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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】射出成形品
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/37 20060101AFI20231211BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20231211BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20231211BHJP
   F21S 41/55 20180101ALI20231211BHJP
   F21S 43/50 20180101ALI20231211BHJP
   F21S 45/10 20180101ALI20231211BHJP
   F21S 43/31 20180101ALI20231211BHJP
   F21S 41/32 20180101ALI20231211BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20231211BHJP
   F21W 103/35 20180101ALN20231211BHJP
   F21W 103/45 20180101ALN20231211BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20231211BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20231211BHJP
   F21Y 115/20 20160101ALN20231211BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20231211BHJP
【FI】
B29C45/37
B29C33/42
B29C45/00
F21S41/55
F21S43/50
F21S45/10
F21S43/31
F21S41/32
F21W102:13
F21W103:35
F21W103:45
F21Y101:00 100
F21Y101:00 300
F21Y115:10
F21Y115:20
F21Y115:30
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020002049
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021109369
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】久野 修平
(72)【発明者】
【氏名】小菅 守
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-052982(JP,A)
【文献】特開2012-069278(JP,A)
【文献】実開平04-064115(JP,U)
【文献】特開2007-245413(JP,A)
【文献】実開平05-053916(JP,U)
【文献】特開2001-121586(JP,A)
【文献】実開昭59-187424(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
B60Q 1/00- 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面に窪んだ所定の形状で、所要の見栄えまたは機能を構成する意匠部を備え、前記意匠部の周縁から連続して折り返されることで、狭小空間を隔てて前記意匠部に隣設された非意匠部に、前記狭小空間に連通する開口部が設けられている、
ことを特徴とする射出成形品。
【請求項2】
前記開口部の外形は、対向する二辺を有する矩形形状であり、
前記開口部は、前記非意匠部の段差部に、前記対向する二辺の厚み方向が逆方向にオフセットされて形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の射出成形品。
【請求項3】
前記開口部は、前記意匠部から折り返された、前記意匠部との境界近傍に形成されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の射出成形品。
【請求項4】
前記開口部は、前記意匠部を正面視して前記意匠部に遮蔽される視認困難部、または目隠し材に目隠しされる非視認部に形成される、
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の射出成形品。
【請求項5】
前記開口部は、前記意匠部から連続して形成される正面に開口した筐体の立壁部に形成される、
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の射出成形品。
【請求項6】
前記意匠部と、前記非意匠部とは、境界である折り返し部分へ向かうほどに近接する構成である、
ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の射出成形品。
【請求項7】
前記意匠部は、収容した第1の光源の照射光が出射する前面が開口した第1の灯室であり、
前記非意匠部は、前記第1の灯室の周縁から連続して折り返された面を立壁として有し、収容した第2の光源の照射光が出射する前面が開口した第2の灯室であり、前記二つの灯室が前記狭小空間を挟んで近接して一体として成形されている
ことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の射出成形品。
【請求項8】
前記意匠部は前方に向かって光を反射させる光学リフレクターであり、
前記非意匠部は、前記光学リフレクターの端部から連続して背面へ折り返されて立設されるブラケット部材または灯室を形成する立壁である、
ことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の射出成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は射出成形品に関し、特に連続する隔壁同士により間に狭小空間を形成する射出成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、テールランプ&ストップランプと、ターンシグナルランプを備えたコンビネーションランプの車両用灯具灯が公開されている。テールランプ&ストップランプのリフレクターを有する第1の灯室と、ターンシグナルランプのユニットを収納する第2の灯室とは、車両用灯具の灯具ボディとして一体化成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-279808号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、両灯室が非常に近接して一体成形されているため、テールランプ&ストップランプのリフレクターと、これに連続して折り返されるターンシグナルランプの隔壁とで形成される空間が、非常に狭小なものとなっている。成形金型においては、この狭小部分に冷却回路を設置できず、冷却不十分でリフレクターにヒケ跡(筋模様)が発生するという問題がある。
【0005】
本件はこれを顧みてなされたものであり、その目的は、上記リフレクターのように、所定の形状の意匠部と、意匠部と狭小空間を隔てて近接した隔壁などの非意匠部を備える射出成形品のヒケ跡発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明のある態様の射出成形品では、背面に窪んだ所定の形状で、所要の見栄えまたは機能を構成する意匠部を備え、前記意匠部の周縁から連続して折り返されることで、狭小空間を隔てて前記意匠部に隣設された非意匠部に、前記狭小空間に連通する開口部が設けられているように構成した。
【0007】
この態様によれば、成形金型において、この開口部がキャビティ側金型とコア側金型の接合部となる。開口部は狭小空間に連通しているため、狭小空間に対応する成形金型凸部に接合面が設けられることとなる。成形金型凸部は、意匠部から折り返された非意匠部との狭小空間を反映して、細長い形状となっている。細長い部分には金型を冷却する冷却回路を設置できず、開口部がない従来の形態では、金型に熱がこもりやすく、金型冷却不十分の原因となっていた。成形品に開口部が設けられることで、成形金型凸部に接合部が設けられることとなり、細長い成形金型凸部の温度を、接合部を介して他方の金型へと伝達させることができる。また、成形金型凸部を有さない他方の金型側近傍には冷却回路を設けることができるため、冷却機能が接合部を介して成形金型凸部にまで及び、成形金型凸部の温度を下げることができる。成形品に開口部を成形金型の熱放射機構用として設けることで、成形金型(成形金型凸部)のオーバーヒートが防止され、ヒケ跡の発生が抑制される。
【0008】
また、ある態様では、前記開口部の外形は、対向する二辺を有する略矩形形状であり、前記開口部は、前記非意匠部の段差部に、前記対向する二辺の厚み方向が逆方向にオフセットされて形成されているよう構成した。
【0009】
この態様によれば、このような形状の開口部は、成形金型ではいわゆる食い切りとして形成される。通常、開口部はアンダーカットとなるが、このように開口部を形成することで、分割金型などの複雑な処理や工程が必要なくなり、容易に成形できる。
【0010】
また、ある態様では、前記開口部は、前記意匠部から折り返された、前記意匠部との境界近傍に形成されているように構成した。
【0011】
この態様によれば、狭小空間の折り返し部に対応する成形金型凸部の先端部が、成形金型において最も熱がこもりやすい箇所であるため、ここを冷却するよう、開口部が境界近傍に形成することで、冷却効果を高めることができる。
【0012】
また、ある態様では、前記開口部は、前記意匠部を正面視して前記意匠部に遮蔽される視認困難部、または目隠し材に目隠しされる非視認部に形成されるように構成した。
【0013】
この態様によれば、開口部を視認されにくい箇所に設けることができ、見栄えへの影響を最小限に抑えることができる。
【0014】
また、ある態様では、前記開口部は、前記意匠部から連続して形成される正面に開口した筐体の立壁部に形成されるよう構成した。
【0015】
この態様によれば、意匠部を邪魔せず、筐体への影響も最小限に抑えることができる。
【0016】
また、ある態様では、前記意匠部と、前記非意匠部とは、境界である折り返し部分へ向かうほどに近接する構成であるよう構成した。
【0017】
この態様によれば、狭小空間は、折り返し部へ向かうほどに狭くなる構成であり、これに対応する成形金型凸部も先細り形状となり、これに開口部を形成することは成形金型の冷却効果が非常に高いものとなる。
【0018】
また、ある態様では、前記意匠部は、収容した第1の光源の照射光が出射する前面が開口した第1の灯室であり、前記非意匠部は、前記第1の灯室の周縁から連続して折り返された面を立壁として有し、収容した第2の光源の照射光が出射する前面が開口した第2の灯室であり、前記二つの灯室が前記狭小空間を挟んで近接して一体として成形されている。この態様によれば、車両前照灯など、複数の光源を備えるコンビネーションランプにおいて、二つの灯室を一体的に成形できるため、部品数を減少させて、成形コストや組立工数を削減できる。
【0019】
また、前記意匠部は前方に向かって光を反射させる光学リフレクターであり、前記非意匠部は、前記光学リフレクターの端部から連続して背面へ折り返されて立設されるブラケット部材または灯室を形成する立壁であるよう構成した。
【0020】
リフレクターとブラケット、あるいは灯室を、ヒケ跡を抑えて一体成形でき、成形コストや組立工数を削減できる。
【発明の効果】
【0021】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、所定の形状の意匠部と、意匠部に狭小空間を隔てて近接した隔壁とを備える射出成形品のヒケ跡発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施形態に係るブラケットユニット(射出成形品)を備えた車両用前照灯の正面図である。
図2】同車両用灯具の縦断面図である。
図3】第1の実施形態に係るブラケットユニットの開口部を説明する部分断面図である。
図4】第1の実施形態に係るブラケットユニットの金型である。
図5】第1の実施形態に係るブラケットユニットの金型の熱状態である。(A)が従来例としての開口部のない成形品の金型、(B)が開口部のある本実施形態の金型をそれぞれ示す。
図6】第2の実施形態に係るブラケットユニット(射出成形品)を備えた車両用前照灯の断面図である。
図7】第2の実施形態に係るブラケットユニットの開口部を説明する部分断面図である。
図8】第2の実施形態に係るブラケットユニットの金型と成形方法である。
図9】ブラケットユニットの開口部の形成位置を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図においては、車両用前照灯が取り付けられた車両を正面視した状態を基準として、各方向を(上方:下方:左方:右方:前方:後方=Up:Do:Le:Ri:Fr:Re)として説明する。また、各部材の厚み、幅、長さの比率は、実際の比率を反映したものでなく、構成を模式的に表したものである。
【0024】
(第1の実施形態)
図1および図2は、本発明の第1の実施形態に係る射出成形品であるブラケットユニット10を備えた車両用前照灯1の正面図であり、図2図1のII-II線に沿った断面図である。
【0025】
車両用前照灯1は、ランプボディ2と、前面カバー3と、ロービームユニットLUと、ハイビームユニットHUと、ブラケットユニット10とを備える。ランプボディ2は、前方に開口部を有する。前面カバー3は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成され、ランプボディ2の開口部に取り付けられる。
【0026】
ロービームユニットLUおよびハイビームユニットHUは、ランプボディ2および前面カバー3で形成される室内に配置され、ブラケットユニット10に保持される。
【0027】
ロービームユニットLUは、発光素子である光源21、リフレクター22、および投影レンズ24から構成されるプロジェクター型の光学ユニットLo1を備える。
【0028】
光源21は、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、EL(Electro Luminescence)素子などの半導体発光素子や、電球、白熱灯(ハロゲンランプ)、放電灯(ディスチャージランプ)等を用いることができる。
【0029】
リフレクター22は、光源21から出射した光を所望の方向へ導くように構成されており、内面が所定の反射面22aとなっている。光源21の出射光は、リフレクター22の反射面22aによって前方に反射され、投影レンズ24を介して車両前方に出射し、所望の配光を形成する。投影レンズ24は、図示しない支持部材により、ブラケットユニット10に固定されている。
【0030】
ロービームユニットLUは、光学ユニットLo1と、さらにこれと同構成の光学ユニットLo1,Lo3を備える三連光学ユニットであり、三基の光学ユニットLo1,Lo2,Lo3によって車両前方にロービーム配光を形成する。
【0031】
ハイビームユニットHUは、前方に出射した光で所定の形状や配光を形成するよう構成された描画ユニットであり、ハイビーム配光のみならず、車両の運転状況や周辺の状況に適応させて可変配光を形成することができる。
【0032】
ハイビームユニットHUは、レーザー光源31、走査機構32、レーザー光源31からの出射光を集光して走査機構32へ入射させるコリメートレンズ33、走査機構32およびレーザー光源31を制御する制御装置34、および投影レンズ35を備える。これら構成要素は図示しない支持機構によって筐体36に取り付けられている。
【0033】
走査機構32は、入射光を二軸方向に回動可能に支持された反射ミラー32aを有し、反射ミラー32aを回動しながら反射した光を走査することで、所望の描画パターンを形成する。所望の描画パターンは投影レンズ35を介して車両前方に出射し、所望の配光パターンを形成する。
【0034】
本実施形態においては、ハイビームユニットHUに、可変配光装置として走査機構32を採用したが、例えばLEDアレイ、ピクセル光学装置、光偏向装置光などの任意のパターンを任意の光で形成可能な他のデバイスを用いても良い。さらに、ロービームユニットLUおよびハイビームユニットHUに、所望の配光のみを形成するリフレクター型光学ユニットやプロジェクター型光学ユニットなどを採用しても問題ない。
【0035】
エクステンションリフレクター5は、不要な部分を目隠しする目隠し材である。ロービームユニットLUおよびハイビームユニットHUの機構部分や固定部分などはエクステンションリフレクター5により隠蔽される。
【0036】
(ブラケットユニット10)
ブラケットユニット10について詳しく説明する。図3は、ブラケットユニット10の一部の斜視図であり、ブラケットユニット10を図1のII-II線を中心として所定の幅で切り取っている。図3(A)が背面上方斜視図、図3(B)が正面下方斜視図である。
【0037】
図2および図3に示すように、ブラケットユニット10はロービームユニットLU用の灯室RLおよびハイビームユニットHU用の灯室RHを形成しており、上下に設けられたブラケット部10a,10bで三つのエイミングスクリューEによってランプボディ2に取り付けられている。各ユニットの光軸は、各エイミングスクリューEを回転させることにより、水平方向および鉛直方向に調整される。
【0038】
本実施形態では、ブラケットユニット10の一部がロービームユニットLUのリフレクター22を構成している。また、リフレクター22の下方端部から連続して背面に折り返された隔壁41aを立壁として形成された灯室RHに、ハイビームユニットHUは内装されている。
【0039】
灯室RHは、ブラケットユニット10の鉛直部41cから前方に立設された、隔壁41a、隔壁41bなどにより画成される。鉛直部41cの左右方向にも図示しない隔壁が存在する。以下、特に部位を指定せず、前方開口した袋部である灯室RHを画成する部材を指す場合には、単に隔壁41と呼ぶ。
【0040】
ブラケットユニット10は、リフレクター22(灯室RL)、灯室RHを画成する隔壁41、ロービームユニットLUおよびハイビームユニットHUを保持して固定するためのブラケット部材が、一体成形されたものである。多機能な一部品を設けることで、部品数を削減でき、製造コストおよび組立コストを抑えることができる。
【0041】
ここで、隔壁41aは、リフレクター22の下方端部から連続して背面に折り返されて構成されているため、リフレクター22と隔壁41aとの間には、狭小空間SR1が、ブラケットユニット10の背面側に形成されている。
【0042】
隔壁41aには段差部43が設けられており、この段差部43には狭小空間SR1に連通する開口部42が形成されている。
【0043】
開口部42は隔壁41aに矩形状に設けられているが、平面に設けられた貫通孔ではなく、段差部43を利用して、矩形を構成する一辺は厚み方向が他辺の厚み方向と逆方向となるように構成されている。即ち、隔壁41aの下面41aaで矩形を構成する辺42a,42b,42c,42dは、開口部42の外形を形成しているが、下面41aaを基準として、段差部43の稜線を一辺とする辺42aはその厚み方向は下方向であり、残りの三つの辺42b,42c,42dの厚み方向は下方向となっている。
【0044】
(第1実施形態の金型:食い切り金型)
上記形状を備えたブラケットユニット10の成形方法について説明する。図4はブラケットユニット10の金型50である。図1のII-II線に対応した位置での切断図である。
【0045】
図4に示すように、金型50は、キャビティ側金型60とコア側金型70から構成される。キャビティ側金型60とコア側金型70は、互いに向き合った状態で配置されて、型締めされている。型締めされた状態で、金型50の内部にはブラケットユニット10の形状に対応した成形空間MS1が画成される。この成形空間MS1に所定の融解温度に加熱された状態の樹脂部材が射出され、ブラケットユニット10は成形される。
【0046】
コア側金型70の対向面(成形面)には、狭小空間SR1に対応する凸部71が設けられている。本実施形態においては、凸部71の一部を構成する面71aとキャビティ側金型60の成形面の一部を構成する面60aとは、一部において接合する構成となっている。この両者の接合部51によりブラケットユニット10に開口部42がいわゆる食い切りの形状として成形される。
【0047】
金型50には、射出された樹脂部材を冷却固化させるための冷却回路80が設けられている。冷却回路80は、キャビティ側金型60およびコア側金型70内に設けられた冷却用孔に水などの冷却流体を流動させる構成であり、金型50を冷却することで成形空間MS1に充填された樹脂部材を間接的に冷却して固化させる。冷却回路80は、キャビティ側金型60およびコア側金型70の成形面の温度分布を均一とするように、適宜設けられている。
【0048】
(作用効果)
ブラケットユニット10に開口部42が設けられた本実施形態の作用効果を、図5を用いて説明する。図5(A)は、従来例として、リフレクターから連続して折り返される隔壁に開口部が設けられてない成形品の金型950の温度分布を示し、図5(B)は、本実施形態のブラケットユニット10の金型50の温度分布を示す。
【0049】
図5(A)に示すように、金型950は、キャビティ側金型960およびコア側金型970から構成される。リフレクター部分とこれに連続した隔壁との間に形成される狭小空間に対応する凸部971がコア側金型970に設けられている。凸部971には、冷却孔を設けるだけの十分な厚みや幅がなく、また、冷却回路80を近傍まで配置する十分なスペースがないため、冷却回路80も設けることもできない。溶解した樹脂部材が射出されると、高温の樹脂部材に囲まれて、凸部971は非常に高温となる。冷却回路80を凸部971に設けることができないため、金型950の温度を下げることができず、オーバーヒートによって、成形品にはヒケ跡(筋模様)が発生してしまう。狭小空間はリフレクターの背面近傍に形成されるため、リフレクターにヒケ跡が発生すると配光に不具合が発生してしまう。これを解決するため、本実施形態においては、ブラケットユニット10に開口部42が設けられた。
【0050】
図5(B)に示すように、ブラケットユニット10のリフレクター22と隔壁41aは連続して、かつ非常に近接して設けられているため、両者間に形成される狭小空間SR1に対応するコア側金型70の凸部71も、非常に細小な形状となっている。このため、従来品と同様に、凸部71には冷却孔を設けるだけの十分な厚みや幅がなく、冷却回路80も設けることができない。
【0051】
しかし、従来例である金型950と異なり、成形品に開口部42を形成するために、金型50には接合部51が設けられている。接合部51ではキャビティ側金型60の凸部71とコア側金型70とが直接に接しているため、凸部71の熱がコア側金型70へ移動する(図中の白色矢印参照)。金型50は金属部材で構成されているため熱伝導率が高く、コア側金型70の凸部71は、接合部51近傍に配置されたキャビティ側金型60の冷却回路80により、接合部51を介して冷却される。
【0052】
これにより凸部71の温度が下げられ、金型50全体の温度が下がり均一に保たれるため、オーバーヒートは発生せず、リフレクター22にヒケ跡が発生することを抑制できる。リフレクター22の反射面22aには、射出成形後に金属蒸着が施される。
【0053】
凸部71は、リフレクター22の形状を反映して先細り形状であり、その先端部ほど熱がこもるため(図5(A)参照)、開口部42はリフレクター22から折り返された境界近傍に設けられると、冷却効果が高く、好ましい。
【0054】
また、樹脂部材が冷却されて完全に固化するのを待ってから型開きする必要があるが、溶解した樹脂部材の冷却に要する時間は成形サイクルで大きな割合を占めることから、従来品では金型950の凸部71の熱が十分に下がるのを待つため、成形時間が長く生産性が低い。ブラケットユニット10に開口部42を設けること、即ち、ブラケットユニット10の成形用の金型50に接合部51を設けることで、金型50の冷却速度が速まり、成形時間が短縮されて生産性が向上した。
【0055】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図6は第2の実施形態に係る射出成形品であるブラケットユニット110を備えた車両用前照灯101の断面図である。図7はブラケットユニット110の部分斜視図である。図7は、図3と同様に、ブラケットユニット110を図1のII-II線を中心として所定の幅で切り取っている。図7(A)が背面上方斜視図、図7(B)が正面下方斜視図である。第1の実施形態と同等の構成を示す構成については、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0056】
車両用前照灯101は、ブラケットユニット110の形態が異なる以外は、車両用前照灯1と同等の構成を有する。
【0057】
ブラケットユニット110は、前方に向かって開口するリフレクター22の下端端部から連続して背面に折り返された隔壁141aを備える。隔壁141aは灯室RHを画成する立壁として構成される。
【0058】
リフレクター22と隔壁141aとが非常に近接して設けられているため、両者の間には狭小空間SR2が形成されている。
【0059】
ここで、第1の実施形態と同様に、隔壁141aには狭小空間SR2に連通する開口部142が形成されているが、第1実施形態とは異なり、隔壁141aには段差部は設けられていないため、開口部142は平板状の隔壁141aに設けられた貫通孔として構成されている。
【0060】
(第2実施形態の金型:スライド金型)
上記形状を備えたブラケットユニット110の成形方法について説明する。図8はブラケットユニット110の金型150である。
【0061】
図8に示すように、金型150は、スライド部材161を有するキャビティ側金型160とコア側金型170とで構成される。スライド部材161はキャビティ側金型160の入れ子として設けられ、本体であるキャビティ側金型160に対して、矢印DR1の方向(上下方向)にスライド可能に構成されている。スライド部材161は、ブラケットユニット110に開口部142を成形するために設けられている。
【0062】
また、コア側金型170の成形面には、狭小空間SR2に対応する凸部171が設けられている。
【0063】
キャビティ側金型160とコア側金型170とが型締めされると、スライド部材161は上方向に移動して、先端部がコア側金型170の凸部171に当接した状態で保持される。金型150の内部にはブラケットユニット110の形状に対応した成形空間MS2が画成され、この成形空間MS2に所定の融解温度に加熱された状態の樹脂部材が射出され、ブラケットユニット110は成形される。
【0064】
前述の通り、狭小空間SR2に対応する凸部171は、融解温度に加熱された樹脂部材が流し込まれる成形空間MS2に取り囲まれており、熱がこもりやすい構造であるが、先細りの細長い形状であるため、冷却回路80を設けることができない。
【0065】
本実施形態においては、スライド金型を用いて、スライド部材161を凸部171に当接させることで、当接部172から凸部171の熱を伝達させて(図中の白色矢印の方向)、凸部171の温度を下げる構成とした。スライド部材161およびキャビティ側金型160は金属部材で構成されており、凸部171はスライド部材161や当接部172近傍に配置されたキャビティ側金型160の冷却回路80により、スライド部材161を介して冷却される。
【0066】
金型150が十分に冷却された後に、スライド部材161が下方へ移動して凸部171から離間し、樹脂部材に接触しない位置まで下がると、金型150が型開きされて、樹脂成形品(ブラケットユニット110)が取り出される。
【0067】
樹脂成形品が大型であるなど、開口部142を大きく設けることができる場合には、スライド部材161に冷却回路80を設けてもよい。またブラケットユニット110に複数の開口部142を設け、金型150には複数のスライド部材161を使用して、冷却効果を高めても良い。
【0068】
本実施形態では、背面に窪んだ形状で反射面を形成するリフレクターをと、これに連続して背面へ折り返される灯室の隔壁で構成される樹脂成形品としたが、同様の構成のエクステンションリフレクターとそのブラケット部材や、パラボラリフレクターとそのブラケット部材などの一体成形品においても、本発明を適用できる。
【0069】
リフレクターなどの所定の形状で、所要の見栄えまたは機能を構成する意匠部は、ヒケ跡の発生を防止しなければならないうえ、開口部を設けることがでない。意匠部の周縁から連続して折り返される非意匠部、例えばブラケット部材や立壁など、意匠部を構成しない非意匠部である箇所に開口部を設けることで、意匠部にヒケ跡が発生することを抑制できる。
【0070】
(変形例)
上記構成の一体成形品の非意匠部に設けられる、成形金型の熱放射のための開口部は、使用者からは視認困難部、または目隠し材に目隠しされる非視認部が好ましい。例として、図9に車両用灯具LP,LP´の搭載箇所と使用者の視線との関係を示して、これを説明する。
【0071】
車両用灯具LPは車両Vの背面に搭載され、その灯室内に、パラボラリフレクター91とそのブラケット部材92とが一体成形したリフレクターユニット90を備える。前記実施形態と同様に、リフレクターユニット90のブラケット部材92は、パラボラリフレクター91の周縁から折り返されて構成されており、ブラケット部材92には開口部93が形成されている。
【0072】
車両用灯具LPは車両Vの背面上部に搭載され(例えばハイマウントストップランプなど)、ブラケット部材92はパラボラリフレクター91の上部に構成されている。車両用灯具LPが車両Vに搭載された状態で、使用者が車両用灯具LPに正対してこれを確認しても、ブラケット部材92に設けられた開口部93はパラボラリフレクター91に隠されており、視認されない。
【0073】
また、車両用灯具LPと同構成の車両用灯具LP´が車両Vの比較的低位置に搭載される場合(例えばバックランプなど)には、先ほどとは逆に、パラボラリフレクター91´の下部にブラケット部材92´を設けてこれに開口部93´を形成することで、開口部93´をパラボラリフレクター91´で遮蔽することができる。
【0074】
このように、通常使用状態で使用者が成形品を正面視して、視認し難い場所に開口部を設けることで、開口部を形成することによる見栄えへの影響を最小限に抑えることができる。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施形態や変形例について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
10、110:ブラケットユニット
22:リフレクター
22a:反射面
41a、141a:隔壁
42、142:開口部
42a、42b、42c、42d:辺
43:段差部
RH、RL:灯室
SR1、SR2:狭小空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9