IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝ライテック株式会社の特許一覧 ▶ ウシオ電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-殺菌システム 図1
  • 特許-殺菌システム 図2
  • 特許-殺菌システム 図3
  • 特許-殺菌システム 図4
  • 特許-殺菌システム 図5
  • 特許-殺菌システム 図6
  • 特許-殺菌システム 図7
  • 特許-殺菌システム 図8
  • 特許-殺菌システム 図9
  • 特許-殺菌システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】殺菌システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20231211BHJP
   A61L 2/24 20060101ALI20231211BHJP
   B61D 35/00 20060101ALI20231211BHJP
   B64D 11/02 20060101ALN20231211BHJP
   E03D 9/00 20060101ALN20231211BHJP
   E03D 11/00 20060101ALN20231211BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L2/24
B61D35/00
B64D11/02
E03D9/00 Z
E03D11/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020130813
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022027043
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】古賀 渚紗
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-65035(JP,A)
【文献】特表2017-528258(JP,A)
【文献】特表2019-536492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/10
A61L 2/24
B61D 35/00
B64D 11/02
E03D 9/00
E03D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域内において、所定の高さよりも低い位置に設けられる少なくとも紫外線を照射可能な第1の光源と;
前記所定領域内に存在する人体の少なくとも頭部が前記所定の高さよりも上方に存在することを検出する第1の検出手段と;
前記第1の検出手段が前記所定領域内に存在する人体の少なくとも頭部が前記所定の高さよりも上方に存在することを検出したときに前記第1の光源を点灯させる制御手段と;
を備えることを特徴とする殺菌システム。
【請求項2】
前記第1の光源は、前記所定領域内における設備の操作部または把持部に向けて紫外線を照射可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の殺菌システム。
【請求項3】
前記第1の光源は、水平方向または水平方向よりも下方に向けて紫外線を照射する
ことを特徴とする請求項1または2記載の殺菌システム。
【請求項4】
前記所定領域内において、所定の高さよりも高い位置に設けられる少なくとも紫外線を照射可能な第2の光源と;
をさらに備え、
前記第1の検出手段は、前記所定領域内の人体の在、不在を検出するとともに、
前記制御手段は、前記第1の検出手段が前記所定領域内において人体の不在を検出したときに前記第2の光源を点灯させる
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の殺菌システム。
【請求項5】
前記第2の光源は、前記所定領域の上方を区画する面に設けられている
ことを特徴とする請求項4記載の殺菌システム。
【請求項6】
前記所定領域内に存在する人体の少なくとも目の位置と視線方向を検出する第2の検出手段と;
をさらに備え、
前記制御手段は、前記第2の検出手段が検出する人体の視線方向から所定の角度θ1の範囲内に存在する前記第1の光源を点灯させない
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一記載の殺菌システム。
【請求項7】
前記所定領域内に存在する人体の少なくとも目の位置と視線方向を検出する第2の検出手段と;
をさらに備え、
前記制御手段は、前記第2の検出手段が検出する人体の視線方向から所定の角度θ2の範囲内より外側に存在し、かつ、人体の視線方向に延ばした半直線と前記第1の光源の照射方向から所定の角度θ3に延ばした半直線とが交わる方向に向けて紫外線を照射するとともに、水平方向よりも上方に向けて紫外線を照射する前記第1の光源を点灯させない
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一記載の殺菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、所定領域内の表面を紫外線により殺菌する殺菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機のトイレ内で、収納位置から展開位置に展開された紫外線アセンブリにより紫外線を照射するシステムが知られている。
【0003】
このシステムでは、トイレの取り囲まれた空間内の人の存在を検出し、人がいると判定した場合、紫外線アセンブリを展開せず、紫外線を照射するのを控える。そのため、人がいないと判定してから紫外線アセンブリを展開させて紫外線を照射することになり、所定の殺菌が完了するまでの時間が長くかかっている。
【0004】
航空機や鉄道車両のトイレなどの場合、不特定多数の人が利用し、その利用頻度も多いため、所定の殺菌が完了するまでの時間が長くかかると、利用者の利便性を損なうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-69028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、人体への影響が少なく、紫外線による殺菌を効率的に実施できる殺菌システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の殺菌システムは、第1の光源、第1の検出手段および制御手段を備える。第1の光源は、少なくとも紫外線を照射可能で、所定領域内において所定の高さよりも低い位置に設けられる。第1の検出手段は、所定領域内に存在する人体の少なくとも頭部が所定の高さよりも上方に存在することを検出する。制御手段は、第1の検出手段が所定領域内に存在する人体の少なくとも頭部が所定の高さよりも上方に存在することを検出したときに第1の光源を点灯させる。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の殺菌システムによれば、人体への影響が少なく、紫外線による殺菌を効率的に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態を示す殺菌システムを適用したトイレの立面図である。
図2】同上殺菌システムのブロック図である。
図3】同上殺菌システムの動作を示すフローチャートである。
図4】同上殺菌システムの利用者と視線方向の位置関係を示す平面図である。
図5】同上殺菌システムの第1の光源と利用者との位置関係を示すもので、(a)は利用者と視線方向の位置関係を示す平面図、(b)は鉛直方向における第1の光源の照射方向を示す側面図である。
図6】同上殺菌システムの第1の光源と利用者との位置関係を示すトイレの平面図である。
図7】同上トイレに利用者が在で起立時の紫外線の照射イメージを示すイメージ図である。
図8】同上トイレに利用者が不在時の紫外線の照射イメージを示すイメージ図である。
図9】同上紫外線の照射時間とウイルスの減少率との関係について実施形態と比較例とで比較したグラフである。
図10】同上紫外線の照射時間とウイルスの減少率との関係について水栓ボタンと床面とで比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0011】
図1に殺菌システム10を鉄道車両内のトイレ11に適用した例を示す。
【0012】
トイレ11内には、床面に洋式の便器12が設置され、この便器12の一側方の壁面に水洗ボタン13を含む各種ボタンおよび手すり14などの設備が設置され、便器12の前方の壁面に手洗い器15などの設備が設置されている。さらに、トイレ11には、便器12の他側方の壁面にトレイ11の図示しない出入口が設けられているとともにこの出入口を開閉する図示しない扉を備えている。この扉には、トイレ11内に臨んで、扉を開閉操作するためのドアノブ16などが設置されている。
【0013】
そして、殺菌システム10は、トイレ11内の空間である所定領域20内において、利用者が触れる箇所、壁面、床面などに紫外線を照射して殺菌する。
【0014】
殺菌システム10は、少なくとも紫外線を照射可能な第1の光源21および第2の光源22を備えている。これら光源21,22は、例えば紫外線LEDや紫外線ランプなどの紫外線光源と、この紫外線光源から放射される紫外線の配光を制御する反射板などの光学部品とを備え、紫外線光源からの殺菌作用を有する波長域の紫外線を所定の照射領域に照射可能とする。紫外線には、例えば人体への影響が少ない222nmを主波長とする紫外線、さらに好ましくは222nmを主波長とする紫外線であって230nm以上の波長がカットされた紫外線を用いることが望ましい。
【0015】
第1の光源21は、床面からの高さが所定の高さ(以下、所定の高さhという)よりも低い位置に設けられ、所定領域20内における設備であって利用者が触れる操作部23や把持部24に向けて紫外線を照射する。所定の高さhは、床面に起立している人体(例えば大人の人体)の少なくとも頭部の高さよりも低く、便器12に座った人体の少なくとも頭部よりも高い高さである。所定の高さhが例えば1.5mである場合、第1の光源21は1.5mよりも低い位置、例えば1m未満の高さに設けられる。操作部23には、水洗ボタン13およびこの水洗ボタン13付近の各種ボタンなどが含まれる。把持部24には、手すり14やドアノブ16などが含まれる。
【0016】
第1の光源21は、複数用いられている。第1の光源21は、水洗ボタン13などの操作部23および把持部24である手すり14に向けて紫外線を照射する第1の光源21a,21bと、把持部24であるドアノブ16などに向けて紫外線を照射する第1の光源21cと、便器12および床面に向けて紫外線を照射する第1の光源21dとを備えている。
【0017】
第1の光源21aは便器12の後方の壁面に設けられ、第1の光源21bは便器12の前方の壁面に設けられている。これら第1の光源21a,21bは、紫外線照射対象とする操作部23の少なくとも一部であって例えば水洗ボタン13と同じ高さまたは同じ高さ付近に設けられるとともに、紫外線の照射方向を水平方向に向けて設けられている。第1の光源21a,21bから照射する紫外線は、配光の広がりにより、水平方向よりも上方にも照射され、手すり14の上部側にも紫外線を照射可能とする。また、第1の光源21cは、紫外線照射対象とするドアノブ16などと同じ高さまたは同じ高さ付近で壁面に設けられている。また、第1の光源21のうちの少なくとも一部は、すなわち便器12および床面に向けて紫外線を照射する第1の光源21dは、水平方向または水平方向よりも下方に向けて紫外線を照射するように壁面に設けられている。
【0018】
第2の光源22は、所定の高さhよりも高い位置に設けられ、所定領域20内における設備である手洗い器15に向けて紫外線を照射する。第2の光源22は、手洗い器15の真上を含む上方位置で、所定領域20の上方を区画する面である天井面に設けられている。なお、第2の光源22は、所定領域20の壁面に設けられていてもよい。
【0019】
また、殺菌システム10は、所定領域20内に存在する人体の少なくとも頭部が所定の高さhよりも上方に存在することを検出する第1の検出手段31と、所定領域20内に存在する人体の少なくとも目の位置と視線方向を検出する第2の検出手段32とを備えている。これら第1の検出手段31および第2の検出手段32は、所定領域20内の人体の在、不在をも検出可能とする。
【0020】
第1の検出手段31は、例えば人感センサにて構成されている。第1の検出手段31は、便器12の後方の壁面に設けられている。第1の検出手段31は、所定の高さhまたは所定の高さh付近に設けられており、検出方向を水平方向に有している。そして、第1の検出手段31は、所定領域20内に存在して起立する人体を検出し、人体の少なくとも頭部が所定の高さhよりも上方に存在することを検出する。第1の検出手段31が設けられる高さは、床面から例えば1.5m程度の高さである。また、第1の検出手段31は所定の高さhよりも下方の領域において人体を感知しないように設定されている。また、第1の検出手段31の人体を検出しない設定は、例えば検出領域の一部をマスクするようにしてもよいし、指向性のある反射型の赤外線センサを用いることで実現することができる。なお、第1の検出手段31は、画像センサで構成されていてもよく、この場合にも、所定領域20内に存在する人体の少なくとも頭部が所定の高さhよりも上方に存在すること、および所定領域20内の人体の在、不在を検出でき、任意のアルゴリズムによって少なくとも人体の頭部が所定の高さhよりも高いか低いかを判別できる。
【0021】
第2の検出手段32は、例えば画像センサにて構成されている。第2の検出手段32は、所定領域20の上方を区画する面である天井面に設けられ、所定領域20内に存在する人体を上方から撮像する。そして、第2の検出手段32または殺菌システム10が有する画像処理部による画像処理にて、第2の検出手段32で撮像された画像から人体の目の位置と視線方向を検出する。
【0022】
次に、図2に殺菌システム10のブロック図を示す。殺菌システム10は、第1の検出手段31および第2の検出手段32による検出に基づいて第1の光源21および第2の光源22を制御する制御手段40を備えている。なお、制御手段40は、第2の検出手段32で撮像された画像に基づいて人体の目の位置と視線方向を検出する画像処理を行う画像処理部を兼用していてもよい。
【0023】
制御手段40は、第1の検出手段31が所定領域20内に存在する人体の少なくとも頭部が所定の高さhよりも上方に存在することを検出したときに第1の光源21を点灯させるように制御する。
【0024】
制御手段40は、第1の検出手段31が所定領域20内において人体の不在を検出したときに第2の光源22を点灯させるように制御する。
【0025】
制御手段40は、第1の検出手段31が所定領域20内の人体の在を検出するときに、第2の検出手段32が検出する人体の視線方向sから所定の角度θ1の範囲内に存在する第1の光源21を点灯させないように制御する(詳細は図4を参照して後述する)。
【0026】
制御手段40は、第1の検出手段31が所定領域20内の人体の在を検出するときに、第2の検出手段32が検出する人体の視線方向sから所定の角度θ2の範囲内より外側に存在し、水平面において人体の視線方向sに延ばした半直線L1と第1の光源21の照射方向zから所定の角度θ3に延ばした半直線L2とが交わる方向に向けて紫外線を照射し、かつ水平方向よりも上方に紫外線を照射する第1の光源21を点灯させないように制御する(詳細は図5を参照して後述する)。
【0027】
次に、殺菌システム10の殺菌処理動作について図3のフローチャートを参照して説明する。
【0028】
トイレ11を利用する利用者は、トイレ11の扉を開けてトイレ11内に入り、扉を閉じ、便器12を利用する。
【0029】
利用者がトイレ11に入ると、第1の検出手段31および第2の検出手段32の少なくとも一方が所定領域20内の人体の在を検出する(ステップS1のYES)。
【0030】
所定領域20内の人体の在を検出している状態で、利用者が便器12を利用するために座ると、第1の検出手段31が人体の少なくとも頭部が所定の高さhよりも上方に存在することを検出しないため(ステップS2のNO)、制御手段40は、全ての第1の光源21(21a~21d)および第2の光源22を消灯し、全消灯状態とする(ステップS3)。これにより、便器12に座った利用者の目の高さが低くなっても、利用者の目に紫外線が入るようなことはない。なお、利用者がトイレ11に入るときに第2の光源22が点灯している場合、人体の在を検出することで消灯するようにしてもよい。また、利用者がトイレ11に入るときに第1の光源21が点灯している場合、人体の在を検出したときは点灯状態を維持してもよいし、消灯してもよく、第1の検出手段31が人体の少なくとも頭部が所定の高さhよりも上方に存在することを検出しない、言い換えると人体の頭部が所定の高さhよりも下方に存在する場合に第1の光源21を消灯させることができればよい。
【0031】
次に、第1の検出手段31が人体の少なくとも頭部が所定の高さhよりも上方に存在することを検出した場合について説明する。
【0032】
所定領域20内の人体の在を検出している状態で、利用者が便器12に座った状態から起立すると、第1の検出手段31が人体の少なくとも頭部が所定の高さhよりも上方に存在することを検出するため(ステップS2のYES)、制御手段40は、人体の視線方向を確認し(ステップS4)、第1の光源21のうち、紫外線を照射しても利用者の目に入らない第1の光源21のみを点灯させ、照射した紫外線が利用者の目に入る可能性のある第1の光源21を点灯させない(ステップS5)。
【0033】
制御手段40は、第1の検出手段31が所定領域20内の人体の在を検出するときに、図4に示すように、水平面において、第2の検出手段32が検出する人体の視線方向sから所定の角度θ1の範囲a1内に存在する第1の光源21を特定する。所定の角度θ1は、例えば、人間が両目で見える視野60°や、片目で見える視野100°などである。
【0034】
例えば、利用者が便器12から起立し、手洗い器15に向う場合、水平面において、人体の視線方向sから所定の角度θ1の範囲a1内には、水洗ボタン13などの操作部23や手すり14に向けて紫外線を照射する第1の光源21bが存在している。この第1の光源21bは、所定の高さhよりも低い位置に設けられていても、この第1の光源21bから照射される紫外線が利用者の目に入る可能性がある。そのため、制御手段40は、第1の光源21bを点灯させない。
【0035】
さらに、第2の検出手段32が検出する人体の視線方向sから所定の角度θ1の範囲a1内に第1の光源21が存在しない場合でも、制御手段40は、紫外線が利用者の目に入る可能性がある第1の光源21については点灯させない。
【0036】
この場合、制御手段40は、第1の検出手段31が所定領域20内の人体の在を検出するときに、図5に示すように、水平面において、第2の検出手段32が検出する人体の視線方向sから所定の角度θ2の範囲a1内より外側の範囲a2に存在し、かつ、水平面において、人体の視線方向sに延ばした半直線L1と第1の光源21の照射方向zから所定の角度θ3に延ばした半直線L2とが交わる(交点O)方向に向けて紫外線を照射するとともに、鉛直方向から所定の角度θ4以上に向けて照射するものであって水平方向よりも上方に紫外線を照射する第1の光源21を特定する。所定の角度θ2は、例えば、人間が両目で見える視野60°や、片目で見える視野100°などである。所定の角度θ3は、照射方向zに対する紫外線の配光の広がり角度(紫外線が照射される角度)で、例えば30°などである。所定の角度θ4は、例えば、第1の光源21の照射方向zに対する紫外線の配光の広がり角度が30°の場合、90°-30°=60°である。
【0037】
例えば、図6に示すように、利用者が手洗い器15を利用する場合、水平面において、第2の検出手段32が検出する人体の視線方向sから所定の角度θ1の範囲a1内に第1の光源21は存在しないが、第2の検出手段32が検出する人体の視線方向sから所定の角度θ2の範囲a1内より外側の範囲a2に存在する第1の光源21bは、水平面において、人体の視線方向sに延ばした半直線L1と第1の光源21の照射方向zから所定の角度θ3に延ばした半直線L2とが交わる(交点O)方向に向けて紫外線を照射するとともに、水平方向よりも上方に紫外線を照射するため、この第1の光源21bから紫外線(UV)が照射された場合に、紫外線(UV)が利用者の目に入る可能性がある。そのため、制御手段40は、第1の光源21bを点灯させない。
【0038】
そして、図7にトイレ11に利用者が在で起立時の紫外線の照射イメージを示す。この場合、上述したように、利用者が便器12から起立し、手洗い器15を利用するとき、第1の光源21bは点灯させないが、第1の光源21a,21c,21dは点灯させて殺菌を開始する。第1の光源21aからの紫外線を水洗ボタン13などの操作部23や手すり14に照射して殺菌する。第1の光源21cからの紫外線をドアノブ16などに照射して殺菌する。第1の光源21dからの紫外線を便器12や床面に照射して殺菌する。
【0039】
また、利用者がトイレ11を出ると、第1の検出手段31および第2の検出手段32の少なくとも一方が所定領域20内の人体の不在を検出する(ステップS1のNO)。制御手段40は、所定領域20内において人体の不在を検出したときに、第2の光源22、および点灯させなかった第1の光源21(第1の光源21b)を含む、全ての第1の光源21および第2の光源22を点灯させ、全点灯状態とする(ステップS6)。
【0040】
なお、図3のステップS4、ステップS5は省略してもよく、第1の検出手段31が人体の少なくとも頭部が所定の高さhよりも上方に存在することを検出した場合、人体の視線方向にかかわらず第1の光源21を点灯するようにし、人体の不在を検出したときに第2の光源22をさらに点灯させるようにしてもよい。
【0041】
また、所定領域20内の人体の在を検出する場合には、点灯させる第1の光源21からの紫外線の照射強度を所定の強度よりも低くし、所定領域20内の人体の不在を検出した場合には、全ての第1の光源21および第2の光源22の紫外線の照射強度を所定の強度以上にし、殺菌効果を高めてもよい。
【0042】
図8にトイレ11に利用者が不在時の紫外線の照射イメージを示す。第1の光源21aと第1の光源21bからの紫外線が水洗ボタン13などの操作部23や手すり14に照射して殺菌する。第1の光源21bは、第1の光源21aからの紫外線を照射して殺菌する手すり14の側面側とは反対側から紫外線を手すり14に照射し、手すり14全体の殺菌を可能とするとともに、水洗ボタン13などの操作部23にも紫外線を照射して効率的に殺菌する。第1の光源21cからの紫外線をドアノブ16などに照射して殺菌する。第1の光源21dからの紫外線を便器12や床面に照射して殺菌する。第2の光源22からの紫外線を手洗い器15付近に照射して殺菌する。
【0043】
そして、図9には紫外線の照射時間とウイルスの減少率との関係について上述した実施形態と比較例とで比較したグラフを示す。比較は、水洗ボタン13におけるウイルスの減少率を比較した。
【0044】
図9の実線は上述した実施形態に示した照射方法であり、破線は利用者がトイレ11に在中は全消灯とし、トイレ11を出た後に全点灯とした比較例の照射方法を示している。
【0045】
実線で示す実施形態の照射方法では、利用者が便器12から起立し、第1の検出手段31が人体の少なくとも頭部が所定の高さhよりも上方に存在することを検出した時点から第1の光源21aを点灯し、水洗ボタン13への紫外線の照射を開始する。第1の光源21aの点灯から例えば60秒程度の後に利用者がトイレ11を出ると、第1の光源21bおよび第2の光源22も点灯し、第1の光源21a、第1の光源21b、第2の光源22からの紫外線を水洗ボタン13に照射し、ウイルスの減少率が早まる。利用者がトイレ11から出てから例えば60秒程度の後(第1の光源21aの点灯から例えば120秒程度の後)に99%のウイルスが減少した。
【0046】
一方、比較例の照射方法では、利用者がトイレ11に在中は第1の光源21aと第1の光源21bを消灯し、利用者がトイレ11を出ると、第1の光源21a、第1の光源21b、第2の光源22を点灯し、水洗ボタン13への紫外線の照射を開始する。利用者がトイレ11から出てから例えば82秒程度の後に99%のウイルスが減少した。
【0047】
そのため、利用者がトイレ11を出てから99%のウイルスを減少させるのに、実施形態では比較例に比べて22秒程度早く完了させることができた。
【0048】
また、制御手段40は、第1の光源21および第2の光源22を点灯させてから、紫外線の照射時間または照射線量が、設定された照射時間または照射線量に達したら、第1の光源21および第2の光源22を消灯してもよい。
【0049】
なお、トイレ11の利用頻度が高い場合、前の利用者がトイレ11を出てから第1の光源21および第2の光源22を点灯して殺菌処理している途中に、次の利用者がトイレ11に入ることがある。この場合、人体の検出により、第2の光源22の消灯とともに全ての第1の光源21を消灯してもよいし、第2の光源22の消灯とともに利用者の目に紫外線が入る可能性がある第2の光源22のみ消灯し、利用者の目に紫外線が入る可能性がない第1の光源21は点灯したままとし、殺菌を継続してもよい。
【0050】
また、トイレ11内の人体の在を検出し、子供など、起立しても、人体の頭部が所定の高さhよりも上方に存在することが検出できない背の高さの利用者の場合には、トイレ11を出るまで全ての第1の光源21および第2の光源22を点灯させることがなく、トイレ11から出たら全ての第1の光源21および第2の光源22を全点灯するようにする。
【0051】
以上のように、本実施形態の除菌システム10では、所定領域20内に人体が存在していても、例えば起立時などで、少なくとも人体の頭部が所定の高さhよりも高い位置にある場合には、所定の高さhよりも低い位置に設けられている第1の光源21を点灯させることにより、第1の光源21からの紫外線が目に入るような人体への影響が少なく、紫外線による殺菌を効率的に実施できる。
【0052】
そのため、鉄道車両のトイレ11など、多数の利用者による利用頻度が高い所定領域20の場合にも、所定の殺菌を完了させやすくできる。
【0053】
次に、図10を用いて、利用者が頻繁に触れやすい箇所の一例である水洗ボタン13と床面との殺菌時間について説明する。図10において、実線は水洗ボタン13のウイルスの減少率で、破線は床面のウイルスの減少率である。
【0054】
上述したように、少なくとも人体の頭部が所定の高さhよりも高い位置にある場合、第1の光源21aによって水洗ボタン13へ紫外線が照射され、第1の光源21dによって床面へ紫外線が照射されることで殺菌が開始される。60秒程度が経過した後に人体の不在を検出した場合、第1の光源21bおよび第2の光源22を点灯させる。60秒までの水洗ボタン13と床との傾きの違いは光源から被照射位置までの距離または放射強度に依存しており、利用者が頻繁に触れる箇所の殺菌をより早く行うように設定される。また、第2の光源22は天井面に設置されて所定領域20内の全体に紫外線を照射するように設置されており、床面に比べて利用者が頻繁に触れる箇所の方が上方に位置することから、第2の光源22の紫外線による殺菌の効果は水洗ボタン13の方が高い。さらに、水洗ボタン13は第1の光源21bによっても紫外線による殺菌が可能であることから、60秒経過した後に人の不在を検出して第1の光源21bおよび第2の光源22が点灯すると、床面よりも水洗ボタン13のウイルスの減少率の傾きの変化の方がより大きくなっており、人が頻繁に触れる箇所は短時間でウイルスを減少させ、それ以外の場所は利用間隔があく場合等に照射時間を長くすることで殺菌を行うことができる。
【0055】
このように、本実施形態では、利用者が頻繁に触れる箇所に対して所定の高さhよりも低い位置に設置した第1の光源21により水洗ボタン13などの操作部23や手すり14などの把持部24に紫外線を照射するため、所定領域20内に人が存在するときから安全に紫外線による殺菌を開始することができ、利用者が頻繁に触れやすい箇所を効果的に殺菌することができる。
【0056】
また、第1の光源21(第1の光源21d)は、水平方向または水平方向よりも下方に向けて紫外線を照射するため、少なくとも人体の頭部が所定の高さhよりも高い位置にある場合、第1の光源21(第1の光源21d)を点灯させることができ、人体への影響が少なく、紫外線の照射による殺菌を効率的に実施できる。
【0057】
また、所定領域20内において、利用者の不在時には、所定の高さhよりも高い位置に設けられた第2の光源22を点灯し、殺菌することができる。
【0058】
さらに、第2の光源22は、所定領域20の上方を区画する面である天井面に設けているため、上方から紫外線を照射して殺菌することができる。
【0059】
また、水平面において、人体の視線方向sから所定の角度θ1の範囲a1に第1の光源21が存在する場合、その第1の光源21が所定の高さhよりも低い位置に設けられていても、その第1の光源21からの紫外線が利用者の目に入る可能性があるため、その第1の光源21は点灯させないことにより、利用者の目に紫外線が入るのを確実に防止できる。
【0060】
また、水平面において、人体の視線方向sから所定の角度θ2の範囲a1よりも外側に存在し、かつ、水平面において、人体の視線方向sに延ばした半直線L1と、照射方向zから所定の角度に延ばした2本の半直線L2のうちいずれか、または両方が交わる照射方向zを向いているとともに、水平方向よりも上方に向けて紫外線を照射する第1の光源21が存在する場合、その第1の光源21が所定の高さhよりも低い位置に設けられていても、その第1の光源21からの紫外線が利用者の目に光が入る可能性があるため、その第1の光源21は点灯させないことにより、利用者の向きにかかわらず目に紫外線が入るのを確実に防止できる。
【0061】
また、殺菌システムは、鉄道車両のトイレ以外にも、バス、航空機および船舶などのトイレ、病院やオフィスのトイレ、あるいはトイレ以外にも、人体が利用したり出入りする所定領域内における殺菌に適用できる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
10 殺菌システム
20 所定領域
21 第1の光源
22 第2の光源
23 操作部
24 把持部
31 第1の検出手段
32 第2の検出手段
40 制御手段
a1 範囲
L1,L2 半直線
s 視線方向
z 照射方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10