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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】建具装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/23 20060101AFI20231211BHJP
   E06B 7/18 20060101ALI20231211BHJP
   E06B 7/22 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
E06B7/23 A
E06B7/18 E
E06B7/22 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020063153
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161708
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 洋一郎
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-61194(JP,U)
【文献】実開平6-24189(JP,U)
【文献】登録実用新案第3150881(JP,U)
【文献】特開2011-38330(JP,A)
【文献】特開2005-194836(JP,A)
【文献】特開平11-303533(JP,A)
【文献】特開平10-266723(JP,A)
【文献】実開昭60-41496(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不動面の上方側で開閉動作する建具本体と、戸幅方向にわたって前記建具本体から下方へ突出して前記不動面に対し接触又は近接する気密部とを備え、前記気密部が、上下幅を調節可能に設けられ、
前記気密部は、前記建具本体に下方向きに支持されたベース部材と、前記ベース部材から下方へ突出して前記不動面に対し接触又は近接するとともに少なくとも一部が撓み可能な気密材とを備え、前記気密材が、前記ベース部材に対し上下方向に位置調節可能に設けられ、
前記気密部の上端側に戸幅方向へわたる軸状部が設けられ、前記建具本体には、前記気密部の前記軸状部を上方側から抱持する抱持部が設けられ、
前記抱持部は、前記気密部の前記軸状部を上方側から抱持して、前記気密部を前記建具本体に対し、戸厚方向に沿って首振り運動可能に支持していることを特徴とする建具装置。
【請求項2】
前記ベース部材と前記気密材とのうち、その一方の部材には、上下方向の長孔が戸幅方向に間隔を置いて複数設けられ、複数の前記長孔にそれぞれ挿通される止着具を他方の部材に螺合することで、前記ベース部材に前記気密材を固定していることを特徴とする請求項記載の建具装置。
【請求項3】
前記ベース部材との間に前記気密材を挟持する挟持片が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の建具装置。
【請求項4】
前記抱持部は、戸厚方向に対向する一片部及び他片部と、前記一片部と前記他片部の上端側間を接続する接続片部とから一体に構成され、
前記一片部は、その内面を戸厚方向へ湾曲させた縦断面形状を呈し、
前記他片部は、前記一片部と対向するようにして、その内面を戸厚方向へ湾曲させた縦断面形状を呈することを特徴とする請求項1~3何れか1項記載の建具装置
【請求項5】
前記抱持部における戸幅方向の両端部には、それぞれ、前記抱持部内の空間を外部に連通する開口部が設けられ、
前記建具本体の戸先面の下端側には、前記抱持部の前記開口部を開閉するカバー部材が設けられることを特徴とする請求項1~4何れか1項記載の建具装置
【請求項6】
前記気密部は、前記建具本体に対し上下方向へ所定量微動するように支持されていることを特徴とする請求項1~何れか1項記載の建具装置。
【請求項7】
前記建具本体の下端側には、開口部を下方へ向けて戸幅方向へ連続する凹部が設けられ、前記気密部は、前記建具本体における前記凹部内に支持され、下端側を前記凹部から下方へ突出していることを特徴とする請求項1~何れか1項記載の建具装置。
【請求項8】
前記気密部は、前記建具本体に対し、戸幅方向へ抜差し可能に嵌り合っていることを特徴とする請求項1~何れか1項記載の建具装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開き扉(ドア)や、上吊り引戸、上吊り折戸等、建具本体とその下方側の不動面との間に隙間を有する建具装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1(図6及び図7参照)に示されるように、下方側の床面との間に隙間を確保しながら回動する建具本体と、この建具本体の下端側に戸幅方向にわたって設けられて上下方向へ回動可能な可動バーと、この可動バーに止着されて下方へ突出するとともに床面に対し接触又は近接する可撓性シートとを具備したものがある。
この従来技術によれば、建具が戸幅方向に傾いた場合でも、可動バー及び可撓性シートが上方または下方へ回動するため、可撓性シートと床面との摩擦抵抗が大きくなって建具の開閉動作が妨げられたり、可撓性シートと床面との間に隙間が形成され閉鎖性(気密性や遮音性、断熱性、遮光性等を含む)が損なわれたりするのを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-178647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術によれば、可動バーの回動支点側においては、可撓性シートが上下方向へ移動する量が比較的小さい。このため、例えば、建具本体と床面との距離が現場状況によりばらついた場合には、前記回動支点の近傍において、可撓性シートと床面との摩擦抵抗が過剰に大きくなったり、可撓性シートと床面との間に大きな隙間が生じたりするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
不動面の上方側で開閉動作する建具本体と、戸幅方向にわたって前記建具本体から下方へ突出して前記不動面に対し接触又は近接する気密部とを備え、前記気密部が、上下幅を調節可能に設けられ、前記気密部は、前記建具本体に下方向きに支持されたベース部材と、前記ベース部材から下方へ突出して前記不動面に対し接触又は近接するとともに少なくとも一部が撓み可能な気密材とを備え、前記気密材が、前記ベース部材に対し上下方向に位置調節可能に設けられ、前記気密部の上端側に戸幅方向へわたる軸状部が設けられ、前記建具本体には、前記気密部の前記軸状部を上方側から抱持する抱持部が設けられ、前記抱持部は、前記気密部の前記軸状部を上方側から抱持して、前記気密部を前記建具本体に対し、戸厚方向に沿って首振り運動可能に支持していることを特徴とする建具装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、気密部の上下幅を調節して、気密部と不動面の間の摩擦抵抗が過剰に大きくなったり、気密部と不動面の間に大きな隙間が生じたりするのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る建具装置の一例を示す正面図である。
図2】同建具装置の要部縦断面図である。
図3】同建具装置の要部斜視図である。
図4】(a)と(b)にそれぞれ本発明に係る建具装置の他例を示す要部縦断面図である。
図5】(c)と(d)にそれぞれ本発明に係る建具装置の他例を示す要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第一の特徴は、不動面の上方側で開閉動作する建具本体と、戸幅方向にわたって前記建具本体から下方へ突出して前記不動面に対し接触又は近接する気密部とを備え、前記気密部が、上下幅を調節可能に設けられている(図1図5参照)。
【0009】
第二の特徴として、前記気密部は、前記建具本体に下方向きに支持されたベース部材と、前記ベース部材から下方へ突出して前記不動面に対し接触又は近接するとともに少なくとも一部が撓み可能な気密材とを備え、前記気密材が、前記ベース部材に対し上下方向に位置調節可能に設けられている(図2図5参照)。
【0010】
第三の特徴として、前記ベース部材と前記気密材とのうち、その一方の部材には、上下方向の長孔が戸幅方向に間隔を置いて複数設けられ、複数の前記長孔にそれぞれ挿通される止着具を他方の部材に螺合することで、前記ベース部材に前記気密材を固定している(図3参照)。
【0011】
第四の特徴として、前記ベース部材との間に前記気密材を挟持する挟持片が設けられている(図2図5参照)
【0012】
第五の特徴として、前記気密部は、前記建具本体に対し、戸厚方向に沿って首振り運動するように支持されている(図2図5参照)。
【0013】
第六の特徴として、前記気密部の上端側に戸幅方向へわたる軸状部が設けられ、前記建具本体には、前記気密部の前記首振り運動を可能にすべく前記軸状部を上方側から抱持する抱持部が設けられている(図2図5参照)。
【0014】
第七の特徴として、前記気密部は、前記建具本体に対し上下方向へ所定量微動するように支持されている(図2図5参照)。
【0015】
第八の特徴として、前記建具本体の下端側には、開口部を下方へ向けて戸幅方向へ連続する凹部が設けられ、前記気密部は、前記建具本体における前記凹部内に支持され、下端側を前記凹部から下方へ突出している(図2図5参照)。
【0016】
第九の特徴として、前記気密部は、前記建具本体に対し、戸幅方向へ抜差し可能に嵌り合っている(図3参照)。
【0017】
なお、後述する実施態様では、以下の構成要件のみを必須とした発明も開示している。
この発明の一つは、不動面の上方側で開閉動作する建具本体と、戸幅方向にわたって前記建具本体から下方へ突出して前記不動面に対し接触又は近接する気密部とを備え、前記気密部は、前記建具本体に対し、戸厚方向に沿って首振り運動するように支持されている(図2図5参照)。
この発明によれば、開放動作時と閉鎖動作時で気密部と不動面の間の摩擦抵抗に差が生じるようなことを防ぐことができる。
【0018】
また、他の発明としては、不動面の上方側で開閉動作する建具本体と、戸幅方向にわたって前記建具本体から下方へ突出して前記不動面に対し接触又は近接する気密部とを備え、前記建具本体の下端側には、開口部を下方へ向けて戸幅方向へ連続する凹部が設けられ、前記気密部は、前記建具本体に対する接続箇所を前記凹部内に有し、下端側を前記凹部から下方へ突出している(図2参照)。
この発明によれば、気密部を外部から目立たないように構成することができる。
【0019】
さらに、他の発明としては、不動面の上方側で開閉動作する建具本体と、戸幅方向にわたって前記建具本体から下方へ突出して前記不動面に対し接触又は近接する気密部とを備え、前記気密部は、前記建具本体に対し、戸幅方向へ抜差し可能に嵌り合っている(図3参照)。
この発明によれば、気密部の交換やメンテナンス等を容易に行うことができる。
【0020】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
本明細書中、「戸幅方向」とは、建具本体20の横幅方向を意味し、左右方向とも称する。
また、「戸厚方向」とは、戸幅方向に直交する建具本体20の厚みの方向を意味する。
【0021】
図1は、本発明に係る建具装置の一例を示す。
この建具装置1は、矩形枠状の建具枠10と、建具枠10内の不動面の上方側で開閉動作する建具本体20と、戸幅方向にわたって建具本体20から下方へ突出して不動面14aに対し接触又は近接する気密部30とを備え、建具本体20を開閉回動するドア装置を構成している。
【0022】
建具枠10は、それぞれ上下方向へ延設される左右の縦枠部材11,12と、これら縦枠部材11,12の上端側間に接続された上枠部材13と、縦枠部材11,12の下端側間に接続された下枠部材14とから一体枠状に構成され、建物等の開口部に固定される。
【0023】
縦枠部材11,12、上枠部材13、下枠部材14の各々は、金属等の硬質材料から長尺状に構成される。
【0024】
下枠部材14は、図示例によれば下方を開口した溝形鋼状に形成され、全閉状態の建具本体20の下端部との間に略一定の隙間を確保して戸幅方向へ連続している。
この下枠部材14において、建具本体20の下端に対向するようにして露出する上面は、気密部30の下端に接触又は近接するとともに、気密部30に相対し不動な不動面14aとして機能する。
【0025】
また、図2に示すように、下枠部材14の閉鎖方向側(好ましくは屋内側)の端部には、不動面14aから立ち上がるようにして、階段状に段部15が設けられる。この段部15の立上り面には、戸幅方向にわたる長尺状の気密材16が設けられる。
【0026】
段部15は、下枠部材14とは別体の部材から構成してもよいし、下枠部材14の一部分を加工して形成してもよい。
気密材16は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料からなり、段部15に対し嵌合や接着等により一体的に接続される。この気密材16は、建具本体20が全閉した際に、この建具本体20の閉鎖方向側の面に当接する。
【0027】
建具本体20は、図示例によれば、正面視略矩形板状の扉(ドア)である。この建具本体20は、その戸幅方向の一端側が、単数又は複数のヒンジ21を介して、建具枠10の一方の縦枠部材12に回転自在に支持される。図中、符号22は、開閉操作等のためのノブである。
【0028】
この建具本体20は、戸幅方向に間隔を置いてそれぞれ上下方向へ延設された縦骨材(図示せず)と、左右の前記縦骨材の上端側間を接続するように戸幅方向へ連続する上側横骨材(図示せず)と、左右の前記縦骨材の下端側間を接続するように戸幅方向へ連続する下側骨材23と、これら縦骨材及び上下の横骨材を戸厚方向に挟むようにして覆う表裏側の外装板24,24とを一体的に具備している(図1及び図2参照)。
【0029】
下側骨材23は、溝形鋼状の部材であり、開口部を下方へ向けて戸幅方向へ連続している。この下側骨材23により、建具本体20の下端側には、開口部を下方へ向けて戸幅方向へ連続する略溝形状の凹部20aが確保される。
【0030】
この凹部20a内には、戸厚方向の端部寄りに、戸幅方向へわたる気密部30が固定されている。この気密部30は、気密部30を、戸厚方向に沿って首振り運動し且つ上下方向へ所定量微動するように支持する。抱持部25を下側骨材23に固定する手段は、例えば、溶接や、ネジ止め、リベット止め、嵌合、接着等とすればよい。
図2に示す好ましい一例では、気密部30を、凹部20a内において、戸厚方向における閉鎖方向側(好ましくは屋内側)に偏って配置するとともに、枠側の下枠部材16に近接するようにしている。この構成によれば、閉鎖方向側に偏った位置に、複数の気密部分を密集させることができ、ひいては、当該建具装置1による気密性や閉鎖性等を、より向上することができる。
【0031】
抱持部25は、開口部を下方へ向けて戸幅方向へ連続する縦断面略凹状の部材であり、図2に示すように、戸厚方向に対向する一片部25aと他片部25b、これら一片部25aと他片部25bの上端側間を接続する接続片部25c等から一体に構成される。この抱持部25は、一片部25aと他片部25bの間で、気密部30の軸状部31aを上方側から抱持して、気密部30を首振り運動を可能に支持している。
【0032】
一片部25aは、その内面を下方へいくにしたがって徐々に戸厚方向内側(気密部30側)へ湾曲させた縦断面形状を呈し、建具本体20の戸幅方向へ連続している。
他片部25bは、一片部25aと対向するようにして、その内面を下方へ行くにしたがって徐々に戸厚方向へ湾曲させた縦断面形状を呈し、建具本体20の戸幅方向へ連続している。
【0033】
一片部25aの縦断面形状と他片部25bの縦断面形状は、線対称である(図2参照)。
一片部25a及び他片部25bの下端側内面の曲率は、気密部30の軸状部31aの外周面の曲率と略同一である。
【0034】
接続片部25cは、気密部30の軸状部31aとの間に、気密部30を上下方向へ所定量微動可能にする隙間sを確保するようにして、一片部25aと他片部25bの上端部間に設けられる。
【0035】
抱持部25における戸幅方向の両端部には、それぞれ、抱持部25内の空間を外部に連通する開口部(図示せず)が設けられる。
建具本体20の戸先面の下端側には、抱持部25の前記開口部を開閉するカバー部材26が設けられる。
このカバー部材26は、例えば矩形平板状に形成され、建具本体20の戸先面に対し、ネジやボルト、嵌合等により、着脱可能又は開閉可能に装着される。
【0036】
したがって、カバー部材26を開放すれば、気密部30を、抱持部25から抜き取ったり、抱持部25に差し込んだりすることが可能である。
すなわち、建具本体20の開放状態において、建具本体20の戸先部側から、気密部30を抜差しすることができ、気密部30に対する交換作業性やメンテナンス性等が良好である。
【0037】
また、気密部30は、下端側を凹部20aから下方へ突出しおり、その上下幅(換言すれば上下寸法)を調整可能である。
【0038】
この気密部30は、建具本体20の抱持部25に下方向きに支持されたベース部材31と、ベース部材31から下方へ突出して不動面14aに対し近接又は接触するとともに弾性的に撓み可能な気密材32と、気密材32をベース部材31との間に挟むようにして止着具34によりベース部材31に止着された挟持片33とを具備し、気密材32を、ベース部材31に対し上下に位置節可能に接続している。
【0039】
ベース部材31は、抱持部25内に抱持された軸状部31aと、この軸状部31aから下方へ突出して抱持部25外へ延設された被止着片31bとを一体に有する。このベース部材31は、例えば、硬質金属材料等の硬質材料から形成される。
【0040】
軸状部31aは、戸幅方向へわたって連続する縦断面略円形状に形成され、その下端部から被止着片31bを下方へ突出している。
被止着片31bは、凹部20a内にて下方へ延設されるとともに、軸状部31aに沿って戸幅方向にも延設され、戸幅方向へ長尺な正面視長方形の板状に形成される。
【0041】
気密材32は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料(例えばEPDM)によって戸幅方向へ長尺な正面視長方形の板状に形成される。
この気密材32は、ベース部材31の被止着片31bに重ね合わせられ、下端部をベース部材31よりも下方へ突出する(図2参照)。
この気密材32には、上下方向の長孔32aが、戸幅方向に所定の間隔を置いて複数設けられる。
なお、この気密材32は、可撓性を有するシート材や板材、軟質部材等、上記弾性材料以外の材料から形成することが可能であり、他例としては、撓み可能な軟質シートや、ブラシ等としてもよい。
【0042】
挟持片33は、ベース部材31の被止着片31bとの間に気密材32を挟むようにして、気密材32に重ね合わせられる。この挟持片33には、気密材32の長孔32aに対応するように、複数の円形状の貫通孔33aが設けられる。
この挟持片33は、貫通孔33aに挿通される止着具34によってベース部材31及び気密材32に一体的に固定される。
【0043】
挟持片33の下端部は、被止着片31bの下端部と同一又は該下端部よりも上側に位置する。気密材32の下端側は、被止着片31b及び挟持片33よりも下方へ突出している。
【0044】
止着具34は、先端側に雄ネジ部を有するとともに後端側に頭部を有するネジ又はボルトである。この止着具34は、その雄ネジ部が、挟持片33の貫通孔33aに挿通され、さらに気密材32の長孔32aに挿通されて被止着片31bに螺合し締め付けられる。
この止着具34は、図示例によれば、ドライバー等の一般工具により締め付け可能なネジであるが、他例としては、蝶ネジ等のように手動で締め付け可能なネジや、図示例以外のネジやボルトを用いることが可能である。
【0045】
次に上記構成の建具装置1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
上記構成の建具装置1によれば、建具本体20戸先面下側のカバー部材26を開放し、気密部30を戸先方向へスライドさせれば、気密部30を建具本体20から取り外すことができる。
そして、各止着具34を緩めて、気密材32の上下位置を調節し、止着具34を締め直せば、気密材32を上下方向に異なる位置で固定して、気密部30の上下幅を調節することができる。
したがって、現場の状況等により、例えば、気密材32と不動面14aとの間に、大きな隙間が生じた場合や、気密材32と不動面14aとの摩擦抵抗が大きすぎる場合には、ベース部材31に対し気密材32を上方又は下方へずらして、前記隙間や前記摩擦抵抗を適宜に調整することができる。
【0046】
特に本実施態様によれば、止着具34及び長孔32a等を戸幅方向に複数設けているため、戸幅方向に偏った位置に前記隙間や前記摩擦抵抗を生じた場合にも、気密材32を戸幅方向において斜めにずらすようにして、前記隙間や前記摩擦抵抗を適宜に調整することができる。
【0047】
その上、本実施態様では、気密部30が建具本体20に対し微動可能であって、戸厚方向に首振り運動可能であり、且つ弾性的に撓むことも可能である。
このため、組立寸法上の誤差により建具本体20と不動面14aの間の寸法がばらついた場合や、不動面14a上に異物や凹凸等がある場合等でも、建具本体20の開閉動作中、気密部30を上下微動及び首振り運動させて、建具本体20と不動面14aの間の摩擦抵抗の変動を軽減することができる。
【0048】
また、建具本体20を全閉した際には、建具本体20下端側の気密部30と、段部15の気密材16とにより、戸厚方向に集中する二か所の接触箇所を確保することができ、これら接触箇所により良好な気密性能を得ることができる。
【0049】
よって、上記構成の建具装置1によれば、現場状況等により建具本体20による閉鎖性(気密性や遮音性、断熱性、遮光性等を含む)が低下したり、建具本体20の開閉時の摩擦抵抗が過剰に大きくなったりするのを防ぐことができる。
【0050】
<変形例>
上記実施態様によれば、気密材32の長孔32aに挿通した止着具34をベース部材31に螺合するようにしたが、他例としては、ベース部材31の被止着片31bに上下方向の長孔を設け、この長孔に挿通した被止着片31bを挟持片33に螺合する構成とすることも可能である。
【0051】
また、図示例によれば、気密部30の下端(気密材32)と不動面14aが完全接触しているが、気密部30の下端と不動面14aの間は、戸幅方向の全長にわたって接触してもよいし、戸幅方向における一部で接触し他の一部で非接触していてもよい。さらに他例としては、気密部30の下端と不動面14aの間が戸幅方向における略全域にて非接触状態で近接する態様等とすることも可能である。
【0052】
また、上記実施形態によれば、不動面14aを下枠部材14の上面としているが、他例としては、下枠部材14を省き、前記不動面を床面や地面、路面等とすることも可能である。
さらに他例としては、図2に示す構成から、段部15及び気密材16等を省いた態様や、下枠部材14を床面や地面、路面等に置換して、段部15及び気密材16を省いた態様等とすることも可能である。
【0053】
また、気密部30は、上記実施態様に限定されるものでなく、例えば、図4(a)(b)及び図5(c)(d)に示す態様とすることが可能である。
【0054】
図4(a)に示す気密部30’は、上記気密部30から挟持片33を省き、止着具34の頭部(又は座金等)を気密材32に対し直接接触させて、気密材32を固定したものである。
【0055】
図4(b)に示す気密部30”は、上記気密部30におけるベース部材31をベース部材31”に置換したものである。ベース部材31”は、軸状部31aに対し戸厚方向へずれた被止着片31b”を有する。気密材32は、被止着片31b”に止着されて、軸状部31aの略真下に位置する。
この構成によれば、戸厚方向の重心位置を気密材32の位置に略一致させて、気密部30”の下端側を略真下へ向けることができ、ひいては、気密材32が戸厚方向に傾斜して、開放動作時と閉鎖動作時で気密材32と不動面14aの間の摩擦抵抗に差が生じるようなことを防ぐことができる。
【0056】
図5(c)に示す気密部30Xは、上記気密部30における気密材32を、一部分が撓み可能な気密材32’に置換したものである。
気密材32’は、全体的には気密材32と略同様の外観視形状を呈する。この気密材32’は、ベース部材31と挟持片33によって挟まれる被挟持部32a’と、この被挟持部32a’から下方へ延設された撓み片部32b’とを、二色成形によって一体的に形成している。
被挟持部32a’は、硬質材料(例えば金属材料や硬質プラスチック等)によって気密材32の上半部側と略同形状に形成され、長孔32aを有する。
撓み片部32b’は、気密材32と同様の材料(例えば、ゴムやエラストマー樹脂、軟質材、ブラシ等)によって、気密材32の下半部側と略同形状に形成される。
よって、図5(c)に示す30Xによれば、気密材32’がベース部材31と挟持片33の間の挟持力によりへたったり劣化したりするのを防ぐことができ、ひいては、気密材32’による閉鎖性を長期間にわたって維持することができる。
【0057】
また、図5(d)に示す気密部30Yは、上記気密部30における気密材32を、一部分が撓み可能に形成された気密材32”に置換したものである。
気密材32”は、ベース部材31と挟持片33の間に位置する芯材32a”と、この芯材32a”を覆って下方へ垂れさがった可撓性部32b”とを一体的に具備している。
【0058】
芯材32a”は、硬質材料(例えば金属材料や硬質プラスチック等)によって気密材32の上半部側と略同形状(例えば、フラットバー状)に形成され、長孔32aを有する。
【0059】
可撓性部32b”は、戸幅方向へ長尺な矩形状の軟質シート(弾性シートを含む)であり、その上半部側が芯材32a”に一体化され、下半部側を垂れ下げている。
図示例によれば、可撓性部32b”の上半部側は、二つ折にされ、その内部に芯材32a”を挟むようにして、芯材32a”を縦断面略袋状に覆ている。この袋状上半部の下端側は、閉鎖されるように縫い付けられている。この袋状上半部における表裏側には、芯材32a”の長孔32aに連通するように、縦長状の貫通孔が形成される。
【0060】
また、可撓性部32b”の下半部側は、被止着片31bよりも下方へ突出するようにして垂れ下がり、戸幅方向へわたって、不動面14aに近接又は接触する。
【0061】
よって、図5(d)に示す気密部30Yによれば、上記気密部30と同様に、閉鎖性の低下や摩擦抵抗の増大を防ぐことができる上、耐久性及び生産性等にも優れている。
【0062】
なお、上記実施態様によれば、開き扉(ドア)である建具本体20の下端側に気密部30を設けたが、上吊り引戸、又は上吊り折戸を構成する建具本体の下端側に気密部30を設けることも可能である。
【0063】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
1:建具装置
10:建具枠
14a:不動面
20:建具本体
20a:凹部
23:下側骨材
30,30’,30”:気密部
31,31”:ベース部材
32:気密材
33:挟持片
s:隙間
図1
図2
図3
図4
図5