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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】車両用サイレンサー
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/08 20060101AFI20231211BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20231211BHJP
   D04H 1/542 20120101ALI20231211BHJP
   D04H 1/559 20120101ALI20231211BHJP
【FI】
B60R13/08
B32B5/26
D04H1/542
D04H1/559
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020091651
(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公開番号】P2021187210
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100124958
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 建志
(72)【発明者】
【氏名】馬場 将豪
(72)【発明者】
【氏名】柏本 裕喜
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-112088(JP,A)
【文献】特開昭58-071232(JP,A)
【文献】実開平01-073436(JP,U)
【文献】特開2014-028568(JP,A)
【文献】実開昭63-043963(JP,U)
【文献】特表2001-508005(JP,A)
【文献】特開2016-155461(JP,A)
【文献】米国特許第4782913(US,A)
【文献】米国特許第5483028(US,A)
【文献】米国特許第6260660(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/08
B32B 5/26
D04H 1/542
D04H 1/559
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成形された繊維材を含み、車体パネルと、裏面を有する表皮材と、の間に設置される車両用サイレンサーであって、
前記繊維材は、
前記表皮材の前記裏面に沿った表面を有する一般部と、
前記表皮材の前記裏面に沿った第一の頂部と、前記表皮材の前記裏面に沿った第二の頂部と、の間で前記表皮材の前記裏面から離れる向きに凹んだ凹面を有する凹凸部と、を備え、
前記凹面は、底部、前記第一の頂部と前記底部との間にある第一の内側面、及び、前記第二の頂部と前記底部との間にある第二の内側面を含み、
前記凹凸部は、前記第一の内側面と前記第二の内側面との間に隙間を有し、
前記凹凸部は、前記一般部よりも薄く、前記一般部よりも密度が高い車両用サイレンサー。
【請求項2】
プレス成形された繊維材を含み、車体パネルと、裏面を有する表皮材と、の間に設置される車両用サイレンサーであって、
前記繊維材は、
前記表皮材の前記裏面に沿った表面を有する一般部と、
前記表皮材の前記裏面に沿った第一の頂部と、前記表皮材の前記裏面に沿った第二の頂部と、の間で前記表皮材の前記裏面から離れる向きに凹んだ凹面を有する凹凸部と、を備え、
前記凹面は、底部、前記第一の頂部と前記底部との間にある第一の内側面、及び、前記第二の頂部と前記底部との間にある第二の内側面を含み、
前記凹凸部は、前記第一の内側面と前記第二の内側面との間に隙間を有し、
前記繊維材は、非溶融成分を含む主繊維、及び、熱可塑性繊維を含み、
前記凹凸部は、前記一般部よりも前記熱可塑性繊維の含有比が高い車両用サイレンサー。
【請求項3】
プレス成形された繊維材を含み、車体パネルと、裏面を有する表皮材と、の間に設置される車両用サイレンサーであって、
前記繊維材は、
前記表皮材の前記裏面に沿った表面を有する一般部と、
前記表皮材の前記裏面に沿った第一の頂部と、前記表皮材の前記裏面に沿った第二の頂部と、の間で前記表皮材の前記裏面から離れる向きに凹んだ凹面を有する凹凸部と、を備え、
前記凹面は、底部、前記第一の頂部と前記底部との間にある第一の内側面、及び、前記第二の頂部と前記底部との間にある第二の内側面を含み、
前記凹凸部は、前記第一の内側面と前記第二の内側面との間に隙間を有し、
前記繊維材は、
非溶融成分を含む主繊維を60~99重量%含み、且つ、熱可塑性繊維をP1重量%(含有比率P1は1~40重量%)含む第一繊維層と、
熱可塑性繊維を前記含有比率P1よりも多いP2重量%含む第二繊維層と、を含む車両用サイレンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形された繊維材を含む車両用サイレンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に設置されるサイレンサーとして、例えば、フロアパネルとフロアカーペットとの間に介在するフロアサイレンサーが知られている。フロアサイレンサーは、防音性能を発揮するとともに、フロアパネルの凹凸がカーペットの表面に現れないようにする機能や、足で踏むときの良好な感触を乗員に与える機能も発揮する。これらの機能を実現するためのサイレンサーとして、特許文献1に示されるように、繊維質のサイレンサーが用いられている。繊維質のサイレンサーは柔軟であるため、フロアカーペットには、フロアカーペットの面剛性を部分的に補うためのスペーサーが設定されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-155461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フロアカーペットの面剛性を部分的に補うために別体のスペーサーを設定することは、部品としてスペーサーが必要であり、その分のコストがかかる。車両用サイレンサーの目付を部分的に増やすとフロアカーペットの面剛性を部分的に補うことができるものの、その分、車両用サイレンサーの重量が増える。
尚、上記のような問題は、フロアカーペット用のサイレンサーに限らず、ダッシュサイレンサー等、車体パネルと表皮材との間に設置される種々の車両用サイレンサーについて同様に存在する。
【0005】
本発明は、繊維材を含み部分的に高い剛性を有する軽量の車両用サイレンサーを開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、プレス成形された繊維材を含み、車体パネルと、裏面を有する表皮材と、の間に設置される車両用サイレンサーであって、
前記繊維材は、
前記表皮材の前記裏面に沿った表面を有する一般部と、
前記表皮材の前記裏面に沿った第一の頂部と、前記表皮材の前記裏面に沿った第二の頂部と、の間で前記表皮材の前記裏面から離れる向きに凹んだ凹面を有する凹凸部と、を備え、
前記凹面は、底部、前記第一の頂部と前記底部との間にある第一の内側面、及び、前記第二の頂部と前記底部との間にある第二の内側面を含み、
前記凹凸部は、前記第一の内側面と前記第二の内側面との間に隙間を有し、
前記凹凸部は、前記一般部よりも薄く、前記一般部よりも密度が高い、態様を有する。
また、本発明は、プレス成形された繊維材を含み、車体パネルと、裏面を有する表皮材と、の間に設置される車両用サイレンサーであって、
前記繊維材は、
前記表皮材の前記裏面に沿った表面を有する一般部と、
前記表皮材の前記裏面に沿った第一の頂部と、前記表皮材の前記裏面に沿った第二の頂部と、の間で前記表皮材の前記裏面から離れる向きに凹んだ凹面を有する凹凸部と、を備え、
前記凹面は、底部、前記第一の頂部と前記底部との間にある第一の内側面、及び、前記第二の頂部と前記底部との間にある第二の内側面を含み、
前記凹凸部は、前記第一の内側面と前記第二の内側面との間に隙間を有し、
前記繊維材は、非溶融成分を含む主繊維、及び、熱可塑性繊維を含み、
前記凹凸部は、前記一般部よりも前記熱可塑性繊維の含有比が高い、態様を有する。
さらに、本発明は、プレス成形された繊維材を含み、車体パネルと、裏面を有する表皮材と、の間に設置される車両用サイレンサーであって、
前記繊維材は、
前記表皮材の前記裏面に沿った表面を有する一般部と、
前記表皮材の前記裏面に沿った第一の頂部と、前記表皮材の前記裏面に沿った第二の頂部と、の間で前記表皮材の前記裏面から離れる向きに凹んだ凹面を有する凹凸部と、を備え、
前記凹面は、底部、前記第一の頂部と前記底部との間にある第一の内側面、及び、前記第二の頂部と前記底部との間にある第二の内側面を含み、
前記凹凸部は、前記第一の内側面と前記第二の内側面との間に隙間を有し、
前記繊維材は、
非溶融成分を含む主繊維を60~99重量%含み、且つ、熱可塑性繊維をP1重量%(含有比率P1は1~40重量%)含む第一繊維層と、
熱可塑性繊維を前記含有比率P1よりも多いP2重量%含む第二繊維層と、を含む、態様を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、繊維材を含み部分的に高い剛性を有する軽量の車両用サイレンサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】サイレンサー及び表皮材の車室側の外観を模式的に例示する分解斜視図。
図2】凹凸部を含むサイレンサーの要部を模式的に例示する斜視図。
図3】サイレンサーの一般部の構造例を車体パネル及び表皮材とともに模式的に示す垂直断面図。
図4】サイレンサーの凹凸部の構造例を車体パネル及び表皮材とともに模式的に示す側面図。
図5】サイレンサーの頂部を通る垂直断面において一般部から凹凸部にかけての構造例を車体パネル及び表皮材とともに模式的に示す垂直断面図。
図6】サイレンサーの基底部を通る垂直断面において一般部から凹凸部にかけての構造例を車体パネル及び表皮材とともに模式的に示す垂直断面図。
図7】サイレンサーの凹凸部の要部を模式的に例示する側面図。
図8】別のサイレンサーの構造例を車体パネル及び表皮材とともに模式的に示す垂直断面図。
図9】別のサイレンサーの構造例を車体パネル及び表皮材とともに模式的に示す垂直断面図。
図10】サイレンサーの例を模式的に示す図。
図11】サイレンサー製造装置の例を模式的に示す図。
図12】成形工程例を説明するための模式的な垂直端面図。
図13】別のサイレンサーの構造例を車体パネル及び表皮材とともに模式的に示す垂直断面図。
図14】別のサイレンサーの構造例を車体パネル及び表皮材とともに模式的に示す垂直断面図。
図15】別のサイレンサーの構造例を車体パネル及び表皮材とともに模式的に示す垂直断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0010】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1~15に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
また、本願において、数値範囲「Min~Max」は、最小値Min以上、且つ、最大値Max以下を意味する。
【0011】
[態様1]
本技術の一態様に係る車両用サイレンサー1は、車体パネル80と、裏面51を有する表皮材(例えばカーペット50)と、の間に設置される車両用サイレンサー1であり、プレス成形された繊維材100を含む。前記繊維材100は、一般部20と凹凸部30を備える。前記一般部20は、前記表皮材(50)の前記裏面51に沿った表面21を有する。前記凹凸部30は、前記表皮材(50)の前記裏面51に沿った第一の頂部31aと、前記表皮材(50)の前記裏面51に沿った第二の頂部31bと、の間で前記表皮材(50)の前記裏面51から離れる向きに凹んだ凹面32を有する。前記凹面32は、底部33、前記第一の頂部31aと前記底部33との間にある第一の内側面34、及び、前記第二の頂部31bと前記底部33との間にある第二の内側面35を含む。前記凹凸部30は、前記第一の内側面34と前記第二の内側面35との間に隙間CL1を有する。
【0012】
上記態様の車両用サイレンサー1に含まれる凹凸部30は、凹凸形状により高い剛性を有する。これにより、表皮材(50)の面剛性を部分的に補うためのスペーサーが不要となる。また、凹凸部30は第一の内側面34と第二の内側面35との間に隙間CL1を有するので、上記態様は、繊維材を含み部分的に高い剛性を有する軽量の車両用サイレンサーを提供することができる。
【0013】
ここで、プレス成形された繊維材を含む車両用サイレンサーは、プレス成形された繊維材そのものでもよいし、合成樹脂層など付加的な要素を含んでいてもよい。
車両用サイレンサーを設置可能な場所は、車室フロア部、車室側壁部、車室天井部、デッキフロア部、ダッシュボード部、エンジンフード部、フェンダー部、等が含まれ、内装部分でもよいし、外装部分でもよい。
第一の頂部は、凹凸部にあってもよいし、一般部にあってもよい。
第二の頂部は、凹凸部にあってもよいし、一般部にあってもよい。
本願における「第一」、「第二」、「第三」、…は、互いに類似点を有する複数の構成要素に含まれる各構成要素を識別するための用語であり、順番を意味しない。複数の構成要素のうちどの構成要素が「第一」、「第二」、「第三」、…に当てはまるのかは、相対的に決まる。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0014】
[態様2]
前記凹凸部30は、図5,6に例示するように前記一般部20よりも薄くてもよく、前記一般部20よりも密度が高くてもよい。凹凸部30は、一般部20よりも密度が高いことにより、一般部20よりも薄くても高い剛性を有する。従って、本態様は、軽量ながら部分的に高い剛性を有する好適な車両用サイレンサーを提供することができる。
【0015】
[態様3]
図3,4に例示するように、前記繊維材100は、非溶融成分を含む主繊維115,125,135、及び、熱可塑性繊維116,126,136を含んでいてもよい。前記凹凸部30は、前記一般部20よりも前記熱可塑性繊維116,126,136の含有比が高くてもよい。凹凸部30は、一般部20よりも熱可塑性繊維116,126,136の含有比が高いことにより、高い剛性を有する。従って、本態様は、部分的に高い剛性を有する好適な車両用サイレンサーを提供することができる。
ここで、非溶融成分を含む主繊維には、衣料反毛繊維といった反毛繊維、セルロース系繊維といった非溶融繊維、等が含まれる。この付言は、以下の態様においても適用される。
【0016】
[態様4]
前記繊維材100は、非溶融成分を含む主繊維115を60~99重量%含み、且つ、熱可塑性繊維116をP1重量%(含有比率P1は1~40重量%)含む第一繊維層110を含んでいてもよい。また、前記繊維材100は、熱可塑性繊維126を前記含有比率P1よりも多いP2重量%含む第二繊維層120を含んでいてもよい。
【0017】
繰り返し検討を行ったところ、非溶融成分を含む主繊維115を多く含む第一繊維層110に対して、熱可塑性繊維の含有比率を多くした第二繊維層120を組み合わせることにより、軽量化しても適度な圧縮強度が得られることが分かった。プレス成形された第二繊維層120に熱可塑性繊維126が含有比率P1よりも多い含有比率P2重量%含まれていることにより、互いに融着した熱可塑性繊維126が第二繊維層120に高い剛性を与え、このことが車両用サイレンサー1を軽量化しても車両用サイレンサー1の圧縮強度を維持させると推測される。また、プレス成形された第一繊維層110に非溶融成分を含む主繊維115が60重量%以上含まれていることにより、第一繊維層110に柔軟性を与え、このことが車両用サイレンサー1の感触を向上させていると推測される。尚、プレス成形された第一繊維層110に熱可塑性繊維116が1重量%以上含まれていることにより、第一繊維層110の形状が保持されている。プレス成形された車両用サイレンサー1において、第二繊維層120の適度な剛性感と第一繊維層110の柔軟な感触とが組み合わされることにより、軽量化しても適度な圧縮強度が得られると推測される。
以上より、上記態様は、軽量化しても適度な圧縮強度を得ることが可能な車両用サイレンサーを提供することができる。
【0018】
ここで、第一繊維層の熱可塑性繊維と第二繊維層の熱可塑性繊維とは、同じ種類の繊維でもよいし、異なる種類の繊維でもよい。
【0019】
(2)車両用サイレンサーの具体例:
図1は、自動車用のプレス成形されたサイレンサー1、及び、自動車用のプレス成形された表皮材の例であるフロアカーペット50を模式的に例示している。図1中、FRONT、REAR、LEFT、RIGHT、UP、DOWNは、それぞれ、前、後、左、右、上、下を示す。左右の位置関係は、自動車の前を見る方向を基準とする。図2は、凹凸部30を含むサイレンサー1の要部を模式的に例示している。図3は、サイレンサー1の一般部20の構造を車体パネル80及びカーペット50とともに模式的に例示する垂直断面図である。図4は、サイレンサー1の凹凸部30の構造を車体パネル80及びカーペット50とともに模式的に例示している。図4において、凹凸部30は側面が示され、車体パネル80とカーペット50は垂直断面が示されている。図5は、サイレンサー1の頂部31を通る垂直断面において一般部20から凹凸部30にかけての構造を車体パネル80及びカーペット50とともに模式的に例示している。図6は、サイレンサー1の基底部36を通る垂直断面において一般部20から凹凸部30にかけての構造を車体パネル80及びカーペット50とともに模式的に例示している。図7は、サイレンサー1の凹凸部30の要部を模式的に例示する側面図である。
【0020】
自動車の乗員室内のフロアパネル(車体パネル80)上では、通常、図1に例示するようなフロアカーペット50を敷設することによりフロアパネルを被覆し遮蔽している。これにより、乗員室としての内装意匠性、及び、乗員が足で踏むときの良好な感触を意味する踏み心地性が付与される。フロアパネルに形成された凹凸を吸収しフロア面の平坦性を確保する為、嵩上材として機能するフロアサイレンサー(車両用サイレンサー1)がフロアパネルとカーペット50との間に設置される。図3,4に示すサイレンサー1は、繊維114,124,134を含むプレス成形された繊維材100であり、柔軟性を有する。サイレンサー1は、繊維間に微細な隙間が存在し、空気を含んでいる。
【0021】
車室内における静粛性の向上というニーズから、図1に例示するように、フロアカーペット裏面全体を覆うように繊維が集合したサイレンサー1をカーペット50とは別に形成し、フロアパネル全体を被覆している。図1に示す大型のサイレンサー1は、フロアパネルの凹凸に応じて領域毎に厚さや目付が異なるように成形されることによりフロアパネルの全面を覆うような一体成形品に形成され、嵩上材としての機能が付与されている。これにより、サイレンサー1は、車外から侵入してきた騒音に対して吸音及び遮音の機能を同時に発揮する。すなわち、自動車の車体パネル上に敷設されるフロアサイレンサーは、車体パネルの凹凸に沿う形状に成形されて敷設され、車両のフロア部の緩衝性、防音性、等の性能確保のために使用される。本技術の車両用サイレンサーは、フロア部に設置する以外にも、車室側壁部、車室天井部、デッキフロア部、ダッシュボード部、エンジンフード部、フェンダー部、等の部位の形状に合わせて該部位に設置することも可能である。
【0022】
図1に示す車両用サイレンサー1は、車体の床面を構成する略平坦なフロアパネル(車体パネル80の一種)、乗員室前部においてフロアパネル面から上方に立ち上がったトーボードパネル(車体パネル80の一種)、等の上に載置される機能材とされている。車室用のサイレンサー1は、車体パネル80の車室C1側に敷設される。図1に示すサイレンサー1は、コンソールやロッカーパネル等の突出部の立壁に沿うように三次元形状に成形されている。サイレンサー1の車室C1側には、フロアカーペット50が敷設される。カーペット50は、サイレンサー1の突出部の立壁に沿うように三次元形状に成形され、乗員室内を装飾する。
【0023】
図1に示すフロアカーペット50は、プレス成形されることより車室C1側の凹凸形状52が形成され、車室C1に面して配置される。カーペット50は、例えば、パイル56のバックステッチを基層55に有するタフテッドカーペットとされ、基層55の車室C1側に多数のパイル56が立毛している。基層55を構成する基布には、スパンボンド不織布といった不織布、各種繊維の編織物、等を用いることができる。基布の裏側(サイレンサー1側の面)には、裏打ちが施されてもよい。この裏打ちには、樹脂材料(エラストマーを含む)、繊維材料、等を用いることができる。むろん、カーペット50には、不織布をニードリングして繊維相互を絡め表面に毛羽を形成したニードルパンチカーペット等を採用することも可能である。
【0024】
図5,6に示すように、フロアカーペット50には、車体パネル80から比較的離れている部位(離隔部54)が存在する。離隔部54の裏側に別体のスペーサーを設定すれば、離隔部54の面剛性を補うことが可能である。スペーサーには、多数の発泡性樹脂粒子から作られたビーズ発泡成形品といった樹脂発泡成形品、樹脂射出成形品、等が用いられる。しかし、フロアカーペットの離隔部の面剛性を補うために別体のスペーサーを設定することは、部品としてスペーサーが必要であり、その分のコストがかかる。一方、車両用サイレンサーのうちフロアカーペットの離隔部に対応する部分の目付を増やすとフロアカーペットの離隔部の面剛性を補うことができるものの、その分、車両用サイレンサーの重量が増える。
本具体例では、繊維質の車両用サイレンサー1において凹凸部30がフロアカーペット50の離隔部54に対応する部分に存在することにより、別体のスペーサーをフロアカーペットに設定する必要が無く、車両用サイレンサーの重量増加が抑制される。
【0025】
図1~7に示す車両用サイレンサー1は、カーペット50の裏面51に沿った表面21を有する一般部20、及び、カーペット50の裏面51から離れる向きに凹んだ凹面32を有する凹凸部30を備えている。凹凸部30は、蛇腹状であり、繊維材100であるサイレンサー1においてカーペット50の離隔部54に対応する位置にある。
【0026】
繊維114,124,134が集合した一般部20は、繊維間に微細な隙間が存在するものの、表面21においてカーペット裏面51に接している。一般部20の表面21には、巨視的にカーペット裏面51から離れる向きに凹んだ凹面が存在しない。尚、一般部20の表面21とカーペット裏面51との間には、部分的に若干の隙間が存在してもよい。
一般部20の裏面23は、概ね、車体パネル80の表面81に沿っている。繊維質の一般部20は、裏面23において車体パネル表面81に接している。一般部20の裏面23には、巨視的に車体パネル表面81から離れる向きに凹んだ凹面が存在しない。尚、一般部20の裏面23と車体パネル表面81との間には、部分的に若干の隙間が存在してもよい。
【0027】
ここで、上述の巨視的な凹面は、凹凸部30の凹面32のように隙間を挟む第一及び第二の内側面を有するような凹面を意味する。上述の、若干の隙間は、凹凸部30の厚さT1(図4~7参照)よりも少ない間隔の隙間を意味する。
【0028】
繊維114,124,134が集合した凹凸部30は、図1,4に示すように、カーペット裏面51に沿った複数の頂部31、及び、頂部31間にある凹面32を有している。繊維質の凹凸部30も、繊維間に微細な隙間が存在し、空気を含んでいる。図2,5等に示すように、凹凸部30の各頂部31は、一般部20の表面21から連続し、離隔部54においてカーペット裏面51に接している。ここで、図4に示すように、複数の頂部31のいずれか一つを第一の頂部31aと呼ぶことにし、複数の頂部31のうち凹面32を介して第一の頂部31aに隣り合う頂部を第二の頂部31bと呼ぶことにする。言い換えると、繊維質の凹凸部30は、カーペット裏面51に沿った第一の頂部31a、カーペット裏面51に沿った第二の頂部31b、及び、カーペット裏面51から離れる向きに凹んだ凹面32を有する。尚、複数の頂部31から当てはめられる第一の頂部31aは、図4の最も左の頂部に限定されず、図4の真ん中の頂部でもよいし、図4の最も右の頂部でもよい。第二の頂部31bは、凹面32を介して第一の頂部31aに隣り合う頂部であれば、図4の最も左の頂部でもよいし、図4の最も右の頂部でもよい。図4等に示す凹凸部30は、3箇所の頂部31、及び、2箇所の凹面32を有している。頂部の数は好ましくは3以上であるが2以上であればよく、凹凸部に含まれる凹面の数は好ましくは2以上であるが1以上であればよい。
【0029】
凹面32は、底部33、第一の頂部31aと底部33との間にある第一の内側面34、及び、第二の頂部31bと底部33との間にある第二の内側面35を含んでいる。ここで、底部33は、第一の頂部31a及び第二の頂部31bを通る向きにおける凹凸部30の垂直断面においてカーペット裏面51から最も遠い部位を意味する。凹面32は、上述したように巨視的な凹面であり、隙間CL1を挟む第一及び第二の内側面34,35を有する。言い換えると、凹凸部30は、第一の内側面34と第二の内側面35との間に隙間CL1を有する。隙間CL1は、第一の内側面34と第二の内側面35とで挟まれた空間であり、カーペット裏面51と凹面32とで囲まれた空間である。図2等に示す凹面32は、左右方向へ延びた溝状である。従って、底部33、第一の内側面34、及び、第二の内側面35は、それぞれ、左右方向へ延びている。
【0030】
見方を変えると、繊維質の凹凸部30は、図4に示すように、車体パネル表面81に沿った複数の基底部36、及び、基底部36間にある裏向き凹面37を有している。図6に示すように、凹凸部30の各基底部36は、一般部20の裏面23から連続し、車体パネル表面81に接している。ここで、図4に示すように、複数の基底部36のいずれか一つを第一の基底部36aと呼ぶことにし、複数の基底部36のうち裏向き凹面37を介して第一の基底部36aに隣り合う基底部を第二の基底部36bと呼ぶことにする。言い換えると、凹凸部30は、車体パネル表面81に沿った第一の基底部36a、車体パネル表面81に沿った第二の基底部36b、及び、車体パネル表面81から離れる向きに凹んだ裏向き凹面37を有する。
【0031】
裏向き凹面37は、天井部38、第一の基底部36aと天井部38との間にある第三の内側面39、及び、第二の基底部36bと天井部38との間にある第四の内側面40を含んでいる。ここで、天井部38は、第一の基底部36a及び第二の基底部36bを通る向きにおける凹凸部30の垂直断面において車体パネル表面81から最も遠い部位を意味する。裏向き凹面37は、巨視的な凹面であり、隙間CL2を挟む第三及び第四の内側面39,40を有する。言い換えると、凹凸部30は、第三の内側面39と第四の内側面40との間に隙間CL2を有する。隙間CL2は、第三の内側面39と第四の内側面40とで挟まれた空間であり、車体パネル表面81と裏向き凹面37とで囲まれた空間である。
【0032】
図5,6等に示すように、凹凸部30の厚さT1は、一般部20の厚さT0よりも薄い。これは、プレス成形時の凹凸部30の圧縮度合が一般部の圧縮度合よりも大きいためである。これにより、凹凸部30は、一般部20よりも高い剛性を有する。一般部20の厚さT0は、例えば、20~50mmとすることができる。凹凸部30の厚さT1は、凹凸部30に良好な剛性を得る点から、0.5×T0以下が好ましく、0.4×T0以下がより好ましい。また、凹凸部30の厚さT1は、凹凸部30を容易にプレス成形する点から、0.1×T0以上が好ましく、0.2×T0以上がより好ましい。凹凸部30の厚さT1は、T0未満の範囲で、例えば、5~20mmとすることができる。
【0033】
凹凸部30は、一般部20よりも密度が高い方が好ましい。凹凸部30は、一般部20よりも密度が高いと、一般部20よりも薄くても高い剛性を有する。一般部20の密度は、例えば、0.03~0.10g/cm3とすることができる。ここで、一般部20の密度をDgとする。凹凸部30の密度は、凹凸部30に良好な剛性を得る点から、2.0×Dg以上が好ましく、2.5×Dg以上がより好ましい。また、凹凸部30の密度は、凹凸部30を容易にプレス成形する点から、5.0×Dg以下が好ましく、4.0×Dg以下がより好ましい。凹凸部30の密度は、密度Dgよりも高い範囲で、例えば、0.10~0.50g/cm3とすることができる。
【0034】
凹面32における隙間CL1の深さd1(図6参照)は、凹凸部30の厚さT1以上であり、凹凸部30に良好な剛性を得る点から、1.2×T1以上が好ましく、1.5×T1以上がより好ましく、2.0×T1以上がさらに好ましい。図6に示す凹面32はカーペット50の離隔部54に対応する位置にあるため、隙間CL1の深さd1はT0-T1よりも深い。凹凸部30が一般部20よりも薄くて高密度であると、d1>T0-T1であっても離隔部54の面剛性を良好に補うことができる。
【0035】
裏向き凹面37における隙間CL2の深さd2(図5参照)も、凹凸部30の厚さT1以上であり、凹凸部30に良好な剛性を得る点から、1.2×T1以上が好ましく、1.5×T1以上がより好ましく、2.0×T1以上がさらに好ましい。図5に示す裏向き凹面37はカーペット50の離隔部54に対応する位置にあるため、隙間CL2の深さd2はT0-T1よりも深い。凹凸部30が一般部20よりも薄くて高密度であると、d2>T0-T1であっても離隔部54の面剛性を良好に補うことができる。
【0036】
ここで、図7に示すように、凹面32における隙間CL1の幅W1を隙間CL1において凹凸部30の厚さT1と同じ深さT1の幅とする。隙間CL1の深さは、第一の頂部31aと第二の頂部31bとを結ぶ位置からの深さとする。幅W1が大きくなっても凹凸部30の目付は変わらないので、良好な剛性を得る観点、及び、カーペット50の表面の凹みを抑制する観点から、幅W1は狭い方がよい。一方、凹凸部30の成形を容易にする観点からは、幅はある程度広い方がよい。そこで、隙間CL1の幅W1は、凹凸部30の成形性の点から、凹凸部30の厚さT1以上が好ましく、1.2×T1以上が好ましく、1.5×T1以上がより好ましい。また、凹面32における隙間CL1の幅W1は、凹凸部30に良好な剛性を得る点、及び、カーペット50の表面の凹みを抑制する点から、5.0×T1以下が好ましく、4.0×T1以下がより好ましく、3.0×T1以下がさらに好ましい。尚、W1>0である場合は少なくとも、第一の内側面34と第二の内側面35との間に隙間CL1があるといえる。
【0037】
裏向き凹面37における隙間CL2の幅W2(図7参照)は、サイレンサー1を軽量に維持する点から、凹凸部30の厚さT1以上が好ましく、1.2×T1以上が好ましく、1.5×T1以上がより好ましい。ここで、隙間CL2の幅W2は、隙間CL2において凹凸部30の厚さT1と同じ深さT1の幅とする。隙間CL2の深さは、第一の基底部36aと第二の基底部36bとを結ぶ位置からの深さとする。また、裏向き凹面37における隙間CL2の幅W2は、凹凸部30に良好な剛性を得る点から、10.0×T1以下が好ましく、9.0×T1以下がより好ましく、8.0×T1以下がさらに好ましい。尚、W2>0である場合は少なくとも、第三の内側面39と第四の内側面40との間に隙間CL2があるといえる。
【0038】
繊維材100であるサイレンサー1は、非溶融成分を含む主繊維115,125,135、及び、熱可塑性繊維116,126,136を含んでいる。
【0039】
主繊維115,125,135は、非溶融成分を含んでいればよく、衣料反毛繊維といった反毛繊維、セルロース系繊維、動物繊維といった天然繊維、等を用いることができる。セルロース系繊維には、木綿や麻といった植物繊維、レーヨンといった合成繊維、等が含まれる。植物繊維は、天然繊維でもある。動物繊維には、ウール、絹、等が含まれる。尚、衣料反毛繊維には、ポリエステル繊維やポリアミド繊維といった融点220℃以上である高融点の熱可塑性繊維が混入することがある。
【0040】
主繊維115,125,135の繊度は、特に限定されないが、例えば2.2~16dtex程度とすることができる。主繊維115,125,135の長さは、特に限定されないが、例えば27~76mm程度とすることができる。主繊維115,125,135の断面形状は、特に限定されず、真円を含む楕円、三角形、扁平形状、等とすることができる。また、主繊維115,125,135は、中空形状の断面を有する中空繊維でもよい。
むろん、主繊維115,125,135には、複数の種類の繊維が組み合わされてもよい。
【0041】
さらに、主繊維115,125,135には、同じ種類の繊維が使用されてもよいし、異なる種類の繊維が使用されてもよい。
【0042】
熱可塑性繊維116,126,136の融点は、80~200℃が好ましい。自動車内の温度上昇による熱可塑性繊維の可塑化を抑制するため、熱可塑性繊維116,126,136の融点は、90℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。また、プレス成形時に熱可塑性繊維を溶融状態にし易くするため、熱可塑性繊維116,126,136の融点は、190℃以下がより好ましく、180℃以下がさらに好ましく、160℃以下が特に好ましい。このような低融点の熱可塑性繊維116,126,136は、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む。)の繊維が好ましい。当該熱可塑性樹脂には、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂といったポリエステル樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂やポリエチレン(PE)樹脂といったポリオレフィン樹脂、これらの合成樹脂にエラストマーを添加した改質樹脂、これらの合成樹脂に着色剤といったといった添加剤を添加した材料、等を用いることができる。熱可塑性繊維116,126,136には、芯鞘構造やサイドバイサイド構造といったコンジュゲート構造のコンジュゲート繊維を用いることも可能である。この場合、コンジュゲート繊維に含まれる複数の成分のうち一部の成分は例えば200℃を超えるような高融点の成分でもよい。
【0043】
熱可塑性繊維116,126,136の繊度は、特に限定されないが、例えば2.2~16dtex程度とすることができる。熱可塑性繊維116,126,136の長さは、特に限定されないが、例えば27~76mm程度とすることができる。熱可塑性繊維116,126,136の断面形状は、特に限定されず、真円を含む楕円、三角形、扁平形状、等とすることができる。また、熱可塑性繊維116,126,136は、中空形状の断面を有する中空繊維でもよい。
むろん、熱可塑性繊維116,126,136には、複数の種類の繊維が組み合わされてもよい。
【0044】
さらに、熱可塑性繊維116,126,136には、同じ種類の繊維が使用されてもよいし、異なる種類の繊維が使用されてもよい。
【0045】
図1~7に示すサイレンサー1は、厚さ方向D3において互いに反対側となる第一及び第二の成形面11,12に対してプレス成形による凹凸形状が形成され、車体パネル80とカーペット50との間に設置される。ここで、第一の成形面11がカーペット50側にあり、第二の成形面12が車体パネル80側にある。第一の成形面11のうち一般部20の凹凸形状22は、カーペット50の裏面の凹凸形状に合わせられている。サイレンサー1は、第一の成形面11から第二の成形面12まで順に、第一繊維層110、第二繊維層120、及び、第三繊維層130を含んでいる。第一繊維層110は、第一の成形面11を含んでいる。第二繊維層120は、第一繊維層110が接着された第一の接着面121、及び、第二繊維層120が接着された第二の接着面122を含んでいる。第三繊維層130は、第二の成形面12を含んでいる。
【0046】
第一繊維層110は、非溶融成分を含む主繊維115を60~99重量%含み、且つ、熱可塑性繊維116をP1重量%含んでいる。含有比率P1は、1~40重量%である。ここで、主繊維115と熱可塑性繊維116を繊維114と総称する。繊維114は、ランダムに配向している。第三繊維層130は、非溶融成分を含む主繊維135を60~99重量%含み、且つ、熱可塑性繊維136をP1=1~40重量%含んでいる。ここで、主繊維135と熱可塑性繊維136を繊維134と総称する。繊維134は、ランダムに配向している。第一繊維層110と第三繊維層130との間にある第二繊維層120は、熱可塑性繊維126を含有比率P1よりも多いP2重量%含んでいる。含有比率P2は、例えば、20~100重量%とすることができる。すなわち、第二繊維層120の繊維124は、非溶融成分を含む主繊維125を熱可塑性繊維126とともに含むのみならず、全て熱可塑性繊維126でもよい。第二繊維層120において非溶融成分を含む繊維を主繊維125と呼んでいるのは、繊維層110,120,130の全体において非溶融成分を含む繊維を主繊維と呼ぶ都合による。ここで、熱可塑性繊維126と主繊維125を繊維124と総称する。繊維124は、ランダムに配向している。
また、第二繊維層120の熱可塑性繊維126は、200℃以下の低融点の熱可塑性繊維と200℃を超える高融点の熱可塑性繊維との混合繊維でもよい。熱可塑性繊維126の一部が高融点熱可塑性繊維である場合、一般部20の嵩を出し易い。第二繊維層120が高融点熱可塑性繊維を含む場合、第二繊維層120における低融点熱可塑性繊維の含有比率は、第二繊維層120の形状を良好に保持する点で20重量%以上が好ましい。尚、200℃以下の低融点の成分を含むコンジュゲート繊維は、前述の低融点熱可塑性繊維に含まれる。
【0047】
第一繊維層110と第三繊維層130において、主繊維115,135の含有比率は60重量%以上であり、熱可塑性繊維116,136の含有比率は40重量%以下である。これは、サイレンサー1に適度に柔軟な感触(例えばカーペット50を介した足踏み性)を付与するためである。サイレンサー1の感触をさらに良好にする点で、主繊維115,135の含有比率が65重量%以上で熱可塑性繊維116,136の含有比率が35重量%以下であることがより好ましい。また、繊維層110,130において、主繊維115,135の含有比率は99重量%以下であり、熱可塑性繊維116,136の含有比率は1重量%以上である。これは、プレス成形後に繊維層110,130が崩れることを抑制するためである。繊維層110,130の形状をさらに良好に保持する点で、主繊維115,135の含有比率が95重量%以下で熱可塑性繊維116,136の含有比率が5重量%以上であることがより好ましく、主繊維115,135の含有比率が90重量%以下で熱可塑性繊維116,136の含有比率が10重量%以上であることがさらに好ましい。
むろん、主繊維115の含有比率と主繊維135の含有比率は、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0048】
第二繊維層120において、熱可塑性繊維126の含有比率は熱可塑性繊維116,136の含有比率P1よりも多い。これは、互いに融着した熱可塑性繊維126により第二繊維層120に高い剛性を与えるためであり、ひいては軽量なサイレンサー1に良好な圧縮強度を付与するためである。凹凸部30の形状を維持する観点で、熱可塑性繊維126の含有比率が30重量%以上で主繊維125の含有比率が70重量%以下であることがより好ましい。熱可塑性繊維126が200℃以下の低融点の熱可塑性繊維と200℃を超える高融点の熱可塑性繊維との混合繊維である場合、第二繊維層120における低融点熱可塑性繊維の含有比率は30重量%以上であることがより好ましい。また、一般部20の嵩を出し厚みを確保する観点で、熱可塑性繊維126の含有比率が70重量%以下で主繊維125の含有比率が30重量%以上であることがより好ましい。熱可塑性繊維126の一部が前述の高融点熱可塑性繊維である場合、第二繊維層120における高融点熱可塑性繊維の含有比率は、20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。
【0049】
上述した第三繊維層130は、図8,9に例示するように、省略可能である。
図8に示すサイレンサー1は、カーペット50に面する第一の成形面11が形成された第一繊維層110、及び、車体パネル80に面する第二の成形面12が形成された第二繊維層120を含む繊維材100である。第二繊維層120は、第一繊維層110が接着された接着面121を含んでいる。図8に示すサイレンサー1は、第二繊維層120が車体パネルに支えられることにより、カーペット50から柔軟な第一繊維層110に伝わった圧縮荷重が高い剛性の第二繊維層120に支えられる。従って、図8に示すサイレンサー1は、厚さ方向へ押した時の感触(例えば足踏み性)が良好であり、軽量化しても適度な圧縮強度を得ることができる。また、表皮材(例えばカーペット50)が厚さ方向への通気性を有する場合、車室C1から音波が表皮材を介してサイレンサー1に入ることによりサイレンサー1が吸音機能を発揮する。従って、第一繊維層110によって車室C1側の流れ抵抗値を制御することができ、吸音性を向上させることができる。
【0050】
図9に示すサイレンサー1は、カーペット50に面する第二の成形面12が形成された第二繊維層120、及び、車体パネル80に面する第一の成形面11が形成された第一繊維層110を含む繊維材100である。第二繊維層120は、第一繊維層110が接着された接着面121を含んでいる。図9に示すサイレンサー1は、第二繊維層120と車体パネル80との間に柔軟な第一繊維層110があることにより、カーペット50から高い剛性の第二繊維層120に伝わった圧縮荷重が柔軟な第一繊維層110の広い範囲で受け止められる。従って、図9に示すサイレンサー1は、さらに適度な圧縮強度を得ることができる。
【0051】
図1~7で示したサイレンサー1は、図8で示した場合と比べて第二繊維層120と車体パネル80との間に第三繊維層130があることにより、カーペット50から第一繊維層110を介して高い剛性の第二繊維層120に伝わった圧縮荷重が柔軟な第三繊維層130の広い範囲で受け止められる。従って、さらに適度な圧縮強度が得られる。また、図1~7で示したサイレンサー1は、図9で示した場合と比べて第二繊維層120の両側に繊維層110,130があることにより、カーペット50から柔軟な第一繊維層110に伝わった圧縮荷重が高い剛性の第二繊維層120に支えられる。従って、厚さ方向へ押した時の感触(例えば足踏み性)が良好であり、軽量化しても適度な圧縮強度が得られる。
【0052】
上述したサイレンサー1の目付は、例えば、1000~5000g/m2とすることができる。第一繊維層110と第三繊維層130を合わせた目付(図8,9に示す例では第一繊維層110の目付)は、サイレンサーに適度に柔軟な感触を付与する点で600g/m2以上が好ましく、サイレンサーに良好な圧縮強度を付与する点で1000g/m2以下が好ましい。サイレンサー1の目付は、一般部20と凹凸部30とで変える等、位置に応じて変えてもよい。
【0053】
例えば、第二繊維層120は、図10に示すように、第一繊維層110における第一の成形面11とは反対側の対向面111の一部に配置されてもよい。図10は、凹凸部30の図示を省略してサイレンサー1の車体パネル80側を模式的に例示している。図10の下部には、サイレンサー1をA2-A2の位置で切断したときの垂直断面を模式的に例示している。第二繊維層120は、目付が部分的に異なり、略均一の目付を有する第一繊維層110における対向面111に一体化されている。第三繊維層130は、略均一の目付を有し、第一繊維層110上の第二繊維層120、及び、第二繊維層120の繊維が無い部分の第一繊維層110における対向面111に一体化されている。尚、各層110,120,130の目付、及び、サイレンサー1の目付は、サイレンサー1の厚さ方向D3と直交する仮想の平面における単位面積当たりの重量とする。一般部20と凹凸部30の目付は、同じ仮想の平面における単位面積当たりの重量とする。例えば、凹凸部30の目付を一般部20の目付よりも多くすると、凹凸部30にさらに良好な剛性を得ることができる。
【0054】
第三繊維層130に形成された第二の成形面12は、凹凸面140とされている。この凹凸面140には、第二繊維層120の繊維が存在する部分にほぼ対応する凸部141、及び、第二繊維層120の繊維が存在しない部分にほぼ対応する凹部142が形成されている。凸部141には、比較的高い凸部141aや、比較的低い凸部141bが存在する。
また、第三繊維層130の無いサイレンサーも、本技術に含まれる。
【0055】
(3)車両用サイレンサーの製造方法の具体例:
図11は、車両用サイレンサー1を製造するためのサイレンサー製造装置の例を模式的に示している。図11の上部には、サイレンサー製造装置400を上から見た模式的な平面図を例示している。図12はプレス成形機200の垂直端面を模式的に例示している。
【0056】
図11に示すサイレンサー製造装置400は、繊維F1を下へ送り出す第一繊維供給部410、繊維F2を下へ送り出す第二繊維供給部420、繊維F3を下へ送り出す第三繊維供給部430、コンベヤ440、制御部450、プレス成形機200、を有している。ここで、繊維F1は第一繊維層110の繊維114となり、繊維F2は第二繊維層120の繊維124となり、繊維F3は第三繊維層130の繊維134となる。第三繊維層130の無いサイレンサー1を形成する場合、第三繊維供給部430は無くてもよい。
【0057】
第一繊維供給部410は、繊維F1用の原糸を解繊及び混綿し、移動方向D4へ移動するコンベヤ440上に繊維F1を厚さ及び目付が略一定となるように供給して第一供給繊維層310を形成する。従って、主に第一繊維供給部410とコンベヤ440とで第一繊維供給工程S1が実施される。第一供給繊維層310は、第一繊維層110となる。
【0058】
移動方向D4において第一繊維供給部410よりも下流側に配置された第二繊維供給部420は、繊維F2用の原糸を解繊及び混綿し、移動方向D4へ移動する第一供給繊維層310上に繊維F2を厚さ及び目付が部分的に異なるように供給して第二供給繊維層320を形成する。従って、主に第二繊維供給部420とコンベヤ440とで第二繊維供給工程S2が実施される。第二供給繊維層320は、接着面121を有する第二繊維層120となる。図11に示す第二繊維供給部420は、繊維F2の供給箇所がコンベヤ440の幅方向D5においてそれぞれ異なる複数の分割繊維供給部425を有している。図11には第二繊維供給部420が分割繊維供給部#1~#10に分割されていることが示されているが、第二繊維供給部420に設置される分割繊維供給部425の数は10に限定されない。各分割繊維供給部425は、繊維F2の計量機能を有する。各分割繊維供給部425からは、コンベヤ440で移送される第一供給繊維層310の上面における任意の位置に任意の量の繊維F2を堆積させることができる。
【0059】
移動方向D4において第二繊維供給部420よりも下流側に配置された第三繊維供給部430は、繊維F3用の原糸を解繊及び混綿し、移動方向D4へ移動する供給繊維層310,320上に繊維F3を厚さ及び目付が略一定となるように供給して第三供給繊維層330を形成する。すなわち、繊維F3は、第二供給繊維層320、及び、該第二供給繊維層320の繊維F2が無い部分の第一供給繊維層310上に堆積する。従って、主に第三繊維供給部430とコンベヤ440とで第三繊維供給工程S3が実施される。第三供給繊維層330は、第三繊維層130となる。
【0060】
コンベヤ440は、供給繊維層310,320,330を含む繊維集合物300を載せて移動方向D4へ移送する。コンベヤ440には、ベルトコンベヤ等を用いることができる。ベルトコンベヤのベルトに多数の通気孔が形成されていると、熱風加熱等により繊維集合物300を例えば熱可塑性繊維116,126,136の融点よりも少し高い温度まで予備加熱するのに好適である。
【0061】
制御部450は、コンベヤ440の移動速度V1、繊維供給部410,430からの繊維F1,F3の供給速度、各分割繊維供給部425からの繊維F2の供給速度V2、等を制御する。特に、制御部450は、第一供給繊維層310上の事前に設定した領域のみに繊維F2を供給する制御を行い、さらに、繊維F2を供給する領域において繊維F2の供給量も制御する。制御部450は、制御プログラムを構成するシーケンスに従って、分割繊維供給部425から第一供給繊維層310上に供給する繊維F2の目付を分割繊維供給部425の単位で可変制御する。
【0062】
繊維供給工程S1,S2,S3を経て形成される繊維集合物300は、プレス成形機200に搬入され、プレス成形される(成形工程S5)。成形工程S5の前に、繊維集合物300が予備加熱されてもよい(予備加熱工程S4)。予備加熱工程S4では、繊維集合物300をサクションヒーター(熱風循環ヒーター)等の加熱機に搬入し、熱風加熱等により例えば熱可塑性繊維116,126,136の融点よりも少し高い温度まで予備加熱してもよい。予備加熱時の熱量を増やすため、サクションヒーターによる加熱に加えて赤外線ヒーターによる輻射加熱を同時に行ってもよい。むろん、サクションヒーターを用いない加熱も可能である。また、予備加熱工程S4では、サイレンサー1の形状に合わせて予備成形してプリフォームを形成してもよい。
【0063】
マット状又はプリフォーム状の繊維集合物300は、図12に例示するようなプレス成形機200に搬入される。図12に示すプレス成形機200は、プレス成形型210を構成する上型212及び下型214が近接及び離隔可能に設けられている。上型212は、サイレンサー1の車体パネル80側の形状に合わせた型面213を対向面に有する金型とされている。下型214は、サイレンサー1のカーペット50側の形状に合わせた型面215を対向面に有する金型とされている。プレス成形は、加熱を伴う熱間プレスが好ましいものの、加熱を伴わない冷間プレスでもよい。
【0064】
下型214の上に繊維集合物300が配置され(プレス成形工程PR1)、両型212,214が近接すると、トリミング前のサイレンサー1がプレス成形される(プレス成形工程PR2)。これにより、第一供給繊維層310から第一繊維層110が形成され、第二供給繊維層320から第二繊維層120が形成され、繊維集合物300に第三供給繊維層330がある場合には第三供給繊維層330から第三繊維層130が形成される。第一繊維層110には、第一の成形面11が形成される。第二繊維層120は、第一繊維層110と一体化され、第三供給繊維層330がある場合に第三繊維層130と一体化される。第三供給繊維層330がある場合、第三繊維層130に第二の成形面12が形成される。第三供給繊維層330が無い場合、第二繊維層120、及び、第一繊維層110において第二繊維層120の繊維の無い部分に第二の成形面12が形成される。
【0065】
トリミング前のサイレンサー1は、冷却後にプレス成形機200から取り出されて外周裁断機へ搬入され、外周が裁断される。尚、裁断方法は、裁断刃による裁断、ウォータージェット裁断、カッターを用いた手裁断、等を採用することができる。また、必要に応じてサイレンサー1に厚さ方向D3へ貫通した穴が形成されてもよい。
【0066】
本具体例の製造方法は、各分割繊維供給部425からの繊維F2の供給量を位置に応じて変えることにより、一般部20と凹凸部30とで目付を変えることができ、ひいては一般部20と凹凸部30とで熱可塑性繊維の含有比を変えることができる。
【0067】
凹凸部30における熱可塑性繊維116,126,136の含有比は、一般部20における熱可塑性繊維116,126,136の含有比よりも高い方が好ましい。例えば、凹凸部30における繊維F2の供給量を一般部20における繊維F2の供給量よりも多くすることにより、凹凸部30における第二繊維層120の目付を一般部20における第二繊維層120の目付よりも大きくすることができる。ここで、第二繊維層120は、第一繊維層110及び第三繊維層130よりも熱可塑性繊維の含有比率が多い。従って、凹凸部30における第二繊維層120の目付が一般部20における第二繊維層120の目付よりも大きいことにより、凹凸部30における熱可塑性繊維116,126,136の含有比を一般部20における熱可塑性繊維116,126,136の含有比よりも高くすることができる。形成される凹凸部30は、一般部20よりも熱可塑性繊維116,126,136の含有比が高いことにより、高い剛性を発揮する。
【0068】
また、各分割繊維供給部425により供給される繊維F2に含まれる熱可塑性繊維の含有比率を変えることによっても、位置に応じて熱可塑性繊維116,126,136の含有比を変えることが可能である。凹凸部30に供給される繊維F2に含まれる熱可塑性繊維の含有比率を一般部20に供給される繊維F2に含まれる熱可塑性繊維の含有比率よりも多くすると、凹凸部30における熱可塑性繊維116,126,136の含有比を一般部20における熱可塑性繊維116,126,136の含有比よりも高くすることができる。
【0069】
(4)具体例に係る車両用サイレンサーの作用、及び、効果:
繊維質のサイレンサー1に含まれる凹凸部30は、凹凸形状により高い剛性を有する。これにより、カーペット50の面剛性を部分的に補うための別体のスペーサーをカーペット50の裏側に設定しなくても当該部分におけるカーペット50の面剛性が補われる。また、凹凸部30は第一の内側面34と第二の内側面35との間に隙間CL1を有するので、サイレンサー1の重量増加が抑制される。従って、本具体例のサイレンサー1は、繊維材を含み部分的に高い剛性を有する軽量の車両用サイレンサーである。
【0070】
(5)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、本発明を適用可能な車両用サイレンサーは、車室用のフロアサイレンサー以外にも、荷室用のサイレンサー、ドア部のサイレンサー、天井部のサイレンサー、ダッシュサイレンサー、エンジン部のサイレンサー、フェンダー部のサイレンサー、等でもよい。
【0071】
繊維材は、3層構造又は2層構造に限定されず、単層構造でもよいし、4層以上の多層構造でもよい。
また、車両用サイレンサーは、プレス成形された繊維材100に限定されず、繊維材に積層された熱可塑性樹脂層を含む等、繊維材と付加的な要素とを含んでいてもよい。
【0072】
車両用サイレンサーの凹凸部の位置は、カーペット50の離隔部54に対応する位置に限定されず、カーペット50と車体パネル80との間隔が一般部20とほぼ同じ位置等でもよい。例えば、カーペット50において乗員の足が頻繁に置かれる部位の下に凹凸部30が存在すると、当該部位の面剛性を向上させることができる。
【0073】
さらに、図13~15に例示するように、複数の頂部31の少なくとも一部は、一般部20に有ってもよい。図13~15は、別のサイレンサーの構造を車体パネル80及びカーペット50とともに模式的に示している。図13~15に示すサイレンサー1は、繊維材100であり、3層構造でもよいし、2層構造でもよいし、単層構造でもよいし、4層以上の多層構造でもよい。
【0074】
図13に示すサイレンサー1は、凹凸部30と一般部20の両方に頂部31を有し、また、凹凸部30と一般部20の両方に基底部36を有している。ここで、図13に示すように、凹凸部30に第一の頂部31a及び第二の基底部36bが有り、一般部20に第二の頂部31b及び第一の基底部36aが有るとする。凹凸部30の凹面32は、第一の頂部31aと底部33との間にある第一の内側面34、及び、第二の頂部31bと底部33との間にある第二の内側面35を含んでいる。凹凸部30は、第一の内側面34と第二の内側面35との間に隙間CL1を有する。凹凸部30の裏向き凹面37は、第一の基底部36aと底部33との間にある第三の内側面39、及び、第二の基底部36bと底部33との間にある第四の内側面40を含んでいる。凹凸部30は、第三の内側面39と第四の内側面40との間に隙間CL2を有する。
以上より、図13に示すサイレンサー1も、繊維材を含み部分的に高い剛性を有する軽量の車両用サイレンサーである。
【0075】
図14に示すサイレンサー1も、凹凸部30と一般部20の両方に頂部31を有する。ここで、凹凸部30に第一の頂部31aが有り、一般部20に第二の頂部31bが有るとする。凹凸部30の凹面32は、第一の頂部31aと底部33との間にある第一の内側面34、及び、第二の頂部31bと底部33との間にある第二の内側面35を含んでいる。凹凸部30は、第一の内側面34と第二の内側面35との間に隙間CL1を有する。従って、図14に示すサイレンサー1も、繊維材を含み部分的に高い剛性を有する軽量の車両用サイレンサーである。
【0076】
図15に示すサイレンサー1は、一般部20に第一の頂部31a及び第二の頂部31bを有している。凹凸部30の凹面32は、第一の頂部31aと底部33との間にある第一の内側面34、及び、第二の頂部31bと底部33との間にある第二の内側面35を含んでいる。凹凸部30は、第一の内側面34と第二の内側面35との間に隙間CL1を有する。従って、図15に示すサイレンサー1も、繊維材を含み部分的に高い剛性を有する軽量の車両用サイレンサーである。
【0077】
以上より、本技術は、以下の態様を含む。
プレス成形された繊維材100を含み、車体パネル80と、裏面51を有する表皮材(50)と、の間に設置される車両用サイレンサー1であって、
前記繊維材100は、
前記表皮材(50)の前記裏面51に沿った表面21を有する一般部20と、
前記表皮材(50)の前記裏面51から離れる向きに凹んだ凹面32を有する凹凸部30と、を備え、
前記繊維材100は、前記表皮材(50)の前記裏面51に沿った第一の頂部31a、及び、前記表皮材(50)の前記裏面51に沿った第二の頂部31bを有し、
前記凹面32は、底部33、前記第一の頂部31aと前記底部33との間にある第一の内側面34、及び、前記第二の頂部31bと前記底部33との間にある第二の内側面35を含み、
前記凹凸部30は、前記第一の内側面34と前記第二の内側面35との間に隙間CL1を有する、車両用サイレンサー1。
【0078】
(6)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、繊維材を含み部分的に高い剛性を有する軽量の車両用サイレンサー等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1…サイレンサー、11…第一の成形面、12…第二の成形面、
20…一般部、21…表面、22…凹凸形状、23…裏面、
30…凹凸部、
31…頂部、31a…第一の頂部、31b…第二の頂部、
32…凹面、33…底部、34…第一の内側面、35…第二の内側面、
36…基底部、36a…第一の基底部、36b…第二の基底部、
37…裏向き凹面、38…天井部、39…第三の内側面、40…第四の内側面、
50…カーペット(表皮材)、51…裏面、52…凹凸形状、54…離隔部、
80…車体パネル、81…表面、
100…繊維材、
110…第一繊維層、114…繊維、115…主繊維、116…熱可塑性繊維、
120…第二繊維層、124…繊維、125…主繊維、126…熱可塑性繊維、
130…第三繊維層、134…繊維、135…主繊維、136…熱可塑性繊維、
CL1,CL2…隙間、
D3…厚さ方向、
T0…一般部の厚さ、T1…凹凸部の厚さ、
W1,W2…隙間の幅、d1,d2…隙間の深さ。
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