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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E05D 13/00 20060101AFI20231211BHJP
   E05F 5/02 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
E05D13/00 A
E05F5/02 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020035239
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021139114
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴博
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-75382(JP,U)
【文献】実開昭55-80480(JP,U)
【文献】実開昭56-169068(JP,U)
【文献】登録実用新案第3153747(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 13/00
E05F 5/02
E06B 3/42-3/46
E06B 3/88
E06B 7/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸幅方向へスライドして開閉する開閉体と、前記開閉体の上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記開閉体の下端側を開閉方向へ導く下枠とを備えた建具において、
前記開閉体は、開閉体本体と、上方へ突出する抜止め片を前記上枠に近接又は接触させて前記開閉体本体の上方への移動を規制する抜止装置と、前記開閉体本体から戸幅方向外側へ突出して上下方向へわたる緩衝部材とを具備し、
前記抜止装置は、前記緩衝部材よりも戸幅方向外側へ突出しないようにして、前記緩衝部材の近傍に設けられ
前記緩衝部材には、前記抜止装置を操作するための工具が差し込まれる貫通状の操作窓が設けられていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記開閉体本体は、上下方向へ連続する内側空間を有し上端を開口した縦骨材を具備し、前記抜止装置は、前記縦骨材の前記内側空間に設けられていることを特徴とする請求項1記載の建具。
【請求項3】
前記抜止装置は、前記開閉体本体における戸幅方向の端部との間に隙間を置いて上下方向へ延設されたガイド片部に上下方向の長孔を有する支持ブラケットと、前記ガイド片部の内側面に沿って上下方向へ移動可能な前記抜止め片と、ネジ軸を前記長孔に挿通し前記抜止め片に螺合するとともに頭部を前記ガイド片部の外側に配置した螺合部材とを備え、前記螺合部材の締め付けにより前記頭部と前記抜止め片の間に前記ガイド片部が挟まれて、前記抜止め片が固定されるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の建具。
【請求項4】
前記抜止装置は、前記開閉体本体の戸幅方向の両側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1~何れか1項記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上枠と下枠の間で開閉体を横幅方向へ開閉動作させる建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、戸枠と、下側レール装置と、上側レール装置と、前後一対の引き違い戸と、引き違い戸の上方向への移動を規制して該引き違い戸の外れを防止するために上枠の下面に取付けられたスペーサ部材とを備え、前記スペーサ部材を各引き違い戸に対する幅方向中央寄りに部分的に配置したものがある。
この従来技術では、開閉時の振動等により引き違い戸が持ち上がった場合に、この引き違い戸をスペーサ部材に当接させて下側レール装置から外れるのを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-77630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術によれば、例えば地震や強風等により上下方向及び厚さ方向へ複雑に振動した場合、各引き違い戸は、上記スペーサとの当接箇所を支点に戸幅方向の一端側が上昇するようにして傾き、この傾斜状態で厚さ方向へ移動して、下側レール装置から外れてしまう可能性がある。
そこで、上記スペーサの戸幅方向の配置を変更することが考えられるが、引き違い戸には、戸幅方向の端部にゴム等からなる緩衝部材が設けられる場合があり、この緩衝部材による緩衝効果を保持するように工夫を要する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するために、以下の構成を具備するものである。
戸幅方向へスライドして開閉する開閉体と、前記開閉体の上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記開閉体の下端側を開閉方向へ導く下枠とを備えた建具において、前記開閉体は、開閉体本体と、上方へ突出する抜止め片を前記上枠に近接又は接触させて前記開閉体本体の上方への移動を規制する抜止装置と、前記開閉体本体から戸幅方向外側へ突出して上下方向へわたる緩衝部材とを具備し、前記抜止装置は、前記緩衝部材よりも戸幅方向外側へ突出しないようにして、前記緩衝部材の近傍に設けられ、前記緩衝部材には、前記抜止装置を操作するための工具が差し込まれる貫通状の操作窓が設けられていることを特徴とする建具。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、戸幅方向端部側の緩衝部材による緩衝効果を得られるようにして、開閉体本体が上下枠から外れてしまうのを効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る建具の一例を示す正面図である。
図2】同建具の戸先方向の端部側を示す要部斜視図である。
図3】同建具に工具を挿入した状態を示す要部横断面図である。
図4】同建具の要部分解斜視図である。
図5】抜止装置の背面側を示す斜視図である。
図6】外装板および緩衝部材を省いた状態で、同建具の戸先方向側部分を示す斜視図であり、工具により抜止め片を上方へスライド操作している様子を(a)(b)に順次に示す。
図7】外装板および緩衝部材を省いた状態で、同建具の要部を戸先方向側から視た図であり、抜止め片を上方へスライド操作している様子を(a)(b)に順次に示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、戸幅方向へスライドして開閉する開閉体と、前記開閉体の上端側を開閉方向へ導く上枠と、前記開閉体の下端側を開閉方向へ導く下枠とを備えた建具において、前記開閉体は、開閉体本体と、上方へ突出する抜止め片を前記上枠に近接又は接触させて前記開閉体本体の上方への移動を規制する抜止装置と、前記開閉体本体から戸幅方向外側へ突出して上下方向へわたる緩衝部材とを具備し、前記抜止装置は、前記緩衝部材よりも戸幅方向外側へ突出しないようにして、前記緩衝部材の近傍に設けられている(図1図7参照)。
【0009】
第2の特徴として、前記開閉体本体は、上下方向へ連続する内側空間を有し上端を開口した縦骨材を具備し、前記抜止装置は、前記縦骨材の前記内側空間に設けられている(図2図4及び図6参照)。
【0010】
第3の特徴として、前記緩衝部材には、前記抜止装置を操作するための工具が差し込まれる貫通状の操作窓が設けられる(図2図4図6及び図7)。
【0011】
第4の特徴として、前記抜止装置は、前記開閉体本体における戸幅方向の端部との間に隙間を置いて上下方向へ延設されたガイド片部に上下方向の長孔を有する支持ブラケットと、前記ガイド片部の内側面に沿って上下方向へ移動可能な前記抜止め片と、ネジ軸を前記長孔に挿通し前記抜止め片に螺合するとともに頭部を前記ガイド片部の外側に配置した螺合部材とを備え、前記螺合部材の締め付けにより前記頭部と前記抜止め片の間に前記ガイド片部が挟まれて、前記抜止め片が固定されるようにした(図3図5参照)。
【0012】
第5の特徴として、前記抜止装置は、前記開閉体本体の戸幅方向の両側にそれぞれ設けられている(図1参照)。
【0013】
なお、本明細書中、「戸幅方向」とは、開閉体の横幅方向を意味する。「戸厚方向」とは、開閉体本体の厚みの方向を意味する。
【0014】
また、「戸幅方向外側」とは、開閉体の戸幅方向に沿って開閉体の横幅寸法の中央部から離れる方向側を意味する。
また、「戸幅方向内側」とは、開閉体の戸幅方向に沿って開閉体の横幅寸法の中心部へ向かう方向である。
【0015】
また、「戸厚方向外側」とは、開閉体の戸厚方向に沿って開閉体の厚み寸法の中央部から離れる方向側を意味する。
また、「戸厚方向内側」とは、開閉体の戸厚方向に沿って開閉体の厚み寸法の中央部へ向かう方向側を意味する。
【0016】
また、「戸先方向」は、開閉体の閉鎖方向と同方向であり、「戸尻方向」は、開閉体の開放方向と同方向である。
【0017】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る建具の一例を示す正面図である。
この建具Aは、戸幅方向へスライドして開閉する開閉体1と、開閉体1の上端側を開閉方向(図示例によれば略水平方向)へ案内し導く上枠20と、開閉体1の下端側を開閉方向へ案内し導く下枠30と、これら上枠20及び下枠30をその両側で支持する左右の縦枠40,40とを備える。
【0019】
なお、図1の例示によれば、戸先側は右側であり、戸尻側は左側である。

また、図1に示す建具Aは、上枠20、下枠30及び左右の縦枠40,40内に、戸厚方向に並ぶ同構造の二枚の開閉体1を具備して、引き違い戸を構成しているが、図面中では、前記二枚の開閉体1のうちの一方を省略している。
【0020】
開閉体1は、略矩形板状の開閉体本体10と、上方へ突出させた抜止め片51を上枠20に近接又は接触させて開閉体本体10の上方への移動を規制する抜止装置50と、開閉体本体10の戸先側端部と戸尻側端部からそれぞれ戸幅方向外側へ突出して上下方向へわたる両側の緩衝部材60,60とを備える。
【0021】
開閉体本体10は、戸幅方向の両側の縦骨材11,11と、縦骨材11,11の上端側間にわたる横骨材13と、縦骨材11,11の下端側間にわたる横骨材14と、これら縦骨材11,11及び横骨材13,14の表面側と裏面側を覆う外装板15,15と、下側の横骨材14に支持されて下枠30上を転動する複数の車輪17とを具備している。
【0022】
一方の縦骨材11と他方の縦骨材11は、戸幅方向において対称に設けられる。
各縦骨材11は、上下方向へ連続する内部空間(内側空間)を有するとともに上端を開口した長尺状の部材であり、例えば硬質金属材料から形成される。
この縦骨材11は、上端側を横骨材13に接続するとともに下端側を横骨材14に接続した長尺板状の基片部11aと、この基片部11aの戸厚方向の一端側と他端側からそれぞれ戸幅方向外側へ突出する突片部11bとを有し、図4に示すように溝形鋼(チャンネル)状に形成される。他方の縦骨材12は、縦骨材11と左右対称に構成される。
【0023】
基片部11aには、後述する抜止装置50を掛止するための被掛止孔11a1と、この被掛止孔11a1よりも上側で上枠20のガイド片21を遊挿する切欠部11a2と、被掛止孔11a1よりも下側で支持ブラケット52を止着するための止着孔11a3(図示例によればネジ孔)とが設けられる。
【0024】
上側の横骨材13は、上下方向へ連続する長尺板状の基片部13aと、この基片部13aの戸厚方向の一端側と他端側からそれぞれ上方へ突出する突片部13b,13bとを有し、例えば硬質金属材料から、図4に示す溝形鋼(チャンネル)状に形成される。
【0025】
横骨材13内における戸幅方向の両端側には、それぞれ、直方体状のガイドブロック18が固定されている。このガイドブロック18は、図示例によれば直方体状に形成され、上枠20のガイド片21に遊嵌する戸幅方向の溝18aを有する。
【0026】
また、横骨材14は、戸幅方向の一端部を一方の縦骨材11の下端側に接続するとともに、他端部を他方の縦骨材12の下端側に接続して、略水平状に支持される。この横骨材14の戸幅方向の一端側と他端側には、それぞれ、外周部を下方へ突出させるようにして、車輪17が回転自在に支持されている。
【0027】
また、外装板15,15は、図示例によれば、戸厚方向において対称に形成される。
各外装板15は、縦骨材11,11及び横骨材13,14を、その戸厚方向の一方側から覆うように形成される。この外装板15は、その戸幅方向の端部側に、戸厚方向へ曲げられた曲片部15aを有する。
【0028】
上枠20は、開閉体本体10の上方側において、左右の縦枠40,40の間に、略水平方向へわたる長尺状に固定される。
この上枠20は、図7に示すように、下方へ突出して戸幅方向へ連続するガイド片21を、戸厚方向に間隔を置いて複数(図示例によれば二つ)具備している。
【0029】
下枠30は、開閉体本体10の下方側において、左右の縦枠40,40の間に、略水平方向へわたる長尺状に固定される。
この下枠30の上面には、開閉体1側の車輪17の外周部に嵌り合って、車輪17を転動させるレール部31が、戸幅方向へわたる連続状に設けられる。なお、図示例によれば、車輪17を凸状に形成し、レール部31を車輪17に嵌り合う凹状に形成ているが、その凹凸関係は逆にすることが可能である。
【0030】
縦枠40,40は、開閉体1によって開閉される開口部の両側に左右対称に配設される。
各縦枠40は、上下方向へ延設された長尺状の部材であり、その上端側と他端側に上枠20と下枠30を接続して、当該建具Aの設置対象である建物等の不動部位に固定される。
【0031】
また、抜止装置50は、開閉体本体10の戸幅方向の両側にそれぞれ配設される。
各抜止装置50は、緩衝部材60から戸幅方向外側へ突出しないようにして、緩衝部材60の近傍に位置しており、図示する好ましい一例によれば、縦骨材11の内側空間に設けられる(図3及び図6参照)。
【0032】
各抜止装置50は、開閉体本体10における戸幅方向の端面(図示例によれば縦骨材11の基片部11a外面)との間に隙間を置いて上下方向へ延設されたガイド片部52aに上下方向の長孔52a1を有する支持ブラケット52と、ガイド片部52aの内側面に沿って上下方向へ移動可能な抜止め片51と、ネジ軸を長孔52a1に挿通し抜止め片51に螺合するとともに頭部をガイド片部52aの外側に配置した螺合部材53とを備える。
この抜止装置50は、螺合部材53が締め付けられると、螺合部材53の頭部と抜止め片51の間にガイド片部52aを挟むようにして、抜止め片51を上下移動しないように固定する。
【0033】
支持ブラケット52は、図5に示すように、抜止め片51を上下方向へ導くガイド片部52aと、このガイド片部52aの両側で縦骨材11側へ突出し基片部11a(図4参照)に掛止される掛止片部52b,52bと、ガイド片52aの下端側から縦骨材11側へ突出して基片部11aに止着される止着片部52cとを備える(図5参照)。
【0034】
ガイド片部52aは、縦骨材11の基片部11aから戸幅方向へ離れて上下方向へ連続する板状に形成される。このガイド片部52aは、戸厚方向の中央側に、螺合部材53を遊挿する長孔52a1を上下方向へわたって形成している。この長孔52a1は、緩衝部材60の操作窓61aに臨むように配置される。
【0035】
各掛止片部52bは、その下半部側が、縦骨材11の基片部11aに当接する。この当接部分には、基片部11aの被掛止孔11a1の下縁部に掛止されるように、略フック状の掛止部52b1が形成されている。
【0036】
止着片部52cは、ガイド片部52aの下端から縦骨材11側へ向かい、縦骨材11の基片部11aに沿って下方へ曲がった略アングル状に形成され、その曲げ部分に、止着具54(例えば、ボルトやネジ、リベット等)を挿通するための貫通孔52c1を有する(図4図5参照)。
【0037】
また、抜止め片51は、支持ブラケット52の両ガイド片部52a,52a間に遊嵌するとともに上下方向へ連続する長尺平板状に形成され、その下端側に、螺合部材53のネジ部を螺合するネジ孔51a(図4参照)を有する。
【0038】
上記構成の抜止装置50は、支持ブラケット52の内側に抜止め片51が嵌め合わせられ、螺合部材53が支持ブラケット52の長孔52a1に挿通されて抜止め片51に螺合され締め付けられることで、一体ユニット状に構成される。
そして、この抜止装置50は、支持ブラケット52の貫通孔52c1に挿通される止着具54が、縦骨材11の止着孔11a3に止着されることで、縦骨材11に固定される。
【0039】
また、緩衝部材60は、例えばゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料から上下方向へ連続する長尺状に形成され、縦骨材11の戸先側(又は戸尻側)に接続される。
詳細に説明すれば、この緩衝部材60は、最戸先側又は最戸尻側に位置する弾性変形部61と、この弾性変形部61から戸幅方向内側(図3によれば右側)へ突出して開閉体本体10の戸先部又は戸尻部に接続される係合部62,62とを一体に有する。
【0040】
弾性変形部61は、上下方向へ連続する中空柱状の部位であり、図示例によれば、横断面矩形枠状に形成される(図3参照)。
この弾性変形部61の上部側には、抜止装置50を操作するための工具Xが差し込まれる貫通状の操作窓61aが設けられる。
また、弾性変形部61の上端には、上枠20のガイド片21を遊挿するように、切欠部61bが設けられる(図4参照)。
【0041】
操作窓61aは、中空状の弾性変形部61を構成する戸先側壁部と戸尻側壁部を貫通している。そして、この操作窓61aは、抜止装置50の長孔52a1に臨むようにして、上下方向へわたる長尺状に形成される。
【0042】
また、係合部62は、弾性変形部61から戸幅方向内側へ突出して縦骨材11内に位置する。この係合部62は、戸厚方向の両側に二つ設けられる(図3参照)。
各係合部62は、突端側が戸厚方向外側へ曲げられた横断面L字状に形成される。
【0043】
緩衝部材60は、二つの係合部62,62において戸厚方向の幅が狭くなった基端側の部分を、表裏の外装板15,15の曲片部15a,15aの間に嵌め合わせることで固定される(図3参照)。
【0044】
<作用効果>
次に、上記構成の建具Aについて、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
上枠20、下枠30及び左右の縦枠40の内側に、開閉体1が嵌め合わせられた状態において、各緩衝部材60の近傍の各抜止装置50を操作し、各抜止装置50の抜止め片51を上へ寄せて固定すれば、抜止め片51の上端が、上枠20におけるガイド片21の下端に近接又は接触する(図7(b)参照)。
【0045】
前記操作を詳細に説明すれば、先ず、図2に示すように、緩衝部材60の操作窓61aに工具Xを差し込み、その先端部を螺合部材53の頭部に嵌め合わせ、工具Xを回転させて螺合部材53を緩めれば、抜止め片51が上下方向へスライドするようになる。
そして、図6に示すように、工具Xを上方へ移動すれば、抜止め片51も上方へ移動して、抜止め片51の上端が、ガイド片21の下端に近接又は接触する(図7(b)参照)。そして、この状態で、螺合部材53を工具Xにより締め付ければ、抜止め片51を固定することができる。
【0046】
前記のようにして、開閉体1の戸幅方向の両端側で、二つの抜止め片51を、それぞれ、ガイド片21に近接又は接触させれば、開閉体1が戸幅方向へ傾こうとするのを抑制することができ、ひいては、地震等に起因する複雑な振動により、車輪17が下枠30から脱輪するのを防ぐことでき、開閉体1の開閉位置によらず安定した外れ止め機能を発揮する。
【0047】
また、閉鎖動作中又は開放動作中の開閉体1が、通過物や縦枠40等に当接した場合は、その当接による緩衝部材60の弾性変形を、抜止装置50によって阻害されることなく、衝撃を十分に緩和することができる。
【0048】
しかも、一般的な工具Xによって抜止め片51を簡単にスライド操作できるので、開閉体1の着脱が容易な上、建付け上の誤差等により開閉体1と上枠20の間の寸法バラツキがある場合でも調整が容易である。
その上、抜止装置50が開閉体1の外部に露出しない構造であるため、意匠上の体裁にも優れている。
【0049】
<変形例>
上記実施態様によれば、緩衝部材60による緩衝作用を損ねない好ましい態様として、抜止装置50を、緩衝部材60の弾性変形部61よりも戸幅方向内側に設けたが、他例としては、抜止装置50を弾性変形部61内に設けることも可能である。
【0050】
さらに他例としては、緩衝部材60の上端側部分を省いて、この省かれた部分に、上記構成の抜止装置50を設けることも可能である。
さらに他例としては、図示例以外の硬質又は軟質のカバー部材を設け、このカバー部材に、上記構成の抜止装置50を内在することも可能である。
【0051】
さらに、意匠性の良好な他例としては、緩衝部材60の上端側部分を省くとともに、この省かれた部分に、緩衝部材60と略同じ外観形状の抜止装置を設けるようにしてもよい。
【0052】
また、抜止め片51を上下スライド可能かつ固定可能にする構造は、図示例以外の態様とすることも可能である。
すなわち、他例としては、支持ブラケット52に螺合部材53を螺合し、この螺合部材53の先端部を抜止め片51の表面に押し付けることで、抜止め片51を、螺合部材53先端と縦骨材11の間に挟んで固定するようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施態様によれば、開閉体本体10の横幅方向の両側に、同構造の抜止装置50及び緩衝部材60を配設したが、他例としては、その一方の抜止装置50及び緩衝部材60を省いた態様や、一方の抜止装置50又は緩衝部材60を省いた態様、一方の抜止装置50及び/又は緩衝部材60を、他の構造のものに置換した態様等とすることも可能である。
【0054】
また、上記実施態様によれば、緩衝部材60の操作窓61aに工具Xを挿通してスライド操作するようにしたが、他例としては、緩衝部材60を開閉体本体10に対して、全体的にあるいは部分的に着脱可能に設け、この緩衝部材60が外されて抜止装置50がスライド操作されるようにすることも可能である。
【0055】
また、上記実施態様によれば、縦骨材11を横断面コ字状に形成したが、他例としては、横断面ロ字状(矩形枠状)、横断面C字状(Cチャンネル状)等とすることが可能である。さらに、他例としては、縦骨材を、横断面略ゼット型や、略ハット型、その他の図示例以外の横断面形状等にすることも可能である。
そして、これらの横断面形状の縦骨材に対し、その戸厚方向の内側に、抜止装置50を設けることが可能である。
また、これら骨材の材質は、スチールやステンレス、アルミニウム合金、硬質合成樹脂材料等とすることが可能である。
【0056】
また、上記実施態様は、本発明の一例として引き違い式の戸を構成したが、本発明の他例としては、片引き式、引き込み式または引き分け式の窓や戸、襖、その他の引戸式の建具を構成することが可能である。
【0057】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
1:開閉体
10:開閉体本体
11:縦骨材
20:上枠
30:下枠
50:抜止装置
51:抜止め片
52:支持ブラケット
53:螺合部材
60:緩衝部材
61a:操作窓
A:建具
X:工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7