IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 文化シヤッター株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-建具 図1
  • 特許-建具 図2
  • 特許-建具 図3
  • 特許-建具 図4
  • 特許-建具 図5
  • 特許-建具 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E05D 13/00 20060101AFI20231211BHJP
   E05F 5/02 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
E05D13/00 A
E05F5/02 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020034902
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021139108
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴博
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-75382(JP,U)
【文献】実開昭55-80480(JP,U)
【文献】実開昭56-169068(JP,U)
【文献】実開昭55-80452(JP,U)
【文献】実開平4-53986(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 13/00
E05F 5/02
E06B 3/42-3/46
E06B 3/88
E06B 7/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸幅方向へスライドして開閉する開閉体と、前記開閉体の上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記開閉体の下端側を開閉方向へ導く下枠とを備えた建具において、
前記開閉体は、開閉体本体と、上方向きの抜止め片を前記上枠に近接又は接触させて前記開閉体本体の上方への移動を規制する抜止装置と、前記開閉体本体から戸幅方向外側へ突出した緩衝部材とを具備し、
前記抜止装置は、前記開閉体本体における戸幅方向端部の上端側に設けられ、
前記緩衝部材は、前記抜止装置の下側に並ぶようにして設けられ
前記抜止め片は上下方向の長孔を有し、
前記抜止装置は螺合部材を具備し、この螺合部材は、回転操作可能な頭部を後方へ向けるとともに、ネジ軸を、前記抜止め片の前記長孔に挿通して前記抜止め片よりも戸幅方向内側の部位に螺合して固定されていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記抜止装置は、前記緩衝部材と略同じ外観形状を有し、前記緩衝部材に対しその上方側に連続するように設けられていることを特徴とする請求項1記載の建具。
【請求項3】
前記抜止装置は、前記緩衝部材と略同じ外観形状を有するとともに前記緩衝部材に連続してその上方側に位置する支持ブラケットを備え、
前記支持ブラケットは、内部に上下方向へわたるスライド穴を有し、このスライド穴に、前記抜止め片を上下方向へスライド可能に内在していることを特徴とする請求項2記載の建具。
【請求項4】
前記支持ブラケットを、合成樹脂材料によって形成したことを特徴とする請求項3記載の建具。
【請求項5】
前記支持ブラケットは、戸幅方向の端部側に、前記抜止め片をスライド操作するためのスライド操作窓を開口していることを特徴とする請求項3又は4記載の建具。
【請求項6】
前記抜止装置を、第1の抜止装置として前記開閉体本体の戸幅方向の一端部に設け、その他端部には、上方向きの抜止め片を前記上枠に近接又は接触させて、前記開閉体本体の上方への移動を規制する第2の抜止装置が設けられていることを特徴とする請求項1~何れか1項記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上枠と下枠の間で開閉体を横幅方向へ開閉動作させる建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、戸枠と、下側レール装置と、上側レール装置と、前後一対の引き違い戸と、引き違い戸の上方向への移動を規制して該引き違い戸の外れを防止するために上枠の下面に取付けられたスペーサ部材とを備え、前記スペーサ部材を各引き違い戸に対する幅方向中央寄りに部分的に配置したものがある。
この従来技術では、開閉時の振動等により引き違い戸が持ち上がった場合に、この引き違い戸をスペーサ部材に当接させて下側レール装置から外れるのを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-77630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術によれば、例えば地震や強風等により上下方向及び厚さ方向へ複雑に振動した場合、各引き違い戸は、上記スペーサとの当接箇所を支点に戸幅方向の一端側が上昇するようにして傾き、この傾斜状態で厚さ方向へ移動して、下側レール装置から外れてしまう可能性がある。
そこで、上記スペーサの戸幅方向の配置を変更することが考えられるが、引き違い戸には、戸幅方向の端部にゴム等からなる緩衝部材が設けられる場合があり、この緩衝部材による緩衝効果を保持するように工夫を要する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するために、以下の構成を具備するものである。
戸幅方向へスライドして開閉する開閉体と、前記開閉体の上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記開閉体の下端側を開閉方向へ導く下枠とを備えた建具において、前記開閉体は、開閉体本体と、上方向きの抜止め片を前記上枠に近接又は接触させて前記開閉体本体の上方への移動を規制する抜止装置と、前記開閉体本体から戸幅方向外側へ突出した緩衝部材とを具備し、前記抜止装置は、前記開閉体本体における戸幅方向端部の上端側に設けられ、前記緩衝部材は、前記抜止装置の下側に並ぶようにして設けられ、前記抜止め片は上下方向の長孔を有し、前記抜止装置は螺合部材を具備し、この螺合部材は、回転操作可能な頭部を後方へ向けるとともに、ネジ軸を、前記抜止め片の前記長孔に挿通して前記抜止め片よりも戸幅方向内側の部位に螺合して固定されていることを特徴とする建具。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、戸幅方向端部側の緩衝部材による緩衝効果を得られるようにして、開閉体本体が上下枠から外れてしまうのを効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る建具の一例を示す正面図である。
図2】同建具の戸先方向の端部側を示す要部斜視図であり、硝子板は省略している。
図3】同建具の分解斜視図であり、硝子板は省略している。
図4】第1の抜止装置を示す分解斜視図である。
図5】同建具の要部切欠断面図であり、工具により抜止め片を上方へスライド操作している様子を示す。
図6】同建具の要部を戸先方向側から視た図であり、抜止め片を上方へスライド操作している様子を(a)(b)に順次に示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、戸幅方向へスライドして開閉する開閉体と、前記開閉体の上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記開閉体の下端側を開閉方向へ導く下枠とを備えた建具において、前記開閉体は、開閉体本体と、上方向きの抜止め片を前記上枠に近接又は接触させて前記開閉体本体の上方への移動を規制する抜止装置と、前記開閉体本体から戸幅方向外側へ突出した緩衝部材とを具備し、前記抜止装置は、前記開閉体本体における戸幅方向端部の上端側に設けられ、前記緩衝部材は、前記抜止装置の下側に並ぶようにして設けられている(図1図6参照)。
【0009】
第2の特徴として、前記抜止装置は、前記緩衝部材と略同じ外観形状を有し、前記緩衝部材に対しその上方側に連続するように設けられている(図2及び図3参照)。
【0010】
第3の特徴として、前記抜止装置は、前記緩衝部材と略同じ外観形状を有するとともに前記緩衝部材に連続してその上方側に位置する支持ブラケットを備え、前記支持ブラケットは、内部に上下方向へわたるスライド穴を有し、このスライド穴に、前記抜止め片を上下方向へスライド可能に内在している(図3図5参照)。
【0011】
第4の特徴として、前記支持ブラケットを、合成樹脂材料によって形成した。
【0012】
第5の特徴として、前記支持ブラケットは、戸幅方向の端部側に、前記抜止め片をスライド操作するためのスライド操作窓を開口している(図2図3図5及び図6)。
【0013】
第6の特徴として、前記抜止め片は上下方向の長孔を有し、前記抜止装置は螺合部材を具備し、この螺合部材は、回転操作可能な頭部を後方へ向けるとともに、ネジ軸を、前記抜止め片の前記長孔に挿通して前記抜止め片よりも戸幅方向内側の部位に螺合して固定される(図5参照)。
ここで、前記「後方へ」とは、ネジ軸の先端方向を前方とした場合の後方を意味する。
【0014】
第7の特徴として、前記抜止装置を、第1の抜止装置として前記開閉体本体の戸幅方向の一端部に設け、その他端部には、上方向きの抜止め片を前記上枠に近接又は接触させて、前記開閉体本体の上方への移動を規制する第2の抜止装置が設けられている(図1参照)。
【0015】
なお、本明細書中、「戸幅方向」とは、開閉体の横幅方向を意味する。「戸厚方向」とは、開閉体本体の厚みの方向を意味する。
【0016】
また、「戸幅方向外側」とは、開閉体の戸幅方向に沿って開閉体の横幅寸法の中央部から離れる方向側を意味する。
また、「戸幅方向内側」とは、開閉体の戸幅方向に沿って開閉体の横幅寸法の中心部へ向かう方向である。
【0017】
また、「戸厚方向外側」とは、開閉体の戸厚方向に沿って開閉体の厚み寸法の中央部から離れる方向側を意味する。
また、「戸厚方向内側」とは、開閉体の戸厚方向に沿って開閉体の厚み寸法の中央部へ向かう方向側を意味する。
【0018】
また、「戸先方向」は、開閉体の閉鎖方向と同方向であり、「戸尻方向」は、開閉体の開放方向と同方向である。
【0019】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る建具の一例を示す正面図である。
この建具Aは、戸幅方向へスライドして開閉する開閉体1と、開閉体1の上端側を開閉方向(図示例によれば略水平方向)へ案内し導く上枠20と、開閉体1の下端側を開閉方向へ案内し導く下枠30と、これら上枠20及び下枠30をその両側で支持する左右の縦枠40,40とを備える。
【0021】
なお、図1の例示によれば、戸先側は右側であり、戸尻側は左側である。
また、図1に示す建具Aは、上枠20、下枠30及び左右の縦枠40,40内に、戸厚方向に並ぶ同構造の二枚の開閉体1を具備して、引き違い式の障子窓を構成しているが、図面中では、前記二枚の開閉体1のうちの一方を省略している。
【0022】
開閉体1は、略矩形板状の開閉体本体10と、戸先側において上方向きの抜止め片51を上枠20に近接又は接触させて開閉体本体10の上方への移動を規制する第1の抜止装置50と、戸尻側において上方向きの抜止め片61を上枠20に近接又は接触させて開閉体本体10の上方への移動を規制する第2の抜止装置60と、開閉体本体10から戸幅方向外側(図示例によれば戸先側)へ突出した緩衝部材70とを具備する。
【0023】
開閉体本体10は、戸幅方向の両側の縦框11,12と、これら縦框11,12の上端側間にわたる上桟13と、縦框11,12の下端側間にわたる下桟14と、これら縦框11,12、上桟13および下桟14の内側の空間を覆い塞ぐ障子板15と、下桟14に支持されて下枠30上を転動する複数の車輪17とを具備している。
【0024】
戸先側の縦框11は、硬質金属製の部材から、上下方向へ連続する長尺状に形成され、その戸先側に、戸厚方向に間隔を置いて対称な被係合片部11a,11aを有する(図3参照)。
各被係合片部11aは、先端側を戸厚方向内側へ曲げた横断面横L字状の突起であり、その突端を、他方の被係合片部11aの突端に対向させている。
この縦框11の戸尻側は、横断面凹状に形成され、上桟13に対し凹凸状に嵌り合う。
【0025】
戸尻側の縦框12は、適宜な横断面形状(例えば横断面矩形状や横断面コ字状等)の硬質金属製の部材から、上下方向へ連続する長尺状に形成される。
【0026】
上桟13は、硬質金属製の部材から戸幅方向へわたる長尺状に形成され、図3に示すように、上端に、上枠20のガイド片21に遊嵌する凹溝部13aを有する。
【0027】
下桟14は、硬質金属製の部材から戸幅方向へわたる長尺状に形成される。この下桟14の下端側には、下枠30のレール部31に嵌り合って転動するように、複数の車輪17が設けられる。
【0028】
障子板15は、上下左右の端部が、上桟13,下桟14,縦框11,12に嵌め合わせられた平板状の部材であり、例えば、透明のガラス板が用いられる。この障子板15の他例としては、有色のガラス板や、金属や合成樹脂、木材等からなる板材等とすることも可能である。
【0029】
上記したように、縦框11,12、上桟13、下桟14等は、硬質金属材料(例えば、アルミニウム合金やステンレス等)から形成すればよいが、他の好ましい例としては、これら縦框11,12、上桟13、下桟14において、障子板15に嵌り合う部分や、ガイド片21に嵌り合う部分、レール部31に嵌り合う部分等を前記硬質金属材料とし、他の部分(特に露出部分)を木材とした態様等、木材と金属材料との複合材料から形成するようにしてもよい。
さらに他例としては、これら縦框11,12、上桟13、下桟14等を、木材のみから形成することも可能である。
【0030】
上枠20は、開閉体本体10の上方側において、左右の縦枠40,40の間に、略水平方向へわたる長尺状に固定される。
この上枠20は、図6に示すように、下方へ突出して戸幅方向へ連続するガイド片21を、戸厚方向に間隔を置いて複数(図示例によれば二つ)具備している。
【0031】
下枠30は、開閉体本体10の下方側において、左右の縦枠40,40の間に、略水平方向へわたる長尺状に固定される。
この下枠30の上面には、開閉体1側の車輪17の外周部に嵌り合って、車輪17を転動させるレール部31が、戸幅方向へわたる連続状に設けられる。なお、図示例によれば、車輪17を凹状に形成し、レール部31を車輪17に嵌り合う凸状に形成いているが、その凹凸関係は逆にすることが可能である。
【0032】
縦枠40,40は、開閉体1によって開閉される開口部の両側に左右対称に配設される。
各縦枠40は、上下方向へ延設された長尺状の部材であり、その上端側と他端側に上枠20と下枠30を接続して、当該建具Aの設置対象である建物等の不動部位に固定される。
【0033】
また、第1の抜止装置50は、緩衝部材70と略同じ外観形状を有し、緩衝部材70に対しその上方側に連続するようにして、開閉体本体10における戸幅方向端部の上端側に接続される。
この第1の抜止装置50は、上記したように緩衝部材70と略同じ外観形状とするのが好ましいが、開閉体本体10側の設置基部(戸幅方向外側の端部)からの突出量は、緩衝部材70と同等か緩衝部材70よりも小さい方が好ましい。
【0034】
この第1の抜止装置50は、上下方向へスライドする抜止め片51と、この抜止め片51を内在するとともに緩衝部材70の上方側に直線的に連続するように位置する支持ブラケット52と、回転操作可能な頭部を後方(戸幅方向外側)へ向けた螺合部材53とを具備する。
【0035】
抜止め片51は、上下方向へ連続する長尺矩形平板状に形成され、上下方向へわたって連続する長孔51aを有する。
この抜止め片51は、支持ブラケット52のスライド穴52aに対し上方から挿入され、螺合部材53が締め付けられることで、螺合部材53の頭部と支持ブラケット52内の挟持面52f(図5参照)との間に挟まれ、上下動不能に保持される。そして、この保持状態において、抜止め片51の下方側には、工具X2を挿入するための工具挿入空間部Sが確保される。
【0036】
長孔51aの幅寸法は、螺合部材53の頭部を挿通不能であって且つ同螺合部材53のネジ軸を遊挿可能に設定される。そして、長孔51aの上下寸法へ、遊挿される螺合部材53に相対し、抜止め片51を上下方向へ適宜量スライド可能な長さに設定される。
【0037】
また、支持ブラケット52は、戸先側へ突出する突状部50Aと、突状部50Aの戸尻側で縦框11の被係合片部11a,11aに嵌り合う係合部50Bとを一体に有する。
【0038】
突状部50Aは、緩衝部材70の弾性変形部71と略同じ外観形状の横断面凸曲状に形成される。この突状部50Aは、緩衝部材70の弾性変形部71に対し、外面同士が略面一になるように接続される。
【0039】
係合部50Bは、緩衝部材70の係合部72と略同じように、突状部50Aから戸尻方向へ突出するとともに、その突端側が戸厚方向の両側へ拡がっており、縦框11の戸先側の被係合片部11a,11a間に嵌め合わせられる。
【0040】
支持ブラケット52の材質は、例えば、ポリプロピレンやナイロン(ポリアミド)等の合成樹脂材料(硬質)であるが、特に閉鎖動作中に物体等に当接した際の衝撃を緩和する観点からは、軟質合成樹脂材料を含む軟質材料としてもよく、より好ましくは、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料としてもよい。さらに、他例としては、これらの複合材料や、木材等とすることも可能である。
【0041】
この支持ブラケット52は、その突状部50A側に、内部で上下方向へ連続するスライド穴52a(図5参照)と、戸幅方向の端部側(図示例によれば戸先方向端部側)に設けられたスライド操作窓52bと、螺合部材53を締め付けたり緩めたりするための締緩操作穴52cと、下方へ突出して緩衝部材70における弾性変形部71の上端開口に嵌り合う嵌合部52d(図3参照)と、上端側で上枠20のガイド片21に遊嵌する切欠部52eとを一体に有する。
【0042】
スライド穴52aは、抜止め片51を上下方向へスライド可能に内在する横断面角筒状の穴である。このスライド穴52aの上端は、開口して外部に連通している。また、スライド穴52aの下端側は、スライド操作窓52b内の空間に連通している(図5参照)。
【0043】
スライド操作窓52bは、抜止め片51をスライド操作するための開口部であり、抜止め片51における長孔51aの下半部側から、抜止め片51よりも下側の工具挿入空間部Sにわたる範囲に臨むようにして(図6(a)参照)、上下方向へ長尺状に連続している。
【0044】
締緩操作穴52cは、スライド操作窓52bよりも上側に位置する有底穴であり、螺合部材53の頭部よりも大きい内径に形成される。
締緩操作穴52cの底部側は、スライド穴52aに連通している。
そして、締緩操作穴52cの底面は、スライド穴52aの戸幅方向内側の面と面一である(図5参照)。この底面は、螺合部材53の頭部との間に抜止め片51を挟持する挟持面52fとして機能する。
【0045】
嵌合部52dは、支持ブラケット52の下端側に、段付き状に細くなるように形成され、弾性変形部71上端の係合部72に挿入されて嵌り合う。
【0046】
また、螺合部材53は、先端側にネジ軸を有するとともに後端側に頭部を有するネジ又はボルトであり、前記頭部には、工具X1(例えばプラスドライバー)の先端に嵌り合って回転操作される凹部(例えばプラス穴や、六角穴等)が設けられる。
この螺合部材53は、回転操作可能な頭部を後方(戸幅方向外側)へ向けるとともに、ネジ軸を、抜止め片51の長孔51aに遊挿してこの抜止め片51よりも戸幅方向内側の部位(図示例によればナット状部材54)に螺合している。
【0047】
ナット状部材54は、例えば金属製のナットであり、支持ブラケット52における挟持面52fの奥側に回転不能に嵌め込まれている(図5参照)。
なお、他例としては、螺合部材53のネジ軸が支持ブラケット52自体に螺合される態様や、螺合部材53のネジ軸が支持ブラケット52を貫通して開閉体本体10に螺合される態様とすることも可能である。
【0048】
また、緩衝部材70は、開閉体本体10の戸幅方向端部において、第1の抜止装置50の下側に直線的に並ぶようにして、開閉体本体10の戸先部に接続される。
この緩衝部材70は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料によって、上下方向へ連続する長尺状に形成され、最戸先側に位置する弾性変形部71と、この弾性変形部71から戸尻方向側へ突出した係合部72とを一体に有する。
【0049】
弾性変形部71は、上下方向へ連続するとともに上下端部を開口した中空柱状に形成され、図示例によれば、戸先側が横断面凸曲状に形成される(図3参照)。
係合部72は、弾性変形部71から戸尻方向へ突出するとともに、その突端側が戸厚方向の両側へ拡がっている。この係合部72は、縦框11の戸先側の被係合片部11a,11a間に嵌め合わせられる(図2及び図3参照)。
【0050】
また、第2の抜止装置60は、上下方向の長孔(図示せず)を有する板状の抜止め片61と、この抜止め片61の前記長孔に挿通される止着具62(例えば、ネジやボルト等)とを備える。
抜止め片61は、開閉体本体10における戸尻側面の上端側に、止着具62によって止着され、その上端部を、上枠20におけるガイド片21の下端部に、近接又は接触する。この抜止め片61の高さ位置は、止着具62を締緩することで調整可能である。
【0051】
<作用効果>
次に、上記構成の建具Aについて、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
上枠20、下枠30及び左右の縦枠40の内側に、開閉体1が嵌め合わせられた状態において、第1の抜止装置50と第2の抜止装置60を操作し、左右の抜止め片51,61を上へ寄せて固定すれば、両抜止め片51,61の上端が、上枠20におけるガイド片21の下端に近接又は接触する(図6(b)参照)。
【0052】
前記操作を詳細に説明すれば、第1の抜止装置50において、支持ブラケット52の締緩操作穴52cに工具X1を差し込み、その先端部を螺合部材53の頭部に嵌め合わせ、工具X1を回転させて螺合部材53を緩めれば、抜止め片51が上下方向へスライドするようになる。
そして、図5に示すように、他の工具X2の先端を工具挿入空間部Sに挿入して上方へ移動すれば、工具X2に係止されて抜止め片51も上方へ移動し、この抜止め片51の上端が、ガイド片21の下端に近接又は接触する(図6(b)参照)。そして、この状態で、螺合部材53を工具X1により締め付ければ、抜止め片51を上下移動不能に固定することができる。
【0053】
また、第2の抜止装置60についても、止着具62を締緩する操作と、抜止め片61を持ち上げる操作により、抜止め片61を、ガイド片21の下端に近接又は接触させて固定することができる。
【0054】
よって、開閉体1が戸幅方向へ傾こうとするのを、両側の第1及び第2の抜止装置50,60により抑制することができ、ひいては、地震等に起因する複雑な振動により、車輪17が下枠30から脱輪するのを防ぐことができ、開閉体1の開閉位置によらず安定した外れ止め機能を発揮する。
【0055】
また、閉鎖動作中又は開放動作中の開閉体1が、通過物や縦枠40等に当接した場合は、その衝撃を、緩衝部材70によって吸収し緩和することができる。
特に、第1の抜止装置50の支持ブラケット52を弾性材料により形成すれば、前記当接の際の衝撃を、より効果的に緩和することができる。
【0056】
しかも、一般的な工具X1,X2によって抜止め片51,61を簡単にスライド操作できるので、開閉体1の着脱が容易な上、建付け上の誤差等により開閉体1と上枠20の間の寸法バラツキがある場合でも調整が容易である。
その上、第1の抜止装置50を緩衝部材70の上方に連続的に設けているため、戸先側端部に凹凸が少なく、意匠上の体裁にも優れている。特に、開閉体1の閉鎖状態においては、スライド操作窓52bが外部から見えなくなるので、意匠性が良好である。
【0057】
<変形例>
上記実施態様によれば、開閉体本体10における戸幅方向の一端側に第1の抜止装置50を設け、他端側に第2の抜止装置60を設けたが、他例としては、開閉体本体10の両端側にそれぞれ第1の抜止装置50を設けた態様や、開閉体本体10の戸先側と戸尻側のいずれか一方側のみに第1の抜止装置50を設けて第2の抜止装置60を省いた態様等とすることも可能である。
【0058】
また、抜止め片51を上下スライド可能かつ固定可能にする構造は、図示例以外の態様とすることも可能である。
すなわち、他例としては、支持ブラケット52に、螺合部材53の頭部を挿通不能であってネジ軸のみを遊挿可能な上下方向の長孔を設け、この長孔に螺合部材53のネジ軸を挿通して、このネジ軸の先端側を抜止め片51に螺合して締め付けるようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施態様によれば、スライド穴52aとスライド操作窓52bをそれぞれ独立する穴としたが、他例としては、これらスライド穴52aとスライド操作窓52bを上下方向に連通して、一つの穴に構成することも可能である。
【0060】
また、上記実施態様では、緩衝部材70を開閉体本体10の戸先側のみに設けたが、他例としては、緩衝部材70を開閉体本体10の戸尻側にも設けることが可能である。
【0061】
また、上記実施態様では、閉鎖時の当接の衝撃を緩和する目的で緩衝部材70を設けているが、他の発明としては、この緩衝部材70を省くことも可能である。
【0062】
また、上記実施態様は、本発明の一例として引き違い式の障子窓を構成したが、本発明の他例としては、片引き式、引き込み式または引き分け式の窓や戸、襖、その他の引戸式の建具を構成することが可能である。
【0063】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
1:開閉体
10:開閉体本体
20:上枠
30:下枠
40:縦枠
50:第1の抜止装置
51:抜止め片
52:支持ブラケット
52a:スライド穴
52b:スライド操作窓
52c:締緩操作穴
53:螺合部材
60:第2の抜止装置
61:抜止め片
70:緩衝部材
A:建具
S:工具挿入空間部
X1,X2:工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6