(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】急速充電装置及び急速充電方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20231211BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20231211BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231211BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20231211BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20231211BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20231211BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20231211BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20231211BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20231211BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20231211BHJP
B60L 53/30 20190101ALI20231211BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20231211BHJP
【FI】
H02J7/04 L
H01M10/44 Q
H01M10/48 301
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/6568
H01M10/6556
H01M10/615
H01M10/6571
B60L53/30
B60L58/26
(21)【出願番号】P 2020036194
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】谷内 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】大田 正弘
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-277839(JP,A)
【文献】特開2016-219224(JP,A)
【文献】特表2017-526129(JP,A)
【文献】特開2002-010508(JP,A)
【文献】特開2007-273348(JP,A)
【文献】特開2008-005662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42 - 10/667
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池としての固体電池に電流を供給する充電部と、
前記固体電池の温度を取得する温度取得部と、
前記温度取得部により取得された温度が所定温度以上である場合、前記固体電池を冷却する制御を行う制御部と、を有
し、
前記制御部は、前記固体電池の内部抵抗に対する前記固体電池の温度変化を示す曲線において、複数の変曲点を検出し、
前記所定温度は、前記複数の変曲点のうち、最も高温側の変曲点に対応する温度である、急速充電装置。
【請求項2】
前記温度取得部により取得される固体電池の温度は、タブ温度である、請求項
1に記載の急速充電装置。
【請求項3】
前記二次電池の種類を識別する識別部を有し、
前記制御部は、前記識別部により前記二次電池が固体電池であると識別され、かつ、前記温度取得部により取得された温度が所定温度以上である場合に、前記固体電池を冷却する制御を行う、請求項1
又は2に記載の急速充電装置。
【請求項4】
二次電池としての固体電池の温度を取得する温度取得ステップと、
前記温度取得ステップにより取得された温度が所定温度以上であるか否かを判定する判定ステップと、
前記固体電池及び冷却システムのうち少なくともいずれかに電流を供給する給電ステップと、を有し、
前記給電ステップでは、前記温度取得ステップにより取得された温度が前記所定温度以上である場合、前記冷却システムに対してのみ給電を行い、前記固体電池を冷却し、
前記所定温度は、前記固体電池の内部抵抗に対する前記固体電池の温度変化を示す曲線における、複数の変曲点のうち、最も高温側の変曲点に対応する温度である、急速充電方法。
【請求項5】
前記温度取得ステップにより取得される固体電池の温度は、タブ温度である、請求項
4に記載の急速充電方法。
【請求項6】
前記二次電池の種類を識別する識別ステップを有する、請求項
4又は5に記載の急速充電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急速充電装置及び急速充電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池を充電する充電装置に関する技術が提案されている。例えば、高出力かつ大容量の二次電池を電気自動車やハイブリッド電気自動車のモータ駆動用等の用途に用いる場合、二次電池を急速充電する必要が生じる。従って、二次電池を急速充電可能な急速充電装置や急速充電方法に関する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ハイブリッド車両の制御方法として、バッテリが充電される可能性があると判定されたときに、バッテリ冷却手段によりバッテリを冷却するバッテリ冷却工程を含むハイブリッド車両の制御方法が開示されている。また、上記バッテリ冷却工程として、バッテリが急速充電される可能性があると判定されたとき、バッテリ冷却手段の冷却力を大きくする構成が開示されている。
【0005】
上記バッテリとしては、従来からリチウムイオン電池が主に用いられている。リチウムイオン電池の電解液は、通常、可燃性の有機溶媒であるため、熱に対する安全性を担保する必要がある。また、高温での充電により劣化反応が進行する。従って、特許文献1に開示されるように、急速充電の際はバッテリを冷却する必要がある。一方、高エネルギー密度を有し、かつ熱に対する安全性が高い固体電解質を用いた固体電池に関する技術が近年提案されている。しかし、固体電池を急速充電する急速充電装置及び急速充電方法についでは、十分な検討がなされていないのが現状である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、固体電池を急速充電する際の効率に優れる急速充電装置及び急速充電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、二次電池としての固体電池に電流を供給する充電部と、前記固体電池の温度を取得する温度取得部と、前記温度取得部により取得された温度が所定温度以上である場合、前記固体電池を冷却する制御を行う制御部と、を有する急速充電装置に関する。
【0008】
前記制御部は、前記固体電池の内部抵抗に対する前記固体電池の温度変化を示す曲線において、複数の変曲点を検出し、前記所定温度は、前記複数の変曲点のうち、高温側の変曲点に対応する温度であることが好ましい。
【0009】
前記所定温度は60℃であってもよい。
【0010】
前記所定温度は80℃であってもよい。
【0011】
前記温度取得部により取得される固体電池の温度は、タブ温度であってもよい。
【0012】
前記二次電池の種類を識別する識別部を有し、前記制御部は、前記識別部により前記二次電池が固体電池であると識別され、かつ、前記温度取得部により取得された温度が所定温度以上である場合に、前記固体電池を冷却する制御を行うことが好ましい。
【0013】
また、本発明は、二次電池としての固体電池の温度を取得する温度取得ステップと、前記温度取得ステップにより取得された温度が所定温度以上であるか否かを判定する判定ステップと、前記固体電池及び冷却システムのうち少なくともいずれかに電流を供給する給電ステップと、を有し、前記固体電池の温度は、所定温度未満となるように維持される、急速充電方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、固体電池を急速充電する際の効率に優れる急速充電装置及び急速充電方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る急速充電装置により充電される二次電池モジュールを示す図である。
【
図2】本実施形態に係る急速充電装置により充電される二次電池を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る急速充電装置により充電される二次電池の各種パラメータを模式的に示すグラフである。
【
図4】本実施形態に係る急速充電方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明を例示するものであって、本発明は以下に限定されるものではない。
【0017】
<急速充電装置>
本実施形態に係る急速充電装置は、二次電池としての固体電池の急速充電が可能な装置である。固体電池は、例えば大電流、高電圧を要する車載用等の用途に用いられる、複数の固体電池を組み合わせてモジュール化された固体電池モジュールである。
本実施形態に係る急速充電装置は、識別部と、温度取得部と、充電部と、制御部と、を有する。急速充電装置は、充電対象である固体電池及び固体電池を冷却する冷却システムと、CAN通信等の通信手段により通信可能に構成される。
【0018】
識別部は、充電対象である二次電池の種類を識別する。識別部は、例えば二次電池とのCAN通信等の通信手段により得られる電池識別情報を取得することで、二次電池の種類を識別する。以下、識別部により識別された二次電池が固体電池であるものとして説明する。
【0019】
温度取得部は、固体電池の温度を取得する。温度取得部は、例えば、固体電池モジュールに備えられる温度センサにより測定されるタブ温度を取得可能である。タブ温度は、例えば、後述する固体電池モジュール100の正極タブ104及び負極タブ109の温度である。温度取得部は、タブ温度等の温度を固体電池とのCAN通信等の通信手段により取得できる。温度取得部は、固体電池の充電電流、充電電圧、充電時間、外気温度、及び電池の劣化状態SOHのうち少なくともいずれかを含む測定値を取得し、上記測定値から固体電池の電池温度を推定してもよい。SOHは、固体電池の劣化状態を示す数値であり、固体電池の現在の満放電容量を初期の満放電容量で除算し、100を乗じた数値である。
【0020】
充電部は、固体電池に電流を供給する。充電部は、例えば、外部の交流電源と電力線により接続され、外部の交流電源から供給される交流電力を直流電力に整流する整流回路を有する。また、充電部は、固体電池に供給される電流の大きさを調整可能である。充電部と固体電池は、例えばコネクタ等を介し電力線により接続される。
【0021】
冷却システムは、例えば急速充電装置の外部に設けられる、固体電池を冷却可能なシステムである。冷却システムは、例えば後述する固体電池モジュール100に設けられる冷却水119を循環可能なポンプ等の循環装置を有し、固体電池モジュール100から発生する熱を外部と熱交換可能な構成を有する。冷却システムは、例えば充電部と電力線により接続され、充電部から供給される電力により上記循環装置等を稼働できる。
【0022】
(制御部)
制御部は、上記識別部、温度取得部、充電部、及び外部に設けられる固体電池の冷却システムと通信可能に構成される。制御部は、温度取得部により取得された固体電池の温度が所定温度T2以上である場合、固体電池を冷却する制御を行う。例えば、上記冷却システムを稼働させる制御を行う。また、上記に加え、固体電池の急速充電時に固体電池に供給される充電電流I1を低下させる制御を行ってもよい。上記制御により、固体電池の温度は所定温度T2に達した後、所定温度T2未満の一定の温度領域内に維持される。
【0023】
制御部は、温度取得部により取得された固体電池の温度が所定温度T0未満である場合、固体電池を加温する制御を行ってもよい。固体電池の温度が所定温度T0未満である場合、通常の条件で充電を行うと電析が起こるリスクがある。このため、制御部は、ヒーター等で固体電池を加温する制御を行ってもよい。又は、充電時のセル自体の発熱を利用し、固体電池の温度を所定温度T0以上に上昇させる制御を行うことができる。上記充電を行う場合、電析が起こるリスクを低下させるため、充電電流I1を通常時よりも小さくすることが好ましい。
【0024】
制御部による、上記所定温度T0及びT2の検出方法について以下に説明する。制御部は、内部抵抗に対する固体電池の温度変化をグラフ上にプロットし、変曲点を検出する。具体的には、内部抵抗に関するパラメータをY軸:lnR(R:内部抵抗)とし、温度に関するパラメータをX軸:1000/T(T:温度(K))として、アレニウスプロットを作成し、該アレニウスプロットから近似曲線を求める。次に、該近似曲線の変曲点を2階微分法により求める。上記求めた複数の変曲点のうち、高温側の変曲点に対応する温度を所定温度T2とし、低温側の変曲点に対応する温度を所定温度T0とする。所定温度T2は、最も高温側の変曲点に対応する温度としてもよく、所定温度T0は、最も低温側の変曲点に対応する温度としてもよい。
【0025】
所定温度T2は、上記以外に例えば60℃であることが好ましく、80℃であってもよい。固体電池は、60℃以上又は80℃以上における充電効率に優れるため、上記構成により、好ましい充電効率が得られる。なお、固体電池を構成する部材の耐用温度を考慮し、所定温度T2を設定してもよい。
【0026】
制御部により行われる制御の内容について、図面を参照して以下説明する。
図3は、固体電池が充電される際の固体電池の充電電流、充電器供給電流、及び電池平均温度の推移について、模式的に示すグラフである。
図3上、点線で示す充電器供給電流及び、実線で示す充電電流は、
図3の左側のY軸に示される電流(A)に対応する。
図3上、一点鎖線で示す電池平均温度は、
図3の右側のY軸に示される電池平均温度(℃)に対応する。
図3のX軸であるSOC(%)は、固体電池の充電率を示す。SOCは、固体電池の残容量を固体電池の満放電容量で除算し、100を乗じた数値である。
【0027】
図3中の領域aは、固体電池の充電開始直後から、固体電池の電池平均温度が所定温度T1(
図3上では60℃)に達するまでの領域である。領域aでは、充電部から供給可能な最大電流が固体電池に供給される制御が行われる。領域aでは、冷却システム等の固体電池を冷却する装置は作動しておらず、充電器供給電流と充電電流は等しい。領域aでは、固体電池に電流が供給され、SOCが上昇するに従い、電池平均温度が上昇する。これにより、固体電池の電池平均温度を充電効率の高い温度領域にまで速やかに上昇させることができる。
【0028】
図3中の領域bは、固体電池の電池平均温度が所定温度T1に達した直後から、充電電流が低下されるまでの間の領域である。領域bでは、固体電池の冷却システムを稼働させる制御が行われる。即ち、充電器供給電流の一部が、冷却システムの稼働用に消費される。従って、充電器供給電流から上記冷却システム等の稼働用に消費される電流が差し引かれた電流が充電電流となり、充電器供給電流と充電電流との間に差が生じる。領域bでは、電池平均温度は所定温度T1に略維持される。
【0029】
図3中の領域cは、充電電流の低下開始後から、SOCが所定の数値に達して充電が完了するまでの間の領域である。領域cでは、固体電池に対する充電電流を低下させる制御が行われる。上記制御により、固体電池の発熱量を低下できる。領域cでは、冷却システム等の装置の稼働も継続される。充電電流の低下量や低下開始のタイミングは、例えば、冷却システム稼働用の電力が充電電流に対して大きくなり過ぎることによる充電効率の低下等を考慮して任意に決定できる。また、
図3に示すように、冷却システム等の作動を継続させると共に、充電電流を徐々に低下させるような制御を行うことが好ましい。これにより、電池平均温度を所定温度T1に維持することができる。
【0030】
<二次電池>
本実施形態に係る急速充電装置の充電対象である二次電池としての固体電池は、固体の電解質を備える二次電池である。固体電池は、電解質が液体であるリチウムイオン電池等よりも耐熱性に優れ、高温での充電が可能である。例えば、電池劣化や安全性を考慮した場合、リチウムイオン電池の充電温度の上限は40℃前後であるが、固体電池は充電温度を60℃以上、又は80℃以上とした場合に、優れた充電効率が得られる。
固体電池を大電流、高電圧を要する車載用等の用途に用いる場合、複数の固体電池を組み合わせてモジュール化した固体電池モジュールが用いられる。本実施形態に係る急速充電装置の充電対象である固体電池モジュールの構成に関して、図面を用いて以下説明する。
【0031】
(固体電池)
図1は、固体電池モジュール100の構成を示す断面図である。固体電池モジュール100は、複数の固体電池セル101と、モジュール構成部材110と、トップカバー113と、バインドバー114と、ロワープレート115と、セパレータ116と、エンドプレート117と、熱伝導材118と、冷却水119と、を備える。
【0032】
固体電池セル101は、正極層と、負極層と、正極層と負極層との間に配置される固体電解質層と、からなる積層体(図示省略)を備える。固体電池セル101の上記構成は特に制限されず、公知のものが用いられる。固体電池セル101は、
図1に示すように、所定の方向に略平行となるように複数配置される。隣接する固体電池セル101間には、セパレータ116が配置される。セパレータ116により、隣接する固体電池セル101間を絶縁し、均等な圧力を付与できる。複数の固体電池セル101及びセパレータ116の両端には、エンドプレート117及びバインドバー114が配置される。エンドプレート117により、複数の固体電池セル101に面圧を付与して整列が維持され、バインドバー114により複数の固体電池セル101の結束性が高められる。
【0033】
固体電池モジュール100の上面は、
図1に示すように、トップカバー113で覆われ、電気絶縁性が保たれる。複数の固体電池セル101は、バインドバー114によってロワープレート115に固定され、形状が維持される。ロワープレート115は、固体電池モジュール100の底面に配置される。ロワープレート115には、固体電池セル101の積層体からの熱を伝導させ、冷却する目的で、シリコーンコンパウンド等の熱伝導材118、及び冷却水119が配置される。冷却水119は、例えば冷却システムにおけるポンプ等の循環装置により循環可能であり、外部と熱交換可能に構成される。
【0034】
モジュール構成部材110は、固体電池モジュール100の上部に配置される。
図2は、
図1におけるA-A’断面図である。
図2に示すように、モジュール構成部材110は、正極タブ104と、端子105と、バスバー106と、電圧検出線107と、サーミスタ108と、負極タブ109と、を含む。正極タブ104及び負極タブ109は、それぞれ固体電池セル101における正極層及び負極層と電気的に接続される。正極タブ104及び負極タブ109は、特に制限されないが、例えば積層体が収容される電池ケース103の内部に収容される。正極タブ104及び負極タブ109は、固体電池モジュール100の中でも高温となる部位である。
【0035】
上記以外に、固体電池モジュール100は、固体電池モジュール100の温度、電圧、電流等を測定可能な複数のセンサ(図示省略)を有する。上記センサで測定可能な温度には、正極タブ104及び負極タブ109の温度が含まれる。
上記複数のセンサはセンサユニットとして構成されていてもよい。上記複数のセンサは、CAN通信線(図示省略)により、急速充電装置における温度取得部とCAN通信可能に構成される。
【0036】
<急速充電方法>
本実施形態に係る急速充電方法について、
図4に示すフロー図を用いて以下説明する。
図4に示すように、本実施形態に係る急速充電方法は、識別ステップS1と、SOC取得ステップS2と、SOC確認ステップS3及びS11と、電池温度取得ステップS4と、電池温度確認ステップS5、S7及びS9と、加温ステップS6と、給電ステップS8、S10、S12及び13と、を有する。
【0037】
識別ステップS1により、充電対象である二次電池の種類を識別する。本実施形態に係る急速充電方法の充電対象は、二次電池としての固体電池である。充電対象の二次電池として、リチウムイオン電池等の他の二次電池が含まれていてもよい。識別ステップS1により、充電対象の二次電池は固体電池であると識別した場合、SOC取得ステップS2に進む。識別ステップS1により、充電対象の二次電池は固体電池以外であると識別した場合、処理を終了する。なお、処理終了後に、充電対象の二次電池に対応する他の急速充電方法を実行してもよい。
【0038】
SOC取得ステップS2では、固体電池の充電率であるSOCを取得する。SOCは、固体電池の充電率を示し、固体電池の残容量を固体電池の満放電容量で除算し、100を乗じた数値である。SOC取得ステップS2の後、SOC確認ステップS3に進む。
【0039】
SOC確認ステップS3では、S2で取得した固体電池のSOC(X)が、予め定めるSOC(X2)未満であるか否かを判断する。X2は、100以下の任意の数値に設定できる。SOC確認ステップS3でYESと判断された場合、即ち、SOC(X)がX2未満であると判断された場合、電池温度取得ステップS4に進む。SOC(X)がX2以上であると判別された場合、固体電池の充電は完了した、又は充電を要しない、と判断して、処理を終了する。
【0040】
温度取得ステップS4では、充電対象である固体電池の電池温度Tを取得する。温度取得ステップS4により取得される固体電池の温度は、固体電池の中でも高温となる、例えば、正極タブ104及び負極タブ109のうち少なくともいずれかの温度である。温度取得ステップS4では、複数の固体電池セル101の複数の正極タブ104及び負極タブ109の温度を取得して平均値を算出し、電池温度Tとしてもよい。又は、固体電池の充電電流、充電電圧、充電時間、外気温度、及び電池の劣化状態SOHのうち少なくともいずれかを含むパラメータから、固体電池の電池温度を推定してもよい。温度取得ステップS4の後、電池温度確認ステップS5に進む。
【0041】
電池温度確認ステップS5では、S4で取得した固体電池の電池温度Tが、温度T0以上であるか否かを判断する。この判断がNOである場合、即ち、電池温度TがT0未満である場合、通常の充電を行うと電析リスクがあるため、加温ステップS6に進む。この判断がYESである場合、即ち、電池温度TがT0以上である場合、電池温度確認ステップS7に進む。
【0042】
加温ステップS6では、ヒーター等を用いて固体電池の加温を行う。又は、充電電流I1=供給電流I0、冷却システム電流I2=0として、固体電池の充電を行う。加温ステップ6により、固体電池の電池温度Tが、電析リスクのある温度域以上の温度域である、温度T0以上の温度域にまで速やかに上昇される。充電を行う場合の充電電流I1は、電析が起こらないように、通常の充電における電流よりも小さい電流とすることが好ましい。加温ステップS6の後、温度取得ステップS4に進み、電池温度TがT0以上となるまで加温ステップS6を繰り返し行う。
【0043】
電池温度確認ステップS7では、S4で取得した固体電池の電池温度Tが、温度T1以上であるか否かを判断する。この判断がNOである場合、即ち、電池温度TがT0以上T1未満である場合、給電ステップS8に進む。この判断がYESである場合、電池温度確認ステップS9に進む。
【0044】
給電ステップS8では、充電電流I1=供給電流I0、冷却システム電流I2=0として、固体電池の充電を行う。この場合、充電電流I1=供給電流I0は、急速充電器の供給電力Pが最大電力(Pmax)となる電流である。給電ステップS8により、充電時間を短縮できると共に、固体電池の電池温度Tが、充電効率の高い温度域である、温度T1以上の温度域に達するまでに要する時間を短縮できる。給電ステップS8の後、SOC取得ステップS2に進み、充電が完了するまで処理を継続する。
【0045】
電池温度確認ステップS9では、S4で取得した固体電池の電池温度Tが、温度T2以上であるか否かを判断する。この判断がNOである場合、即ち、電池温度TがT1以上T2未満である場合、SOC確認ステップS11に進む。この判断がYESである場合、即ち、電池温度TがT2以上である場合、給電ステップS10に進む。
【0046】
給電ステップS10では、充電電流I1=0、冷却システム電流I0=I2として、固体電池の充電を行う。給電ステップS10により、固体電池の電池温度Tが、充電が禁止される温度域である温度T2以上の温度域である場合には充電が行われず、冷却システムに対してのみ給電が行われる。このため、固体電池の電池温度Tは、温度T2未満の温度域にまで速やかに下降される。給電ステップS10の後、電池温度取得ステップS4に進み、電池温度がT2未満となるまで固体電池の冷却が行われる。
【0047】
SOC確認ステップS11では、S2で取得した固体電池のSOC(X)が、予め定めるSOC(X1)以上であるか否かを判断する。この判断がNOである場合、給電ステップS12に進む。この判断がYESである場合、給電ステップS13に進む。
【0048】
給電ステップS12では、充電電流I1=供給電流I0-冷却システム電流I2として充電を行う。なお、充電電流I1>冷却システム電流I2となるようにする。給電ステップS12により、固体電池の電池温度Tを、充電効率の高い温度域である、T1以上T2未満の温度域に維持できる。また、充電電流I1>冷却システム電流I2となるように充電が行われるため、冷却システム電流I2が充電電流I1よりも高い、非効率な状態での充電が行われることがない。給電ステップS12の後、SOC取得ステップS2に進み、充電が完了するまで処理を継続する。
【0049】
給電ステップS13では、充電電流I1=供給電流I0、冷却システム電流I2=0として充電を行う。固体電池のSOC(X)がX1以上である場合において、供給電力Pを最大電力(Pmax)として充電を続行すると、充電効率が低下する。即ち、電池温度Tを充電温度上限であるT2未満に維持しようとする場合、冷却システム電流I2>充電電流I1となる。このため、給電ステップS13では、充電電流I1=供給電流I0は、電池温度TがT2以上とならないよう、通常よりも電流を小さくするように制御される。更に、冷却システム電流I2=0となるように給電が行われるため、冷却システム電流I2が充電電流I1よりも高い、非効率な状態での充電が行われることがない。給電ステップS13の後、SOC取得ステップS2に進み、充電が完了するまで処理を継続する。なお、給電ステップ13において電池温度Tが温度T2を超過した場合、電池温度確認ステップS9から給電ステップS10に進み、電池温度がT2未満にまで下降される。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0051】
本実施形態に係る急速充電装置を、二次電池としての固体電池の急速充電が可能な装置として説明した。しかし、上記に限定されない。本実施形態に係る急速充電装置は、固体電池を急速充電可能であると共に、固体電池以外の二次電池、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池等の急速充電が可能である共用の急速充電装置であってもよい。また、急速充電以外の充電モードへの切り替えが可能であってもよい。例えば、冷却システムの稼働を要しない、充電コストを重視した充電モードへの切り替えが可能であってもよい。
【0052】
本実施形態に係る急速充電装置は、温度取得部と、制御部と、を有するものとして説明した。しかし、上記は必ずしも急速充電装置内に温度取得部や制御部を有するものには限定されない。例えば二次電池としての固体電池が車載用である場合、車両内部に温度取得部と、制御部とが設けられ、急速充電装置と通信可能に構成されていてもよい。
【0053】
本実施形態に係る急速充電装置及び急速充電方法の充電対象である固体電池モジュール100の用途を、車載用等を例に挙げて説明した。しかし、上記に限定されない。固体電池モジュール100の用途は特に限定されず、車載用以外の用途、例えば、ドローン等の無人航空機や家庭用電源に用いられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
100 固体電池モジュール(固体電池)