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特許7399785磁気共鳴イメージング装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
A61B5/055 370
A61B5/055 380
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020085649
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021178079
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寳珠山 裕
(72)【発明者】
【氏名】松永 奈美
(72)【発明者】
【氏名】京谷 勉輔
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-503460(JP,A)
【文献】特開2005-118553(JP,A)
【文献】特表2019-531783(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0159723(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の前立腺を含む範囲を撮像した位置決め用の磁気共鳴画像から、前記被検体の2つの大腿骨頭を検出する検出部と、
検出された前記2つの大腿骨頭の各々の上端部を通る線分に基づいて、前記被検体の前立腺の診断用の磁気共鳴画像の撮像における撮像対象領域を決定する決定部と、
を備える磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記診断用の磁気共鳴画像は、2次元の磁気共鳴画像であり、
前記決定部は、前記2次元の磁気共鳴画像の撮像におけるスライス方向、スライス中心、スライス幅、および撮像断面の面内方向の回転量、のうちの少なくとも1つを決定する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記2次元の磁気共鳴画像は、アキシャル画像を含み
前記決定部は、前記2つの大腿骨頭の各々の上端部を通る前記線分に垂直な方向を、前記アキシャル画像の撮像におけるスライス方向として決定する、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記位置決め用の磁気共鳴画像から、さらに、前記被検体の恥骨結合を検出し、
前記決定部は、前記2つの大腿骨頭の位置と前記恥骨結合の位置とに基づいて、前記アキシャル画像の撮像におけるスライス幅を決定する、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記位置決め用の磁気共鳴画像から、さらに、前記被検体の複数の関節唇を検出し、
前記決定部は、前記複数の関節唇に基づいて、前記アキシャル画像の撮像における前記面内方向の回転量を決定する、
請求項3または4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記2次元の磁気共鳴画像は、サジタル画像を含み、
前記検出部は、前記位置決め用の磁気共鳴画像から、前記被検体の複数の関節唇を検出し、
前記決定部は、前記複数の関節唇のうち、前記被検体の身体の幅方向に沿って向かい合う2つの関節唇の各々を結ぶ2本の線分の各々の中点を求め、求めた2つの中点を結ぶ線分に垂直な方向を、前記サジタル画像の撮像におけるスライス方向として決定する、
請求項2から5のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記位置決め用の磁気共鳴画像から、前記被検体の骨盤を検出し、
前記決定部は、前記骨盤上の特徴点に基づいて、前記サジタル画像の撮像における前記スライス幅を決定する、
請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記検出部は、前記位置決め用の磁気共鳴画像から、さらに、前記被検体の前立腺を検出し、
前記決定部は、検出された前記前立腺の中心を通る位置に、前記サジタル画像の撮像における前記スライス中心を決定する、
請求項6または7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記検出部は、前記位置決め用の磁気共鳴画像から、さらに、前記被検体の恥骨結合を検出し、
前記決定部は、検出された前記前立腺の位置に基づいて決定した前記スライス中心が、検出された前記恥骨結合の位置から所定の距離以上離れている場合、検出された前記恥骨結合の位置に基づいて、前記スライス中心の位置を補正する、
請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記2次元の磁気共鳴画像は、コロナル画像を含み、
前記検出部は、前記位置決め用の磁気共鳴画像から、前記被検体の複数の関節唇を検出し、
前記決定部は、前記複数の関節唇のうち、前記被検体の身体の前後方向に沿って向かい合う2つの関節唇の各々を結ぶ2本の線分の各々の中点を求め、求めた2つの中点を結ぶ線分に垂直な方向を、前記コロナル画像の撮像におけるスライス方向として決定する、
請求項2から9のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記検出部は、前記位置決め用の磁気共鳴画像から、さらに、前記被検体の恥骨結合を検出し、
前記決定部は、前記被検体の身体の前後方向における前記恥骨結合の位置に基づいて、前記コロナル画像のスライス幅を決定する、
請求項10に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記2次元の磁気共鳴画像は、アキシャル画像を含み、
前記検出部は、前記位置決め用の磁気共鳴画像から、前記被検体の尿道および前立腺尖部を検出し、
前記決定部は、前記被検体の前記尿道の開始位置と前記前立腺尖部とを結ぶ線分を求め、該線分と平行な方向を、前記アキシャル画像の撮像におけるスライス方向として決定する、
請求項2から11のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記2次元の磁気共鳴画像は、コロナル画像を含み、
前記検出部は、前記位置決め用の磁気共鳴画像から、前記被検体の尿道および前立腺尖部を検出し、
前記決定部は、前記被検体の前記尿道の開始位置と前記前立腺尖部とを結ぶ線分を求め、該線分と垂直な方向を、前記コロナル画像の撮像におけるスライス方向として決定する、
請求項2から12のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
前記決定部によって決定された撮像対象領域に基づいて、前記診断用の磁気共鳴画像を撮像する処理を実行する撮像処理部、をさらに備える、
請求項1から13のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項15】
前記決定部によって決定された撮像対象領域を表す画像を、表示部に表示させる表示制御部、をさらに備える、
請求項1から14のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項16】
前記検出部は、磁気共鳴画像と、前記磁気共鳴画像上で2つの大腿骨頭が描出された画像領域とを対応付けて学習した学習済みモデルに、前記位置決め用の磁気共鳴画像を入力することにより、前記位置決め用の磁気共鳴画像に描出された前記被検体の2つの大腿骨頭を検出する、
請求項1から15のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項17】
被検体の前立腺を含む範囲を撮像した位置決め用の磁気共鳴画像から、前記被検体の2つの大腿骨頭を検出する検出ステップと、
検出された前記2つの大腿骨頭の各々の上端部を通る線分に基づいて、前記被検体の前立腺の診断用の磁気共鳴画像の撮像における撮像対象領域を決定する決定ステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置では、被検体の診断用の画像の撮像が行われる前に、準備スキャンで撮像されたロケータ画像上で、ユーザが手動で診断用の画像の撮像対象領域を設定する場合があった。このように本撮像用の撮像対象領域を設定することを、位置決めという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-213084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、前立腺のMR(Magnetic Resonance)撮像の際の、ユーザによる位置決め作業の作業負荷を低減することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、検出部と決定部とを備える。検出部は、被検体の前立腺を含む範囲を撮像した位置決め用の磁気共鳴画像から、被検体の2つの大腿骨頭を検出する。決定部は、検出された2つの大腿骨頭の各々の上端部を通る線分に基づいて、被検体の前立腺の診断用の磁気共鳴画像の撮像における撮像対象領域を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の一例を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る学習済みモデルの一例について説明する図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る2次元のアキシャル画像の撮像の際の撮像対象領域の一例について説明する図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る撮像断面の面内方向の回転の一例について説明する図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るアキシャル画像のスライス方向の決定手法の一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係るアキシャル画像のスライス上端の決定手法の一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係るアキシャル画像のスライス下端の決定手法の一例を示す図である。
図8図8は、第1の実施形態に係るアキシャル画像の面内方向の回転量の決定手法の一例を示す図である。
図9図9は、第1の実施形態に係るサジタル画像およびコロナル画像のスライス方向の決定手法の一例を示す図である。
図10図10は、第1の実施形態に係るサジタル画像の撮像におけるスライス中心の決定手法の一例を示す図である。
図11図11は、第1の実施形態に係るサジタル画像の撮像におけるスライス幅の決定手法の一例を示す図である。
図12図12は、第1の実施形態に係る位置決め処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図13図13は、第2の実施形態に係るコロナル画像およびアキシャル画像のスライス方向の決定手法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、磁気共鳴イメージング装置およびプログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0008】
図1は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置100の一例を示すブロック図である。図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場磁石101と、静磁場電源(非図示)と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源104と、寝台105と、寝台制御回路106と、送信コイル107と、送信回路108と、受信コイル109と、受信回路110と、シーケンス制御回路120と、計算機システム130とを備える。
【0009】
なお、図1に示す構成は一例に過ぎない。例えば、シーケンス制御回路120および計算機システム130内の各部は、適宜統合若しくは分離して構成されてもよい。なお、磁気共鳴イメージング装置100に被検体P(例えば、人体)は含まれない。
【0010】
図1に示すX軸、Y軸、およびZ軸は、磁気共鳴イメージング装置100に固有の装置座標系を構成する。例えば、Z軸方向は、傾斜磁場コイル103の円筒の軸方向に一致し、静磁場磁石101によって発生する静磁場の磁束に沿って設定される。また、Z軸方向は、寝台105の長手方向と同方向であり、寝台105上に載置された被検体Pの頭尾方向とも同方向となる。また、X軸方向は、Z軸方向に直交する水平方向に沿って設定される。Y軸方向は、Z軸方向に直交する鉛直方向に沿って設定される。
【0011】
静磁場磁石101は、中空の略円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に静磁場を発生する。静磁場磁石101は、例えば、超伝導磁石等であり、静磁場電源から電流の供給を受けて励磁する。静磁場電源は、静磁場磁石101に電流を供給する。別の例として、静磁場磁石101は、永久磁石でも良く、この場合、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場電源を備えなくても良い。また、静磁場電源は、磁気共鳴イメージング装置100とは別に備えられても良い。
【0012】
傾斜磁場コイル103は、中空の略円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、傾斜磁場電源104から個別に電流の供給を受けて、X、Y、及びZの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。また、傾斜磁場電源104は、シーケンス制御回路120の制御の下、傾斜磁場コイル103に電流を供給する。
【0013】
寝台105は、被検体Pが載置される天板105aを備え、寝台制御回路106による制御の下、天板105aを、患者などの被検体Pが載置された状態で、撮像口内へ挿入する。寝台制御回路106は、計算機システム130による制御の下、寝台105を駆動して天板105aを長手方向および上下方向に移動させる。
【0014】
送信コイル107は、高周波磁場を印加することで、被検体Pの任意の領域を励起する。送信コイル107は、例えば被検体Pの全身を囲むホールボディ(Whole body)型のコイルである。送信コイル107は、送信回路108からRFパルスの供給を受けて、高周波磁場を発生し、該高周波磁場を被検体Pに印加する。送信回路108は、シーケンス制御回路120の制御の下、送信コイル107にRFパルスを供給する。
【0015】
受信コイル109は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、高周波磁場の影響によって被検体Pから発せられる磁気共鳴信号(以下、MR(Magnetic Resonance)信号と称する)を受信する。受信コイル109は、MR信号を受信すると、受信したMR信号を受信回路110へ出力する。
【0016】
なお、図1では、受信コイル109が、送信コイル107と別個に設けられる構成としたが、これは一例であり、当該構成に限定されるものではない。例えば、受信コイル109が送信コイル107と兼用される構成を採用しても良い。
【0017】
受信回路110は、受信コイル109から出力されるアナログのMR信号をアナログ・デジタル(AD)変換して、MRデータを生成する。また、受信回路110は、生成したMRデータをシーケンス制御回路120へ送信する。なお、AD変換に関しては、受信コイル109内で行っても構わない。また、受信回路110はAD変換以外にも任意の信号処理を行うことが可能である。
【0018】
シーケンス制御回路120は、計算機システム130から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源104、送信回路108および受信回路110を駆動することによって、被検体Pの撮像を行う。
【0019】
ここで、シーケンス情報は、撮像を行うための手順を定義した情報である。シーケンス情報には、傾斜磁場電源104が傾斜磁場コイル103に供給する電流の強さや電流を供給するタイミング、送信回路108が送信コイル107に供給するRFパルスの強さやRFパルスを印加するタイミング、受信回路110がMR信号を検出するタイミング等が定義される。被検体Pの身体のうち撮像対象となる領域の範囲に応じて、シーケンス情報は異なる。
【0020】
シーケンス制御回路120は、プロセッサにより実現されるものとしても良いし、ソフトウェアとハードウェアとの混合によって実現されても良い。
【0021】
さらに、シーケンス制御回路120は、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信回路110からMRデータを受信すると、受信したMRデータを計算機システム130へ転送する。
【0022】
計算機システム130は、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御や、MR画像の生成等を行う。図1に示すように、計算機システム130は、NW(ネットワーク)インタフェース131、記憶回路132、処理回路133、入力インタフェース134、およびディスプレイ135を備える。
【0023】
NWインタフェース131は、シーケンス制御回路120および寝台制御回路106、と通信する。例えば、NWインタフェース131は、シーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信する。また、NWインタフェース131は、シーケンス制御回路120からMRデータを受信する。
【0024】
記憶回路132は、NWインタフェース131によって受信されたMRデータ、後述の処理回路133によってk空間に配置されたk空間データ、および処理回路133によって生成された画像データ等を記憶する。記憶回路132は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、または光ディスク等である。
【0025】
入力インタフェース134は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。入力インタフェース134は、例えば、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。入力インタフェースは処理回路133に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し処理回路133へと出力する。なお、本明細書において入力インタフェースはマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、計算機システム130とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェースの例に含まれる。
【0026】
ディスプレイ135は、処理回路133の制御の下、撮像条件の入力を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、処理回路133によって生成された磁気共鳴画像等を表示する。ディスプレイ135は、例えば、液晶表示器等の表示デバイスである。ディスプレイ135は、表示部の一例である。
【0027】
処理回路133は、磁気共鳴イメージング装置100の全体の制御を行う。より詳細には、処理回路133は、一例として、撮像処理機能133a、検出機能133b、決定機能133c、表示制御機能133d、および受付機能133eを備える。撮像処理機能133aは、撮像処理部の一例である。検出機能133bは、検出部の一例である。決定機能133cは、決定部の一部である。表示制御機能133dは、表示制御部の一例である。受付機能133eは、受付部の一例である。
【0028】
ここで、例えば、処理回路133の構成要素である撮像処理機能133a、検出機能133b、決定機能133c、表示制御機能133d、および受付機能133eの各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路132に記憶されている。処理回路133は、プロセッサである。例えば、処理回路133は、プログラムを記憶回路132から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路133は、図1の処理回路133内に示された各機能を有することとなる。なお、図1においては単一のプロセッサにて撮像処理機能133a、検出機能133b、決定機能133c、表示制御機能133d、および受付機能133eにて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路133を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、図1においては単一の記憶回路132が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路133は個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0029】
撮像処理機能133aは、磁気共鳴イメージング装置100の各部を制御して、磁気共鳴画像の撮像を実行する。例えば、撮像処理機能133aは、シーケンス情報の生成、MRデータの収集、k空間データの生成、および磁気共鳴画像の生成を実行する。
【0030】
より詳細には、撮像処理機能133aは、撮像する磁気共鳴画像の種類、および撮像対象領域に応じて、撮像の手順を定義したシーケンス情報を生成し、生成したシーケンス情報を、NWインタフェース131を介してシーケンス制御回路120に送信する。シーケンス制御回路120は、撮像処理機能133aによって生成されたシーケンス情報に基づいて、各種のパルスシーケンスを実行する。
【0031】
また、撮像処理機能133aは、各種のパルスシーケンスの実行によって被検体Pから発せられたMR信号から変換されたMRデータを、NWインタフェース131を介してシーケンス制御回路120から収集する。また、撮像処理機能133aは、収集したMRデータを、傾斜磁場により付与された位相エンコード量や周波数エンコード量に従って配置させる。k空間に配置されたMRデータは、k空間データと称される。k空間データは、記憶回路132に保存される。
【0032】
また、撮像処理機能133aは、記憶回路132に記憶されたk空間データに基づいて磁気共鳴画像を生成する。例えば、撮像処理機能133aは、k空間データにフーリエ変換などの再構成処理をすることにより、磁気共鳴画像を生成する。撮像処理機能133aは、生成した磁気共鳴画像を、例えば、記憶回路132に保存する。
【0033】
本実施形態においては、撮像処理機能133aは、本撮像の前に、位置決め用の磁気共鳴画像の撮像を実行する。位置決め用の磁気共鳴画像は、ロケータ画像(Locator)またはスカウト像(Scout)とも呼ばれ、本撮像における撮像断面の位置決めに使用される画像である。本撮像は、診断用の磁気共鳴画像の撮像である。
【0034】
本実施形態においては、位置決め用の磁気共鳴画像は、被検体Pの前立腺を含む範囲を撮像した磁気共鳴画像であるものとする。また、位置決め用の磁気共鳴画像は、3次元画像でも良いし、2次元のマルチスライス画像でも良い。また、位置決め用の磁気共鳴画像は、診断用の磁気共鳴画像よりも、画素数が少なく、粗い画像であっても良い。
【0035】
あるいは、位置決め用の磁気共鳴画像は、高精細な3次元磁気共鳴画像でも良い。この場合は、診断用の3次元磁気共鳴画像が、位置決め用の磁気共鳴画像を兼ねても良い。
【0036】
また、本実施形態においては、本撮像で撮像される診断用の磁気共鳴画像は、被検体Pの前立腺の診断に用いられる2次元の磁気共鳴画像である。より詳細には、本実施形態においては、本撮像では、アキシャル(Axial)画像(体軸横断面像)、サジタル(Sagittal)画像(矢状断面像)、およびコロナル(Coronal)画像(冠状断面像)の3種類の診断用の2次元の磁気共鳴画像が撮像される。なお、診断用の磁気共鳴画像は、アキシャル画像、サジタル画像、およびコロナル画像の全てを含まなくとも良く、少なくとも1つを含むものであれば良い。
【0037】
診断用の2次元の磁気共鳴画像を撮像する際の撮像対象領域は、後述の決定機能133cによって決定される。撮像処理機能133aは、決定機能133cによって決定された撮像対象領域に基づいてシーケンス情報を生成し、本撮像を実行する。また、決定機能133cによって決定された撮像対象領域70の位置、大きさ、または傾き等がユーザによって変更された場合は、撮像処理機能133aは、変更後の撮像対象領域70に基づいて、シーケンス情報を生成し、本撮像を実行する。
【0038】
検出機能133bは、被検体Pの前立腺を含む範囲を撮像した位置決め用の磁気共鳴画像から、被検体Pの大腿骨頭、骨盤、関節唇、恥骨結合、尿道、および前立腺尖部、のうちの少なくとも1つの組織を検出する。
【0039】
本実施形態においては、検出機能133bは、被検体Pの大腿骨頭、骨盤、関節唇、および恥骨結合を検出するものとする。大腿骨頭、骨盤、関節唇、および恥骨結合は、前立腺の周囲に位置する骨である。なお、本実施形態においては、硬骨および軟骨ともに、単に骨と称する。
【0040】
なお、検出対象はこれに限定されるものではない。検出機能133bは、例えば、被検体Pの大腿骨頭、骨盤、関節唇、恥骨結合、尿道、および前立腺尖部の全てを検出しても良いし、いずれか1つのみを検出するものとしても良い。また、被検体Pの大腿骨頭、骨盤、関節唇、恥骨結合、尿道、および前立腺尖部のうち複数の部位を検出する場合には、全てを検出する必要はない。すなわち、検出機能133bは、例えば、被検体Pの大腿骨頭、骨盤、関節唇、恥骨結合、尿道、および前立腺尖部のうち少なくとも1つを検出する。
【0041】
位置決め用の磁気共鳴画像から大腿骨頭等の組織を検出手法としては、例えば、テンプレートマッチング等の画像処理の手法を採用することができる。この場合は、例えば記憶回路132が、大腿骨頭、骨盤、関節唇、恥骨結合、尿道、および前立腺尖部のテンプレート画像を記憶しているものとする。検出機能133bは、記憶回路132から読み出したテンプレート画像に基づいて、位置決め用の磁気共鳴画像80上で検出対象の組織が描出された画像領域を検出する。
【0042】
また、位置決め用の磁気共鳴画像から大腿骨頭等の組織を検出する手法は、テンプレートマッチングに限定されるものではない。例えば、検出機能133bは、位置決め用の磁気共鳴画像から大腿骨頭等の組織を検出する手法として、深層学習またはその他の機械学習による手法を採用することができる。この場合、検出機能133bは、記憶回路132に記憶された学習済みモデルに、位置決め用の磁気共鳴画像を入力することにより、位置決め用の磁気共鳴画像から、被検体Pの大腿骨頭、骨盤、関節唇、恥骨結合、尿道、および前立腺尖部、のうちの少なくとも1つの組織を検出する。
【0043】
学習済みモデルは、磁気共鳴画像と、磁気共鳴画像上で大腿骨頭、骨盤、関節唇、恥骨結合、尿道、および前立腺尖部のうちの少なくとも1つが描出された画像領域とを対応付けて学習したモデルであるものとする。学習済みモデルは、深層学習またはその他の機械学習による手法によって生成される。
【0044】
図2は、本実施形態に係る学習済みモデル90の一例について説明する図である。図2に示すように、検出機能133bは、学習済みモデル90に、位置決め用の磁気共鳴画像80を入力する。そして、学習済みモデル90は、位置決め用の磁気共鳴画像80上で大腿骨頭、骨盤、関節唇、および恥骨結合が描出された画像領域を、検出結果として出力する。
【0045】
図2に示す例では、学習済みモデル90は、大腿骨頭が描出された画像領域801a,801b、骨盤が描出された画像領域802、関節唇が描出された画像領域803a~803d、および恥骨結合が描出された画像領域804の、位置決め用の磁気共鳴画像80上の座標を出力する。なお、図2では、説明のために各画像領域801a,801b,802,803a~803d,804を矩形で表しているが、学習済みモデル90は、例えば、位置決め用の磁気共鳴画像80上における各画像領域801a,801b,802,803a~803d,804に含まれる個々の画素の座標を出力しても良い。
【0046】
図2では位置決め用の磁気共鳴画像80をコロナル画像として表示しているが、学習済みモデル90は、位置決め用の磁気共鳴画像80の他の方向の断面からも、各画像領域801a,を検出する。また、学習済みモデル90は、さらに、位置決め用の磁気共鳴画像80上で尿道および前立腺尖部が描出された画像領域を出力しても良い。
【0047】
また、検出機能133bは、被検体Pの前立腺を含む範囲を撮像した位置決め用の磁気共鳴画像80から、被検体Pの前立腺を検出する。検出機能133bは、前立腺の検出においても、テンプレートマッチング等の画像処理の手法を採用することができる。例えば、記憶回路132が、前立腺のテンプレート画像を記憶しているものとする。検出機能133bは、記憶回路132から読み出したテンプレート画像に基づいて、位置決め用の磁気共鳴画像80上で前立腺が描出された画像領域を検出する。
【0048】
あるいは、検出機能133bは、学習済みモデルを使用して前立腺を検出しても良い。大腿骨頭等の検出に使用される学習済みモデル90が、さらに前立腺の検出の機能を備えても良いし、前立腺の検出用の他の学習済みモデルが用いられても良い。
【0049】
検出機能133bは、前立腺の周囲の大腿骨頭等の組織、および前立腺の検出結果を、決定機能133cに送出する。
【0050】
図1に戻り、決定機能133cは、検出機能133bによって検出された、被検体Pの大腿骨頭、骨盤、関節唇、恥骨結合、尿道、および前立腺尖部、のうちの少なくとも1つの組織に基づいて、診断用の磁気共鳴画像の撮像における撮像対象領域を決定する。本実施形態においては、決定機能133cは、検出機能133bによって検出された被検体Pの大腿骨頭、骨盤、関節唇、および恥骨結合に基づいて、診断用の磁気共鳴画像の撮像における撮像対象領域を決定する。上述のように、本実施形態においては、診断用の磁気共鳴画像は、アキシャル画像、サジタル画像、およびコロナル画像の3種類の2次元の磁気共鳴画像である。
【0051】
アキシャル画像、サジタル画像、およびコロナル画像における撮像対象領域は、スライス方向、スライス中心、スライス幅、および撮像断面の面内方向の回転量によって特定される。決定機能133cは、診断用の磁気共鳴画像の撮像におけるスライス方向、スライス中心、スライス幅、および撮像断面の面内方向の回転量、のうちの少なくとも1つを決定する。本実施形態の決定機能133cは、スライス方向、スライス中心、スライス幅、および撮像断面の面内方向の回転量、の全てを決定するものとする。なお、決定機能133cは、これらのうちの一部のみを決定するものであっても良い。
【0052】
図3は、本実施形態に係る2次元のアキシャル画像の撮像の際の撮像対象領域70の一例について説明する図である。図3に示すX、Y、Z軸の方向は、被検体Pが図1に示した寝台105に載置された状態である場合のX、Y、Z軸の方向を示す。
【0053】
撮像対象領域70は、スライスとも言う。図3に示すように、撮像対象領域70の面に垂直な方向を、スライス方向という。アキシャル画像においては、スライス方向は、被検体Pの頭尾方向に沿った方向となる。
【0054】
また、スライス幅701は、撮像対象領域70の厚みである。スライス幅701は、スライスカバレッジ(slice coverage)ともいう。また、スライス中心702は、撮像対象領域70の幅方向の中心である。
【0055】
また、図4は、本実施形態に係る撮像断面の面内方向の回転の一例について説明する図である。撮像断面の面内方向は、撮像対象領域70の面と水平な平面方向である。撮像断面の面内方向の回転量は、図3におけるX軸とY軸によって定義されるXY平面における撮像対象領域70の回転量である。XY平面における撮像対象領域70の回転量は、例えば、磁気共鳴イメージング装置100のY軸方向と、撮像対象領域70の縦方向の辺とがなす角の角度、または磁気共鳴イメージング装置100のX軸方向と、撮像対象領域70の横方向の辺とがなす角の角度等で表されても良い。
【0056】
図3、4ではアキシャル画像を例としたが、サジタル画像、およびコロナル画像の撮像の際も、スライス方向、スライス中心、スライス幅、および撮像断面の面内方向の回転量によって撮像対象領域70が定義される。
【0057】
図5は、本実施形態に係るアキシャル画像のスライス方向の決定手法の一例を示す図である。図5では、位置決め用の磁気共鳴画像80の冠状断面を例示する。図5に示すように、決定機能133cは、検出機能133bによって検出された位置決め用の磁気共鳴画像80上の2つの大腿骨頭の各々の上端部60a,60bを通る線分600に垂直な方向を、アキシャル画像の撮像におけるスライス方向として決定する。
【0058】
また、決定機能133cは、検出機能133bによって検出された2つの大腿骨頭の位置と恥骨結合の位置とに基づいて、アキシャル画像のスライス幅701およびスライス中心702を決定する。
【0059】
図6は、本実施形態に係るアキシャル画像のスライス上端711aの決定手法の一例を示す図である。また、図7は、本実施形態に係るアキシャル画像のスライス下端711bの決定手法の一例を示す図である。スライス上端711aとスライス下端711bの間隔が、スライス幅701となる。図6では、位置決め用の磁気共鳴画像80の冠状断面を例示する。また、図7では、位置決め用の磁気共鳴画像80の矢状断面を例示する。
【0060】
決定機能133cは、2つの大腿骨頭の位置を基準として、スライス上端711aを決定する。一例として、決定機能133cは、図6に示すように、2つの大腿骨頭の各々の上端部60a,60bを通る線分600を、被検体Pの頭部側に第1の距離701aだけ平行移動した線分を、スライス上端711aと決定する。第1の距離701aは、例えば20mmであるが、これに限定されるものではない。
【0061】
また、決定機能133cは、恥骨結合の位置を基準として、スライス下端711bを決定する。一例として、決定機能133cは、図7に示すように、恥骨結合の下端61から被検体Pの脚部側に第2の距離701bだけ離れた線分を、スライス下端711bと決定する。第2の距離701bは、例えば10mmであるが、これに限定されるものではない。図7では線分600およびスライス上端711aの記載を省略しているが、スライス下端711bは、線分600およびスライス上端711aと平行であるものとする。
【0062】
また、スライス上端711aと、スライス下端711bとの中間が、アキシャル画像の撮像におけるスライス中心702となる。
【0063】
また、図7では、恥骨結合を、アキシャル画像の撮像におけるスライス下端711bの基準として採用する例を説明したが、恥骨結合は、他の用途にも用いられる。例えば、決定機能133cは、被検体Pの身体の前後方向における恥骨結合の位置に基づいて、コロナル画像の撮像におけるスライス幅701を決定しても良い。
【0064】
また、決定機能133cは、検出機能133bによって検出された4つの関節唇に基づいて、撮像断面の面内方向の回転量を決定する。磁気共鳴イメージング装置100のX軸、Y軸、またはZ軸方向と、位置決め用の磁気共鳴画像80に描出された被検体Pの幅方向、前後方向、または体軸方向にずれがある場合がある。例えば、決定機能133cは、被検体Pの身体の幅方向に沿って向かい合う位置にある2つの関節唇を結ぶ線分と垂直な方向を、被検体Pの体軸方向と判定し、該体軸方向と位置決め用の磁気共鳴画像80のZ軸方向が一致するように、撮像断面の面内方向の回転量を決定しても良い。
【0065】
なお、撮像断面の面内方向の回転量の決定手法はこれに限定されるものではない。図8は、本実施形態に係るアキシャル画像の面内方向の回転量の決定手法の一例を示す図である。図8では、位置決め用の磁気共鳴画像80の体軸横断面を例示する。図8に示す関節唇62a,62bは、被検体Pの前面側の関節唇である。また、関節唇62c,62dは、被検体Pの背面側の関節唇である。関節唇62a~62dは、検出機能133bによって検出される。
【0066】
例えば、決定機能133cは、被検体Pの身体の幅方向に沿って向かい合う関節唇62aと関節唇62bとを結ぶ線分621aの中点63aを求める。また、決定機能133cは、被検体Pの身体の幅方向に沿って向かい合う関節唇62cと関節唇62dとを結ぶ線分621bの中点63bを求める。また、決定機能133cは、被検体Pの身体の前後方向に沿って向かい合う関節唇62aと関節唇62cとを結ぶ線分621cの中点63cを求める。また、決定機能133cは、被検体Pの身体の前後方向に沿って向かい合う関節唇62bと関節唇62dとを結ぶ線分621dの中点63dを求める。
【0067】
そして、例えば、決定機能133cは、中点63aと、中点63bとを通る線分601を求める。また、決定機能133cは、中点63cと、中点63dとを通る線分602を求める。決定機能133cは、例えば、撮像対象領域70の縦方向が線分601と平行になるように、アキシャル画像の面内方向の回転量を求める。あるいは、決定機能133cは、撮像対象領域70の横方向が線分602と平行になるように、アキシャル画像の面内方向の回転量を求めても良い。
【0068】
また、決定機能133cは、診断用のサジタル画像およびコロナル画像のスライス方向を、検出機能133bによって検出された、位置決め用の磁気共鳴画像80上の関節唇62a~62dの位置に基づいて決定する。
【0069】
図9は、本実施形態に係るサジタル画像およびコロナル画像のスライス方向の決定手法の一例を示す図である。図9では、位置決め用の磁気共鳴画像80の体軸横断面を例示する。
【0070】
決定機能133cは、被検体Pの身体の幅方向に沿って向かい合う関節唇62aと関節唇62bとを結ぶ線分621aの中点63aを求める。また、決定機能133cは、被検体Pの身体の幅方向に沿って向かい合う関節唇62cと関節唇62dとを結ぶ線分621bの中点63bを求める。また、決定機能133cは、被検体Pの身体の前後方向に沿って向かい合う関節唇62aと関節唇62cとを結ぶ線分621cの中点63cを求める。また、決定機能133cは、被検体Pの身体の前後方向に沿って向かい合う関節唇62bと関節唇62dとを結ぶ線分621dの中点63dを求める。
【0071】
そして、決定機能133cは、中点63aと、中点63bとを通る線分601を求める。また、決定機能133cは、中点63cと、中点63dとを通る線分602を求める。
【0072】
決定機能133cは、線分601と垂直な方向を、診断用のサジタル画像の撮像におけるスライス方向として決定する。また、決定機能133cは、線分602と垂直な方向を、診断用のコロナル画像の撮像におけるスライス方向として決定する。
【0073】
また、決定機能133cは、検出機能133bによって検出された前立腺の中心を通る位置にスライス中心702を決定する。また、決定機能133cは、検出された前立腺の位置に基づいて決定したスライス中心702が、検出機能133bによって検出された被検体Pの恥骨結合の位置から所定の距離以上離れている場合、検出された恥骨結合の位置に基づいて、スライス中心702の位置を補正する。所定の距離は、特に限定されるものではなく、技師等が設定可能であっても良いし、予め定められていても良い。
【0074】
一般に、検出された前立腺の位置が正確である場合は、被検体Pの幅方向における前立腺の中心は、被検体Pの幅方向における恥骨結合の中心と略一致するが、検出機能133bが前立腺の位置を誤検出した場合等においては、検出された前立腺の位置に基づいて決定したスライス中心702が、検出機能133bによって検出された被検体Pの恥骨結合の位置から所定の距離以上離れる場合がある。
【0075】
図10は、本実施形態に係るサジタル画像の撮像におけるスライス中心の決定手法の一例を示す図である。図10では、位置決め用の磁気共鳴画像80の体軸横断面を例示する。決定機能133cは、位置決め用の磁気共鳴画像80上に描出された恥骨結合の被検体Pの前面側の端部64aと、被検体Pの背面側の端部64bとを通る位置に、スライス中心702が位置するように、スライス中心702の位置を補正する。
【0076】
なお、スライス中心702の補正処理は必須ではなく、決定機能133cは、前立腺の中心を基準としたスライス中心702を採用しても良い。
【0077】
また、決定機能133cは、検出機能133bによって検出された被検体Pの骨盤上の特徴点に基づいて、サジタル画像の撮像におけるスライス幅701を決定する。
【0078】
図11は、本実施形態に係るサジタル画像の撮像におけるスライス幅701の決定手法の一例を示す図である。図11では、位置決め用の磁気共鳴画像80の体軸横断面を例示する。
【0079】
図11に示す特徴点65a,65cは、骨盤の内側に位置し、骨と骨の間の隙間に相当する部位である。また、特徴点65b,65dは、骨盤の内側に位置する凸部である。特徴点65a,65cは被検体Pの前面側に位置し、特徴点65b,65dは被検体Pの背面側に位置する。
【0080】
前立腺は、骨盤の特徴点65a,65dと、特徴点65a,65dと脊椎を挟んでそれぞれ向かい合う位置にある特徴点65c,65bとの間に位置する。このため、決定機能133cは、撮像対象領域70が骨盤の特徴点65a,65dと特徴点65c,65bとの間を含むようにスライス幅701を設定することにより、被検体Pの前立腺を包含するように、サジタル画像の撮像における撮像対象領域70を設定することができる。
【0081】
例えば、決定機能133cは、全ての特徴点65a~65dが撮像対象領域70内に含まれる状態となるスライス幅701のうち、最も狭いスライス幅701を、診断用のサジタル画像の撮像におけるスライス幅701として決定する。
【0082】
なお、スライス幅701の決定条件はこれに限定されるものではない。例えば、決定機能133cは、撮像対象領域70の両側面の輪郭線が全ての特徴点65a~65d上を通るようにスライス幅701を設定しても良い。また、例えば、決定機能133cは、撮像対象領域70の両側面の輪郭線と特徴点65a~65dの各々との間の距離の合計が最も小さくなるように、スライス幅701を設定しても良い。
【0083】
また、スライス幅701の基準となる骨盤上の特徴点は、図11に示した特徴点65a~65dに限定されるものではなく、位置決め用の磁気共鳴画像80上で検出が容易な特徴点であれば、他の特徴点を基準として採用しても良い。
【0084】
決定機能133cは、診断用のアキシャル画像、サジタル画像、およびコロナル画像の撮像における、スライス方向、スライス中心、スライス幅、および撮像断面の面内方向の回転量の決定結果を、撮像処理機能133aに送出する。
【0085】
図1に戻り、表示制御機能133dは、決定機能133cによって決定された撮像対象領域70を表す画像を、ディスプレイ135に表示させる。例えば、表示制御機能133dは、診断用のアキシャル画像、サジタル画像、およびコロナル画像の撮像における撮像対象領域70を位置決め用の磁気共鳴画像80に重畳した画像を、ディスプレイ135に表示させる。なお、表示態様はこれに限定されるものではない。
【0086】
また、表示制御機能133dは、撮像処理機能133aによる本撮像が実行された後に、本撮像で撮像された診断用の磁気共鳴画像を、ディスプレイ135に表示させる。
【0087】
受付機能133eは、ユーザによる各種の操作を、入力インタフェース134を介して受け付ける。より詳細には、受付機能133eは、決定機能133cによって決定された撮像対象領域70のスライス方向、スライス中心、スライス幅、および撮像断面の面内方向の回転量を変更するユーザの操作を受け付ける。例えば、受付機能133eは、ディスプレイ135に表示された撮像対象領域70の位置、大きさ、または傾き等を変更するユーザの操作を、スライス方向、スライス中心、スライス幅、および撮像断面の面内方向の回転量を変更する操作として、受け付けても良い。
【0088】
また、受付機能133eは、位置決めの完了を指示するユーザの操作を受け付ける。例えば、受付機能133eは、ディスプレイ135上に表示された撮像開始ボタンをユーザがマウス等でクリックする操作を、位置決めの完了を指示する操作として受け付ける。なお、撮像開始ボタンは、画像ではなく、物理ボタンとして磁気共鳴イメージング装置100に設けられていても良い。
【0089】
上記説明では、「プロセッサ」が各機能に対応するプログラムを記憶回路から読み出して実行行する例を説明したが、実施形態はこれに限定されない。「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0090】
次に、以上のように構成された本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100で実行される位置決め処理の流れについて説明する。
【0091】
図12は、本実施形態に係る位置決め処理の流れの一例を示すフローチャートである。このフローチャートの前提として、被検体Pが天板105a上に載置されており、天板105aは撮像口内に挿入されているものとする。
【0092】
まず、撮像処理機能133aは、位置決め用の磁気共鳴画像80を撮像する(S1)。
【0093】
そして、検出機能133bは、撮像された位置決め用の磁気共鳴画像80から、テンプレートマッチング等の画像処理、または学習済みモデルによって、前立腺を検出する(S2)。
【0094】
また、検出機能133bは、撮像された位置決め用の磁気共鳴画像80から、テンプレートマッチング等の画像処理、または学習済みモデル90によって前立腺の周囲の骨(大腿骨頭、骨盤、関節唇、および恥骨結合)を検出する(S3)。
【0095】
そして、決定機能133cは、検出機能133bによって検出された組織の位置決め用の磁気共鳴画像80上の位置に基づいて、本撮像におけるスライス方向、スライス中心、スライス幅、および撮像断面の面内方向の回転量を決定する(S4)。
【0096】
次に、表示制御機能133dは、決定機能133cによる位置決めの結果を、ディスプレイ135に表示させる(S5)。具体的には、表示制御機能133dは、決定機能133cによって決定された撮像対象領域70を表す画像を、ディスプレイ135に表示させる。
【0097】
そして、受付機能133eは、決定機能133cによって決定された撮像対象領域70のスライス方向、スライス中心、スライス幅、または撮像断面の面内方向の回転量を変更するユーザの操作を受け付けたか否かを判定する(S6)。
【0098】
受付機能133eは、ユーザによるスライス方向、スライス中心、スライス幅、または撮像断面の面内方向の回転量の変更操作を受け付けたと判定した場合(S6“Yes”)、受け付けた変更操作に応じて、スライス方向、スライス中心、スライス幅、または撮像断面の面内方向の回転量を変更する(S7)。
【0099】
そして、受付機能133eは、ユーザによる位置決めの完了操作を受け付けたか否かを判定する(S8)。なお、受付機能133eは、ユーザによるスライス方向、スライス中心、スライス幅、または撮像断面の面内方向の回転量の変更操作を受け付けていないと判定した場合も(S6“No”)、S8の処理に進む。
【0100】
受付機能133eは、ユーザによる位置決めの完了操作を受け付けていないと判定した場合(S8“No”)、S6の処理に戻る。
【0101】
また、受付機能133eは、ユーザによる位置決めの完了操作を受け付けたと判定した場合(S8“Yes”)、撮像処理機能133aに、位置決めの完了を通知する。
【0102】
この場合、撮像処理機能133aは、決定機能133cによって決定された撮像対象領域70に基づいて、診断用の磁気共鳴画像を撮像する(S9)。また、S8でユーザによって、撮像対象領域70のスライス方向、スライス中心、スライス幅、または撮像断面の面内方向の回転量が変更されている場合は、撮像処理機能133aは、変更後の撮像対象領域70に基づいて、診断用の磁気共鳴画像を撮像する。なお、ユーザによる撮像対象領域70の変更を受け付ける機能を持たないこととしてもよく、撮像処理機能133aは、決定機能133cによって決定された撮像対象領域70をそのまま用いることとしてもよい。ユーザによる撮像対象領域70の変更を受け付ける機能を持たない場合、決定機能133cによって決定された撮像対象領域70を表す画像はディスプレイ135に表示しないこととしてもよい。撮像処理機能133aは、撮像した診断用の磁気共鳴画像を、記憶回路132に保存する。
【0103】
そして、表示制御機能133dは、撮像処理機能133aによって撮像された診断用の磁気共鳴画像を、ディスプレイ135に表示させる(S10)。ここで、このフローチャートの処理は終了する。
【0104】
このように、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、位置決め用の磁気共鳴画像80から、被検体Pの大腿骨頭、骨盤、関節唇、恥骨結合、尿道、および前立腺尖部、のうちの少なくとも1つの組織を検出し、検出した組織に基づいて、診断用の磁気共鳴画像の撮像における撮像対象領域70を決定する。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、技師等のユーザが位置決め用の磁気共鳴画像80上で位置決めのための試行錯誤をする作業が低減されるため、前立腺のMR撮像の際の、ユーザによる位置決め作業の作業負荷を低減することができる。
【0105】
また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、位置決めの基準が統一されるため、被検体PのMR撮像を複数回実行する場合においても、ユーザが手動で位置決め作業を行う場合と比較して、前回の撮像と同じ位置で撮像を実行することが容易である。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、位置決めの再現性を向上させることができる。
【0106】
より詳細には、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、診断用の2次元の磁気共鳴画像の撮像におけるスライス方向、スライス中心、スライス幅、および撮像断面の面内方向の回転量、のうちの少なくとも1つを決定する。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、スライス方向、スライス中心、スライス幅、および撮像断面の面内方向の回転量、のうちの少なくとも1つに関して、ユーザによる位置決めの作業負荷を低減することができる。
【0107】
また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、被検体Pの2つの大腿骨頭の各々の上端部60a,60bを通る線分600に垂直な方向を、診断用のアキシャル画像の撮像におけるスライス方向として決定する。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、前立腺の診断用のアキシャル画像の撮像に適したスライス方向を設定することができる。
【0108】
また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、被検体Pの2つの大腿骨頭の位置と恥骨結合の位置とに基づいて、診断用のアキシャル画像の撮像におけるスライス幅を決定する。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、前立腺の診断用のアキシャル画像の撮像に適したスライス幅701を設定することができる。
【0109】
また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、被検体Pの複数の関節唇62a~62dに基づいて、診断用のアキシャル画像の撮像における撮像対象領域70の撮像断面の面内方向の回転量を決定する。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、前立腺の診断用のアキシャル画像の撮像に適した撮像断面の面内方向の回転量を設定することができる。
【0110】
また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、被検体Pの複数の関節唇62a~62dのうち、被検体Pの身体の幅方向に沿って向かい合う関節唇62aと関節唇62bとを結ぶ線分621aの中点63aと、関節唇62cと関節唇62dとを結ぶ線分621bの中点63bとを求める。また、磁気共鳴イメージング装置100は、求めた2つの中点63aと中点63bとを結ぶ線分601に垂直な方向を、診断用のサジタル画像の撮像におけるスライス方向として決定する。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、前立腺の診断用のサジタル画像の撮像に適したスライス方向を設定することができる。
【0111】
また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、被検体Pの骨盤上の特徴点65a~65dに基づいて、前立腺の診断用のサジタル画像の撮像におけるスライス幅701を決定する。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、前立腺の診断用のサジタル画像の撮像に適したスライス幅701を設定することができる。
【0112】
また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、被検体Pの前立腺の中心を通る位置に、前立腺の診断用のサジタル画像の撮像におけるスライス中心702を決定する。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、前立腺の診断用のサジタル画像の撮像に適したスライス中心702を設定することができる。
【0113】
また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、検出された前立腺の位置に基づいて決定したスライス中心702が、検出された恥骨結合の位置から所定の距離以上離れている場合、検出された恥骨結合の位置に基づいて、スライス中心702の位置を補正する。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、前立腺の診断用のサジタル画像の撮像に適したスライス中心702を、さらに高精度に設定することができる。
【0114】
また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、被検体Pの複数の関節唇62a~62dのうち、被検体Pの身体の前後方向に沿って向かい合う関節唇62aと関節唇62cとを結ぶ線分621cの中点63cと、関節唇62bと関節唇62dとを結ぶ線分621dの中点63dとを求める。また、磁気共鳴イメージング装置100は、求めた2つの中点63cと中点63dとを結ぶ線分602に垂直な方向を、診断用のコロナル画像の撮像におけるスライス方向として決定する。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、前立腺の診断用のコロナル画像の撮像に適したスライス方向を設定することができる。
【0115】
また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、被検体Pの身体の前後方向における恥骨結合の位置に基づいて、コロナル画像のスライス幅701を決定する。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、前立腺の診断用のコロナル画像の撮像に適したスライス幅701を設定することができる。
【0116】
また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、位置決め用の磁気共鳴画像80から検出した組織に基づいて決定した撮像対象領域70に基づいて、診断用の磁気共鳴画像を撮像する。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、本撮像において、被検体Pの前立腺の撮像に適した撮像対象領域70を撮像することができる。
【0117】
また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、位置決め用の磁気共鳴画像80から検出した組織に基づいて決定した撮像対象領域70を表す画像を、ディスプレイ135に表示させる。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、自動的に実行された位置決めの結果を、ユーザが確認することができる。
【0118】
また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、学習済みモデル90に、位置決め用の磁気共鳴画像80を入力することにより、位置決め用の磁気共鳴画像80に描出された被検体Pの大腿骨頭、骨盤、関節唇、恥骨結合、尿道、および前立腺尖部、のうちの少なくとも1つの組織を検出する。このため、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、位置決め用の磁気共鳴画像80に描出されたこれらの組織を、高精度に検出することができる。
【0119】
なお、本実施形態における学習済みモデル90は、推定結果に対するユーザのフィードバックを取得することにより、学習済みモデル90の内部アルゴリズムをさらに更新する「自己学習するモデル」を含むものとする。例えば、ユーザによってスライス方向、スライス中心、スライス幅、または撮像断面の面内方向の回転量が変更された場合、学習済みモデル90は、このような変更内容によって学習済みモデル90の内部アルゴリズムを更新しても良い。
【0120】
また、学習済みモデル90は、磁気共鳴イメージング装置100外の装置によって生成され、磁気共鳴イメージング装置100に入力されても良い。また、磁気共鳴イメージング装置100の処理回路133が、学習済みモデル90を生成する学習機能をさらに備えても良い。
【0121】
また、学習済みモデル90は、ASIC、FPGA等の集積回路によって構築されても良い。また、学習済みモデル90の代わりに、数式モデル、ルックアップテーブル、またはデータベース等が適用されても良い。
【0122】
また、検出処理に用いられる学習済みモデル90またはテンプレート画像は、磁気共鳴イメージング装置100外の記憶装置に記憶されていても良い。
【0123】
(第2の実施形態)
上述の第1の実施形態では、磁気共鳴イメージング装置100の決定機能133cは、位置決め用の磁気共鳴画像80から検出された被検体Pの大腿骨頭、骨盤、関節唇、恥骨結合、尿道、および前立腺尖部に基づいて、位置決めを行っていた。この第2の実施形態においては、磁気共鳴イメージング装置100の決定機能133cは、さらに、尿道と前立腺尖部とに基づいて、位置決めを行う。
【0124】
本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100の構成は、図1で説明した第1の実施形態の構成と同様である。また、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100の処理回路133は、第1の実施形態と同様に、撮像処理機能133a、検出機能133b、決定機能133c、表示制御機能133d、および受付機能133eを備える。本実施形態の撮像処理機能133a、表示制御機能133d、および受付機能133eは、第1の実施形態と同様の機能を備える。
【0125】
本実施形態の検出機能133bは、第1の実施形態の機能に加えて、位置決め用の磁気共鳴画像80から、被検体Pの尿道および前立腺尖部を検出する。
【0126】
また、本実施形態の決定機能133cは、第1の実施形態の機能に加えて、検出機能133bによって検出された被検体Pの尿道および前立腺尖部に基づいて、診断用のアキシャル画像および診断用のコロナル画像の撮像におけるスライス方向を決定する。
【0127】
図13は、本実施形態に係るコロナル画像およびアキシャル画像のスライス方向の決定手法の一例を示す図である。図13では、位置決め用の磁気共鳴画像80の矢状断面を例示する。
【0128】
図13に示すように、決定機能133cは、位置決め用の磁気共鳴画像80の矢状断面上で被検体Pの尿道の開始位置66と前立腺尖部67とを結ぶ線分603を求める。
【0129】
決定機能133cは、線分603と平行な方向を、診断用のアキシャル画像の撮像におけるスライス方向として決定する。また、決定機能133cは、線分603と垂直な方向を、診断用のコロナル画像の撮像におけるスライス方向として決定する。
【0130】
このように、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100によれば、被検体Pの尿道および前立腺尖部に基づいて、診断用のアキシャル画像および診断用のコロナル画像の撮像におけるスライス方向を決定することにより、第1の実施形態の効果を備えた上で、さらに前立腺の診断に適した診断用のアキシャル画像および診断用のコロナル画像のスライス位置を求めることができる。
【0131】
(変形例)
上述の第1の実施形態および第2の実施形態においては、磁気共鳴イメージング装置100が、位置決め処理を実行するものとしたが、位置決め処理の一部または全てが、磁気共鳴イメージング装置100以外の装置によって実行されても良い。例えば、磁気共鳴イメージング装置100とネットワーク等を介して接続する他の情報処理装置が、検出機能133bまたは決定機能133cを有しても良い。
【0132】
また、上述の第1の実施形態および第2の実施形態では、表示制御機能133dは、撮像対象領域70を表す画像をディスプレイ135に表示させるものとしたが、磁気共鳴イメージング装置100にネットワーク等を介して接続された他のディスプレイに表示させても良い。この場合、該他のディスプレイが、表示部の一例となる。
【0133】
また、上述の第1の実施形態および第2の実施形態においては、学習済みモデル90は記憶回路132に保存されるものとしたが、学習済みモデル90は検出機能133bに組み込まれているものとしても良い。
【0134】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、前立腺のMR撮像の際の、ユーザによる位置決め作業の作業負荷を低減することができる。
【0135】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0136】
60a,60b 上端部
61 下端
62a~62d 関節唇
63a~63d 中点
64a,64b 端部
65a~65d 特徴点
66 尿道の開始位置
67 前立腺尖部
70 撮像対象領域
80 位置決め用の磁気共鳴画像
90 学習済みモデル
100 磁気共鳴イメージング装置
132 記憶回路
133 処理回路
133a 撮像処理機能
133b 検出機能
133c 決定機能
133d 表示制御機能
133e 受付機能
135 ディスプレイ
600,601~603,621a~621d 線分
701 スライス幅
701a 第1の距離
701b 第2の距離
702 スライス中心
711b スライス下端
711a スライス上端
801a,801b,802,803a~803d,804 画像領域
P 被検体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13