を効果的に活用することが可能になる。
【0051】
(実施形態3)
複数のバッテリーユニットが実装されている蓄電システムでは、システム全体の電気容量値は、各バッテリーユニットの電気容量値の合計と等しい。そして、バッテリーユニットの電気容量値が互いに等しい場合は、上述した実施形態1,2で示したアルゴリズムに従って、電力を割り当てればよい。
【0052】
しかしながら、例えば、既存の蓄電システムに新たなバッテリーユニットを追加した場合には、各バッテリーユニットの電気容量値が互いに異なることがあり得る。各バッテリーユニットの電気容量値が異なる場合は、電力の割り当てにおいて、その電気容量値の違いを考慮することが好ましい。なぜならば、SOCは当該バッテリーユニットの電気容量値に対する残電気量の比率を表す値であるため、電気容量値が異なるバッテリーユニットでは、SOCは異なる意味を持つからである。
【0053】
そこで、実施形態3では、各バッテリーユニット1,2の電気容量値が異なる場合、その違いを考慮して、SOCを新たなSOCに変換してから、充放電電力の割り当てを行う。すなわち、取得したバッテリーユニット1,2のSOCの値を、それぞれ、バッテリーユニット1,2の電気容量値を用いて、新たなSOCの値に変換する。
【0054】
・放電モードにおける演算例
バッテリーユニット1,2の電気容量値を、それぞれ、WH1,WH2とする。次式(5),(6)に従って、バッテリーユニット1,2のSOCであるSOC1,SOC2を、新たなSOCであるSOC1-new-dschrg,SOC2-new-dschrgに変換する。
【0055】
【0056】
変換後は、SOC1,SOC2の代わりに、SOC1-new-dschrg,SOC2-new-dschrgを用いて、上述した実施形態1,2と同様に、放電電力の割り当てを行えばよい。上式(5),(6)に示すように、放電モードにおいては、バッテリーユニット1,2のSOCの値に、バッテリーユニット1,2の電気容量値を用いた換算係数を乗じて、新たなSOCの値を得る。そして、換算係数に関しては、バッテリーユニット1,2のうち電気容量値がより大きい方のSOCに乗じる換算係数を、他方のバッテリーユニットのSOCに乗じる換算係数よりも、大きくすればよい。
【0057】
・充電モードにおける演算例
次式(7),(8)に従って、SOC1,SOC2を、新たなSOCであるSOC1-new-chrg,SOC2-new-chrgに変換する。
【0058】
【0059】
変換後は、SOC1,SOC2の代わりに、新たなSOCであるSOC1-new-chrg,SOC2-new-chrgを用いて、上述した実施形態1,2と同様に、充電電力の割り当てを行えばよい。
【0060】
例えば、SOC1を30%,SOC2を80%とし、WH1を3kwh,WH2を7kwhとする。この場合、式(5)-(8)に従うと、
SOC1-new-dschrg=0.3×3/(3+7)=0.09=9%
SOC2-new-dschrg=0.8×7/(3+7)=0.56=56%
SOC1-new-chrg =(0.3×3+7)/(3+7)=0.79=79%
SOC2-new-chrg =(0.8×7+3)/(3+7)=0.86=86%
となる。これらの値を用いて、上述した実施形態1,2と同様に演算を行い、充放電電力の割り当てを行えばよい。
【0061】
また、バッテリーユニットの電気容量値は、動作状態に応じて徐々に減少する。この変化を、SOH(State Of Health)を用いて、上の演算に反映させることが好ましい。SOHとは、バッテリーユニットの劣化状態を示すパラメータであり、例えば、初期電気容量に対する残量部分の割合で表される。この場合、WH1,WH2を、式(9),(10)を用いて、修正された電気容量値であるWH1’,WH2’に変換する。
【0062】
【0063】
WH1,WH2の代わりに、修正された電気容量値であるWH1’,WH2’を用いて、式(5)-(8)の演算を行い、新たなSOCであるSOC1-new-dschrg,SOC2-new-dschrg,SOC1-new-chrg,SOC2-new-chrgを求めればよい。
【0064】
本実施形態によると、バッテリーユニット1,2の電気容量値が異なっている場合であっても、精度良く、充放電制御を行うことができる。例えば、すでにあるバッテリーユニットとは電気容量値が異なるバッテリーユニットを、蓄電システムに増設した場合でも、適切な充放電制御を実現することができる。
【0065】
(実施形態4)
上述の実施形態1~3は、バッテリーユニットが2個の場合を例にとって説明を行った。実施形態4では、蓄電システムがn個(nは3以上の整数)のバッテリーユニットを含む場合における、充放電電力の割り当てについて説明する。
【0066】
図4は蓄電システムの構成例である。
図4の蓄電システムは、n個(nは3以上の整数)のバッテリーユニット1,2,…,m,…,nを含む。このような蓄電システムに対しては、上述の実施形態1~3で示したアルゴリズムを階層的に適用することによって、電力の割り当てを行うことができる。
【0067】
すなわち、
図4に示すように、n個のバッテリーユニットを、m個のバッテリーユニットからなる第1グループと、(n-m)個のバッテリーユニットからなる第2グループとに分割する。そして、第1グループに属するm個のバッテリーユニットを単一のバッテリーユニットとみなすとともに、第2グループに属する(n-m)個のバッテリーユニットを単一のバッテリーユニットとみなして、上述した実施形態1~3の方法を適用して、充放電割り当てを行う。
【0068】
この場合、単一のバッテリーユニットと見なしたグループについて、等価的な、電気容量値、SOC、最大充電電力および最大放電電力を算出する。具体的には例えば、m個のバッテリーユニットからなる第1グループについて、等価的な、電気容量値WHeq-m、SOCSOCeq-m、最大充電電力PDschrgMax-eq-m、および、最大放電電力PChrgMax-eq-mを、次式(11)~(14)を用いて算出する。
【0069】
【0070】
同様にして、(n-m)個のバッテリーユニットからなる第2グループについても、等価的な、電気容量値、SOC、最大充電電力および最大放電電力を算出する。そして、等価的な電気容量値、SOC、最大充電電力および最大放電電力を用いて、上述した実施形態1~3の方法を適用して、充放電割り当てを行う。
【0071】
次に、第1グループに属するm個のバッテリーユニットを、さらに2つのグループに分割する。そして、分割した各グループに属する複数のバッテリーユニットをそれぞれ単一のバッテリーユニットとみなし、等価的な、電気容量値、SOC、最大充電電力および最大放電電力を算出して、上述した実施形態1~3の方法を適用して、充放電割り当てを行う。同様に、第2グループに属する(n-m)個のバッテリーユニットを、さらに2つのグループに分割する。そして、分割した各グループに属する複数のバッテリーユニットをそれぞれ単一のバッテリーユニットとみなし、等価的な、電気容量値、SOC、最大充電電力および最大放電電力を算出して、上述した実施形態1~3の方法を適用して、充放電割り当てを行う。
【0072】
以上のような処理を、各グループがバッテリーユニットを1個のみ含むようになるまで繰り返し行う。
【0073】
以上のように本実施形態によると、3個以上のバッテリーユニットを含む蓄電システムにおいて、第1~第3実施形態と同様に、各バッテリーユニットに充放電量を割り当てることができるので、より適切な充放電制御を実現することができる。
【0074】
<式(1)~(4)の導出について>
以下、第1実施形態で用いた式(1)~(4)の導出について、説明する。以下に説明するように、式(1)~(2)は、放電モードにおいて、バッテリーユニット1,2のSOCが同じタイミングで0.0に達するように、放電量を割り当てるものであり、式(3)~(4)は、充電モードにおいて、バッテリーユニット1,2のSOCが同じタイミングで1.0に達するように、充電量を割り当てるものである。式(1)~(4)を用いることによって、蓄電システムのエネルギーを最大限に利用することが可能になる。なお、SOC=0.0は、放電目標値の一例であり、SOC=1.0は、充電目標値の一例である。
【0075】
・放電モード
図5は放電モードにおけるSOCおよび放電電力の変化例を示すグラフである。
図5では、2個のバッテリーユニット1,2の放電電力P
1,P
2は、バッテリーユニット1,2のSOCであるSOC
1, SOC
2の変化とともに変化している。そして、SOC
1, SOC
2は同一タイミングで0.0に達し、そのとき、放電電力P
1,P
2は互いに等しくなる(0.5P
t)。
図5の変化例を前提として、式(1)-(2)を導出する。
【0076】
図5のグラフから、バッテリーユニット1,2の放電電力P
1,P
2は、それぞれ次の式で表される。
【0077】
【0078】
K1,K2は総放電電力に対するバッテリーユニット1,2への放電量の割り当て比率であり、
K1+K2=1
である。
【0079】
SOC1が0.0に達するまでに、バッテリーユニット1が放電するエネルギーは、
【0080】
【0081】
となる。このエネルギーは、SOC1×WH1に等しい。したがって、次式が成り立つ。
【0082】
【0083】
同様に、バッテリーユニット2に関して、次式が成り立つ。
【0084】
【0085】
Δtを消去し、かつ、WH1=WH2を仮定すると、次式が成り立つ。
【0086】
【0087】
したがって、K1,K2は、次のようになる。
【0088】
【0089】
以上により、式(1),(2)が導かれる。
【0090】
・充電モード
図6は充電モードにおけるSOCおよび充電電力の変化例を示すグラフである。
図6では、2個のバッテリーユニット1,2の充電電力P
1,P
2は、バッテリーユニット1,2のSOCであるSOC
1, SOC
2の変化とともに変化している。そして、SOC
1, SOC
2は同一タイミングで1.0に達し、そのとき、充電電力P
1,P
2は互いに等しくなる(0.5P
t)。
図6の変化例を前提として、式(3)-(4)を導出する。
【0091】
ここで、充電モードでは、SOC1, SOC2が1.0に達するまでにバッテリーユニット1,2に充電されるエネルギーは、(1-SOC1)×WH1,(1-SOC2)×WH2に等しい。したがって、次式が成り立つ。
【0092】
【0093】
放電モードの場合と同様に、Δtを消去し、かつ、WH1=WH2を仮定すると、K1,K2は、次のようになる。
【0094】
【0095】
以上により、式(3),(4)が導かれる。
【0096】
(変形例その1)
図5のグラフでは、放電モードにおけるSOCの放電目標値を0.0としており、また、
図6のグラフでは、充電モードにおけるSOCの充電目標値を1.0としている。ただし、これに限られるものではなく、SOCの放電目標値を0.0以外の値とし、SOCの充電目標値を1.0以外の値としてもかまわない。
【0097】
例えば、放電モードにおけるSOCの目標値を0.05とし、充電モードにおける目標値を0.95とする。この場合は、放電モードにおいて、SOCが0.05に達するまでにバッテリーユニット1,2が放電するエネルギーが、(SOC1-0.05)×WH1,(SOC2-0.05)×WH2に等しくなるものとして、上述の説明と同様にしてK1,K2を求めればよい。また、充電モードにおいて、SOCが0.95に達するまでにバッテリーユニット1,2が充電されるエネルギーが、(0.95-SOC1)×WH1,(0.95-SOC2)×WH2と等しくなるものとして、上述の説明と同様にしてK1,K2を求めればよい。
【0098】
上で導出した式は、放電モードにおいて、バッテリーユニット1,2のSOCが同じタイミングで0.05に達するように、放電量を割り当てるものであり、充電モードにおいて、バッテリーユニット1,2のSOCが同じタイミングで0.95に達するように、充電量を割り当てるものである。
【0099】
あるいは、バッテリーユニット1,2のSOCが、所定期間経過後に十分に近づき、所定の目標範囲内に入るよう、充電量または放電量を割り当てる、としてもよい。例えば、放電モードにおけるSOCの目標範囲を0.0~0.1とし、充電モードにおけるSOCの目標範囲を0.9~1.0とする。そして、放電モードにおいて、バッテリーユニット1,2のSOCが所定期間経過後に0.0~0.1の範囲内に入るように、放電量を割り当てる。また、充電モードにおいて、バッテリーユニット1,2のSOCが所定期間経過後に0.9~1.0の範囲内に入るように、充電量を割り当てる。
【0100】
すなわち、バッテリーユニット1,2の充放電量を求める所定の演算は、放電モードにおいて、バッテリーユニット1,2のSOCが下降しつつ徐々に近づくように、バッテリーユニット1,2に放電量を割り当て、充電モードにおいて、バッテリーユニット1,2のSOCが上昇しつつ徐々に近づくように、バッテリーユニット1,2に充電量を割り当てる、としてもよい。
【0101】
(変形例その2)
上述した式(1)-(4)の導出では、バッテリーユニット1,2の放電電力や充電電力は、SOCの変化とともに変化するものとした。これに代えて、
図7に示すように、SOCがゼロになるまでの間、バッテリーユニットの充放電電力P
1,P
2は一定であるものとしてもかまわない。
【0102】
この場合、次の式が成り立つ。
【0103】
【0104】
したがって、K1,K2は、次のようになる。
【0105】
【0106】
本変形例によって得られた演算式を用いた場合でも、第1実施形態と同様に、放電モードにおいて、SOCがより高いバッテリーユニットにより大きな放電量を割り当て、充電モードにおいて、SOCがより低いバッテリーユニットに、より大きな充電量を割り当てることができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、複数のバッテリーユニットを含む蓄電システムにおいて、適切な充放電制御を行うのに極めて有用である。
【符号の説明】
【0108】
1,2 バッテリーユニット
3 パワーコンディショナ(充放電制御装置)
31 演算装置