(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】塗料供給装置、ロボット、吐出制御システム、吐出制御方法、および吐出制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20231211BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20231211BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20231211BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20231211BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/00 101
B05B12/00 A
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B05D3/00 B
(21)【出願番号】P 2020022756
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100144440
【氏名又は名称】保坂 一之
(72)【発明者】
【氏名】倉地 恭平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】西村 公徳
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-192987(JP,A)
【文献】特開2013-031831(JP,A)
【文献】特開2005-288387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 11/10
B05C 5/00
B05B 12/00
B05D 1/26
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット上に設置されるタンクと、
ワークへの塗布の開始に応答して、1次塗料供給源から供給される1次塗料に加えて、前記タンク内の追加塗料を
、供給制御部による制御に従って前記ロボットの吐出部に向けて供給する排出機構と
を備え
、
前記供給制御部は、
前記塗布が開始された後に前記吐出部に最も近い圧力センサにより測定された、前記吐出部へと向かう流路内の前記1次塗料の圧力を取得し、
前記取得された圧力に基づいて、前記追加塗料の供給に関連するパラメータを決定し、
前記排出機構は、前記決定されたパラメータに基づいて、前記追加塗料を前記吐出部に向けて供給する、
塗料供給装置。
【請求項2】
前記タンクは、前記ロボットのアーム上または関節部上に設置される、
請求項1に記載の塗料供給装置。
【請求項3】
前記タンクは、
前記圧力センサの近傍に設置される、
請求項1または2に記載の塗料供給装置。
【請求項4】
前記排出機構は、前記ロボットに搭載される配線と接続し、該配線から供給されるエネルギによって作動する、
請求項1~
3のいずれか一項に記載の塗料供給装置。
【請求項5】
前記排出機構は、空気圧によって作動する調整弁を有する、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の塗料供給装置。
【請求項6】
前記供給制御部は、前記ワークへの塗布の開始に応答して前記排出機構を制御して、前記タンクに陰圧をかけ、続いて前記追加塗料を前記吐出部に向けて供給する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の塗料供給装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の塗料供給装置を備えるロボット。
【請求項8】
1次塗料供給源から供給される1次塗料に加えて、ロボット上に設置されたタンク内の追加塗料を該ロボットの吐出部に向けて供給する排出機構を制御する供給制御部を備え、
前記供給制御部は、
ワークへの塗布
が開始された後に前記吐出部に最も近い圧力センサにより測定された、前記吐出部へと向かう流路内の前記1次塗料の圧力を取得し、
前記取得された圧力に基づいて、前記追加塗料の供給に関連するパラメータを決定し、
前記決定されたパラメータに基づいて前記排出機構を制御して、前記追加塗料を前記吐出部に向けて供給する、
吐出制御システム。
【請求項9】
前記供給制御部は、前記ワークへの塗布が終了したことに応答して前記排出機構を制御して、次の塗布で用いられる次の追加塗料を前記タンク内に補充する、
請求項
8に記載の吐出制御システム。
【請求項10】
前記パラメータは、前記流路内の前記追加塗料の圧力と、前記追加塗料の供給量と、前記追加塗料の供給時間とのうちの少なくとも一つを含む、
請求項
8または9に記載の吐出制御システム。
【請求項11】
前記供給制御部は、前記タンク内のすべての前記追加塗料を前記吐出部に向けて供給するための前記排出機構の動作が終了したことに応答して前記排出機構を停止する、
請求項
8~10のいずれか一項に記載の吐出制御システム。
【請求項12】
前記供給制御部は、前記ワークへの塗布の開始に応答して前記排出機構を制御して、前記タンクに陰圧をかけ、続いて前記追加塗料を前記吐出部に向けて供給する、
請求項
8~11のいずれか一項に記載の吐出制御システム。
【請求項13】
少なくとも一つのプロセッサを備える吐出制御システムによって実行される吐出制御方法であって、
1次塗料供給源から供給される1次塗料に加えて、ロボット上に設置されたタンク内の追加塗料を該ロボットの吐出部に向けて供給する排出機構を制御する供給制御ステップを含み、
前記供給制御ステップでは、
ワークへの塗布
が開始された後に前記吐出部に最も近い圧力センサにより測定された、前記吐出部へと向かう流路内の前記1次塗料の圧力を取得し、
前記取得された圧力に基づいて、前記追加塗料の供給に関連するパラメータを決定し、
前記決定されたパラメータに基づいて前記排出機構を制御して、前記追加塗料を前記吐出部に向けて供給する、
吐出制御方法。
【請求項14】
1次塗料供給源から供給される1次塗料に加えて、ロボット上に設置されたタンク内の追加塗料を該ロボットの吐出部に向けて供給する排出機構を制御する供給制御ステップをコンピュータに実行させ、
前記供給制御ステップでは、
ワークへの塗布
が開始された後に前記吐出部に最も近い圧力センサにより測定された、前記吐出部へと向かう流路内の前記1次塗料の圧力を取得し、
前記取得された圧力に基づいて、前記追加塗料の供給に関連するパラメータを決定し、
前記決定されたパラメータに基づいて前記排出機構を制御して、前記追加塗料を前記吐出部に向けて供給する、
吐出制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、塗料供給装置、ロボット、吐出制御システム、吐出制御方法、および吐出制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シーリング剤を塗布するための塗布装置が記載されている。この塗布装置は、対象物に塗布剤を塗布するノズルと、センサ装置とノズルとを保持するブラケットと、制御装置の制御下で、塗布区間に亘ってブラケットを移動させるロボットとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットによる塗布処理においてビード幅を安定させることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る塗料供給装置は、ロボット上に設置されるタンクと、ワークへの塗布の開始に応答して、1次塗料供給源から供給される1次塗料に加えて、タンク内の追加塗料をロボットの吐出部に向けて供給する排出機構とを備える。
【0006】
本開示の一側面に係る吐出制御システムは、1次塗料供給源から供給される1次塗料に加えて、ロボット上に設置されたタンク内の追加塗料を該ロボットの吐出部に向けて供給する排出機構を制御する供給制御部を備える。供給制御部は、ワークへの塗布の開始に応答して排出機構を制御して、追加塗料を吐出部に向けて供給する。
【0007】
本開示の一側面に係る吐出制御方法は、少なくとも一つのプロセッサを備える吐出制御システムによって実行される。吐出制御方法は、1次塗料供給源から供給される1次塗料に加えて、ロボット上に設置されたタンク内の追加塗料を該ロボットの吐出部に向けて供給する排出機構を制御する供給制御ステップを含む。供給制御ステップでは、ワークへの塗布の開始に応答して排出機構を制御して、追加塗料を吐出部に向けて供給する。
【0008】
本開示の一側面に係る吐出制御プログラムは、1次塗料供給源から供給される1次塗料に加えて、ロボット上に設置されたタンク内の追加塗料を該ロボットの吐出部に向けて供給する排出機構を制御する供給制御ステップをコンピュータに実行させる。供給制御ステップでは、ワークへの塗布の開始に応答して排出機構を制御して、追加塗料を吐出部に向けて供給する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一側面によれば、ロボットによる塗布処理においてビード幅を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】塗布システムの全体的な構成の一例を示す図である。
【
図2】塗布システムの詳細な構成の一例を示す図である。
【
図3】ワークに塗布された塗料の状態の例を示す図である。
【
図4】吐出制御システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図5】吐出制御システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図6】吐出制御システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本開示での実施形態を詳細に説明する。図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
[塗布システムの構成]
図1は実施形態に係る塗布システム1の全体的な構成の一例を示す図である。
図2は塗布システム1の詳細な構成の一例を示す図である。塗布システム1は、塗布対象物であるワークWに対する塗料の塗布の少なくとも一部を自動的に実行するロボットシステムである。ワークWは限定されず、塗布システム1は任意の対象物を塗布してよい。例えば、ワークWは自動車の車体の一部であってよく、より具体的には、フロアパネル、ルーフパネル、ドアパネルなどでもよい。塗料も限定されず、塗布システム1は任意の塗料を用いてよい。例えば、塗料は、シール材、または振動を抑えるための制振材(防音のための部材)であってもよい。制振材は、粘性および弾性を有する材料(樹脂)を含んでもよい。例えば、制振材は、常温において液だれせずに固化するまでに塗布形状を維持できる程度の粘性を有する材料を含んでよい。
【0013】
一例では、塗布システム1は、ロボット10、1次供給システム100、およびロボットコントローラ200を備える。ロボット10は塗料をワークWに塗布する機械である。ロボット10には、塗料を吐出するガンとして機能する吐出部104が取り付けられる。1次供給システム100はその塗料をロボット10へと供給する制御システムである。本開示では、1次供給システム100から塗布される塗料を「1次塗料」ともいう。1次供給システム100は1次塗料供給源の一例である。ロボットコントローラ200はロボット10の動作を制御する装置である。
【0014】
塗布システム1は1次塗料をワークWに塗布する。1次塗料のみを用いた場合には、塗布が開始された直後の短時間において、ワークW上に塗布された塗料により形成される線であるビードの幅(本開示ではこれを「ビード幅」という)が安定しない現象が発生し得る。塗布の開始からビード幅を安定させるために、塗布システム1は補助供給システム300をさらに備える。本開示において「ビード幅を安定させる」とは、所望のビード幅を実現することをいい、例えばビード幅を一定にすることをいう。塗布システム1は1次供給システム100に加えて補助供給システム300を用い、この補助供給システム300からの塗料も用いてワークWを塗布する。本開示では、補助供給システム300から供給される塗料を「追加塗料」ともいう。
【0015】
(ロボット)
一例では、ロボット10は6軸の垂直多関節ロボットであり、基部11、旋回部12、第1アーム13、第2アーム14、手首部15、およびアクチュエータ31,32,33,34,35,36を有する。
【0016】
基部11は、床面、直動機構を有する台座などの支持体に固定される。旋回部12は基部11上に設けられ、鉛直な軸線Ax1まわりに旋回可能である。すなわち、ロボット10は軸線Ax1まわりに旋回部12を旋回可能とする関節部21を有する。
【0017】
第1アーム13は、旋回部12から延出し、軸線Ax1に交差(例えば直交)する軸線Ax2まわりに揺動可能である。すなわちロボット10は、軸線Ax2まわりに第1アーム13を揺動可能とする関節部22を有する。本開示において、交差は、いわゆる立体交差のように、二つの軸が互いにねじれの関係にある状態を含む概念を意味する。
【0018】
第2アーム14は、第1アーム13の先端部から延出し、軸線Ax1に交差(例えば直交)する軸線Ax3まわりに揺動可能である。すなわちロボット10は、軸線Ax3まわりに第2アーム14を揺動可能とする関節部23を有する。軸線Ax3は軸線Ax2と平行であってもよい。
【0019】
第2アーム14の先端部は、第2アーム14の延出方向に沿って軸線Ax3に交差(例えば直交)する軸線Ax4まわりに旋回可能である。すなわちロボット10は、軸線Ax4まわりに第2アーム14の先端部を旋回可能とする関節部24を有する。
【0020】
手首部15は、第2アーム14の先端部から延出し、軸線Ax4に交差(例えば直交)する軸線Ax5まわりに揺動可能である。すなわちロボット10は、軸線Ax5まわりに手首部15を揺動可能とする関節部25を有する。
【0021】
手首部15の先端部には作業のための部材が設けられる。この部材は、手首部15の延出方向に沿って軸線Ax5に交差(例えば直交)する軸線Ax6まわりに旋回可能である。すなわちロボット10は、軸線Ax6まわりにその部材を旋回可能とする関節部26を有する。本実施形態では、その部材は、塗料を吐出するガンとして機能する吐出部104である。
【0022】
アクチュエータ31,32,33,34,35,36は、関節部21,22,23,24,25,26をそれぞれ駆動する。例えばアクチュエータ31は軸線Ax1まわりに旋回部12を旋回させ、アクチュエータ32は軸線Ax2まわりに第1アーム13を揺動させ、アクチュエータ33は軸線Ax3まわりに第2アーム14を揺動させ、アクチュエータ34は軸線Ax4まわりに第2アーム14の先端部を旋回させ、アクチュエータ35は軸線Ax5まわりに手首部15を揺動させ、アクチュエータ36は軸線Ax6まわりに動作対象の部材を旋回させる。
【0023】
ロボット10の具体的な構成は、部材の位置および姿勢を所望の範囲で変更し得る限り限定されない。例えばロボット10は、上述した6軸に一つの冗長軸を追加した7軸の垂直多関節ロボットであってもよい。
【0024】
(1次供給システム)
一例では、1次供給システム100は液源101、ポンプ102、供給管103、吐出部104、および戻り管105を備える。液源101は塗料の供給源である。ポンプ102は液源101内の塗料を吐出部104に向けて送り出す装置である。供給管103は塗料を吐出部104へと導く管であり、ポンプ102と吐出部104とを接続する。供給管103は1次塗料の流路の少なくとも一部を構成する。吐出部104は塗料を排出する部分である。上述したように、吐出部104はロボット10に取り付けられ、より具体的には、手首部15の先端部に設けられる。したがって、吐出部104の位置および姿勢はロボット10の動作により変化し、その結果、吐出される塗料の位置および方向が変化する。本開示では、ロボットに取り付けられた吐出部を「ロボットの吐出部」ともいう。戻り管105は、ポンプ102から送り出された塗料を液源101に戻すための管である。1次供給システム100の具体的な構成は限定されず、任意の方針で設計されてよい。例えば、液源101、ポンプ102、供給管103、吐出部104、および戻り管105のそれぞれについて具体的な構造は限定されない。一例では、ポンプ102としてサーボブースターポンプ(SBP)が用いられてもよい。
【0025】
1次供給システム100は典型的には、バルブ、圧力センサ、温度センサなどの様々な構成要素をさらに備える。
【0026】
バルブは塗料の流れの方向、圧力、または流量を制御する装置である。例えば、エアオペレーションバルブが用いられる。典型的には、バルブは複数の箇所に設置され、例えば管(供給管103および戻り管105)が延びる方向(言い換えると、塗料が流れる方向)に沿ってその管上の複数の箇所に設置される。一例では、1次供給システム100はポンプ102に近い位置に設けられる送出バルブ111と、吐出部104に設けられる吐出バルブ112と、戻り管105上に設けられる循環バルブ113とを備える。それぞれのバルブは、該バルブの開閉状態を示す電気信号を出力する機能を有してもよい。
【0027】
圧力センサは1次供給システム100内の塗料の圧力を測定する装置である。典型的には、圧力センサは複数の箇所に設置され、例えば供給管103が延びる方向に沿って該供給管103上の複数の箇所に設置される。一例では、1次供給システム100はポンプ102に近い位置に設けられる圧力センサ121と、吐出部104に最も近い位置に設けられる圧力センサ122とを備える。
【0028】
温度センサは1次供給システム100内の塗料の温度を測定する装置である。典型的には、温度センサは複数の箇所に設置され、例えば供給管103が延びる方向に沿って該供給管103上の複数の箇所に設置される。一例では、1次供給システム100はポンプ102に近い位置に設けられる温度センサ131と、吐出部104に最も近い位置に設けられる温度センサ132とを備える。
【0029】
1次供給システム100はさらに塗布制御装置140を備える。塗布制御装置140は1次供給システム100内の少なくとも一つの構成要素を制御する装置である。具体的には、塗布制御装置140は、吐出部104からの1次塗料の吐出中における1次供給システム100内の状態を所定の目標値に追従させる。1次供給システム100内の状態を示す情報の具体例としては、ポンプ102の駆動状態(例えば、モータの回転位置、回転速度、およびトルク値(駆動力))、圧力センサ121,122により測定される圧力、および温度センサ131,132により測定される温度が挙げられる。1次塗料の吐出状態は、例えば、1次塗料を吐出させている状態、1次塗料の吐出のための準備をしている状態、および1次塗料を循環させている状態を含む。塗布制御装置140は、1次塗料の吐出中において、1次供給システム100内の圧力に基づいて、吐出部104から吐出される1次塗料の状態を調節してもよい。例えば、塗布制御装置140は、圧力センサ121および圧力センサ122のいずれかの測定値に応じて、当該圧力値が目標値に追従するようにポンプ102を制御してもよい。あるいは、塗布制御装置140は、吐出される1次塗料の流量をほぼ一定に維持するようにポンプ102を制御してもよい。
【0030】
(ロボット制御装置)
ロボットコントローラ200は、予め生成された動作プログラムに従ってロボット10を制御する装置である。ロボットコントローラ200は、1次供給システム100または補助供給システム300から供給される塗料をワークWに塗布するようにロボット10を制御する。具体的には、ロボットコントローラ200はその塗料をワークWに塗布するために、ロボット10の位置および姿勢を変更し、これにより吐出部104の位置および姿勢を変更する。ロボットコントローラ200は、例えば、吐出部104から吐出される塗料のワークWへの付着位置が予め定められた経路に沿って移動するように、吐出部104の位置および姿勢を変更する。本開示ではその経路を「塗布経路」ともいう。一例では、ロボットコントローラ200は、吐出部104の目標位置および目標姿勢に基づき逆運動学演算によりアクチュエータ31~36の目標角度を算出し、当該目標角度に追従するようにアクチュエータ31~36を制御する。ロボットコントローラ200は、吐出部104の位置および姿勢を目標位置および目標姿勢に調節するために、アクチュエータ31~36のそれぞれの駆動状態を示す情報を取得してもよい。アクチュエータ31~36の駆動状態を示す情報の一例として、モータの回転位置および回転速度が挙げられる。
【0031】
(補助供給システム)
補助供給システム300は追加塗料を供給する制御システムである。一例では、補助供給システム300は、塗布が開始された直後の短時間におけるビード幅を安定させるために機能する。
図3を参照しながらその機能について説明する。
図3はワークWに塗布された塗料の状態の例を示す図である。
【0032】
図3の例(a)は、1次塗料のみを用いた場合に形成されるビード410を示し、この例における矢印Aは塗布経路(言い換えると、塗布の過程)を示す。ビード幅は、その塗布経路と直交する方向におけるビードの長さである。典型的な例では、塗布開始時に、ビード幅が所望の値よりも小さい部分であるくびれ411がビード410に生ずる。このくびれ411の一因として、塗布開始の時点では1次塗料の流路内で該1次塗料の圧力が一定でないことが挙げられる。
【0033】
1次供給システム100の構成によっては、与圧を適切に設定することで1次塗料の圧力を調整し、これにより塗布開始時点からビード幅を安定し得る。例えば、SBPを備える1次供給システム100ではそのような調整が可能である。しかし、一般にSBPは高価であるため、塗布システム1を構築する費用が増大してしまう。加えて、その調整は、流路を形成するホースの長さおよび伸縮を考慮して実施する必要があり、したがって、個々の塗布システムまたは個々のロボットについてその調整を行う必要がある。
【0034】
本開示では、塗布開始時にビード幅が不安定になることを「過渡特性」といい、その後にビード幅が安定した状態になることを「定常特性」という。典型的には、一つのビードでは、吐出バルブ112が開いた塗布開始直後の短時間において(すなわち、塗布経路の始点の付近で)、供給管103の収縮、流路内部の圧力変動などの影響により過渡特性が生じ、その後に定常特性に移る。補助供給システム300は追加塗料を用いてその過渡特性を補償することで、ビードの始点から終点にわたってビード幅を安定させる。「過渡特性を補償する」とは、1次塗料のみでは実現できない所望のビード幅を、追加塗料をさらに用いて実現する処理をいう。言い換えると、過渡特性の補償は、くびれ411などのような不安定な塗布を解消または低減してビード幅を安定させる処理をいう。
図3の例(b)は、1次塗料に加えて追加塗料を用いることで形成され得る所望のビード420(すなわち、過渡特性を補償することで得られるビード420)を示し、この例でも例(a)と同様に矢印Aを示す。
【0035】
補助供給システム300は追加供給装置310および吐出制御システム320を備える。追加供給装置310は本開示に係る塗料供給装置の一例であり、吐出制御システム320は本開示に係る吐出制御システムの一例である。追加供給装置310と吐出制御システム320とは電気的に接続されるかまたは通信可能なように接続される。
【0036】
追加供給装置310は、蓄えた追加塗料を吐出部104に向けて供給する装置であり、ロボット10上に設置される。「追加供給装置310(塗料供給装置)がロボット上に設置される」とは、追加供給装置310(塗料供給装置)がロボット10に取り付けられることを意味する。言い換えると、ロボット10は追加供給装置310(塗料供給装置)を備える。追加供給装置310が設置されるロボット10の位置は限定されない。例えば、追加供給装置310は基部11、旋回部12、第1アーム13、第2アーム14、および手首部15のいずれかに設置されてもよいし、関節部21~26のいずれかに設置されてもよい。すなわち、追加供給装置310はロボット10のアーム上に設置されてもよいし、ロボット10の関節部に設置されてもよい。
図1の例では、追加供給装置310は関節部23上に設置される。
【0037】
追加供給装置310は、追加塗料を収容可能な容器であるタンク311と、その追加塗料を吐出部104に向けて供給する仕組みである排出機構312とを備える。追加供給装置310は供給管103と連通し、これにより、供給管103を介して吐出部104に追加塗料を供給することができる。一例では、追加供給装置310は供給管103内の1次塗料を吸引して該1次塗料を追加塗料としてタンク311内に補充することもできる。
【0038】
追加供給装置310はロボット10に取り付けられるので、タンク311はロボット10上に設置される。追加供給装置310がロボット10のアームに取り付けられる場合には、タンク311は該アーム上に設置される。追加供給装置310がロボット10の関節部に取り付けられる場合にはタンク311は該関節部上に設置される。
図1の例では、タンク311は関節部23上に設置される。
【0039】
一例では、タンク311は、吐出部104に最も近い圧力センサ122の近傍に設置される。ここで、「吐出部に最も近い圧力センサ」とは、複数の圧力センサのうち、1次塗料の流路の最も下流側に、すなわち、供給管103の最も下流側に位置する圧力センサを意味する。タンク311はその圧力センサ122よりも下流に位置してもよく、言い換えると、該圧力センサ122と吐出部104との間に設けられてもよい。この場合には、タンク311から延びる管はその圧力センサ122と吐出部104との間で供給管103に接続する。あるいは、タンク311はその圧力センサ122よりも上流に設けられてもよい。この場合には、タンク311から延びる管はその圧力センサ122よりも上流の位置で供給管103に接続する。
【0040】
排出機構312は、1次供給システム100から供給される1次塗料に加えて、タンク311内の追加塗料を吐出部104に向けて供給する。一例では、排出機構312は吐出制御システム320から送られてくる指示信号に従って、タンク311内の追加塗料を吐出部104に向けて排出するか、または、追加塗料をタンク311内に補充する。排出機構の具体的な構成は限定されず、任意の方針で設計されてよい。一例では、排出機構312はロボット10に搭載される配線と接続し、この配線から供給されるエネルギによって作動する。その配線は電線でもよく、この場合には、排出機構312はその電線を介して供給される電力によって作動する。その配線はエアチューブでもよく、この場合には、排出機構312はそのエアチューブを介して供給される空気圧によって作動する。一例では、排出機構312はその空気圧によって作動する調整弁を備える。
【0041】
吐出制御システム320は、追加供給装置310を制御する装置である。本実施形態では、吐出制御システム320はロボットコントローラ200上に実装される。しかし、吐出制御システムの実現方法はこれに限定されず、任意の方針で設計されてよい。例えば、吐出制御システム320は1次供給システム100に組み込まれてもよいし、1次供給システム100およびロボットコントローラ200の双方から独立して構築されてもよい。
【0042】
図4は吐出制御システム320の機能構成の一例を示す図である。吐出制御システム320は機能要素として供給制御部321を備える。供給制御部321は追加供給装置310の排出機構312を制御する機能モジュールである。供給制御部321は取得部322、決定部323、および指示部324を備える。取得部322は排出機構312を制御するために用いられるデータまたは信号を取得する機能モジュールである。決定部323はそのデータまたは信号に基づいて排出機構312の制御を決定する機能モジュールである。指示部324は、決定された制御を排出機構312に行わせるための電気信号である指示信号を吐出制御システム320に向けて出力する機能モジュールである。
【0043】
図5は吐出制御システム320のハードウェア構成の一例を示す図である。例えば、吐出制御システム320はロボットコントローラ200内に実装される回路210を備える。回路210は、少なくとも一つのプロセッサ211、メモリ212、ストレージ213、通信ポート214、および入出力ポート215を含む。ストレージ213は、コンピュータによって読み取り可能な不揮発型の記憶媒体であり、例えばフラッシュメモリによって実現される。ストレージ213は、排出機構312を制御するためのプログラムおよびデータを記憶する。メモリ212は、ストレージ213からロードされたプログラム、プロセッサ211による演算結果などを一時的に記憶する。プロセッサ211は、メモリ212と協働してそのプログラムを実行することで、吐出制御システム320の各機能モジュールを構成する。通信ポート214は例えば、プロセッサ211からの指令に応じて、無線または優先の通信ネットワークNを介して1次供給システム100との間でデータ通信を実行する。入出力ポート215は例えば、プロセッサ211からの指令に応じて追加供給装置310との間で電気信号の入出力を行う。
【0044】
[塗布制御方法]
本開示に係る塗布制御方法の一例として、
図6を参照しながら、補助供給システム300により実行される一連の処理手順の一例を説明する。
図6は補助供給システム300の動作の一例を処理フローS1として示すフローチャートである。すなわち、補助供給システム300は処理フローS1を実行する。
【0045】
ステップS11では、供給制御部321が排出機構312を制御して、追加塗料をタンク311に補充する。供給制御部321は、ワークWへの塗布が開始される前の任意の時点においてこの補充を実行する。一例では、取得部322が補充のトリガーとなる役割を持つデータまたは信号を取得する。例えば、取得部322は、一つ前のワークWへの塗布が終了したことを示す終了信号を1次供給システム100から受け付ける。決定部323は取得されたデータまたは信号に応答して、追加塗料をタンク311に補充すると決定する。指示部324はその決定に基づいて補充信号を生成し、この補充信号を追加供給装置310に向けて出力する。補充信号は追加塗料の補充を排出機構312に実行させるための指示信号である。その補充のために、追加供給装置310では排出機構312がその補充信号に従って作動し、タンク311内に追加塗料を補充する。一例では、排出機構312はタンク311に陰圧をかけることで、供給管103内の1次塗料を吸引して該1次塗料を追加塗料としてタンク311内に補充する。
【0046】
ステップS12では、供給制御部321がワークWへの塗布の開始を検知する。一例では、1次供給システム100が、ワークWへの塗布の開始を示す電気信号である開始信号を吐出制御システム320に向けて出力する。例えば、その開始信号は、送出バルブ111、吐出バルブ112、および塗布制御装置140のいずれかから吐出制御システム320へと出力されてもよい。取得部322はその開始信号を受け付け、これにより供給制御部321はワークWへの塗布が開始されたことを検知する。
【0047】
ステップS13では、供給制御部321が1次塗料の圧力を取得する。この圧力を取得するタイミングは限定されない。例えば、供給制御部321は塗布の開始を検知した後に、または該検知の前に、あるいは該検知と同時に、1次塗料の圧力を取得してよい。すなわち、ステップS12およびS13の実行順序は限定されない。一例では、取得部322は吐出部104に最も近い圧力センサ122により測定された圧力を取得する。あるいは、取得部322は圧力センサ121などの他の圧力センサにより測定された圧力を取得してもよい。
【0048】
ステップS14では、供給制御部321が追加塗料の供給に関連するパラメータを決定する。具体的には、決定部323が、ステップS13において取得された圧力に基づいてそのパラメータを決定する。決定部323により決定されるパラメータは限定されない。一例では、決定部323は流路内の追加塗料の圧力と、追加塗料の供給量と、追加塗料の供給時間とのうちの少なくとも一つを決定してよい。流路内の追加塗料の圧力とは、追加塗料をタンク311から供給管103に向けて出力する際に該追加塗料にかける圧力(排出機構312が出力する圧力)をいう。追加塗料の供給量とは、タンク311から供給管103に向けて出力する追加塗料の総量をいう。追加塗料の供給時間とは、タンク311から供給管103に向けて追加塗料を出力し続ける時間の長さをいう。一例では、決定部323は、1次塗料の圧力からパラメータを決定させるためのアルゴリズムを用いて、取得された圧力からパラメータを算出する。アルゴリズムは何ら限定されず、例えば圧力とパラメータとの対応表を含んでもよいし、圧力からパラメータを求める計算式を含んでもよい。
【0049】
ステップS15では、供給制御部321が、決定されたパラメータに基づいて排出機構312を制御して、タンク311内の追加塗料を吐出部104に向けて供給する。具体的には、指示部324がそのパラメータに基づく作動信号を生成し、この作動信号を排出機構312に向けて出力する。作動信号は、決定されたパラメータを実現するための指示信号であり、一例では、追加塗料の圧力、供給量、および供給時間のうちの少なくとも一つを実現するためのデータを含む。追加供給装置310では排出機構312がその作動信号に従って作動し、タンク311内の追加塗料を吐出部104に向けて供給する。このように、一例では、供給制御部321は流路内の1次塗料の圧力に基づいて排出機構312を制御して、追加塗料の供給に関連するパラメータを調節する。
【0050】
ステップS15はステップS12に応答して実行される。すなわち、供給制御部321はワークWへの塗布の開始に応答して排出機構312を制御して、1次供給システム100から供給される1次塗料に加えて追加塗料を吐出部104に向けて供給する。言い換えると、排出機構312は、ワークWへの塗布の開始に応答して、1次供給システム100から供給される1次塗料に加えて追加塗料を吐出部104に向けて供給する。一例では、排出機構312は圧力センサ(例えば圧力センサ122)により測定される1次塗料の圧力に基づいて追加塗料を供給する。
【0051】
供給制御部321は、ワークWへの塗布の開始に応答して排出機構312を制御して、始めにタンク311に陰圧をかけ、続いて追加塗料を吐出部104に向けて供給してもよい。タンク311に陰圧がかかることで、塗布開始時点において流路内の1次塗料の圧力が下がるので、塗布経路の始点におけるビード幅が所望の値を超える状況を防止または軽減することが期待できる。一例では、供給制御部321は排出機構312を制御することで、その陰圧を瞬間的に発生させてその後に追加塗料を吐出部104に向けて供給する。陰圧の時間は任意の方針で設定されてよい。
【0052】
ステップS16では、供給制御部321が排出機構を停止して追加塗料の供給を止める。この停止は、ビードの定常特性を妨げないために行われる。具体的には、決定部323が、作動信号から導出される必要量の追加塗料の供給が完了したことに応答して、排出機構312を停止すると決定する。決定部323は、必要量の供給が完了したことを示す状態信号を取得部322が追加供給装置310から取得したことに応答して、排出機構312を停止すると決定してもよい。あるいは、決定部323は、排出機構312が必要量の追加塗料を吐出部104に向けて供給したと推定されるタイミングで、排出機構312を停止すると決定してもよい。一例では、その「必要量の追加塗料」は、タンク311内のすべての追加塗料であってもよい。いずれにしても、排出機構312の停止の決定に従って、指示部324が、排出機構312を停止するための停止信号を生成し、この停止信号を排出機構312に向けて出力する。このように、供給制御部321は、必要量の追加塗料の供給が完了したことに応答して排出機構312を停止する。例えば、供給制御部321は、タンク311内のすべての追加塗料を吐出部104に向けて供給するための排出機構312の動作が終了したことに応答して排出機構312を停止してもよい。
【0053】
ステップS17では、供給制御部321がワークWへの塗布の終了を検知する。一例では、1次供給システム100が、ワークWへの塗布の終了を示す電気信号である終了信号を吐出制御システム320に向けて出力する。例えば、その終了信号は、送出バルブ111、吐出バルブ112、および塗布制御装置140のいずれかから吐出制御システム320へと出力されてもよい。取得部322はその終了信号を受け付け、これにより供給制御部321はワークWへの塗布が終了したことを検知する。
【0054】
ステップS18では、供給制御部321が次の塗布を実行するか否かを判定する。次の塗布を実行する場合には(ステップS18においてYES)、処理はステップS11に戻る。上述したように、ステップS11では、決定部323が追加塗料をタンク311に補充すると決定し、指示部324がその決定に基づく補充信号を生成および出力し、排出機構312がその補充信号に従ってタンク311内に追加塗料を補充する。すなわち、供給制御部321は、ワークWへの塗布が終了したことに応答して排出機構312を制御して、次の塗布で用いられる次の追加塗料をタンク311内に補充する。一方、次の塗布を実行しない場合には(ステップS18においてNO)、処理フローS1が終了する。
【0055】
[プログラム]
吐出制御システム320の各機能モジュールは、プロセッサ211またはメモリ212の上に吐出制御プログラムを読み込ませてプロセッサ211にそのプログラムを実行させることで実現される。吐出制御プログラムは、吐出制御システム320の各機能モジュールを実現するためのコードを含む。プロセッサ211は吐出制御プログラムに従って通信ポート214および入出力ポート215の少なくとも一つを動作させ、メモリ212またはストレージ213におけるデータの読み出しおよび書き込みを実行する。このような処理により吐出制御システム320の各機能モジュールが実現される。
【0056】
吐出制御プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの非一時的な記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、吐出制御プログラムは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0057】
[効果]
以上説明したように、本開示の一側面に係る塗料供給装置は、ロボット上に設置されるタンクと、ワークへの塗布の開始に応答して、1次塗料供給源から供給される1次塗料に加えて、タンク内の追加塗料をロボットの吐出部に向けて供給する排出機構とを備える。
【0058】
本発明の一側面に係るロボットは、上記の塗料供給装置を備える。
【0059】
本開示の一側面に係る吐出制御システムは、1次塗料供給源から供給される1次塗料に加えて、ロボット上に設置されたタンク内の追加塗料を該ロボットの吐出部に向けて供給する排出機構を制御する供給制御部を備える。供給制御部は、ワークへの塗布の開始に応答して排出機構を制御して、追加塗料を吐出部に向けて供給する。
【0060】
本開示の一側面に係る吐出制御方法は、少なくとも一つのプロセッサを備える吐出制御システムによって実行される。吐出制御方法は、1次塗料供給源から供給される1次塗料に加えて、ロボット上に設置されたタンク内の追加塗料を該ロボットの吐出部に向けて供給する排出機構を制御する供給制御ステップを含む。供給制御ステップでは、ワークへの塗布の開始に応答して排出機構を制御して、追加塗料を吐出部に向けて供給する。
【0061】
本開示の一側面に係る吐出制御プログラムは、1次塗料供給源から供給される1次塗料に加えて、ロボット上に設置されたタンク内の追加塗料を該ロボットの吐出部に向けて供給する排出機構を制御する供給制御ステップをコンピュータに実行させる。供給制御ステップでは、ワークへの塗布の開始に応答して排出機構を制御して、追加塗料を吐出部に向けて供給する。
【0062】
このような側面においては、吐出部に近い位置にタンクが設けられ、1次塗料の供給を安定させることが難しい塗布開始時に、そのタンクから吐出部に追加塗料が供給される。1次塗料の過渡特性がその追加塗料により補償されるので、ロボットによる塗布処理においてビード幅を安定させることができる。
【0063】
他の側面に係る塗料供給装置では、タンクは、ロボットのアーム上または関節部上に設置されてもよい。より吐出部に近い位置にタンクを設けることで、塗布開始時に追加塗料が素早く吐出部へと供給されるので、ビード幅を安定させることができる。
【0064】
他の側面に係る塗料供給装置では、タンクは、吐出部に最も近い圧力センサの近傍に設置されてもよい。この圧力センサは、吐出部における塗料の圧力を最も精度良く示す。したがって、その圧力センサの近くにタンクを設けることで、ビード幅を安定させるための適量の追加塗料を吐出部へと供給することができる。
【0065】
他の側面に係る塗料供給装置では、排出機構は、圧力センサにより測定される1次塗料の圧力に基づいて追加塗料を供給してもよい。1次塗料の圧力を参照することで、ビード幅を安定させるための塗料をより精度良く供給することができる。
【0066】
他の側面に係る塗料供給装置では、排出機構は、ロボットに搭載される配線と接続し、該配線から供給されるエネルギによって作動してもよい。この場合には、ロボットの既存の配線を用いて塗料供給装置を稼働させることができる。
【0067】
他の側面に係る塗料供給装置では、排出機構は、空気圧によって作動する調整弁を有してもよい。排出機構としてこのような調整弁を採用することで、塗料供給装置の製造コストを下げることができる。
【0068】
他の側面に係る吐出制御システムでは、供給制御部は、ワークへの塗布が終了したことに応答して排出機構を制御して、次の塗布で用いられる次の追加塗料をタンク内に補充してもよい。このタイミングで次の追加塗料をタンク内に補充することで、次の塗布を円滑に開始することができる。
【0069】
他の側面に係る吐出制御システムでは、供給制御部は、吐出部へと向かう流路内の1次塗料の圧力に基づいて排出機構を制御して、追加塗料の供給に関連するパラメータを調節してもよい。1次塗料の圧力を参照して追加塗料の供給を調節することで、ビード幅を安定させるための塗料をより精度良く供給することができる。
【0070】
他の側面に係る吐出制御システムでは、パラメータは、流路内の追加塗料の圧力と、追加塗料の供給量と、追加塗料の供給時間とのうちの少なくとも一つを含んでもよい。これらの具体的なパラメータを考慮することで、ビード幅をより安定させることができる。
【0071】
他の側面に係る吐出制御システムでは、供給制御部は、吐出部に最も近い圧力センサにより測定された圧力に基づいて排出機構を制御してもよい。この圧力センサは、吐出部における塗料の圧力を最も精度良く示す。したがって、その圧力センサで測定された圧力を参照することで、ビード幅を安定させるための塗料をより精度良く供給することができる。
【0072】
他の側面に係る吐出制御システムでは、供給制御部は、タンク内のすべての追加塗料を吐出部に向けて供給するための排出機構の動作が終了したことに応答して排出機構を停止してもよい。このように排出機構を制御することで、塗布の定常特性を妨げることなく塗布が行われるので、ビード幅をさらに安定させることができる。また、タンク内に追加塗料を残すための制御が不要なので、排出機構の制御を簡単に行うことができる。
【0073】
他の側面に係る吐出制御システムでは、供給制御部は、ワークへの塗布の開始に応答して排出機構を制御して、タンクに陰圧をかけ、続いて追加塗料を吐出部に向けて供給してもよい。この処理によって、吐出開始時に1次塗料が想定以上に吐出される状況が解消または軽減されるので、ビード幅をさらに安定することができる。
【0074】
[変形例]
以上、本開示の実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0075】
上記実施形態では吐出制御システム320が供給制御部321、取得部322、決定部323、および指示部324を備えるが、吐出制御システムの機能構成はこれに限定されない。本開示に係る塗布制御方法を実行できる限り、その機能構成は任意の方針で設計されてよい。
【0076】
上記実施形態では塗布制御装置140を1次供給システム100の一構成要素として示すが、塗布制御装置の構築方法は限定されない。例えば、塗布制御装置は吐出制御システムの制御下にあってもよい。塗布制御装置はロボットコントローラの制御下にあってもよいし、ロボットコントローラから独立して存在してもよい。
【0077】
吐出制御システムのハードウェア構成は、プログラムの実行により各機能モジュールを実現する態様に限定されない。例えば、供給制御部321、取得部322、決定部323、および指示部324の少なくとも一部は、その機能に特化した論理回路により構成されていてもよいし、該論理回路を集積したASIC(ApplicationSpecific Integrated Circuit)により構成されてもよい。
【0078】
少なくとも一つのプロセッサにより実行される方法の処理手順は上記実施形態での例に限定されない。例えば、上述したステップ(処理)の一部が省略されてもよいし、別の順序で各ステップが実行されてもよい。また、上述したステップのうちの任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正または削除されてもよい。あるいは、上記の各ステップに加えて他のステップが実行されてもよい。
【0079】
コンピュータシステムまたはコンピュータ内で二つの数値の大小関係を比較する際には、「以上」および「よりも大きい」という二つの基準のどちらを用いてもよく、「以下」および「未満」という二つの基準のうちのどちらを用いてもよい。このような基準の選択は、二つの数値の大小関係を比較する処理についての技術的意義を変更するものではない。
【符号の説明】
【0080】
1…塗布システム、10…ロボット、100…1次供給システム、101…液源、102…ポンプ、103…供給管、104…吐出部、105…戻り管、111…送出バルブ、112…吐出バルブ、113…循環バルブ、121,122…圧力センサ、131,132…温度センサ、140…塗布制御装置、200…ロボットコントローラ、300…補助供給システム、310…追加供給装置、311…タンク、312…排出機構、320…吐出制御システム、321…供給制御部、322…取得部、323…決定部、324…指示部、410,420…ビード、W…ワーク。