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特許7399832情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20231211BHJP
   G06F 17/17 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G05B23/02 301T
G06F17/17
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020154629
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048670
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新垣 隆生
(72)【発明者】
【氏名】高田 正彬
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-027988(JP,A)
【文献】特表2018-522338(JP,A)
【文献】国際公開第2014/188202(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
G06F 17/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサーにより計測された計測項目、及び、プロセスコントローラの制御に用いられる設定項目の少なくとも一方を含む解析対象データが目的変数に影響を与えるまでのタイムラグの候補と、前記目的変数を予測する回帰モデルで許容されるタイムラグ数とを設定する設定部と、
前記タイムラグの候補に対応する時刻に計測された前記計測項目、及び、前記時刻に設定された前記設定項目の少なくとも一方を、説明変数の候補として選択する選択部と、
前記回帰モデルの正則化パラメータの値に応じて変化する前記説明変数の候補の回帰係数の推移を示す正則化パスに基づいて、前記タイムラグの数が前記タイムラグ数以下となるように前記正則化パラメータを決定し、決定された正則化パラメータを用いて前記回帰モデルを決定する決定部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記解析対象データは、複数の前記計測項目、及び、複数の前記設定項目の少なくとも一方を複数の解析項目として含み、
前記決定部は、前記正則化パスに基づいて、前記タイムラグの数が前記タイムラグ数以下となるように前記正則化パラメータを、前記解析項目ごとに決定し、決定された正則化パラメータを用いて前記回帰モデルを決定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記タイムラグの候補を複数、設定し、前記タイムラグ数を1に設定する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記目的変数と、前記回帰モデルの説明変数と、前記回帰モデルの決定に用いられた前記正則化パラメータに基づくタイムラグとを含む表示情報を表示部に表示する表示制御部、
を更に備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記正則化パスを算出する算出部、
を更に備える請求項1乃至4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記算出部は、L1正則化による罰則付き回帰を用いて前記正則化パスを算出する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記算出部は、複数の正則化パラメータを含む正則化パラメータリストから前記正則化パラメータの値を選択する、
請求項5又は6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記解析対象データを取得する取得部、
を更に備える請求項1乃至7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記解析対象データは、前記計測項目を含み、
前記取得部は、前記計測項目に含まれるノイズの削除、前記計測項目の平滑化、及び、前記計測項目の移動平均に基づく補間の少なくとも1つを含む加工処理を、取得された前記計測項目に対して行う、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
計測項目の計測値を計測するセンサーと、
前記計測項目、及び、プロセスコントローラの制御に用いられる設定項目の少なくとも一方を含む解析対象データが目的変数に影響を与えるまでのタイムラグの候補と、前記目的変数を予測する回帰モデルで許容されるタイムラグ数とを設定する設定部と、
前記タイムラグの候補に対応する時刻に計測された前記計測項目、及び、前記時刻に設定された前記設定項目の少なくとも一方を、説明変数の候補として選択する選択部と、
前記回帰モデルの正則化パラメータの値に応じて変化する前記説明変数の候補の回帰係数の推移を示す正則化パスに基づいて、前記タイムラグの数が前記タイムラグ数以下となるように前記正則化パラメータを決定し、決定された正則化パラメータを用いて前記回帰モデルを決定する決定部と、
を備える情報処理システム。
【請求項11】
情報処理装置が、センサーにより計測された計測項目、及び、プロセスコントローラの制御に用いられる設定項目の少なくとも一方を含む解析対象データが目的変数に影響を与えるまでのタイムラグの候補と、前記目的変数を予測する回帰モデルで許容されるタイムラグ数とを設定するステップと、
前記情報処理装置が、前記タイムラグの候補に対応する時刻にされた前記計測項目、及び、前記時刻に設定された前記設定項目の少なくとも一方を、説明変数の候補として選択するステップと、
前記情報処理装置が、前記回帰モデルの正則化パラメータの値に応じて変化する前記説明変数の候補の回帰係数の推移を示す正則化パスに基づいて、前記タイムラグの数が前記タイムラグ数以下となるように前記正則化パラメータを決定し、決定された正則化パラメータを用いて前記回帰モデルを決定するステップと、
を含む情報処理方法。
【請求項12】
コンピュータを、
センサーにより計測された計測項目、及び、プロセスコントローラの制御に用いられる設定項目の少なくとも一方を含む解析対象データが目的変数に影響を与えるまでのタイムラグの候補と、前記目的変数を予測する回帰モデルで許容されるタイムラグ数とを設定する設定部と、
前記タイムラグの候補に対応する時刻に計測された前記計測項目、及び、前記時刻に設定された前記設定項目の少なくとも一方を、説明変数の候補として選択する選択部と、
前記回帰モデルの正則化パラメータの値に応じて変化する前記説明変数の候補の回帰係数の推移を示す正則化パスに基づいて、前記タイムラグの数が前記タイムラグ数以下となるように前記正則化パラメータを決定し、決定された正則化パラメータを用いて前記回帰モデルを決定する決定部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラント管理において、測定困難なプロセス変数をプラントのセンサーデータから予測する回帰モデルを構築し、測定困難なプロセス変数の代わりに回帰モデルに基づいた予測値をモニタリングするソフトセンサーの構築が広く行われている。例えば、罰則付き回帰モデルを用いて、大量の特徴量から自動的に特徴抽出を行うことによって、回帰モデルを構築する技術が従来から知られている。
【0003】
しかしながら従来の技術では、プロセス変数を予測する回帰モデルを構築するときに、解析対象データごとに対応させるタイムラグの数を制御することが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/069568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、解析対象データごとに対応させるタイムラグの数を制御する情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の情報処理装置は、設定部と選択部と決定部とを備える。設定部は、センサーにより計測された計測項目、及び、プロセスコントローラの制御に用いられる設定項目の少なくとも一方を含む解析対象データが目的変数に影響を与えるまでのタイムラグの候補と、前記目的変数を予測する回帰モデルで許容されるタイムラグ数とを設定する。選択部は、前記タイムラグの候補に対応する時刻に計測された前記計測項目、及び、前記時刻に設定された前記設定項目の少なくとも一方を、説明変数の候補として選択する。決定部は、前記回帰モデルの正則化パラメータの値に応じて変化する前記説明変数の候補の回帰係数の推移を示す正則化パスに基づいて、前記タイムラグの数が前記タイムラグ数以下となるように前記正則化パラメータを決定し、決定された正則化パラメータを用いて前記回帰モデルを決定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の情報処理システムのハードウェア構成の例を示す図。
図2】実施形態の情報処理装置の機能構成の例を示す図。
図3】実施形態の情報処理装置による情報処理方法の例を示すフローチャート。
図4】実施形態の正則化パスの例を示す図。
図5】実施形態の表示情報の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムの実施形態を詳細に説明する。
【0009】
[ハードウェア構成の例]
図1は実施形態の情報処理システム1のハードウェア構成の例を示す図である。実施形態の情報処理システム1は、プラントを管理するシステムである。実施形態の情報処理システム1は、プロセス計算機2と、プロセスコントローラ3と、電動機4aと、駆動装置4bと、プロセスセンサー5と、オペレータ端末6と、情報LAN7と、制御LAN8と、管理装置9と、情報処理装置15と、を備える。
【0010】
プロセス計算機2、プロセスコントローラ3、電動機4a、駆動装置4b、プロセスセンサー5及びオペレータ端末6は、管理装置9と、情報LAN7及び制御LAN8を介して接続される。
【0011】
例えば、管理装置9は、情報LAN7を介してプロセス計算機2、プロセスコントローラ3及びプロセスセンサー5から時系列データを収集し、管理装置9に蓄積する。プロセス計算機2から収集される時系列データは、例えばプラントの製造情報、並びに、プラントで製品が製造されるたびに出力される品質情報及び生産情報等である。
【0012】
製造情報は、製品の製造に用いられる制御対象の情報である。例えば、制御対象がバルブの場合、製造情報は、バルブの制御目標値、バルブの操作を示す情報、及び、バルブの操作に応じた観測値等を含む。品質情報は、製造された製品の品質を示す。生産情報は、製品の生産量等の情報を含む。
【0013】
プロセスコントローラ3から収集される時系列データは、例えばプロセスコントローラ3の制御に用いられる設定値である。プロセスセンサー5から収集される時系列データは、例えば計測値である。プロセスセンサー5は、例えば圧力センサー、流体センサー及び温度センサー等である。
【0014】
また、管理装置9は、制御LAN8を介してプロセスコントローラ3からプロセス制御に関する制御情報を収集し、管理装置9に蓄積する。
【0015】
プロセスコントローラ3、電動機4a、駆動装置4及びプロセスセンサー5は、制御LAN8を介して制御情報を送受信する。
【0016】
オペレータ端末6は、情報LAN7および制御LAN8を介して、プロセスコントローラ3の設定及び操作等を行う。
【0017】
管理装置9は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)11、記録メディア12、通信インターフェース13及びユーザインターフェース14を備える。CPU10は、RAM11、記録メディア12、通信インターフェース13及びユーザインターフェース14とバスを介して接続されており、それらを制御する。またCPU10は、記録メディア12に格納されたコンピュータプログラムを順次実行する。
【0018】
RAM11は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)及びフラッシュメモリ等で構成される。CPU10の実行時には、RAM11は、必要に応じて記録メディア12に格納されているコンピュータプログラム等を読み出し、コンピュータプログラム等を一時的に記憶する。
【0019】
記録メディア12は、HDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)等で構成される。記録メディア12には、上述の時系列データをデータベースに蓄積するためのコンピュータプログラム、及び、時系列データを格納するデータベースが記憶される。
【0020】
通信インターフェース13は、情報LAN7、制御LAN8及び情報処理装置15に接続するためのインターフェースである。
【0021】
ユーザインターフェース14は、ディスプレイ、キーボード及びマウス等で構成される。ユーザインターフェース14は、ユーザからの入力の受付けと、情報の出力とを行う。
【0022】
情報処理装置15は、CPU16、RAM17、記録メディア18、ユーザインターフェース19及び通信インターフェース20を備える。CPU16は、RAM17、記録メディア18、ユーザインターフェース19及び通信インターフェース20とバスを介して接続されており、それらを制御する。またCPU16は、記録メディア18に格納されたコンピュータプログラムを順次実行する。
【0023】
記録メディア18は、HDD及びSSD等で構成される。記録メディア18は、プロセスセンサー5からの計測値、及び、プロセスコントローラ3の設定値等が記録されたときの時刻が、プロセス計算機2から送信された品質情報又は生産情報が記録されたときの時刻と比較してどれくらいの大きさの時間遅れ(タイムラグ)があるかを算出するためのコンピュータプログラムを記憶する。また記録メディア18は、プロセス計算機2から送信された品質情報及び生産情報等の変動に寄与するプロセスセンサー5からの計測値を抽出するためのコンピュータプログラムを記憶する。また記録メディア18は、プロセス計算機2から送信された品質情報及び生産情報等の変動に寄与するプロセスコントローラ3の設定値を抽出するためのコンピュータプログラムを記憶する。
【0024】
RAM17は、SRAM、DRAM及びフラッシュメモリ等で構成される。CPU16の実行時には、RAM17は、必要に応じて記録メディア18に格納されているコンピュータプログラム等を読み出し、コンピュータプログラム等を一時的に記憶する。
【0025】
ユーザインターフェース19は、ディスプレイ、キーボード及びマウス等で構成される。ユーザインターフェース19は、ユーザからの入力の受付けと、情報の出力とを行う。出力される情報は、例えば上述のタイムラグ、プロセス計算機2から送信された品質情報及び生産情報等の変動に寄与する上述の計測値及び設定値等である。
【0026】
通信インターフェース20は、情報LAN7、制御LAN8及び管理装置9に接続するためのインターフェースである。
【0027】
[機能構成の例]
図2は実施形態の情報処理装置15の機能構成の例を示す図である。実施形態の情報処理装置15は、設定部31、取得部32、選択部33、算出部34、決定部35、評価部36及び表示制御部37を備える。設定部31、取得部32、選択部33、算出部34、決定部35、評価部36及び表示制御部37は、例えば記録メディア18からRAM17に読み出されたコンピュータプログラムにより実現される。また、解析対象データ記憶部D1及びタイムラググループデータ記憶部D2は、RAM17及び記録メディア18により実現される。
【0028】
[情報処理方法の例]
図3は情報処理装置15による情報処理方法の例を示すフローチャートである。はじめに、設定部31が、ユーザインターフェース19を介して入力されたパラメータを設定する(ステップS1)。ユーザインターフェース19を介して入力されたパラメータは、解析対象設定パラメータ、解析対象期間設定パラメータ、タイムラグ候補設定パラメータ、正則化候補設定パラメータ、タイムラグ数設定パラメータ及び評価対象設定パラメータ等である。
【0029】
解析対象設定パラメータは、一以上の解析項目を含む解析対象データを設定するパラメータである。解析項目は、プロセスセンサー5により計測された計測項目、及び、プロセスコントローラ3の制御に用いられる設定項目の少なくとも一方を含む。計測項目の場合には、当該計測項目を計測するプロセスセンサー5の計測値が解析の対象にされる。なお、解析対象データとして設定される計測項目の数は任意でよい。設定項目の場合には、当該設定項目の設定がされるプロセスコントローラ3の設定値が解析の対象にされる。なお、解析対象データとして設定される設定項目の数は任意でよい。解析対象期間設定パラメータは、解析対象データの解析(学習)対象期間を設定するパラメータである。
【0030】
タイムラグ候補設定パラメータは、解析で考慮するタイムラグの単位、及び、当該タイムラグの最大値を含む。解析で考慮するタイムラグの単位は、例えば30min等である。また、タイムラグの最大値は、例えば360minである。この場合、30min、60min、90min、...、360minといった時間だけ時間遅れが生じる可能性を考慮することを表す。
【0031】
正則化候補設定パラメータは、正則化パラメータの候補を設定するパラメータである。正則化パラメータの候補は、所定の値の範囲に含まれる離散値でもよいし、連続値でもよい。回帰モデルの正則化には、例えばL1正則化、SCAD(Smoothly Clipped Absolute Derivation)、及び、MCP(Minimax Concave Penalty)等の方法が用いられる。
【0032】
タイムラグ数設定パラメータは、目的変数を予測する回帰モデルで許容されるタイムラグ数を設定するパラメータである。例えば、各説明変数(例えば計測値及び設定値等)に対して高々一つタイムラグを許容する場合、タイムラグ数は1に設定される。
【0033】
評価対象設定パラメータは、回帰モデルの評価対象期間を設定するパラメータである。
【0034】
次に、取得部32が、管理装置9に蓄積された時系列データから、解析対象設定パラメータ及び解析対象期間設定パラメータに合致したデータを解析対象データとして取得し、当該解析対象データを解析対象データ記憶部D1に記憶する(ステップS2)。なお、取得部32は、取得された解析対象データに加工処理を行ってもよい。加工処理は、例えば解析対象データが計測値を含む場合、計測値に含まれるノイズの削除、計測値の平滑化、及び、計測値の移動平均に基づく補間等を含む。
【0035】
次に、選択部33が、それぞれのタイムラグの候補に対応する時刻に計測された計測項目、及び、当該時刻に設定された設定項目の少なくとも一方を、説明変数の候補を示すタイムラググループデータとして選択し、当該タイムラググループデータ記憶部D2に記憶する(ステップS3)。
【0036】
具体的には例えば、解析対象データが、プロセスセンサー5により計測されたK個の計測項目に対して計測された計測値であり、タイムラグの候補が、30min、60min、90minである場合、選択部33は、タイムラグのない時刻tの計測項目の時系列データmt,1、mt,2、・・・、mt,K、30min前に計測された計測項目の時系列データmt-30、mt-30,2、・・・、mt-30,K、60min前に計測された計測項目の時系列データmt-60,1、mt-60,2、・・・、mt-60,K、及び、90min前に計測された計測項目の時系列データmt-90,1、mt-90,2、・・・、mt-90,Kを選択する。なお、時刻tは、解析対象期間に含まれる時刻を示す変数である。この場合の時刻tにおけるタイムラググループデータは、説明変数の候補の組(mt,1、mt,2、・・・、mt,K,mt-30、mt-30,2、・・・、mt-30,K,mt-60,1、mt-60,2、・・・、mt-60,K,mt-90,1、mt-90,2、・・・、mt-90,K)となる。
【0037】
また例えば、解析対象データが、プロセスコントローラ3に設定されたJ個の設定項目に対して設定された設定値であり、タイムラグの候補が、60min、120minである場合、選択部33は、タイムラグのない時刻tの設定項目の時系列データst,1、st,2、・・・、st,J、60min前に設定された設定項目の時系列データst-60,1、st-60,2、・・・、st-60,J、及び、120min前に設定された設定項目の時系列データst-120,1、st-120,2、・・・、st-120,Jを選択する。この場合の時刻tにおけるタイムラググループデータは、説明変数の候補の組(st,1、st,2、・・・、st,J、st-60,1、st-60,2、・・・、st-60,J、・・・、st,J,st-120,1、st-120,2、・・・、st-120,J)となる。
【0038】
なお、タイムラグの単位、及び、当該タイムラグの最大値は、ステップS1の処理で設定せずに、既定の値を用いるようにしても構わない。
【0039】
算出部34は、タイムラググループデータ記憶部D2に記憶されたタイムラググループデータを読み出し、回帰モデルの正則化パラメータの値に応じて変化する説明変数の候補の回帰係数の推移を示す正則化パスを解析項目(計測項目や設定項目)ごとに算出する(ステップS4)。算出部34は、例えばL1正則化による罰則付き回帰を用いて正則化パスを算出する。
【0040】
[正則化パスの例]
図4は実施形態の正則化パスの例を示す図である。横軸のλは正則化パラメータの値を示し、縦軸のβは回帰係数を示す。各折れ線は、目的変数(例えば品質情報及び生産情報等)を予測する罰則付き回帰モデルの説明変数(例えばプロセスセンサー5の一つの計測項目、または、プロセスコントローラ3の一つの設項目定等)の候補に対応する正則化パスを示す。例えば計測項目の一つである温度を示す計測値に対する正則化パスの場合、各折れ線は、異なるタイムラグが考慮された温度の計測値に対応する。正則化パスの算出に用いられるデータは、上述の解析対象設定パラメータ及び解析対象期間設定パラメータに基づいて、取得部32により取得される。正則化パラメータの候補は、上述の正則化候補設定パラメータに基づいて与えられてもよいし、常に既定の値を用いるようにしてもよい。このような正則化パスを示す図が計測項目の数または設定項目の数、得られることになる。
【0041】
決定部35は、計測項目の数または設定項目の数、得られた正則化パスに基づいて、タイムラグの数が、設定部31により設定されたタイムラグ数(例えば1)以下となるように正則化パラメータλを計測項目の数または設定項目の数、決定する。例えば、設定部31により設定されたタイムラグ数が1の場合、正則化パラメータλは、縦線102付近の値に決定される。なお、折れ線101aは、回帰係数βが常に0であるため、折れ線101aに対応するタイムラグを持つ計測項目または設定項目は罰則付き回帰モデルの説明変数から除外される。正則化パラメータλが縦線102付近の値に決定された場合、この正則化パスに対応する計測項目または設定項目のタイムラグが、折れ線101bが示す正則化パスに対応するタイムラグに決定される。
【0042】
また例えば、設定部31により設定されたタイムラグ数が2の場合、正則化パラメータλは、縦線103付近の値に決定される。
【0043】
図3に戻り、次に、決定部35が、正則化パラメータリストD3、及び、当該正則化パラメータリストD3に応じた回帰係数D4を算出部34から受け付け、上述のタイムラグ数設定パラメータを設定部31から受け付ける。そして、決定部35は、タイムラグの数が、タイムラグ数設定パラメータにより設定されたタイムラグ数(例えば1)以下となるようにして、正則化パラメータリストD3から正則化パラメータλを解析項目(計測項目または設定項目)ごとに決定し、それらの中の最大値を改めて正則化パラメータに設定し、回帰モデルD5(罰則付き回帰モデル)を決定する(ステップS6)。
【0044】
次に、評価部36が、上述の評価対象設定パラメータに基づいて、タイムラググループデータをタイムラググループデータ記憶部D2から読み出し、当該タイムラググループデータを用いて回帰モデル(D5)の性能を評価し、例えば、決定係数(R)や平均二乗誤差(MSE)といったモデル精度(D6)を算出する(ステップS6)。具体的には、評価部36は、評価対象設定パラメータから、回帰モデル(D5)の評価対象期間を特定し、タイムラググループデータに含まれる時系列データのうち、評価対象のタイムラグに応じた時系列データを回帰モデル(D5)の評価に利用する。
【0045】
次に、表示制御部37が、回帰モデルD5及びモデル精度D6を受け付け、回帰モデルD5及びモデル精度D6に基づく表示情報をユーザインターフェース19に表示する(ステップS7)。表示情報は、例えば、目的変数と、回帰モデルD5の説明変数と、回帰モデルD5の決定に用いられた正則化パラメータに基づくタイムラグとを含む。
【0046】
[表示情報の例]
図5は実施形態の表示情報の例を示す図である。表示111は、説明変数のタイムラグを示す。時間遅れなく目的変数(例えば品質情報及び生産情報等)に影響を与えている説明変数(例えばプロセスセンサー5の計測項目、及び、プロセスコントローラ3の設定項目等)については、タイムラグは、例えば0hなどと表示される。グラフ112は、説明変数の値の時系列データを示す。グラフ112は、表示111に示すタイムラグに応じてスライドして表示される。グラフ113は、目的変数の値の時系列データを示す。図5の例のように、目的変数(例えば品質情報及び生産情報等)に影響を与えていないプロセスセンサー5の計測値、及び、プロセスコントローラ3の設定値については表示しないことで、目的変数の変動要因の確認が効率化できる。
【0047】
以上説明したように、実施形態の情報処理装置15では、設定部31が、プロセスセンサー5により計測された計測項目、及び、プロセスコントローラ3の制御に用いられる設定項目の少なくとも一方を含む解析対象データが目的変数に影響を与えるまでのタイムラグの候補(例えば、0h,1h,・・・,6h等)と、目的変数を予測する回帰モデルD5で許容されるタイムラグ数とを設定する。選択部33が、タイムラグの候補に対応する時刻に計測された前記計測項目、及び、当該時刻に設定された設定項目の少なくとも一方を、説明変数の候補として選択する。そして、決定部35が、回帰モデルD5の正則化パラメータの値に応じて変化する説明変数の候補の回帰係数D4の推移を示す正則化パスに基づいて、タイムラグの数がタイムラグ数以下となるように正則化パラメータλを決定し、決定された正則化パラメータλを用いて回帰モデルD5を決定する。
【0048】
これにより実施形態の情報処理装置15によれば、プロセス変数を予測する回帰モデルを構築するときに、解析対象データごとに対応させるタイムラグの数を制御することができる。具体的には、例えばプラント管理における、測定困難なプロセス変数の測定時点とプロセス変数を予測するために用いるセンサーの測定時点との間に未知の固定のタイムラグが物理的に存在する場合に、正則化パラメータリストD3に対して想定し得るタイムラグ遅らせた説明変数の回帰係数を算出できる。回帰モデルD5が許容するタイムラグ数を1に設定しておくことで、例えば、同じプロセスセンサー5に複数のタイムラグが選択されることなく、プロセスセンサー5ごとに適切なタイムラグを丁度一つ選択することが可能になる。
【0049】
なお、実施形態の情報処理装置15の機能は、プログラム(ソフトウェア)により実現されてもよい。
【0050】
コンピュータで実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、メモリカード、CD-R及びDVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されてコンピュータ・プログラム・プロダクトとして提供される。
【0051】
またコンピュータで実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。またコンピュータで実行されるプログラムをダウンロードさせずにインターネット等のネットワーク経由で提供するように構成してもよい。
【0052】
またコンピュータで実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0053】
コンピュータで実行されるプログラムは、上述の情報処理装置15の機能構成(機能ブロック)のうち、プログラムによっても実現可能な機能ブロックを含むモジュール構成となっている。当該各機能ブロックは、実際のハードウェアとしては、CPU16が記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、上記各機能ブロックがRAM17上にロードされる。
【0054】
なお上述した各機能ブロックの一部又は全部をソフトウェアにより実現せずに、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよい。
【0055】
また複数のプロセッサを用いて各機能を実現する場合、各プロセッサは、各機能のうち1つを実現してもよいし、各機能のうち2つ以上を実現してもよい。
【0056】
また情報処理装置15を実現するコンピュータの動作形態は任意でよい。例えば、情報処理装置15を1台のコンピュータにより実現してもよい。また例えば、情報処理装置15を、ネットワーク上のクラウドシステムとして動作させてもよい。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1 情報処理システム
2 プロセス計算機
3 プロセスコントローラ
4a 電動機
4b 駆動装置
5 プロセスセンサー
6 オペレータ端末
7 情報LAN
8 制御LAN
9 管理装置
10 CPU
11 RAM
12 記録メディア
13 通信インターフェース
14 ユーザインターフェース
15 情報処理装置
16 CPU
17 RAM
18 記録メディア
19 ユーザインターフェース
20 通信インターフェース
31 設定部
32 取得部
33 選択部
34 算出部
35 決定部
36 評価部
37 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5