(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】ガス交換のための医療用インプラント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/28 20060101AFI20231211BHJP
A61L 27/04 20060101ALI20231211BHJP
A61L 27/12 20060101ALI20231211BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20231211BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20231211BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20231211BHJP
A61L 27/28 20060101ALI20231211BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20231211BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20231211BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20231211BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
A61F2/28
A61L27/04
A61L27/12
A61L27/18
A61L27/22
A61L27/24
A61L27/28
A61L27/38 111
A61L27/40
A61L27/54
A61L27/58
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020099464
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2020-08-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10 2019 115 933.4
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510340506
【氏名又は名称】ヘレウス メディカル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】フォクト セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クルーゲ トーマス
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】栗山 卓也
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-147926(JP,A)
【文献】特開2005-333945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F2/28
A61L27/00-27/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの中空体(1、21、51)であって、前記中空体(1、21、51)の内部に内部チャンバを画定する、少なくとも1つの中空体(1、21、51)と、
前記中空体(1、21、51)の前記内部チャンバと流体透過可能なように接続される少なくとも1つの流体供給ライン(2、22、52)と、
前記中空体(1、21、51)の前記内部チャンバと流体透過可能なように接続される少なくとも1つの流体排出ライン(3、23、53)と、
を有する、骨欠損を治療するための医療用インプラントであって、
前記中空体(1、21、51)は、少なくとも一部箇所または全体が少なくとも1つのプラスチック材料からなり、前記少なくとも1つのプラスチック材料は、液体に対して不透過性であり、酸素および二酸化炭素に対して透過性であり、酸素は、前記中空体(1、21、51)を通過する流体から前記中空体(1、21、51)の周囲に送達可能であり、二酸化炭素は、前記中空体(1、21、51)の周囲から前記流体に吸収可能である、医療用インプラント。
【請求項2】
前記中空体(1、21、51)または前記中空体(1、21、51)の前記少なくとも1つのプラスチック材料が、0.5cm
3/(m
2*d*bar)以上の酸素透過係数および0.5cm
3/(m
2*d*bar)以上の二酸化炭素透過係数を有することを特徴とする、請求項1に記載の医療用インプラント。
【請求項3】
前記流体供給ライン(2、22、52)および前記流体排出ライン(3、23、53)が、前記流体供給ライン(2、22、52)からの前記流体が前記中空体(1、21、51)を通って前記流体排出ライン(3、23、53)に流れるときに、前記流体が前記中空体(1、21、51)の内面全体にわたって、または前記中空体(1、21、51)の前記内面全体の少なくとも50%にわたって流れるように、前記中空体(1、21、51)に通じることを特徴とする、請求項1または2に記載の医療用インプラント。
【請求項4】
前記流体供給ライン(2、22、52)が前記内部チャンバに通じる前記流体供給ライン(2、22、52)の流入開口部(8、28、58)が、前記流体排出ライン(3、23、53)の流出開口部(9、29、59)から空間的に分離して配置され、前記流出開口部(9、29、59)は、前記内部チャンバが前記流体排出ライン(3、23、53)に通じる点を形成することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項5】
前記流体供給ライン(2、22、52)の前記流入開口部(8、28、58)は、前記中空体(1、21、51)の第一の端部に配置され、前記流出開口部(9、29、59)は、前記第一の端部の反対側の前記中空体(1、21、51)の第二の端部に配置されることを特徴とする、請求項4に記載の医療用インプラント。
【請求項6】
前記流体供給ライン(2、22)および前記流体排出ライン(3、23)がともに前記中空体(1、21)の一方の面で前記中空体(1、21)に連結していることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項7】
弁(10、11、30、31、60、61)または一方向弁もしくは逆止弁が、前記流体供給ライン(2、22、52)および/または前記流体排出ライン(3、23、53)に配置されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項8】
前記流体供給ライン(2、22、52)および前記流体排出ライン(3、23、53)は、酸素および二酸化炭素を透過しない材料で構成されるか、酸素および二酸化炭素を透過しないプラスチック材料で構成されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項9】
前記中空体(1、21、51)または前記中空体(1、21、51)の前記少なくとも1つのプラスチック材料が、少なくとも1つの消毒有効成分を含有すること、または少なくとも1つの消毒有効成分でコーティングされていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項10】
前記中空体(1、21)が中空円筒であるか、または前記中空体(51)が中空円筒の形態の主要部(64)を有し、前記流体供給ライン(2、22、52)および前記流体排出ライン(3、23、53)が、前記中空円筒の対向する底面の領域で前記中空円筒内に通じることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項11】
前記中空円筒が、前記流体供給ライン(2、22)または前記流体排出ライン(3、23)の一部を同軸的に取り囲むことを特徴とする、請求項10に記載の医療用インプラント。
【請求項12】
前記中空体(1、21、51)が、有孔金属本体またはプラスチック材料本体として具体化され、その外側が、酸素および二酸化炭素に対して透過性のプラスチック層で覆われていることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項13】
前記中空体(1、21、51)が酸素および二酸化炭素を透過する塑性変形可能なプラスチック・ジャケットを有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項14】
前記プラスチック・ジャケットが、螺旋状金属ワイヤおよび/または網状に配置された金属ワイヤを含むことを特徴とする、請求項13に記載の医療用インプラント。
【請求項15】
有効成分を送達するための複数の開口部(36)を有するライン(34)が前記中空体(21)上に配置され、前記ライン(34)が有効成分供給ライン(38)に接続されることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項16】
前記少なくとも1つのプラスチック材料が、弾性および/または塑性の非生分解性プラスチック材料であり、または前記少なくとも1つのプラスチック材料が、弾性および/または塑性の生分解性プラスチック材料であることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項17】
前記少なくとも1つのプラスチック材料が、ポリウレタン、エチレン・プロピレン・ジエンゴムEPDMおよびシリコーンから選択されること、または前記少なくとも1つのプラスチック材料が、ゼラチン、架橋コラーゲンおよび架橋アルブミンから選択されることを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項18】
前記中空体(1、21、51)は、その前記内部チャンバ内の圧力を周囲の大気に対して変化させることによって、拡張可能および/または収縮可能であることを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項19】
前記中空体(51)は、主要部(64)と、前記主要部(64)から横方向に延在する複数の分岐部(66)とを有し、前記中空体(51)の前記内部チャンバは、前記主要部(64)内および前記分岐部(66)内に延在し、前記流体供給ライン(52)および前記流体排出ライン(53)は、前記主要部(64)に接続され、少なくとも前記分岐部(66)または前記分岐部(66)の壁は、前記プラスチック材料からなるか、または前記プラスチック材料を用いて構成されることを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項20】
前記中空体(1、21、51)が少なくとも1つの吸収性および/または生分解性材料から成ることを特徴とする、請求項1~19のいずれか一項に記載の医療用インプラント。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の医療用インプラントおよび前記流体を有する骨欠損治療システムであって、前記流体が酸素を含み、かつ二酸化炭素を吸収するのに適している、骨欠損治療システム。
【請求項22】
前記流体が、空気、酸素、酸素飽和食塩水、酸素飽和リンゲル溶液、酸素飽和リンゲル乳酸塩溶液、酸素飽和リン酸塩緩衝溶液および酸素飽和ペルフルオロデカリン、または上記の気体もしくは液体のうちの少なくとも2つの混合物から選択されることを特徴とする、請求項21に記載の骨欠損治療システム。
【請求項23】
前記骨欠損治療システムが骨代替材料を含み、前記骨代替材料が、前記中空体の外側表面に適用されていること、または前記中空体の外側表面に適用され得ることを特徴とする、請求項21または22に記載の骨欠損治療システム。
【請求項24】
前記骨代替材料が、非生分解性、部分的分解性または完全生分解性の骨代替材料およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項23に記載の骨欠損治療システム。
【請求項25】
前記骨代替材料が、自家骨組織、同種骨組織、ハイドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、β-リン酸三カルシウム、α-リン酸三カルシウム、二水和カルシウム、ブラッシャイト、モネタイトおよびそれらの混合物から選択されること、または前記骨代替材料が生細胞を含むこと、および/またはその表面に生細胞がコロニー形成されることを特徴とする、請求項23または24に記載の骨欠損治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨欠損を治療するための医療用インプラント、およびそのようなインプラントを有する骨欠損治療システムに関する。本発明はまた、医療用インプラントの表面をガスフラッシングするための方法に関する。したがって、本発明の主題は、骨空洞に一時的にインプラントするための医療用インプラントである。
【背景技術】
【0002】
ヒトの骨欠損は、多くの様々な原因を有し、頻度の高い原因は外傷および感染である。骨欠損は、それらが臨界サイズを超える場合、自然に治癒せず、そのような欠損は、「臨界サイズ欠損」として知られている。骨欠損を治療するために、最も多様な構造および組成の骨代替材料、ならびに同種骨組織および自家骨組織が、臨床現場で使用される。
【0003】
骨代替材料は、数十年前から知られており、最も多様な材料から作ることができる。典型的な無機骨代替材料は、硫酸カルシウム(H.Dreesmann:Uber Knochenplombierung.(“Bone Filling”),Klinische Chirurgie(1892)804-810)、炭酸アパタイト(M.V.Vallet-Regi,J.M.Gonzalez-Cabbet:Calciumphosphates as substitution of bone tissues. Progress in Solid State Chemistry 32(1-2)(2004)1-31)、ヒドロキシアパタイト、β-リン酸三カルシウム(R.W.Bucholz,A.Carlton,R.E.Holmes:hydroxy-apatite and tricalciumphosphate bone graft substitutes. The Orthopedic Clinics of North America 18(2)(1987)323-334)、バイオグラス(H. Oonishi et al.:Particulate bioglass compared with hydroxyapatite as bone graft substitute.Clinical Orthopaedics and Related Research 334(1997)316-325)、および脱灰骨基質(M.E.Bolander,G.Balian:The use of demineralized bone matrix in the repair of segmental defects. Augmentation with extracted matrix proteins and comparison with autologous grafts. The Journal of bone and Joint Surgery American Volume68(8)1986)1264-1274)である。さらに、例えば、ポリエステルのような有機系骨代替物質と、無機材料と有機材料との組合せも、骨代替材料を製造するために使用されている(S.Higashi et al.:Polymerhydroxyapatite composites for biodegradable bone fillers.Biomaterials7(3)(1986)183-187)。
【0004】
歯科分野では、骨代替材料は、比較的小さい骨欠損のために首尾よく使用されてきた。四肢領域におけるより大きな骨欠損では、多孔質骨代替材料が使用される場合であっても、骨組織が骨代替材料中に表面的にのみ成長することが臨床的に非常に一般的に観察される。同様の問題は、自家骨組織の移植において、また、自家骨材料と無機骨代替材料との組合せの場合においても生じる。良好な血液供給を有する骨組織から最も遠くに位置する自家組織は、頻繁に損傷を受け、死滅することが非常に多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明によって対処される問題は、治癒の機会を改善する可能な方法を見出し、任意選択で、その目的のために医療用インプラントを提供することであると考えることができる。骨欠損の安定化および骨化は、可能な限り迅速に、かつ可能な限り単純な方法で達成されるべきである。治癒過程にポジティブな影響を及ぼすために、さらなる手段を使用することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の文脈において、良好な血液供給を有する骨組織から最も遠くに位置する自家組織が頻繁に損傷を受け、非常に死滅することが多く観察される大きな理由は、これらの領域にもはや酸素を十分に供給することができず、代謝中に生じる二酸化炭素およびさらなる代謝産物を除去することが、困難性を伴ってのみ可能であることが見いだされた。というのも、血流が酸素の輸送および形成された二酸化炭素の除去を確実にする代用骨材料の内部に血管が存在しないからである。
【0007】
したがって、本発明の目的は、周囲とのガス交換を可能にすることを意図した一時的な医療用インプラントを開発することにある。インプラントは、その表面で周囲に酸素を送達し、周囲から二酸化炭素を吸収し、除去する位置にあることが意図される。酸素の供給および吸収は、連続的に、あるいは実際には不連続的に可能であることを意図している。ガス交換および気体輸送は、医療用インプラントを通って流れることが意図される流体によって達成されることが意図される。医療用インプラントは、外植可能であることが意図されており、ヒトまたは動物の組織と一緒に成長することができてはならない。一時的な医療用インプラントは、周囲の骨代替材料、特に自家骨組織、および骨芽細胞などの細胞でコロニー形成された骨代替材料とのガス交換を可能にすることを意図している。このようにして、比較的大きな骨欠損にインプラントした後、新たに形成された血管によって細胞に酸素を供給することができるまで、細胞、特に骨芽細胞を生きた状態に保つことが意図される。これらの血管が生体によって形成されるとすぐに、一時的なインプラントを除去することができることが意図される。
【0008】
本発明のさらなる目的は、開発される一時的な医療用インプラントを構成部分として含む骨代替材料システムの開発である。
【0009】
本発明の付加的な目的はまた、空洞内に酸素を送り込むことができ、同時に、空洞から二酸化炭素を吸収することができる非医療方法を開発することである。この方法は、本発明による医療用インプラントで実施可能であり、ヒトまたは動物の身体の一部ではない空洞に適用されることが意図される。
【0010】
医療用インプラントは、その位置保持機能に加えて、周囲組織とのガス交換も意図され、酸素もしくは酸素含有フラッシングガス混合物、または酸素富化フラッシング液は、流体がスペーサの内部チャンバを通って連続的または不連続的に流体として流れ、酸素は、インプラントの透過性外壁を介して組織に供給され、二酸化炭素は、同時に組織から除去され得る。
【0011】
本発明の目的は、骨欠損を治療するための医療用インプラントによって達成され、前記医療用インプラントは、少なくとも1つの中空体であって、前記中空体の内部に内部チャンバを画定する、中空体と、前記中空体の前記内部チャンバと流体透過可能なように接続される流体供給ラインと、前記中空体の前記内部チャンバと流体透過可能なように接続される流体排出ラインと、を有し、前記中空体は、少なくとも一部箇所または全体が少なくとも1つのプラスチック材料からなり、前記少なくとも1つのプラスチック材料は、液体に対して不透過性であり、酸素および二酸化炭素に対して透過性であり、酸素は、前記中空体を通過する流体から前記中空体の周囲に送達可能であり、二酸化炭素は、前記中空体の周囲から前記流体に吸収可能である。
【0012】
医療用インプラントは、一時的な医療用インプラントであることが好ましい。
【0013】
中空体を通過する液は、酸素を送達し、二酸化炭素を吸収するのに適していなければならない。
【0014】
好ましくは、医療用インプラントが骨空洞への一時的なインプラントに適しているように提供することができる。
【0015】
中空体は、好ましくは、酸素にも二酸化炭素にも透過性のプラスチック材料から作製され得る。
【0016】
さらに、内部チャンバが医療用インプラントの周囲に対して閉鎖されるようにしてもよい。
【0017】
少なくとも1つのプラスチック材料は、好ましくは、少なくとも一部箇所で、中空体の連続壁を形成する。すなわち、中空体の壁には、少なくとも1つのプラスチック材料とは別に、他の追加材料からなる領域が存在する。この点に関し、容易に透過可能なメッシュおよびワイヤ、特に金属のメッシュおよびワイヤは、問題がない。これにより、プラスチック材料の酸素および二酸化炭素に対する透過性を使用して、中空体の壁が少なくともこれらの領域において酸素および二酸化炭素に対して同様に透過性であることを確実にすることが意図される。
【0018】
したがって、好ましくは、中空体の内部チャンバを画定する壁が、酸素および二酸化炭素に対して透過性であるようにすることができる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、中空体が管状構成であるように提供することができ、流体供給ラインおよび流体排出ラインは、好ましくは、中空体の一方の端部面で中空体に接続されるか、または中空体の2つの相互に対向する端部面で中空体の内部チャンバに接続される。管状中空体は、特に、長管状骨の骨欠損のためのスペーサとして使用するのに特に適している。
【0020】
中空体は、また、一時的に充填される骨欠損のサイズおよび形状に応じて、任意の他の所望の形状を有してもよい。
【0021】
流体は、気体であっても液体であってもよい。液体と気体の混合物も可能である。好ましい流体は、空気、酸素、酸素飽和生理食塩水、酸素飽和リンゲル溶液、酸素飽和リンゲル溶液、酸素飽和リン酸緩衝溶液、および酸素飽和ペルフルオロデカリン、ならびにそれらの混合物である。流体が酸素を含有し、流体が二酸化炭素を吸収できることが必須である。したがって、酸素および二酸化炭素を輸送することができ、中空体の透過性壁を介して周囲とこれらの物質を交換することができるすべての流体が、適切している。
【0022】
本発明によれば、中空体または中空体の少なくとも1つのプラスチック材料が、酸素に対する透過係数が0.5cm3/(m2*d*bar)以上で、二酸化炭素に対する透過係数が0.5cm3/(m2*d*bar)以上であり、好ましくは、酸素に対する透過係数が1cm3/(m2*d*bar)以上で、二酸化炭素に対する透過係数が1cm3/(m2*d*bar)以上であるようにすることができる。
【0023】
このようにして、医療用インプラントの周囲には酸素が十分に供給され、二酸化炭素は医療用インプラントの周囲から離れて、その過程で治療部位の内側から外に出るように、容易に運ばれる。
【0024】
透過係数は、DIN53380-4(11/2006)に準拠して決定される。これは、特に、プラスチック材料を試験することに関し、ここでは、ガス透過性の測定に関し、DIN53380-4は、酸素にも適用され得るプラスチックフィルムおよびプラスチック成形品の測定のための二酸化炭素特定赤外線吸収法を標準化する。このような測定は、例えば、Mecadi GmbH社(Bexbach、ドイツ)によって行われ、市販されている。
【0025】
したがって、中空体または中空体の少なくとも1つのプラスチック材料は、DIN53380-4(11/2006)によると、酸素に対する透過係数が0.5cm3/(m2*d*bar)以上で、二酸化炭素に対する透過係数が0.5cm3/(m2*d*bar)以上であり、好ましくは、DIN53380-4(11/2006)によると、酸素に対する透過係数が1cm3/(m2*d*bar)以上で、二酸化炭素に対する透過係数が1cm3/(m2*d*bar)以上である。
【0026】
固体において、透過性とは、一般に、気体および/または液体を通過させる特性を意味する。この場合において、これは、特に気体形態の分子状酸素および分子状二酸化炭素に関連して、中空体の壁の透過性に関する。透過係数は、材料固有の定数であり、液体および気体に対する透過性の尺度である。
【0027】
単位dは、1日を表す。
【0028】
さらに、流体供給ラインおよび流体排出ラインは、中空体に導くようにして、流体供給ラインからの流体が中空体を通って流体排出ラインに流れるときに、流体が中空体の内面全体にわたって、または中空体の内面全体の少なくとも50%以上にわたって流れるように備えることができる。
【0029】
このようにして、中空体を通る流れの際に、貫流流体と、中空体または少なくとも1つのプラスチック材料の内壁との間の接触期間が十分に長くなり、その結果、中空体または少なくとも1つのプラスチック材料の壁を通る酸素および二酸化炭素のガス交換が促進される。
【0030】
中空体が、主要部と、その主要部から離れて延びる複数の分岐部とで構成されている場合、たとえ、流体の流れの大部分が分岐部を過ぎて主要部に沿っている場合であっても、分岐部も流された表面(flowed-over surface)の一部としてカウントする。ここで重要なことは、分岐部の内面が、主たる流体の流れからアクセス可能なことである。
【0031】
さらに、流体供給ラインが内部チャンバに導くガス供給ホースの流入開口部が、流体排出ラインの流出開口部と空間的に分離して配置されるように設けられてもよく、流出開口部は、内部チャンバがガス排出ホースに開口する点を形成する。
【0032】
これによって、中空体の壁全体にわたって、または中空体の壁の広い領域にわたって、ガス交換が保証される。流入開口部は、流体供給ラインの開口部であり、流体は、この開口部を通って、流体供給ラインから中空体の内部チャンバに流体が流れる、流出開口部は、それに応じて、流体排出ラインの開口部であり、流体は、この開口部を通って、中空体の内部チャンバから流体排出ラインに流出する。
【0033】
この点に関し、流体供給ラインの流入開口部が中空体の第一の端部に配置され、流出開口部が第一の端部に対向する中空体の第二の端部に配置されるようにしてもよい。
【0034】
それによって、中空体の内壁または少なくとも1つのプラスチック材料の内壁に対する貫流流体の滞留時間が長くなり、中空体または少なくとも1つのプラスチック材料を通るガス交換が改善される。
【0035】
さらに、流体供給ラインおよび流体排出ラインの両方が、中空体の一方の側で中空体と一緒に接続されるようにすることができる。
【0036】
これによって、患者の骨空洞へのインプラントの挿入がシンプルになる。さらに、理想的な場合には、中空体および治療部位への唯一のアクセスは、互いに近接して配置され、その結果、微生物汚染のリスクが低下する。
【0037】
本発明のさらなる実施形態によれば、微生物に対しては不透過性であるが気体に対しては透過性である、流体供給ラインおよび/または流体排出ラインに配置される滅菌フィルタが提供され得る。
【0038】
これにより、治療を受けた患者および担当職員の感染リスクが低下する。
【0039】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、流体供給ラインおよび/または流体排出ラインに配置される弁、特に一方向弁を設けることができ、一方向弁は、好ましくは逆止弁である。
【0040】
一方向弁または逆止弁を使用することで、流体の逆流を確実に防止できる。さらに、中空体の内部の圧力を調整し、医療用インプラントの特定の形状または特定の剛性を達成するために、適切に調整可能な弁を使用することもできる。
【0041】
好ましいさらなる展開によれば、弁が流体排出ライン内に配置され、圧力逃がし弁として構成されるように設けられてもよく、圧力逃がし弁の開口圧力は、好ましくは調整可能である。
【0042】
これにより、中空体を確実に膨張状態にして、また維持することもできる。
【0043】
流体排出ライン内の一方向弁によって、中空体の内部の流体で圧力が蓄積され得ることと、使用された流体が中空体内に戻って通過できないことが保証され得る。したがって、流体排出ラインに一方向弁を配置することが特に好ましい。
【0044】
また、流体供給ラインおよび流体排出ラインは、酸素および二酸化炭素に対して不浸透性の材料、好ましくは酸素および二酸化炭素に対して不浸透性のプラスチック材料から構成されていてもよい。
【0045】
このようにして、酸素が流体から時期尚早に出ることが防止される。加えて、流体供給ラインおよび流体排出ラインは、このようにして、安価なプラスチック材料で作ることができる。
【0046】
さらに、中空体または中空体の少なくとも1つのプラスチック材料が、少なくとも1つの消毒有効成分を含有するように、または少なくとも1つの消毒有効成分で被覆されるように、提供がなされてもよい。
【0047】
このようにして、医療用インプラントの表面および患者の体内の医療用インプラントの周囲を、少なくとも1つの消毒有効成分で消毒することができる。このようにして、治療合併症は回避される。
【0048】
さらに、中空体が中空円筒であるように、あるいは中空体が中空円筒の形態の主要部を有するように設けることもでき、流体供給ラインおよび流体排出ラインが、中空円筒の対向する底面の領域で中空円筒内に通じ、中空円筒が、好ましくは、流体供給ラインまたは流体排出ラインの一部を同軸的に取り囲む。
【0049】
円筒形状の結果として、インプラントは、管状骨の骨欠損に導入され得る。さらに、流体は、中空体の壁の表面を可能な限り大きく流れることが保証され、その結果、ガス交換を補助することができる。
【0050】
さらに、好ましくは、中空体を有孔金属本体またはプラスチック材料体として具体化することができ、その外側は酸素および二酸化炭素に対して透過性のプラスチック層で覆われている。
【0051】
これによって、機械的に装填可能な医療用インプラントを製造することが可能になり、同時に、中空体の壁を通るガス交換を確実にすることが可能になる。
【0052】
中空体の作業性を改善するために、中空体が、酸素および二酸化炭素に対して透過性の塑性変形可能なプラスチック・ジャケットを有するようにすることができ、プラスチック・ジャケットは、好ましくは、螺旋状金属ワイヤおよび/または網状に配置された金属ワイヤを含む。
【0053】
それによって、医療用インプラントは、解剖学的条件に従って成形されてもよく、金属ワイヤの剛性のために選択された形状を任意に保持する。
【0054】
追加の治療選択肢を開くために、有効成分を送達するために中空体上に配置される複数の開口部を有するラインが提供されてもよく、ラインは有効成分供給ラインと接続され、開口部の自由断面積の合計は、好ましくは、ラインおよび有効成分供給ラインの自由断面積未満である。
【0055】
この開発により、医薬有効成分溶液を局所的に塗布することが可能である。この文脈で考慮される医薬有効成分は、抗生物質、防腐剤、抗炎症剤、ビスホスホネート、成長因子、バクテリオファージ、リソスタフィンおよびムラミダーゼである。さらに、有効成分供給ラインを通して細胞懸濁液をインプラントの周囲に導入し、医療用インプラントを取り囲む構造のコロニー形成を可能にすることも可能である。
【0056】
開口部を有するラインによって、また、開口部を通して医療用インプラントの周囲に消毒溶液または抗生物質溶液を強制的に送ることが可能になる。医療用インプラントの表面の抗菌保護も、このラインによって可能になる。液体またはゲルタイプの抗生物質または消毒薬の製剤を、ラインを介して導入することも可能であり、拡散して周囲に移動し、医療用インプラントの領域で患者を治療するために使用することができる。
【0057】
少なくとも1つのプラスチック材料が、弾性および/または塑性の非生分解性プラスチック材料であるように、少なくとも1つのプラスチック材料は、好ましくは、ポリウレタン、エチレン・プロピレン・ジエンゴムEPDMおよびシリコーンから選択されること、あるいは少なくとも1つのプラスチック材料が、弾性および/または塑性の生分解性プラスチック材料であるように、少なくとも1つのプラスチック材料は、好ましくは、ゼラチン、架橋コラーゲンおよび架橋アルブミンから選択されることが提供される。
【0058】
これらの2つの選択肢によって、容易に取り外し可能な医療用インプラント(非生分解性プラスチック材料)を提供すること、あるいは医療用インプラントが体内で部分的にまたは完全に破壊され(生分解性プラスチック材料)、再び取り外される必要がないこと、または完全に取り外される必要がないことが可能になる。
【0059】
さらに、中空体の内部チャンバ内の圧力を周囲の大気に対して変化させることによって、中空体が拡張可能および/または収縮可能であるようにすることができる。
【0060】
寸法的に不安定な弾性インプラント材料を使用する場合、中空体の選択された形状は、中空体の適切な内圧によって確保されてもよい。医療用インプラントの挿入および除去は、このようにしてさらに単純化されてもよい。
【0061】
本発明の好ましい変形例によれば、中空体が、主要部と、そこから横方向に延びる複数の分岐部とを有してもよく、中空体の内部チャンバが、主要部内および分岐部内に延び、流体供給ラインおよび流体排出ラインが、主要部に接続され、好ましくは、少なくとも分岐部または分岐部の壁が、プラスチック材料からなるか、またはプラスチック材料を使用して構成される。
【0062】
内部チャンバは、好ましくは、主要部よりも分岐部において小さい断面を有する。
【0063】
このようにして、中空体の表面を拡大することができ、したがって、より多くの量の細胞が供給され、特に体外に供給される。
【0064】
さらに、中空体は、少なくとも1つの吸収性および/または生分解性材料から構成されていてもよい。
【0065】
このようにして、中空体は、再び体から取り外される必要なく、体内に残り、体内で破壊されてもよい。流体供給ラインと流体排出ラインは、この目的のために、単に分離されてもよい。
【0066】
これらの変種は、細胞培養血管の空洞における細胞の体外増殖を可能にする。可能な成長促進物質は、例えば、リン酸三カルシウムまたは同様の作用を有する物質である。このようにして増殖された細胞は、次に、医療用インプラントと一緒に、または実際に医療用インプラントなしでインプラントされ得る。中空体が架橋ゼラチンまたは生体高分子から構成される場合、医療用インプラントは、コネクタとは別に破壊されてもよい。同じことは、中空体が分解性中空繊維から作られる場合にも可能である。
【0067】
中空体または医療用インプラント全体を三次元構造として、折り畳み可能にすることもできる。このようにして、医療用インプラントは、治療される空洞の形状に適応可能であってもよい。
【0068】
医療用インプラントは、細胞培養のための通気性足場として使用することができる。組織工学において、「足場」は、患者の病変組織を置換または再生するための細胞の定方向培養を使用する生物学的組織の人工製造のための包括的用語である。これは人工的に作られた細胞の助けを借りて後になって初めて起こるので、患者の医学的治療は必要ない。次いで、医療用インプラントは、細胞培養のための支持構造として使用され得る。
【0069】
本発明の基礎となる目的は、本発明によるこのような医療用インプラントおよび流体を有する骨欠損治療システムによっても解決され、流体は酸素を含有し、二酸化炭素を吸収するのに適している。
【0070】
このようにして、完全なシステム(骨欠損治療システム)が提供され、液は、医療用インプラントに既に適合されていてもよく、またはその両方が治療部位に適合されていてもよい。
【0071】
この場合、流体は、空気、酸素、酸素飽和食塩水、酸素飽和リンゲル液、酸素飽和乳酸リンゲル液、酸素飽和リン酸緩衝液および酸素飽和ペルフルオロデカリン、または上記の気体もしくは液体のうちの少なくとも2つの混合物から選択されるための提供がなされ得る。
【0072】
これらの流体は、酸素を送達し、二酸化炭素を吸収するのによく適している。さらに、これらの流体の多くは、健康に関して安全である。
【0073】
この場合、骨欠損治療システムに骨代替材料を含めるための準備をさらに行うことができ、好ましくは、骨代替材料は、中空体の外側表面に適用されているか、または中空体の外側表面に適用されてもよい。
【0074】
このようにして、より完全な骨欠損治療システムが提供され、これは、骨欠損の治療に必要かつ有用な全ての成分を含む。
【0075】
次に、骨代替材料が、非生分解性、部分的に分解性、または完全に生分解性の骨代替材料、およびそれらの混合物から選択されるように提供することができる。
【0076】
これらの混合物は、本発明による医療用インプラントと共に使用するのに特に適している。
【0077】
さらに、自家骨組織、同種骨組織、ハイドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、β-リン酸三カルシウム、α-リン酸三カルシウム、二水和カルシウム、ブラッシャイト、モネタイトおよびそれらの混合物から選択される骨代替材料、または骨代替材料が生細胞を含有し、および/またはその表層に生細胞がコロニー形成されている。
【0078】
これらの骨代替材料は、本発明による医療用インプラントと共に特に容易に使用され得る。これらの骨代替材料に酸素を供給し、二酸化炭素を吸収させて脱酸することは、これらの骨代替材料の場合、治療部位に対して特に良好な効果を有する。
【0079】
医療用インプラントが自家骨組織と、特に好ましくは自家海綿骨と組み合わされることが特に有利である。中空体を介して酸素を導入することによって、自家骨組織の細胞に酸素が供給され、同時に、細胞代謝中に放出された二酸化炭素が運び去られる。酸素欠乏は、細胞の呼吸を妨げる可能性があり、その結果、細胞は最初に発酵し始め、次に死滅する。発酵プロセスは、局所的な過酸性化をもたらし得る。さらに、局所的な過酸性化は、形成された二酸化炭素を除去することで防止される。
【0080】
本発明の基礎をなし、非医療方法に関する目的は、医療用インプラント、特に本発明による医療用インプラントの表面を、好ましくは本発明による骨欠損治療システムでガスフラッシングする方法によって達成され、以下のステップによって特徴付けられる:
A) 医療用インプラントの中空体の内部チャンバに酸素を含む流体を供給するステップと、
B) 中空体の内部チャンバを画定するプラスチック材料を介して流体から中空体の周囲に酸素を送達するステップと、
C) 中空体の周囲から、内部チャンバを画定するプラスチック材料を介して流体内に入る二酸化炭素を吸収するステップと、
D) 中空体の内部チャンバを介して流体を通過させ、中空体の内部チャンバから流体を排出するステップと、を含む。
【0081】
ステップB)およびC)は、好ましくは同時に実行される。さらに、ステップB)およびC)におけるガス交換は、好ましくは、ステップA)の間と同じくらい早く、またステップD)の全体にわたっても行われる。
【0082】
空気または酸素を流体として使用することができる。また、流体として空気または酸素の代わりに、酸素飽和フラッシング液、例えば生理食塩水、リンゲル溶液またはリンゲル乳酸塩溶液が、特に流体供給ラインによって、拡張可能な医療用インプラントに導入される場合も、本発明の目的に含まれる。さらに、酸素担体として過フッ素化デカリン、または流体として酸素が可溶性である他の過フッ素化液体を使用することも可能である。これらの流体は、流体排出ラインによって中空体から戻されてもよい。
【0083】
本発明による方法では、ヒトまたは動物の身体の医療治療のために実施されない方法が提供されてもよい。
【0084】
好ましくは、この方法は、人間または動物の体外で行われるようにすることができる。
【0085】
本発明による方法が医師または内科医によって実施されないようにすることもできる。
【0086】
骨欠損の治療に加えて、本発明による医療用インプラントはまた、体外細胞増殖を可能にする。この目的のために、プラスチック材料または中空体の外側表面に細胞および栄養素を塗布することができる。次いで、これらは、流体を介して酸素を供給され、一方、二酸化炭素は、増殖している細胞培養物から除去される。
【0087】
さらに、ステップA)の前に、中空体を空洞内に導入することと、骨代替材料を、医療用インプラントの表面に塗布すること、および/または医療用インプラントと空洞を画定する内壁との間の空洞内に導入することを行うことができる。
【0088】
空洞は、好ましくは、ヒトまたは動物の身体の空洞ではない。
【0089】
空洞内への導入により、この方法の利点が十分に発揮される。空洞と中空体の内部チャンバとの間のガス交換は、本発明による利点をもたらす。
【0090】
最後に、細胞、特に骨細胞の体外増殖に使用される方法を提供することもでき、ステップA)の前に、細胞は中空体の外側表面に適用され、好ましくは、栄養溶液および/または成長促進物質とともに中空体の外側表面に適用される。
【0091】
このようにして、このようにして、治癒を加速し、治癒の成功を改善するために、すでに供給されている細胞を医療用インプラントとともに骨欠損に導入することができる。
【0092】
医療用インプラントを体外で使用して、中空体の表面で骨細胞のための細胞培養物を通気し、増殖させることができる。成長した細胞培養物が提供されると、骨欠損内の細胞がさらに増殖して、成長するのを促進するために、次いで、医療用インプラントは体内にインプラントされ、その後、体内でさらに通気されてもよい。
【0093】
医療用インプラントは、中空体が生分解性であるか、または体によって破壊され得る場合、除去される必要はない。次いで、コネクタまたは流体供給ラインおよび流体排出ラインは、所望のタイミングで単に切断されてもよく、中空体および増殖細胞は、体内に残存し、吸収される。
【0094】
本発明の基礎となるのは、医療用インプラントの周囲に酸素が供給され、二酸化炭素または炭酸による医療用インプラントの周囲の過酸性化が回避されるという点で、医療用インプラントが周囲の骨構造の構築を助けることを可能にするという驚くべき認識である。これらの理由のために、治癒がより早く成功するように、より迅速かつ効果的な骨化が達成され得る。ここでの特別な利点はまた、特に、血流から離れ、通常は血流によって酸素が不十分にしか供給され得ない骨の内側に、本発明による医療用インプラントを使用することで、酸素がより良好に供給され得ることである。その理由は、医療用インプラントが治療位置の内側に直接隣接するからである。酸素および二酸化炭素を透過するプラスチック材料を使用することによって、中空体を通って中空体の周囲に流れる液から酸素を確実かつ均一に送達することができ、同時に、骨欠損の治癒に適した環境を作り出すために、中空体の周囲から吸収された二酸化炭素を送達することができる。
【0095】
さらに、インプラント段階の完了後、中空体は、減圧の適用によってその体積を減少させることができ、その結果、小さい開口部を通して中空体を除去することが可能になるのが有利である。二酸化炭素を除去することで、細胞の酸性化を防止する。
【0096】
骨芽細胞が骨代替材料中にうまく成長するか、または骨芽細胞が骨代替材料上に成長すると、一時的なインプラントが除去される。このための前提条件は、酸素および栄養素の輸送ならびに二酸化炭素の除去を確実にするために、十分な新生血管形成が行われていることである。これは、患者自身の血管が再構築されるまで、一時的なインプラントが酸素の供給および二酸化炭素の除去を一時的に引き継ぐだけであることを意味する。一時的なインプラントの除去後に残る空洞は、直径が非常に小さく、骨組織の自発的な内部成長が可能であるか、または空洞が骨代替材料、好ましくは顆粒状骨代替材料で充填されるかのいずれかである。
【0097】
本発明による医療用インプラントの一例は、例えば、
a) 酸素と二酸化炭素は透過するが、液体は透過しない少なくとも1つの中空体と、
b) 流体用の少なくとも1つの流体供給ラインであって、少なくとも1つの透過可能な中空体に流体透過可能に接続されている、流体供給ラインと、
c) 流体用の少なくとも1つの流体排出ラインであって、少なくとも1つの透過可能な中空体と流体透過可能に接続されている、流体排出ラインと、
d) 酸素を含有し、二酸化炭素を吸収することができる少なくとも1つの流体であって、流体が、流体供給ラインによって少なくとも1つの中空体の内部チャンバ内に通され、次いで、流体排出ラインによって少なくとも1つの中空体の内部チャンバ外に通される、流体と、を有することができ、
e) 少なくとも1つの流体は、少なくとも1つの中空体の内部チャンバを通過して、少なくとも1つの流体からの酸素が、少なくとも1つの中空体の壁を通って少なくとも1つの中空体の周囲を通過または浸透することができ、周囲からの二酸化炭素が、少なくとも1つの中空体の内部チャンバ内の少なくとも1つの流体の中に通過または浸透することができるようにする。
【0098】
本発明による骨代替材料システムの一例は、そのような医療用インプラントと、非生分解性および/または部分的に分解性および/または完全に生分解性の骨代替材料と、それらの混合物とから構成されてもよい。
【0099】
本発明の3つのさらなる例示的な実施形態を、13の模式図を参照して以下に説明するが、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【
図1】本発明による医療用インプラントの第一の例の概略斜視図である。
【
図2】
図1による医療用インプラントの第一の例の概略断面図である。
【
図3】
図2による断面図の拡大詳細図を示し、後部コネクタを示す。
【
図4】
図1~
図3による第一の医療用インプラントの概略断面図であり、流れ条件と、酸素の送達および二酸化炭素の吸収は、尖った矢印によって示される。
【
図5】本発明による医療用インプラントの第二の例の概略斜視図である。
【
図6】
図5による医療用インプラントの第二の例の概略断面図である。
【
図7】
図5および
図6による第二の医療用インプラントの概略断面図であり、流れ条件と、酸素の送達および二酸化炭素の吸収は、尖った矢印によって示される。
【
図8】
図6および
図7による断面図の拡大詳細図を示し、医療用インプラントの前端部を示し、流れ条件と、酸素の送達および二酸化炭素の吸収は、尖った矢印によって示される。
【
図9】
図6および
図7による断面図の拡大詳細図を示し、後部コネクタを示す。
【
図10】本発明による医療用インプラントの第三の例の概略斜視図である。
【
図11】折り畳まれた状態の医療用インプラントの第三の例の概略斜視図である。
【
図12】
図10による医療用インプラントの第三の例の概略断面図であり、流れ条件と、酸素の送達および二酸化炭素の吸収は、尖った矢印によって示される。
【
図13】
図12による断面図の拡大詳細図を示し、コネクタを示す。
【発明を実施するための形態】
【0101】
図2~
図4および
図6~
図9では、それぞれの医療用インプラントの前端が下向きであり、後端が上向きである。
図1において、下向きの医療用インプラントの第一の例の前端は、下向きで右に向けられ、後端は上向きで左に向けられている。
図5では、医療用インプラントの第二の例の前端は、下向きで左に、後は上向きで右に向けられている。
【0102】
したがって、
図1~
図4は、本発明による第一の医療用インプラントを示し、
図5~
図9は、本発明による第二の医療用インプラントを示す。
【0103】
本発明による第一の医療用インプラントは、弾性的または塑性的に変形可能なプラスチック材料の中空体1を含むことができ、または中空体1を含むことができ、中空体1の壁は、少なくとも一部箇所がプラスチック材料からなる。中空体1は、一端が閉じた円筒管であってもよい。中空体1は、例えば、生体適合性プラスチック材料からなることができる。中空体1は、液体に対して不透過性であってもよい。内部チャンバは、中空体1の内部に配置されてもよい。
【0104】
中空体1の少なくとも一部箇所で使用される材料は、分子状酸素に対しても二酸化炭素に対しても透過性であってもよい。中空体1または中空体1を形成する材料は、酸素透過係数が0.5cm3/(m2*d*bar)以上で、二酸化炭素透過係数が0.5cm3/(m2*d*bar)以上を有することができる。透過係数は、DIN53380-4(11/2006)に準拠して決定される。
【0105】
流体を供給するために、中空体1の内部チャンバを、プラスチック材料の流体供給ライン2に接続してもよい。中空体1から流体を排出するために、中空体1の内部チャンバを、プラスチック材料の流体排出ライン3に接続してもよい。流体供給ライン2および流体排出ライン3は、可撓性を有し、少なくとも一部箇所で移動可能であってもよい。流体供給ライン2は、その後端(
図1の左上、
図2~
図4の上部)にコネクタ4を有してもよく、このコネクタ4で、流体供給ライン2を流体源(図示せず)に接続してもよい。流体排出ライン3は、同様に、その後端にコネクタ5を有してもよく、このコネクタ5を用いて、流体排出ライン3を使用済み流体のためのレセプタクルまたは出口に接続してもよい。
【0106】
流体供給ライン2と流体排出ライン3とは、接続部6内で一緒にされてもよく、接続部6内で、流体供給ライン2が流体排出ライン3の中または中空体1の中に同軸で案内されてもよい。流体供給ライン2は、中空体1内に同軸に配置することができる。流体供給ライン2は、中空体1内で、中空体1のほぼ前方閉鎖端まで案内され、そこで流入開口部8を通って中空体1内に導くことができる。流体供給ライン2は、流入開口部8を介して中空体1の内部チャンバの前部に導くことができる。流体排出ライン3を、中空体1の内部チャンバの反対側の後端で、流出開口部9を介して、中空体1の内部チャンバと接続してもよい。このようにして、確実に、流体が中空体1全体の壁の表面に沿って流れることができ、それによって、酸素と二酸化炭素のガス交換が中空体1の全長にわたる壁を通って行われる。流出開口部9は、接続部6によって画定されてもよい。
【0107】
リップ弁の形態の弁10を流体供給ライン2に配置してもよく、前記弁は、流体が中空体1に向かって流れるのを許容するが、流体が中空体1から離れて流れるのを防止する。次いで、弁10は一方向弁として作用する。リップ弁の形態の弁11を流体排出ライン3に配置してもよく、前記弁は、流体が中空体1に向かって流れるのを防止するが、流体が中空体1から離れて流れるのを許容する。次いで、弁11は一方向弁として作用する。流体排出ライン3の弁11は、流体の最小圧力から開くように構成されてもよい。最小圧力は、流体排出ライン3の弁11で調整可能であることが好ましい。この点において、最小圧力は、流体の圧力が中空体1を所望の外形にするのに十分であるように選択されてもよい。
【0108】
弁10、11を、弁ハウジング12、13を介して流体供給ライン2および流体排出ライン3と接続してもよい。この目的のために、流体供給ライン2を弁ハウジング12上にスリップして、任意選択で、追加的に締め付けてもよい。流体排出ライン3も、同様に、弁ハウジング13上にスリップして、任意選択で、そこに追加的に締め付けてもよい。
【0109】
コネクタ4は、その後端において、ルアーロックアダプタの形態をとることができる。同様に、コネクタ5も、その後端において、ルアーロックアダプタの形態をとることができる。流体を、コネクタ4、5を介して供給し、排出してもよい。コネクタ4、5を、弁ハウジング12、13にネジ込んでもよい。
【0110】
弁ハウジング12は、弁10を所定の位置に固定する二部構造とすることができる。弁ハウジング12は、コネクタ4の外ネジと内ネジを用いて接続してもよい。弁ハウジング13は、弁11を所定の位置に固定する二部構造とすることができる。弁ハウジング13は、コネクタ5の外ネジと内ネジを用いて接続してもよい。全ての接続部は、気密性と耐圧性を有してもよい。
【0111】
流体供給ライン2は、弁ハウジング12上にスリップすることができる。流体供給ライン2は、圧着スリーブ(図示せず)を用いて、圧力気密方式で、そこに締め付けるように準備されてもよい。流体排出ライン3は、弁ハウジング13上にスリップすることができる。流体排出ライン3は、圧着スリーブ(図示せず)を用いて、圧力気密方式で、そこに締め付けるように準備されてもよい。
【0112】
中空体1を空洞内に導入してもよい。中空体1または医療用インプラントは、このようにして、空洞を機械的に支持し、安定化させることができる。医療用インプラントがもはや必要とされない場合、中空体1は、例えば、排気することによって、減圧して、圧縮することもできる。次に、中空体1を空洞から容易に再び取り外すことができる。特に、空洞が骨の空洞である場合、この骨欠損は、このようにして慎重に治療することができる。代替として、中空体1は、それが生分解性材料で作られている場合には、体内で分解されてもよい。
【0113】
動作中、流体は、コネクタ4を介して医療用インプラント内に供給されてもよい(
図1、
図2、および
図4では、コネクタ4を指す矢印によって示されている)。流体は、圧力が十分であるときに、流体供給ライン2を通って流れ、弁10を開くことができる。次いで、流体は、流入開口部8を通って中空体1内に流れ、中空体1を通って流れることができる。流体は、流体排出ライン3を通って、当初閉じていた弁11に流れることができる。この場合、中空体1の内部に圧力が蓄積されることがある。流体排出ライン3内の弁11における圧力が十分になると直ちに、弁11が開き、流体は、流体排出ライン3およびコネクタ5を通って流出することができる(
図1、
図2および
図4で、コネクタ5から遠ざかる方向を指す尖った矢印によって示されているように)。
【0114】
流体には、酸素が含まれている。流体は、流体1の壁を通して中空体1の周囲に酸素を放出することができる。同時に、流動流体は、中空体1の壁を通って内部チャンバ内に拡散する二酸化炭素を、中空体1の周囲から吸収し、コネクタ5を通って医療用インプラントから離れるように運ぶことができる。このようにして、中空体1の周囲に酸素を供給することができ、二酸化炭素を吸収することにより、中空体1の周囲の過酸性化を防止することができる。
【0115】
微生物に対しては不透過性であるが、流体に対しては透過性である滅菌フィルタ(図示せず)を、流体供給ライン2および/または流体排出ライン3に配置することができる。特に、流体が気体である場合、この手段は困難なく使用することができる。流体が液体である場合、滅菌フィルタが流体の流れを過度に阻害しないように注意しなければならない。そうでなければ、中空体1に到達する可能性のある微生物、および/またはコネクタ5によって中空体1から運び去られる可能性のある微生物は、滅菌フィルタによって流体から除去されてもよい。これにより、治療を受けた患者および担当職員の感染リスクが低下する。1つの滅菌フィルタは、好ましくは、流体供給ライン2または流体排出ライン3内で、流れの方向で弁10または弁11の下流に配置されても、あるいは複数の滅菌フィルタは、流体供給ライン2および流体排出ライン3内で、弁10、11の下流に配置されてもよい。流体を滅菌するための他の方法および選択肢も可能である。流体は、例えば、放射線を用いて滅菌することができる。
【0116】
感染を防止するために、中空体1と、流体供給ライン2と流体排出ライン3との隣接領域とを、消毒物質でコーティングするようにしても、あるいは水溶性消毒物質が中空体1の材料に含まれるようにしてもよい。
【0117】
図4の尖った矢印は、空洞1の内部、流体供給ライン2および流体排出ライン3の内部において、動作中の流体の流れ方向を示す。さらに、空洞1の周りの領域における尖った矢印は、流体からの酸素の送達を示す。
【0118】
図6~
図9は、本発明による第二の医療用インプラントを示す。
【0119】
本発明による第二の医療用インプラントは、弾性的または塑性的に変形可能なプラスチック材料の中空体21を含むことができ、または中空体21を含むことができ、その壁は、少なくとも一部箇所がプラスチック材料からなる。中空体21は、一端が閉じた円筒管であってもよい。中空体21は、例えば、生体適合性プラスチック材料からなることができる。中空体21は、液体に対して不透過性であってもよい。中空体21の内部には、内部チャンバが配置されていてもよい。
【0120】
中空体21の少なくとも一部箇所で使用される材料は、分子状酸素に対しても二酸化炭素に対しても透過性であってもよい。中空体21または中空体21を形成する材料は、0.5cm3/(m2*d*bar)以上の酸素透過係数、および0.5cm3/(m2*d*bar)以上の二酸化炭素透過係数を有することができる。透過係数は、DIN53380-4(11/2006)に準拠して決定される。
【0121】
流体を供給するために、中空体21の内部チャンバは、プラスチック材料の流体供給ライン22と接続されてもよい。中空体21から流体を排出するために、中空体21の内部チャンバを、プラスチック材料の流体排出ライン23に接続してもよい。流体供給ライン22および流体排出ライン23は、可撓性を有し、少なくとも一部箇所で移動可能であってもよい。流体供給ライン22は、その後端(
図5の右上、
図6、
図7および
図9の上部)に、流体供給ライン22を流体源(図示せず)に接続することができるコネクタ24を有していてもよい。流体排出ライン23は、同様に、その後端にコネクタ25を有してもく、このコネクタ25を用いて、流体排出ライン23を使用済み流体のためのレセプタクルまたは出口に接続してもよい。
【0122】
流体供給ライン22と流体排出ライン23とは、接続部26内で一緒にされてもよく、接続部26内で、流体供給ライン22が流体排出ライン23の中または中空体21の中に同軸で案内されてもよい。流体供給ライン22は、中空体21内に同軸に配置することができる。流体供給ライン22は、中空体21内で、中空体21のほぼ前方閉鎖端まで案内され、そこで流入開口部28を通って中空体21内に導くことができる。流体供給ライン22は、流入開口部28を介して中空体21の内部チャンバの前部に導くことができる。流体排出ライン23を、中空体21の内チャンバの反対側の後端で、流出開口部29を介して、中空体21の内部チャンバと接続してもよい。このようにして、流体が中空体21全体の壁の表面に沿って流れることができ、それによって、酸素および二酸化炭素のガス交換が中空体21の全長にわたって壁を通って行われることが保証される。流出開口部29は、接続部26によって画定されてもよい。
【0123】
リップ弁の形態の弁30を流体供給ライン22に配置してもよく、前記弁は、流体が中空体21に向かって流れるのを許容するが、流体が中空体21から離れて流れるのを防止する。次いで、弁30は一方向弁として作用する。リップ弁の形態の弁31を流体排出ライン23に配置してもよく、前記弁は、流体が中空体21に向かって流れるのを防止するが、流体が中空体21から離れて流れるのを許容する。次いで、弁31は一方向弁として作用する。流体排出ライン23の弁31は、流体の最小圧力から開くように構成されてもよい。最小圧力は、流体排出ライン23の弁31で調整可能であることが好ましい。この点において、最小圧力は、流体の圧力が中空体21を所望の外形にするのに十分であるように選択されてもよい。
【0124】
弁30、31を、弁ハウジング32、33を介して流体供給ライン22および流体排出ライン23と接続してもよい。この目的のために、流体供給ライン22を弁ハウジング32上にスリップして、任意選択で、追加的に締め付けてもよい。流体排出ライン23も、同様に、弁ハウジング33上にスリップして、任意選択で、そこに追加的に締め付けてもよい。
【0125】
コネクタ24は、その後端において、ルアーロックアダプタの形態をとることができる。同様に、コネクタ25も、その後端において、ルアーロックアダプタの形態をとることができる。流体を、コネクタ24、25を介して供給し、排出してもよい。コネクタ24、25を、弁ハウジング32、33にネジ込んでもよい。
【0126】
弁ハウジング32は、弁30を所定の位置に固定する二部構造とすることができる。弁ハウジング32は、コネクタ24の外ネジと内ネジを用いて接続してもよい。弁ハウジング33は、弁31を所定の位置に固定する二部構造とすることができる。弁ハウジング33は、コネクタ25の外ネジと内ネジを用いて接続してもよい。全ての接続部は、気密性と耐圧性を有してもよい。
【0127】
流体供給ライン22は、弁ハウジング32上にスリップすることができる。流体供給ライン22は、圧着スリーブ(図示せず)を用いて、圧力気密方式で、そこに締め付けるように準備されてもよい。流体排出ライン23は、弁ハウジング33上にスリップすることができる。流体排出ライン23は、圧着スリーブ(図示せず)を用いて、圧力気密方式で、そこに締め付けるように準備されてもよい。
【0128】
中空体21を空洞内に導入してもよい。中空体21または医療用インプラントは、このようにして、空洞を機械的に支持し、安定化させることができる。インプラントがもはや必要とされない場合、中空体21は、例えば、排気することによって、減圧して、圧縮することもできる。次に、中空体21を空洞から再び取り外すことができる。特に、空洞が骨の空洞である場合、この骨欠損は、このようにして慎重に治療することができる。代替として、中空体21は、それが生分解性材料から作られている場合、体内で分解されてもよい。
【0129】
動作中、流体は、コネクタ24を介して医療用インプラント内に供給されてもよい(
図5、
図6、
図7、および
図9では、コネクタ24内を指す矢印によって示されている)。流体は、圧力が十分であるときに、流体供給ライン22を通って流れ、弁30を開くことができる。次いで、流体は、流入開口部28を通って中空体21内に流れ、中空体21を通って流れることができる。流体は、流体排出ライン23を通って、当初閉じていた弁31に流れることができる。この場合、中空体21の内部に圧力が蓄積されることがある。流体排出ライン23内の弁31での圧力が十分になると直ちに、弁31が開き、流体は、流体排出ライン23およびコネクタ25を通って流出することができる(
図5、
図6、
図7および
図9で、コネクタ25から遠ざかる方向を指す尖った矢印によって示されているように)。
【0130】
流体には、酸素が含まれている。流体は、流体21の壁を通して中空体21の周囲に酸素を放出することができる。同時に、流動流体は、中空体21の周囲から、中空体21の壁を通って内部チャンバ内に拡散する二酸化炭素を吸収し、コネクタ25を通って医療用インプラントから離れるように運ぶことができる。このようにして、中空体21の周囲に酸素を供給することができ、二酸化炭素を吸収することにより、中空体21の周囲の過酸性化を防止することができる。
【0131】
微生物に対しては不透過性であるが、流体に対しては透過性である滅菌フィルタ(図示せず)を、流体供給ライン22および/または流体排出ライン23に配置することができる。特に、流体が気体である場合、この手段は困難なく使用することができる。流体が液体である場合、滅菌フィルタが流体の流れを過度に阻害しないように注意しなければならない。そうでなければ、中空体21に到達する可能性のある微生物、および/またはコネクタ25によって中空体21から運び去られる可能性のある微生物は、滅菌フィルタによって流体から除去されてもよい。これにより、治療を受けた患者および担当職員の感染リスクが低下する。1つの滅菌フィルタは、好ましくは、流体供給ライン22または流体排出ライン23内で、流れの方向で弁30または弁31の下流に配置されても、あるいは複数の滅菌フィルタは、流体供給ライン22および流体排出ライン23内で、弁30、31の下流に配置されてもよい。流体を滅菌するための他の方法および選択肢も可能である。流体は、例えば、放射線を用いて滅菌することができる。
【0132】
感染を防止するために、中空体21と、流体供給ライン22と流体排出ライン23との隣接領域とを、消毒物質でコーティングするようにしても、あるいは水溶性消毒物質が中空体21の材料に含まれるようにしてもよい。
【0133】
中空体21の周囲を処理するために、さらに、中空体21の外側に固定される複数の貫通開口部36を有するライン34がさらに設けられてもよい。ライン34は、液体を通さない有効成分供給ライン38に接続されてもよい。ライン34および有効成分供給ライン38は、液体を開口部36に供給するために設けることができる。有効成分供給ライン38は、コネクタ40を介して、医薬有効成分溶液の供給源と接続され得る。このようにして、医薬有効成分溶液は、ライン34または中空体21の表面に送達され得る。
【0134】
ライン34からの液体の逆流を防止するために、弁42を有効成分供給ライン38とコネクタ40との間に配置することができる。弁42は、例えば、リップ弁のような一方向弁であることが好ましい。弁42は、弁ハウジング44を介して有効成分供給ライン38と接続されてもよい。この目的のために、有効成分供給ライン38を弁ハウジング44上にスリップして、任意選択で、追加的に締め付けてもよい。コネクタ40は、その後端において、ルアーロックアダプタの形態をとることができる。弁ハウジング44は、弁42を所定の位置に固定する二部構造とすることができる。弁ハウジング44は、コネクタ40の外ネジと内ネジを用いて接続してもよい。有効成分供給ライン38を弁ハウジング44上にスリップしてもよい。
【0135】
図7および
図8の尖った矢印は、空洞21の内部、流体供給ライン22および流体排出ライン23の内部において、動作中の流体の流れ方向を示す。ライン34における尖った矢印は、同様に、液体医療有効成分の流れおよび送達を示す。さらに、空洞21の周りの領域における尖った矢印は、流体からの酸素の送達を示し(
図7および
図8)、いくつかのより小さな尖った矢印は、二酸化炭素の吸収を示す(
図8のみ)。
【0136】
図10~
図13は、本発明による医療用インプラントの第三の例示的な実施形態を示す。
【0137】
本発明による第三の医療用インプラントは、組み込まれた金属ワイヤまたは組み込まれた金属マトリックスを有する塑性変形可能なプラスチック材料の中空体51を有することができる。中空体51は、主要部64と、複数の分岐部66とを一対になって互いに向き合い、主要部64から垂直に離れて延在していてもよい。横分岐部66は、主要部64から約2mm突出することができる。
【0138】
中空体51は、例えば、生体適合性プラスチック材料からなることができる。中空体51は、液体に対して不透過性であってもよい。中空体51の内部に、したがって主要部64および分岐部66の内部にも、内部チャンバを中空体51内に配置することができる。
【0139】
中空体51の少なくとも一部箇所で使用される材料は、分子状酸素に対しても二酸化炭素に対しても透過性であってもよい。中空体51または中空体51を形成する材料は、0.5cm3/(m2*d*bar)以上の酸素透過係数、および0.5cm3/(m2*d*bar)以上の二酸化炭素透過係数を有することができる。透過係数は、DIN53380-4(11/2006)に準拠して決定される。
【0140】
流体を供給するために、中空体51の内部チャンバは、プラスチック材料の流体供給ライン52と接続されてもよい。中空体51から流体を排出するために、中空体51の内部チャンバを、プラスチック材料の流体排出ライン53と接続してもよい。流体供給ライン52および流体排出ライン53は、可撓性であってもよく、少なくとも一部箇所で移動可能であってもよい。流体供給ライン52は、流体供給ライン52が流体源(図示せず)に接続され得るコネクタ54を有していてもよい。流体排出ライン53は、同様に、コネクタ55を有してもよく、このコネクタ55を用いて、流体排出ライン53を使用済み流体のためのレセプタクルまたは出口に接続してもよい。
【0141】
流体供給ライン52および流体排出ライン53は、中空体51または中空体51の対向する側の主要部64に開口してもよい。流体供給ライン52は、流入開口部58を介して中空体51の内部チャンバの中に導くことができる。流体排出ライン53を、中空体51の内部チャンバの反対側端部で、流出開口部59を介して、中空体51の内部チャンバと接続してもよい。このようにして、確実に、流体が中空体51全体の壁の表面に沿って流れることができ、それによって、酸素と二酸化炭素のガス交換が中空体51の全長にわたる壁を通って、またその分岐部66の中で行われる。
【0142】
リップ弁の形態の弁60を流体供給ライン52に配置してもよく、前記弁は、流体が中空体51に向かって流れるのを許容するが、流体が中空体51から離れて流れるのを防止する。次いで、弁60は一方向弁として作用する。リップ弁の形態の弁61が流体排出ライン53に配置してもよく、前記弁は、流体が中空体51に向かって流れるのを防止するが、流体が中空体51から離れて流れるのを許容する。次いで、弁61は一方向弁として作用する。流体排出ライン53の弁61は、流体の最小圧力から開くように構成されてもよい。最小圧力は、流体排出ライン53の弁61で調整可能であることが好ましい。この点において、最小圧力は、流体の圧力が中空体51を所望の外形にするのに十分であるように調整されてもよい。
【0143】
弁60、61を、弁ハウジング62、63を介して、流体供給ライン52および流体排出ライン53と接続してもよい。この目的のために、流体供給ライン52を弁ハウジング62上にスリップして、任意選択で、追加的に締め付けてもよい。流体排出ライン53も、同様に、弁ハウジング63上にスリップして、任意選択で、そこに追加的に締め付けてもよい。
【0144】
コネクタ54は、その後端において、ルアーロックアダプタの形態をとることができる。同様に、コネクタ55も、その後端において、ルアーロックアダプタの形態をとることができる。流体を、コネクタ54、55を介して供給し、排出してもよい。コネクタ54、55を、弁ハウジング62、63にネジ込んでもよい。
【0145】
弁ハウジング62は、弁60を所定の位置に固定する二部構造とすることができる。弁ハウジング62は、コネクタ54の外ネジと内ネジを用いて接続してもよい。弁ハウジング63は、弁61を所定の位置に固定する二部構造とすることができる。弁ハウジング63は、コネクタ55の外ネジと内ネジを用いて接続してもよい。全ての接続部は、気密性と耐圧性を有してもよい。
【0146】
流体供給ライン52は、弁ハウジング62上にスリップすることができる。流体供給ライン52は、圧着スリーブ(図示せず)を用いて、圧力気密方式で、そこに締め付けるように準備されてもよい。流体排出ライン53は、弁ハウジング13上にスリップすることができる。流体排出ライン53は、圧着スリーブ(図示せず)を用いて、圧力気密方式で、そこに締め付けるように準備されてもよい。
【0147】
中空体51は、三次元構造を作るために折り畳まれてもよい(
図11参照)。さらに、中空体51は、中空体51の表面に配置された骨細胞の細胞培養物を供給および増殖するために使用されてもよい。次に、このようにして準備された中空体51を空洞内に導入することができる。中空体51または医療用インプラントは、このようにして、空洞を機械的に支持し、安定化させることができる。医療用インプラントがもはや必要とされない場合、中空体51は、例えば、排気することによって、減圧して、圧縮することもできる。次に、中空体51を空洞から容易に再び取り外すことができる。特に、空洞が骨の空洞である場合、この骨欠損は、このようにして慎重に治療することができる。代替として、中空体51は、それが生分解性材料から作られている場合、体内で分解されてもよい。
【0148】
動作中、流体は、コネクタ54を通って医療用インプラント内に供給されてもよい(
図10~
図13では、コネクタ54を指す矢印によって示されている)。流体は、圧力が十分であるときに、流体供給ライン52を通って流れ、弁60を開くことができる。次いで、流体は、流入開口部58を通って中空体51内に流れ、主要部64および中空体51の分岐部66を通って流れることができる。流体は、流体排出ライン53を通って、当初閉じていた弁61に流れることができる。この場合、中空体51の内部に圧力が蓄積されることがある。流体排出ライン53内の弁61における圧力が十分になると直ちに、弁61が開き、流体は、流体排出ライン53およびコネクタ55を通って流出することができる(
図10~
図13で、コネクタ55から遠ざかる方向を指す尖った矢印によって示されているように)。
【0149】
流体には、酸素が含まれている。流体は、流体51の壁を通して中空体51の周囲に酸素を放出することができる。同時に、流動流体は、中空体51の壁を通って内部チャンバ内に拡散する二酸化炭素を、中空体51の周囲から吸収し、コネクタ55を通って医療用インプラントから離れるように運ぶことができる。このようにして、中空体51の周囲に酸素を供給することができ、二酸化炭素を吸収することにより、中空体51の周囲の過酸性化を防止することができる。
【0150】
微生物に対しては不透過性であるが、流体に対しては透過性である滅菌フィルタ(図示せず)を、流体供給ライン52および/または流体排出ライン53に配置することができる。特に、流体が気体である場合、この手段は困難なく使用することができる。流体が液体である場合、滅菌フィルタが流体の流れを過度に阻害しないように注意しなければならない。そうでなければ、中空体51に到達する可能性のある微生物、および/またはコネクタ55によって中空体51から運び去られる可能性のある微生物は、滅菌フィルタによって流体から除去されてもよい。これにより、治療を受けた患者および担当職員の感染リスクが低下する。1つの滅菌フィルタは、好ましくは、流体供給ライン52または流体排出ライン53内で、流れの方向で弁60または弁61の下流に配置されても、あるいは複数の滅菌フィルタは、流体供給ライン52および流体排出ライン53内で、弁60、61の下流に配置されてもよい。流体を滅菌するための他の方法および選択肢も可能である。流体は、例えば、放射線を用いて滅菌することができる。
【0151】
感染を防止するために、中空体51と、任意選択で流体供給ライン52と流体排出ライン53との隣接領域とを、消毒物質でコーティングするようにしても、あるいは水溶性消毒物質が中空体51の材料に含まれるようにしてもよい。
【0152】
図12の尖った矢印は、空洞51の内部、流体供給ライン52および流体排出ライン53の内部において、動作中の流体の流れ方向を示す。さらに、空洞51の周りの領域における尖った矢印は、流体からの酸素の送達を示す。
【0153】
医療用インプラントを体外で使用して、中空体1、21、51の表面で骨細胞のための細胞培養物を通気し、増殖させることができる。成長した細胞培養物が提供されると、骨欠損内の細胞がさらに増殖して、成長するのを促進するために、次いで、医療用インプラントは体内にインプラントされ、その後、体内でさらに通気されてもよい。
【0154】
上記の説明、ならびに特許請求の範囲、図面、および例示的な実施形態に開示された本発明の特徴は、本発明をその様々な実施形態で実現するために、個別に、および任意の所望の組合せで必須であり得る。
【符号の説明】
【0155】
1、21、51 中空体
2、22、52 流体供給ライン
3、23、53 流体排出ライン
4、24、54 コネクタ
5、25、55 コネクタ
6、26 接続部
8、28、58 流入開口部
9、29、59 流出開口部
10、30、60 弁/リップ弁
11、31、61 弁/リップ弁
12、32、62 弁ハウジング
13、33、63 弁ハウジング
34 ライン
36 開口部
38 有効成分供給ライン
40 コネクタ
42 弁
44 弁ハウジング
64 主要部
66 分岐部