(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】ケラチノサイトのPAR-2発現抑制剤およびメラノサイトのデンドライト形成抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20231211BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20231211BHJP
A61K 36/752 20060101ALI20231211BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20231211BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/02
A61K36/752
A61P17/16
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2020015619
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591230619
【氏名又は名称】株式会社ナリス化粧品
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 浩子
(72)【発明者】
【氏名】森田 美穂
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-223965(JP,A)
【文献】特開平11-335233(JP,A)
【文献】特開2002-60332(JP,A)
【文献】特開平08-259945(JP,A)
【文献】特開2015-202065(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-121468(KR,A)
【文献】市ノ木山浩道ら,香酸カンキツ'新姫'の全果実および部位別フラボノイド含有量,園学研(2012),Vol.11, No.3,p.387-391
【文献】Conc,ID 10603086,Mintel GNPD[online],2023年2月,[検索日2023.08.17],URL,https://www.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K36/00
Mintel GNPD
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
完熟新姫果皮抽出物を含むメラノサイトのデンドライト形成抑制剤
。
【請求項2】
完熟新姫果皮抽出物を含む色素沈着改善剤
。
【請求項3】
完熟新姫果皮抽出物を含む美白化粧料
。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、メラノサイトのデンドライトの形成を抑制し、さらにケラチノサイトのプロテアーゼ活性化受容体2 (protease activated receptor-2、以下PAR-2)の発現を抑制することでメラニンの取り込みを抑制することによる、皮膚における色素沈着を予防・改善する発明に関する。
【0002】
顔や手などの皮膚では他の部位に比べ紫外線に暴露される機会が多く、その結果、紫外線による一過性の色素沈着である日焼けや、老人性色素斑など年齢と共に生じる局部的な色素沈着であるシミが生じやすい。これらの色素沈着部位における病理像では表皮全域にわたる過剰なメラニンの沈着が認められ、これはメラノサイトにおけるメラニンの生成から始まる、デンドライト先端へのメラニン輸送、細胞外への放出と、ケラチノサイトに取り込まれるメラニンが最終的には垢となって肌の中から排出される過程のバランスが崩れていることが原因だと考えられる。
【0003】
メラノサイトにおけるメラニン生成を抑制する方法として、メラニン産生の鍵酵素であるチロシナーゼの活性を阻害するという方法が主流であり、コウジ酸、アルブチン等の、様々な美白有効成分が開発されてきた。一方、チロシナーゼ活性阻害成分には基質であるチロシンに代わりチロシナーゼと結合することで、その活性を抑制するという作用機序を持つものが存在するが、同作用を持つロドデノールはその代謝物がメラノサイトにおける細胞障害を誘導し、尋常性白斑を引き起こすことが知られている(非特許文献1)。そのため、チロシナーゼ活性阻害作用を持つ成分は当該障害を有する可能性があり、チロシナーゼ活性阻害は高いメラニン生成抑制効果が期待できる反面、安全性に対する懸念が残る。
【0004】
近年ではメラニンのメラノサイトからケラチノサイトへの受け渡しに着目した成分の開発も進められている。メラニンの受け渡し過程はメラノサイトからの放出とケラチノサイトの取り込みの過程の大きく2つに分類される。ケラチノサイトに発現するPAR-2はケラチノサイトにおけるメラニンの取り込みを制御していることが知られており、特許文献1ではキク科ベニバナ属ベニバナの抽出物にメラニン取り込み阻害効果があること、その機序がPAR-2活性阻害であることを報告している(特許文献1)
【0005】
一方、メラノサイトでは、細胞内で生成されたメラニンはデンドライトの先端に輸送され、ケラチノサイトに受け渡される。最近では、シミ部位におけるメラノサイトのデンドライトの数は非シミ部位に比べて有意に多いことが報告されており、このことからも1つのメラノサイトあたりのデンドライト数を減少させることが、シミ改善のための重要な機序であることが推測される(非特許文献2)
【0006】
そのため、メラノサイトからのメラニンの輸送と放出を抑制するデンドライト形成抑制効果および、ケラチノサイトにおけるメラニンの取り込みを抑制する効果を併せて持つ成分が、表皮内部の過剰なメラニンの沈着に対して優れた予防効果を発揮すると考えられ、またこれらのメラニンの放出や取り込みの抑制下でメラニンが垢となって排出されることで、結果として色素沈着の改善につながると考えられる。しかしながら、そのような成分の報告例はほとんどない。
【0007】
新姫は、熊野市新鹿町で偶然発見された新しい柑橘類で、日本古来の野性種ではなく、橘と温州みかんが自然交配した交雑品種であると言われている(非特許文献3)。起源である、温州みかん果皮抽出物に関しては美白効果が知られており、その作用機序の1つとして高いチロシナーゼ活性阻害作用が報告されている(特許文献2)。このことから、新姫果皮抽出物も高いチロシナーゼ活性阻害作用を有することが推測される。
【0008】
一方、特許文献3では、柑橘類に多く含まれるフラボノイドであるヘスペリジンがチロシナーゼ活性阻害効果を有していること、さらにヘスペリジンは未成熟の果皮に豊富に含まれていることから、未成熟果皮抽出物の美白成分としての有効性を示している。
【0009】
新姫についても、未成熟果皮にはヘスペリジンが多く含まれることが報告されている(非特許文献3)。このことから新姫の未成熟果皮抽出物の利用により従来から利用されている橘や温州みかん抽出物と同等の美白効果が期待できるが、前述したとおり、チロシナーゼ活性阻害効果を有する成分は、尋常性白斑を生じさせる危険性を完全に否定することができないため、安全性に懸念が残る。
【0010】
一方、柑橘類の果実は成熟が進むにつれ、ヘスペリジン等のフラボノイド量が減少することが知られており、新姫についても同様の結果が示されている (非特許文献3)。そのため完熟した果皮抽出物を用いることで、チロシナーゼ活性阻害効果による尋常性白斑の危険性を減じる対策ができることが想定されるが、一方でチロシナーゼ活性阻害効果が失われることによって高い美白効果が期待できなくなるという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2017-100960号
【文献】特開2006-089452号
【文献】特開2005-132793号
【0012】
【文献】新・皮膚科セミナリウム 伊藤 祥輔 2017 年 127 巻 2 号 p. 155-160
【文献】日本フォトダーマトロジー学会 第1回学術大会 講演要旨集 P5 一般演題 老人性色素斑におけるメラノサイトとケラチノサイトの三次元構造解析
【文献】Miyake, Y. Characteristics of flavonoids in niihime fruit-a new sour citrus fruit. Food Science and Technology Research, 12(3), 186-193, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このような状況下、発明者らは完熟した橘、温州みかん、新姫の果皮におけるチロシナーゼ活性阻害効果を測定したところ、起源と考えられる橘や温州みかんの果皮抽出物には比較的高いチロシナーゼ活性阻害効果が残存していたが、新姫の果皮抽出物のチロシナーゼ活性阻害効果は橘や温州みかん果皮抽出物に比して各段に低いことを発見した(
図1)。
【0014】
前述したとおり、チロシナーゼ活性阻害効果が低い完熟した新姫果皮抽出物の美白効果は全く予想できないものであったが、発明者らの鋭意検討の結果、完熟した新姫果皮抽出物にメラノサイトのデンドライト形成抑制効果および、ケラチノサイトのPAR-2発現抑制効果を見出し、本発明の完成に至った。
【0015】
本発明は、メラノサイトにおけるチロシナーゼ活性を強く抑制することなく、メラノサイトにおけるメラニンの輸送、放出およびケラチノサイトにおけるメラニンの取り込みの双方を抑制する成分を見出すことを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
完熟新姫果皮抽出物を用いることにより、上記問題を解決した。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、完熟新姫果皮抽出物により、メラノサイトにおけるデンドライト形成を抑制することでメラニンの輸送、放出を抑制し、さらにケラチノサイトにおけるPAR-2発現を抑制することで、メラニンの取り込みを抑制することにより、メラノサイト-ケラチノサイト間のメラニンの受け渡しを阻害し、日焼けや老人性色素斑、炎症性色素斑などの色素沈着を改善することができる。また、完熟新姫果皮抽出物はチロシナーゼ活性を強く阻害しないため、皮膚に対する安全性面も優れている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】完熟橘果皮抽出物、完熟温州みかん果皮抽出物、完熟新姫果皮抽出物のチロシナーゼ活性阻害作用を示すグラフ
【
図2】完熟新姫果皮抽出物のメラノサイトに対するデンドライト形成抑制効果を示した写真
【
図3】完熟新姫果皮抽出物のケラチノサイトに対するPAR-2遺伝子発現抑制効果を示した写真
【0019】
本発明の完熟新姫果皮抽出物は、ミカン属(Citrus)新姫(tachibana/reticulata)の果皮から抽出することが出来る。ここでいう完熟新姫果皮とは、新姫の果皮の青い部分がなくなり全体が黄色になった状態のことを指すものである。新姫の果実は通常10月初旬から11月初旬に採果され、その際の果皮の外観は青である。その後、果実の成熟がすすみ、凡そ12月中旬以降に採果された果実の果皮は完熟状態であり、例えば、その時期から翌年の春までに採果された新姫の果皮はそのまま成熟果皮として使用できるほか、青い状態で採果し、その後、自然状態で放置するもしくはエチレンガスなどを用いて人工的に成熟を進める等の方法で得られる果皮を用いても問題ない。ここでいう抽出物の調製は特に限定されるものではなく、例えば水、種々適当な有機溶媒、及びこれらの混合溶媒のいずれかに投入し、低温下及び/又は加温下で抽出された物が使用できる。
【0020】
完熟新姫果皮抽出物の各剤の組成物全体に対する配合量は、有効量であれば特に限定されないが、乾燥質量に換算して0.0001~1質量%が好ましく、より好ましくは0.001~0.1質量%である。
【0021】
抽出溶媒としては、特に限定はされないが例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール等の低級1価アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の液状多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸エチルなどのアルキルエステル;ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素;ジエチルエーテル等のエーテル類;ジクロルメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルカン等の1種または2種以上を用いることができる。就中、水、エチルアルコール、1,3-ブチレングリコール(1,3 BG、以下BG)の1種または2種以上の混合溶媒が特に好適である。
【0022】
以上のような条件で得られる完熟新姫果皮抽出物は、抽出された溶液のまま用いても良いが、さらに必要により濾過等の処理をして、濃縮、粉末化したものを適宜使い分けて用いることができる。
【0023】
以下、本発明における完熟新姫果皮抽出物の調製、効果試験等の実施例を示すが、ここに記載された実施例に限定されないのは言うまでもない。
【0024】
<試料の調製>
新姫完熟果実は熊野市ふるさと振興公社から提供されたものを使用した(2月に採果されたもの)。新姫完熟果実から果皮をとり、それを乾燥させたものをミルミキサーにて粉砕後、原体重量の10倍量の50% EtOHを添加し、60℃加温条件で3時間抽出した。これを完熟新姫果皮抽出物とする。なお比較例として新姫の起源と考えられている完熟橘果皮抽出物および完熟温州みかん果皮を使用した。この場合の「完熟」は、[0019]と同義である。
なお、次に実施するチロシナーゼ活性の測定試験では、上記抽出物を一度乾固させ、同量の50% BGに再溶解したものを使用した。固形分は約4 mg/mLであった。
【0025】
<チロシナーゼ活性の測定>
96 穴プレートを用いて、各種抽出物10μLとチロシナーゼ(2500 unit/mL、マッシュルーム由来、sigma社製)10μLを混和後、37℃で10分間インキュベートした。その後、McIlvaine’s buffer 75μL, L-チロシン75μL、蒸留水75μLの順に加え、37℃で20分間反応させた。なお、反応終了後、プレートリーダー(infinite F200Pro、TECAN)にて475nmの吸光度を測定した(A値)。コントロールは各抽出物の代わりとして50% BGを用いた。ブランクとして、L-チロシンの代わりに同量の蒸留水を使用した(B値)。チロシナーゼ活性阻害率を下記の式で求めた。
【0026】
【0027】
図1に示したグラフより、完熟橘果皮抽出物、完熟温州みかん果皮抽出物では高いチロシナーゼ活性阻害効果を有しているが、完熟新姫果皮抽出物のチロシナーゼ活性阻害効果は完熟橘果皮抽出物と、完熟温州みかん果皮抽出物に比して顕著に低いことが示された。
【0028】
<メラノサイトのデンドライト形成抑制確認試験>
メラノサイトはサーモフィッシャーサイエンティフィックより、moderate donor 由来のものを購入し、使用した。メラノサイト(passage 2)は2.0×104 cell/mLになるように成長因子を含むMedium 254 に懸濁し、6wellプレートに2mLずつ播種した。5% CO2条件下、37℃で24時間インキュベートし、培地交換および試料(新姫果皮抽出物およびコントロールとして抽出物の溶媒)の添加を行った。試料は培地中に0.5%になるように添加した。3日もしくは4日に1度、試料の添加および培地交換を行い、細胞を播種してから11日後に顕微鏡(BZ-700X、キーエンス)にて、デンドライトの様子を観察し、写真撮影した。
【0029】
図2より、完熟新姫果皮抽出物で処置したメラノサイトは無処置のメラノサイトと比較して細胞あたりのデンドライトの数を明らかに抑制していることが確認できた。
【0030】
<ケラチノサイトにおけるPAR-2遺伝子発現確認試験>
ケラチノサイトはクラボウより新生児由来のものを購入し使用した。本実施例ではPAR-2発現の確認手法として遺伝子発現を指標としたが、タンパク発現を指標としても良い。ケラチノサイト(Passage 3)は5×104 cell/mLになるように成長因子を含むHumedia KG-2に懸濁し、24wellプレートに500μLずつ播種した。5% CO2条件下、37℃で24時間インキュベートし、培地交換および試料(新姫果皮抽出物およびコントロールとして抽出物の溶媒)の添加を行った。試料は培地中に0.5%になるように添加した。さらに、24時間インキュベート後、トータルRNAを抽出した。トータルRNAの抽出はJanaBioscience 核酸抽出キットを用いて、方法は添付のプロトコールに従った。PrimeScript RT Reagent kit (TAKARA)を用いて、逆転写を行うことでcDNAを合成した。得られたcDNAを鋳型として、PAR-2、GAPDH(グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ:ハウスキーピング遺伝子として使用)の発現量を以下のプライマー及び酵素を用いて、リアルタイムPCR (7500 RealTime PCR system、アプライドバイオシステムズ)にて測定した。
【0031】
プライマーは、PAR-2用センスプライマー(5’-GCTCTCCTTTGCCGAAGTGT-3’)、アンチセンスプライマー(5’-TTTGAGGTGAGGGATACTTGCA-3’)、GAPDH用センスプライマー(5’-CCACATCGCTCAGACACCAT-3’)、アンチセンスプライマー(5’-TGACCAGGCGCCCAATA-3’)を用いた。PCRの反応にはSYBR SELECT MASTER MIX (サーモフィッシャーサイエンティフィック)を使用し、遺伝子発現の解析は比較Ct法で行った。
【0032】
図3より、コントロールと比較して完熟新姫果皮抽出物の処理によってケラチノサイトのPAR-2遺伝子発現量は抑制されることが確認できた(コントロールの遺伝子発現量を100とすると完熟新姫果皮抽出物は68に減少)。
【0033】
以下に本発明に係る組成物を作成した。尚、使用した新姫はいずれも完熟である。
<処方例1> 化粧水 (質量%)
新姫果皮抽出物(固形分) 0.02
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20E.0.) 1.5
1,3-ブチレングリコール 5.0
グリセリン 3.0
防腐剤・酸化防止剤 適 量
香料 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0034】
<処方例2> 乳液 (質量%)
新姫果皮抽出物(固形分) 0.01
スクワラン 8.0
ワセリン 2.0
ミツロウ 0.5
ソルビタンセスキオレエート 0.8
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.0.) 1.2
カルボキシビニルポリマー 0.2
プロピレングリコール 0.5
水酸化カリウム 0.1
エタノール 7.0
防腐剤・酸化防止剤 適 量
香料 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0035】
<処方例3> クリーム (質量%)
新姫果皮抽出物(固形分) 0.001
ミツロウ 2.0
ステアリルアルコール 5.0
ステアリン酸 8.0
スクワラン 10.0
自己乳化型グリセリルモノステアレート 3.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.0.) 1.0
プロピレングリコール 5.0
水酸化カリウム 0.3
防腐剤・酸化防止剤 適 量
香料 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0036】
<処方例4> クリームファンデーション (質量%)
新姫果皮抽出物(固形分) 0.05
タルク 5.0
セリサイト 8.0
酸化チタン 5.0
色顔料 適 量
モノイソステアリン酸ポリグリセリル 3.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.5
イソノナン酸イソトリデシル 10.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
酸化防止剤 適 量
防腐剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0037】
<処方例5> 日焼け止め化粧料 (質量%)
新姫果皮抽出物(固形分) 0.0002
酸化チタン 10.0
酸化亜鉛 10.0
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1.5
ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1.5
シクロペンタシロキサン 20.0
ジメチコン 10.0
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 0.5
セチルジメチコン 0.25
グリチルレチン酸エステル 0.05
メチルグルセス-20 1.0
1,3-ブチレングリコール 10.0
塩化ナトリウム 適 量
酸化防止剤 適 量
防腐剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0038】
色素沈着に対する有用性を確認するため、完熟新姫果皮抽出物を含む処方例1、2、3を用い、30代~40代の頬部の色素沈着の目立ちを気にしている女性パネラー4名に対し、使用テストを実施した。テストは片側の顔に完熟新姫果皮抽出物を含む製剤を、もう片側の顔に完熟新姫果皮抽出物を抜き、水と置き換えた製剤(コントロール)を1カ月間、朝、晩洗顔後に使用した。テスト実施前後に、VISIA(登録商標) Evolution (Canfield Scientific))にて顔面頬部の写真を撮影し、画像解析によるシミスコアの平均値を算出した。シミスコアの変化率は、各製剤を適用したグループの使用後の平均値(B)を使用前の平均値(A)で割ることによって算出した。
【0039】
【0040】
表1より、完熟新姫果皮抽出物を使用することによる色素沈着の改善効果が確認できた。
【産業の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、完熟新姫果皮抽出物により、メラノサイトにおけるデンドライト形成を抑制することでメラニンの輸送、放出を抑制し、さらにケラチノサイトにおけるメラニンの取り込みを抑制することにより、メラノサイト-ケラチノサイト間のメラニンの受け渡しを阻害することで、表皮内のメラニン量を減少させることを可能にし、日焼けや老人性色素斑、炎症性色素斑などの色素沈着を改善することができる。また、完熟新姫果皮抽出物はチロシナーゼ活性を強く抑制しないため、チロシナーゼ活性阻害作用を持つ成分を含む従来の美白化粧料と比して皮膚に対する安全性面も優れている。