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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】電流遮断装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/59 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
H01H33/59 B
H01H33/59 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020113894
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012223
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-02-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2015年度~2019年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 次世代洋上直流送電システム開発事業 システム開発/要素技術開発委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児山 裕史
(72)【発明者】
【氏名】石黒 崇裕
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-198022(JP,A)
【文献】特開2009-183091(JP,A)
【文献】特開平06-276702(JP,A)
【文献】特開2003-158875(JP,A)
【文献】特開平02-007477(JP,A)
【文献】特公昭51-023015(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/54
H01H 33/59
H02M 3/28
H01S 5/068
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される電力を光に変換する発光部と、
前記発光部により発せられる光を電力に変換する光電変換部と、
前記光電変換部の出力電圧を昇圧する昇圧回路と、
前記昇圧回路の出力電圧により充電され、遮断対象となる電流を転流させるための電力を蓄える蓄電部と、
前記蓄電部を用いて生成されるゼロ電流の状態で前記電流を遮断する電気的接点あるいは機械的接点と、
を備える電流遮断装置。
【請求項2】
前記昇圧回路は、複数のコンデンサと複数のダイオードを有する多段ブリッジ回路である、
請求項1記載の電流遮断装置。
【請求項3】
前記昇圧回路は、前記光電変換部の高電圧端に接続された第1電力線と、前記光電変換部の低電圧端に接続された第2電力線と、前記第1電力線と前記第2電力線を接続する複数の中間接続線とを有し、
前記複数の中間接続線のそれぞれには、前記光電変換部の側から見て交互に極性が反対となるように複数のダイオードが設けられており、
前記第1電力線における互いに隣接する前記中間接続線の間には、一つおきに前記複数のコンデンサの一部である複数の第1コンデンサが設けられており、
前記第2電力線における互いに隣接する前記中間接続線の間には、前記第1コンデンサと互い違いに前記複数のコンデンサの一部である複数の第2コンデンサが設けられており、
前記第1電力線と前記第2電力線のそれぞれの前記光電変換部と反対側の端部が接続された接続点が、前記蓄電部の高電圧端に接続され、前記光電変換部の低電圧端が前記蓄電部の低電圧端に接続されている、
請求項2記載の電流遮断装置。
【請求項4】
前記発光部は、光を発する状態と光を発しない状態とを交互に繰り返す、
請求項2または3記載の電流遮断装置。
【請求項5】
前記光電変換部は、第1の光電変換部と第2の光電変換部とを含み、
前記昇圧回路は、前記第1の光電変換部の高電圧端に接続された第1電力線と、前記第1の光電変換部および前記第2の光電変換部の低電圧端に接続された第2電力線と、前記第2の光電変換部の高電圧端に接続された第3電力線と、前記第1電力線と前記第2電力線を接続する複数の第1中間接続線と、前記第2電力線と前記第3電力線を接続する複数の第2中間接続線と、を有し、
前記複数の第1中間接続線のそれぞれには、前記光電変換部の側から見て交互に極性が反対となるように複数のダイオードが設けられており、
前記複数の第2中間接続線のそれぞれには、前記第2電力線を中心として前記第1中間接続線におけるダイオードの向きと対称になるように複数のダイオードが設けられており、
前記第1電力線における互いに隣接する前記第1中間接続線の間には、一つおきに前記複数のコンデンサの一部である複数の第1コンデンサが設けられており、
前記第2電力線における互いに隣接する前記第1中間接続線の間には、前記複数の第1コンデンサと互い違いに前記複数のコンデンサの一部である複数の第2コンデンサが設けられており、
前記第3電力線における互いに隣接する前記第2中間接続線の間には、一つおきに且つ前記第2電力線を中心として前記第1電力線における前記複数の第1コンデンサと配置が対称となるように前記複数のコンデンサの一部である複数の第3コンデンサが設けられており、
前記第1電力線、前記第2電力線、および前記第3電力線のそれぞれの前記光電変換部と反対側の端部が接続された接続点が、前記蓄電部の高電圧端に接続され、前記第1の光電変換部および前記第2の光電変換部の低電圧端が前記蓄電部の低電圧端に接続されている、
請求項1記載の電流遮断装置。
【請求項6】
前記発光部は、前記第1の光電変換部に光を供給する第1の発光部と、前記第2の光電変換部に光を供給する第2の発光部とを含み、
前記第1の発光部と前記第2の発光部のそれぞれは、光を発する状態と光を発しない状態とを交互に繰り返し、
前記第1の発光部が光を発する状態の場合に前記第2の発光部は光を発さず、前記第2の発光部が光を発する状態の場合に前記第1の発光部は光を発さない、
請求項5記載の電流遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電流遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、送電システムにおいて直流送電を行うことについて検討・導入が進められている。直流送電システムは、従来の交流送電システムに比べ、長距離大電力送電に適用した場合に、低コストで設置可能であり且つ送電損失が少ない高効率システムを構築することが可能である。その一方、直流送電においては系統事故の発生した個所を遮断・隔離することが難しい。直流電流では、電流がゼロを横切る点(ゼロ点)が生じないため、機械式接点では電流を容易に遮断できないためである。これを解決するため、様々な直流電流遮断装置が検討されている。
【0003】
図7は、直流電流遮断器100の一例を示す図である。この直流電流遮断器100は、転流回路110、機械接点式の断路器120、遮断器130、半導体遮断器140、アレスタ150、ダイオード160、リアクトル170、補助断路器180を含む。転流回路110は、コンデンサ111、ダイオード112、スイッチング素子113、およびサイリスタ114を含む。通常送電時、直流送電線DLの電流は断路器120と遮断器130と補助断路器180を通って流れる。事故が起きると断路器120と遮断器130が開極され、転流回路110がオン状態となる。するとコンデンサの電荷が放電され、遮断器130に逆向きの電流が流れ、遮断器130にゼロ点が発生する。これで遮断器130にはこれ以上電流は流れない。次に半導体遮断器140がオン状態となり転流回路110がオフ状態になると、電流は半導体遮断器140に転流し、断路器120の電流がゼロになる。最後に半導体遮断器140をオフ状態にすると電流が遮断される。遮断後、直流送電線DLのインダクタンス190の分のエネルギーは、半導体遮断器140に並列接続されたアレスタ150で消費される。電流がゼロになったら補助断路器180が開極され、遮断が完了する。送電線で事故が発生した際には、直流電流遮断器100が開極することで事故回線を切り離す。その後、健全回線で送電を継続することができる。なお特許文献1にも類似の構成および動作が記載されている。
【0004】
電流遮断器においては、転流回路にコンデンサ等の蓄電部を備える必要があり、蓄電部を事故に備えて充電しておく必要がある。一般的な充電法としては、図7に示すように、外部の交流電源ACから変圧器202とダイオード整流器200を介して充電する方法がある。しかし、この方法では、非常に耐圧の高い変圧器202が必要となる。直流送電線DLの電圧は数百[kV]の高電圧であるため、耐圧確保のため大型の変圧器202が必要となり、結果として充電のための外部回路の規模が大きくなる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-162713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、より小規模な回路構成で、転流のための蓄電部を充電することができる電流遮断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の電流遮断装置は、発光部と、光電変換部と、昇圧回路と、蓄電部と、電気的接点あるいは機械的接点とを持つ。発光部は、供給される電力を光に変換する。光電変換部は、前記発光部により発せられる光を電力に変換する。昇圧回路は、前記光電変換部の出力電圧を昇圧する。蓄電部は、前記昇圧回路の出力電圧により充電され、遮断対象となる電流を転流させるための電力を蓄える。電気的接点あるいは機械的接点は、前記蓄電部を用いて生成されるゼロ電流の状態で前記電流を遮断する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の電流遮断装置1の構成の一例を示す図。
図2】第1の実施形態に係る電力供給装置50の構成の一例を示す図。
図3】昇圧回路70が昇圧する仕組みについて説明するための図。
図4】第1実施形態の変形例に係る電力供給装置50Aの構成の一例を示す図。
図5】第2の実施形態に係る電力供給装置50Bの構成の一例を示す図。
図6】第2の実施形態における発光部の動作について説明するための図。
図7】従来の直流電流遮断器100を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の電流遮断装置を、図面を参照して説明する。
【0010】
(共通構成)
図1は、実施形態の電流遮断装置1の構成の一例を示す図である。電流遮断装置1は、例えば、転流回路11、機械接点式の断路器12、遮断器13、半導体遮断器14、アレスタ15、ダイオード16、リアクトル17、補助断路器18、および電力供給装置50を備える。転流回路11、機械接点式の断路器12、遮断器13、半導体遮断器14、アレスタ15、ダイオード16、リアクトル17、および補助断路器18のそれぞれは、図7に示される直流電流遮断器100における転流回路110、機械接点式の断路器120、遮断器130、半導体遮断器140、アレスタ150、ダイオード160、リアクトル170、および補助断路器180のそれぞれと同様に機能するものであるため、再度の説明を省略する。
【0011】
転流回路11について補足する。転流回路11は、例えば、コンデンサ11A、ダイオード11B、スイッチング素子11C、およびサイリスタ11Dを備え、それらが図示する形態で接続されている。コンデンサ11Aは「蓄電部」の一例である。スイッチング素子11Cは、それぞれ、互いに並列に接続されたスイッチング素子とダイオードとを備える。サイリスタ11Dは、オフ状態において、流れる電流を双方向に阻止し、オン状態において、断路器12からリアクトル17に向けて流れる電流を許容し、その逆向きの電流を阻止する。
【0012】
電流遮断装置1のうち電力供給装置50を除く構成については、「電力供給装置50の昇圧回路70(後述)の出力電圧により充電され、遮断対象となる電流(直流送電線DLを流れる電流)を転流させるための電力を蓄える蓄電部(図1の例ではコンデンサ11A)、および蓄電部を用いて生成されるゼロ電流の状態で電流を遮断する電気的接点あるいは機械的接点(図1の例では断路器12)」を備えるものであれば、如何なる構成であってもよい。
【0013】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態に係る電力供給装置50の構成の一例を示す図である。電力供給装置50は、例えば、レーザドライバ52と、レーザ発振器54と、光ファイバ56と、光電変換素子58と、昇圧回路70とを備える。
【0014】
レーザドライバ52は、例えば、AC-DCコンバータ52Aと、スイッチ52Bと、コントローラ52Cとを備える。AC-DCコンバータ52Aは、交流電源ACから供給される交流を所望の電圧の直流に変換する。スイッチ52Bは、AC-DCコンバータ52Aの直流端とレーザ発振器54との間に設けられている。コントローラ52Cは、スイッチ52Bのオン・オフ制御を行う。レーザ発振器54は、レーザドライバ52から電力が供給されている間、光ファイバ56の内部に向けて光を発する。レーザドライバ52とレーザ発振器54を合わせたものが、「発光部」の一例である。スイッチ52Bは半導体スイッチング素子のような電気的なスイッチでも構わない。
【0015】
光ファイバ56の内部を通る光は、光電変換素子58に入射する。光電変換素子58は、入射した光に応じた電圧を発生させる(光を電力に変換する)。光電変換素子58は、「光電変換部」の一例である。
【0016】
レーザドライバ52、レーザ発振器54、光ファイバ56、および光電変換素子58を備えることによって、交流電源ACと直流送電線DLとを絶縁しつつ、コンデンサ11Aにエネルギーを供給することができる。
【0017】
昇圧回路70は、光電変換素子58の出力電圧を昇圧する。昇圧回路70は、複数のコンデンサ(第1コンデンサ82-1~82-n、および第2コンデンサ84-1~84-n)と複数のダイオード(80-1~80-2n)を有する多段ブリッジ回路である。nは二以上の自然数である。以下の説明において各コンデンサやダイオードを総称する場合、ハイフン以下の符号を省略することがある。
【0018】
昇圧回路70は、例えば、第1電力線71と、第2電力線72と、複数の中間接続線76とを備える。第1電力線71は、光電変換素子58の高電圧端58Hに接続されている。第2電力線72は、光電変換素子58の低電圧端58Lに接続されている。複数の中間接続線76のそれぞれは、第1電力線71と第2電力線72を梯子状に接続する。複数の中間接続線76のそれぞれには、光電変換素子58の側から見て交互に極性が反対となるように複数のダイオード80が設けられている。第1電力線71における互いに隣接する中間接続線76の間には、一つおきに複数の第1コンデンサ82が設けられており、第2電力線72における互いに隣接する中間接続線76の間には、複数の第1コンデンサ82と互い違いに複数の第2コンデンサ84が設けられている。そして、第1電力線71と第2電力線72のそれぞれの光電変換素子58と反対側の端部が接続された接続点86が、コンデンサ11Aの高電圧端11AHに接続され、光電変換素子58の低電圧端58Lが、コンデンサ11Aの低電圧端11ALに接続されている。
【0019】
このような構成において、レーザドライバ52のコントローラ52Cは、スイッチ52Bを間欠的にオン状態にする(パルス状にオン・オフさせる)。これを受けてレーザ発振器54は、光を発する状態と光を発しない状態とを交互に繰り返す。これによって、昇圧回路70の第1コンデンサ82および第2コンデンサ84が充電され、最終的に昇圧回路70は、光電変換素子58の出力電圧を段数nに比例した電圧に昇圧することができる。
【0020】
図3は、昇圧回路70が昇圧する仕組みについて説明するための図である。図3の上図は光電変換素子58がレーザ発振器54から光を受けているとき(受光時)の状態を示しており、図3の下図は光電変換素子58がレーザ発振器54から光を受けていないとき(非受光時)の状態を示している。
【0021】
受光時において、光電変換素子58の端子間電圧はVpdとなる。このとき、破線で示すように、光電変換素子58、第1コンデンサ82-1、ダイオード80-2、第2コンデンサ84-1の順に電流が流れ、第1コンデンサ82-1の電圧Vおよび第2コンデンサ84-1の電圧Vが上昇する。
【0022】
非受光時において、光電変換素子58の端子間電圧はゼロに近づく。このとき、破線で示すように、第2コンデンサ84-1、ダイオード80-3、第1コンデンサ82-2、第1コンデンサ82-1、光電変換素子58の順に電流が流れ、第1コンデンサ82-1の電圧Vおよび第2コンデンサ84-1の電圧Vが低下して第1コンデンサ82-2の電圧Vが上昇する。
【0023】
受光時の状態と非受光時の状態を交互に繰り返すことで、第1コンデンサ82、第2コンデンサ84の充電は図の右側に伝搬していき、各コンデンサの電圧が上昇していく。例えば、図3の下図に示す状態の次の非受光時には、第1コンデンサ82-2が放電して第2コンデンサ84-2が充電され、その次の非受光時には、第2コンデンサ84-2が放電して第1コンデンサ82-3が充電されるという具合である(第1コンデンサ82-1、第2コンデンサ84-1など、前段のコンデンサにも図3に示す作用が繰り返し発生する)。最終的に接続点86の電圧によってコンデンサ11Aが充電される。
【0024】
以上説明した第1の実施形態によれば、レーザドライバ52およびレーザ発振器54を含む発光部と、光電変換素子58を備え、光電変換素子58の出力を昇圧回路70で昇圧して転流回路11のコンデンサ11Aの充電電圧とするため、耐圧の高い大型の変圧器を備える必要が無くなり、より小規模な回路構成で、転流のためのコンデンサ11Aを充電することができる。光電変換素子58の低電圧端58Lと接続点86の間には、上記プロセスにより充電されたコンデンサ84が直列接続されているため、接続点86からは昇圧された高い電圧が得られる。
【0025】
また、第1の実施形態によれば、エネルギー源である光の照射をオン・オフするものであるため、昇圧回路70の前段にスイッチング素子を設ける必要が無くなり、更に小規模な回路構成で、転流のためのコンデンサ11Aを充電することができる。
【0026】
(第1の実施形態の変形例)
図4は、第1実施形態の変形例に係る電力供給装置50Aの構成の一例を示す図である。電力供給装置50Aにおける昇圧回路70Aの光電変換素子58側の端部には、変換器88が設けられている。変換器88は、例えばDC-DCコンバータである。このように構成することで、光電変換素子58の出力特性を調整し、より高い電圧をコンデンサ11Aに供給することができる。
【0027】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態において、電力供給装置以外の構成については第1実施形態と相違が無いため、主に電力供給装置について説明する。
【0028】
図5は、第2の実施形態に係る電力供給装置50Bの構成の一例を示す図である。電力供給装置50Bは、例えば、レーザドライバ52およびレーザ発振器54(第1の発光部)、光ファイバ56、光電変換素子58(第1の光電変換部)を含む第1系列の電圧発生部と、レーザドライバ53およびレーザ発振器55(第2の発光部)、光ファイバ57、光電変換素子59(第2の光電変換部)を含む第2系列の電圧発生部と、昇圧回路70Bとを備える。
【0029】
レーザドライバ52、53は、例えば、第1実施形態と同様のものである。レーザ発振器54は、レーザドライバ52から電力が供給されている間、光ファイバ56の内部に向けて光を発する。光ファイバ56の内部を通る光は、光電変換素子58に入射する。光電変換素子58は、入射した光に応じた電圧を発生させる(光を電力に変換する)。同様に、レーザ発振器55は、レーザドライバ53から電力が供給されている間、光ファイバ57の内部に向けて光を発する。光ファイバ57の内部を通る光は、光電変換素子59に入射する。光電変換素子59は、入射した光に応じた電圧を発生させる(光を電力に変換する)。光電変換素子58の低電圧端58Lは、光電変換素子59の低電圧端59Lと接続されている。
【0030】
昇圧回路70Bは、第1実施形態の昇圧回路70が備える構成に加えて、光電変換素子59の高電圧端59Hに接続された第3電力線73と、第2電力線72と第3電力線73を梯子状に接続する複数の第2中間接続線77とを備える(第1実施形態の中間接続線76に相当するものを第1中間接続線76とする)。
【0031】
複数の第1中間接続線76のそれぞれには、光電変換素子58の側から見て交互に極性が反対となるダイオード80が設けられており、複数の第2中間接続線77のそれぞれには、第2電力線72を中心として第1中間接続線76における複数のダイオード80の向きと対称になるように複数のダイオード81が設けられている。第1電力線71における互いに隣接する第1中間接続線76の間には、一つおきに複数の第1コンデンサ82が設けられており、第2電力線72における互いに隣接する第1中間接続線76の間には、複数の第1コンデンサ82と互い違いに複数の第2コンデンサ84が設けられている。第3電力線73における互いに隣接する第2中間接続線77の間には、一つおきに且つ第2電力線72を中心として第1電力線71における複数の第1コンデンサ82と配置が対称となるように複数の第3コンデンサ85が設けられている。そして、第1電力線71と第2電力線72のそれぞれの光電変換素子58と反対側の端部が接続された接続点86が、コンデンサ11Aの高電圧端11AHに接続され、光電変換素子58の低電圧端58Lが、コンデンサ11Aの低電圧端11ALに接続されている。第1電力線71、第2電力線72、および第3電力線73のそれぞれの光電変換素子58、59と反対側の端部が接続された接続点86が、コンデンサ11Aの高電圧端11AHに接続され、光電変換素子58の低電圧端58Lおよび光電変換素子59の低電圧端59Lがコンデンサ11Aの低電圧端11ALに接続されている。
【0032】
レーザドライバ52、53は、レーザ発振器54、55が光を発する状態と光を発しない状態とを交互に繰り返し、更に、レーザ発振器54が光を発する状態の場合にレーザ発振器55は光を発さず、レーザ発振器54が光を発しない状態の場合にレーザ発振器55が光を発するように内部のスイッチを制御する。
【0033】
図6は、第2の実施形態における発光部の動作について説明するための図である。図示するように、レーザドライバ52の出力信号とレーザドライバ53の出力信号は、一方がオンであれば他方がオフという関係で、互い違いにオンとオフを繰り返すように生成される。これによって、第1電力線71と第2電力線72とを含む部分回路と、第3電力線73と第2電力線72とを含む部分回路とで、第1実施形態の図3で説明した状態が互い違いに繰り返される。この結果、それぞれの部分回路で第1実施形態と同様に波及的にコンデンサが充電され、第1実施形態に比して迅速に、コンデンサ11Aに与える電圧を目標電圧まで昇圧することができる。
【0034】
以上説明した第2の実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができるのに加えて、昇圧に必要な時間を短縮することができる。
【0035】
(その他)
上記の説明では、電流遮断装置は直流を遮断するものとしたが、交流を遮断するものであってもよい。
【0036】
また、第1または第2の実施形態において、レーザドライバ52、レーザ発振器54、および光ファイバ56を含む光給電系は1系だけでなく冗長構成でもよい。また、第1の実施形態において光電変換素子58は直列接続または並列接続されていても良い。第2の実施形態におけるレーザドライバ53、レーザ発振器55、および光ファイバ57を含む光給電系、或いは光電変換素子59についても同様である。
【0037】
また、各実施形態において、レーザ発振器によって発せられる光が光学レンズなどを介して光電変換素子に入射するように構成されてもよい。
【0038】
また、コンデンサ11Aを用いて生成されるゼロ電流の状態で電流を遮断するための構成として機械接点式の断路器12を例示したが、これに代えて半導体スイッチング素子による電気的接点式の開閉器を備えてもよいし、それらの両者を組み合わせた構成を備えてもよい。
【0039】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、供給される電力を光に変換する発光部(52、53、54、55)と、発光部により発せられる光を電力に変換する光電変換部(58、59)と、光電変換部の出力電圧を昇圧する昇圧回路(70、70A、70B)と、昇圧回路の出力電圧により充電され、遮断対象となる電流を転流させるための電力を蓄える蓄電部(11A)と、蓄電部を用いて生成されるゼロ電流の状態で電流を遮断する電気的接点あるいは機械的接点(12)と、を持つことにより、より小規模な回路構成で、転流のための蓄電部を充電することができる。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
1 電流遮断装置
11 転流回路
11A コンデンサ
12 断路器
50、50A、50B 電力供給装置
52、53 レーザドライバ
52A AC-DCコンバータ
52B スイッチ
52C コントローラ
54、55 レーザ発振器
56、57 光ファイバ
58、59 光電変換素子
70、70A、70B 昇圧回路
71 第1電力線
72 第2電力線
73 第3電力線
76 中間接続線(第1の中間接続線)
77 第2の中間接続線
80 ダイオード
82 第1コンデンサ
84 第2コンデンサ
85 第3コンデンサ
86 接続点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7