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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】計数機
(51)【国際特許分類】
   G06M 9/00 20060101AFI20231211BHJP
   G06M 7/06 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G06M9/00 Z
G06M7/06 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020006605
(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公開番号】P2021114143
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岩井 宏文
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-118047(JP,A)
【文献】実開平4-104375(JP,U)
【文献】特開昭63-133283(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0226576(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06M 9/00
G06M 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の計数対象物の束を載置する載置面を有する載置台と、
前記載置面に載置される前記複数枚の計数対象物の積層面である被走査面を、前記計数対象物の積層方向に走査して、前記積層方向に沿った前記被走査面との距離に対応する信号を出力する変位計と、
前記変位計の出力波形に基づき前記計数対象物の枚数を計数する計数部と、
前記載置面上にて前記積層方向に対向配置されて設けられ、前記積層方向と直交する方向に延在する一対の垂直治具と、
前記載置面上に配置され、両端部がそれぞれ前記一対の垂直治具に前記直交する方向に摺動可能に取り付けられており、前記垂直治具に固定することによって、前記直交する方向の任意の位置に位置決めできる水平治具と、
を備え、
前記複数枚の計数対象物は、個々の主面同士が前記積層方向に沿って向き合って積層されて前記載置面に載置される、計数機。
【請求項2】
前記計数対象物は、紙葉類が折られて形成され、前記被走査面に山折り部を有する、
請求項1に記載の計数機。
【請求項3】
前記計数部は、1枚の前記計数対象物に対して前記変位計が走査して出力した単数出力波形を予め取得しておき、前記複数枚の計数対象物に対して前記変位計が走査して出力した複数出力波形と、前記単数出力波形とを比較して、前記複数出力波形に含まれる前記単数出力波形の数を前記計数対象物の枚数として出力する、
請求項1または2に記載の計数機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計数機に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の計数対象物の束を積層方向に沿って光センサで走査し、光センサの出力信号に基づいて計数対象物の数を計数する計数機が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4774576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば効能書など、印刷面が表側になるよう折られたものを計数対象物とする場合、被走査面に印刷箇所が配置される場合がある。印刷箇所が被走査面のどこに出るかはケースバイケースであり、走査位置によって被走査面の色や模様などの条件が異なる場合がある。走査条件が異なると、計数が不安定となり、計数精度が低下する場合がある。
【0005】
本開示は、計数対象物の被走査面の性状によらず安定した計数が可能な計数機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一観点に係る計数機は、複数枚の計数対象物の束を載置する載置面を有する載置台と、前記載置面に載置される前記複数枚の計数対象物の積層面である被走査面を、前記計数対象物の積層方向に走査して、前記積層方向に沿った前記被走査面との距離に対応する信号を出力する変位計と、前記変位計の出力波形に基づき前記計数対象物の枚数を計数する計数部と、前記載置面上にて前記積層方向に対向配置されて設けられ、前記積層方向と直交する方向に延在する一対の垂直治具と、前記載置面上に配置され、両端部がそれぞれ前記一対の垂直治具に前記直交する方向に摺動可能に取り付けられており、前記垂直治具に固定することによって、前記直交する方向の任意の位置に位置決めできる水平治具と、を備え、前記複数枚の計数対象物は、個々の主面同士が前記積層方向に沿って向き合って積層されて前記載置面に載置される


【0007】
この構成により、変位計を用いて計数対象物を走査して、変位計から出力される、計数対象物の積層方向に沿った被走査面との距離に対応する信号を用いて、計数対象物の計数が行われるので、計数対象物の被走査面の性状によらず安定した計数が可能となる。また、計数を行う際に、複数枚の計数対象物は、個々の主面同士が積層方向に沿って向き合って積層されて載置面に載置されるので、被走査面を極力小さくでき、計数のためのスペースを省スペース化できる。
【0008】
また、本発明の実施形態の一観点に係る計数機において、前記計数対象物は、紙葉類が折られて形成され、前記被走査面に山折り部を有する。
【0009】
計数対象物が上記のような構成であると、変位計と被走査面との距離の変動が顕著に出やすいので、計数対象物の計数を精度良く行うことができる。
【0010】
また、本発明の実施形態の一観点に係る計数機において、前記計数部は、1枚の前記計数対象物に対して前記変位計が走査して出力した単数出力波形を予め取得しておき、前記複数枚の計数対象物に対して前記変位計が走査して出力した複数出力波形と、前記単数出力波形とを比較して、前記複数出力波形に含まれる前記単数出力波形の数を前記計数対象物の枚数として出力する。
【0011】
この構成により、単数出力波形とのパターンマッチングによって複数出力波形中の計数対象物の枚数を計数するため、例えば1枚の計数対象物の被走査面に複数の凹凸が含まれるなど、複雑な形状の計数対象物であっても高精度に計数を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、計数対象物の被走査面の性状によらず安定した計数が可能な計数機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る計数機の平面図である。
図2図1に示す計数機のII-II断面図である。
図3】計数対象物の一例である効能書の束の概形図である。
図4】第1実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
図5】信号処理部によるレーザ変位計の計測信号の信号処理の一例を示す図である。
図6】レーザ変位計を計数対象物の走査に用いる構成が適する対象物の一例を示す図である。
図7】第2実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
図8】第2実施形態における計数制御部の計数手法を示す図である。
図9】第2実施形態に係る計数機の計数処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0015】
なお、以下の説明において、x方向、y方向、z方向は互いに垂直な方向である。x方向及びy方向は水平方向であり、z方向は鉛直方向である。x方向はレーザ変位計4の走査方向である。y方向は、水平治具10の移動方向である。
【0016】
[第1実施形態]
図1図6を参照して第1実施形態を説明する。図1は、第1実施形態に係る計数機1の平面図である。図2は、図1に示す計数機1のII-II断面図である。図3は、計数対象物20の一例である効能書の束の概形図である。
【0017】
図1図2に示す計数機1は、複数枚の計数対象物20(以下では「複数枚の計数対象物20」を単に「計数対象物20」とも表記する)を計数するための装置である。計数対象物20は、例えば図3に例示する効能書のような紙葉類が折られて作成された折り状物が積層された束である。また、計数対象物20は、個々の主面同士が積層方向(走査方向)に沿って向き合って積層され、この積層面が、レーザ変位計4により走査される被走査面21として用いられる。
【0018】
計数機1は、載置台2と操作部3とを備える。載置台2は、計数対象物20を載置する載置面2Aを有する。操作部3は、計数機1の計数動作の操作指令の入力や計数結果等を表示する部分である。載置台2と操作部3は、例えばx方向に並設される。
【0019】
載置台2は、z正方向側の上面が計数対象物20を載置する載置面2Aとして用いられる。載置面2Aには、y方向の所定位置にx方向に沿って延在するスリット8が設けられている。
【0020】
載置台2の内部には、レーザ変位計(変位計)が収容されている。レーザ変位計4は、x方向に延在するレールなどの移動機構12によってスリット8に沿って移動可能に設置されている。レーザ変位計4は、例えば三角測距方式により計数対象物20の被走査面21との距離を算出できる。三角測距方式の場合、レーザ変位計4は、計数対象物20の被走査面21にレーザ光を垂直に照射する。照射されたレーザ光はスリット8を通過して載置面2Aに載置された計数対象物20の被走査面21にて乱反射する。レーザ変位計4は、被走査面21で乱反射して返ってくる光の一部をレンズで集光し、CMOSなどの位置センサ上に結合させる。被走査面21までの距離が変わると、位置センサ上の受光位置も変わるため、この位置センサ上の受光位置を特定することで、被走査面21までの距離を求めることができる。なお、レーザ変位計4の測定手法は、三角測距方式以外でもよく、位相差検出方式やTOF(Time of Flight)方式など他の測定手法を適用してもよい。
【0021】
レーザ変位計4は、計数対象物20の被走査面21を計数対象物20の積層方向(x方向)に走査して、積層方向に沿った被走査面21との距離に対応する信号を出力する。レーザ変位計4の動作は計数機1の内部に設けられる制御装置5によって制御される。制御装置5は、レーザ変位計4の計測信号を受信して信号処理を施して出力信号を作成する。
【0022】
なお、レーザ変位計4は、測定対象物との距離を計測できるものであればよく、例えば超音波変位計などレーザ光以外を用いる変位計でもよい。
【0023】
複数の計数対象物20は、スリット8の延在方向であるx方向が積層方向となるように載置面2Aに載置される。そして、載置面2A上には、スリット8の延在方向に沿って移動可能であり、計数対象物20をx方向両側から挟持可能な一対のストッパ9が設置されている。
【0024】
また、載置面2A上には、スリット8の延在方向に沿って延在する水平治具10が設けられる。水平治具10は、y正方向側に向き、載置面2Aと直交する突き当て面10bを有する。複数の計数対象物20は、この突き当て面10bにy正方向側から突き当てられることで、y方向の位置が揃えられる。なお、載置面2Aはy正方向側が上方となり、y負方向側が下方となる傾斜面であるのが好ましい。載置面2Aが傾斜面であると、計数対象物20を載置面2Aに載置したときに、各計数対象物が下側にある突き当て面10bに重力の作用で自然に突き当たって、y方向の位置揃えを容易にできる。
【0025】
また、一対のストッパ9は、水平治具10の突き当て面10bに沿って摺動可能に取り付けられており、ネジ9aによって水平治具10に固定することによって、x方向の任意の位置に位置決めできるようになっている。
【0026】
さらに、載置面2A上には、水平治具10のx方向両側にy方向に沿って延在する一対の垂直治具11が設けられる。水平治具10は、その両端部がそれぞれ一対の垂直治具11にy方向に摺動可能に取り付けられており、ネジ10aによって垂直治具11に固定することによって、y方向の任意の位置に位置決めできるようになっている。
【0027】
なお、水平治具10がy方向に移動せずにy方向の所定位置に固定される構成でもよい。
【0028】
操作部3は、タッチパネル6と、スタートボタン7とを備える。スタートボタン7は、計数動作の開始トリガを入力する入力装置である。タッチパネル6は、表示装置と入力装置とを兼ねており、指先等で画面を触れることによって計数動作に関する各種設定を入力でき、また、計数結果等の各種情報を表示する。なお、スタートボタン7の機能がタッチパネル6に含まれる構成でもよい。
【0029】
制御装置5は、計数機1の動作全体を制御する。制御装置5は、レーザ変位計4と通信可能に電気的に接続され、レーザ変位計4による計数対象物20への走査を制御する。また、制御装置5は、タッチパネル6及びスタートボタン7とも通信可能に電気的に接続され、計数動作の各種設定の入力を受け付け、また、計数動作の各種情報を出力する。
【0030】
本実施形態では、計数対象物20は、例えば図3に例示する効能書のような紙葉類が折られて作成された折り状物の束である。このような折り状物では、例えば二つ折りの場合には山折り部分のほうが計数に用いられる被走査面21となるように設置されると考えられる。巻三つ折りや、外三つ折りなど三つ折り以上の折り数の場合でも同様に山折り部分は被走査面21に含まれる。そして、図3に例示するように、印刷面が表側になるように折られた場合には、被走査面21に印刷部分22と無地部分23とが混在することになる。
【0031】
ここで、従来の計数機では、主に光センサを用いて計数対象物の走査が行われるが、光センサの計測信号は被走査面21の明暗に応じたものであるので、走査位置が印刷部分22か無地部分23かによって、光センサから得られる被走査面21の出力信号の波形が異なり、この波形に基づき行う計数処理の精度に差異が出る可能性が考えられる。これに対して本実施形態では、レーザ変位計4を用いて計数対象物20の走査を行うため、レーザ変位計4から出力される、計数対象物20の積層方向に沿った被走査面21との距離に対応する信号を用いて、計数対象物20の計数が行われる。レーザ変位計4は、被走査面21との距離を被走査面21の明暗の影響を受けずに計測することができるので、本実施形態の計数機1は、レーザ変位計4を用いて計数対象物20の走査を行うことにより、計数対象物20の被走査面21の性状によらず安定した計数が可能となる。
【0032】
図4は、第1実施形態に係る制御装置5の機能ブロック図である。図4に示すように、制御装置5は、走査制御部51と、信号処理部52と、計数制御部53(計数部)と、表示制御部54とを備える。
【0033】
走査制御部51は、レーザ変位計4と移動機構12の動作を制御して、載置面2Aに載置された計数対象物20の被走査面21の走査処理を制御する。走査制御部51は、タッチパネル6を介して設定された各種走査条件に基づき、スタートボタン7が押下されると走査を実行する。
【0034】
信号処理部52は、レーザ変位計4の計測信号に各種信号処理を施して出力信号波形を作成する。
【0035】
図5は、信号処理部52によるレーザ変位計4の計測信号の信号処理の一例を示す図である。図5の(a)に示すように、計数対象物20の一例として、被走査面21のx正方向側の端部が面取りされており、隣の対象物との境界部分が一段下がって、距離が大きくなるような形状のものを考える。このような計数対象物20の被走査面21の形状の場合には、図5の(b)に示すように、レーザ変位計4の計測波形も被走査面21の凹凸と対応する形状となる。
【0036】
図5の(c)に示すように、この計測波形を直流交流変換して、図5n(d)に示すように、交流成分(距離の変化に応じた変動部分)のみを抜き取って0を中心に振動する信号波形に変換する。また、交流成分の振幅が小さい場合には、必要に応じて信号を増幅することもできる。その後、AD変換して計数用信号を出力する。また、必要に応じてローパスフィルタリングを施してもよい。
【0037】
図4に戻り、計数制御部53は、信号処理部52が作成した出力信号波形に基づき計数処理を行う。計数制御部53は、例えば出力信号波形のピークの数を計数して計数対象物の枚数として出力できる。
【0038】
表示制御部54は、計数制御部53の計数結果や、信号処理部52が作成した出力信号波形をタッチパネル6に表示する。
【0039】
制御装置5は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)、通信モジュール、補助記憶装置、などを含むコンピュータシステムとして構成することができる。図4に示した制御装置5の各機能は、CPUやRAMなどに所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPUの制御のもとで各種ハードウェアを動作させると共に、RAMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0040】
制御装置5は、アナログ回路、デジタル回路又はアナログ・デジタル混合回路で構成された回路であってもよい。また、制御装置5の各機能の制御を行う制御回路を備えていてもよい。各回路の実装は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等によるものであってもよい。
【0041】
第1実施形態に係る計数機1では、レーザ変位計4を用いて計数対象物20を走査するので、レーザ変位計4から出力される、計数対象物20の積層方向に沿った被走査面21との距離に対応する信号を用いて、計数対象物20の計数が行われる。これにより、計数対象物20の被走査面21の性状によらず安定した計数が可能となる。また、計数を行う際に、複数枚の計数対象物20は、個々の主面同士が積層方向に沿って向き合って積層されて載置面2Aに載置されるので、被走査面21を極力小さくでき、計数のためのスペースを省スペース化できる。
【0042】
また、計数対象物20は、図3に例示した効能書のように、紙葉類が折られて形成され、被走査面21に山折り部を有するものであると、レーザ変位計4と被走査面21との距離の変動が顕著に出るので、計数対象物20の計数を精度良く行うことができる。
【0043】
ここで、図6を参照して、光センサでは計数が安定せず、レーザ変位計4では計数を安定できる事例を説明する。図6は、レーザ変位計4を計数対象物20の走査に用いる構成が適する対象物の一例を示す図である。
【0044】
図6に示すように、光センサでは計数が安定せず、レーザ変位計4では計数を安定できる計数対象物20としては、例えば、折り回数が多く被走査面21(図では「計数面」と表記)が非常に厚い効能書を挙げることができる。従来より効能書の折り位置には高い精度は要求されていないので、同一の文章が表面に印刷されていても、図6に示すように被走査面21に出てくる印刷部分にズレが生じる場合が多い。また、図6の例のように、被走査面21のy方向のほぼ全域に印字があると、光センサの場合に計数を安定できる無地部分が走査方向(x方向)に沿った全域にある部分が無く、y方向のどの位置で走査を行ったとしても走査方向に沿ってはっきり明暗が出るので、光センサの計測信号を用いた計数処理では、高精度の計数ができない虞がある。
【0045】
本実施形態のようにレーザ変位計4を用いて計数対象物20の走査を行う構成では、被走査面21との距離の情報を得られればよいので、図6に示す例のように走査方向に沿って被走査面の明暗がはっきり出る場合でも、高精度に計数対象物20の計数を行うことができる。
【0046】
[第2実施形態]
図7図9を参照して第2実施形態を説明する。第2実施形態は、信号処理部が出力した出力信号波形から計数対象物の枚数を計数する処理において、パターンマッチングを行う点で、第1実施形態と異なる。
【0047】
図7は、第2実施形態に係る制御装置5Aの機能ブロック図である。図7に示すように、制御装置5Aは、走査制御部51と、信号処理部52と、パターン記憶部55と、計数制御部53A(計数部)と、表示制御部54とを備える。走査制御部51、信号処理部52、表示制御部54は第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0048】
パターン記憶部55は、1枚の計数対象物に対してレーザ変位計4が走査して出力した単数出力波形を予め取得して格納する。
【0049】
計数制御部53Aは、複数枚の計数対象物20に対してレーザ変位計4が走査して出力した複数出力波形と、パターン記憶部55に記憶される単数出力波形とを比較して、複数出力波形に含まれる単数出力波形の数を計数対象物の枚数として出力する。
【0050】
図8は、第2実施形態における計数制御部53Aの計数手法を示す図である。図8に示す単数波形パターン41(単位出力波形)は、例えば走査制御部51や信号処理部52により予め生成されて、パターン記憶部55に格納されている。計数制御部53Aは、複数波形パターン42(複数出力波形)を取得すると、単数波形パターン41を複数波形パターン42の積層方向の一方から他方へ移動させながらパターンマッチングを行い、単数波形パターン41が含まれる部分を抽出する。図8の例では、複数波形パターン42の中にA、B、C、Dの4つの同一部分が含まれており、この場合計数制御部53Aは計数結果として4枚と出力する。
【0051】
図9は、第2実施形態に係る計数機1の計数処理の手順を示すフローチャートである。
【0052】
ステップS01では、計数対象物1枚が計数機1に設置されて走査が実施される。ステップS02では、ステップS01にて取得された計測信号に基づき、1枚の計測対象物の被走査面との距離に関する単数波形パターン41が作成されて、パターン記憶部55に記憶される。なお、ステップS01~S02は事前に実施されるのが好ましい。
【0053】
ステップS03では、計数したい計数対象物20の束が計数機1に設置されて走査が実施される。
【0054】
ステップS04では、ステップS03にて取得された計測信号に基づき、計数用波形(図8に示した複数波形パターン42)が生成される。
【0055】
ステップS05では、パターン記憶部55から単数波形パターン41が読みだされ、単数波形パターン41と計数用波形42の比較位置が先頭に設定される。
【0056】
ステップS06では、単数波形パターン41と計数用波形42とが比較される。単数波形パターン41と計数用波形42との比較には、公知のパターンマッチング手法を用いることができる。
【0057】
ステップS07では、ステップS06の比較結果に基づき、計測用波形42に単数波形パターン41と類似する波形があるか否かが判定される。類似波形がある場合には(ステップS07のYes)、ステップS08に進みカウント値が1増分される。一方、類似波形が無い場合には(ステップS07のNo)カウント値の増分は行われずにステップS09に進む。
【0058】
ステップS09では、単数波形パターン41と計数用波形42の比較位置が終端であるか否かが判定される。単数波形パターン41と計数用波形42の比較位置が終端である場合(ステップS09のYes)には、ステップS10に進み、現在までに算出されたカウント値が計数結果として出力され、本制御フローを終了する。
【0059】
一方、単数波形パターン41と計数用波形42の比較位置が終端ではない場合(ステップS09のNo)には、ステップS11に進み、計数用波形42上の比較位置が1段階ずらして更新される。比較位置の更新は、例えば図8に示す複数波形パターン42では、左端の先頭位置から、右方向に所定長さだけ移動する処理が、右端の終端に到達するまで繰り返される。比較位置を更新するとステップS06に戻り、更新後の比較位置にて単数波形パターン41と計数用波形42との比較が繰り返される。
【0060】
このように第2実施形態では、制御装置5Aの計数制御部53Aは、1枚の計数対象物に対してレーザ変位計4が走査して出力した単数出力波形41を予め取得しておき、パターン記憶部55に記憶しておく。そして計数制御部53Aは、複数枚の計数対象物20に対してレーザ変位計4が走査して出力した複数出力波形42と、パターン記憶部55に記憶している単数出力波形41とを比較して、複数出力波形42に含まれる単数出力波形41の数を計数対象物20の枚数として出力する。
【0061】
第1実施形態では、レーザ変位計4の出力波形のピークの数に基づき複数の計数対象物20の計数を行っていた。この手法では、例えば1枚の計数対象物の被走査面に複数の凹凸が含まれるなど、複雑な形状の計数対象物の場合には、枚数に対してピーク数が増えてしまい、個々の対象物の境界をレーザ変位計4の出力波形からは見極め難くなって、計数精度が落ちる虞がある。具体例としては、複数個を並べると凹凸ができる容器(目薬の容器など)や、端面(被走査面21)に一定の凹凸がある板状のもの(メモリーカード、タイル板など)が挙げられる。
【0062】
これに対して第2実施形態では、単数出力波形41とのパターンマッチングによって複数出力波形42中の計数対象物20の枚数を計数するため、複雑な形状の計数対象物20であっても高精度に計数を行うことができる。
【0063】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0064】
上記実施形態では、複数枚の計数対象物20の一例として効能書などの折り状物を例示したが、計数対象物20は、空封筒、封入済み封筒、製函済み薬箱、官製はがき、圧着はがき、手形・小切手・商品券などの証券用紙、遊戯カード・トレーディングカードなどの紙製カード、CD・DVDのジャケット、プリペイドカード・プラスチックカードなどでもよい。
【0065】
上記実施形態では、複数枚の計数対象物20の下方からレーザ変位計4による走査を行う構成を例示したが、この構成としたのは、計数対象物20の被走査面21は下方を向く面となり、被走査面21が載置面2Aに突き当たることで揃えやすいからである。レーザ変位計4の走査位置は計数対象物20の下方に限られず、例えば図1の紙面下方向(y負方向)側から計数対象物20を走査する構成でもよい。この場合、計数対象物20の被走査面21はy負方向側を向く側面となり、被走査面21が水平治具10の突き当て面10bに突き当たることで、実施形態の構成と同様に揃えやすい。
【0066】
上記実施形態では固定された載置面2Aに対して、レーザ変位計4を走査する測定方法を示したが、レーザ変位計4を固定し、載置面2Aを相対的にx方向に移動して走査するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 計数機
2 載置台
2A 載置面
4 レーザ変位計(変位計)
5 制御装置(計数部)
20 計数対象物
41 単数波形パターン(単数出力波形)
42 計数用波形(複数出力波形)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9