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特許7399735評価支援装置、評価支援方法及び評価支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】評価支援装置、評価支援方法及び評価支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/18 20200101AFI20231211BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20231211BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20231211BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G06F30/18
G06F30/20
G06Q50/06
H02G1/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020017681
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021124935
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500233049
【氏名又は名称】株式会社富士テクニカルリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 和喜
(72)【発明者】
【氏名】猿田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】名取 孝
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-117373(JP,A)
【文献】特開2016-099664(JP,A)
【文献】特開2010-117765(JP,A)
【文献】特開2009-251770(JP,A)
【文献】特開2006-330825(JP,A)
【文献】国際公開第2008/082886(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/18
G06F 30/20
G06Q 50/06
H02G 1/02
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線モデルの始点座標及び終点座標を指定し、前記電線モデルにおける第1パラメータ群のそれぞれの固定値を指定し、前記電線モデルにおける第2パラメータ群のそれぞれの範囲を指定する指定手段と、
前記始点座標、終点座標、第1パラメータ群のそれぞれの前記固定値及び第2パラメータ群のそれぞれの前記範囲に基づき前記電線モデルの形状を決定する形状決定手段と、
前記形状決定手段により決定された前記形状のそれぞれに基づき前記電線モデルの可動領域を決定する評価手段と、を有する評価支援装置。
【請求項2】
前記第1パラメータ群のそれぞれは、前記電線モデルにおける内的要因と対応する物理量を示す請求項1に記載の評価支援装置。
【請求項3】
前記第1パラメータ群は、断面積を含む請求項2に記載の評価支援装置。
【請求項4】
前記第1パラメータ群は、弾性係数を含む請求項2又は3に記載の評価支援装置。
【請求項5】
前記第1パラメータ群は、線膨張係数を含む請求項2~4の何れかに記載の評価支援装置。
【請求項6】
前記第2パラメータ群のそれぞれは、前記電線モデルにおける外的要因と対応する物理量を示す請求項1~5の何れかに記載の評価支援装置。
【請求項7】
前記第2パラメータ群は、温度を含む請求項6に記載の評価支援装置。
【請求項8】
前記第2パラメータ群は、風力を含む請求項6又は7に記載の評価支援装置。
【請求項9】
前記第2パラメータ群は、張力を含む請求項6~8の何れかに記載の評価支援装置。
【請求項10】
前記第2パラメータ群は、被氷度を含む請求項6~9の何れかに記載の評価支援装置。
【請求項11】
前記評価手段は、前記電線モデルの前記可動領域と、構造物モデルと、の干渉領域を決定する請求項1~10の何れかに記載の評価支援装置。
【請求項12】
電線モデルの始点座標及び終点座標を指定し、前記電線モデルにおける第1パラメータ群のそれぞれの固定値を指定し、前記電線モデルにおける第2パラメータ群のそれぞれの範囲を指定する指定ステップと、
前記始点座標、終点座標、第1パラメータ群のそれぞれの固定値及び第2パラメータ群のそれぞれの範囲に基づき前記電線モデルの形状を決定する形状決定ステップと、
前記形状決定ステップにより決定された前記形状のそれぞれに基づき前記電線モデルの可動領域を決定する評価ステップと、をコンピュータに実行させる評価支援方法。
【請求項13】
コンピュータを、電線モデルの始点座標及び終点座標を指定し、前記電線モデルにおける第1パラメータ群のそれぞれの固定値を指定し、前記電線モデルにおける第2パラメータ群のそれぞれの範囲を指定する指定手段と、
前記始点座標、終点座標、第1パラメータ群のそれぞれの前記固定値及び第2パラメータ群のそれぞれの前記範囲に基づき前記電線モデルの形状を決定する形状決定手段と、
前記形状決定手段により決定された前記形状のそれぞれに基づき前記電線モデルの可動領域を決定する評価手段と、として機能させる評価支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価支援装置、評価支援方法及び評価支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電車線や送電線等の架空電線に係る設計や設置において重視される要素として、架空電線における可動領域に起因する接触事故の予防が挙げられる。このため、架空電線路の施工を行う際は、他設備との離隔を定められた数値の分だけ確保しなくてはならない。
【0003】
架空電線に係る可動部分は、架空電線に対して加えられる外力等により生じ得る。そのため、架空電線の設計限界を考慮し上記可動領域を把握することが必要とされる。
【0004】
ここで、実際の架空電線を撮像することで架空電線の瞬間的な形状把握を行う例が知られているが、当該例は上記可動領域を網羅的に把握できる手法であるとは言い難い。
【0005】
線条は外気温や風などの影響により弛度や横揺れが発生するため、設計を行う際は煩雑な計算式を用いる必要があり、また、二次元形状の結果のみしか表現ができない場合が多いことから、線条が位置し得る領域としての上記可動領域を表現することは困難であり、設計や施工中のリスク管理に多大なコストが発生している。
【0006】
特許文献1では、計測部から取得した屋外構造物の表面上の点における3次元座標を表す3次元点群データを用いて、路面に取り付けられるポールに取り付けられる支線の状態を検出する装置であって、前記3次元点群データに基づいて、前記支線を3次元モデル化した3次元モデルデータを作成する作成手段と、前記3次元モデルデータに基づいて、前記支線の支線長、弛度、位置情報をそれぞれ算出する算出手段とを有する設備状態検出装置に関する発明が開示されている。
【0007】
特許文献1に記載の発明は、屋外に設置された管理対象となる設備の状態を正確に検出できるが、上記例と同様、上記可動領域を網羅的に把握できる手法であるとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-148464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記事情を鑑みて、本発明は、可動領域を網羅的に把握できるような電線モデルの評価支援に係る新規の技術を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、評価支援装置であって、電線モデルの始点座標及び終点座標を指定し、前記電線モデルにおける第1パラメータ群のそれぞれの固定値を指定し、前記電線モデルにおける第2パラメータ群のそれぞれの範囲を指定する指定手段と、前記始点座標、終点座標、第1パラメータ群のそれぞれの前記固定値及び第2パラメータ群のそれぞれの前記範囲に基づき前記電線モデルの形状を決定する形状決定手段と、前記形状決定手段により決定された前記形状のそれぞれに基づき前記電線モデルの可動領域を決定する評価手段と、を有する。
【0011】
このような構成とすることで、本発明は、電線モデルの可動領域を網羅的に把握することができるようなシミュレーションを行うことができるため、架空電線における可動領域に起因する接触事故の回避に寄与することができる。また、このような構成とすることで、本発明は、座標及びパラメータの指定に基づくような、簡便なシミュレーションにより、電線モデルに係る可動領域の評価を行うことができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記第1パラメータ群のそれぞれは、前記電線モデルにおける内的要因と対応する物理量を示す。このような構成とすることで、本発明は、電線モデルに係る内的要因及び外的要因を切り分けながら、電線モデルに係る可動領域のシミュレーションに対してパラメータを導入することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記第1パラメータ群は、断面積を含む。このような構成とすることで、本発明は、電線モデルに係る可動領域のシミュレーションに対して、電線モデルに係る幾何学的特徴をパラメータとして導入することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記第1パラメータ群は、弾性係数を含む。このような構成とすることで、本発明は、電線モデルに係る可動領域のシミュレーションに対して、電線モデルに係る構造力学的特徴をパラメータとして導入することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記第1パラメータ群は、線膨張係数を含む。このような構成とすることで、本発明は、電線モデルに係る可動領域のシミュレーションに対して、電線モデルに係る環境変化への応答の様相をパラメータとして導入することができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記第2パラメータ群のそれぞれは、前記電線モデルにおける外的要因と対応する物理量を示す。このような構成とすることで、本発明は、電線モデルに係る外的要因及び内的要因を切り分けながら、電線モデルに係る可動領域のシミュレーションに対してパラメータを導入することができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記第2パラメータ群は、温度を含む。このような構成とすることで、本発明は、電線モデルに係る可動領域のシミュレーションに対して、外的要因としての環境因子をパラメータとして導入し、電線モデルに係る温度変化による寸法変化のシミュレーションを行うことができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記第2パラメータ群は、風力を含む。このような構成とすることで、本発明は、電線モデルに係る可動領域のシミュレーションに対して外的要因としての環境因子をパラメータとして導入し、電線モデルに対する風による外力付加に起因する形状変化のシミュレーションを行うことができる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記第2パラメータ群は、張力を含む。このような構成とすることで、本発明は、電線モデルに係る可動領域のシミュレーションに対して外的要因としての環境因子をパラメータとして導入し、電線モデルに対する周辺構造による外力付加に起因する形状変化のシミュレーションを行うことができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記第2パラメータ群は、被氷度を含む。このような構成とすることで、本発明は、電線モデルに係る可動領域のシミュレーションに対して外的要因としての環境因子をパラメータとして導入し、電線モデルに対する積雪による外力付加に起因する形状変化のシミュレーションを行うことができる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記評価手段は、前記電線モデルの前記可動領域と、構造物モデルと、の干渉領域を決定する。このような構成とすることで、本発明は、電線モデル間の干渉領域を高精度に予測することができるため、架空電線における可動領域に起因する接触事故の回避に寄与することができる。
【0022】
上記課題を解決するため、本発明は、評価支援方法であって、電線モデルの始点座標及び終点座標を指定し、前記電線モデルにおける第1パラメータ群のそれぞれの固定値を指定し、前記電線モデルにおける第2パラメータ群のそれぞれの範囲を指定する指定ステップと、前記始点座標、終点座標、第1パラメータ群のそれぞれの固定値及び第2パラメータ群のそれぞれの範囲に基づき前記電線モデルの形状を決定する形状決定ステップと、前記形状決定ステップにより決定された前記形状のそれぞれに基づき前記電線モデルの可動領域を決定する評価ステップと、をコンピュータに実行させる。
【0023】
上記課題を解決するため、本発明は、評価支援プログラムであって、コンピュータを、電線モデルの始点座標及び終点座標を指定し、前記電線モデルにおける第1パラメータ群のそれぞれの固定値を指定し、前記電線モデルにおける第2パラメータ群のそれぞれの範囲を指定する指定手段と、前記始点座標、終点座標、第1パラメータ群のそれぞれの前記固定値及び第2パラメータ群のそれぞれの前記範囲に基づき前記電線モデルの形状を決定する形状決定手段と、前記形状決定手段により決定された前記形状のそれぞれに基づき前記電線モデルの可動領域を決定する評価手段と、として機能させる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、可動領域を網羅的に把握できるような電線モデルの評価支援に係る新規の技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係るハードウェア構成図。
図2】本発明の一実施形態に係る機能ブロック図。
図3】本発明の一実施形態に係る全体のフローチャート。
図4】本発明の一実施形態に係る形状決定のフローチャート。
図5】本発明の一実施形態に係る形状決定の説明図。
図6】本発明の一実施形態に係る形状決定の説明図。
図7】本発明の一実施形態に係る可動領域の決定のフローチャート。
図8】本発明の一実施形態に係る可動領域の決定の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書は、本発明の一実施形態に係る構成や作用効果等について、図面を交えて説明する。本発明は、以下の一実施形態に限定されず、様々な構成を採用し得る。また、本発明の一実施形態は、各実施形態のそれぞれにおける構成の一部を、本発明の一実施形態が目的とする作用効果の実現を阻害しない範囲で互いに採用してよい。
【0027】
本発明に係る評価支援装置、評価支援方法、評価支援プログラム及び評価支援プログラム媒体のそれぞれは、同様の作用効果を奏する。例として、評価支援装置等における各手段のそれぞれと、評価支援方法における各ステップのそれぞれと、は同様の作用効果を奏する。
【0028】
本発明に係る評価支援装置、評価支援プログラム及び評価支援プログラム媒体のそれぞれにおける各手段の作用効果は、後述のプロセッサ等の演算装置が発揮する、と把握することができる。また、評価支援方法の各ステップの作用効果も当該プロセッサ等の演算装置により実現される、と把握することができる。
【0029】
本発明に係る評価支援プログラム媒体は、評価支援プログラムが格納された記録媒体であり、フラッシュメモリ等の非一過性の記録媒体である。当該評価支援プログラム媒体は、既知又は慣用のコンピュータに対して評価支援プログラムの少なくとも一部をインストール可能である、という作用効果を奏する。
【0030】
〈ハードウェア構成〉
図1に例示されるように、評価支援装置・評価支援方法・評価支援プログラム・評価支援プログラム媒体は、既知又は慣用のコンピュータ装置1を含む(利用する)。コンピュータ装置1は、少なくとも、演算装置11、主記憶装置12、補助記憶装置13及びバスインタフェースを有する。これらの各装置は、本発明が発揮する作用効果を実現する上で適宜、用いられる。なお、コンピュータ装置1は、上記構成に加えて、入力装置14、出力装置15及び通信装置16を備える構成でよい。
【0031】
なお、本発明の一実施形態に係るコンピュータ装置1は、1つの端末であってよく、1つのサーバ装置であってよく、当該端末及びサーバ装置の組み合わせであってよく、複数のサーバ装置からなるサーバ群であってよい。1以上のコンピュータ装置のそれぞれは、コンピュータ装置1が有する各手段の少なくとも一部を有する。
【0032】
演算装置11は、命令セットを実行可能な既知又は慣用のプロセッサを有する。主記憶装置12は、命令セットを記憶可能な既知又は慣用の揮発性メモリを有する。補助記憶装置13は、プログラム等を記録可能な既知又は慣用の不揮発性メモリ等の記録媒体を有する。入力装置14は、例えば意思入力が可能な既知又は慣用のインタフェースである。出力装置15は、視覚的・聴覚的・触覚的な報知を可能とするような既知又は慣用のインタフェースである。通信装置16は、ネットワークへの接続を実現するための有線方式又は無線方式に基づく既知又は慣用のネットワークインタフェースを有する。上記ネットワークは、既知又は慣用のプロトコル(トランスポート層及びアプリケーション層を指す。)に適宜、基づく。
【0033】
〈機能ブロック〉
図2に例示されるように、コンピュータ装置1は、電線モデル1000の始点座標1001及び終点座標1002を指定し、電線モデル1000における第1パラメータ群1100のそれぞれの固定値を指定し、電線モデル1000における第2パラメータ群1200のそれぞれの範囲を指定する指定手段101(指定ステップ101s)を、有する(プロセッサに実行させる)。
【0034】
コンピュータ装置1は、始点座標1001、終点座標1002、第1パラメータ群1100のそれぞれの固定値及び第2パラメータ群1200のそれぞれの範囲に基づき電線モデル1000の形状を決定する形状決定手段102(形状決定ステップ102s)を、有する(プロセッサに実行させる)。
【0035】
本明細書中の説明における「電線モデル1000の形状を決定する」とは、始点座標1001及び終点座標1002間の電線の分布を決定することを指す。
【0036】
形状決定手段102は、固定値としての第1パラメータ群のそれぞれと、範囲としての第2パラメータ群のそれぞれと、に基づくような、複数のパラメータの組み合わせに基づくような、電線モデル1000の形状決定(シミュレーション)を行う。このとき、当該組み合わせは、全ての組み合わせであってよく、一部の組み合わせであってよい。
【0037】
コンピュータ装置1は、形状決定手段102により決定された形状のそれぞれに基づき電線モデル1000の可動領域1300を決定する評価手段103(評価ステップ103s)を、有する(プロセッサに実行させる)。
【0038】
本明細書中の説明における「電線モデル1000の可動領域1300を決定する」とは、電線モデル1000が示す電線等の細線状構造物が弛む等してその形状・分布が変化する際に当該細線状構造物がとりうる(存在し得る)空間上の領域を決定することを指す。
【0039】
〈第1パラメータ群1100〉
第1パラメータ群1100のそれぞれは、例として、電線モデル1000における内的要因と対応する物理量の固定値を示す。本明細書中の説明における「内的要因」とは、例として、設計の段階で一意に決まる設計パラメータである。
【0040】
第1パラメータ群1100を構成するパラメータは、例として、電線モデル1000の断面積、弛度、弾性係数、線膨張係数又は単位重量であり、電線の特徴を示すような設計パラメータであればその種別に制限はない。このとき、当該パラメータは、温度依存性等の後述の第2パラメータを変数とするような関数の態様で扱われてよい。
【0041】
〈第2パラメータ群1200〉
第2パラメータ群1200のそれぞれは、例として、電線モデル1000における外的要因と対応する物理量の範囲を示す。本明細書中の説明における「外的要因」とは、例として、環境要因を指す。
【0042】
第2パラメータ群1200を構成するパラメータは、例として、電線モデル1000の
温度や、電線モデル1000に対して外力として付与される風力・張力や、電線モデル1000の積雪の度合いを示すような被氷度であり、環境因子を示すパラメータであればその種別に制限はない。
【0043】
本発明の一実施形態に係る第2パラメータ群1200を構成するパラメータは、例として、電線モデル1000が示す電線等の細線状構造物に対して、鳥獣等の移動体がその重量を重力方向に印加する等して発生する外力であってよい。
【0044】
本発明の一実施形態に係る第2パラメータ群1200を構成するパラメータは、例として、電線モデル1000が示す電線等の細線状構造物に対して、地震等の振動に起因して付与される外力であってよい。
【0045】
本発明の一実施形態に係る第1パラメータ群1100(固定値)として例示されるパラメータ種は、第2パラメータ群1200(範囲)として適宜、扱われてよい。具体的には、上記温度は、第2パラメータ群1200の1つとして扱われてよい。なお、本発明の一実施形態に係る第2パラメータ群1200(範囲)として例示されるパラメータ種が、第1パラメータ群1100(固定値)として扱われる構成であってよい。
【0046】
第1パラメータ群1100及び第2パラメータ群1200は予め、データベースDBに格納された状態で適宜、参照される構成であってよい。
【0047】
〈フローチャート(処理全体)〉
図3に例示されるように、本発明の一実施形態に係る処理は、以下の手順に従って行われる。本発明の一実施形態では、先ず、指定手段101は、電線モデル1000の始点座標1001及び終点座標1002を指定する。次に、指定手段101は、第1パラメータ群1100を指定する。次に、形状決定手段102は、電線モデル1000の形状を決定することで電線モデル1000のモデリングを行う。最後に、評価手段103は、電線モデル1000の可動領域1300を決定する。
【0048】
本明細書中の説明における「始点座標1001及び終点座標1002」は、任意に入力・指定・設定されてよい。本発明の一実施形態に係る始点座標1001及び終点座標1002の指定は、計測点群データに基づき行われてよく、既存のCADモデルに基づき行われてよく、画像処理により所定の画像から検出されてよく、空間上で任意に行われてよく、その手法に制限はない。
【0049】
〈フローチャート(電線モデル1000のモデリング)〉
本発明の一実施形態に係る電線モデル1000のモデリングについて、図4図5及び図6を交えて説明する。本発明の一実施形態では、先ず、形状決定手段102は、第1軸方向0x、第2軸方向0y及び第3軸方向0zからなる座標系0を定義する。次に、形状決定手段102は、始点座標1001及び終点座標1002に基づき径間距離1003及び高低差1004を決定する。次に、形状決定手段102は、第1軸方向0x及び第2軸方向0yからなる投影平面0xyを定義する。次に、形状決定手段102は、既知の数理モデル等に基づき投影平面0xy上で電線モデル1000の形状を決定する。最後に、形状決定手段102は、形状が決定された電線モデル1000を全体座標系に変換する。
【0050】
本明細書中の説明における「第1軸方向0x」は、始点座標1001及び終点座標1002を結ぶような方向において重力方向の成分をゼロとしたような方向を指す。このとき、第1軸方向0xは、全体座標系の水平方向と一致する、とは限らない。
【0051】
本明細書中の説明における「第2軸方向0y」は、第1軸方向0xと直交し重力方向の成分がゼロであるような方向を指す。なお、本明細書中の説明における「第3軸方向0z」は、全体座標系における高さ方向である重力方向と一致する。
【0052】
本発明の一実施形態に係る形状決定手段102は、投影平面0xyに基づき電線モデル1000のモデリングを行うため、モデリングに係る計算コストを削減することができる、と把握することができる。
【0053】
本発明の一実施形態に係る形状決定手段102は、投影平面0xy等の投影平面を利用せず、電線モデル1000のモデリングを露に/3次元的に行う構成であってよい。
【0054】
〈フローチャート(可動領域1300の決定)〉
本発明の一実施形態に係る可動領域1300の決定について、図7及び図8を交えて説明する。本発明の一実施形態では、先ず、形状決定手段102は、第2軸方向0y及び第3軸方向0zからなる投影平面0yzを新たに定義する。次に、形状決定手段102は、電線モデル1000の形状を決定し投影平面0yz上に投影する。次に、評価手段103は、投影された形状に基づき2次元形状の可動領域1300を決定する。隣り合う投影平面0yzを新たに定義できるとき、処理は、投影平面0yzの定義に移行する。隣り合う投影平面0yzを新たに定義できないとき、評価手段103は、投影平面0yzのそれぞれの可動領域1300を結合し3次元形状の可動領域1300を決定する。
【0055】
本明細書の説明における「隣り合う投影平面0yzを定義できる」とは、投影平面0yzを始点座標1001又は終点座標1002を含まないよう定義できることを指す。
【0056】
本発明の一実施形態に係る評価手段103は、電線モデル1000の可動領域1300と、構造物モデル1400と、の重複領域を示す干渉領域1500を決定する。
【0057】
本発明の一実施形態に係る構造物モデル1400は、電線モデル1000の可動領域1300であってよい。
【0058】
本明細書中の説明における「電線モデル1000」は、既知又は慣用の電線を示し、架線、電話線、電車線、通信線、空中線、接触線及び架空線、架空地線、架空電線等を含む複数種の細線状構造物を指し、カテナリ曲線等の既知の曲線を指す。
【0059】
本明細書中の説明における「構造物モデル1400」は、上記電線の周囲の既知又は慣用の構造物を示す。当該構造物は、例として、線路、架線柱等を含む複数種の柱状構造物である。また、当該構造物は、例として、トロリ線、吊架線、枕木、碍子、ビーム、ハンガ等の鉄道車両周辺に位置する既知の構造物を含んでよい。
【0060】
本発明は、可動領域を網羅的に把握できるような電線モデルの評価支援を実現することができるため、架空電線に係る接触事故の予防に寄与することができる。
【符号の説明】
【0061】
0 :座標系
0x :第1軸方向
0xy :投影平面
0y :第2軸方向
0yz :投影平面
0z :第3軸方向
1 :コンピュータ装置
11 :演算装置
12 :主記憶装置
13 :補助記憶装置
14 :入力装置
15 :出力装置
16 :通信装置
101 :指定手段
101s :指定ステップ
102 :形状決定手段
102s :形状決定ステップ
103 :評価手段
103s :評価ステップ
1000 :電線モデル
1001 :始点座標
1002 :終点座標
1003 :径間距離
1004 :高低差
1100 :第1パラメータ群
1200 :第2パラメータ群
1300 :可動領域
1400 :構造物モデル
1500 :干渉領域

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8