(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】表面実装機
(51)【国際特許分類】
H05K 13/08 20060101AFI20231211BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20231211BHJP
H05K 13/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H05K13/08 Z
G01R31/00
H05K13/00 Z
(21)【出願番号】P 2020097111
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝広
(72)【発明者】
【氏名】本間 裕
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-207254(JP,A)
【文献】特開平06-011540(JP,A)
【文献】特開2001-013186(JP,A)
【文献】国際公開第2016/203571(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/08
H05K 13/00
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に電子部品を搭載する表面実装機であって、
基台と、
基台上において平面方向に移動するヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットに設けられ電子部品を保持する保持部と、
基台上に位置する検査台を含み、電子部品の電気的特性を測定する測定器と、
基台上に位置する金属製のショート治具と、
コントローラと、を備え、
前記検査台には、一対の測定用の電極が設けられ、
前記測定器をショート補正するため、インピーダンスを測定する間、前記ヘッドユニットが、前記保持部に保持したショート治具を用いて、前記検査台の一対の前記電極をショートさせ
、
前記測定器のオープン補正後にショート補正を行う場合、
前記コントローラは、前記測定器のオープン補正中に、ショート補正のため準備を行い、
ショート補正のための前記準備は、前記基台上の前記ショート治具を、前記ヘッドユニットにより初期高さH1まで上昇させた後、前記初期高さH1から、前記初期高さH1よりも低く、前記ショート治具が前記検査台の前記電極に対して非接触でオープン補正に影響のない限界高さH2まで降下させる動作である、表面実装機。
【請求項2】
請求項1に記載の表面実装機であって、
ショート補正のための前記準備において、前記コントローラは、前記初期高さH1まで上昇した前記ショート治具を、前記検査台の前記電極の上方に移動させた後、
前記限界高さH2に降下させる、表面実装機。
【請求項3】
請求項2に記載の表面実装機であって、
前記コントローラは、オープン補正終了後、前記電極の上方に位置する前記ショート治具を、前記限界高さH2から下降して前記電極に接触させることにより前記検査台の一対の前記電極をショートさせ、前記電極のショート後、前記測定器のショート補正を開始する、表面実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される技術は、電子部品を基板に搭載する表面実装機に関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装機は基板上に電子部品を搭載する装置である。下記特許文献1には、基板に搭載する電子部品の電気的特性を測定器により測定し、電子部品の種類の良否を判断する点について記載がある。
【0003】
電子部品の電気的特性を測定する測定器は、ケーブルや電極部分での残留成分により、測定誤差が生じる場合がある。そのため、使用前に、ショート補正やオープン補正を行うことが一般的である(下記特許文献2、3)。
ショート補正は、電極間をショートして、ケーブルや電極部分での残留インピーダンスを測定し、測定した残留インピーダンスを補正値として取得するものである。オープン補正は、電極間をオープンして、ケーブルや電極部分での浮遊アドミタンスを測定し、測定した浮遊アドミタンスを補正値として取得するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-174249号公報
【文献】特許第3569382号
【文献】特開2015-10983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ショート補正を行う場合、インピーダンスの測定中、ショート治具等で電極をショートさせておく必要がある。これらを手作業で行うと、作業者の負担が大きい。
【0006】
本明細書で開示される技術は、電子部品の電気的特性を測定する測定器を備えた表面実装機において、測定器を補正するにあたり、作業者の負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
基板に電子部品を搭載する表面実装機であって、基台と、基台上において平面方向に移動するヘッドユニットと、前記ヘッドユニットに設けられ電子部品を保持する保持部と、基台上に位置する検査台を含み、電子部品の電気的特性を測定する測定器と、基台上に位置する金属製のショート治具と、を備え、前記検査台には、一対の測定用の電極が設けられ、前記測定器をショート補正するためインピーダンスを測定する間、前記ヘッドユニットが、前記保持部に保持したショート治具を用いて、前記検査台の一対の前記電極をショートさせる。
【0008】
本構成では、ショート補正中、ヘッドユニットが、保持部に保持したショート治具を用いて、検査台の一対の電極をショートさせる。そのため、これらの作業を作業者が行う必要がなくなることから、作業者の工数を削減することができる。
【0009】
本明細書で開示される部品供給装置の一実施態様として、以下の構成でもよい。
【0010】
前記ヘッドユニットは、前記測定器のオープン補正中に、前記保持部に保持した前記ショート治具を、前記電極の上方に移動してもよい。
【0011】
本構成では、オープン補正後にショート治具を移動する場合に比べて、ショート補正をするための準備を短時間で行うことができる。
【0012】
前記ヘッドユニットは、前記測定器のオープン補正中に、前記電極に対して非接触でオープン補正に影響のない高さまで、前記ショート治具を降下させてもよい。
【0013】
本構成では、オープン補正後にショート治具を降下させる場合に比べて、ショート補正をするための準備を短時間で行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本明細書で開示される技術によれば、電子部品の電気的特性を測定する測定器を備えた表面実装機において、測定器をショート補正するにあたり、作業者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図5】基台上における検査台と治具台の位置関係を示す図である。
【
図6】導電性の吸着ノズルに使用されるショート治具の構造を示す図である。
【
図8】検査台に対するショート治具のセット動作の説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
1.表面実装機の全体構成
表面実装機1は、
図1に示すように、基台11と、プリント基板Pを搬送する搬送コンベア20と、ヘッドユニット60と、ヘッドユニット60を基台11上にて平面方向(XY方向)に移動させる駆動装置30とを備えている。尚、以下の説明において、基台11の長手方向(
図1の左右方向)をX方向と呼ぶものとし、基台11の奥行方向(
図1の上下方向)をY方向、
図2の上下方向(高さ方向)をZ方向とする。
【0017】
搬送コンベア20は、基台11の中央に配置されている。搬送コンベア20はX方向に循環駆動する一対の搬送ベルト21を備えており、搬送ベルト21上の二点鎖線で示したプリント基板Pを、ベルトとの摩擦によりX方向に搬送する。
【0018】
表面実装機1は、
図1に示す左側が入り口であり、プリント基板Pは、
図1に示す左側より、搬送コンベア20を通じて機内へと搬入される。搬入されたプリント基板Pは、搬送コンベア20により基台中央の作業位置まで運ばれ、そこで停止する。
【0019】
一方、基台11上には、作業位置の周囲を囲むようにして、部品供給部13が4箇所設けられている。これら各部品供給部13には、電子部品を供給するフィーダ80が横並び状に多数設置されている。
【0020】
そして作業位置では、上記フィーダ80を通じて供給された電子部品Eを、プリント基板P上に搭載する実装処理が、ヘッドユニット60に搭載された実装ヘッド63により行われるとともに、その後、実装処理を終えたプリント基板Pはコンベア20を通じて
図1における右方向に運ばれ、機外に搬出される。
【0021】
駆動装置30は、大まかには一対の支持脚41、ヘッド支持体51、Y軸ボールネジ45、Y軸モータ47、X軸ボールネジ55、X軸モータ57から構成される。具体的に説明してゆくと、
図1に示すように基台11上には一対の支持脚41が設置されている。両支持脚41は作業位置の両側に位置しており、共にY方向にまっすぐに延びている。
【0022】
両支持脚41にはY方向に延びるガイドレール42が支持脚上面に設置されると共に、これら左右のガイドレール42に長手方向の両端部を嵌合させつつヘット支持体51が取り付けられている。
【0023】
また、右側の支持脚41にはY方向に延びるY軸ボールねじ45が装着され、更にY軸ボールねじ45にはボールナット(不図示)が螺合されている。そして、Y軸ボールねじ45にはY軸モータ47が付設されている。
【0024】
Y軸モータ47を通電すると、Y軸ボールねじ45に沿ってボールナットが進退する結果、ボールナットに固定されたヘッド支持体51、ひいては次述するヘッドユニット60がガイドレール42に沿ってY方向に移動する(Y軸サーボ機構)。
【0025】
ヘッド支持体51は、X方向に長い形状である。ヘッド支持体51には、
図2に示すように、X方向に延びるガイド部材53が設置され、更に、ガイド部材53に対してヘッドユニット60が、ガイド部材53の軸に沿って移動自在に取り付けられている。このヘッド支持体51には、X方向に延びるX軸ボールねじ55が装着されており、更にX軸ボールねじ55にはボールナットが螺合されている。
【0026】
そして、X軸ボールねじ55にはX軸モータ57が付設されており、同モータ57を通電すると、X軸ボールねじ55に沿ってボールナットが進退する結果、ボールナットに固定されたヘッドユニット60がガイド部材53に沿ってX方向に移動する(X軸サーボ機構)。
【0027】
従って、X軸モータ57、Y軸モータ47を複合的に制御することで、基台11上においてヘッドユニット60を平面方向(XY方向)に移動操作出来る構成となっている。
【0028】
ヘッドユニット60には、電子部品Eの実装作業を行う実装ヘッド63が一列状に複数個搭載されている。
【0029】
各実装ヘッド63は、
図3に示すように、Z軸モータ67を駆動源とする直動作機構(例えば、ネジ機構)68によりヘッドユニット60に対して昇降可能な構成となっている。実装ヘッド63は、さらに、R軸モータの駆動により、軸周りに回転可能でもよい。
【0030】
また、各実装ヘッド63には、先端に絶縁性の吸着ノズル63Aを有している。各実装ヘッドには、図外の負圧手段から負圧が供給されるように構成されており、ヘッド先端(吸着ノズル63A)に吸引力を生じさせるようになっている。
【0031】
このような構成とすることで、X軸モータ57、Y軸モータ47、Z軸モータ67を所定のタイミングで作動させることにより、フィーダ80を通じて供給される電子部品Eを実装ヘッド63により取り出して、プリント基板P上に搭載する処理を実行することが出来る。実装ヘッド63は、本発明の「保持部」に相当する。
【0032】
尚、
図1に示す符号「17」は部品認識カメラ、
図2に示す符号65は基板認識カメラである。部品認識カメラ17は基台11上において撮像面を上に向けて固定されている。
【0033】
部品認識カメラ17は、実装ヘッド63により取り出された電子部品Eの画像(下面画像)を撮像して、実装ヘッド63による電子部品Eの吸着姿勢を検出するものである。基板認識カメラ65はヘッドユニット60に撮像面を下に向けた状態で固定されており、ヘッドユニット60とともに一体的に移動する構成とされている。
【0034】
これにより、上述のX軸サーボ機構、Y軸サーボ機構を駆動させることで、プリント基板P上の任意の位置の画像を、基板認識カメラ65により撮像することが出来る。
【0035】
図4は、表面実装機1の電気的構成を示すブロック図である。表面実装機1は、コントローラ100を有している。コントローラ100は、演算部101とメモリ103を備える。
【0036】
コントローラ100には、バスBSを介して、X軸モータ57、Y軸モータ47、Z軸モータ67、部品認識カメラ17、基板認識カメラ65及び測定器120などが接続されている。コントローラ100は、メモリ103に記憶された実装プログラムに従って、X軸モータ57、Y軸モータ47、Z軸モータ67を制御することで、基台上において、ヘッドユニット60の位置制御を行う。
【0037】
2.測定器とその補正
表面実装機1は、測定器120とショート治具137を有している。測定器120は、基板P上に搭載する電子部品Eの電気的特性、例えば、抵抗R、インダクタンスL、容量Cなどを測定する装置である。
【0038】
測定器120は、
図5に示すように、LCRメータ121と、検査台125と、ケーブル123と、を有している。
【0039】
LCRメータ121は、基台11の側面に取り付けられている。検査台125は、基台11の上面において、基板Pの停止位置を避けて配置されている。
【0040】
検査台125は、一対の電極127A、127Bを有している。一対の電極127A、127Bは、電気特性の測定用であり、検査台125の上面に対して対向部分が低くなるように傾斜した状態で取り付けられている。電極127A、127Bは、ばね性を有していてもよい。電極127A、127Bは検査台125に対して絶縁されている。
【0041】
検査台125の一対の電極127A、127Bは、ケーブル123を介してLCRメータ121に対して電気的に接続されている。電極127A、127Bとケーブル123は、測定試料である電子部品EをLCRメータ121に対して電気的に接続するための接続回路130(
図9)を構成する。つまり、測定器120は、LCRメータ121と接続回路130とを備える構成となっている。接続回路130は、測定試料である電子部品EをLCRメータ121に対して電気的に接続するものであれば、実施形態の例に限定されず、どのような構成でもよい。
【0042】
検査台125上に電子部品Eを移動し、電子部品Eの一対の端子を、一対の電極127A、127Bに対して接触させることで、電極127A、127Bを通じて電子部品Eを通電することができ、LCRメータ121にて、電子部品Eの電気的特性を測定することができる。
【0043】
電子部品Eの電気的特性を、例えば、実装作業の開始前に測定して、マスターデータと比較することで、基板Pに搭載する電子部品Eの種類に誤りがないか、確認を行うことができる。また、測定結果から電子部品Eの異常の有無を判断することができる。マスターデータは、電気的特性を判断するための基準となるデータであり、電子部品Eのデータシートの値や実験値を用いることが出来る。
【0044】
測定器120は、測定試料である電子部品Eを、ケーブル123や電極127A、127Bなどにより構成される接続回路130を用いてLCRメータ121と接続し測定を行う。LCRメータ121と電子部品Eを接続する接続回路130には、残留成分(残留インピーダンスZoや浮遊アドミタンスYo)が存在する(
図9参照)。
【0045】
接続回路130の残留インピーダンスZoや浮遊アドミタンスYoは、電子部品Eの電気的特性を測定する際に、誤差の要因となる。そのため、測定器120の取り付け時や使用前に、オープン補正とショート補正を行うことが一般的である。
【0046】
オープン補正は、2つの電極127A、127Bをオープン(電気的に開放)した状態で、接続回路130の浮遊アドミタンスYoの測定を行い、測定した浮遊アドミタンスYoを補正値として、LCRメータ121に取り込むものである。
【0047】
ショート補正は、2つの電極127A、127Bをショート(電気的に短絡)した状態で、接続回路130の残留インピーダンスZoを測定し、測定した残留インピーダンスZoを補正値として、LCRメータ121に取り込むものである。
【0048】
LCRメータ121において、残留インピーダンスZoと浮遊アドミタンスYoの実測値を用いて、電子部品Eの電気的特性の測定結果を補正することで、電子部品Eの電気的特性の測定誤差を抑えることが出来る。
【0049】
表面実装機1の基台11上には、治具台135が配置されている。治具台135上には、ショート治具137が配置されている。ショート治具137は、金属製の板状部材であり、検査台125の2つの電極127A、127Bを短絡することが出来る。
【0050】
実装ヘッド63の吸着ノズル63Aが導電性の場合、ショート治具137は、
図6に示すように、絶縁基材138Aの下面に金属製の板状部材138Bを貼り合わせた構造として、吸着ノズル63Aと絶縁するようにしてもよい。
【0051】
図1、
図5に示すように、治具台135は検査台125と隣り合いつつ並んだ状態で配置されている。検査台125と治具台135はいずれもヘッドユニット60の可動範囲F内に位置している。そのため、測定器120のショート補正を行う際に、検査台125に対するショート治具137のセット作業を、ヘッドユニット60を用いて自動的に行うことが出来る。
【0052】
以下、測定器120の補正処理について、
図7、
図8を参照して説明を行う。
測定器120の補正処理は、S10~S110の11ステップにより構成されている。補正処理は、測定器120の取り付け時や生産開始前に、コントローラ100に対して作業者が指示することにより開始することが出来る。
【0053】
尚、補正処理の開始前において、測定器120のショート補正に使用するショート治具137は治具台135上に在るものとする。また、測定器120の検査台125には、
図8の(a)に示すように、何も置かれてなく、一対の電極127A、127Bはオープン状態であるものとする。
【0054】
補正処理の開始指示を受けると、コントローラ100は、オープン補正の開始を指示するコマンドをLCRメータ121に送信する(S10)。
【0055】
LCRメータ121はコントローラ100からコマンドを受信すると、オープン補正を開始し、まず、接続回路130のオープン状態におけるインピーダンス(浮遊アドミタンスYo)を測定する。
【0056】
コントローラ100は、コマンドの送信後、ヘッドユニット60によるショート治具137の移動処理を開始し、LCRメータ121による接続回路130のオープン状態におけるインピーダンス測定中に、ショート治具137を検査台125に向けて移動し、検査台125の上方で待機させる。
【0057】
具体的には、コントローラ100は、測定器120に対するコマンドの指令後、まず、ヘッドユニット60を治具台135の上方へ移動する(S20)。
【0058】
そして、ヘッドユニット60が治具台135の上方に移動すると、実装ヘッド63を初期高さH1から下降させて、治具台135上のショート治具137を実装ヘッド63の先端に吸着する。ショート治具137の吸着後、実装ヘッド63は上昇し初期高さH1に復帰する(S30)。初期高さH1は、ヘッドユニット60を基台11上で移動しても、実装ヘッド63が基台11上の装置や作業対象物に干渉しない高さである。
【0059】
ショート治具137を吸着した実装ヘッド63が初期高さH1に復帰すると、その後、コントローラ100は、ヘッドユニット60を検査台125上に移動する(S40)。これにより、
図8の(b)に示すように、ショート治具137が電極127A、127Bの真上に位置する。
【0060】
このとき、電極127A、127Bの真上に位置するショート治具を、
図8の(b)に示す初期高さH1から、
図8の(c)に示す限界高さH2まで下降させてもよい。限界高さH2は、電極127A、127Bに対して非接触でオープン補正に影響のない高さである。つまり、オープン補正による接続回路130の浮遊アドミタンスYoの計測に影響を及ぼさない高さである。高さHは、基台上面を基準とした高さである。
【0061】
コントローラ100は、検査台125に対するショート治具137の移動を終えると、測定器120のオープン補正が完了したか、判断する(S50)。
【0062】
LCRメータ121は、接続回路130のオープン状態におけるインピーダンス測定が完了すると、測定したインピーダンス、つまり、浮遊アドミタンスYoを補正値として記憶する。そして、補正が終了すると、オープン補正の終了をコントローラ100に通知する。
【0063】
コントローラ100は、検査台125に対するショート治具137の移動が終了した時点で、オープン補正の終了通知を受けていれば、直ちにS60に移行する。また、オープン補正の終了通知を受けていなければ、オープン補正の完了を待ってS60に移行する。
【0064】
S60に移行すると、コントローラ100は、Z軸モータ67を駆動して、実装ヘッド63を初期高さH1又は限界高さH2から下降させ、実装ヘッド63の先端に吸着したショート治具137を、検査台125の2つの電極127A、127Bに接触させる。これにより、2つの電極127A、127Bはショートする。
【0065】
コントローラ100は、ショート治具137が2つの電極127A、127Bに接触すると、ショート補正の開始を指示するコマンドを測定器120に送信する(S70)。
【0066】
コントローラ100は、コマンドの送信後、電極127A、127Bに対するショート治具137の接触状態を保持して電極間をショートさせた状態に維持しつつ、ショート補正の完了を待つ待機状態となる(S80)。
【0067】
LCRメータ121は、コントローラ100からコマンドを受信すると、ショート補正を開始し、接続回路130のショート状態におけるインピーダンス(残留インピーダンスZo)を測定する。
【0068】
LCRメータ121は、接続回路130のショート状態におけるインピーダンスの測定が完了すると、測定したインピーダンス、つまり、接続回路130の残留インピーダンスZoを補正値として記憶する。そして、補正が終了すると、LCRメータ121は、ショート補正の終了をコントローラ100に通知する。
【0069】
コントローラ100は、LCRメータ121からショート補正の終了通知を受けると、ショート補正が完了したと判断し、S90に移行する。
【0070】
S90に移行すると、コントローラ100は、Z軸モータ67を駆動して、実装ヘッド63を上昇させる。
【0071】
実装ヘッド63が初期高さH1に復帰すると、コントローラ100は、ヘッドユニット60を検査台125から治具台135に移動する(S100)。
【0072】
ヘッドユニット60が治具台135に移動すると、実装ヘッド63に吸着したショート治具137が治具台135の真上に位置する。
【0073】
そのため、Z軸モータ67を駆動して、実装ヘッド63を初期高さH1から下降させ、ショート治具137が治具台135まで下降した時点で、負圧による吸着を解くことで、実装ヘッド63に吸着したショート治具137を、治具台135に対して返却することが出来る(S110)。以上により、測定器120の補正処理が完了する。
【0074】
3.効果
本構成では、ショート補正中、ヘッドユニット60が、実装ヘッド63に保持したショート治具137を用いて、検査台125の一対の電極127A、127Bをショートさせる。そのため、これらの作業を作業者が行う必要がなくなることから、作業者の工数を削減することができる。
【0075】
また、ヘッドユニット60は、測定器120のオープン補正中に、実装ヘッド63に保持したショート治具137を、電極127A、127Bの上方に移動する。そのため、オープン補正終了後にショート治具137を移動する場合に比べて、ショート補正をするための準備を短時間で行うことができる。
【0076】
また、測定器120のオープン補正中に、電極127A、127Bの真上に移動したショート治具137を初期高さH1から限界高さH2まで下降させておくことで、オープン補正後にショート治具137を降下させる場合に比べて、ショート補正をするための準備をより短時間で行うことができる。
【0077】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記既述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0078】
上記した実施形態では、保持部の一例として、吸引式の実装ヘッド63を示した。実装ヘッド63は、吸引式に限らず、クランプ式でもよい。クランプ式は、一対のアームで電子部品を把持するタイプである。
【0079】
上記した実施形態では、測定器120のショート補正中、ヘッドユニット60が、実装ヘッド63に保持したショート治具137を用いて、検査台125の一対の電極127A、127Bをショートさせた。ショートした状態は少なくとも、接続回路130のショート状態のインピーダンスを測定する間、保持されていればよい。
【0080】
上記した実施形態にて開示した表面実装機1は、LCRメータ121及び検査台125を1組だけ設けた。LCRメータ121及び検査台125は、搬送コンベア20を挟んで、基台11の両側に取り付けてもよく、また、少なくともLCRメータ121及び検査台125を、基台11の片側に設けるようにしてもよい。
【0081】
図10に示す表面実装機150Aは、LCRメータ121及び検査台125を、搬送コンベア20を挟んでY方向の両側にそれぞれ配置している。具体的には、基台11上において、搬送コンベア20の一方側(
図10の下側)の位置に検査台125Aを配置し、搬送コンベア20の他方側(
図10の上側)の位置に検査台125Bを配置している。また、基台11のY方向の両側面のうち、一方側の側面11AにLCRメータ121Aを配置し、他方側の側面11BにLCRメータ121Bを配置している。2つの検査台125A、125Bは、いずれもヘッドユニット60の可動範囲F内に位置しており、ヘッドユニット60は、2つの検査台125A、125Bのうち、どちらの検査台にもアクセスできる。
【0082】
ヘッドユニット60の可動範囲F内に、複数の検査台125A、125Bを配置することで、電子部品Eの電気的特性を検査する際に、検査対象の電子部品Eを保持したヘッドユニット60は、2つの検査台125A、215Bのうち、近い方の検査台125に移動して検査を行うことが出来るので、検査時間を極力短くすることが出来る。尚、
図10の例では、検査台125A、125Bと同様に、搬送コンベア20のY方向両側に治具台135A、135Bをそれぞれ配置しているが、治具台135は1つだけでもいい。
【0083】
図11に示す表面実装機150Bは、基台11に対して、Y方向の片側にのみ、LCRメータ121A及び検査台125Aを配置している。表面実装機150Bは、Y方向に延びるガイドレール42上に2列のヘッド支持体51A、51Bを有しており、各ヘッド支持体51A、51Bには、独立して駆動するヘッドユニット60A、60Bがそれぞれ搭載されている。表面実装機150Bは、各ヘッド支持体51A、51BがY方向に独立して移動することで、各ヘッド支持体51A、51Bに搭載された各ヘッドユニット60A、60Bが、基台11のY方向両側に配置されたいずれの部品供給部13A、13Bへもアクセス可能なオーバードライブ機能を有している。表面実装機150Bでは、独立して駆動する2つのヘッドユニット60A、60Bが、ヘッドユニット60A、60Bの可動範囲F内に設けられた1つの検査台125Aを共通使用して、電子部品Eの電気的特性の検査を行うことが出来る。また、検査台125は、
図10に示す表面実装機150Aと同様に、2組の配置とすることも出来る。
【符号の説明】
【0084】
1 表面実装機
60 ヘッドユニット
63 実装ヘッド
100 コントローラ
120 測定器
121 LCRメータ
125 検査台
127A、127b 電極
135 治具台
137 ショート治具