(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
H02M3/155 P
(21)【出願番号】P 2020025826
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】福島 瞬
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-047599(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0018507(US,A1)
【文献】特開2016-103895(JP,A)
【文献】特開2009-124877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧の印加端と出力電圧の印加端との間に設けられた出力トランジスタを有し、前記出力トランジスタのスイッチングを含むスイッチング動作を通じて前記入力電圧から前記出力電圧を生成するための出力段回路と、
前記出力電圧に応じた帰還電圧に基づき所定のPWM周波数にて前記出力段回路をスイッチング動作させるPWM制御を実行可能な主制御回路と、を備え、
前記主制御回路は、
前記帰還電圧に応じて特定配線上に対比電圧を生成する対比電圧生成部と、
前記特定配線に接続されて前記対比電圧の位相を補償する位相補償回路と、
前記PWM周波数の逆数に相当するPWM周期にて電圧値が周期的に変化するランプ電圧を生成するランプ電圧生成回路と、
前記対比電圧と前記ランプ電圧を比較して比較結果を示す信号を出力するPWMコンパレータと、を有して、前記PWMコンパレータの出力信号に基づき前記出力段回路を制御し、
前記位相補償回路は、前記特定配線と所定ノードとの間に設けられた位相補償用抵抗と、前記所定ノードと所定電位を持つ基準導電部との間に設けられた位相補償用コンデンサと、を有し、
前記主制御回路は、クランプ電圧を生成して前記所定ノードにおける電圧を前記クランプ電圧にてクランプするクランプ動作を実行可能なクランプ回路を更に有
し、
前記クランプ回路は、前記出力電圧に応じて前記クランプ電圧を設定する
、スイッチング電源装置。
【請求項2】
前記ランプ電圧生成回路は、前記入力電圧に応じて前記ランプ電圧の振幅を設定する
、請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記クランプ電圧は前記出力電圧に比例し、
前記ランプ電圧の振幅は前記入力電圧に比例する
、請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
入力電圧の印加端と出力電圧の印加端との間に設けられた出力トランジスタを有し、前記出力トランジスタのスイッチングを含むスイッチング動作を通じて前記入力電圧から前記出力電圧を生成するための出力段回路と、
前記出力電圧に応じた帰還電圧に基づき所定のPWM周波数にて前記出力段回路をスイッチング動作させるPWM制御を実行可能な主制御回路と、を備え、
前記主制御回路は、
前記帰還電圧に応じて特定配線上に対比電圧を生成する対比電圧生成部と、
前記特定配線に接続されて前記対比電圧の位相を補償する位相補償回路と、
前記PWM周波数の逆数に相当するPWM周期にて電圧値が周期的に変化するランプ電圧を生成するランプ電圧生成回路と、
前記対比電圧と前記ランプ電圧を比較して比較結果を示す信号を出力するPWMコンパレータと、を有して、前記PWMコンパレータの出力信号に基づき前記出力段回路を制御し、
前記位相補償回路は、前記特定配線と所定ノードとの間に設けられた位相補償用抵抗と、前記所定ノードと所定電位を持つ基準導電部との間に設けられた位相補償用コンデンサと、を有し、
前記主制御回路は、クランプ電圧を生成して前記所定ノードにおける電圧を前記クランプ電圧にてクランプするクランプ動作を実行可能なクランプ回路を更に有
し、
前記主制御回路は、前記PWM制御、又は、前記PWM周期の1周期分の時間を超えて前記出力トランジスタをオン状態に維持するオフスキップ制御を実行可能であり、
前記対比電圧が前記ランプ電圧の変動範囲内に維持されている状態では、前記対比電圧及び前記ランプ電圧間の高低関係の切り替わりに基づき前記出力段回路をスイッチング動作させる前記PWM制御を実行し、
前記対比電圧及び前記ランプ電圧間の高低関係の切り替わりが前記PWM周期の1周期分の時間以上生じない状態では、前記オフスキップ制御を実行し、
前記オフスキップ制御の実行に連動して前記クランプ動作を実行させる
、スイッチング電源装置。
【請求項5】
前記主制御回路は、前記PWM制御の開始後、前記対比電圧及び前記ランプ電圧間の高低関係の切り替わりが前記PWM周期の1周期分の時間以上生じないことが検知されると、実行制御を前記PWM制御から前記オフスキップ制御に遷移させるとともに前記クランプ動作を開始させ、その後、前記対比電圧及び前記ランプ電圧間の高低関係の切り替わりが検知されると、実行制御を前記PWM制御に戻すとともに前記クランプ動作を終了させる
、請求項4に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記クランプ回路は、前記出力電圧に応じて前記クランプ電圧を設定する
、請求項4又は5に記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
前記ランプ電圧生成回路は、前記入力電圧に応じて前記ランプ電圧の振幅を設定する
、請求項6に記載のスイッチング電源装置。
【請求項8】
前記クランプ電圧は前記出力電圧に比例し、
前記ランプ電圧の振幅は前記入力電圧に比例する
、請求項7に記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
前記クランプ電圧は所定の固定電圧である
、請求項4又は5に記載のスイッチング電源装置。
【請求項10】
前記対比電圧生成部は、前記帰還電圧に応じて生成された信号に基づき又は前記帰還電圧に基づき、前記特定配線との間で電流を入出力するアンプを含む
、請求項4~9の何れかに記載のスイッチング電源装置。
【請求項11】
前記出力段回路は、前記出力トランジスタ及び前記出力トランジスタに直接接続された同期整流トランジスタを有し、
前記同期整流トランジスタは、前記出力電圧の印加端と前記基準導電部との間に設けられ、
前記主制御回路は、
前記PWM制御において前記PWMコンパレータの出力信号に基づき前記出力トランジスタ及び前記同期整流トランジスタを交互にオン、オフとし、
前記オフスキップ制御では、前記PWM周期の1周期分の時間を超える時間だけ前記出力トランジスタをオン且つ前記同期整流トランジスタをオフとした後、前記PWM周期の1周期分の時間よりも短い時間だけ前記出力トランジスタをオフ且つ前記同期整流トランジスタをオンとする一連の単位動作を繰り返し実行する、又は、前記オフスキップ制御では前記出力トランジスタをオンに維持し且つ前記同期整流トランジスタをオフに維持する
、請求項4~10の何れかに記載のスイッチング電源装置。
【請求項12】
前記出力トランジスタと前記出力電圧の印加端との間にコイルが設けられ、前記出力トランジスタがオンであるとき、前記出力トランジスタ及び前記コイルを通じ前記出力電圧の印加端に向けて前記入力電圧に基づく電流が流れる
、請求項1~11の何れかに記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力電圧の印加端と出力電圧の印加端との間に設けられた出力トランジスタを有し、出力電圧に応じた帰還電圧に基づいて出力トランジスタをスイッチングさせるスイッチング電源装置が一般的に知られており、スイッチング制御において、電流モード制御方式が採用されることも多い(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図19に、電流モード制御方式が採用された参考構成に係るスイッチング電源装置900の構成を示す。スイッチング電源装置900は、入力電圧Viより所望の出力電圧Voを生成する降圧型のスイッチング電源装置として構成されている。
図19のスイッチング電源装置900では、出力トランジスタ911及び同期整流トランジスタ912から成る出力段回路を用いて入力電圧Viをスイッチングすることで矩形波状の電圧を発生させ、矩形波状の電圧をコイル913及び出力コンデンサ914にて平滑化することで出力電圧Voを生成する。この際、出力電圧Voに応じた帰還電圧とコイル913に流れる電流とに基づき対比電圧Vc’を生成し、対比電圧Vc’をランプ電圧Vramp’と比較することでパルス幅変調信号Spwm’を生成する。パルス幅変調信号Spwm’によるPWM制御にてトランジスタ911及び912をスイッチング動作させることで、出力電圧Voを所望の目標電圧にて安定化させることができる。尚、
図19の構成では、出力電圧Voの低下につれて対比電圧Vc’は上昇する。対比電圧Vc’の位相を補償するための位相補償回路920が、対比電圧Vc’が加わる配線921に接続される。位相補償回路920は位相補償用抵抗921aと位相補償用コンデンサ921bの直列回路から成る。
【0005】
入力電圧Viは基本的には出力電圧Voの目標電圧より高いのであるが、アプリケーションによっては、入力電圧Viが一時的に目標電圧を下回る程度に低くなることがある。入力電圧Viが目標電圧より低下したとき、それに連動して出力電圧Voも低下し、出力電圧Voの低下は対比電圧Vc’の上昇をもたらす。この際、対比電圧Vc’が過度に上昇しすぎないよう、クランプ回路930を導入することができる。
【0006】
クランプ回路930は、対比電圧Vc’が加わる配線921に接続され、対比電圧Vc’が所定のクランプ電圧を超えて上昇することが無いよう対比電圧Vc’をクランプする。ここで、通常動作にて実行されるべきPWM制御に影響が生じないよう、クランプ電圧はランプ電圧Vramp’の最大電圧より高い電圧に設定される必要がある。そうすると、スイッチング電源装置900において、入力電圧Viの低下を経た入力電圧Viの復帰時に、出力電圧Voに比較的大きなオーバーシュートが発生することがある(オーバーシュートの発生要因については後に詳説される)。
【0007】
大きなオーバーシュートはスイッチング電源装置900の後段回路に悪影響を及しうるため、オーバーシュートをなるだけ抑制することが要望される。
【0008】
本発明は、オーバーシュートの抑制に寄与するスイッチング電源装置(特に例えば、入力電圧の低下を経て入力電圧が復帰したときに生じうるオーバーシュートの抑制に寄与するスイッチング電源装置)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るスイッチング電源装置は、入力電圧の印加端と出力電圧の印加端との間に設けられた出力トランジスタを有し、前記出力トランジスタのスイッチングを含むスイッチング動作を通じて前記入力電圧から前記出力電圧を生成するための出力段回路と、前記出力電圧に応じた帰還電圧に基づき所定のPWM周波数にて前記出力段回路をスイッチング動作させるPWM制御を実行可能な主制御回路と、を備え、前記主制御回路は、前記帰還電圧に応じて特定配線上に対比電圧を生成する対比電圧生成部と、前記特定配線に接続されて前記対比電圧の位相を補償する位相補償回路と、前記PWM周期にて電圧値が周期的に変化するランプ電圧を生成するランプ電圧生成回路と、前記対比電圧と前記ランプ電圧を比較して比較結果を示す信号を出力するPWMコンパレータと、を有して、前記PWMコンパレータの出力信号に基づき前記出力段回路を制御し、前記位相補償回路は、前記特定配線と所定ノードとの間に設けられた位相補償用抵抗と、前記所定ノードと所定電位を持つ基準導電部との間に設けられた位相補償用コンデンサと、を有し、前記主制御回路は、クランプ電圧を生成して前記所定ノードにおける電圧を前記クランプ電圧にてクランプするクランプ動作を実行可能なクランプ回路を更に有する構成(第1の構成)である。
【0010】
上記第1の構成に係るスイッチング電源装置において、前記主制御回路は、前記PWM制御、又は、前記PWM周波数の逆数に相当するPWM周期の1周期分の時間を超えて前記出力トランジスタをオン状態に維持するオフスキップ制御を実行可能であり、前記対比電圧が前記ランプ電圧の変動範囲内に維持されている状態では、前記対比電圧及び前記ランプ電圧間の高低関係の切り替わりに基づき前記出力段回路をスイッチング動作させる前記PWM制御を実行し、前記対比電圧及び前記ランプ電圧間の高低関係の切り替わりが前記PWM周期の1周期分の時間以上生じない状態では、前記オフスキップ制御を実行し、前記オフスキップ制御の実行に連動して前記クランプ動作を実行させる構成(第2の構成)であっても良い。
【0011】
上記第2の構成に係るスイッチング電源装置において、前記主制御回路は、前記PWM制御の開始後、前記対比電圧及び前記ランプ電圧間の高低関係の切り替わりが前記PWM周期の1周期分の時間以上生じないことが検知されると、実行制御を前記PWM制御から前記オフスキップ制御に遷移させるとともに前記クランプ動作を開始させ、その後、前記対比電圧及び前記ランプ電圧間の高低関係の切り替わりが検知されると、実行制御を前記PWM制御に戻すとともに前記クランプ動作を終了させる構成(第3の構成)であっても良い。
【0012】
上記第1~第3の構成の何れかに係るスイッチング電源装置において、前記クランプ回路は、前記出力電圧に応じて前記クランプ電圧を設定する構成(第4の構成)であっても良い。
【0013】
上記第4の構成に係るスイッチング電源装置において、前記ランプ電圧生成回路は、前記入力電圧に応じて前記ランプ電圧の振幅を設定する構成(第5の構成)であっても良い。
【0014】
上記第5の構成に係るスイッチング電源装置において、前記クランプ電圧は前記出力電圧に比例し、前記ランプ電圧の振幅は前記入力電圧に比例する構成(第6の構成)であっても良い。
【0015】
上記第1~第3の構成の何れかに係るスイッチング電源装置において、前記クランプ電圧は所定の固定電圧である構成(第7の構成)であっても良い。
【0016】
上記第1~第7の構成の何れかに係るスイッチング電源装置において、前記対比電圧生成部は、前記帰還電圧に応じて生成された信号に基づき又は前記帰還電圧に基づき、前記特定配線との間で電流を入出力するアンプを含む構成(第8の構成)であっても良い。
【0017】
上記第1~第8の構成の何れかに係るスイッチング電源装置において、前記出力段回路は、前記出力トランジスタ及び前記出力トランジスタに直接接続された同期整流トランジスタを有し、前記同期整流トランジスタは、前記出力電圧の印加端と前記基準導電部との間に設けられ、前記主制御回路は、前記PWM制御において前記PWMコンパレータの出力信号に基づき前記出力トランジスタ及び前記同期整流トランジスタを交互にオン、オフとし、前記オフスキップ制御では、前記PWM周期の1周期分の時間を超える時間だけ前記出力トランジスタをオン且つ前記同期整流トランジスタをオフとした後、前記PWM周期の1周期分の時間よりも短い時間だけ前記出力トランジスタをオフ且つ前記同期整流トランジスタをオンとする一連の単位動作を繰り返し実行する、又は、前記オフスキップ制御では前記出力トランジスタをオンに維持し且つ前記同期整流トランジスタをオフに維持する構成(第9の構成)であっても良い。
【0018】
上記第1~第9の構成の何れかに係るスイッチング電源装置において、前記出力トランジスタと前記出力電圧の印加端との間にコイルが設けられ、前記出力トランジスタがオンであるとき、前記出力トランジスタ及び前記コイルを通じ前記出力電圧の印加端に向けて前記入力電圧に基づく電流が流れる構成(第10の構成)であっても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、オーバーシュートの抑制に寄与するスイッチング電源装置(特に例えば、入力電圧の低下を経て入力電圧が復帰したときに生じうるオーバーシュートの抑制に寄与するスイッチング電源装置)を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置の概略的な全体構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係り、スイッチング電源ICの外観斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置の構成図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係り、ランプ電圧の波形図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係り、PWM制御における波形図である。
【
図6】
図3のスイッチング電源装置との対比に供される参考スイッチング電源装置の構成図である。
【
図7】
図6の参考スイッチング電源装置におけるランプ電圧とクランプ電圧との関係図である。
【
図8】
図6の参考スイッチング電源装置におけるタイミングチャートである。
【
図9】
図3のスイッチング電源装置にて実現されるPWM制御とオフスキップ制御の説明図である。
【
図10】
図3のスイッチング電源装置におけるタイミングチャートである。
【
図11】本発明の第1実施形態に属する実施例EX1_1に係り、クランプ回路の構成を示す図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に属する実施例EX1_2に係り、クランプ回路の構成を示す図である。
【
図13】本発明の第1実施形態に属する実施例EX1_3に係り、ランプ電圧の振幅と入力電圧との関係を示す図である。
【
図14】本発明の第1実施形態に属する実施例EX1_3に係り、ランプ電圧、対比電圧及びパルス幅変調信号の波形図である。
【
図15】本発明の第1実施形態に属する実施例EX1_3に係り、スイッチング電源装置のタイミングチャートである。
【
図16】本発明の第1実施形態に属する実施例EX1_4に係り、クランプ回路の構成を示す図である。
【
図17】本発明の第2実施形態に係るスイッチング電源装置の構成図である。
【
図18】本発明の第3実施形態に係るシステムの構成図である。
【
図19】参考構成に係るスイッチング電源装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、素子又は部位等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、素子又は部位等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の符号“2”によって参照されるスイッチング電源ICは(
図1参照)、スイッチング電源IC2と表記されることもあるし、電源IC2又は単にIC2と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0022】
まず、本発明の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。ICとは集積回路(Integrated Circuit)の略称である。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。0Vの電位をグランド電位と称することもある。本発明の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧は、グランドから見た電位を表す。レベルとは電位のレベルを指し、任意の信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の信号又は電圧について、信号又は電圧がハイレベルにあるとは信号又は電圧のレベルがハイレベルにあることを意味し、信号又は電圧がローレベルにあるとは信号又は電圧のレベルがローレベルにあることを意味する。信号についてのレベルは信号レベルと表現されることがあり、電圧についてのレベルは電圧レベルと表現されることがある。
【0023】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通状態となっていることを指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通状態(遮断状態)となっていることを指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解して良い。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。
【0024】
任意のスイッチを1以上のFET(電界効果トランジスタ)にて構成することができ、或るスイッチがオン状態のときには当該スイッチの両端間が導通する一方で或るスイッチがオフ状態のときには当該スイッチの両端間が非導通となる。
【0025】
任意のトランジスタ又はスイッチについて、オフ状態からオン状態への切り替わりをターンオンと表現し、オン状態からオフ状態への切り替わりをターンオフと表現する。以下、任意のトランジスタ又はスイッチについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。
【0026】
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置1の全体構成図である。
図1のスイッチング電源装置1は、スイッチング電源用回路(スイッチング電源用半導体装置)であるスイッチング電源IC2と、スイッチング電源IC2に対して外付け接続される複数のディスクリート部品と、を備え、当該複数のディスクリート部品には、出力コンデンサとしてのコンデンサC1と、帰還抵抗としての抵抗R1及びR2と、コイルL1とが含まれる。スイッチング電源装置1は、外部から供給される入力電圧Vinより所望の出力電圧Voutを生成する降圧型のスイッチング電源装置(DC/DCコンバータ)として構成されている。出力端子OUTに出力電圧Voutが生じる。即ち、出力端子OUTは出力電圧Voutの印加端(出力電圧Voutが加わる端子)である。出力電圧Voutは出力端子OUTに接続された負荷LDに供給される。入力電圧Vin及び出力電圧Voutは正の直流電圧であって、出力電圧Voutは入力電圧Vinよりも低い。例えば入力電圧Vinが12Vであるとき、抵抗R1及びR2の抵抗値を調整することで12V未満の所望の正の電圧値(例えば3.3Vや5V)にて出力電圧Voutを安定化させることができる。尚、出力端子OUTを介して負荷LDに流れる電流を出力電流Ioutと称する。
【0027】
スイッチング電源IC2は、
図2に示すような、半導体集積回路を、樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品である。IC2の筐体に複数の外部端子が露出して設けられており、その複数の外部端子には、
図1に示される入力端子IN、スイッチ端子SW、帰還端子FB、出力監視端子OS及びグランド端子GNDが含まれる。これら以外の端子も、上記複数の外部端子に含まれうる。尚、
図2に示されるIC2の外部端子の数及びIC2の外観は例示に過ぎない。
【0028】
スイッチング電源IC2の外部構成について説明する。IC2の外部より入力電圧Vinが入力端子INに供給される。スイッチ端子SWと出力端子OUTとの間にコイルL1が直列に介在している。即ち、コイルL1の一端はスイッチ端子SWに接続され、コイルL1の他端は出力端子OUTに接続される。また、出力端子OUTはコンデンサC1を介してグランドに接続される。更に、出力端子OUTは抵抗R1の一端に接続され、抵抗R1の他端は抵抗R2を介してグランドに接続される。抵抗R1及びR2間の接続ノードが帰還端子FBに接続される。また、出力監視端子OSには出力電圧Voutが加えられ、グランド端子GNDはグランドに接続される。尚、コイルL1に流れる電流をコイル電流ILと称する。
【0029】
スイッチング電源IC2の内部構成について説明する。スイッチング電源IC2は、出力段回路MMと、出力段回路MMを制御するための主制御回路3と、を備える。
【0030】
出力段回路MMは、Nチャネル型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)として構成されたトランジスタM1及びM2を備える。トランジスタM1及びM2は、入力端子INとグランド端子GND(換言すればグランド)との間に直列接続された一対のスイッチング素子であり、それらがスイッチング駆動されることで入力電圧Vinがスイッチングされてスイッチ端子SWに矩形波状のスイッチ電圧Vswが現れる。トランジスタM1がハイサイド側に設けられ、トランジスタM2がローサイド側に設けられる。具体的には、トランジスタM1のドレインは入力電圧Vinの印加端である入力端子INに接続され、トランジスタM1のソース及びトランジスタM2のドレインはスイッチ端子SWに共通接続される。トランジスタM2のソースはグランドに接続される。但し、トランジスタM2のソースとグランドとの間に電流検出用の抵抗が挿入される場合もある。
【0031】
トランジスタM1は出力トランジスタとして機能し、トランジスタM2は同期整流トランジスタとして機能する。コイルL1及びコンデンサC1は、スイッチ端子SWに現れる矩形波状のスイッチ電圧Vswを整流及び平滑化して出力電圧Voutを生成する整流平滑回路を構成する。抵抗R1及びR2は出力電圧Voutを分圧する分圧回路を構成し、抵抗R1及びR2間の接続ノードに出力電圧Voutの分圧である帰還電圧Vfbが生じる。抵抗R1及びR2間の接続ノードが帰還端子FBに接続されることで帰還電圧Vfbが帰還端子FBに入力される。
【0032】
トランジスタM1、M2のゲートには、駆動信号として夫々ゲート信号G1、G2が供給され、トランジスタM1及びM2はゲート信号G1及びG2に応じてオン、オフされる。ゲート信号G1がハイレベルであるとき、トランジスタM1はオン状態となり、ゲート信号G1がローレベルであるとき、トランジスタM1はオフ状態となる。同様に、ゲート信号G2がハイレベルであるとき、トランジスタM2はオン状態となり、ゲート信号G2がローレベルであるとき、トランジスタM2はオフ状態となる。基本的には、トランジスタM1及びM2が交互にオン、オフされるが、トランジスタM1及びM2が共にオフ状態に維持されることもある。即ち、出力段回路MMの状態は、出力ハイ状態と、出力ロー状態と、Hi-Z状態の何れかとなる。出力ハイ状態では、トランジスタM1、M2が夫々、オン状態、オフ状態である。出力ロー状態では、トランジスタM1、M2が夫々、オフ状態、オン状態である。Hi-Z状態では、トランジスタM1及びM2が共にオフ状態である。トランジスタM1及びM2が共にオン状態とされることは無い。
【0033】
主制御回路3は、帰還電圧Vfbに基づきゲート信号G1及びG2のレベル制御を通じてトランジスタM1及びM2の夫々のオン/オフ状態を制御し、これによって出力端子OUTに帰還電圧Vfbに応じた出力電圧Voutを発生させる。また、
図1に示す如く、主制御回路3には出力電圧Voutが与えられていても良い。主制御回路3は出力電圧Voutに基づいて過電圧保護等を行いうる他、出力電圧Voutを利用して後述のクランプ電圧を設定することもできる(詳細は後述)。
【0034】
尚、ここでは、同期整流方式を用いることを想定しているが、出力段回路MMにおいてダイオード整流方式を採用するようにして良い。ダイオード整流方式が採用される場合、出力段回路MMからトランジスタM2が削除され、代わりに、アノードがグランドに接続され且つカソードがスイッチ端子SWに接続された同期整流ダイオード(不図示)が出力段回路MMに設けられる(結果、出力段回路MMのスイッチング動作はトランジスタM1のみのスイッチング動作となる)。
【0035】
第1実施形態では、以下、電流モード制御方式が採用された場合のスイッチング電源装置1を例にとって、スイッチング電源装置1の構成及び動作を説明する。
図3は、電流モード制御方式が採用されたスイッチング電源装置1であるスイッチング電源装置1Aの全体構成図である。スイッチング電源装置1Aには、スイッチング電源IC2としてスイッチング電源IC2Aが設けられる。スイッチング電源IC2Aには、出力段回路MMと、主制御回路3として主制御回路3Aが設けられる。スイッチング電源装置1、スイッチング電源IC2、主制御回路3について上述した事項は、矛盾なき限り全て、スイッチング電源装置1A、スイッチング電源IC2A、主制御回路3Aにも適用される。
【0036】
主制御回路3Aは、エラーアンプ111と、位相補償回路112と、電流センサ113と、差動アンプ114と、位相補償回路115と、クランプ回路116と、ランプ電圧生成回路117と、コンパレータ(PWMコンパレータ)118と、ロジック回路120と、を備える。
【0037】
エラーアンプ111は、電流出力型のトランスコンダクタンスアンプである。エラーアンプ111の反転入力端子には帰還端子FBに加わる電圧(即ち帰還電圧Vfb)が供給され、エラーアンプ111の非反転入力端子には所定の基準電圧Vref1が供給される。基準電圧Vref1は、正の所定電圧値を有する直流電圧であり、IC2A内の図示されない基準電圧生成回路にて生成される。エラーアンプ111は、帰還電圧Vfbと基準電圧Vref1との差分に応じた誤差電流信号I1を自身の出力端子から出力する。誤差電流信号I1による電荷は、誤差信号配線である配線WR1に対して入出力される。具体的には,エラーアンプ111は、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref1よりも低いときには配線WR1の電位が上がるようエラーアンプ111から配線WR1に向けて誤差電流信号I1による電流を出力し、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref1よりも高いときには配線WR1の電位が下がるよう配線WR1からエラーアンプ111に向けて誤差電流信号I1による電流を引き込む。帰還電圧Vfb及び基準電圧Vref1間の差分の絶対値が増大するにつれて、誤差電流信号I1による電流の大きさも増大する。
【0038】
位相補償回路112は、配線WR1とグランドとの間に設けられ、誤差電流信号I1の入力を受けて配線WR1上に誤差電圧Verrを生成する。位相補償回路112は誤差電圧Verrの位相を補償するために設けられる。位相補償回路112は抵抗112a及びコンデンサ112bの直列回路を含み、具体的には抵抗112aの一端が配線WR1に接続され、抵抗112aの他端がコンデンサ112bを介してグランドに接続される。抵抗112aの抵抗値及びコンデンサ112bの静電容量値を適切に設定することにより誤差電圧Verrの位相を補償して出力帰還ループの発振を防ぐことができる。
【0039】
電流センサ113は、コイルL1に流れるコイル電流ILを所定のタイミングでサンプリングし、サンプリングしたコイル電流ILの値を示す電流検出信号Isnsを出力する。電流検出信号Isnsは電圧信号であるため、電流検出信号Isnsが表す電圧を、電圧Isnsと称することがある。スイッチ端子SWから出力端子OUTに向かう向きのコイル電流ILの極性は正であり、出力端子OUTからスイッチ端子SWに向かう向きのコイル電流ILの極性は負であるとする。コイル電流ILが負側から正側に向かうにつれて電圧Isnsは上昇する。故に、コイル電流ILが正であるときにはコイル電流ILの大きさが増大するにつれて電圧Isnsは上昇し、コイル電流ILが負であるときにはコイル電流ILの大きさが増大するにつれて電圧Isnsは低下する。例えば、電流センサ113は、トランジスタM2のソースとグランドとの間に設けられたセンス抵抗を有し、トランジスタM2がオンとされている期間においてセンス抵抗の電圧降下をサンプリングすることで電圧Isnsを生成する。即ち、トランジスタM2に流れる電流を検出することを通じてコイル電流ILを検出することができるが、電流センサ113は、トランジスタM1に流れる電流を検出することを通じて又はコイルL1に流れる電流を直接検出することを通じて電圧Isnsを生成するようにしても良い。
【0040】
差動アンプ114も、エラーアンプ111と同様、電流出力型のトランスコンダクタンスアンプである。差動アンプ114の非反転入力端子には配線WR1に加わる誤差電圧Verrが供給され、差動アンプ114の反転入力端子には電圧Isnsが供給される。差動アンプ114は、誤差電圧Verrと電圧Isnsとの差分に応じた電流信号I2を自身の出力端子から出力する。電流信号I2による電荷は、配線WR2に対して入出力される。具体的には,差動アンプ114は、誤差電圧Verrが電圧Isnsよりも高いときには配線WR2の電位が上がるよう差動アンプ114から配線WR2に向けて電流信号I2による電流を出力し、誤差電圧Verrが電圧Isnsよりも低いときには配線WR2の電位が下がるよう配線WR2から差動アンプ114に向けて電流信号I2による電流を引き込む。誤差電圧Verr及び電圧Isns間の差分の絶対値が増大するにつれて、電流信号I2による電流の大きさも増大する。
【0041】
位相補償回路115は、配線WR2とグランドとの間に設けられ、電流信号I2の入力を受けて配線WR2上に対比電圧Vcを生成する。位相補償回路115は対比電圧Vcの位相を補償するために設けられる。位相補償回路115は抵抗115a及びコンデンサ115bの直列回路を含み、具体的には抵抗115aの一端が配線WR2に接続され、抵抗115aの他端がコンデンサ115bを介してグランドに接続される。抵抗115aの抵抗値及びコンデンサ115bの静電容量値を適切に設定することにより対比電圧Vcの位相を補償して出力帰還ループの発振を防ぐことができる。抵抗115a、コンデンサ115bは、夫々、対比電圧Vcの位相を補償するための位相補償用抵抗、位相補償用コンデンサとして機能する。抵抗115a及びコンデンサ115b間の接続ノードをノードNDAと称する。
【0042】
クランプ回路116はノードNDAに接続され、必要なタイミングにおいてノードNDAの電圧を、自身が設定するクランプ電圧Vclmpにてクランプする。クランプ回路116の構成及び動作の詳細については後述される。
【0043】
ランプ電圧生成回路117は、所定のPWM周期にて周期的に電圧値が変化するランプ電圧Vrampを生成する。PWM周期は後述のPWM周波数の逆数に相当する。ランプ電圧Vrampは、例えば三角波又はのこぎり波の電圧波形を持つ。ここでは、
図4に示す如く、ランプ電圧Vrampは、所定の正の下限電圧値Vramp_MINから所定の正の上限電圧値Vramp_MAXまでの間で変動するものとする。即ち、下限電圧値Vramp_MINから上限電圧値Vramp_MAXまでの範囲がランプ電圧Vrampの変動範囲(可変範囲)であり、“Vramp_MAX>Vramp_MIN”である。ランプ電圧Vrampの変動の周期はPWM周期(換言すればPWM制御の周期)であり、各PWM周期において、ランプ電圧Vrampは、下限電圧値Vramp_MINを起点に時間経過と共に線型的に単調増加し、上限電圧値Vramp_MAXに達すると瞬時に下限電圧値Vramp_MINに戻るものとする。
【0044】
コンパレータ118の非反転入力端子には配線上WR2上の対比電圧Vcが供給され、コンパレータ118の反転入力端子にはランプ電圧生成部117からのランプ電圧Vrampが供給される。コンパレータ118は、対比電圧Vcをランプ電圧Vrampと比較して比較結果を示すパルス幅変調信号Spwmを出力する。パルス幅変調信号Spwmは、対比電圧Vcがランプ電圧Vrampよりも高い期間においてハイレベルとなり、対比電圧Vcがランプ電圧Vrampよりも低い期間においてローレベルとなる。
【0045】
ロジック回路120は、コンパレータ118からのパルス幅変調信号Spwmに基づくゲート信号G1及びG2をトランジスタM1及びM2に供給することで出力段回路MMにスイッチング動作を行わせる。スイッチング動作では、信号Spwmに基づきトランジスタM1及びM2が交互にオン、オフされる。エラーアンプ111は、帰還電圧Vfbと基準電圧Vref1とが等しくなるように電流信号I1を生成するため、スイッチング動作の実行を通じ、出力電圧Voutが、基準電圧Vref1と抵抗R1及びR2による分圧比とに応じた所定の目標電圧Vtgにて安定化される。
【0046】
基本的には、対比電圧Vcはランプ電圧Vrampの変動範囲内に収まる。対比電圧Vcがランプ電圧Vrampの変動範囲内に維持されているとき、
図5に示す如く、各PWM周期において信号Spwmがハイレベルとなる期間と信号Spwmがローレベルとなる期間とが発生し、PWM周波数にてPWM制御が行われる。PWM制御では、対比電圧Vc及びランプ電圧Vramp間の高低関係の切り替わりに基づきPWM周波数で出力段回路MM(トランジスタM1及びM2)がスイッチング動作される。即ちPWM制御では、トランジスタM1及びM2が信号Spwmに基づきPWM周期にて交互にオン、オフされる。
【0047】
より具体的にはPWM制御において(PWM制御によるスイッチング動作において)、信号Spwmがハイレベルである期間では、ハイレベルのゲート信号G1、ローレベルのゲート信号G2が、夫々、トランジスタM1、M2のゲートに供給されることで、トランジスタM1、M2が、夫々、オン状態、オフ状態となる(即ち出力段回路MMが出力ハイ状態となる)。出力ハイ状態では、トランジスタM1及びコイルL1を通じ出力電圧Voutの印加端(OUT)に向けて入力電圧Vinに基づく電流が流れる。逆に、PWM制御において(PWM制御によるスイッチング動作において)、信号Spwmがローレベルである期間では、ローレベルのゲート信号G1、ハイレベルのゲート信号G2が、夫々、トランジスタM1、M2のゲートに供給されることで、トランジスタM1、M2が、夫々、オフ状態、オン状態となる(即ち出力段回路MMが出力ロー状態となる)。出力ロー状態では、トランジスタM2及びコイルL1を通じコイルL1の蓄積エネルギに基づく電流が流れる。尚、貫通電流の発生を確実に防止するべく、トランジスタM1がオン状態とされる期間とトランジスタM2がオン状態とされる期間との間に、トランジスタM1及びM2が共にオフ状態されるデッドタイムが挿入されて良い。
【0048】
入力電圧Vinの値及び出力電圧Voutに対する目標電圧Vtgの値は任意である。例えば、目標電圧Vtgは3.3V又は5Vであり、入力電圧Vinは基本的には12V又は24Vである。殆どの期間において入力電圧Vinは目標電圧Vtgより高いが、入力電圧Vinが一時的に目標電圧Vtgを下回ることもある(詳細は後述)。
【0049】
上述の如く、スイッチング電源装置1Aでは、出力電圧Voutとコイル電流ILの双方に基づき出力帰還制御を行う電流モード制御方式が採用されている。コイル電流ILに応じた電圧Isnsが差動アンプ114に帰還入力されており、差動アンプ114の作用により、誤差電圧Verrが上昇するとコイル電流ILが増大し、誤差電圧Verrが低下するとコイル電流ILが減少する。
【0050】
尚、ここでは図示を省略しているが、配線WR1に接続されて配線WR1上の誤差電圧Verrの変動範囲を所定範囲内に制限する制限回路(不図示)も、主制御回路3Aに設けられていても良い。当該制限回路(不図示)は、誤差電圧Verrに上下限を設けることでコイル電流ILに上下限を設けるよう機能する(誤差電圧Verrの可変範囲に制限を設けることでコイル電流ILの可変範囲を制限するよう機能する)。
【0051】
スイッチング電源装置1(本実施形態では電源装置1A)では入力電圧Vinが変動することがあり、入力電圧Vinが一時的に出力電圧Voutの目標電圧Vtgを下回ることすらありうる。入力電圧Vinが目標電圧Vtgを下回る程度まで低下したときに対比電圧Vcが過度に上昇しすぎないよう、クランプ回路を導入することができる。
【0052】
――参考スイッチング電源装置――
図6に、
図3のスイッチング電源装置1Aとの対比に供される参考スイッチング電源装置1’を示す。参考スイッチング電源装置1’では、クランプ回路としてクランプ回路116’が設けられる。クランプ回路116’は、配線WR2に接続され、対比電圧Vcが所定のクランプ電圧Vclmp’を超えて上昇することが無いよう対比電圧Vcをクランプする。ここで、通常動作にて実行されるべきPWM制御に影響が生じないよう、
図7に示す如く、クランプ電圧Vclmp’はランプ電圧Vrampの最大電圧(Vramp_MAX)より高い電圧に設定される必要がある。そうすると、参考スイッチング電源装置1’において、入力電圧Vinの低下を経た入力電圧Vinの復帰時に、出力電圧Voutに比較的大きなオーバーシュートが発生することがある。
【0053】
これについて、
図8を参照して説明を加える。
図8において、実線による折れ線931、破線による折れ線932、一点鎖線による線分933は、実線による折れ線934、実線による折れ線935、破線による線分936、実線による折れ線937は、実線による折れ線938は、夫々、参考スイッチング電源装置1’における入力電圧Vin、出力電圧Vout、目標電圧Vtg、対比電圧Vc、ランプ電圧Vramp、クランプ電圧Vclmp’、信号Spwm、ゲート信号G1の概略波形を表している。
【0054】
参考スイッチング電源装置1’において、タイミングT
1以前では入力電圧Vinが目標電圧Vtgよりも高く、PWM制御の実行を通じて出力電圧Voutが目標電圧Vtgにて安定化されている。タイミングT
1にて入力電圧Vinが目標電圧Vtgを下回る電圧まで急峻に低下する。これに伴って、出力電圧Voutも目標電圧Vtgより低くなり、結果、対比電圧Vcがクランプ電圧Vclmp’に向けて上昇する。対比電圧Vcがクランプ電圧Vclmp’にまで上昇した後は、“Vout<Vtg”である限り、対比電圧Vcがクランプ電圧Vclmp’にて維持される。
図8の例では、対比電圧Vcがランプ電圧Vrampの最大電圧を超えている期間において、PWM周期の2倍より微小時間だけ短い時間分、出力段回路MMを出力ハイ状態とした後、微小時間分、出力段回路MMを出力ロー状態とする動作が繰り返される。
【0055】
参考スイッチング電源装置1’において、タイミングT1より後のタイミングT2にて入力電圧Vinが目標電圧Vtgより低い状態から目標電圧Vtgより高い状態へと復帰する。この復帰に伴い、出力電圧Voutが目標電圧Vtgに向けて上昇を開始し、出力電圧Voutの上昇に伴い対比電圧Vcが低下してゆく。但し、参考スイッチング電源装置1’では、タイミングT2の直前においてコンデンサ115bがクランプ電圧Vclmp’にて充電されていることから、対比電圧Vcが適正な電圧にまで低下するのに比較的長い時間を要し、結果、出力電圧Voutに大きなオーバーシュート(出力電圧Voutが目標電圧Vtgを超えて上昇する現象)が発生することがある。
【0056】
参考スイッチング電源装置1’及びスイッチング電源装置1Aでは、出力電圧Voutと目標電圧Vtgとの誤差をコンデンサ115bを用い比較的長時間に亘って積算し、比較的緩やかにPWM制御におけるオンデューティを調整する。これにより、出力電圧Voutを高精度に安定化させることができる。しかしながら、参考スイッチング電源装置1’では、入力電圧Vinの低下に伴い出力電圧Voutが目標電圧Vtgより低下している期間中に上記誤差がコンデンサ115bに積算されることなる。そして、参考スイッチング電源装置1’では、入力電圧Vinの復帰直後において、この積算内容(出力電圧Voutが目標電圧Vtgより低かったという情報)が出力電圧Voutを過度に押し上げる方向に働いてオーバーシュートを発生させる。
【0057】
――クランプ回路の接続位置の工夫――
このようなオーバーシュートを抑制すべく、
図3のスイッチング電源装置1Aでは、配線WR2ではなく、抵抗115a及びコンデンサ115b間の接続ノードであるノードND
Aにクランプ回路116を接続し、入力電圧Vinの低下に伴って対比電圧Vcがランプ電圧Vrampの最大電圧を超える状況において、ノードND
Aの電圧をクランプ電圧Vclmpにてクランプする。ノードND
Aの電圧をクランプ電圧Vclmpにてクランプする動作をクランプ動作と称する。クランプ動作は、ノードND
Aの電圧をクランプ電圧Vclmpに保つ動作であって良い。或いは、クランプ動作は、ノードND
Aの電圧がクランプ電圧Vclmpより低くなることを許容しつつ、ノードND
Aの電圧がクランプ電圧Vclmpより高まることを制限(禁止)する動作であっても良い。
【0058】
クランプ動作の実行有無はロジック回路120に内包されるクランプ制御部(
図3参照)により制御される。ロジック回路120(クランプ制御部)は、通常動作にて実行されるべきPWM制御に影響が生じないように、対比電圧Vcがランプ電圧Vrampの変動範囲内にある状態では(即ちPWM制御が実行されている状態では)クランプ動作を停止させ、対比電圧Vcがランプ電圧Vrampの変動範囲を超えている状態(即ち“Vc>Vramp_MAX”の状態)においてクランプ動作を実行させる。クランプ動作が停止されているとき、ノードND
Aから見たクランプ回路116のインピーダンスは十分に高くなり、ノードND
A及びクランプ回路116間の電流の流れは無くなる(クランプ回路116が存在しない構成と等価となる)。
【0059】
他方、ロジック回路120は、対比電圧Vcがランプ電圧Vrampの変動範囲を超えている状態(即ち“Vc>Vramp_MAX”の状態)において、PWM制御の代わりにオフスキップ制御を行う。
【0060】
図9(a)等を参照してオフスキップ制御を説明する。PWM制御では、PWM周期ごとにトランジスタM1がターンオフされ、トランジスタM1のターンオフに同期してトランジスタM2がターンオンされる。これに対し、オフスキップ制御では、PWM周期ごとのトランジスタM1のターンオフがスキップされる。第1例に係るオフスキップ制御では、
図9(a)に示す如く、出力段回路MMを時間tonだけ出力ハイ状態とした後、出力段回路MMを時間toffだけ出力ロー状態とするという一連の単位動作を、繰り返し実行する。ここで、時間tonはPWM周期の1周期分の時間よりも長く、且つ、時間toffはPWM周期の1周期分の時間よりも短い。
【0061】
PWM周期の1周期分の時間長さを記号“tp_pwm”にて表す。そうすると、“ton=tp_pwm×n-Δt”且つ“toff=Δt”である。nは2以上の整数であり、時間Δtは時間tp_pwmよりも十分に短い所定時間(例えばΔt=tp_pwm×0.02)である。
図9(a)の例では“n=2”となっており、後述の幾つかの図面でも“n=2”であることが想定されているが、nは2以上の整数であれば任意であり、例えば、“n=4”や“n=8”であっても良い。
【0062】
第2例に係るオフスキップ制御では、
図9(b)に示す如く、出力段回路MMを、常時、出力ハイ状態に維持する。
【0063】
何れにせよ、オフスキップ制御では、PWM周期の1周期分の時間を超えてトランジスタM1がオン状態(即ち出力ハイ状態)に維持されることになる。このようなオフスキップ制御により、入力電圧Vinの低下に伴う出力電圧Voutの低下をなるだけ抑制することが可能となる。以下では、オフスキップ制御として、第1例に係るオフスキップ制御が用いられていることを想定するが、第2例に係るオフスキップ制御を用いるようにしても良い。
【0064】
ロジック回路120は、対比電圧Vcがランプ電圧Vrampの変動範囲内に維持されている状態ではPWM制御を実行する。一方、対比電圧Vcがランプ電圧Vrampの最大電圧(Vramp_MAX)を超え、これによって対比電圧Vc及びランプ電圧Vramp間の高低関係の切り替わりがPWM周期の1周期分の時間tp_pwm以上生じない状態において、ロジック回路120はオフスキップ制御を実行する。そして、ロジック回路120(クランプ制御部)は、PWM制御が実行されている期間ではクランプ回路116のクランプ動作を停止させ、オフスキップ制御の実行に連動して(オフスキップ制御が実行されている期間において)クランプ動作を実行させる。
【0065】
図10を参照して、入力電圧Vinの変動に応答した、スイッチング電源装置1Aの動作を説明する。
図10において、実線による折れ線611、破線による折れ線612、一点鎖線による線分613は、実線による折れ線614、実線による折れ線615、破線による線分616、実線による折れ線617は、実線による折れ線618は、夫々、スイッチング電源装置1Aにおける入力電圧Vin、出力電圧Vout、目標電圧Vtg、対比電圧Vc、ランプ電圧Vramp、クランプ電圧Vclmp、信号Spwm、ゲート信号G1の概略波形を表している。実線による折れ線619は、クランプ回路116の作動状態を表している。クランプ電圧Vclmpはランプ電圧Vrampの変動範囲内の電圧に設定される。後述されるよう、クランプ電圧Vclmpを出力電圧Voutに応じた電圧に設定することもできるが、
図10ではクランプ電圧Vclmpが一定電圧に固定されていることが想定されている。
【0066】
スイッチング電源装置1Aにおいて、タイミングTA1以前では入力電圧Vinが目標電圧Vtgよりも高く、PWM制御の実行を通じて出力電圧Voutが目標電圧Vtgにて安定化されている。タイミングTA1にて入力電圧Vinが目標電圧Vtgを下回る電圧まで急峻に低下する。これに伴って、出力電圧Voutも目標電圧Vtgより低くなり、結果、対比電圧Vcが上昇してゆく。対比電圧Vcの上昇の上限はアンプ114の正側の電源電圧までに制限され、アンプ114の正側の電源電圧はランプ電圧Vrampの最大電圧(Vramp_MAX)よりも高いため、対比電圧Vcはランプ電圧Vrampの最大電圧を超えて上昇できる。
【0067】
図10の例では、タイミングT
A1より後のタイミングT
A2において対比電圧Vcは上昇過程にある。タイミングT
A2において、ランプ電圧Vrampが、ランプ電圧Vrampの最大電圧(Vramp_MAX)から最小電圧(Vramp_MIN)に変化することで、“Vramp>Vc”の状態から“Vramp<Vc”の状態へと切り替わる。タイミングT
A2から、PWM周期の1周期分の時間が経過したタイミングT
A3において、ランプ電圧Vrampは、再びランプ電圧Vrampの最大電圧(Vramp_MAX)から最小電圧(Vramp_MIN)に変化するが、タイミングT
A2以降且つタイミングT
A3以前のタイミングから継続して対比電圧Vcはランプ電圧Vrampの最大電圧(Vramp_MAX)を上回っている。このため、タイミングT
A2及びT
A3間において信号Spwmは継続的にハイレベルに維持される。
【0068】
ロジック回路120は、信号Spwmに基づき、タイミングTA3の段階で、対比電圧Vc及びランプ電圧Vramp間の高低関係の切り替わりがPWM周期の1周期分の時間(tp_pwm)生じていないと検知できるため、タイミングTA3以降、オフスキップ制御を実行する。但し、その検知がタイミングTA3の段階でなされた場合、PWM周期の1周期分の時間を超えてトランジスタM1がオン状態に維持する制御はタイミングTA2を起点に実行されていることになるため、オフスキップ制御の始期はタイミングTA2である、と考えることもできる。
【0069】
タイミングTA3の段階で、対比電圧Vc及びランプ電圧Vramp間の高低関係の切り替わりがPWM周期の1周期分の時間(tp_pwm)生じていないと検知されることに基づき、クランプ回路116によるクランプ動作はタイミングTA3から実行開始される。タイミングTA3まではクランプ動作は停止されている。
【0070】
その後、タイミングT
A4にて入力電圧Vinが目標電圧Vtgより低い状態から目標電圧Vtgより高い状態へと復帰する。この復帰に伴い、出力電圧Voutが目標電圧Vtgに向けて上昇を開始し、出力電圧Voutの上昇に伴い対比電圧Vcが低下してゆく。対比電圧Vcの低下過程のタイミングT
A5にて“Vc>Vramp”の状態から“Vc<Vramp”の状態へと切り替わることで、信号Spwmがハイレベルからローレベルに切り替わる。即ち、
図10の例では、タイミングT
A2にて信号Spwmがローレベルからハイレベルに切り替わり、その後、タイミングT
A5の直前まで信号Spwmがハイレベルに維持され、タイミングT
A5にて信号Spwmがハイレベルからローレベルに切り替わる。
【0071】
タイミングT
A5における信号Spwmのローレベルへの切り替わりに応答して、ロジック回路120は、実行制御をパルススキップ制御からPWM制御に切り替えると共にクランプ動作を終了(停止)させる。結果、
図10の例では、タイミングT
A3及びT
A5間において、ノードND
Aの電圧がクランプ電圧Vclmpにてクランプされることになる。
図10の例において、タイミングT
A5以降、対比電圧Vcはランプ電圧Vrampの変動範囲内に維持され、PWM制御の実行を通じて出力電圧Voutが目標電圧Vtgにて安定化される。
【0072】
このようにロジック回路120は、PWM制御の開始後、対比電圧Vc及びランプ電圧Vramp間の高低関係の切り替わりがPWM周期の1周期分の時間以上生じないことが検知されると(タイミングTA3)、実行制御をPWM制御からオフスキップ制御に遷移させるとともにクランプ動作を開始させ、その後、対比電圧Vc及びランプ電圧Vramp間の高低関係の切り替わりが検知されると(タイミングTA5)、実行制御をPWM制御に戻すとともにクランプ動作を終了させる。
【0073】
上述したように、スイッチング電源装置1Aでは、出力電圧Voutと目標電圧Vtgとの誤差をコンデンサ115bを用い比較的長時間に亘って積算し、比較的緩やかにPWM制御におけるオンデューティを調整する。これにより、出力電圧Voutを高精度に安定化させることができる。
図6の参考スイッチング電源装置1’では、入力電圧Vinの低下に伴い出力電圧Voutが目標電圧Vtgより低下している期間中に上記誤差がコンデンサ115bに積算され、入力電圧Vinの復帰後に、その積算内容(出力電圧Voutが目標電圧Vtgより低かったという情報)が出力電圧Voutを過度に押し上げる方向に働いてオーバーシュートを発生させる。これに対し、
図3のスイッチング電源装置1Aでは、入力電圧Vinの低下に伴い出力電圧Voutが目標電圧Vtgより低下している期間中に上記誤差がコンデンサ115bに積算されず、コンデンサ115bの充電電圧はクランプ電圧Vclmpにてクランプされる。このため、クランプ電圧Vclmpを適切に設定しておくことを通じ、入力電圧Vinの復帰直後に発生しうるオーバーシュートを抑制することが可能となる。
【0074】
第1実施形態は、以下の実施例EX1_1~EX1_7を含む。第1実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の実施例EX1_1~EX1_7に適用され、各実施例において、第1実施形態で上述した事項と矛盾する事項については各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、実施例EX1_1~EX1_7の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0075】
[実施例EX1_1]
実施例EX1_1を説明する。
図11に実施例EX1_1に係るクランプ回路50aの構成を示す。クランプ回路50aをクランプ回路116として用いることができる。クランプ回路50aは、抵抗51及び52と、アンプ53と、Nチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタ54と、スイッチ55と、を備える。抵抗51の一端には出力電圧Voutが加わり、抵抗51の他端はノード56にて抵抗52の一端に接続され、抵抗52の他端はグランドに接続される。アンプ53の非反転入力端子はノード56に接続され、アンプ53の出力端子はトランジスタ54のゲートに接続される。トランジスタ54のドレインとアンプ53の反転入力端子はノード57にて共通接続され、トランジスタ54のソースはグランドに接続される。
【0076】
このため、抵抗51及び52間の接続ノード56に出力電圧Voutの分圧が加わり、アンプ53及びトランジスタ54の働きにより、ノード57に、ノード56での電圧と同じ電圧値を持つ電圧が加わる。ノード57に加わる電圧がクランプ電圧Vclmpとして機能する。ノード57とノードNDAとの間にスイッチ55が挿入される。スイッチ55はロジック回路120によりオン/オフ状態が制御される。スイッチ55がオンであるときにのみノード57での電圧(即ちクランプ電圧Vclmp)がノードNDAに設定されてノードNDAでの電圧がノード57での電圧(即ちクランプ電圧Vclmp)に維持される。これはクランプ動作が実行されることに等しい。スイッチ55がオフであるときには、クランプ電圧Vclmpが加わるノード57とノードNDAとの間の接続が遮断されて、クランプ動作は停止される。
【0077】
クランプ回路50aを用いることにより、入力電圧Vinの低下に伴い出力電圧Voutが目標電圧Vtgより低下している期間中に、コンデンサ115bの充電電圧を出力電圧Voutに応じた適正電圧にて待機させておくことができ、入力電圧Vinの復帰後にはPWM制御のオンデューティを即座に最適なものにすることが可能となる。
【0078】
尚、抵抗51及び52とアンプ53とトランジスタ54とでクランプ回路が形成され、そのクランプ回路とノードNDAとの間にスイッチ55が挿入されると考えるようにしても良い。また、トランジスタ54をバイポーラトランジスタに変更する変形等も適宜可能である。
【0079】
[実施例EX1_2]
実施例EX1_2を説明する。
図12に実施例EX1_2に係るクランプ回路50bの構成を示す。クランプ回路50bをクランプ回路116として用いることができる。クランプ回路50bは抵抗51及び52とスイッチ55とを備える。クランプ回路50bは、
図11のクランプ回路50aからアンプ53及びトランジスタ54を削除したものに相当する。即ち、クランプ回路50bにおいて、抵抗51の一端には出力電圧Voutが加わり、抵抗51の他端はノード56にて抵抗52の一端に接続され、抵抗52の他端はグランドに接続される。クランプ回路50bでは、抵抗51及び52間の接続ノード56に出力電圧Voutの分圧が加わり、ノード56に加わる電圧そのものがクランプ電圧Vclmpとして機能する。
【0080】
クランプ回路50bにおいて、ノード56とノードNDAとの間にスイッチ55が挿入される。スイッチ55はロジック回路120によりオン/オフ状態が制御される。スイッチ55がオンであるときにのみノード56での電圧(即ちクランプ電圧Vclmp)がノードNDAに設定されてノードNDAでの電圧がノード56での電圧(即ちクランプ電圧Vclmp)に維持される。これはクランプ動作が実行されることに等しい。スイッチ55がオフであるときには、クランプ電圧Vclmpが加わるノード56とノードNDAとの間の接続が遮断されて、クランプ動作は停止される。
【0081】
クランプ回路50bを用いてもクランプ回路50aを用いた場合と同様の作用及び効果が得られる。尚、抵抗51及び52によりクランプ回路が形成され、そのクランプ回路とノードNDAとの間にスイッチ55が挿入されると考えるようにしても良い。
【0082】
[実施例EX1_3]
実施例EX1_3を説明する。実施例EX1_3では、
図11のクランプ回路50a又は
図12のクランプ回路50bが
図3のクランプ回路116として用いられることを前提とする。クランプ回路50a又は50bが用いられる場合、クランプ電圧Vclmpは出力電圧Voutに比例することになる。この前提の下、実施例EX1_3では、
図13に示す如く、ランプ電圧Vrampの振幅を入力電圧Vinに比例させる。このとき、ランプ電圧Vrampの下限電圧値Vramp_MINを固定した上で、差分電圧値(Vramp_MAX-Vramp_MIN)を入力電圧Vinに比例させると良い(
図4参照)。
【0083】
図14(a)及び(b)を参照し、実施例EX1_3の方法の意義を説明する。今、説明の具体化のため、下限電圧値Vramp_MINは0Vであって、且つ、目標電圧Vtgは5Vであるとする。また、入力電圧Vinが10Vであるときのランプ電圧Vrampの振幅は1.0Vであるとする。そうすると、入力電圧Vinが20Vであるときのランプ電圧Vrampの振幅は2.0Vである。
図14(a)は、入力電圧Vinが10Vに維持されているときの対比電圧Vc及びランプ電圧Vramp並びに信号Spwmの波形を表し、
図14(b)は、入力電圧Vinが20Vに維持されているときの対比電圧Vc及びランプ電圧Vramp並びに信号Spwmの波形を表す。
【0084】
出力電圧Voutが目標電圧Vtgである5Vにて安定化され且つ出力電流Ioutが一定であるとの仮定の下、PWM制御におけるオンデューティ(各PWM周期において出力ハイ状態の期間が占める割合)は、入力電圧Vinが10Vであれば50%となり、入力電圧Vinが20Vであれば25%となる。これは、入力電圧Vinが10Vであるとき対比電圧Vcは0.5V近辺に保たれ、入力電圧Vinが20Vであるときも対比電圧Vcは0.5V近辺に保たれることを意味する。
【0085】
目標電圧Vtgが5Vである場合を考えたが、仮に、目標電圧Vtgが5Vの1.2倍の6Vとなれば入力電圧Vinに関係なく対比電圧Vcは0.6V近辺に保たれ、目標電圧Vtgが5Vの0.8倍の4Vとなれば入力電圧Vinに関係なく対比電圧Vcは0.4V近辺に保たれる。即ち、ランプ電圧Vrampの振幅を入力電圧Vinに比例させた場合、PWM制御での対比電圧Vcは出力電圧Voutにのみ依存することとなる。
【0086】
そうすると、クランプ電圧Vclmpを出力電圧Voutに応じて決めるようにすれば(例えば、PWM制御にて出力電圧Voutが目標電圧Vtgにて安定化されているときの対比電圧Vcの値に一致又は近似する値をクランプ電圧Vclmpに持たせれば)、入力電圧Vinの低下に伴い出力電圧Voutが目標電圧Vtgより低下している期間中に、コンデンサ115bの充電電圧を出力電圧Voutに応じた適正電圧にて待機させておくことができ、入力電圧Vinの復帰後にはPWM制御のオンデューティを即座に最適なものにすることが可能となる。
【0087】
図15に、実施例EX1_3に係るスイッチング電源装置1Aの一部波形を示す。
図15において、実線による折れ線631、破線による折れ線632、一点鎖線による線分633、実線による折れ線635は、夫々、実施例EX1_3に係るスイッチング電源装置1Aでの入力電圧Vin、出力電圧Vout、目標電圧Vtg、ランプ電圧Vrampの概略波形を表している。実線による折れ線637は、実線による折れ線638は、夫々、実施例EX1_3に係るスイッチング電源装置1Aでの信号Spwm、ゲート信号G1の概略波形を表しており、実線による折れ線639は、クランプ回路116の作動状態を表している。破線波形640は、実施例EX1_3に係るスイッチング電源装置1AでのノードND
Aの電圧波形を表している。
図15に示されるタイミングT
A1~T
A5の意義は上述した通りである(
図10参照)。クランプ回路116の動作中においては、ノードND
Aの電圧が出力電圧Voutに応じた適正電圧にて保持される。
【0088】
尚、ランプ電圧Vrampの振幅を入力電圧Vinに応じて設定する場合、ランプ電圧生成回路117は、PWM周期ごとにPWM周期の開始時点の入力電圧Vinに基づきランプ電圧Vrampの振幅を設定できる。ここで、PWM周期の開始時点とは、ランプ電圧Vrampが最小電圧(Vramp_MIN)をとるタイミングを指すものとする。従って例えば、第i番目のPWM周期の途中で入力電圧Vinの値が第1電圧値から第2電圧値へと変わった場合、第i番目のPWM周期におけるランプ電圧Vrampの振幅は第1電圧値に比例し、第(i+1)番目のPWM周期におけるランプ電圧Vrampの振幅は第2電圧値に比例することになる(iは整数)。
【0089】
このように 実施例EX1_1又はEX1_2と実施例EX1_3とを組み合わせることが好ましいが、実施例EX1_1又はEX1_2においてランプ電圧Vrampの振幅を入力電圧Vinに依存することなく固定させておくことも可能である。
【0090】
[実施例EX1_4]
実施例EX1_4を説明する。
図16に実施例EX1_4に係るクランプ回路50cの構成を示す。クランプ回路50cをクランプ回路116として用いることができる。クランプ回路50cは、所定の固定電圧をクランプ電圧Vclmpとして発生する電圧源58と、スイッチ55と、を備え、所定の固定電圧が加わるノードとノードND
Aとの間にスイッチ55が挿入される。
【0091】
スイッチ55はロジック回路120によりオン/オフ状態が制御される。スイッチ55がオンであるときにのみ固定電圧としてのクランプ電圧VclmpがノードNDAに設定されてノードNDAでの電圧が当該固定電圧(即ちクランプ電圧Vclmp)に維持される。これはクランプ動作が実行されることに等しい。スイッチ55がオフであるときには、固定電圧が加わるノードとノードNDAとの間の接続が遮断されて、クランプ動作は停止される。
【0092】
入力電圧Vinの変動範囲が限定される用途などでは、実施例EX1_4でも十分でありえる。例えば、入力電圧Vinが目標電圧Vtgよりも高い第1所定電圧及び目標電圧Vtgよりも低い第2所定電圧の何れかにしかならない用途では、第1所定電圧に基づき上記固定電圧を最適化しておけば良い。
【0093】
[実施例EX1_5]
実施例EX1_5を説明する。クランプ回路116内にクランプダイオード(不図示)を設け、クランプ動作において、クランプダイオードを通じてノードNDAの電圧をクランプするようにしても良い。この場合、クランプ動作は、ノードNDAの電圧がクランプ電圧Vclmpより低くなることを許容しつつ、ノードNDAの電圧がクランプ電圧Vclmpより高まることを制限(禁止)する動作となる。
【0094】
即ち例えば、
図11のクランプ回路50aをクランプ回路116として用いる場合にあっては、クランプダイオードのアノードがスイッチ55の一端に接続され且つクランプダイオードのカソードがノード57に接続されるよう、ノード57とスイッチ55との間にクランプダイオードを挿入しても良い。この場合には、ノード57での電圧よりクランプダイオードの順方向電圧だけ高い電圧がクランプ電圧Vclmpとして機能することになる。
【0095】
同様に例えば、
図12のクランプ回路50bをクランプ回路116として用いる場合にあっては、クランプダイオードのアノードがスイッチ55の一端に接続され且つクランプダイオードのカソードがノード56に接続されるよう、ノード56とスイッチ55との間にクランプダイオードを挿入しても良い。この場合には、ノード56での電圧よりクランプダイオードの順方向電圧だけ高い電圧がクランプ電圧Vclmpとして機能することになる。
【0096】
同様に例えば、
図16のクランプ回路50cをクランプ回路116として用いる場合にあっては、クランプダイオードのアノードがスイッチ55の一端に接続され且つクランプダイオードのカソードが電圧源58の出力端(電圧源58から出力される固定電圧が加わる端子)に接続されるよう、電圧源58とスイッチ55との間にクランプダイオードを挿入しても良い。この場合には、電圧源58の出力電圧よりクランプダイオードの順方向電圧だけ高い電圧がクランプ電圧Vclmpとして機能することになる。
【0097】
[実施例EX1_6]
実施例EX1_6を説明する。対比電圧Vc及びランプ電圧Vramp間の高低関係に基づき(換言すれば信号Spwmに基づき)クランプ動作の実行有無制御を行う方法を上述したが、入力電圧Vin及び出力電圧Vout間の比に基づき、クランプ動作の実行有無制御を行っても良い。入力電圧Vinに目標電圧Vtgを下回るような低下が生じたとき、比“Vout/Vin”が随分と大きくなり、比“Vin/Vout”が随分と小さくなるからである。
【0098】
入力電圧Vin及び出力電圧Vout間の比には、入力電圧Vinに対する出力電圧Voutの比である第1の比(Vout/Vin)と、出力電圧Voutに対する入力電圧Vinの比である第2の比(Vin/Vout)と、がある。
【0099】
第1の比(Vout/Vin)を用いる場合には以下のようにすれば良い。
ロジック回路120は、第1の比(Vout/Vin)を監視し、クランプ動作が停止されている状態を起点として、第1の比(Vout/Vin)が所定の判定値Rth_a1以上となるとクランプ動作を実行させる。判定値Rth_a1は1未満であって且つ1に近い所定値(例えば0.9)である。入力電圧Vinが目標電圧Vtg未満となっている又は目標電圧Vtg以上であるが目標電圧Vtgに十分に近いときに、第1の比(Vout/Vin)が所定の判定値Rth_a1以上となるよう、判定値Rth_a1が設定される。このため、第1の比(Vout/Vin)が判定値Rth_a1以上であることに基づきクランプ動作を実行されているときには、オフスキップ制御も実行されていることが見込まれる。即ち、オフスキップ制御の実行に連動してクランプ動作が実行されることになる。
クランプ動作の実行開始後、ロジック回路120は、第1の比(Vout/Vin)が所定の判定値Rth_a2以下となるとクランプ動作を停止させる。判定値Rth_a2は、上記判定値Rth_a1よりも所定のヒステリシス値だけ低い。
【0100】
第2の比(Vin/Vout)を用いる場合には以下のようにすれば良い。
ロジック回路120は、第2の比(Vin/Vout)を監視し、クランプ動作が停止されている状態を起点として、第2の比(Vin/Vout)が所定の判定値Rth_b1以下となるとクランプ動作を実行させる。判定値Rth_b1は1より大きく且つ1に近い所定値(例えば1.1)である。入力電圧Vinが目標電圧Vtg未満となっている又は目標電圧Vtg以上であるが目標電圧Vtgに十分に近いときに、第2の比(Vin/Vout)が所定の判定値Rth_b1以下となるよう、判定値Rth_b1が設定される。このため、第2の比(Vin/Vout)が判定値Rth_b1以下であることに基づきクランプ動作を実行されているときには、オフスキップ制御も実行されていることが見込まれる。即ち、オフスキップ制御の実行に連動してクランプ動作が実行されることになる。
クランプ動作の実行開始後、ロジック回路120は、第2の比(Vin/Vout)が所定の判定値Rth_b2以上となるとクランプ動作を停止させる。判定値Rth_b2は、上記判定値Rth_b1よりも所定のヒステリシス値だけ高い。
【0101】
[実施例EX1_7]
実施例EX1_7を説明する。位相補償回路115において、上述の抵抗115a及びコンデンサ115bに加えて、抵抗115a及びコンデンサ115b以外の受動素子が設けられていても良い。例えば、抵抗115a及びコンデンサ115bの直列回路に対して並列に他の抵抗が接続されていても良いし、抵抗115a及びコンデンサ115bの直列回路に対して並列に他のコンデンサが接続されることがあっても良い。
【0102】
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態及び後述の第3実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2及び第3実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2及び第3実施形態にも適用される。第2実施形態の記載を解釈するにあたり、第1及び第2実施形態間で矛盾する事項については第2実施形態の記載が優先されて良い(後述の第3実施形態についても同様)。矛盾の無い限り、第1~第3実施形態の内、任意の複数の実施形態を組み合わせても良い。
【0103】
本発明が適用されるスイッチング電源装置1の制御方式は任意であり、従って例えば、
図17に示すスイッチング電源装置1Bを構成しても良い。スイッチング電源装置1Bは
図1のスイッチング電源装置1の他の例である。スイッチング電源装置1Bでは電圧モード制御方式が採用されている。スイッチング電源装置1Bには、スイッチング電源IC2としてスイッチング電源IC2Bが設けられる。スイッチング電源IC2Bには、出力段回路MMと、主制御回路3として主制御回路3Bが設けられる。スイッチング電源装置1、スイッチング電源IC2、主制御回路3について上述した事項は、矛盾なき限り全て、スイッチング電源装置1B、スイッチング電源IC2B、主制御回路3Bにも適用される。
【0104】
主制御回路3Bは、エラーアンプ214と、位相補償回路215と、クランプ回路216と、ランプ電圧生成回路217と、コンパレータ(PWMコンパレータ)218と、ロジック回路220と、を備える。
【0105】
エラーアンプ214は、電流出力型のトランスコンダクタンスアンプである。エラーアンプ214の反転入力端子には帰還端子FBに加わる電圧(即ち帰還電圧Vfb)が供給され、エラーアンプ214の非反転入力端子には所定の基準電圧Vref2が供給される。基準電圧Vref2は、正の所定電圧値を有する直流電圧であり、IC2B内の図示されない基準電圧生成回路にて生成される。エラーアンプ214は、帰還電圧Vfbと基準電圧Vref2との差分に応じた誤差電流信号I3を自身の出力端子から出力する。誤差電流信号I3による電荷は、誤差信号配線である配線WR3に対して入出力される。具体的には,エラーアンプ214は、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref2よりも低いときには配線WR3の電位が上がるようエラーアンプ214から配線WR3に向けて誤差電流信号I3による電流を出力し、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref2よりも高いときには配線WR3の電位が下がるよう配線WR3からエラーアンプ214に向けて誤差電流信号I3による電流を引き込む。帰還電圧Vfb及び基準電圧Vref2間の差分の絶対値が増大するにつれて、誤差電流信号I3による電流の大きさも増大する。
【0106】
位相補償回路215は、配線WR3とグランドとの間に設けられ、電流信号I3の入力を受けて配線WR3上に対比電圧Vcを生成する。第2実施形態における対比電圧Vcは、エラーアンプ214及び位相補償回路215により配線WR3上に生成される電圧を指すものとする。位相補償回路215は対比電圧Vcの位相を補償するために設けられる。位相補償回路215は抵抗215a及びコンデンサ215bの直列回路を含み、具体的には抵抗215aの一端が配線WR3に接続され、抵抗215aの他端がコンデンサ215bを介してグランドに接続される。抵抗215aの抵抗値及びコンデンサ215bの静電容量値を適切に設定することにより対比電圧Vcの位相を補償して出力帰還ループの発振を防ぐことができる。抵抗215a、コンデンサ215bは、夫々、対比電圧Vcの位相を補償するための位相補償用抵抗、位相補償用コンデンサとして機能する。抵抗215a及びコンデンサ215b間の接続ノードをノードNDBと称する。
【0107】
クランプ回路216はノードNDBに接続され、必要なタイミングにおいてノードNDBの電圧を、自身が設定するクランプ電圧Vclmpにてクランプする。
【0108】
ランプ電圧生成回路217は、第1実施形態におけるランプ電圧生成回路117と同じものであって、第1実施形態におけるランプ電圧生成回路117と同一の動作を行う。
【0109】
コンパレータ218は、第1実施形態におけるコンパレータ118と同じものであって、第1実施形態におけるコンパレータ118と同一の動作を行う。但し、コンパレータ218の非反転入力端子には配線上WR3上の対比電圧Vcが供給され、コンパレータ218の反転入力端子にはランプ電圧生成部217からのランプ電圧Vrampが供給される。コンパレータ218は、対比電圧Vcをランプ電圧Vrampと比較して比較結果を示すパルス幅変調信号Spwmを出力する。パルス幅変調信号Spwmは、上述したように、対比電圧Vcがランプ電圧Vrampよりも高い期間においてハイレベルとなり、対比電圧Vcがランプ電圧Vrampよりも低い期間においてローレベルとなる。
【0110】
ロジック回路220は、第1実施形態におけるロジック回路120と同じものであって、第1実施形態におけるロジック回路120と同一の動作を行う。但し、ロジック回路220へのパルス幅変調信号Spwmはコンパレータ218から供給される。故に、ロジック回路220は、コンパレータ218からのパルス幅変調信号Spwmに基づくゲート信号G1及びG2をトランジスタM1及びM2に供給することで出力段回路MMにスイッチング動作を行わせる。スイッチング動作では、信号Spwmに基づきトランジスタM1及びM2が交互にオン、オフされる。エラーアンプ214は、帰還電圧Vfbと基準電圧Vref2とが等しくなるように電流信号I3を生成するため、スイッチング動作の実行を通じ、出力電圧Voutが、基準電圧Vref3と抵抗R1及びR2による分圧比とに応じた所定の目標電圧Vtgにて安定化される。
【0111】
上述したように、基本的には対比電圧Vcはランプ電圧Vrampの変動範囲内に収まり、対比電圧Vcがランプ電圧Vrampの変動範囲内に維持されているときには、第1実施形態で述べたPWM制御が行われる。
【0112】
クランプ回路216の構成はクランプ回路116の構成と同じであり、オフスキップ制御の動作条件及び動作内容も第1実施形態で述べた通りである。この他、実施例EX1_1~EX1_7に示した内容も第2実施形態に適用できる。
【0113】
第1実施形態の記載を第2実施形態に適用する場合、
第1実施形態におけるアンプ114、位相補償回路115、クランプ回路116、ランプ電圧生成回路117、コンパレータ118、ロジック回路120を、第2実施形態では、夫々、アンプ214、位相補償回路215、クランプ回路216、ランプ電圧生成回路217、コンパレータ218、ロジック回路220に読み替え、且つ、
第1実施形態における電流信号I2、配線WR2、抵抗115a、コンデンサ115b、ノードNDAを、第2実施形態では、夫々、電流信号I3、配線WR3、抵抗215a、コンデンサ215b、ノードNDBに読み替えれば良い。
【0114】
従って例えば、
図17のクランプ回路216として
図11のクランプ回路50aを用いる場合にあっては、クランプ回路50aにおけるノード57とノードND
Bとの間にスイッチ55が挿入され、当該スイッチ55のオン/オフ状態がロジック回路220により制御されることになる。
【0115】
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態では、第1又は第2実施形態と組み合わせて実施可能な技術、又は、第1及び第2実施形態に適用可能な変形技術を説明する。第3実施形態は、互いに組み合わせ可能な以下の実施例EX3_1~EX3_3を含む。
【0116】
[実施例EX3_1]
実施例EX3_1を説明する。
図18に、スイッチング電源装置1が組み込まれたシステムSYSの全体構成を示す。当該システムSYSは自動車等の車両に搭載されて良く、この場合、システムSYSは車載システムとして機能する。システムSYSにおけるスイッチング電源装置1は上述のスイッチング電源装置1A又は1Bであって良い。システムSYSは、スイッチング電源装置1と、スイッチング電源装置1に対して入力電圧Vinを供給する電圧源5と、スイッチング電源装置1からの出力電圧Voutを夫々に受けるDC/DCコンバータ6、LDO (Low Drop Out)レギュレータ7及び機能ブロック8を備える。出力電圧Voutの目標電圧Vtgは、例えば5V又は3.3Vである。
【0117】
電圧源5は車両に搭載されたバッテリであって良い。DC/DCコンバータ6及びLDOレギュレータ7は、夫々に、スイッチング電源装置1の出力電圧Voutに基づいて所望の直流電圧を生成し、生成した直流電圧を機能ブロック8に供給する。機能ブロック8は、スイッチング電源装置1からの出力電圧Vout又はDC/DCコンバータ6若しくはLDOレギュレータ7からの直流電圧に基づいて動作する1以上の電子機器から成る。システムSYSが車載システムである場合、電子機器は車両に搭載された任意の電子機器であって良く、例えば、カーナビゲーション装置、デジタルメータ、エアバック、各種のECU(Electronic Control Unit)、センサ、又は、先進運転支援システムを構成する各部品である。
【0118】
車載用途において、電圧源5としてのバッテリの出力電圧は、エンジンの始動時等において急激に低下し、その後、上昇する。このため、車載部品規格においてバッテリの出力電圧変動に対する試験が定められている。このようなバッテリの出力電圧変動に対して、スイッチング電源装置1の出力電圧Voutに大きなオーバーシュートが発生すると、後段の電子機器に悪影響が生じ、電子機器を破損させるおそれもある。スイッチング電源装置1を用いれば、バッテリの出力電圧変動に対して出力電圧Voutのオーバーシュートを極めて小さく抑えることが可能となる(例えば50mV以下のオーバーシュート)。
【0119】
また、オーバーシュートを小さくできるということは、出力コンデンサC1の容量の削減を許容できることを意味し、オーバーシュートを規定値以下に抑えるために必要な出力コンデンサC1の容量を低く抑えることが可能となる。これは、コスト削減及び省資源化に寄与する。
【0120】
[実施例EX3_2]
実施例EX3_2を説明する。スイッチング電源IC2(2A、2B)において、帰還端子FBに出力電圧Voutを直接入力することも可能であり、この場合、帰還電圧Vfbは出力電圧Voutそのものとなる。帰還電圧Vfbが出力電圧Voutそのものであっても、帰還電圧Vfbが出力電圧Voutに応じた帰還電圧であることに変わりは無い。
【0121】
[実施例EX3_3]
実施例EX3_3を説明する。
【0122】
スイッチング電源IC2(2A、2B)の各回路素子は半導体集積回路の形態で形成され、当該半導体集積回路を、樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで半導体装置が構成される。但し、複数のディスクリート部品を用いてIC2(2A、2B)内の回路と同等の回路を構成するようにしても良い。IC2(2A、2B)内に含まれるものとして上述した幾つかの回路素子(例えばトランジスタM1及びM2)は、IC2(2A、2B)外に設けられてIC2(2A、2B)に外付け接続されても良い。
【0123】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係を逆にしても良い。
【0124】
トランジスタM1をPチャネル型のMOSFETにて構成するようにしても良く、この場合には、上述のスイッチング動作が実現されるように、トランジスタM1のゲートに供給される電圧レベルが上述のものから変形される。この他、FETのチャネル型は任意に変更可能である。
【0125】
上述の各トランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述されたトランジスタを、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0126】
<<本発明の考察>>
上述の実施形態にて具体化された本発明について考察する。
【0127】
本発明の一側面に係るスイッチング電源装置は、入力電圧(Vin)の印加端と出力電圧(Vout)の印加端との間に設けられた出力トランジスタ(M1)を有し、前記出力トランジスタのスイッチングを含むスイッチング動作を通じて前記入力電圧から前記出力電圧を生成するための出力段回路(MM)と、前記出力電圧に応じた帰還電圧(Vfb)に基づき所定のPWM周波数にて前記出力段回路をスイッチング動作させるPWM制御を実行可能な主制御回路(3、3A、3B)と、を備え、前記主制御回路は、前記帰還電圧に応じて特定配線(WR2、WR3)上に対比電圧(Vc)を生成する対比電圧生成部と、前記特定配線に接続されて前記対比電圧の位相を補償する位相補償回路(115、215)と、前記PWM周期にて電圧値が周期的に変化するランプ電圧(Vramp)を生成するランプ電圧生成回路(117、217)と、前記対比電圧と前記ランプ電圧を比較して比較結果を示す信号(Spwm)を出力するPWMコンパレータ(118、218)と、を有して、前記PWMコンパレータの出力信号に基づき前記出力段回路を制御し、前記位相補償回路は、前記特定配線と所定ノード(NDA、NDB)との間に設けられた位相補償用抵抗(115a、215a)と、前記所定ノードと所定電位を持つ基準導電部(グランド)との間に設けられた位相補償用コンデンサ(115b、215b)と、を有し、前記主制御回路は、クランプ電圧(Vclmp)を生成して前記所定ノードにおける電圧を前記クランプ電圧にてクランプするクランプ動作を実行可能なクランプ回路(116、216)を更に有することを特徴とする。
【0128】
上記スイッチング電源装置では、出力電圧と出力電圧の目標電圧との誤差を位相補償用コンデンサを用い比較的長時間に亘って積算し、比較的緩やかにPWM制御におけるオンデューティを調整することで、出力電圧を高精度に安定化させることができる。この種のスイッチング電源装置において、入力電圧の低下に伴い出力電圧が目標電圧より低下している期間では上記誤差が位相補償用コンデンサに積算され、入力電圧の復帰後に、その積算内容(出力電圧が目標電圧より低かったという情報)が出力電圧を過度に押し上げる方向に働くことが懸念される(大きなオーバーシュートの発生が懸念される)。これを考慮し、本発明に係るスイッチング電源装置では、位相補償用コンデンサが接続される所定ノードでの電圧をクランプ可能にしている。このため、入力電圧の低下に伴い出力電圧が目標電圧より低下している期間中に上記誤差を位相補償用コンデンサに積算させずに、位相補償用コンデンサの充電電圧をクランプ電圧にてクランプしておくことが可能となる。結果、クランプ電圧を適切に設定しておくことを通じ、入力電圧の復帰直後に発生しうるオーバーシュートを抑制することが可能となる。
【0129】
本発明の一側面に係るスイッチング電源装置において、例えば、前記対比電圧生成部は、前記帰還電圧に応じて生成された信号(Verr)に基づき又は前記帰還電圧に基づき、前記特定配線(WR2、WR3)との間で電流を入出力するアンプ(114、214)を含んでいると良い。
【0130】
尚、
図3のIC2Aにおいては、アンプ114と、対比電圧Vcの元となる信号を生成する回路(アンプ111、位相補償回路112及び電流センサ113を含む)と、によって、対比電圧生成部が構成される。
図3の位相補償回路115も対比電圧生成部の構成要素に含まれると解することも可能である。
図17のIC2Bにおいては、アンプ214によって対比電圧生成部が構成される。
図17の位相補償回路215も対比電圧生成部の構成要素に含まれると解することも可能である。
【0131】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0132】
1、1A、1B スイッチング電源装置
2、2A、2B スイッチング電源IC
3、3A、3B 主制御回路
MM 出力段回路
Vc 対比電圧
Vramp ランプ電圧
115、215 位相補償回路
116、216 クランプ回路
117、217 ランプ電圧生成回路
118、218 コンパレータ(PWMコンパレータ)