(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】内部抵抗算出装置、電池制御システム、および内部抵抗算出方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20231211BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 M
H02J7/00 Q
(21)【出願番号】P 2020049105
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井出 誠
(72)【発明者】
【氏名】小屋 貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅秋
【審査官】宮田 繁仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-045857(JP,A)
【文献】特開2013-246088(JP,A)
【文献】特許第5945085(JP,B1)
【文献】特開2018-59812(JP,A)
【文献】特開2019-105589(JP,A)
【文献】特開2014-211307(JP,A)
【文献】特開2018-26307(JP,A)
【文献】特開2008-65989(JP,A)
【文献】特開平8-136629(JP,A)
【文献】特開平8-83628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池に流れる電池電流を取得する電流取得部と、
前記電池に印加される電池電圧を取得する電圧取得部と、
前記電流取得部により取得される前記電池電流を時間で積分して、当該電池に移動した電荷量を算出する電荷量算出部と、
前記電荷量算出部により算出される前記電荷量が予め設定される閾値以上となるまでの前記電池電流および前記電池電圧のそれぞれの変化量に基づいて、前記電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出部と、
を備える内部抵抗算出装置。
【請求項2】
前記電池の温度を取得する温度取得部と、
前記温度取得部により取得される前記電池の温度に基づいて、前記内部抵抗算出部により算出される前記内部抵抗を補正する補正部と、
をさらに備える請求項1に記載の内部抵抗算出装置。
【請求項3】
前記内部抵抗算出部は、前記電池に対して電流を流し始めてから、前記電荷量が前記閾値以上になるまでの経過時間が所定時間以上である場合、前記内部抵抗の算出結果を破棄する請求項1または2に記載の内部抵抗算出装置。
【請求項4】
前記電荷量算出部は、前記電池が無負荷の状態である場合を基準として、前記電荷量を算出する請求項1から3のいずれか一に記載の内部抵抗算出装置。
【請求項5】
電池と、
前記電池に流れる電池電流を取得する取得部と、
前記電池に印加される電池電圧を検出する検出部と、
前記取得部により取得される前記電池電流を時間で積分して、当該電池に移動した電荷量を算出する電荷量算出部と、
前記電荷量算出部により算出される前記電荷量が予め設定される閾値以上となるまでの前記電池電流および前記電池電圧のそれぞれの変化量に基づいて、前記電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出部と、
を備える電池制御システム。
【請求項6】
内部抵抗算出装置で実行される内部抵抗算出方法であって、
電池に流れる電池電流を取得する工程と、
前記電池に印加される電池電圧を取得する工程と、
前記電池電流を時間で積分して、当該電池に移動した電荷量を算出する工程と、
前記電荷量が予め設定される閾値以上となるまでの前記電池電流および前記電池電圧のそれぞれの変化量に基づいて、前記電池の内部抵抗を算出する工程と、
を含む内部抵抗算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、内部抵抗算出装置、電池制御システム、および内部抵抗算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の劣化診断等のために電池の内部抵抗を算出する場合、無負荷状態の電池に対して、矩形波の定格電流(パルス電流)を流し始めてから10秒目の電池電圧の測定を、4水準のパルス電流で実施し、各水準のパルス電流と、各水準において測定される電池電圧と、がなす近似直線の傾きの絶対値を内部抵抗として算出する技術が開発されている。つまり、電池に対して流したパルス電流の変化量である電流変化量と、各水準において測定される電池電圧の変化量である電圧変化量とに基づいて、電池の内部抵抗を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-121710号公報
【文献】特開2010-249770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の技術は、電池単体に対して制御可能な直流電源を用いた試験を前提としており、電池に流す電流がパルス電流であることが条件となるため、電池に流す電流がパルス電流以外である場合、電池の内部抵抗を高精度に算出することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の内部抵抗算出装置は、電流取得部と、電圧取得部と、電荷量算出部と、内部抵抗算出部と、を備える。電流取得部は、電池に流れる電池電流を取得する。電圧取得部は、電池に印加される電池電圧を取得する。電荷量算出部は、電流取得部により取得される電池電流を時間で積分して、当該電池に移動した電荷量を算出する。内部抵抗算出部は、電荷量算出部により算出される電荷量が予め設定される閾値以上となるまでの電池電流および電池電圧のそれぞれの変化量に基づいて、電池の内部抵抗を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態にかかる電池制御システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態にかかる蓄電池制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、電池システムに流れる入力電流が定格のパルス電流である場合における内部抵抗の算出処理の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、電池システムに流れる入力電流がランプ電流である場合における内部抵抗の算出処理の一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態にかかる蓄電池制御装置における電池セルの内部抵抗の算出処理の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態にかかる蓄電池制御装置における電池セルの内部抵抗の算出処理の一例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態にかかる蓄電池制御装置における内部抵抗の算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2の実施形態にかかる蓄電池制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付の図面を用いて、本実施形態にかかる内部抵抗算出装置、電池制御システム、および内部抵抗算出方法の一例について説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる電池制御システムの構成の一例を示す図である。まず、
図1を用いて、本実施形態にかかる電池制御システムの構成の一例について説明する。
【0009】
本実施形態にかかる電池制御システムは、
図1に示すように、電池システム11と、蓄電池制御装置10と、を有する。
【0010】
電池システム11は、電池モジュール4と、BMU(Battery Management Unit)3と、を有する。
【0011】
電池モジュール4は、複数の電池セル1(電池の一例)と、CMU(Cell Monitoring Unit)2と、を有する。電池セル1は、充放電が可能な蓄電機能部である。
【0012】
CMU2は、複数の電池セル1のそれぞれに印加される電池電圧(以下、端子電圧と言う)、電池セル1の電池温度等を検出する検出部の一例である。そして、CMU2は、複数の電池セル1それぞれの端子電圧、電池温度等を、BMU3に出力する。
【0013】
BMU3は、電池システム11全体を監視する共に、保護を行う。本実施形態では、BMU3は、電池システム11に流れる入力電流、各電池モジュール4のセル電圧、温度を監視し、異常検出時には電池システム11の保護を行う。また、本実施形態では、BMU3は、CMU2により検出される端子電圧および電池温度、および外部電源から電池システム11に流れる入力電流等の各種情報を蓄電池制御装置10に出力する。
【0014】
ここで、外部電源から電池システム11に流れる入力電流は、電池システム11への電流の供給が開始されてから、任意時間経過した後に、定格電流に達し、その後、定格電流のまま維持(継続)する電流を含む。
【0015】
蓄電池制御装置10(内部抵抗算出装置の一例)は、BMU3から入力される各種情報を用いて、電池制御システム全体を制御する装置である。
【0016】
図2は、第1の実施形態にかかる蓄電池制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。次に、
図2を用いて、本実施形態にかかる蓄電池制御装置10の機能構成の一例について説明する。
【0017】
本実施形態では、蓄電池制御装置10は、
図2に示すように、電流取得部12、電圧取得部13、電荷量算出部14、内部抵抗算出部15、表示制御部16、および表示装置17を有する。
【0018】
電流取得部12は、電池セル1に流れるセル電流(電池電流の一例)を取得する。本実施形態では、電流取得部12は、BMU3から出力される入力電流を、互いに並列接続される複数の電池モジュール4の数で除算した値を、電池セル1に流れるセル電流として算出(取得)する。
【0019】
電圧取得部13は、BMU3から出力される端子電圧(すなわち、電池セル1に印加される端子電圧)を取得する。
【0020】
電荷量算出部14は、電流取得部12により取得されるセル電流を時間で積分して、当該電池セル1に移動した電荷量を算出する。ここで、電荷量の算出においては、無負荷状態からの起動時や所定動作を行った後など、予め設定されるタイミングで実施することが好ましい。
【0021】
内部抵抗算出部15は、電荷量算出部14により算出される電荷量が所定閾値以上となるまでのセル電流および端子電圧のそれぞれの変化量に基づいて、電池セル1の内部抵抗を算出する。これにより、電池セル1の内部抵抗を算出する際に電池システム11に流れる入力電流がパルス電流でない場合でも、電池セル1に流れるセル電流を時間で積分した電荷量を指標として電池セル1の内部抵抗を高精度に算出することができる。
【0022】
ここで、所定閾値は、予め設定される閾値である。本実施形態では、所定閾値は、予め設定される時間(例えば、10s)、定格のパルス電流を電池セル1に流した場合に当該電池セル1に移動する電荷量(すなわち、予め設定される時間、定格のパルス電流を電池セル1に流した場合に、当該定格のパルス電流を時間で積分して算出される電荷量)である。
【0023】
表示制御部16は、内部抵抗算出部15による電池セル1の内部抵抗の算出結果に基づいて、電池セル1の劣化状態を示す劣化情報を生成し、当該生成した劣化情報を表示装置17に表示させる。ここで、劣化情報は、劣化していない電池セル1の内部抵抗を基準とする、内部抵抗算出部15により算出される電池セル1の内部抵抗の倍率であっても良い。また、劣化情報は、電池セル1の劣化の度合いを示す情報(例えば、電池セル1が劣化していない場合には「青」、電池セル1が劣化しているが使用可能な場合には「黄色」、電池セル1が劣化していて使用できない場合には「赤」)である。
【0024】
図3は、電池システムに流れる入力電流が定格のパルス電流である場合における内部抵抗の算出処理の一例を説明するための図である。
図4は、電池システムに流れる入力電流がランプ電流である場合における内部抵抗の算出処理の一例を説明するための図である。
図3および
図4において、縦軸は、電池セル1に流れるセル電流Itおよび端子電圧Vtを表し、横軸は、時間tを表す。
【0025】
次に、
図3および
図4を用いて、電池システム11に流れる入力電流が定格のパルス電流である場合および電池システム11に流れる入力電流がランプ電流である場合のそれぞれにおける内部抵抗の算出処理の一例について説明する。
【0026】
図3に示すように、電池セル1の内部抵抗R(Ω)を正確に算出する場合、無負荷の状態の電池セル1の端子電圧Vt(=V0)およびセル電流It(=I0)と、無負荷の状態から定格のパルス電流である入力電流を電池システム11に流し始めてから予め設定される時間t(例えば、10s)経過した際の電池セル1の端子電圧Vt(=Vn)およびセル電流It(=In)と、を測定する。ここで、電池セル1が無負荷の状態とは、電池セル1にセル電流Itが流れていない状態である。また、電池セル1が無負荷の状態は、電池セル1に印加される端子電圧Vtおよび電池セル1の温度が一定の場合が好ましい。
【0027】
そして、端子電圧Vtの変化量である電圧変化量ΔV(=Vn-V0)と、セル電流Itの変化量である電流変化量ΔI(=In-I0)と、の割合ΔV/ΔIを、電池セル1の内部抵抗Rとして算出する。規格(JEVS D714)によると、パルス電流を電池セル1に10s流した場合の端子電圧Vtおよびセル電流Itから算出する内部抵抗Rは、一般的な電池の性能を表す指標となり、電池セル1の劣化が進むと大きくなる。したがって、内部抵抗Rの経年変化を追うことによって、電池セル1の劣化状態を診断することが可能となる。
【0028】
しかしながら、この内部抵抗Rの算出方法では、制御可能な直流電源を用いて、電池セル1に対してセル電流Itを流すことを前提としているため、当該セル電流Itがパルス電流であることが条件となっている。その一方で、電池セル1を電池システム11に搭載したまま、内部抵抗Rを算出して、電池セル1の劣化状態を診断することが求められている。この場合、電池システム11の運用において、無負荷の状態の電池セル1に対してパルス電流を予め設定された時間t継続して流す運用が存在すれば、内部抵抗Rを算出することができるが、電池システム11の運用や機器制約によっては、電池セル1に対してパルス電流を流すことができず、内部抵抗Rを正確に算出することが困難な場合がある。
【0029】
具体的には、
図4に示すように、電池セル1に流れるセル電流Itが、ある一定の傾きをもって定格の電流に達するランプ電流である場合、無負荷の状態の電池セル1にセル電流Itを流し始めてから予め設定される時間t経過するまでに、電池セル1に流入する電荷量が少なくなる。そのため、電圧変化量ΔV(=Vn-V0)と、電流変化量ΔI(=In-I0)と、の割合ΔV/ΔIを、電池セル1の内部抵抗Rとして算出する場合、電池セル1に流れるセル電流Itがパルス電流である場合と比較して、内部抵抗Rに誤差が生じる。
【0030】
そこで、本実施形態では、上述したように、内部抵抗算出部15は、電池セル1に流れるセル電流Itを時間で積分して算出した電荷量が所定閾値以上となるまでのセル電流Itと端子電圧Vtのそれぞれの変化量に基づいて、電池セル1の内部抵抗Rを算出する。
【0031】
図5および
図6は、第1の実施形態にかかる蓄電池制御装置における電池セルの内部抵抗の算出処理の一例を説明するための図である。
図5および
図6において、縦軸は、電池セル1流れるセル電流Itおよび端子電圧Vtを表し、横軸は、時間tを表す。
【0032】
次に、
図5および
図6を用いて、本実施形態にかかる蓄電池制御装置10における内部抵抗Rの算出処理の一例について説明する。
【0033】
図5に示すように、内部抵抗算出部15は、電池セル1に流れるセル電流Itが定格のパルス電流である場合において、電池セル1が無負荷の状態である時間t(=0)から電池セル1にセル電流Itを流し始めてから、予め設定される時間n経過する時間t(=n)までに、電池セル1に流入する電荷量Qnを、所定閾値に設定する。
【0034】
そして、
図6に示すように、電池セル1に流れるセル電流Itがランプ電流である場合、内部抵抗算出部15は、電池セル1が無負荷の状態である時間t(=0)から電池セル1にセル電流Itを流し始め、電荷量算出部14により算出される電荷量Qmが電荷量Qn(所定閾値Qn)に達する時間t(=m)までの電流変化量ΔIおよび電圧変化量ΔVに基づいて、電池セル1の内部抵抗Rを算出する。
【0035】
これにより、電池セル1に定格のパルス電流を予め設定される時間t(=n)流した場合に電池セル1に流入する電荷量を、電池セル1に流した場合における電流変化量ΔIおよび電圧変化量ΔVに基づいて、電池セル1の内部抵抗を算出することができる。その結果、電池セル1の内部抵抗を算出する際に電池システム11に流れる入力電流がパルス電流でない場合でも、電池セル1に流れるセル電流を時間で積分した電荷量を指標として電池セル1の内部抵抗を高精度に算出することができる。
【0036】
図7は、第1の実施形態にかかる蓄電池制御装置における内部抵抗の算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。次に、
図7を用いて、本実施形態にかかる蓄電池制御装置10における内部抵抗の算出処理の流れの一例について説明する。
【0037】
電流取得部12は、予め設定されるタイミング等のある時間t(=0)における、電池セル1のセル電流It(=I0)を取得する(ステップS701)。また、電圧取得部13は、時間t(=0)における、電池セル1の端子電圧Vt(=V0)を取得する(ステップS701)。さらに、電荷量算出部14は、電池セル1に移動した電荷量Qtを0に設定する(ステップS701)。
【0038】
次に、電流取得部12は、時間tを、セル電流Itのサンプリング周期Ts(例えば、0.12s)の分だけ進めて、セル電流Itを取得する(ステップS702)。また、電圧取得部13も、時間tを、サンプリング周期Tsの分だけ進めて、端子電圧Vtを取得する(ステップS702)。
【0039】
電荷量算出部14は、セル電流Itが取得される度に、当該取得したセル電流Itと、サンプリング周期Tsを乗算して、電荷変化量ΔQtを算出する。そして、電荷量算出部14は、当該算出した電荷変化量ΔQtを、電荷量Qtに加算して、セル電流Itを時間で積分した新たな電荷量Qtを算出する(ステップS703)。
【0040】
内部抵抗算出部15は、新たな電荷量Qtが算出される度に、当該電荷量Qtが所定閾値Qn以上となったか否かを判断する(ステップS704)。電荷量Qtが所定閾値Qn未満であると判断された場合(ステップS704:No)、ステップS702に戻る。
【0041】
一方、電荷量Qtが所定閾値Qn以上となったと判断した場合(ステップS704:Yes)、内部抵抗算出部15は、電荷量Qtが所定閾値Qn以上となった際の時間t(=m)を特定し、当該特定した時間mにおける端子電圧Vt(=Vm)およびセル電流It(=Im)を取得する(ステップS705)。
【0042】
次いで、内部抵抗算出部15は、時間mが所定時間以上であるか否かを判断する(ステップS706)。ここで、所定時間は、予め設定される時間であり、例えば、60sである。そして、時間mが所定時間以上である場合、内部抵抗算出部15は、電池セル1の内部抵抗の算出を行わない。
【0043】
すなわち、内部抵抗算出部15は、電池セル1に対してセル電流を流し初めてから、電荷量Qtが所定閾値以上となるまでの経過時間が所定時間以上である場合、電池セル1の内部抵抗の算出を行わない。若しくは、内部抵抗算出部15は、電池セル1に対してセル電流を流し始めてから、電荷量Qtが所定閾値以上となるまでの経過時間が所定時間以上である場合、電池セル1の内部抵抗の算出結果を破棄する。これにより、電池セル1に流れる電荷量Qtが所定閾値に達するまでに時間がかかり、電池セル1の温度変化等によって電池セル1の内部抵抗の算出精度が低くなる場合には、電池セル1の内部抵抗の算出が行われないので、電池セル1の内部抵抗の算出精度を高めることができる。
【0044】
一方、時間mが所定時間未満である場合、内部抵抗算出部15は、時間t(=0)における電池セル1のセル電流I0および端子電圧V0、および時間mにおける電池セル1のセル電流Imおよび端子電圧Vmを用いて、電圧変化量ΔV(=Vm-V0)と、電流変化量ΔI(=Im-I0)と、の割合ΔV/ΔIを、内部抵抗Rとして算出する(ステップS707)。
【0045】
これにより、第1の実施形態にかかる蓄電池制御装置10によれば、電池セル1の内部抵抗を算出する際に電池システム11に流れる入力電流がパルス電流でない場合でも、電池セル1に流れるセル電流を時間で積分した電荷量を指標として電池セル1の内部抵抗を高精度に算出することができる。
【0046】
本実施形態では、蓄電池制御装置10は、電池セル1のセル電流および端子電圧を取得して、当該取得したセル電流および端子電圧を用いて、電池セル1単体の内部抵抗を算出しているが、複数の電池セル1が直列接続または並列接続された電池モジュール4または電池ユニット毎のセル電流および端子電圧を用いて、電池モジュール4または電池ユニット毎の内部抵抗を算出することも可能である。
【0047】
(第2の実施形態)
本実施形態は、電池セルの温度を取得し、当該取得した電池セルの温度に基づいて、電池セルの内部抵抗の算出結果を補正する例である。以下の説明では、第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0048】
図8は、第2の実施形態にかかる蓄電池制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態では、蓄電池制御装置800は、電流取得部12、電圧取得部13、電荷量算出部14、内部抵抗算出部15、表示制御部16、および表示装置17に加えて、温度取得部21および内部抵抗温度補正部22を有する。
【0049】
温度取得部21は、BMU3から出力される電池セル1の電池温度を取得する。
【0050】
内部抵抗温度補正部22は、温度取得部21により取得される電池セル1の電池温度に基づいて、内部抵抗算出部15により算出される電池セル1の内部抵抗を補正する補正部の一例である。具体的には、内部抵抗温度補正部22は、電池セル1の電池温度に基づいて、予め設定される電池温度(例えば、25℃)で、電池セル1の内部抵抗の算出結果を正規化する。これにより、電池セル1の内部抵抗の温度特性による影響を排除することができるので、電池セル1の劣化による内部抵抗の経年変化を追うことが可能となる。
【0051】
電池セル1は、当該電池セル1の電池温度が低い場合、その内部抵抗が大きくなり、当該電池セル1の電池温度が高い場合、その内部抵抗が小さくなるという温度特性を有する。このため、電池セル1の内部抵抗の経年変化を追って当該電池セル1の劣化状態を診断する場合、電池温度が同じ状態で電池セル1の内部抵抗を算出できれば、電池セル1の温度特性を考慮せずに、電池セル1の劣化状態を診断することができる。
【0052】
しかし、車両に搭載されている電池セル1等、外気温や周囲の熱源等によってその電池温度が一定でない電池は、その内部抵抗の算出に用いるセル電流等の測定値を検出する際の電池温度が異なり、電池の内部抵抗の経年変化を追ったとしても、内部抵抗の経年変化が劣化によって大きくなっているのか、電池の温度の低下によって内部抵抗が大きくなっているのかが判別することが困難である。
【0053】
そこで、本実施形態では、内部抵抗温度補正部22は、上述したように、温度取得部21により取得される電池セル1の電池温度に基づいて、内部抵抗算出部15により算出される電池セル1の内部抵抗を補正する。例えば、内部抵抗温度補正部22は、補正テーブルを参照して、取得した電池セル1の電池温度に対応する内部抵抗の補正値を特定する。ここで、補正テーブルは、電池セル1の電池温度と、電池セル1の特性試験等によって求めた内部抵抗の補正値と、を対応付けるテーブルである。そして、内部抵抗温度補正部22は、当該特定した補正値を用いて、内部抵抗算出部15による内部抵抗の算出結果を補正する。
【0054】
このように、第2の実施形態にかかる蓄電池制御装置800によれば、電池セル1の内部抵抗の温度特性による影響を排除することができるので、電池セル1の劣化による内部抵抗の経年変化を追うことが可能となる。
【0055】
(第3の実施形態)
本実施形態は、電池セルが無負荷の状態にある場合を基準として、電池セルのセル電流を積分して、当該電池セルに移動した電荷量を算出する例である。以下の説明では、第1,2の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0056】
本実施形態では、電荷量算出部14は、電池セル1が無負荷の状態である場合を基準として、電流取得部12により取得されるセル電流を時間で積分して、当該電池セル1に移動した電荷量を算出する。これにより、電池セル1の内部抵抗の算出前の電池セル1のセル電流が、電池セル1の端子電圧に与える影響を抑制することができるので、電池セル1の内部抵抗の算出精度を向上させることができる。
【0057】
ここで、電池セル1が無負荷の状態とは、電池セル1に流れるセル電流が0Aである状態である。また、電池セル1が無負荷の状態は、電池セル1に流れるセル電流が0Aであることに加えて、電池セル1の端子電圧および電池温度の安定している状態(例えば、電池セル1の端子電圧および電池温度が予め設定された端子電圧および電池温度となっている状態)であることが好ましい。
【0058】
電池セル1の内部抵抗を算出する前に当該電池セル1を運用している場合、電池セル1は、当該電池セル1が有するコンデンサ成分によって、直ちに、その端子電圧が安定した定常状態にはならない場合がある。また、電池セル1は、発熱体であるから、電池セル1に流れるセル電流が0Aになったとしても、直ちに、その電池温度が安定した定常状態ならない場合がある。このような状態では、電池セル1の内部抵抗の算出に用いる端子電圧の変化に影響が生じ、電池セル1の内部抵抗の算出結果に誤差が発生する。
【0059】
そこで、本実施形態では、電荷量算出部14は、電池セル1が無負荷の状態である場合を基準として、電流取得部12により取得されるセル電流を時間で積分して、当該電池セル1に移動した電荷量を算出する。
【0060】
このように、第3の実施形態にかかる蓄電池制御装置10,800によれば、電池セル1の内部抵抗の算出前の電池セル1のセル電流が、電池セル1の端子電圧に与える影響を抑制することができるので、電池セル1の内部抵抗の算出精度を向上させることができる。
【0061】
以上説明したとおり、第1から第3の実施形態によれば、電池セル1の内部抵抗を算出する際に電池システム11に流れる入力電流がパルス電流でない場合でも、電池セル1に流れるセル電流を時間で積分した電荷量を指標として電池セル1の内部抵抗を高精度に算出することができる。
【0062】
なお、本実施形態の蓄電池制御装置10,800で実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)等に予め組み込まれて提供される。本実施形態の蓄電池制御装置10,800で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0063】
さらに、本実施形態の蓄電池制御装置10,800で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の蓄電池制御装置10,800で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0064】
本実施形態の蓄電池制御装置10,800で実行されるプログラムは、上述した各部(電流取得部12、電圧取得部13、電荷量算出部14、内部抵抗算出部15、温度取得部21、内部抵抗温度補正部22、表示制御部16)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはプロセッサの一例としてのCPU(Central Processing Unit)が上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、電流取得部12、電圧取得部13、電荷量算出部14、内部抵抗算出部15、温度取得部21、内部抵抗温度補正部22、表示制御部16が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 電池セル
2 CMU
3 BMU
4 電池モジュール
10,800 蓄電池制御装置
11 電池システム
12 電流取得部
13 電圧取得部
14 電荷量算出部
15 内部抵抗算出部
16 表示制御部
17 表示装置
21 温度取得部
22 内部抵抗温度補正部