(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】耐火被覆材、梁補強金具、耐火被覆材保持構造及び耐火構造の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20231211BHJP
E04C 3/08 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
E04B1/94 V
E04B1/94 C
E04B1/94 E
E04C3/08
(21)【出願番号】P 2019228837
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】323005120
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】望月 久智
(72)【発明者】
【氏名】冨田 拓
(72)【発明者】
【氏名】林 郁実
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-346657(JP,A)
【文献】特開2006-037668(JP,A)
【文献】登録実用新案第3209086(JP,U)
【文献】特開2018-150391(JP,A)
【文献】特開2019-116759(JP,A)
【文献】特開2010-059703(JP,A)
【文献】実開平04-135603(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0148660(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
E04C 3/08
E04F 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する耐火材と、
前記耐火材に設けられた貼着材と、を具備し、
前記貼着材によって対象部へ貼り付け可能であ
り、
前記貼着材は磁石であり、前記磁石は、前記耐火材の長手方向に沿って所定の間隔で配置されることを特徴とする耐火被覆材。
【請求項2】
可撓性を有する耐火材と、
前記耐火材に設けられた貼着材と、を具備し、
前記貼着材によって対象部へ貼り付け可能であ
り、
前記貼着材は吸盤であり、前記吸盤は、前記耐火材の長手方向に沿って所定の間隔で配置されることを特徴とする耐火被覆材。
【請求項3】
可撓性を有する耐火材と、
前記耐火材に設けられた貼着材と、を具備し、
前記貼着材によって対象部へ貼り付け可能であ
り、
前記貼着材は両面テープ又は接着剤であり、前記両面テープ又は接着剤は、前記耐火材の長手方向に沿って配置され、
前記貼着材は、前記耐火材の長手方向に垂直な幅方向の両側に張り出した位置に配置されることを特徴とする耐火被覆材。
【請求項4】
前記対象部が、梁に形成された貫通孔であり、
前記貼着材は、前記耐火材の長手方向に沿って配置され、
前記耐火材を前記貫通孔の内面又は梁補強金具の内面に沿って貼り付けることが可能であることを特徴とする請求項1
から請求項3のいずれかに記載の耐火被覆材。
【請求項5】
前記耐火材は、芯材と、前記芯材を覆う被覆材とを有することを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれかに記載の耐火被覆材。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれかに記載の耐火被覆材を有し、ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための梁補強金具であって、
前記貫通孔に配置される本体部と、
前記本体部の内周面に配置される前記耐火被覆材と、
を具備することを特徴とする梁補強金具。
【請求項7】
請求項
3記載の耐火被覆材を用いた耐火被覆保持材構造であって、
梁に形成された貫通孔又は前記貫通孔に固定された梁補強金具の内面に、前記耐火被覆材が配置され、
前記耐火被覆材の両側に張り出した部位が折り曲げられ、前記貫通孔の外周部又は前記梁補強金具に張り付けられることを特徴とする耐火被覆材保持構造。
【請求項8】
請求項1から請求項
5のいずれかに記載の耐火被覆材を用いた耐火被覆構造の構築方法であって、
梁に形成された貫通孔の内面、又は、梁補強金具の内面を覆うように前記耐火被覆材を配置して張り付ける工程と、
前記梁の外周面に
吹付耐火材を吹き付ける工程と、
を具備
し、
前記貼着材は、前記耐火材の長手方向に垂直な幅方向の両側に張り出した位置に配置され、
前記耐火被覆材を配置した後、前記耐火被覆材の両側に張り出した部位を折り曲げ、前記貫通孔の外周部又は前記梁補強金具に張り出し部を張り付けることを特徴とする耐火構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、貫通孔を有する梁に配置される耐火被覆材、これを用いた梁補強金具、耐火被覆材保持構造及び耐火構造の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築構造物の鉄骨梁は、火災等により高温となると耐力が低下するため、これを避けるために、梁に、所定の厚みのロックウール等の耐火材を吹き付けて被覆する必要がある。
【0003】
このような耐火被覆がなされた鉄骨梁としては、例えば、フランジ部の一部に熱膨張性耐火材が配置され、他の部位が吹付耐火材で覆われた鉄骨梁が提案されている(特許文献1)。
【0004】
一方、梁には、一般的には配管や配線等を通すために貫通孔が形成されることがある。貫通孔が形成された梁に耐火材を吹き付ける場合には、貫通孔の内周面も耐火材で覆う必要があるため、配設される配管等の外径に対して、耐火材の被覆厚み分だけ貫通孔のサイズを大きくしておく必要がある。
【0005】
図11は、従来の耐火構造100を示す断面図である。梁103のウェブ103aには配管105が挿通される貫通孔109が形成される。なお、配管に代えて配線の場合もある。梁103のフランジ103bとウェブ103aは、吹付耐火材107によって被覆される。吹付耐火材107は、耐火性能を得るために所定の厚みを確保する必要があるため、貫通孔109は、配管105の外径に対して、吹付耐火材107の厚み分だけ大きく設定される。このため、梁の強度低下のおそれがある。
【0006】
これに対し、貫通孔を有する梁の耐火構造として、貫通孔の内周面に熱膨張性シートを配置する方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-128844号公報
【文献】特開2007-198029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、吹付耐火材を用いて耐火構造を構築する際に、一部に他の耐火被覆材を予め配置することで、当該部位に吹付耐火材を設けた場合と比較して、耐火構造の厚みを薄くすることができる。このため、耐火材の厚みを薄くしたい場所には、吹付耐火材に代えて、他の耐火被覆材を用いる方法は有益である。
【0009】
しかし、所望の場所に耐火被覆材を配置しても、吹付耐火材を吹き付ける際や、その準備の間に、脱落や位置ずれが生じるおそれがある。耐火被覆材の脱落や位置ずれが生じると、再度、耐火被覆材を所定の場所に配置し直す作業が必要となる。また、耐火材の吹付の際には、作業者が耐火被覆材を押さえながら作業を行う必要があるなど作業性が悪い。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、例えば梁の貫通孔などに耐火被覆材を配置する際に、確実に耐火被覆材を保持し、良好な作業性を得ることが可能な耐火被覆材及びこれを用いた梁補強金具等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、可撓性を有する耐火材と、前記耐火材に設けられた貼着材と、を具備し、前記貼着材によって対象部へ貼り付け可能であり、前記貼着材は磁石であり、前記磁石は、前記耐火材の長手方向に沿って所定の間隔で配置されることを特徴とする耐火被覆材である。
第2の発明は、可撓性を有する耐火材と、前記耐火材に設けられた貼着材と、を具備し、前記貼着材によって対象部へ貼り付け可能であり、前記貼着材は吸盤であり、前記吸盤は、前記耐火材の長手方向に沿って所定の間隔で配置されることを特徴とする耐火被覆材である。
第3の発明は、可撓性を有する耐火材と、前記耐火材に設けられた貼着材と、を具備し、前記貼着材によって対象部へ貼り付け可能であり、前記貼着材は両面テープ又は接着剤であり、前記両面テープ又は接着剤は、前記耐火材の長手方向に沿って配置され、前記貼着材は、前記耐火材の長手方向に垂直な幅方向の両側に張り出した位置に配置されることを特徴とする耐火被覆材である。
【0012】
前記対象部が、梁に形成された貫通孔であり、前記貼着材は、前記耐火材の長手方向に沿って配置され、前記耐火材を前記貫通孔の内面又は梁補強金具の内面に沿って貼り付けることが可能であることが望ましい。
【0017】
前記耐火材は、芯材と、前記芯材を覆う被覆材とを有することが望ましい。
【0018】
第1-3の発明によれば、耐火被覆材が、可撓性を有する耐火材に貼着材が配置されているため、耐火被覆材を容易に耐火対象部へ貼り付けることができる。このため、耐火被覆材の対象部からの脱落やずれを抑制することができる。このため、例えば、耐火被覆材を配置した部位以外に耐火材を吹き付ける場合でも、耐火被覆材を確実に所定の位置に保持することができる。
【0019】
特に、梁に形成された貫通孔の内周面に耐火被覆材を配置する場合に、より大きな効果を得ることができる。
【0020】
また、貼着材が磁石や吸盤であれば、容易に耐火被覆材を鉄骨梁等へ貼り付けることができる。
【0021】
また、貼着材が両面テープ又は接着剤であれば、構造が簡易であり低コストの耐火被覆材を得ることができる。
【0022】
この際、耐火材の長手方向に垂直な幅方向の両側に張り出した位置に、両面テープ接着剤磁石又は吸盤を配置することで、容易に耐火被覆材を鉄骨梁の側面等へ固定することができるため、作業が容易である。
【0023】
また、耐火材が、芯材と、芯材を覆う被覆材とを有すれば、取り扱い時等に耐火材が破損することを抑制することができる。また、被覆材によって、例えば耐火ウール材や熱膨張性部材などの芯材の形状保持性を高めることができる。
【0024】
第4の発明は、第1-3の発明にかかる耐火被覆材を有し、ウェブに貫通孔が形成された梁を補強するための梁補強金具であって、前記貫通孔に配置される本体部と、前記本体部の内周面に配置される前記耐火被覆材と、を具備することを特徴とする梁補強金具である。
【0025】
第4の発明によれば、梁補強金具の内周面に、予め耐火被覆材が貼り付けられているため、梁補強金具を梁へ溶接し、吹付耐火材を梁へ吹き付けるだけで、耐火構造を得ることができる。
【0026】
第5の発明は、第1-3の発明にかかる耐火被覆材を用いた耐火被覆保持材構造であって、梁に形成された貫通孔又は前記貫通孔に固定された梁補強金具の内面に、前記耐火被覆材が配置され、前記耐火被覆材の両側に張り出した部位が折り曲げられ、前記貫通孔の外周部又は前記梁補強金具に張り付けられることを特徴とする耐火被覆材保持構造である。
【0027】
第6の発明は、第1-3の発明にかかる耐火被覆材を用いた耐火被覆構造の構築方法であって、梁に形成された貫通孔の内面、又は、梁補強金具の内面を覆うように前記耐火被覆材を配置する工程と、前記梁の外周面に吹付耐火材を吹き付ける工程と、を具備することを特徴とする耐火構造の構築方法である。
【0029】
第5、第6の発明によれば、容易に耐火被覆時保持構造及び耐火構造を得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、例えば梁の貫通孔などに耐火被覆材を配置する際に、確実に耐火被覆材を保持し、良好な作業性を得ることが可能な耐火被覆材及びこれを用いた梁補強金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】耐火被覆材5を示す図で、(a)は平面図、(b)は、(a)のB-B線断面図。
【
図3】(a)は耐火被覆材保持構造10の断面図であり、
図1のA-A線断面図、(b)は耐火構造1の断面図。
【
図6】(a)は耐火被覆材保持構造10aの断面図、(b)は耐火構造1aの断面図。
【0032】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、第1の実施形態にかかる耐火被覆材保持構造10を示す正面図である。耐火被覆材保持構造10は、梁3に形成された貫通孔9へ、耐火被覆材5が保持されたものである。なお、以下の説明では、耐火被覆材保持構造10における、耐火被覆材5の配置される対象部が梁3に形成された貫通孔9である例を示すが、他の対象部へ耐火被覆材5を配置して保持することも可能である。
【0033】
梁3は、一対のフランジ3bがウェブ3aによって連結された、いわゆるH形鋼で構成される。ウェブ3aには、配管等が挿通される貫通孔9が形成される。貫通孔9の内周面には、貫通孔9の内面を覆うように、耐火被覆材5が略全周に亘って配置される。
【0034】
図2(a)は、耐火被覆材5の平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のB-B線断面図である。耐火被覆材5は、耐火材6cと、耐火材6cに設けられる貼着材6dとを有する。耐火材6cは、可撓性を有する難燃材又は不燃材によって構成される。本実施形態では、貼着材6dは両面テープであり、貼着材6dは、耐火材6cの長手方向に沿って配置される。貼着材6dによって耐火材6cを、対象部へ貼り付けることが可能である。なお、両面テープに代えて、接着剤を塗布してもよいが、以下の説明では、両面テープを用いた例について説明する。
【0035】
図2(b)に示すように、耐火材6cは、芯材6aと、芯材6aを覆う被覆材6bとを有する。芯材6aは、ガラスウールなどの耐火ウール材や、熱膨張性部材などを適用可能である。被覆材6bは、ある程度の強度と耐火性を有するシート状の部材であれば適用可能であるが、例えば、アルミニウム被覆ガラスクロスシートなどを適用することで、耐火被覆材5のある程度の形状保持性を得ることができる。しかしながら、本態様に限らず、貫通孔等の内面を覆うように、略全周に亘って配置できる耐火被覆材であればいかなる態様でも構わない。例えば、耐火材6cが、芯材6aのみで構成されてもよい。
【0036】
図3(a)は、耐火被覆材保持構造10の断面図であり、
図1のA-A線断面図である。貼着材6dが外周側となるように、耐火被覆材5を丸めて貫通孔9の内部に配置し、貼着材6dによって、貫通孔9の内周面に貼り付けることで、耐火材6cを貫通孔9の内面に沿って貼り付けることが可能である。この際、耐火被覆材5(耐火材6c)の長さを、貫通孔9の内周長と略同一とすることで、貫通孔9の内周面の略全周に亘って耐火被覆材5を配置することができる。
【0037】
この状態では、耐火被覆材5の貼着材6dは、貫通孔9の内面に貼り付けられて、耐火被覆材5が貫通孔9に保持されるため、その後の耐火材の吹付作業や、その準備の際に、貫通孔9からの耐火被覆材5の脱落やずれを抑制することができる。
【0038】
次に、耐火被覆材5を用いた耐火被覆構造の構築方法を説明する。まず、梁3に形成された貫通孔9の内周面に耐火被覆材5を配置する。この際、耐火被覆材5の貼着材6dを貫通孔9の内面に貼り付ける。次に、梁3の外周面に耐火材を吹き付ける。
【0039】
図3(b)は、梁3の外周に吹付耐火材7を吹き付けた耐火構造1を示す断面図である。耐火構造1では、耐火被覆材5が配置されるため、貫通孔9の内周面には吹付耐火材7は不要である。また、吹付耐火材7と比較して、耐火被覆材5(芯材6a)の耐火性能を高めることができるため、貫通孔9の内周面に吹付耐火材7を形成した場合(点線)と比較して、耐火構造の厚みを薄くすることができる。このため、貫通孔9に挿通される配管等の外径に対して、貫通孔9のサイズを小さくすることができる。
【0040】
以上、第1の実施の形態によれば、耐火材6cに貼着材6dが貼り付けられているため、例えば、梁3の貫通孔9の内面など、耐火被覆材5の設置対象に容易に貼り付けて固定することができる。このため、耐火被覆材保持構造10は、作業時における耐火被覆材5の脱落や、ずれを抑制することができる。このため、その後の吹付耐火材7の施工が容易であり、容易に耐火構造1を得ることができる。
【0041】
また、耐火材6cの芯材6aが被覆材6bで覆われているため、例えば芯材6aが耐火ウール材などの場合に、取り扱い時におけるウール材の破損や粉塵などの発生を抑制することができ、また、細かな繊維屑により作業者に生じる痒みを抑制することができる。このため、取り扱い性が良好である。また、被覆材6bが金属被覆ガラスクロスなどであれば、多少の形状保持性を有するため、耐火被覆材5を変形させた際に、その形態が保持される。このため、例えば貫通孔9の内面に丸めて配置した場合にも、耐火被覆材5自体が丸めた形状を維持し、より確実に位置ずれや脱落を抑制することができる。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図4は、梁補強金具11を示す斜視図であり、
図5は、梁補強金具11の部分断面図である。なお、以下の説明において、耐火被覆材保持構造10及び耐火構造1と同様の構成には、
図1~
図3と同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0043】
本実施形態では、ウェブ3aに貫通孔9が形成された梁3を補強するための梁補強金具11が用いられる。前述したように、梁3に貫通孔9を形成すると、貫通孔9により、梁3の曲げ耐力が低下する。梁補強金具11は、この梁3の曲げ耐力低下を防ぐための部材である。
【0044】
梁補強金具11は、ウェブ3aに固定される本体部12と、本体部12の内周面に配置される耐火被覆材5とを有する。本体部12は、例えば鋼材やステンレス鋼などの金属製の部材である。本体部12は、全体としてリング状の部材であり、配管等が貫通する配管孔を有している。本体部12の内周面には、本体部12の内面を覆うように、略全周に亘って耐火被覆材5が配置される。この際、貼着材6dは、本体部12の内周面に貼り付けられる。
【0045】
図6(a)は、耐火被覆材保持構造10aを示す図である。耐火被覆材保持構造10aは、耐火被覆材保持構造10と略同様であるが、貫通孔9に梁補強金具11が溶接によって固定される点で異なる。
【0046】
梁補強金具11を用いる場合には、まず、梁3に形成された貫通孔9の内部又は外部に、梁補強金具11を配置して固定する。なお、梁補強金具11には、予め耐火被覆材5を貼り付けておいてもよく、又は、梁補強金具11を固定した後に、梁補強金具11の内面に耐火被覆材5を貼り付けてもよい。この状態から、梁3及び梁補強金具11の外周面に吹付耐火材7を施工することで、
図6(b)に示す耐火構造1aを得ることができる。なお、梁補強金具11を用いる場合には、梁補強金具11の本体部12自体も耐火被覆する必要があるが、本実施形態では、本体部12の内周面には、耐火被覆材5が配置されている。このため、耐火構造1aも耐火構造1と同様に、梁補強金具11の内周面には吹付耐火材7は不要である。
【0047】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、梁補強金具11を用いることで、梁3を補強することができる。この際、耐火被覆材5が設けられた梁補強金具11を用いることで、容易に耐火構造1aを得ることができる。
【0048】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図7は、耐火構造1bを示す断面図である。耐火構造1bは、耐火構造1aとほぼ同様の構成であるが、耐火被覆材5aが用いられる点で異なる。なお、以下の実施形態では、梁補強金具11が用いられる例について説明するが、梁補強金具11を用いずに、耐火被覆材を貫通孔9の内面(ウェブ3a)に直接固定してもよい。また、以下に示すいずれの耐火構造も、耐火被覆材を貫通孔9の内面側に保持した耐火被覆材保持構造(図示省略)に対して、吹付耐火材を施工したものである。
【0049】
図8は、耐火被覆材5aを示す平面図である。耐火被覆材5aは、耐火被覆材5とは異なり、貼着材6dに代えて、貼着材6eが用いられる。貼着材6eは吸盤であり、吸盤が、耐火材6cの長手方向に沿って所定の間隔で配置される。
【0050】
図7に示すように、貼着材6eを外側に向けて耐火被覆材5aを丸めて、梁補強金具11の本体部12の内周面に配置し、吸盤によって本体部12の内面に耐火被覆材5aを固定することで、耐火被覆材5aを梁3へ固定することができる。
【0051】
第3の実施形態よれば、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、貼着手段としては、両面テープではなく吸盤等であってもよい。
【0052】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
図9は、耐火構造1cを示す断面図である。耐火構造1cは、耐火構造1aとほぼ同様の構成であるが、耐火被覆材5bが用いられる点で異なる。
【0053】
図10は、耐火被覆材5bを示す平面図である。耐火被覆材5bは、耐火被覆材5とは異なり、貼着材6dに代えて、貼着材6gが用いられる。耐火被覆材5bは、耐火材6cの長手方向に垂直な幅方向の両側に張り出すように、長手方向に対して所定の間隔で複数の腕部6fが配置される。腕部6fは、例えば可撓性を有するガラスクロス等の部材で構成される。
【0054】
貼着材6gは、それぞれの腕部6fの先端部近傍に配置されるとともに、耐火材の長手方向に垂直な幅方向の両側に張り出した位置に配置される。すなわち、貼着材6gは、耐火材6cの長手方向に沿って所定の間隔で配置される。本実施形態では、貼着材6gは磁石である例を示すが、前述した吸盤や両面テープ等であってもよい。
【0055】
図9に示すように、耐火被覆材5bを丸めて、梁補強金具11の本体部12の内周面に配置するとともに、各部における幅方向に対向する一対の腕部6fを外側に折り曲げるようにして、腕部6fでウェブ3a又は梁補強金具11の本体部12を挟み込む。この際、腕部6fのウェブ3a又は梁補強金具11の本体部12との対向面には、貼着材6gが配置されているため、耐火被覆材5bの両側に張り出した部位を折り曲げることで、貫通孔9の外周部又は梁補強金具11に張り出し部を貼着材6gによって張り付け、耐火被覆材5aを固定することができる。
【0056】
第4の実施形態よれば、第2の実施形態等と同様の効果を得ることができる。このように、貼着手段を耐火材6cの幅方向に突出させた腕部6fに配置し、腕部6fをウェブ3a(本体部12)側へ折り曲げることで、貫通孔9や本体部12の内面に十分なスペースがなくても、確実に耐火被覆材5bを貫通孔9の内面側に固定することができる。
【0057】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0058】
例えば、上述した各構成は互いに組み合わせることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
1、1a、1b、1c………耐火構造
3………梁
3a………ウェブ
3b………フランジ
5、5a、5b………耐火被覆材
6a………芯材
6b………被覆材
6c………耐火材
6d、6e、6g………貼着材
6f………腕部
7………吹付耐火材
9………貫通孔
10、10a………耐火被覆材保持構造
11………梁補強金具
12………本体部
100………耐火構造
103………梁
103a………ウェブ
103b………フランジ
105………配管
107………吹付耐火材
109………貫通孔