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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】計数機
(51)【国際特許分類】
   G06M 9/00 20060101AFI20231211BHJP
   G06M 7/06 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G06M9/00 Z
G06M7/06 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020006604
(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公開番号】P2021114142
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岩井 宏文
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-272892(JP,A)
【文献】特開2014-203443(JP,A)
【文献】特開2001-118047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06M 7/06
G06M 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の計数対象物の束を載置する載置面を有する載置台と、
前記載置面に載置される前記複数枚の計数対象物の積層面である被走査面を、前記計数対象物の積層方向に走査して、前記積層方向に沿った前記被走査面の凹凸に対応する信号を出力する検出部と、
前記検出部の出力信号波形に基づき前記計数対象物の枚数を計数する計数部と、
前記載置面に載置される前記複数枚の計数対象物の前記被走査面における前記検出部の走査位置を、前記積層方向と直交する方向の任意の位置に設定できるように、前記計数対象物の前記直交する方向の位置を調整可能な治具と、
前記計数部により計数された前記計数対象物の枚数と、前記検出部の前記出力信号波形を表示する表示画面と、
前記出力信号波形に基づき、前記複数枚の計数対象物の前記被走査面のうち前記検出部の前記走査位置が安定して計数できるか否かを判定する判定部と、
を備え
前記表示画面に前記判定部の判定結果を表示する、
計数機。
【請求項2】
前記判定部は、前記出力信号波形の振幅が所定の基準値より小さい場合に、前記走査位置では計数が不安定となると判定する、
請求項に記載の計数機。
【請求項3】
前記出力信号波形の周期に相対的に大きい部分がある場合に、前記複数枚の計数対象物の中に通常より厚いものが混在していることを判定する厚み検知部を備え、
前記表示画面に前記厚み検知部の検知結果を表示する、
請求項1または2に記載の計数機。
【請求項4】
前記検出部は光センサである、
請求項1~のいずれか一項に記載の計数機。
【請求項5】
前記検出部は変位計である、
請求項1~のいずれか一項に記載の計数機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計数機に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の計数対象物の束を積層方向に沿って光センサで走査し、光センサの出力信号に基づいて計数対象物の数を計数する計数機が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4774576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば効能書など、印刷面が表側になるよう折られたものを計数対象物とする場合、被走査面に印刷箇所が配置される場合がある。印刷箇所が被走査面のどこに出るかはケースバイケースであり、走査位置によって被走査面の色や模様などの条件が異なる場合がある。走査条件が異なると、計数が不安定となり、計数精度が低下する場合がある。
【0005】
本開示は、計数対象物の被走査面の性状によらず安定した計数が可能な計数機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一観点に係る計数機は、複数枚の計数対象物の束を載置する載置面を有する載置台と、前記載置面に載置される前記複数枚の計数対象物の積層面である被走査面を、前記計数対象物の積層方向に走査して、前記積層方向に沿った前記被走査面の凹凸に対応する信号を出力する検出部と、前記検出部の出力信号波形に基づき前記計数対象物の枚数を計数する計数部と、前記載置面に載置される前記複数枚の計数対象物の前記被走査面における前記検出部の走査位置を、前記積層方向と直交する方向の任意の位置に設定できるように、前記計数対象物の前記直交する方向の位置を調整可能な治具と、前記計数部により計数された前記計数対象物の枚数と、前記検出部の前記出力信号波形を表示する表示画面と、前記出力信号波形に基づき、前記複数枚の計数対象物の前記被走査面のうち前記検出部の前記走査位置が安定して計数できるか否かを判定する判定部と、を備え
前記表示画面に前記判定部の判定結果を表示する
【0007】
この構成により、計数対象物の被走査面に印刷部分がある場合でも、治具の位置を調整して、計数対象物の被走査面の走査位置を、印刷部分ではなく無地部分とすることで、検出部による走査位置の全体にわたって色や明るさの変化を少なくできる。これにより、計数に用いる検出部の計測信号において、被走査面の明暗の影響を低減させることができ、計数機の計数精度を向上でき、この結果、計数機は計数対象物の被走査面の性状によらず安定した計数が可能となる。
【0009】
また、計数部により計数された計数対象物の枚数と、記検出部の出力信号波形を表示する表示画面を備える構成により、計数結果や出力信号波形を利用者に即座に提示でき、利便性を向上できる。
【0011】
また、出力信号波形に基づき、複数枚の計数対象物の被走査面のうち検出部の走査位置が安定して計数できるか否かを判定する判定部を備え、表示画面に判定部の判定結果を表示する構成により、安定した計数の可否を自動的に判定できるので、操作者の負担を軽減しつつ計数機の計数精度をさらに向上できる。
【0012】
また、本発明の実施形態の一観点に係る計数機において、前記判定部は、前記出力信号波形の振幅が所定の基準値より小さい場合に、前記走査位置では計数が不安定となると判定する。
【0013】
この構成により、検出部の走査位置が被走査面の印刷部分となって計数が不安定となることを精度良く判定できる。
【0014】
また、本発明の実施形態の一観点に係る計数機は、前記出力信号波形の周期に相対的に大きい部分がある場合に、前記複数枚の計数対象物の中に通常より厚いものが混在していることを判定する厚み検知部を備え、前記表示画面に前記厚み検知部の検知結果を表示する。
【0015】
この構成により、計数対象物の束に通常より厚いものが混在しているエラーを精度良く検出できる。
【0016】
また、本発明の実施形態の一観点に係る計数機において、前記検出部は光センサである。または、前記検出部は変位計である。これにより、計数対象物の被走査面の凹凸を精度良く検出できる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、計数対象物の被走査面の性状によらず安定した計数が可能な計数機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る計数機の平面図である。
図2図1に示す計数機のII-II断面図である。
図3】計数対象物の一例である効能書の束の概形図である。
図4図3に例示した計数対象物の印刷部分を走査するときの設置状態を示す図である。
図5】印刷部分を走査位置としたときの光センサの出力信号波形の一例である。
図6図5に示す出力信号波形の拡大図である。
図7図3に例示した計数対象物の無地部分を走査するときの設置状態を示す図である。
図8】無地部分を走査位置としたときの光センサの出力信号波形の一例である。
図9図8に示す出力信号波形の拡大図である。
図10】制御装置の機能ブロック図である。
図11】実施形態に係る計数機の計数処理の手順を示すフローチャートである。
図12】厚み検出モードを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0020】
なお、以下の説明において、x方向、y方向、z方向は互いに垂直な方向である。x方向及びy方向は水平方向であり、z方向は鉛直方向である。x方向は光センサ4の走査方向である。y方向は、水平治具10の移動方向である。
【0021】
図1は、実施形態に係る計数機1の平面図である。図2は、図1に示す計数機1のII-II断面図である。図3は、計数対象物20の一例である効能書の束の概形図である。
【0022】
図1図2に示す計数機1は、複数枚の計数対象物20(以下では「複数枚の計数対象物20」を単に「計数対象物20」とも表記する)を計数するための装置である。計数対象物20は、例えば図3に例示する効能書のような紙葉類が折られて作成された折り状物が積層された束である。また、計数対象物20は、個々の主面同士が積層方向(走査方向)に沿って向き合って積層され、この積層面が、光センサ4により走査される被走査面21として用いられる。
【0023】
計数機1は、載置台2と操作部3とを備える。載置台2は、計数対象物20を載置する載置面2Aを有する。操作部3は、計数機1の計数動作の操作指令の入力や計数結果等を表示する部分である。載置台2と操作部3は、例えばx方向に並設される。
【0024】
載置台2は、z正方向側の上面が計数対象物20を載置する載置面2Aとして用いられる。載置面2Aには、y方向の所定位置にx方向に沿って延在するスリット8が設けられている。
【0025】
載置台2の内部には、光センサ4(検出部)が収容されている。光センサ4は、x方向に延在するレールなどの移動機構12によってスリット8に沿って移動可能に設置されている。光センサ4は、光源41と受光部42とを有し、光源41から照射された光がスリット8を通過して載置面2Aに載置された計数対象物20の被走査面21にて反射され、反射光を受光部42で受光する。光センサ4は、計数対象物20の被走査面21を計数対象物20の積層方向(x方向)に走査して、積層方向に沿った被走査面21の凹凸(明暗)に対応する信号を出力する。光センサ4は、計数対象物20の被走査面21の凹凸を精度良く検出できる。光センサ4の動作は計数機1の内部に設けられる制御装置5によって制御される。制御装置5は、光センサ4の計測信号を受信して信号処理を施して出力信号を作成する。
【0026】
複数の計数対象物20は、スリット8の延在方向であるx方向が積層方向となるように載置面2Aに載置される。そして、載置面2A上には、スリット8の延在方向に沿って移動可能であり、計数対象物20をx方向両側から挟持可能な一対のストッパ9が設置されている。
【0027】
また、載置面2A上には、スリット8の延在方向に沿って延在する水平治具10が設けられる。水平治具10は、y正方向側に向き、載置面2Aと直交する突き当て面10bを有する。複数の計数対象物20は、この突き当て面10bにy正方向側から突き当てられることで、y方向の位置が揃えられる。なお、載置面2Aはy正方向側が上方となり、y負方向側が下方となる傾斜面であるのが好ましい。載置面2Aが傾斜面であると、計数対象物20を載置面2Aに載置したときに、各計数対象物が下側にある突き当て面10bに重力の作用で自然に突き当たって、y方向の位置揃えを容易にできる。
【0028】
また、一対のストッパ9は、水平治具10の突き当て面10bに沿って摺動可能に取り付けられており、ネジ9aによって水平治具10に固定することによって、x方向の任意の位置に位置決めできるようになっている。
【0029】
さらに、載置面2A上には、水平治具10のx方向両側にy方向に沿って延在する一対の垂直治具11が設けられる。水平治具10は、その両端部がそれぞれ一対の垂直治具11にy方向に摺動可能に取り付けられており、ネジ10aによって垂直治具11に固定することによって、y方向の任意の位置に位置決めできるようになっている。
【0030】
操作部3は、タッチパネル6と、スタートボタン7とを備える。スタートボタン7は、計数動作の開始トリガを入力する入力装置である。タッチパネル6は、表示装置と入力装置とを兼ねており、指先等で画面を触れることによって計数動作に関する各種設定を入力でき、また、計数結果等の各種情報を表示する。なお、スタートボタン7の機能がタッチパネル6に含まれる構成でもよい。
【0031】
制御装置5は、計数機1の動作全体を制御する。制御装置5は、光センサ4と通信可能に電気的に接続され、光センサ4による計数対象物20への走査を制御する。また、制御装置5は、タッチパネル6及びスタートボタン7とも通信可能に電気的に接続され、計数動作の各種設定の入力を受け付け、また、計数動作の各種情報を出力する。
【0032】
本実施形態では、計数対象物20は、例えば図3に例示する効能書のような紙葉類が折られて作成された折り状物の束である。このような折り状物では、例えば二つ折りの場合には山折り部分のほうが計数に用いられる被走査面21となるように設置されると考えられる。巻三つ折りや、外三つ折りなど三つ折り以上の折り数の場合でも同様に山折り部分は被走査面21に含まれる。そして、図3に例示するように、印刷面が表側になるように折られた場合には、被走査面21に印刷部分22と無地部分23とが混在することになる。光センサ4の計測信号は被走査面21の明暗に応じたものであるので、走査位置が印刷部分22か無地部分23かによって、光センサ4から得られる被走査面21の出力信号の波形が異なり、この波形に基づき行う計数処理の精度に差異が出る可能性が考えられる。このような光センサ4の計測信号の傾向について、以下に図4図9を参照して説明する。
【0033】
図4は、図3に例示した計数対象物20の印刷部分22を走査するときの設置状態を示す図である。図4に示すように、計数対象物20は、一対のストッパ9によってx方向両側から挟持されると共に、水平治具10のy方向位置によって、印刷部分22がスリット8上に配置されるように設置されている。
【0034】
図5は、印刷部分22を走査位置としたときの光センサ4の出力信号波形G1の一例である。図6は、図5に示す出力信号波形G1の拡大図である。光センサ4の出力信号波形は、一般に、例えば被走査面21の走査位置が白に近づき光の反射率が大きくなるほど振幅が大きく、例えば被走査面21上の走査位置が黒に近づき反射率が小さくなるほど振幅が小さくなる傾向がある。また、従来、効能書の折り位置の精度は高くないため、同一の印刷内容でも、被走査面21に出る印刷部分22の位置や幅が異なる場合が多い。このため、図5図6に示すように、印刷部分22の出力信号波形G1では、振幅が全体的に小さく、またばらつきがある。計数処理では一般に光センサ4の出力信号波形のピーク値の数を枚数として出力するので、出力信号波形G1のように振幅にばらつきがあると計数精度が低下する虞がある。
【0035】
一方、図7は、図3に例示した計数対象物20の無地部分23を走査するときの設置状態を示す図である。図7に示すように、計数対象物20は、一対のストッパ9によってx方向両側から挟持される。また、水平治具10のy方向位置は、図4の配置よりもy正方向側に移動して固定されており、これにより、印刷部分22よりもy負方向側にある無地部分23がスリット8上に配置されるように設置されている。
【0036】
図8は、無地部分23を走査位置としたときの光センサ4の出力信号波形G2の一例である。図9は、図8に示す出力信号波形G2の拡大図である。走査位置が被走査面21の無地部分23であると、走査位置の全体にわたって色や明るさの変化が少ない。このため、図8図9に示すように、無地部分23の出力信号波形G2では、振幅が全体的に大きくまたばらつきが少なく均一的となる。出力信号波形G2のように振幅が大きく、均一な波形を用いることによって、計数精度を高精度にできる。
【0037】
このように、本実施形態では、水平治具10のy方向位置を調整して、計数対象物20の被走査面21の走査位置を、図4のような印刷部分22ではなく、図7のような無地部分23とすることで、光センサ4による走査位置の全体にわたって色や明るさの変化を少なくできる。これにより、計数に用いる光センサ4の計測信号において、被走査面21の明暗の影響を低減させることができ、計数機1の計数精度を向上でき、この結果、本実施形態の計数機1は、計数対象物20の被走査面21の性状によらず安定した計数が可能となる。本実施形態では、水平治具10と垂直治具11が、「載置面2Aに載置される複数枚の計数対象物20の被走査面21における検出部(光センサ4)の走査位置を、計数対象物20の積層方向と直交する方向(y方向)の任意の位置に設定できるように、計数対象物20の直交方向の位置を調整可能な治具」として機能する。
【0038】
計数対象物20の被走査面21の走査位置と計数精度との関係の判断は、光センサ4の出力信号波形に基づき計数機1が自動的に行ってもよいし、例えば出力信号波形をタッチパネル6に表示して利用者に提示して、利用者が提示された波形をみて判断してもよい。本実施形態では、計数機1が自動的に判断して不安定な計数と判断した場合にこれを利用者に警告する態様を以下に例示する。
【0039】
図10は、制御装置5の機能ブロック図である。図10に示すように、制御装置5は、走査制御部51と、信号処理部52と、計数可否判定部53(判定部)と、計数制御部54(計数部)と、表示制御部55とを備える。
【0040】
走査制御部51は、光センサ4と移動機構12の動作を制御して、載置面2Aに載置された計数対象物20の被走査面21の走査処理を制御する。走査制御部51は、タッチパネル6を介して設定された各種走査条件に基づき、スタートボタン7が押下されると走査を実行する。
【0041】
信号処理部52は、光センサ4の計測信号に各種信号処理を施して出力信号波形を作成する。信号処理部52は、例えば計測信号にA/D変換、ハイパスフィルタリング、バンドパスフィルタリング、増幅などの各処理を施すことができる。信号処理部52が出力する出力信号波形は、例えば図5図6に示した出力信号波形G1や、図8図9に示した出力信号波形G2である。
【0042】
計数可否判定部53は、信号処理部52が作成した出力信号波形に基づく計数処理が可能か否かを判定する。計数可否判定部53は、例えば図8図9に示した出力信号波形G2のように振幅が所定の基準値以上で均一化した波形の場合には、安定した計数が可能と判断する。一方、計数可否判定部53は、例えば図5図6に示した出力信号波形G1のように振幅が所定の基準値以下でばらつきが多い波形の場合には、不安定な計数となって計数精度が落ちるため計数に向かない出力信号波形であり、この波形を用いた計数処理を行うのは不可と判断することができる。
【0043】
計数制御部54は、信号処理部52が作成した出力信号波形に基づき計数処理を行う。計数制御部54は、例えば出力信号波形のピークの数を計数して計数対象物の枚数として出力できる。
【0044】
表示制御部55は、計数制御部54の計数結果や、信号処理部52が作成した出力信号波形をタッチパネル6に表示する。また、表示制御部55は、計数可否判定部53が計数不可と判断した場合に、不安定な計数となる出力信号波形である旨をタッチパネル6に表示することもできる。
【0045】
制御装置5は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)、通信モジュール、補助記憶装置、などを含むコンピュータシステムとして構成することができる。図10に示した制御装置5の各機能は、CPUやRAMなどに所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPUの制御のもとで各種ハードウェアを動作させると共に、RAMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0046】
制御装置5は、アナログ回路、デジタル回路又はアナログ・デジタル混合回路で構成された回路であってもよい。また、制御装置5の各機能の制御を行う制御回路を備えていてもよい。各回路の実装は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等によるものであってもよい。
【0047】
図11は、実施形態に係る計数機1の計数処理の手順を示すフローチャートである。
【0048】
ステップS01では、計数対象物20が載置面2A上の一対のストッパ9の間に挟持され、被走査面21がスリット8に面するように設置される。
【0049】
ステップS02では、スタートボタン7が押下されると、制御装置5により計数処理が開始される。
【0050】
ステップS03では、制御装置5の走査制御部51により、光センサ4が制御されて計数対象物20の走査が実行される。光センサ4は計測した信号を制御装置5に出力する。
【0051】
ステップS04では、制御装置5の信号処理部52により、光センサ4の計測した信号に適宜信号処理を施して出力信号が生成される。
【0052】
ステップS05では、制御装置5の計数可否判定部53により、ステップS04にて生成された出力信号の波形に基づき計数処理の実施可否が判定される。計数可否判定部53は、例えば上述のように出力信号波形の振幅に基づき、出力信号波形が安定か不安定かを判定する。例えば、振幅が所定の基準値以上のときに計数が安定していると判定し、振幅が基準値以下のときに計数が不安定と判定する。また、振幅の偏差が所定の基準値以内のときに振幅のばらつきが少なく計数が安定していると判定し、振幅の偏差が所定の基準値以上のときに振幅のばらつきが多く計数が不安定と判定する。なお、計数の安定と不安定とを切り分けるための振幅の基準値は、あらかじめ計数対象物の種類や材料、表面性状などに応じて設定されてもよいし、タッチパネル6を介して利用者が適宜変更できる構成でもよい。
【0053】
ステップS06では、ステップS05の判定結果に基づき計数処理は安定するか否かが判定される。
【0054】
ステップS06にて、ステップS05の判定の結果出力信号波形が安定しており、安定した計数が可能な場合(ステップS06のYes)には、ステップS07に進み、制御装置5の計数制御部54により、出力信号を用いて計数処理が実行される。
【0055】
ステップS08では、ステップS06にて実行された計数の結果が、制御装置5の表示制御部55によりタッチパネル6に表示される。ステップS08の処理が完了すると本制御フローを終了する。
【0056】
一方、ステップS06にて、ステップS05の判定の結果出力信号波形が不安定であり、安定した計数が不可能な場合(ステップS06のNo)には、ステップS09に進み、制御装置5の表示制御部55により、計数が不安定の旨の警告がタッチパネル6に表示される。
【0057】
ステップS10では、ステップS09の警告に応じて、例えば図7に示したように、走査位置が被走査面21の無地部分23となるように、水平治具10のy方向位置が調整されて、走査位置が変更される。ステップS10の走査位置変更が完了すると、ステップS02に戻り、再度スタートボタン7が押下されて計数処理が再開される。
【0058】
このように本実施形態では、計数機1は、載置面2Aに載置される複数枚の計数対象物20の被走査面21における光センサ4の走査位置を、計数対象物20の積層方向と直交する方向(y方向)の任意の位置に設定できるように、計数対象物20の直交方向の位置を調整可能な治具としての水平治具10及び垂直治具11を備える。この構成により、計数対象物20の被走査面21に印刷部分22がある場合でも、水平治具10のy方向位置を調整して、計数対象物20の被走査面21の走査位置を、印刷部分22ではなく無地部分23とすることで、光センサ4による走査位置の全体にわたって色や明るさの変化を少なくできる。これにより、計数に用いる光センサ4の計測信号において、被走査面21の明暗の影響を低減させることができ、計数機1の計数精度を向上でき、この結果、計数機1は計数対象物20の被走査面21の性状によらず安定した計数が可能となる。
【0059】
また、本実施形態の計数機1は、制御装置5の計数制御部54により計数された計数対象物20の枚数を表示する表示画面としてのタッチパネル6を備える。この構成により、計数結果を利用者に即座に提示でき、利便性を向上できる。また、タッチパネル6は、光センサ4の出力信号波形も表示するのが好ましい。これにより、出力信号波形に基づく計数可否の判断を、計数可否判定部53だけでなく利用者も行うことができる。
【0060】
また、本実施形態の計数機1は、光センサ4の出力信号波形に基づき、複数枚の計数対象物20の被走査面21のうち光センサ4の走査位置が安定して計数できるか否かを判定する制御装置5の計数可否判定部53を備える。タッチパネル6に計数可否判定部53の判定結果を表示する。この構成により、安定した計数の可否を自動的に判定できるので、操作者の負担を軽減しつつ計数機1の計数精度をさらに向上できる。
【0061】
また、本実施形態の計数機1では、計数可否判定部53は、光センサ4の出力信号波形の振幅が所定の基準値より小さい傾向がある場合に、この信号を計測した走査位置では計数が不安定となると判定する。光センサ4の出力信号波形の振幅は被走査面の明暗と相関が強いので、振幅に基づく判定を行なうことで、光センサ4の走査位置が被走査面21の印刷部分22となって計数が不安定となることを精度良く判定できる。
【0062】
図12は、厚み検出モードを説明する図である。本実施形態に係る計数機1の制御装置5は、上記の計数可否判断機能の他に、計数対象物20の個々の厚みを検出する厚み検出モードを実行する構成でもよい。図12の(a)は、光センサ4の出力信号波形G3の一例であり、(b)はタッチパネル6に表示される検出結果画面の一例である。
【0063】
計数対象物20が効能書などの折り状物の場合、通常は一部ごとに積層されるが、例えば二部を纏めて折り込んだものなど、通常より厚いものが束の中に混在する場合がある。このような束は明らかなエラー対象であるので、計数機1がこのエラー対象を検出できるのが好ましい。
【0064】
例えば図12(a)に示す出力信号波形G3では、通常の厚さの計数対象物では各部の厚さがほぼ等しいため、出力信号波形G3のピーク間の距離もほぼ一定となる。これに対して、通常より厚い計数対象物に対応する部分Aでは、ピーク間距離が他の通常部分より大きくなる。したがって、本実施形態では、制御装置5は、厚さ検出モードの実行時には、光センサ4の出力信号波形G3のピーク間距離を監視して、所定範囲から外れる箇所Aを検出することで、通常より厚い計数対象物が混在していることを検知できる。これにより、計数対象物20の束に通常より厚いものが混在しているエラーを精度良く検出できる。
【0065】
このような厚さ検出モードについては、本実施形態に係る計数機1の制御装置5が、出力信号波形G3の周期に相対的に大きい部分Aがある場合に、複数枚の計数対象物20の中に通常より厚いものが混在していることを判定する厚み検知部を備える、とも表現できる。
【0066】
厚さ検出モードの検出結果の表示画面例としては、例えば図12(b)に示すよう検知結果としてバー表示Bにしてタッチパネル6に表示する構成が挙げられる。バー表示Bは、その長さが複数の計数対象物20の走査方向(x方向)に沿った個々の対象物の位置に対応している。ピーク間距離が他より大きい箇所Aを検出した場合には、その箇所Aの走査方向位置と対応する部分B1の色を変えるなど強調表示することで、計数対象物20の異常発生箇所を報知できる。
【0067】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0068】
上記実施形態では、光センサ4の出力信号波形G1、G2に基づき制御装置5により計数が安定するか否かを判定する構成を例示したが、計数安定の判定は制御装置5が行わずに、計数機1の利用者が判断する構成でもよい。この場合、例えばタッチパネル6に光センサ4の出力信号波形G1、G2が表示され、利用者はこの波形をみて安定か不安定かを判断する。
【0069】
上記実施形態では、計数対象物20の被走査面21を走査する要素として光センサ4を用いたが、被走査面21の凹凸に対応する信号を出力できる検出部であればよく、光センサ4の代わりに、例えば被走査面21との距離に対応する信号を出力する変位計(レーザ変位計、超音波変位計など)を用いてもよい。変位計も、計数対象物20の被走査面21の凹凸を精度良く検出できる。
【0070】
上記実施形態では、複数枚の計数対象物20の一例として効能書などの折り状物を例示したが、計数対象物20は、空封筒、封入済み封筒、製函済み薬箱、官製はがき、圧着はがき、手形・小切手・商品券などの証券用紙、遊戯カード・トレーディングカードなどの紙製カード、CD・DVDのジャケット、プリペイドカード・プラスチックカードなどでもよい。
【0071】
上記実施形態では、複数枚の計数対象物20の下方から光センサ4による走査を行う構成を例示したが、この構成としたのは、計数対象物20の被走査面21は下方を向く面となり、被走査面21が載置面2Aに突き当たることで揃えやすいからである。光センサ4の走査位置は計数対象物20の下方に限られず、例えば図1の紙面下方向(y負方向)側から計数対象物20を走査する構成でもよい。この場合、計数対象物20の被走査面21はy負方向側を向く側面となり、被走査面21が水平治具10の突き当て面10bに突き当たることで、実施形態の構成と同様に揃えやすい。
【0072】
上記実施形態では、載置面2A上で水平冶具10のy方向での調整を手動で行ったが、例えばモータ等を利用して水平治具10をy方向に自動調整できる構成でもよい。この場合、例えば水平治具10の自動調整によって計数対象物20のy方向の走査位置を自動的に調整しながら走査させ、走査出力の安定した位置で自動的に計数するようにしてもよい。さらに、上記実施形態では載置面2A上で固定された計数対象物20に対して、光センサ4を走査する計数方法を示したが、光センサ4を固定し、計数対象物20を載置した載置面2Aを相対的にx方向に移動して走査するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 計数機
2 載置台
2A 載置面
4 光センサ(検出部)
5 制御装置(計数部、判定部、厚み検知部)
6 タッチパネル(表示画面)
10 水平治具(治具)
20 計数対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12