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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】電子回路及び電力変換器
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/00 20070101AFI20231211BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20231211BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20231211BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H02M1/00 F
H02M7/48 M
H03K17/16 M
H03K17/687 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020149280
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043811
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】池田 健太郎
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-290749(JP,A)
【文献】特開2008-067140(JP,A)
【文献】特開2019-097000(JP,A)
【文献】特開平01-160375(JP,A)
【文献】特開昭62-292081(JP,A)
【文献】特開2008-199821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00
H02M 7/48
H03K 17/16
H03K 17/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子のスイッチングにより発生するサージ電圧を検知し、第1電流を示す第1信号を生成する第1サージ電圧検知回路と、
前記第1信号の入力に応じて、電流を増幅することにより、前記第1電流より大きい第2電流を生成し、前記第2電流を前記スイッチング素子の制御端子に出力する電流生成回路と、
前記電流生成回路による前記第1電流の増幅利得を決定する電流増幅制御回路と
を備えた電子回路。
【請求項2】
前記第1サージ電圧検知回路は、前記サージ電圧又は前記サージ電圧の発生に応じた電流に基づいて、前記第1信号を生成する、
請求項1に記載の電子回路。
【請求項3】
前記電流生成回路は、前記第1電流を増幅することにより前記第2電流を生成する
請求項1又は2に記載の電子回路。
【請求項4】
前記スイッチング素子を流れる第3電流を検知する電流検知回路を備え、
前記電流増幅制御回路は、前記第3電流に基づいて、前記第1電流の増幅利得を決定する
請求項1~3のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項5】
前記電流増幅制御回路は、前記第3電流の値と前記増幅利得とを対応づけた情報に基づき、前記第1電流の増幅利得を決定する
請求項に記載の電子回路。
【請求項6】
前記電流増幅制御回路は、前記スイッチング素子に接続される負荷の負荷電流の値に基づいて、前記第1電流の増幅利得を決定する
請求項1~5のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項7】
前記サージ電圧を検知する第2サージ電圧検知回路を備え、
前記電流増幅制御回路は、検知された前記サージ電圧に基づいて、前記第1電流の増幅利得を決定する
請求項1~5のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項8】
前記電流増幅制御回路は、前記サージ電圧を閾値以上か否かに基づき、前記第1電流の増幅利得を決定する
請求項に記載の電子回路。
【請求項9】
前記電流増幅制御回路は、前記サージ電圧の値と前記増幅利得とを対応づけた情報に基づき、前記第1電流の増幅利得を決定する
請求項に記載の電子回路。
【請求項10】
前記第1サージ電圧検知回路は、
前記第1サージ電圧検知回路に入力される電流を流す第1ダイオードと、
前記第1ダイオードと前記電流生成回路との間に結合されたコンデンサと
前記第1ダイオードのカソードにバイアス電圧を供給するバイアス回路
を備えた請求項3~のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項11】
前記電流生成回路はカレントミラー回路であり、
前記カレントミラー回路は、
前記コンデンサに接続された第1トランジスタと、
前記第1トランジスタの制御端子に各々の制御端子が接続された複数の第2トランジスタを含む、
請求項10に記載の電子回路。
【請求項12】
前記複数の第2トランジスタに直列に接続された複数のスイッチ
を備えた請求項11に記載の電子回路。
【請求項13】
前記電流増幅制御回路は、前記複数のスイッチのオン又はオフを切り替えることにより前記第1電流の増幅利得を決定する
請求項12に記載の電子回路。
【請求項14】
前記コンデンサと前記第1トランジスタの制御端子とに接続された一端と、前記スイッチング素子の制御端子に接続された他端とを有する抵抗素子
を備えた請求項11~13のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項15】
前記第1トランジスタと並列に接続された第2ダイオードを備え、前記第2ダイオードのカソードは、前記コンデンサに接続された
請求項11~14のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項16】
前記第1トランジスタの制御端子及び前記複数の第2トランジスタの制御端子にバイアス電流を供給する電流バイアス回路
を備えた請求項11~15のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項17】
第1スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子のスイッチングにより発生するサージ電圧を検知し、第1電流を示す第1信号を生成する第1サージ電圧検知回路と、
前記第1信号の入力に応じて、電流を増幅することにより、前記第1電流より大きい第2電流を生成し、前記第2電流を前記第1スイッチング素子の制御端子に出力する第1電流生成回路と、
前記第1電流生成回路による前記第1電流の増幅利得を決定する電流増幅制御回路と、
前記第1スイッチング素子に直列に接続され、前記第1スイッチング素子とタイミングをずらしてオンまたはオフされる第2スイッチング素子と、
前記第2スイッチング素子のスイッチングにより発生するサージ電圧を検知し、第3電流を示す第2信号を生成する第2サージ電圧検知回路と、
前記第2信号の入力に応じて、前記第3電流より大きい第4電流を生成し、前記第4電流を前記第2スイッチング素子の制御端子に出力する第2電流生成回路と、
を備えた電力変換器。
【請求項18】
前記第1サージ電圧検知回路に入力される電流を流す第1ダイオードと、
前記第1ダイオードと前記第1電流生成回路との間に結合された第1コンデンサと、
前記第1ダイオードのカソードに第1バイアス電圧を供給する第1バイアス回路と、
前記第2サージ電圧検知回路に入力される電流を流す第2ダイオードと、
前記第2ダイオードと前記第2サージ電圧検知回路との間に結合された第2コンデンサと、
前記第2ダイオードのカソードに第2バイアス電圧を供給する第2バイアス回路と、を備え、
前記第1バイアス回路は、前記第1スイッチング素子の第1端子に接続された電源の電圧に基づき、前記第1バイアス電圧を供給し、
前記第2バイアス回路は、前記電源の電圧に基づき、前記第2バイアス電圧を供給する
請求項17に記載の電力変換器。
【請求項19】
複数対のスイッチング素子と、
前記複数対のスイッチング素子に対応するサージ電圧制御回路と、を備え、
前記サージ電圧制御回路は、
前記サージ電圧制御回路に対応する前記スイッチング素子のスイッチングにより発生するサージ電圧を検知し、第1電流を示す第1信号を生成するサージ電圧検知回路と、
前記第1信号の入力に応じて、電流を増幅することにより、前記第1電流より大きい第2電流を生成し、前記第2電流を前記スイッチング素子の制御端子に出力する電流生成回路と、
前記電流生成回路による前記第1電流の増幅利得を決定する電流増幅制御回路と、
を含み、
少なくとも一部の期間同時にオンする前記スイッチング素子の対を順次切り替えることにより直流電圧から交流電流を生成する、電力変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電子回路及び電力変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタのスイッチングに伴って発生するサージ電圧を抑制するサージ電圧制御回路が知られている。一例として、サージ電圧の発生箇所に電気的に結合するコンデンサを配置し、コンデンサの変位電流をトランジスタの制御端子に入力することで、サージ電圧を抑制する構成が知られている。
【0003】
しかしながら、コンデンサの変位電流の一部が、ゲートドライバーに吸収され、この結果、制御端子に入力される電流が減少することで、サージ電圧抑制の効果が減じられる問題があった。
【0004】
この問題に対して、コンデンサの容量を大きくする方法があるが、高耐圧なコンデンサはコストが高い。また、コンデンサの容量を大きくすることによりトランジスタに供給する変位電流を増やすと、変位電流の経路上の寄生インダクタンスの影響により、トランジスタに発振が生じる可能性がある。このことは、トランジスタの故障の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-067140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態は、サージ電圧を効果的に抑制する電子回路及び電力変換器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る電子回路は、スイッチング素子のスイッチングにより発生するサージ電圧を検知し、第1電流を示す第1信号を生成するサージ電圧検知回路と、前記第1信号の入力に応じて、電流を増幅することにより、前記第1電流より大きい第2電流を生成し、前記第2電流を前記スイッチング素子の制御端子に出力する電流生成回路と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る電子回路であるサージ電圧制御回路の回路図。
図2】サージ電圧を説明する図。
図3】サージ発生時にサージ電圧検知回路に入力される電流を示す図。
図4】サージ電圧検知回路の構成例を示す図。
図5】サージ発生時にサージ電圧検知回路が検知するサージ電圧を示す図。
図6】電流生成回路の一例を示す図。
図7】電流生成回路の他の例を示す図。
図8】本実施形態の電子回路の効果をシミュレーションで確認した結果を示す図。
図9図7に示したサージ電圧制御回路の変形例1を示す。
図10図7に示したサージ電圧制御回路の変形例2を示す。
図11図7に示したサージ電圧制御回路の変形例3を示す。
図12】第2の実施形態に係る電子回路であるサージ電圧制御回路の回路図。
図13】電流増幅制御回路の具体例を示す図。
図14図12のサージ電圧制御回路に第2サージ電圧検知回路とサージ電圧判定回路を追加した構成例を示す。
図15】ルックアップテーブルを備えたサージ電圧制御回路の構成例を示す図。
図16】ルックアップテーブルを備えたサージ電圧制御回路の他の構成例を示す図。
図17】トランジスタQ1のエミッタ側に電流検知回路を設けた例を示す図。
図18】負荷と電流検知回路を追加したサージ電圧制御回路の例を示す図。
図19】第3の実施形態に係る電力変換器のブロック図。
図20】バイアス回路の構成例を示す図。
図21】第3の実施形態に係る電力変換器のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下では、電子回路及び電力変換器の主要な構成部分を中心に説明するが、電子回路及び電力変換器には、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電子回路であるサージ電圧制御回路1の回路図である。図1のサージ電圧制御回路1は、スイッチング素子であるトランジスタQ1のスイッチングにより生じるサージ電圧を抑制する。トランジスタQ1は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタなどのスイッチング素子であり、スイッチング素子の具体的な種類は問わない。トランジスタQ1は、制御端子(あるいは制御電極)に印加される電圧に応じて、第1端子(あるいは第1電極)と第2端子(あるいは第2電極)との間に流れる電流を制御する。
【0011】
トランジスタQ1がIGBTの場合、制御端子はゲート、第1端子はコレクタ、第2端子はエミッタである。トランジスタQ1がN型MOSFETの場合、制御端子はゲート、第1端子はドレイン、第2端子はソースである。図1では、トランジスタQ1がIGBTである例が示される。
【0012】
図1のサージ電圧制御回路1は、サージ電圧検知回路2と、電流生成回路3とを備えている。トランジスタQ1のコレクタに、寄生インダクタンスL1、負荷(抵抗性、誘導性、容量性など)R1及び直流電源5が直列に接続されている。トランジスタQ1のゲートに、制御信号生成器4が接続されている。制御信号生成器4は、トランジスタQ1をスイッチングするタイミングに合わせて、制御信号を生成し、生成した制御信号をトランジスタQ1のゲートに供給する。例えば、制御信号がハイレベルになると、トランジスタQ1がオンし、制御信号がローレベルになると、トランジスタQ1がオフする。制御信号の論理と、トランジスタQ1のオン/オフの関係は任意でよい。
【0013】
サージ電圧検知回路2は、トランジスタQ1のスイッチングにより生じるサージ電圧を検知する。具体的には、サージ電圧検知回路2は、サージ発生時のトランジスタQ1の第1端子(コレクタ)の電圧を検知する。
【0014】
図2は、サージ電圧を説明する図である。トランジスタQ1のコレクタ電圧が直流電源5の電圧VDD1を超えた場合にサージが発生する。電圧VDD1を超えたときの電圧がサージ電圧Vsに相当する。サージ電圧Vsと電圧VDD1の差分はオーバーシュート電圧ΔVに相当する。
【0015】
サージ電圧検知回路2は、サージ電圧の検知に応じて、第1電流である電流I1を示す第1信号を生成する。サージ電圧検知回路2は、電流I1を示す第1信号を電流生成回路3に提供する。
【0016】
一例として、サージ電圧検知回路2は、サージ電圧の検知に応じて(サージ発生時に)、サージ電圧検知回路2に入力される電流に基づき、電流I1を示す第1信号を生成する。
【0017】
図3は、サージ発生時にサージ電圧検知回路2に入力される電流I0を示す。電流I0は、サージの要因となる電流のうちの少なくとも一部が、サージ電圧検知回路2に入力されたものである。この場合、電流I1は、一例として、サージ電圧検知回路2に入力される電流I0と同じである。但し、電流I1は、電流I0に応じた電流であれば、その他の電流でもよい。
【0018】
サージ電圧検知回路2は、入力される電流I0に基づき、第1信号を生成する。第1信号は、電流I0の波形でもよいし、電流I0の値をデジタルに変換したデジタル信号でもよい。後者の場合、サージ電圧検知回路2はAD変換回路を備えてもよい。
【0019】
図4は、サージ電圧検知回路2の構成例を示す。サージ電圧検知回路2は、ダイオードD1と、コンデンサC1と、バイアス回路7とを備えている。
【0020】
ダイオードD1は、トランジスタQ1のスイッチングにより生じるサージの要因となる電流の少なくとも一部を流す。コンデンサC1は、ダイオードD1のカソードとトランジスタQ1のゲートとの間に接続されている。より具体的には、ダイオードD1のアノードはトランジスタQ1のコレクタに接続され、カソードはコンデンサC1の一端に接続されている。コンデンサC1の他端は、電流生成回路3の入力端子に接続されている。バイアス回路7は、ダイオードD1のカソードとコンデンサC1との間のノードに接続され、ダイオードD1のカソードにバイアス電圧を提供する。バイアス回路7は、一例として、当該ノードと基準電圧との間に直列接続される直流電圧源及び抵抗素子を有する。バイアス回路7の具体的な回路構成はインダクタを含む構成など任意でよい。サージ電圧がバイアス電圧より大きくなるとダイオードD1に電流I0が流れ、電流I0がコンデンサC1を介して電流I1として電流生成回路3に提供される。より詳細にはコンデンサC1の変位電流が電流I1として電流生成回路3に提供される。この場合、電流I1が、第1電流を示す第1信号に対応する。コンデンサC1の後段にAD変換器を設け、電流I1のアナログ信号を変換したデジタル信号を電流生成回路3に提供してもよい。
【0021】
サージ電圧検知回路2は、サージ電圧検知回路2に入力される電流に基づき第1信号を生成する構成以外に、検知したサージ電圧の大きさに応じて、第1電流を示す第1信号を生成してもよい。
【0022】
図5は、サージ発生時にサージ電圧検知回路2が検知するサージ電圧Vsを示す。サージ電圧検知回路2は、サージ電圧Vsの値に応じた電流I1を生成し、電流I1を示す第1信号を電流生成回路3に提供する。例えばVsが大きいほど、大きな値の電流I1を生成する。一例としてサージ電圧Vsからトランジスタを用いて電流I1を生成してもよい。あるいは、電流I1をデジタルに変換したデジタル信号を第1信号として電流生成回路3に提供してもよい。この場合、サージ電圧検知回路2は電流I1をデジタルに変換するAD変換回路を備えている。
【0023】
電流生成回路3は、サージ電圧検知回路2から提供される第1信号の入力に応じて電流を増幅することにより、第1信号が示す第1電流より大きい第2電流(電流I2)を生成する。電流生成回路3は、直流電源5とは異なる電源を用いて第2電流を生成する。電流生成回路3は、一例として、第1電流(電流I1)を増幅回路により増幅して、第2電流(電流I2)を生成する。
【0024】
図6は、電流生成回路3の一例を示す。バイポーラトランジスタT2のベースが電流入力端子IN1に接続され、コレクタが電源端子VT1、エミッタが抵抗素子R4を介して電流出力端子OUT1に接続されている。電源端子VT1は図1の直流電源8とは異なる電源に接続されている。電流入力端子IN1はサージ電圧検知回路2に接続され、電流I1が入力される。電流出力端子OUT1はトランジスタQ1のゲートに接続されている。抵抗素子R2及び抵抗素子R3間のノードの電圧に応じた電流として電流I1がトランジスタT2のベースに供給される。トランジスタT2で増幅された電流が電流I2として電流出力端子OUT1から出力される。
【0025】
図7は、電流生成回路3の他の例を示す。駆動対象のトランジスタQ1としてN型MOSFETが用いられている。但し、図1と同様、IGBTを用いてもよい。バイアス回路7、コンデンサC1及びダイオードD1の説明は図4と同じであるため省略する。電流生成回路3はカレントミラー回路である。カレントミラー回路は、コンデンサC1とトランジスタQ1の制御端子(ゲート)との間に結合されている。
【0026】
カレントミラー回路は、コンデンサC1に接続された第1トランジスタであるトランジスタT1と、トランジスタT1の制御端子に各々の制御端子が接続されたトランジスタB1~Bnとを備える。図の例では、トランジスタT1、B1~BnはN型MOSFETであるが、P型MOSFETトランジスタを含むカレントミラー回路でもよい。トランジスタB1・・・、Bn-1、Bnは、トランジスタQ1のゲートと基準電位端子との間において、直流電源8と直列に接続されている。これらのトランジスタはバイポーラトランジスタでもよい。
【0027】
コンデンサC1から流れる電流(電流I1)がトランジスタT1のドレインに入力されると、電流I1に応じた増幅電流がトランジスタB1~Bnから出力され、出力された電流を合成した合成電流が電流生成回路3から電流I2(第2電流)として出力される。この合成電流がトランジスタQ1のゲートに入力される。
【0028】
電流生成回路3は、サージ電圧検知回路2から提供された第1信号がデジタル値を示す場合、デジタル値に応じた値の電流を電流I2として生成してもよい。例えば電源に接続された複数のスイッチのうち、デジタル値に応じた個数のスイッチをオンし、オンされたスイッチを流れる電流の合成電流を電流I2とする。電流生成回路3の詳細な構成例は後述する他の実施形態で示す。
【0029】
電流生成回路3は、生成した電流I2をトランジスタQ1の制御端子に出力する。トランジスタQ1の制御端子のゲート電圧を引き上げる動作が行われ、サージ電圧が抑制される。
【0030】
サージ電圧制御回路1の動作を説明する。通常状態では、トランジスタQ1は、制御信号生成器4から出力される制御信号の論理に応じて、オン又はオフしている。トランジスタQ1がIGBT又はN型MOSトランジスタの場合、例えば制御信号がハイレベルのときにトランジスタQ1のゲートはハイ電位になり、トランジスタQ1はオンする。制御信号がローレベルになると、トランジスタQ1のゲートはロー電位になり、トランジスタQ1はオフする。トランジスタQ1がオンすると、トランジスタQ1で駆動される負荷R1に電流が流れる。
【0031】
トランジスタQ1がスイッチング動作を行うと、例えばトランジスタQ1のコレクタ側でサージ電圧が発生することがある。サージ電圧検知回路2は、サージ電圧の発生を検知する。サージ電圧検知回路2は、サージ電圧の検知に応じて、電流I1を示す第1信号を生成する。一例として、サージ電圧検知回路2は、サージ電圧検知回路2に入力される電流I0(図3参照)に基づき、電流I1を示す第1信号を生成する。電流I1は電流I0と同じでもよいし、電流I0に依存する限り、他の電流でもよい。サージ電圧の値が大きいほど、あるいは、電流I0が大きいほど、第1信号が示す電流I1は大きくなる。電流生成回路3は、直流電源5とは別の電源を用いて電流を増幅し、第1信号が示す電流I1よりも大きな第2電流(電流I2)を生成する。電流生成回路3は、生成した電流I2をトランジスタQ1の制御端子に供給する。サージ電圧が大きいほど、あるいはサージ電圧検知回路2に入力される電流が大きいほど、トランジスタQ1の制御端子に大きな電流が流れる。このことはトランジスタQ1の制御端子のゲート電圧を引き上げる動作が行われることを意味する。ゲート電圧が引き上げられることで、コレクタ電流が流れる。これにより、サージ電圧が抑制される。
【0032】
図8は、本実施形態の電子回路1の効果をシミュレーションで確認した結果を示す。横軸は時刻、縦軸はコレクタ電圧(又はN型MOSFETの場合ドレイン電圧)である。波形w1はサージ電圧抑制動作を行わない場合において、サージ発生時のコレクタ電圧の波形を示す。波形w2は比較例に係るサージ電圧抑制動作を行った場合において、サージ発生時のコレクタ電圧の応答波形を示す。波形w3は本実施形態に係るサージ電圧抑制動作を行った場合において、サージ発生時のコレクタ電圧の応答波形を示す。本実施形態では比較例のコンデンサの1/10の容量のコンデンサをサージ電圧検知回路で用いた。本実施形態では比較例のコンデンサの1/10の容量で同等の抑制効果を得られた。
【0033】
以上、本実施形態によれば、電流生成回路3が、サージ電圧検知回路2から提供される第1信号に基づき、直流電源5とは別の電源を用いて、ゲートに提供する電流を増幅により生成する。従って、サージ電圧検知回路2の出力をトランジスタQ1のゲートに直接接続する必要はない。サージ電圧検知回路2で大きな容量のコンデンサを用いることなく、制御端子に供給する電流を増やすことができる。このため、サージ電圧を効果的に抑制することができる。またコンデンサの容量を小さくできるため、低コスト化が可能となる。同時に、コンデンサの変位電流が小さくなるため、寄生インダクタンスの影響を抑制でき、発振による問題を抑制できる。
【0034】
また本実施形態によれば、サージ電圧検知回路2から電流生成回路3に、検知したサージ電圧に応じた電流を供給する。すなわち、検知したサージ電圧を直接、電流生成回路3に提供すると、電流生成回路3の耐圧を超える可能性があるが、電流を提供することで耐圧の問題を防止できる。電流生成回路は電流を入力とする回路であるため、トランジスタQ1の制御端子につながる低電圧部分と、サージ電圧検知回路がつながる高電圧部分とを直接接続できる。よって、電流生成回路を用いることで、サージ電圧のような高速な現象にも追従することが可能となる。
【0035】
なお、本実施形態においてサージ電圧検知回路2でコンデンサを用いることは必ずしも必要でない。コンデンサを用いずに、上述した第1信号を生成する動作を行う構成も可能である。
【0036】
(変形例1)
図9は、図7に示したサージ電圧制御回路の変形例1を示す。電流生成回路3であるカレントミラー回路に抵抗素子R5が追加されている。抵抗素子R5は、カレントミラー回路のトランジスタT1、B1~Bnのゲートリーク抵抗(寄生抵抗)より小さい抵抗値を有する。抵抗素子R5の一端は、トランジスタT1の制御端子とコンデンサC1に接続され、抵抗素子R5の他端はトランジスタT1のソース又はトランジスタQ1の制御端子に接続されている。
【0037】
トランジスタQ1を含む回路でサージ電圧が生じていない場合にも、カレントミラー回路を構成するトランジスタT1、B1~Bnのリーク電流により、カレントミラー回路が電流を出力する可能性がある。抵抗素子R5はトランジスタT1の寄生抵抗より小さいため、このリーク電流を吸収できる。これにより、カレントミラー回路の誤作動を防止できる。
【0038】
(変形例2)
図10は、図7に示したサージ電圧制御回路の変形例2を示す。電流生成回路3であるカレントミラー回路にダイオードD2が追加されている。ダイオードD2は、コンデンサC1に直列に接続され、かつトランジスタT1と並列に接続された第2ダイオードである。具体的には、ダイオードD2のアノードは、トランジスタQ1の制御端子に接続されており、カソードは、コンデンサC1に接続されている。
【0039】
発生したサージ電圧が収まるタイミングでは、電圧変化によって電流生成回路3(カレントミラー回路)からサージ電圧検知回路2に向かって電流が流れる。この電流は、ダイオードD2を介してサージ電圧検知回路2に流される。この電流の経路P1が図に示される。これにより、カレントミラー回路を構成するトランジスタT1、B1~Bnの逆耐圧破壊を防止でき、サージ電圧制御回路2の信頼性を向上させることができる。ダイオードD2を設ける構成は、カレントミラー回路を構成するトランジスタがバイポーラの場合は特に有効である。
【0040】
(変形例3)
図11は、図7に示したサージ電圧制御回路の変形例3を示す。電流生成回路3であるカレントミラー回路を構成するトランジスタT1の制御端子に、バイアス電流を供給する電流バイアス回路A1が接続されている。電流バイアス回路A1の例として、定電流源又は抵抗素子等を用いることができる。電流バイアス回路A1は、カレントミラー回路のトランジスタT1の制御端子にバイアス電流として微小電流を供給する。これにより、カレントミラー回路の応答性を向上させ、サージ電圧の検知後、カレントミラー回路を高速に動作開始することができる。
【0041】
すなわち、電流バイアス回路A1が設けられておらず、かつカレントミラー回路を構成するトランジスタT1、B1~Bnの制御端子の電圧が閾値より低い場合、サージ電圧の検知からカレントミラー回路の動作開始まで時間を要する。このため、サージ電圧を抑制するタイミングが遅延する。本実施形態では、電流バイアス回路A1によって、カレントミラー回路のトランジスタT1の制御端子に微小電流を供給しているため、サージ電圧の検知後、カレントミラー回路を高速に動作させることができる。これにより、サージ電圧を効果的に抑制できる。
【0042】
ただし、この微小電流は大きすぎると消費電力が増えてしまう。従って、サージ電圧が生じていないときのカレントミラー回路の出力電流が許容値以下(例えば0.1mA以下)になるようにすることが望ましい。以上、変形例1~3を説明したが、これらの変形例は組み合わせて適用することが可能である。
【0043】
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態に係る電子回路であるサージ電圧制御回路1Aの回路図である。電流生成回路3を制御する電流増幅制御回路9が設けられている。
【0044】
電流増幅制御回路9は、電流生成回路3における電流のゲイン(増幅利得)を可変にする。例えば、電流生成回路3に供給される電流I1をN倍する。電流生成回路3は、電流I1をN倍した電流を出力する。
【0045】
図13は、電流増幅制御回路9の具体例を示す。図13の電流増幅制御回路9は、図7に示した電流生成回路3であるカレントミラー回路を制御する。なおトランジスタQ1としてN型MOSFETが用いられている。トランジスタB1~BnにスイッチS1・・・Sn-1、Snが接続されている。電流増幅制御回路9は、スイッチS1~Snのオン又はオフを制御するスイッチ制御回路(SW制御回路)17として構成される。
【0046】
スイッチ制御回路17は、オンするスイッチの個数を制御することで、電流の増幅利得を制御する。例えば、トランジスタB1~BnがトランジスタT1の電流を等倍で増幅する構成を有する場合、トランジスタT1の電流をN倍に増幅するためにはN個のスイッチをオンする。また、トランジスタB1~Bnが流す電流が少なくとも一部異なる場合は、出力する電流I2に応じて、動作させるトランジスタを決定し、対応するスイッチをオンする。
【0047】
一例として、サージ電圧が目標値よりも大きい場合に、スイッチのオン数を多くする(増幅利得を大きくする)、又は増幅利得の大きいトランジスタに対応するスイッチをオンするなどし、電流の増幅利得を大きく設定する。この場合、電流生成回路3の出力電流が増え、サージ電圧の抑制効果が高まる。逆に、サージ電圧が目標値以下である場合、つまり、過剰にサージ電圧を抑制している場合には、スイッチのオン数を少なくする(増幅利得を小さくする)、又は増幅利得の大きいトランジスタに対応するスイッチをオフするなどし、サージ電圧の抑制を緩和する。この場合の電流生成回路3の構成例を図14に示す。
【0048】
図14は、図12のサージ電圧制御回路に第2サージ電圧検知回路10とサージ電圧判定回路11を追加したサージ電圧制御回路1Bの構成を示す。サージ電圧検知回路2、電流生成回路3及び電流増幅制御回路9の具体例として図13に示した回路を用いる。
【0049】
第2サージ電圧検知回路10はトランジスタQ1のコレクタに接続されており、サージ電圧を検知する。サージ電圧判定回路11は、検知したサージ電圧と目標値とを比較する。目標値以下の場合は、X個のスイッチをオンにする指示信号を電流増幅制御回路9に提供し、目標時より大きい場合は、Xより多いY個のスイッチをオンにする指示信号を電流増幅制御回路9に提供する。目標値は1つでなく、複数でもよい。この場合、目標値ごとに、オンするスイッチの個数を定めればよい。電流増幅制御回路9は、指示信号に示されるスイッチ数のスイッチをオンにする。なお、増幅利得の調整は、オンするスイッチの個数を調整することに限定されない。
【0050】
図15は、ルックアップテーブル(LUT)により電流増幅制御回路9に指示するスイッチ数を決定するサージ電圧制御回路1Cの構成例を示す。図12に示したサージ電圧制御回路1Aにルックアップテーブル12と第2サージ電圧検知回路10が追加されている。第2サージ電圧検知回路10の動作は図14と同じである。ルックアップテーブル12には、一例としてサージ電圧の値と、スイッチ数とが対応づけられて、格納されている。ルックアップテーブル12は、サージ電圧の値と増幅利得を示す値とを対応づけた情報である。ルックアップテーブル12は、サージ電圧の値に応じたスイッチ数(増幅利得)又はスイッチを特定し、特定したスイッチ数又はスイッチをオンする指示信号(特定した増幅利得で増幅を指示する指示信号)を電流増幅制御回路9に提供する。電流増幅制御回路9は、指示信号に示されるスイッチ数のスイッチ又は指示信号に示されるスイッチをオンにする。
【0051】
図13図15の構成によれば、サージ電圧の大きさに応じて、電流生成回路3の電流増幅率を可変にすることで、トランジスタQ1の制御端子に供給する電流を調整できる。すなわち、フィードバック制御によってサージ電圧を効果的に制御できるようになる。
【0052】
図15の例では、ルックアップテーブルでサージ電圧の値とスイッチ数又は特定のスイッチとを対応づけたが、サージ発生時に流れる電流の値と、スイッチ数(増幅利得)又は特定のスイッチとを対応づけてもよい。ルックアップテーブルは、電流の値と増幅利得の値とを対応づけた情報である。サージ発生時に流れる電流を検出するため、例えば、トランジスタQ1のエミッタ側又はコレクタ側に負荷電流を検知する電流検知回路を設けてもよい。
【0053】
図15の例では、ルックアップテーブルでサージ電圧の値とスイッチ数又は特定のスイッチとを対応づけたが、負荷電流と増幅利得とを対応づけてもよい。
図16は、ルックアップテーブル12で負荷電流と増幅利得とを対応付けた場合のサージ電圧制御回路1Caの構成例を示す。負荷電流とサージ電圧には単調関係があるため、負荷電流と増幅利得とを対応付けたルックアップテーブルを使用することにより、サージ電圧を効果的に抑制できる。負荷電流はカレントトランスやセンス抵抗やホール素子によって計測又は検出できる。あるいは、トランジスタQ1の制御信号を生成する制御方法によっては負荷電流をマイコンなどにより予測している場合があるため、マイコンで予測した情報(予測値)と増福利得とを紐づけることで、直接負荷電流を計測しなくてもよい。
【0054】
図17は、トランジスタQ1のエミッタ側に電流検知回路13を設けたサージ電圧制御回路1Dの例を示す。電流検知回路13で検知した電流を示す信号をルックアップテーブル12に提供する。ルックアップテーブル12は、当該信号が示す電流の値に対応するスイッチ数(増幅利得)又はスイッチを特定し、特定したスイッチ数又はスイッチをオンする指示信号(特定した増幅利得で増幅を指示する指示信号)を電流増幅制御回路9に提供する。電流増幅制御回路9は、指示信号に示されるスイッチ数のスイッチ、又は指示信号に示される特定のスイッチをオンにする。
【0055】
電流検知回路を設ける箇所はトランジスタQ1のエミッタ側又はコレクタ側に限定されない。
【0056】
図18は、負荷R6と電流検知回路13Aを追加したサージ電圧制御回路1Eの例を示す。トランジスタQ1のコレクタ側にトランジスタQ1と並列に、負荷R1とは別の負荷R6が接続されている。負荷R6とコレクタとの間に電流検知回路13Aが設けられている。
【0057】
図17及び図18で示したように、ルックアップテーブルと、検知した電流値とに基づき、フィードバック制御を行うことで、サージ電圧を効果的に抑制できる。サージ電圧はドランジスタQ1に流れる電流と単調関係があるため、電流検知回路13又は電流検知回路13Aから電流値を参照することにより、サージ電圧を効果的に制御できる。例えば、サージ電圧を希望の値にとどめるために必要なスイッチのオン数(増幅利得)又はスイッチをルックアップテービルから特定し、特定したスイッチのオン数又は特定のスイッチをオンすることの指示信号を出力できる。
【0058】
(変形例)
前述した図14のサージ電圧制御回路1Bのサージ電圧判定回路11の後段に、ルックアップテーブルを追加してもよい。この場合、ルックアップテーブルにおいて、目標値より大きい範囲と、目標値以下の範囲とのそれぞれに対してスイッチ数(増幅利得)またはスイッチを対応づければよい。
【0059】
(第3の実施形態)
図19は、第3の実施形態に係る電力変換器のブロック図である。図19の電力変換器は、電源端子VT2に接続される電源(例えば高電圧電源)を用いて交流電圧を生成する回路である。図19の電力変換器をインバータ、DC-DC変換器、又はコンバータに用いることができる。
【0060】
電源端子VT2と基準端子RTとの間において、2つのスイッチング素子であるトランジスタQ1a、Q1bが直列に接続されている。図19の例では、スイッチング素子としてIGBTを用いているが、N型MOSFET又はP型MOSFETを用いてもよい。
【0061】
制御信号生成器4A、4Bから抵抗素子R11A、R11Bを介して、トランジスタQ1a、Q1bのゲートに、トランジスタQ1a、Q1bを交互にオン又はオフするタイミングで制御信号を供給する。トランジスタQ1a、Q1bを交互にオン又はオフすることで、交流電圧を生成する。生成した交流電圧は、トランジスタQ1aとトランジスタQ1b間のノードに接続された出力端子OUT2から出力される。
【0062】
トランジスタQ1a、Q1bに対して、サージ電圧を抑制するサージ電圧制御回路20A、20Bが接続されている。サージ電圧制御回路20A、20Bとして、前述した第1の実施形態及び第2の実施形態に示したいずれかのサージ電圧制御回路を用いることができる。サージ電圧制御回路20Aは、トランジスタQ1aのコレクタにおけるサージ電圧を抑制する。サージ電圧制御回路20Bは、トランジスタQ1bのコレクタにおけるサージ電圧を抑制する。
【0063】
サージ電圧制御回路20A、20Bのバイアス回路(図4等参照)に供給する電圧として、電源端子VT2に接続される電源電圧を用いることができる(図の破線参照)。これにより、サージ電圧制御回路20A、20B間で動作開始のサージ電圧を共通にすることができる。
【0064】
図20は、サージ電圧制御回路20Aのバイアス回路7Aの構成例を示す。サージ電圧制御回路20Bのバイアス回路も同様の構成を有する。
【0065】
図20(A)は、コンデンサC1とダイオードD1のカソードとの間を所定のインピーダンスを持った素子・回路を介して、電源端子VT2に接続した例を示す。インピーダンス素子の例として抵抗やインダクタンスでもよい。VT2のインピーダンスが高い場合は省略してもよい。VT2のインピーダンスが小さく、かつ直接接続するとC1の電圧が変化せず変位電流が生じないため、このような工夫が必要である。
【0066】
図20(B)は、コンデンサC1とダイオードD1のカソードとの間のノードと、電源端子VT2との間に抵抗素子R12を追加した例を示す。当該ノードと電源端子VT2との間にダイオードを追加してもよい。
【0067】
(第4の実施形態)
図21は、第4の実施形態に係る電力変換器のブロック図である。図21の電力変換器21は、三相モータ22を駆動するための交流電圧を発生させる3相インバータである。電力変換器21は、複数のアーム23a~23fと、直流電源24と、コンバータ25と、平滑コンデンサC2とを有する。
【0068】
複数のアーム23a~23fのそれぞれは、上述した第1の実施形態又は第2の実施形態で示したいずれかのサージ電圧制御回路(電子回路)及びスイッチング素子を有する。アーム23a~23fは、それぞれ所定のタイミングでオン又はオフ動作を行う。
【0069】
コンバータ25はDC-DCコンバータであり、直流電源24からの直流電圧を、電圧レベルの異なる直流電圧に変換する。平滑コンデンサC2は、コンバータ25から出力される電圧を平滑化する。
【0070】
アーム23a~23fのうち、対となる2つのアームが同時にオンし、三相モータ22内の対応するコイルに電流を流す。同時にオンする2つのアームを順次切り替えることで、モータを三相駆動することができる。すなわち、同時にオンするスイッチング素子の対を順次切り替えることにより、直流電源24の直流電圧から3相交流を生成することができる。2つのアームを同時にオンするとは、必ずしもオンする開始タイミングが一致している必要はなく、少なくとも一部の期間が2つのアームが同時にオンになっていればよい。
【0071】
上述した各実施形態の説明で記載されたN型MOSFETの代わりに、P型MOSFETを用いてもよいし、P型MOSFETの代わりにN型MOSFETを用いてもよい。また上述した各実施形態の説明で記載された各MOSFETの代わりに、バイポーラトランジスタ又はIGBTを用いてもよい。
【0072】
本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1、1A、1B、1C、1D、1E サージ電圧制御回路(電子回路)
2 サージ電圧検知回路
3 電流生成回路
4、4A 制御信号生成器
5 直流電源
7、7A バイアス回路
8 直流電源
9 電流増幅制御回路
10 第2サージ電圧検知回路
11 サージ電圧判定回路
12 ルックアップテーブル
13、13A 電流検知回路
17 スイッチ制御回路(SW制御回路)
20A、20B サージ電圧制御回路
21 電力変換器
22 三相モータ
23a アーム
23b アーム
23c アーム
23d アーム
23e アーム
23f アーム
24 直流電源
25 コンバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21