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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20231211BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20231211BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20231211BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
B23K26/082
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019228798
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021096410
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 翼
(72)【発明者】
【氏名】大久保 弥市
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 勇輝
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-228414(JP,A)
【文献】特開2003-084225(JP,A)
【文献】特開2008-064506(JP,A)
【文献】特開2003-094192(JP,A)
【文献】特開2009-271417(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101576657(CN,A)
【文献】特開2005-292322(JP,A)
【文献】特開平08-174256(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0341834(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08-26/10
B23K 26/08-26/082
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガルバノモータによって反射ミラーを回転させレーザ発振器からのレーザパルスを2次元方向に走査するガルバノスキャナと、前記ガルバノモータに駆動電流を供給する駆動回路とを有するレーザ加工装置において、
前記ガルバノモータの起動から停止までの前記駆動電流の変化を示し、時間経過に伴う前記駆動電流の変化が異なる複数の時間変位パターンを記憶する電流パターン記憶部と、
前記複数の時間変位パターンのうち前記ガルバノスキャナへの動作指令により指定された時間変化パターンを、前記電流パターン記憶部から読み出して補正する電流パターン補正部と、
前記動作指令により指定された時間変化パターンに基づく前記ガルバノモータの回転方向が同一方向に連続する回数をカウントするカウント手段と、を備え、
新たな動作指令において前記カウント手段でのカウント値が所定値になったら前記電流パターン記憶部から読み出した前記時間変位パターンを縮小して前記駆動電流が弱まるように前記電流パターン補正部で補正するようにしたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
ガルバノモータによって反射ミラーを回転させレーザ発振器からのレーザパルスを2次元方向に走査するガルバノスキャナと、前記ガルバノモータに駆動電流を供給する駆動回路とを有するレーザ加工装置において、
前記ガルバノモータの起動から停止までの前記駆動電流の変化を示し、時間経過に伴う前記駆動電流の変化が異なる複数の時間変位パターンを記憶する電流パターン記憶部と、
前記複数の時間変位パターンのうち前記ガルバノスキャナへの動作指令により指定された時間変化パターンを、前記電流パターン記憶部から読み出して補正する電流パターン補正部と、
前記動作指令により指定された時間変化パターンに基づく前記ガルバノモータの回転方向が同一方向に連続した場合の回転角度の累計値を算出する累計手段と、を備え、
新たな動作指令において前記累計値が所定値になったら前記電流パターン記憶部から読み出した前記時間変位パターンを縮小して前記駆動電流が弱まるように前記電流パターン補正部で補正するようにしたことを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ発振器からのレーザパルスを2次元方向に走査するガルバノスキャナを有するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の如きガルバノスキャナにおいては、過去の走査履歴に起因して目標位置への位置決め精度が悪くなる場合がある。
例えば、ガルバノスキャナに含まれるガルバノモータの回転方向が何回か連続して同じになるような移動指令がガルバノスキャナに与えられると、目標位置よりも行き過ぎが発生し、目標位置への位置決め精度が悪くなる場合があることが判っている。
また、ガルバノスキャナに含まれるガルバノモータの回転方向が何回か連続して同じになり、それらの回転角度の累計が所定値を超えるような移動指令がガルバノスキャナに与えられると、目標位置よりも行き過ぎが発生し、目標位置への位置決め精度が悪くなる場合もあり得る。
例えば、特許文献1に開示された技術は位置決め精度を向上させるものであるが、過去の走査履歴に起因して目標位置への位置決め精度が悪くなる問題について考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-149406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、レーザ発振器からのレーザパルスを2次元方向に走査するガルバノスキャナを有するレーザ加工装置において、ガルバノスキャナの目標位置への位置決め精度を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願において開示される発明のうち、代表的なレーザ加工装置は、ガルバノモータによって反射ミラーを回転させレーザ発振器からのレーザパルスを2次元方向に走査するガルバノスキャナと、前記ガルバノモータに駆動電流を供給する駆動回路とを有するレーザ加工装置において、前記ガルバノモータの起動から停止までの前記駆動電流の変化を示し、時間経過に伴う前記駆動電流の変化が異なる複数の時間変位パターンを記憶する電流パターン記憶部と、前記複数の時間変位パターンのうち前記ガルバノスキャナへの動作指令により指定された時間変化パターンを、前記電流パターン記憶部から読み出して補正する電流パターン補正部と、前記動作指令により指定された時間変化パターンに基づく前記ガルバノモータの回転方向が同一方向に連続する回数をカウントするカウント手段と、を備え、新たな動作指令において前記カウント手段でのカウント値が所定値になったら前記電流パターン記憶部から読み出した前記時間変位パターンを縮小して前記駆動電流が弱まるように前記電流パターン補正部で補正するようにしたことを特徴とする。
【0006】
なお、本願において開示される発明の代表的な特徴は以上の通りであるが、ここで説明していない特徴については、後述する発明を実施するための形態において説明しており、また特許請求の範囲にも示した通りである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、レーザ発振器からのレーザパルスを2次元方向に走査するガルバノスキャナを有するレーザ加工装置において、ガルバノスキャナの目標位置への位置決め精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例1における電流パターン補正部での処理を説明するためのフローチャートである。
図2】本発明の実施例1となるレーザ加工装置の概略構成図である。
図3図2におけるガルバノ制御部の構成を説明するための図である。
図4図2における電流パターン記憶部に記憶されている電流パターンを示す図である。
図5】本発明の実施例2における電流パターン補正部での処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
以下、本発明の実施例1を説明する。
図2は本発明の実施例1となるレーザ加工装置のブロック図である。各構成要素や接続線は、主に本実施例を説明するために必要と考えられるものを示してあり、レーザ加工装置として必要な全てを示している訳ではない。
ここでのレーザ加工装置は、プリント基板に穴あけを行うものであるが、本発明はこれに限らず、レーザパルスを用いて被加工物の複数個所に加工を施すレーザ加工装置でもよい。
【0010】
図2において、レーザ加工装置はレーザ発振器(図示せず)から出射されたレーザパルスをプリント基板1に照射するレーザ照射ユニット2と、装置全体の動作を制御するための全体制御部3を含む。
レーザ照射ユニット2の内部には、レーザパルスを2次元方向に偏向させるガルバノスキャナ4、ガルバノスキャナ4からのレーザパルスをプリント基板1の穴あけ位置に照射する集光レンズ5等を含む。
全体制御部3は、例えばプログラム制御の処理装置を中心にして構成され、ガルバノスキャナ4を制御するガルバノ制御部6等が設けられている。
【0011】
ガルバノ制御部6は図3に示すような構成となっている。
すなわち、ガルバノ制御部6は全体制御部3の内部において連続的に与えられるガルバノ移動指令Cgを受取るガルバノ指令受付部10と、ガルバノスキャナ4内に含まれ反射ミラーを回転させるためのガルバノモータ11を駆動するための駆動電流を発生するガルバノ駆動回路12と、ガルバノ指令受付部10で受付けたガルバノ移動指令Cgに基づきガルバノ駆動回路12を制御するためのガルバノ駆動制御部13とを含む。
【0012】
ガルバノ駆動制御部13は各ガルバノ移動指令Cgにより指定される時間変位パターンを記憶する電流パターン記憶部14と、この電流パターン記憶部14から読み出した時間変位パターンを補正してガルバノ駆動回路12に与える電流パターン補正部15を含む。ガルバノスキャナ4の内部には、ガルバノモータ11の回転角度を検出してガルバノ駆動制御部12へフィードバック信号を送るためのエンコーダ16が設けられている。
なお、ガルバノスキャナ4内に含まれるガルバノモータ11は、走査位置をプリント基板1上でX方向に移動させるためのX系と、Y方向に移動させるためのY系の二つが設けられる。従って、図3では省略してあるが、ガルバノ駆動回路12とガルバノ駆動制御部13とエンコーダ16は、X系とY系のそれぞれに対応して設けられているものとする。
【0013】
電流パターン記憶部14に記憶されている時間変位パターンとは、ガルバノモータ11の回転角度に応じてガルバノ駆動回路12から与える駆動電流の波形を示すものであり、波形は例えば図4に示すようなものである。
すなわち、ガルバノモータ11の起動から停止までの駆動電流の変化、すなわち各時刻に対応してその時の駆動電流の値P1、P2、P3・・・により表されるパターンである。電流パターン記憶部14に記憶されている各時間変位パターンの周期Tは、いずれも同じ長さであり、駆動電流値P1、P2、P3・・・だけが異なっている。
【0014】
電流パターン補正部15は電流パターン記憶部14から読み出した時間変位パターンでの駆動電流値P1、P2、P3・・・を指定された比率で変換するものである。例えば85%に縮小する場合、駆動電流値P1、P2、P3・・・はそれぞれ85%となり、駆動電流を弱めることができる。また、125%に拡大する場合、駆動電流値P1、P2、P3・・・はそれぞれ125%となり、駆動電流を強めることができる。
図1は電流パターン補正部15での処理を説明するためのフローチャートである。
電流パターン補正部15では、新たな受付けたガルバノ移動指令Cgがガルバノ指令受付部10で受付けされる(ステップ1)と、当該ガルバノ移動指令Cgでのガルバノモータの回転方向が前回のガルバノ移動指令Cgでのガルバノモータ11の回転方向と同じかどうかを判定する(ステップ2)。同じ方向でない場合、同一方向への回転をカウントするカウンタ(図示せず)のカウント値Cをリセットし(ステップ3)、電流パターン記憶部14から読み出した時間変位パターンをそのままガルバノ駆動回路12に出力する(ステップ4)。
なお、前記カウンタはガルバノ駆動制御部13の内部に設けられている。
【0015】
ステップ2において同じ方向であると判定された場合、前記カウンタのカウント値Cを1だけプラスし(ステップ5)、このカウント値Cが所定値Cmに達したかどうかを判定する(ステップ6)。ここでカウント値Cが所定値Cmに達していなければ、電流パターン記憶部14から読み出した時間変位パターンをそのままガルバノ駆動回路12に出力する(ステップ4)。
一方、ステップ6においてカウント値Cが所定値Cmに達していれば、カウンタのカウント値Cをリセットし(ステップ7)、電流パターン記憶部14から読み出した時間変位パターンを予め決めた比率で縮小してガルバノ駆動回路12に出力する(ステップ8)。
【0016】
以上の実施例1によれば、ガルバノスキャナ4に含まれるガルバノモータ11の回転方向が何回か連続して同じになるような移動指令がガルバノスキャナ4に与えられると、目標位置よりも行き過ぎが発生するヒステリシス特性がある場合、ガルバノモータ11の駆動電流の読み出した時間変位パターンを縮小し駆動電流を弱めるので行き過ぎを抑えることができ、ガルバノスキャナ4の目標位置への位置決め精度を向上させることが可能となる。
【実施例2】
【0017】
次に、本発明の実施例2を説明する。
実施例2においては、図1で説明した電流パターン補正部15での処理を図5のフローチャートのように変更する。
電流パターン補正部15では、新たな受付けたガルバノ移動指令Cgがガルバノ指令受付部10で受付けされる(ステップ21)と、当該ガルバノ移動指令Cgでのガルバノモータ11の回転方向が前回のガルバノ移動指令Cgでのガルバノモータ11の回転方向と同じかどうかを判定する(ステップ22)。同じ方向でない場合、これまでの回転角度の累計を記憶している累計レジスタ(図示せず)の内容をリセットし(ステップ23)、電流パターン記憶部14から読み出した時間変位パターンをそのままガルバノ駆動回路12に出力する(ステップ24)。
なお、前記累計レジスタはガルバノ駆動制御部13の内部に設けられている。
【0018】
ステップ22において同じ方向であると判定された場合、新たなガルバノ移動指令Cgでのガルバノモータ11の回転角度を前記累計レジスタの内容に加算して新たな累計角度θsを求め(ステップ25)、この新たな累計角度θsが所定値θmに達したかどうかを判定する(ステップ26)。ここで所定値θmに達していなければ、電流パターン記憶部14から読み出した時間変位パターンをそのままガルバノ駆動回路12に出力する(ステップ24)。
一方、ステップ25において累計レジスタの内容が所定値θmに達していれば、累計レジスタの内容をリセットし(ステップ27)、電流パターン記憶部14から読み出した時間変位パターンを予め決めた比率で縮小してガルバノ駆動回路12に出力する(ステップ28)。
【0019】
以上の実施例2によれば、ガルバノスキャナ4に含まれるガルバノモータ11の回転方向が何回か連続して同じになり、それらの回転角度の累計が所定値を超えるような移動指令がガルバノスキャナ4に与えられると、目標位置よりも行き過ぎが発生する特性がある場合、ガルバノモータ11の駆動電流の時間変位パターンを縮小し駆動電流を弱めるので行き過ぎを抑えることができ、ガルバノスキャナ4の目標位置への位置決め精度を向上させることが可能となる。
【0020】
以上、実施の形態に基づき本発明を具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもなく、様々な変形例が含まれる。
例えば、実施例1や2における電流パターン補正部15においては、ガルバノモータ11の回転方向や回転角度等の回転履歴に基づいて新たな動作指令に対する駆動電流の時間変位パターンを縮小し駆動電流を弱めるように補正しているが、過去の回転方向や回転角度等の回転履歴に基づいて時間変位パターンを縮小し駆動電流を弱めるだけでなく、時間変位パターンを拡大し駆動電流を強めるように補正するようにしてもよい。
このようにすれば、目標位置よりも未到達が発生する特性がある場合、駆動電流を強めるのでガルバノスキャナ4の目標位置への位置決め精度を向上させることが可能となる。
【0021】
また、電流パターン補正部13は、ガルバノモータ11の過去の回転方向等に基づいて読み出した時間変位パターンの補正を行うものであるが、他の観点からの補正も行うようにしてもよい。
すなわち、電流パターン補正部15は電流パターン記憶部14から読み出した時間変位パターンを任意の率で縮小あるいは拡大できるようにすれば、電流パターン記憶部14に記憶する時間変位パターンの種類を少なくでき、電流パターン記憶部14の記憶領域の節約ができる。
【符号の説明】
【0022】
1:プリント基板、2:レーザ照射ユニット、3:全体制御部、
4:ガルバノスキャナ、6:ガルバノ制御部、10:ガルバノ指令受付部、
11:ガルバノモータ、12:ガルバノ駆動回路、13:ガルバノ駆動制御部、
14:電流パターン記憶部、15:電流パターン補正部、16:エンコーダ
図1
図2
図3
図4
図5