(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】洗剤投入装置および洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/02 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
D06F39/02 Z
(21)【出願番号】P 2020132766
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 望
(72)【発明者】
【氏名】柴田 遼
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-509356(JP,A)
【文献】国際公開第2015/096407(WO,A1)
【文献】特開2008-099919(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0027001(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0089443(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第101328669(CN,A)
【文献】国際公開第2015/063005(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109457444(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0194810(US,A1)
【文献】特開2017-74287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F39/00-39/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯機に洗剤を投入する洗剤投入装置であって、
第1の洗剤が投入される第1投入部と、
第2の洗剤が投入される第2投入部と、
前記第1投入部および前記第2投入部に注水する水を取り入れる水道供給口と、
前記水道供給口から取り入れた水を前記第1投入部へ導く第1通水経路と、
前記洗濯機に投入する洗剤を排出する本体排出部とを備え、
前記第1投入部は、上面視において、長方形状に開口した第1投入口を有し、
前記第1投入口は、上面視において、互いに対向する第1側辺および第2側辺と、互いに対向する第3側辺および第4側辺とを有し、
前記第1通水経路は、流れる水を第1側辺経路、第2側辺経路、および中央経路に分岐させる経路分岐が設けられ、
前記第1側辺経路は、前記第1側辺に沿って設けられ、
前記第2側辺経路は、前記第2側辺に沿って設けられ、
前記中央経路は、前記第3側辺に沿って設けられ、
前記第1側辺経路および前記第2側辺経路の末端部は、前記第4側辺に沿って設けられた第4側辺経路に繋がっていること
を特徴とする洗剤投入装置。
【請求項2】
請求項1に記載の洗剤投入装置であって、
前記第1投入口は、前記第1側辺、前記第2側辺、および前記第3側辺に沿って立設された側辺リブを備え、
前記側辺リブは、前記第1投入口内へ水を流すスリットが設けられていること
を特徴とする洗剤投入装置。
【請求項3】
請求項2に記載の洗剤投入装置であって、
前記側辺リブは、各経路内に向かって突出した整流リブが設けられていること
を特徴とする洗剤投入装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の洗剤投入装置であって、
前記スリットは、複数設けられ、それぞれが開口する幅を不均一にされていること
を特徴とする洗剤投入装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の洗剤投入装置であって、
前記経路分岐から前記第2側辺までの距離は、前記経路分岐から前記第1側辺までの距離よりも長く、
前記中央経路の末端部は、前記第2側辺経路に合流すること
を特徴とする洗剤投入装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載の洗剤投入装置であって、
前記中央経路は、前記第1通水経路の断面に沿った経路幅方向において、前記第1側辺経路と前記第2側辺経路とに挟まれて、前記第1通水経路の中央に位置しており、前記経路幅方向での幅が、前記第1側辺経路および前記第2側辺経路より狭いこと
を特徴とする洗剤投入装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1つに記載の洗剤投入装置であって、
前記第1側辺経路および前記第2側辺経路の底面には、上方へ突出した突出部が設けられていること
を特徴とする洗剤投入装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1つに記載の洗剤投入装置であって、
前記水道供給口から取り入れた水を前記第2投入部へ導く第2通水経路を備え、
前記第2投入部は、上方が開口した第2投入口を有し、
前記第2投入口は、外周に沿って立設された乗越リブが設けられていること
を特徴とする洗剤投入装置。
【請求項9】
請求項8に記載の洗剤投入装置であって、
前記第2通水経路の底面は、末端に向かうに従って低くなるように傾斜していること
を特徴とする洗剤投入装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1つに記載の洗剤投入装置を備えた洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に洗剤を投入する洗剤投入装置、およびそれを備えた洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗剤を洗濯槽へ投入するための洗剤投入部を備えた洗濯機が知られている。このような洗剤投入部では、使用する際にユーザによって洗剤が投入され、注水によって洗剤が希釈されて水槽内に流れる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の洗濯機は、洗剤を収容する洗剤収容部と、洗剤収容部に注水を行う給水路とを備え、給水路の底面に小孔である注水口を設けて、注水口からの水が洗剤収容部の後方部および両側部の上部から注水されるようにしている。
【0005】
ところで、上述した洗濯機においては、給水経路ごとの水量に偏りが生じたり、給水経路の途中の小孔から過剰に注水して、末端まで水が届かなかったり、途中の小孔を通り過ぎて注水されなかったりして、洗剤収容部の全周から均一に給水されないことが懸念される。それによって、洗剤が流れきらずに残ってしまうという問題が発生する虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、洗剤収容部の全周に水を行き渡らせることができ、全体に充分な水を流すことで、局所的に溜まった洗剤が残ることを防げる洗剤投入装置および洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る洗剤投入装置は、洗濯機に洗剤を投入する洗剤投入装置であって、第1の洗剤が投入される第1投入部と、第2の洗剤が投入される第2投入部と、前記第1投入部および前記第2投入部に注水する水を取り入れる水道供給口と、前記水道供給口から取り入れた水を前記第1投入部へ導く第1通水経路と、前記洗濯機に投入する洗剤を排出する本体排出部とを備え、前記第1投入部は、上面視において、長方形状に開口した第1投入口を有し、前記第1投入口は、上面視において、互いに対向する第1側辺および第2側辺と、互いに対向する第3側辺および第4側辺とを有し、前記第1通水経路は、流れる水を第1側辺経路、第2側辺経路、および中央経路に分岐させる経路分岐が設けられ、前記第1側辺経路は、前記第1側辺に沿って設けられ、前記第2側辺経路は、前記第2側辺に沿って設けられ、前記中央経路は、前記第3側辺に沿って設けられ、前記第1側辺経路および前記第2側辺経路の末端部は、前記第4側辺に沿って設けられた第4側辺経路に繋がっていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る洗剤投入装置では、前記第1投入口は、前記第1側辺、前記第2側辺、および前記第3側辺に沿って立設された側辺リブを備え、前記側辺リブは、前記第1投入口内へ水を流すスリットが設けられている構成としてもよい。
【0009】
本発明に係る洗剤投入装置では、前記側辺リブは、各経路内に向かって突出した整流リブが設けられている構成としてもよい。
【0010】
本発明に係る洗剤投入装置では、前記スリットは、複数設けられ、それぞれが開口する幅を不均一にされている構成としてもよい。
【0011】
本発明に係る洗剤投入装置では、前記経路分岐から前記第2側辺までの距離は、前記経路分岐から前記第1側辺までの距離よりも長く、前記中央経路の末端部は、前記第2側辺経路に合流する構成としてもよい。
【0012】
本発明に係る洗剤投入装置では、前記中央経路は、前記第1通水経路の断面に沿った経路幅方向において、前記第1側辺経路と前記第2側辺経路とに挟まれて、前記第1通水経路の中央に位置しており、前記経路幅方向での幅が、前記第1側辺経路および前記第2側辺経路より狭い構成としてもよい。
【0013】
本発明に係る洗剤投入装置では、前記第1側辺経路および前記第2側辺経路の底面には、上方へ突出した突出部が設けられている構成としてもよい。
【0014】
本発明に係る洗剤投入装置では、前記水道供給口から取り入れた水を前記第2投入部へ導く第2通水経路を備え、前記第2投入部は、上方が開口した第2投入口を有し、前記第2投入口は、外周に沿って立設された乗越リブが設けられている構成としてもよい。
【0015】
本発明に係る洗剤投入装置では、前記第2通水経路の底面は、末端に向かうに従って低くなるように傾斜している構成としてもよい。
【0016】
本発明に係る洗濯機は、本発明に係る洗剤投入装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、第1通水経路を3つに分岐させることで、第1側辺経路および第2側辺経路を通る水を確保し、第4側辺も含めた第1投入口の全周に水を行き渡らせることができ、全体に充分な水を流すことで、局所的に溜まった洗剤が残ることを防げる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る洗剤投入装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】洗剤投入装置を使用する洗濯機の外観例を示す斜視図である。
【
図4】ケース本体から裏蓋を取り外した状態の洗剤投入装置の裏面図である。
【
図5】ケース本体において、手動投入用ケースを取り外した部分を示す上面図である。
【
図6】洗剤投入動作を説明するための洗剤投入装置の模式図である。
【
図8】
図7に示す手動投入用ケースの上面図である。
【
図10A】
図9の柔軟剤投入口側を拡大して示す拡大上面図である。
【
図10B】
図9の洗剤投入口側を拡大して示す拡大上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。まずは、本発明が適用される洗剤投入装置10の基本構成および洗剤投入時の動作について簡単に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る洗剤投入装置10の外観を示す斜視図であって、
図2は、本発明の実施の形態に係る洗濯機1の外観例を示す斜視図である。なお、ここでの洗剤とは、洗剤投入装置10から洗濯機1の洗濯槽へ投入される洗剤のことであり、粉末洗剤、液体洗剤、および柔軟剤などの衣類処理剤を指す。また、洗剤のうち、液体の洗剤および衣類処理剤を液剤と呼ぶことがある。また、
図2では、洗濯機1としてドラム型洗濯機を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明が適用される洗濯機は縦型洗濯機であってもよい。
【0021】
図1に示すように、洗剤投入装置10は、ケース本体100に、洗剤タンク110、柔軟剤タンク120、および手動投入用ケース130を装着可能となっている。洗剤タンク110および柔軟剤タンク120は、洗濯機1の洗濯槽へ自動投入される液剤を収容するためのタンクであり、洗剤タンク110には液体洗剤が収容され、柔軟剤タンク120には柔軟剤や漂白剤などが収容される。手動投入用ケース130は、ユーザが洗剤を手動投入するためのケースであり、洗剤投入部131および柔軟剤投入部132を有している。なお、手動投入用ケース130の詳細な構造については、後述する
図7を参照して説明する。
【0022】
洗剤投入装置10の後方には、弁機構140が取り付けられている。弁機構140は、洗剤投入装置10に対して供給される水道水を流入させるための水道供給口141を有している。また、弁機構140の内部には、複数の電磁弁が備えられており、これら複数の電磁弁の開閉を適宜制御することにより、洗剤投入装置10に対して異なる経路で水道水を供給できるようになっている。
【0023】
洗剤投入装置10は、
図2に示す洗濯機1に対し、正面側(ドア2の配置されている側)から見て上部左側付近において洗濯機1の内部に配置される。洗濯機1の上面には、蓋3および蓋4が配置されている。蓋3を開くと、洗剤投入装置10の洗剤投入部131および柔軟剤投入部132が露出し、ユーザが液剤を手動投入することができる。なお、手動投入用ケース130は、洗剤投入装置10から取り外せない構成となっている。また、蓋4を開くと、洗剤タンク110および柔軟剤タンク120が露出し、ユーザが洗剤タンク110または柔軟剤タンク120を洗濯機1に対して抜き差しできるようになる。これにより、ユーザが洗剤タンク110または柔軟剤タンク120を取り外して、液剤補充を行うことができる。
【0024】
また、洗剤投入装置10は、洗濯機1に装着された状態において、水道供給口141を洗濯機1の上面後部付近で露出させている。これにより、水道供給口141は、水道蛇口とホースで繋がれ、水道水の供給を受けることができるようになっている。
【0025】
図3は、
図1に示す洗剤投入装置10の裏面図であって、
図4は、ケース本体100から裏蓋101を取り外した状態の洗剤投入装置10の裏面図である。
【0026】
図3に示すように、洗剤投入装置10の裏面には、液剤交換室が設けられており、液剤交換室には裏蓋101が取り付けられるようになっている。
【0027】
図4に示すように、ケース本体100の裏面には、後述する第1給水経路P1の一部となる第1溝部102と、後述する第2給水経路P2の一部となる第2溝部103とが形成されている。なお、ケース本体100の裏面に形成されているのは溝部であるが、これらの溝部はケース本体100に裏蓋101を取り付けることによって、筒状の第1給水経路P1および第2給水経路P2として機能する。
【0028】
第1溝部102においては、給水経路の上流側端部に弁機構140から水道水が流入される流入口102aが設けられており、下流側端部に水道水(または水道水と液体洗剤との混合液)を流出させる流出口102bが設けられている。同様に、第2溝部103においては、給水経路の上流側端部に弁機構140から水道水が流入される流入口103aが設けられており、下流側端部に水道水(または水道水と柔軟剤との混合液)を流出させる流出口103bが設けられている。また、第1溝部102の途中には、洗剤タンク110と接続された逆止弁104が設けられており、第1給水経路P1から洗剤タンク110への逆流、または洗剤タンク110が未装着や不完全な装着の場合での第1給水経路P1からケース本体100の上面への漏れが防止される。第2溝部103の途中には、柔軟剤タンク120と接続された逆止弁105が設けられており、第2給水経路P2から柔軟剤タンク120への逆流、または柔軟剤タンク120が未装着や不完全な装着の場合での第2給水経路P2からケース本体100の上面への漏れが防止される。流出口102bおよび流出口103bから流出する水や液体洗剤との混合液は、いずれも手動投入用ケース130の洗剤投入部131に流れ込むようになっている。
【0029】
図5は、ケース本体100において、手動投入用ケース130を取り外した部分を示す上面図である。
【0030】
図3ないし
図5に示すように、ケース本体100の底面には、手動投入用ケース130の洗剤投入部131の直下に本体排出部106が設けられている。洗剤投入部131に流れ込んだ水は、本体排出部106を通して洗濯機1の洗濯槽へ供給されるようになっている。また、詳しくは後述するが、手動投入用ケース130の柔軟剤投入部132に流れ込んだ水も、本体排出部106を通して洗濯機1の洗濯槽へ供給されるようになっている。
【0031】
続いて、洗剤投入装置10における洗剤投入動作を、
図6を参照して説明する。
【0032】
図6は、洗剤投入動作を説明するための洗剤投入装置10の模式図である。
【0033】
図6に示すように、弁機構140は、水道供給口141からの給水経路が第3給水経路P3および第4給水経路P4に分離され、第3給水経路P3はケース本体100側の第1給水経路P1に接続され、第4給水経路P4は第2給水経路P2に接続されている。第3給水経路P3には、上流側から順に電磁弁142と負圧管144とが配置されている。第4給水経路P4には、上流側から順に電磁弁143と負圧管145とが配置されている。負圧管144および負圧管145は、ベンチュリ効果によって第5給水経路P5に負圧を発生させることができる。また、負圧管144および負圧管145は、第5給水経路P5で接続されており、第5給水経路P5には流量計146が配置されている。但し、
図6における弁機構140は、全ての給水経路および電磁弁を図示しているものではない。
【0034】
第1給水経路P1には、逆止弁104よりも下流側(具体的には、第1溝部102における流出口102bよりも下流側)に逆止弁107が設けられている。第2給水経路P2には、逆止弁105よりも下流側(具体的には、第2溝部103における流出口103bよりも下流側)に逆止弁108が設けられている。逆止弁107および108は、フロート弁が用いられるものであり、第1給水経路P1および第2給水経路P2の水流によって、逆止弁107および108がそれぞれ開閉される。第1給水経路P1および第2給水経路P2は、さらに下流側で合流し、上述したように手動投入用ケース130の洗剤投入部131に流れ込むようになっている。
【0035】
まずは、洗剤タンク110から規定量の液体洗剤を自動投入する場合の洗剤投入動作(液体洗剤の自動投入動作)を説明する。この洗剤投入動作における第1段階では、電磁弁142および143の両方を開きながら、水道供給口141からの給水を行う。第1給水経路P1および第2給水経路P2を流れる水道水が、フロート弁である逆止弁107および108をそれぞれ押し上げて開状態とする。この第1段階の動作により、水道水は、第1ないし第4給水経路P1~P4の全てを満たすと伴に、洗剤投入部131へ流出する。このとき、逆止弁104および105は共に閉状態となっており、洗剤タンク110および柔軟剤タンク120から第1給水経路P1および第2給水経路P2への液剤流入は生じない。また、第5給水経路P5における流れも殆ど発生しない。
【0036】
第1段階の動作によって第1ないし第4給水経路P1~P4の全てが水道水で満たされると、電磁弁142および143が一旦閉じられ、フロート弁である逆止弁107および108が下がって閉状態となる。
【0037】
続く第2段階として、電磁弁143のみを開いて水道供給口141からの給水を行う。これにより、第4給水経路P4から第2給水経路P2に向けての流れが生じ、負圧管145において負圧が発生する。この負圧により、第5給水経路P5では、負圧管144から負圧管145に向かっての水道水の流れが生じる。一方で、電磁弁142および逆止弁107は共に閉状態であるため、第1給水経路P1内も負圧となり、この負圧によって逆止弁104が開き、洗剤タンク110から第1給水経路P1へ液体洗剤が引き込まれる。
【0038】
なお、逆止弁104は、その内部の弁部材が図示しないバネによって洗剤タンク110側に付勢されることで閉状態に保持されるものであり、弁部材が第1給水経路P1からの負圧によって引き出された場合に開状態となる。また、第2給水経路P2に設けられる逆止弁105も、逆止弁104と同様の構成である。
【0039】
第2段階の動作では、第5給水経路P5を流れた水道水と同量の液体洗剤が、洗剤タンク110から第1給水経路P1へ引き込まれる。このため、第2段階では、第5給水経路P5を流れる水道水の流量が流量計146によって計測され、流量計146の計測値が規定値に到達すると、電磁弁143を閉じて第2段階の動作を終了する。なお、第2段階の終了時点で、洗剤タンク110から引き込まれた液体洗剤は第1給水経路P1内のみに留まっており、第5給水経路P5へは流入していない。
【0040】
続く第3段階では、再び電磁弁142および143の両方を開きながら、水道供給口141からの給水を行う。これにより、第1給水経路P1からは水道水と液体洗剤との混合液が洗剤投入部131へ送られ、第2給水経路P2からは水道水が洗剤投入部131へ送られる。第1ないし第4給水経路P1~P4内の全てが水道水に置き換わるのに十分な量の給水が行われると、電磁弁142および143が閉じられ、液体洗剤の自動投入動作が終了する。
【0041】
上述の液体洗剤の自動投入動作では、第2段階において、規定量の液体洗剤が洗剤タンク110から第1給水経路P1へ引き込まれるが、引き込まれた液体洗剤が第5給水経路P5に流入することのないように、引き込み可能な最大規定量が定められる。このため、最大規定量を超える洗剤を洗濯槽に投入したい場合には、上述の自動投入動作を複数回実施すればよい。
【0042】
柔軟剤タンク120から規定量の柔軟剤を自動投入する場合の洗剤投入動作(柔軟剤の自動投入動作)は、液体洗剤の自動投入動作と同様に行うことができる。但し、柔軟剤の自動投入動作では、第2段階において電磁弁142のみが開かれる。これにより、柔軟剤の自動投入動作では、第2給水経路P2内に負圧が発生し、逆止弁105が開いて、柔軟剤タンク120から第2給水経路P2へ柔軟剤が引き込まれる。
【0043】
洗剤の手動投入時には、ユーザにより所定量の洗剤(第1の洗剤に相当する液体洗剤もしくは粉末洗剤)が手動投入用ケース130の洗剤投入部131に投入される。このときの給水は、電磁弁142および143の両方を開いた状態で行われる。電磁弁142および143の両方を開いた状態での給水時には、逆止弁104および105は閉じたままであるため、洗剤投入部131には水道水のみが給水される。すなわち、洗剤投入部131に給水される水道水によって、洗剤投入部131内の洗剤を溶かしながら洗濯槽に投入することができる。
【0044】
最後に、柔軟剤の手動投入時には、ユーザにより所定量の柔軟剤(第2の洗剤に相当する)が手動投入用ケース130の柔軟剤投入部132に投入される。但し、このときの給水には、第1ないし第4給水経路P1~P4は使用されず、別系統の給水経路によって柔軟剤投入部132への給水が行われる。すなわち、弁機構140では、
図6において図示を省略した他の電磁弁および給水経路を用いて、水道供給口141からの給水を行う。本実施の形態では、
図4に示すように、ケース本体100の裏面に形成された第3溝部151によって、柔軟剤投入部132への給水が行われる。第3溝部151には、水道水が流入される流入口151aと、水道水を流出させる流出口151bとが設けられている。
【0045】
柔軟剤投入部132の底面には、サイフォン構造とされた排水部が形成されている。このため、柔軟剤投入部132への給水によって、柔軟剤投入部132内の水位が所定高さ以上になると、この排水部から水道水と柔軟剤との混合液が排水され、本体排出部106から洗濯槽に投入される。なお、柔軟剤投入部132に設けた排水部の構造については、後述する
図11を参照して説明する。
【0046】
図7は、手動投入用ケース130を示す斜視図であって、
図8は、
図7に示す手動投入用ケース130の上面図である。
【0047】
手動投入用ケース130は、手動容器134と手動蓋133とで構成されている。手動蓋133は、手動容器134の上面を覆い、洗剤投入部131(第1投入部の一例)と柔軟剤投入部132(第2投入部の一例)とに対応した開口が設けられている。つまり、手動容器134に手動蓋133を被せた状態であっても、洗剤投入部131と柔軟剤投入部132とには、洗剤や柔軟剤を投入することができる。
【0048】
手動容器134は、底面を下方へ窪ませて形成された洗剤投入部131と柔軟剤投入部132とが設けられている。洗剤投入部131には、下方へ開口した洗剤排出口131bが設けられており、柔軟剤投入部132には、下方へ開口した柔軟剤排出口132b(後述する
図9参照)が設けられている。また、柔軟剤投入部132には、柔軟剤排出口132bを覆う排水部蓋135が設けられている。
【0049】
図9は、手動容器134を示す上面図であって、
図10Aは、
図9の柔軟剤投入口132a側を拡大して示す拡大上面図であって、
図10Bは、
図9の洗剤投入口131a側を拡大して示す拡大上面図である。なお、
図9では、図面の見易さを考慮して、一部の符号を省略しているだけであって、
図10Aおよび
図10Bで符号を付した部分は、
図9の各部と対応している。
【0050】
図9ないし
図10Bは、
図8に示す手動投入用ケース130から手動蓋133と排水部蓋135とを取り外した状態を示している。手動容器134の上面には、洗剤投入部131に応じて開口させた洗剤投入口131a(第1投入口の一例)と、柔軟剤投入部132に応じて開口させた柔軟剤投入口132a(第2投入口の一例)とが設けられている。また、手動容器134には、上述した逆止弁107または逆止弁108を経た水道水を、洗剤投入部131へ引き込むための洗剤通水口136aと、第3溝部151を経た水道水を、柔軟剤投入部132へ引き込むための柔軟剤通水口137aとが設けられている。本実施の形態では、洗剤通水口136aおよび柔軟剤通水口137aに繋がる配管が設けられており、この配管から水を引き上げて、手動容器134の上に水を送り込む構成とされている。なお、これに限定されず、洗剤通水口136aおよび柔軟剤通水口137aに対応する箇所の上方から水を供給する構成としてもよい。
【0051】
手動容器134には、洗剤通水口136aおよび洗剤投入口131aの周囲を囲むように立設された洗剤経路壁136bが設けられている。洗剤経路壁136bによって囲まれた領域には、洗剤通水口136aから洗剤投入口131aへ水を導く洗剤通水経路TP1(第1通水経路の一例)が形成されている。また、手動容器134には、洗剤経路壁136bと同様にして、柔軟剤通水口137aおよび柔軟剤投入口132aの周囲を囲むように立設された柔軟剤経路壁137bが設けられている。柔軟剤経路壁137bによって囲まれた領域には、柔軟剤通水口137aから柔軟剤投入口132aへ水を導く柔軟剤通水経路TP2(第2通水経路の一例)が形成されている。本実施の形態において、洗剤経路壁136bと柔軟剤経路壁137bとは、一部が繋がっており、共通に用いられている部分があるが、洗剤通水経路TP1と柔軟剤通水経路TP2とが隔てられていればよい。
【0052】
洗剤通水経路TP1には、流れる水を分岐させる経路分岐136cが設けられている。具体的に、洗剤通水経路TP1には、第1分岐リブ136dおよび第2分岐リブ136eが設けられている。第1分岐リブ136dおよび第2分岐リブ136eは、経路分岐136cを起点にして、水が流れる方向の下流側に延びている。洗剤通水経路TP1は、第1分岐リブ136dおよび第2分岐リブ136eによって隔てられることで、経路分岐136cより下流側が、第1側辺経路TP11、第2側辺経路TP12、および中央経路TP13の3つに分岐している。また、経路分岐136cは、洗剤通水口136aから洗剤投入口131aまでの間に設けられており、洗剤投入口131aに到達する前に、水を第1側辺経路TP11、第2側辺経路TP12、および中央経路TP13に分配している。
【0053】
中央経路TP13は、洗剤通水経路TP1の断面に沿った経路幅方向(
図10Aの経路分岐136c近傍では、左右方向)において、第1側辺経路TP11と第2側辺経路TP12とに挟まれた洗剤通水経路TP1の中央に位置し、経路幅方向での幅が、第1側辺経路TP11および第2側辺経路TP12より狭い。具体的に、第1側辺経路TP11の幅(第1経路幅TW1)と第2側辺経路TP12の幅(第2経路幅TW2)とは略同じであり、中央経路TP13の幅(第3経路幅TW3)が、他よりも狭くなっている。
【0054】
洗剤通水経路TP1内において、中央付近では流量が多く、壁面(端部)付近では流量が少なくなる。そのため、均等な幅で3等分した場合、中央の流量が多くなり、均等な分量に分割することができない。そこで、中央経路TP13の幅を狭くして、流量を調整することで、3つの経路での流量を均等にすることができる。
【0055】
洗剤投入口131aは、上面視において略長方形状とされており、角に丸みをつけている。以下では説明のため、洗剤投入口131aのうち、互いに対向する長辺を第1側辺131cおよび第2側辺131dと呼び、互いに対向する短辺を第3側辺131eおよび第4側辺131fと呼ぶ。第1側辺131c(
図10Bでは、上辺)は、第2側辺131d(
図10Bでは、下辺)よりも経路分岐136c(
図10Bでは、右上方)の近くに位置している。また、第3側辺131e(
図10Bでは、右辺)は、第4側辺131f(
図10Bでは、左辺)よりも経路分岐136cの近くに位置している。上述した洗剤排出口131bは、洗剤投入部131において、中央よりも第4側辺131f寄りに位置している。
【0056】
洗剤経路壁136bは、上面視において、洗剤投入口131aから少し離れた位置を囲むように形成されており、洗剤経路壁136bと洗剤投入口131aとの間は、洗剤投入口131aの外周に沿って水を流す洗剤通水経路TP1の底面とされている。具体的に、第1側辺経路TP11は、第1側辺131cに沿って設けられており、第1分岐リブ136dの末端は、第1側辺131cと第3側辺131eとの間の角に繋がっている。第2分岐リブ136eは、第3側辺131eに沿って延び、末端が第2側辺131dと第3側辺131eとの間の角近傍に位置している。つまり、第3側辺131eの周囲では、洗剤投入口131a(第3側辺131e)から洗剤経路壁136bまでの領域を分けるように第2分岐リブ136eが延びており、第3側辺131eから第2分岐リブ136eまでの領域が中央経路TP13とされ、第2分岐リブ136eから洗剤経路壁136bまでの領域が第2側辺経路TP12とされている。中央経路TP13の末端部は、第2側辺経路TP12に合流しており、第2側辺131dと第3側辺131eとの間の角近傍には、中央経路TP13を第2側辺経路TP12に合流させる経路結合136kが設けられている。さらに、第1側辺経路TP11および第2側辺経路TP12の末端部は、第4側辺131fに沿って設けられた第4側辺経路TP14に繋がっている。
【0057】
上述したように、洗剤通水経路TP1を3つに分岐させることで、第1側辺経路TP11および第2側辺経路TP12を通る水を確保し、第4側辺131fも含めた洗剤投入口131aの全周に水を行き渡らせることができ、全体に充分な水を流すことで、局所的に溜まった洗剤が残ることを防げる。また、経路分岐136cからの距離が遠いために、水流・流速が不足しがちな第2側辺経路TP12に、中央経路TP13において余った水を供給することで、第2側辺経路TP12から確実に給水できるようになる。
【0058】
洗剤投入口131aの外周では、第1側辺131c、第2側辺131d、および第3側辺131eに沿って側辺リブ136fが立設されている。側辺リブ136fには、部分的に途切れさせることで形成されたスリット136hが設けられており、スリット136hを介して、洗剤投入口131a内へ水が流れ落ちる。このように、側辺リブ136fを設けることで、各経路での流量を調整しつつ、スリット136hを介して、第1投入部へ水を流すことができる。
【0059】
スリット136hは、適宜間隔を設けて、複数形成されており、それぞれが開口する幅を不均一にされている。すなわち、広く開口したスリット136hでは、流れ落ちる水量が多く、狭く開口したスリット136hでは、流れ落ちる水量が少なくなる。スリット136hの開口の幅は、設ける位置や、他との間隔に応じて適宜調整すればよく、例えば、洗剤投入口131aの角など、供給量を多くしたい箇所を広くしたり、広くした箇所の隣を狭くしたりしてもよい。このように、スリット136hの幅を個別に調整することで、設けた箇所での流量の差を解消できる。それによって、確実に給水する箇所の水量を増やしたり、流出量を減らして、より下流に水を送ったりできる。
【0060】
側辺リブ136fには、各経路内に向かって突出した整流リブ136gが設けられている。整流リブ136gによって、水流を適度にせき止めることで、スリット136hから流れ落ちる水量を調整することができる。
【0061】
第1側辺経路TP11および第2側辺経路TP12の底面であって、第1側辺131cおよび第2側辺131dに沿う部分には、上方へ突出した突出部136jが設けられている。本実施の形態において、突出部136jは、第1側辺経路TP11および第2側辺経路TP12の底面よりも少し高い程度とされており、下流に向かうに従って洗剤経路壁136bから洗剤投入口131aに近づくように傾斜した方向へ延びている。流速が速い場合には、経路が延びる方向に沿って水が通り過ぎ、望んだ箇所から水が流れ落ちないことがあった。本実施の形態では、底面の上を流れる水に突出部136jが干渉することで、水が流れる方向を変えて、突出部136j近傍から洗剤投入口131aへ流れ落ちるようにできる。
【0062】
柔軟剤投入口132aは、上面視において略長方形状とされており、角に丸みをつけている。以下では説明のため、柔軟剤投入口132aのうち、互いに対向する長辺を柔軟剤第1側辺132c(
図10Aでは、上辺)および柔軟剤第2側辺132d(
図10Aでは、下辺)と呼び、互いに対向する短辺を柔軟剤第3側辺132e(
図10Aでは、右辺)および柔軟剤第4側辺132f(
図10Aでは、左辺)と呼ぶ。柔軟剤通水口137a(
図10Aでは、右上方)は、柔軟剤第1側辺132cと柔軟剤第3側辺132eとの間の角近傍に位置している。上述した柔軟剤排出口132bは、柔軟剤投入部132において、中央よりも柔軟剤第4側辺132f寄りに位置している。柔軟剤排出口132bの周囲には、上方へ立設された導通壁132gが設けられている。
【0063】
柔軟剤経路壁137bは、上面視において、柔軟剤投入口132aから少し離れた位置を囲むように形成されており、柔軟剤経路壁137bと柔軟剤投入口132aとの間は、柔軟剤投入口132aの外周に沿って水を流す柔軟剤通水経路TP2の底面とされている。
【0064】
柔軟剤投入口132aの外周では、柔軟剤第1側辺132c、柔軟剤第2側辺132d、および柔軟剤第3側辺132eに沿って乗越リブ137cが立設されている。乗越リブ137cは、柔軟剤通水経路TP2の底面より少し高い程度とされている。乗越リブ137cによって、柔軟剤投入口132aに流れ落ちる水量を調整することで、柔軟剤投入口132aの全周へ水を行き渡らせることができる。また、乗越リブ137cの高さを調整することで、水量が多いときには、溢水させて乗越リブ137cの上から給水することができる。乗越リブ137cは、柔軟剤投入口132aの外周を完全に囲んでおらず、例えば、角部や各経路の下流部など、水量を多くしたい箇所では、途切れていてもよい。
【0065】
図11は、
図10Aの矢符A-Aでの断面を示す要部断面図である。なお、
図11では、排水部の構造を示すため、手動容器134だけでなく、柔軟剤排出口132bを覆う排水部蓋135も併せて示している。
【0066】
柔軟剤通水経路TP2の底面は、末端に向かうに従って低くなるように傾斜している。例えば、
図11に示す柔軟剤第1側辺132cに沿う部分では、柔軟剤第3側辺132e側の方が高く、柔軟剤第4側辺132f側の方が低くなった傾斜部137dが設けられている。このように、柔軟剤通水経路TP2に傾斜を設けることで、水が末端に向かって流れやすくなり、経路内の残水を防止できる。
図11では、柔軟剤第1側辺132cの周囲に設けた傾斜部137dを示したが、これに限定されず、傾斜部137dは、柔軟剤第2側辺132d、柔軟剤第3側辺132e、および柔軟剤第4側辺132fの周囲に設けてもよい。
【0067】
排水部蓋135は、下面が開口した略円筒状の吸上部135aを有し、吸上部135aは、導通壁132gの上方と周囲を覆っている。つまり、吸上部135aの内側に導通壁132gが収まっており、導通壁132gの外壁と吸上部135aの内壁との間(以下では、吸上経路と呼ぶ)に、隙間を設けてサイフォン構造を形成している。吸上部135aの下端には、一部を切り欠いて形成した吸込口135bが設けられている。
【0068】
柔軟剤投入部132の排水部では、水および柔軟剤が吸込口135bを介して、吸上経路に入り込む。吸上経路では、サイフォン作用によって、導通壁132gの上端まで水および柔軟剤が引き上げられ、柔軟剤排出口132bを通って、底面に設けられた吐出部132hから外部に放出される。
【0069】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 洗濯機
10 洗剤投入装置
100 ケース本体
106 本体排出部
110 洗剤タンク
120 柔軟剤タンク
130 手動投入用ケース
131 洗剤投入部(第1投入部の一例)
131a 洗剤投入口(第1投入口の一例)
131b 洗剤排出口
131c 第1側辺
131d 第2側辺
131e 第3側辺
131f 第4側辺
136f 側辺リブ
136g 整流リブ
136h スリット
137c 乗越リブ
137d 傾斜部
132 柔軟剤投入部(第2投入部の一例)
140 弁機構
141 水道供給口
TP1 洗剤通水経路(第1通水経路の一例)
TP11 第1側辺経路
TP12 第2側辺経路
TP13 中央経路
TP14 第4側辺経路