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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】動力伝達機構及び作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/04 20060101AFI20231211BHJP
   B60W 10/18 20120101ALI20231211BHJP
   B60K 17/12 20060101ALI20231211BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20231211BHJP
   B60K 17/28 20060101ALI20231211BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20231211BHJP
   B60K 1/02 20060101ALI20231211BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20231211BHJP
   B60W 10/184 20120101ALI20231211BHJP
【FI】
B60W10/00 120
B60K17/12
B60K17/04 D
B60K17/28 D
B60T7/12 A
B60K1/02
B60W10/08
B60W10/184
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020188107
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077308
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 一人
(72)【発明者】
【氏名】林 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】河端 真一
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-311784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
B60K 1/02
B60K 17/04
B60K 17/12
B60K 17/28
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体を走行可能に支持する車輪と、
第1モータと、
第2モータと、
前記第1モータ及び前記第2モータの動力が入力され、入力された動力を前記車輪の車軸に出力する遊星歯車機構と、
前記車輪の所要回転数に応じて前記第1モータ及び前記第2モータに対して前記所要回転数を得るために必要な回転数での駆動を指令する指令信号を送信する制御装置と、
前記車輪の回転数を計測するセンサと、
前記車輪の回転を停止するブレーキと、
前記車体に装着される作業装置を駆動するPTO軸と、
前記第1モータからの動力が伝達される第1入力軸と、
前記第2モータからの動力が伝達される第2入力軸と、
を備え、
前記制御装置は、前記車輪の回転を停止させるときに、前記所要回転数を0に制御する前記指令信号を送信した後、前記センサで計測された回転数が0でないときに前記ブレーキを作動させ
前記遊星歯車機構は、内歯と外歯とを有し、前記外歯から前記車軸へと動力を伝達するリング歯車と、前記第1入力軸から動力が入力される太陽歯車と、前記内歯及び前記太陽歯車と噛み合う遊星歯車と、前記遊星歯車を支持し且つ前記第2入力軸から動力が入力される遊星キャリアとを有し、
前記第1入力軸からの動力は、前記遊星歯車機構を介さずに前記PTO軸に伝達される作業車両。
【請求項2】
車体と、
前記車体を走行可能に支持する車輪と、
第1モータと、
第2モータと、
前記第1モータ及び前記第2モータの動力が入力され、入力された動力を前記車輪の車軸に出力する遊星歯車機構と、
前記車輪の所要回転数に応じて前記第1モータ及び前記第2モータに対して前記所要回転数を得るために必要な回転数での駆動を指令する指令信号を送信する制御装置と、
前記車輪の回転数を計測するセンサと、
前記車輪の回転を停止するブレーキと、
前記車体に装着される作業装置を駆動するPTO軸と、
前記第1モータからの動力が伝達される第1入力軸と、
前記第2モータからの動力が伝達される第2入力軸と、
を備え、
前記制御装置は、前記車輪の回転を停止させるときに、前記所要回転数を0に制御する前記指令信号を送信した後、前記センサで計測された回転数が0でないときに前記ブレーキを作動させ
前記遊星歯車機構は、内歯と外歯とを有し、前記外歯に前記第1入力軸からの動力が伝達され且つ前記外歯から前記車軸へと動力を伝達するリング歯車と、前記第2入力軸から動力が入力される太陽歯車と、前記内歯及び前記太陽歯車と噛み合う遊星歯車と、前記遊星歯車を支持し且つ前記PTO軸に動力を出力する遊星キャリアとを有し、前記第1入力軸からの動力及び前記第2入力軸からの動力が入力され、入力された動力を前記車軸及び前記PTO軸に出力する作業車両。
【請求項3】
車体と、
前記車体を走行可能に支持する車輪と、
第1モータと、
第2モータと、
前記第1モータ及び前記第2モータの動力が入力され、入力された動力を前記車輪の車軸に出力する遊星歯車機構と、
前記車輪の所要回転数に応じて前記第1モータ及び前記第2モータに対して前記所要回転数を得るために必要な回転数での駆動を指令する指令信号を送信する制御装置と、
前記車輪の回転数を計測するセンサと、
前記車輪の回転を停止するブレーキと、
前記車体に装着される作業装置を駆動するPTO軸と、
前記第1モータからの動力が伝達される第1入力軸と、
前記第2モータからの動力が伝達される第2入力軸と、
を備え、
前記制御装置は、前記車輪の回転を停止させるときに、前記所要回転数を0に制御する前記指令信号を送信した後、前記センサで計測された回転数が0でないときに前記ブレーキを作動させ
前記遊星歯車機構は、内歯と外歯とを有し、前記外歯に前記第1入力軸からの動力が伝達され且つ前記外歯から前記PTO軸へと動力を伝達するリング歯車と、前記第2入力軸から動力が入力される太陽歯車と、前記内歯及び前記太陽歯車と噛み合う遊星歯車と、前記遊星歯車を支持し且つ前記車軸に動力を出力する遊星キャリアとを有し、前記第1入力軸からの動力及び前記第2入力軸からの動力が入力され、入力された動力を前記車軸及び前記PTO軸に出力する作業車両。
【請求項4】
前記制御装置は、前記車輪の回転を停止させるときに、前記指令信号として前記第1モータ又は前記第2モータに回転を停止させる指令信号を送信する請求項1~3のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項5】
前記車軸の回転方向を切り換え可能な切り換え機構を備えている請求項1~4のいずれか1項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のモータを使用する動力伝達機構及びこの動力伝達機構を備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のモータを使用する動力伝達機構として、特許文献1に開示された動力伝達機構が知られている。特許文献1の図8に開示の動力伝達機構は、第1のモータ及び第2のモータと、リング歯車、遊星キャリア、太陽歯車を有する遊星歯車機構とを含んでおり、第1のモータ及び第2のモータの動力は遊星歯車機構に入力され、遊星歯車機構から動力が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2020-500764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した動力伝達機構の場合、第1のモータと第2のモータの動力を遊星歯車機構に入力し、遊星歯車機構から出力軸に動力を出力する構成となっているため、出力軸の回転を停止する場合には、第1のモータと第2のモータの回転数を出力軸の回転数が0となるように調整する。しかし、第1のモータと第2のモータの回転数にばらつきが生じることにより出力軸の回転数を0に維持できない場合があるため、出力軸の回転を確実に停止させることが難しい。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、複数のモータの動力を遊星歯車機構に入力して遊星歯車機構から出力軸に動力を出力する構成を備えた動力伝達機構において、出力軸の回転を確実に停止させることが可能な動力伝達機構、及びこの動力伝達機構を備えた作業車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が上記課題を解決するために講じた技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
作業車両は、車体と、前記車体を走行可能に支持する車輪と、第1モータと、第2モータと、前記第1モータ及び前記第2モータの動力が入力され、入力された動力を前記車輪の車軸に出力する遊星歯車機構と、前記車輪の所要回転数に応じて前記第1モータ及び前記第2モータに対して前記所要回転数を得るために必要な回転数での駆動を指令する指令信号を送信する制御装置と、前記車輪の回転数を計測するセンサと、前記車輪の回転を停止するブレーキと、前記車体に装着される作業装置を駆動するPTO軸と、前記第1モータからの動力が伝達される第1入力軸と、前記第2モータからの動力が伝達される第2入力軸と、を備え、前記制御装置は、前記車輪の回転を停止させるときに、前記所要回転数を0に制御する前記指令信号を送信した後、前記センサで計測された回転数が0でないときに前記ブレーキを作動させ、前記遊星歯車機構は、内歯と外歯とを有し、前記外歯から前記車軸へと動力を伝達するリング歯車と、前記第1入力軸から動力が入力される太陽歯車と、前記内歯及び前記太陽歯車と噛み合う遊星歯車と、前記遊星歯車を支持し且つ前記第2入力軸から動力が入力される遊星キャリアとを有し、前記第1入力軸からの動力は、前記遊星歯車機構を介さずに前記PTO軸に伝達される
【0007】
作業車両は、車体と、前記車体を走行可能に支持する車輪と、第1モータと、第2モータと、前記第1モータ及び前記第2モータの動力が入力され、入力された動力を前記車輪の車軸に出力する遊星歯車機構と、前記車輪の所要回転数に応じて前記第1モータ及び前記第2モータに対して前記所要回転数を得るために必要な回転数での駆動を指令する指令信号を送信する制御装置と、前記車輪の回転数を計測するセンサと、前記車輪の回転を停止するブレーキと、前記車体に装着される作業装置を駆動するPTO軸と、前記第1モータからの動力が伝達される第1入力軸と、前記第2モータからの動力が伝達される第2入力軸と、を備え、前記制御装置は、前記車輪の回転を停止させるときに、前記所要回転数を0に制御する前記指令信号を送信した後、前記センサで計測された回転数が0でないときに前記ブレーキを作動させ、前記遊星歯車機構は、内歯と外歯とを有し、前記外歯に前記第1入力軸からの動力が伝達され且つ前記外歯から前記車軸へと動力を伝達するリング歯車と、前記第2入力軸から動力が入力される太陽歯車と、前記内歯及び前記太陽歯車と噛み合う遊星歯車と、前記遊星歯車を支持し且つ前記PTO軸に動力を出力する遊星キャリアとを有し、前記第1入力軸からの動力及び前記第2入力軸からの動力が入力され、入力された動力を前記車軸及び前記PTO軸に出力する。
【0008】
作業車両は、車体と、前記車体を走行可能に支持する車輪と、第1モータと、第2モータと、前記第1モータ及び前記第2モータの動力が入力され、入力された動力を前記車輪の車軸に出力する遊星歯車機構と、前記車輪の所要回転数に応じて前記第1モータ及び前記第2モータに対して前記所要回転数を得るために必要な回転数での駆動を指令する指令信号を送信する制御装置と、前記車輪の回転数を計測するセンサと、前記車輪の回転を停止するブレーキと、前記車体に装着される作業装置を駆動するPTO軸と、前記第1モータからの動力が伝達される第1入力軸と、前記第2モータからの動力が伝達される第2入力軸と、を備え、前記制御装置は、前記車輪の回転を停止させるときに、前記所要回転数を0に制御する前記指令信号を送信した後、前記センサで計測された回転数が0でないときに前記ブレーキを作動させ、前記遊星歯車機構は、内歯と外歯とを有し、前記外歯に前記第1入力軸からの動力が伝達され且つ前記外歯から前記PTO軸へと動力を伝達するリング歯車と、前記第2入力軸から動力が入力される太陽歯車と、前記内歯及び前記太陽歯車と噛み合う遊星歯車と、前記遊星歯車を支持し且つ前記車軸に動力を出力する遊星キャリアとを有し、前記第1入力軸からの動力及び前記第2入力軸からの動力が入力され、入力された動力を前記車軸及び前記PTO軸に出力する。
【0009】
好ましくは、前記制御装置は、前記車輪の回転を停止させるときに、前記指令信号として前記第1モータ又は前記第2モータに回転を停止させる指令信号を送信する。
【0010】
好ましくは、前記車軸の回転方向を切り換え可能な切り換え機構を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のモータの動力を遊星歯車機構に入力して遊星歯車機構から出力軸に動力を出力する構成を備えた動力伝達機構において、出力軸の回転を確実に停止させることが可能な動力伝達機構及びこの動力伝達機構を備えた作業車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る動力伝達機構の第一実施形態を示す図である。
図2】本発明に係る動力伝達機構の第二実施形態を示す図である。
図3】本発明に係る動力伝達機構の第三実施形態を示す図である。
図4】第一実施形態の動力伝達機構を駆動した場合における第1モータ及び第2モータのトルクと回転数の関係を示すモータNTカーブの一例であって、切り換え機構を有する場合を示している。
図5】第二実施形態の動力伝達機構を駆動した場合における第1モータ及び第2モータのトルクと回転数の関係を示すモータNTカーブの一例であって、切り換え機構を有さない場合を示している。
図6】切り換え機構を有する場合における第1モータの出力と第2モータの出力と、切り換え機構を有さない場合における第1モータの出力と第2モータの出力を示している。
図7】第二実施形態の動力伝達機構を駆動した場合における第1モータ及び第2モータのトルクと回転数の関係を示すモータNTカーブの例を示している。
図8】制御装置が車輪の回転を停止させるときの制御フローの一例を示している。
図9】本発明に係る作業車両の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態(第一実施形態)に係る動力伝達機構1を示している。
本発明に係る動力伝達機構1は、産業機械(農業機械、建設機械、ユーティリティビークル、モア、エンジン発電機等)や各種機械の動力伝達機構として幅広く使用することが可能であり、例えば、トラクタ等の作業車両2に装備して使用可能である。以下の説明では、動力伝達機構1が、作業車両2に備えられている場合を例として説明する。
【0015】
図9は、本発明に係る作業車両2の一例であるトラクタを示している。作業車両2は、車体3と、車体3を走行可能に支持する走行装置4と、車体3に搭載された運転席8及び動力伝達機構1を備えている。走行装置4は、車輪5を有している。車輪5は、前輪5Fと後輪5Rとを含む。車体3の後部には3点リンク機構等の連結部6が設けられており、当該連結部6には作業装置7が着脱可能に装着されている。作業装置7は、例えば、農薬や肥料等を散布する散布機、種をまく播種機、耕運する耕耘機、苗を植える移植機等の対地作業機であるが、これらに限定されない。
【0016】
以下、第一実施形態の動力伝達機構1の構成について説明する。
図1に示すように、動力伝達機構1は、第1モータ11、第2モータ12、第1入力軸13、第2入力軸14、第1出力軸15、第2出力軸16、伝達機構17を備えている。
第1モータ11及び第2モータ12は、好ましくは電動モータである。第1モータ11及び第2モータ12の駆動は、後述する制御装置50によって制御される。制御装置50は、例えば、動力伝達機構1の作動時において、第1モータ11を一定の回転数で回転させ、第2モータ12の回転数を必要に応じて変化させる。この場合、第2モータ12の回転数は、第2出力軸16の必要回転数に応じて変化する。第1モータ11と第2モータ12の出力(馬力)は、同じであっても一方が他方より大きくてもよいが、第2モータ12は、第1モータ11よりも低出力且つ小型のモータであることが好ましい。第1モータ11と第2モータ12は、一方向(正転方向)にのみ回転可能なものであってもよいし、一方向(正転方向)と他方向(逆転方向)とに回転可能なものであってもよい。
【0017】
動力伝達機構1は、第1モータ11及び第2モータ12に加えて更に別のモータを備えていてもよい。つまり、動力伝達機構1は、少なくとも2つ以上のモータを備えていればよく、3つ以上のモータを備えていてもよい。
第1入力軸13は、第1モータ11の動力が伝達(入力)される軸である。第1入力軸13は、第1モータ11から突出しており、第1モータ11の駆動によって回転する。第1入力軸13には、第1入力歯車21が取り付けられている。第1入力軸13は、第1モータ11の動力を遊星歯車機構20に伝達する。
【0018】
第2入力軸14は、第2モータ12の動力が伝達(入力)される軸である。第2入力軸14は、第2モータ12から突出しており、第2モータ12の駆動によって回転する。第2入力軸14には、第2入力歯車22が取り付けられている。第2入力軸14は、第2モータ12の動力を遊星歯車機構20に伝達する。
第1出力軸15は、第1駆動部23に動力を伝達(出力)する軸である。本実施形態の場合、第1駆動部23は作業車両2に装着される作業装置7であって、第1出力軸15は作業装置7に動力を伝達するPTO軸15である。PTO軸15は、車体3に装着される作業装置7を駆動する。第1出力軸(PTO軸)15は、後述する伝達機構17から伝達される動力を作業装置7に出力する。作業装置7は、例えば油圧ポンプ等の油圧アクチュエータにより駆動される装置である。この場合、PTO軸15から出力された動力によって油圧アクチュエータが駆動され、油圧アクチュエータの駆動によって作業装置7が駆動される。
【0019】
第2出力軸16は、第2駆動部24に動力を伝達(出力)する軸である。本実施形態の場合、第2駆動部24は、作業車両2に備えられた走行装置4である。第2出力軸16は、伝達機構17から伝達される動力を走行装置4に出力する。本実施形態の場合、第2出力軸16は、走行装置4の車輪5が接続される車軸16である。車軸16は、作業車両2の左側の車輪と接続される左車軸と、作業車両2の右側の車輪と接続される右車軸とを含む。本実施形態の場合、車軸16は、後輪5Rの車軸であるが、前輪5Fの車軸であってもよい。
【0020】
伝達機構17は、第1モータ11と第2モータ12の少なくとも一方(即ち、いずれか一方又は両方)のモータの動力を作業装置7に出力する。伝達機構17は、第1入力軸13及び第2入力軸14から動力が入力される遊星歯車機構20を含んでいる。具体的には、伝達機構17は、図1に示す構成のうち、「遊星歯車機構20、第1入力歯車21、第2入力歯車22、第1歯車29、第1軸30、第2歯車32、第3歯車33、切り換え機構36、変速機構38、デフ装置(差動歯車装置)39」を含む。伝達機構17は、第1入力軸13及び第2入力軸14からの動力を、第1出力軸15及び第2出力軸16に出力する。
【0021】
遊星歯車機構20は、第1モータ11及び第2モータ12の動力が入力され、入力された動力を第1出力軸(PTO軸)15及び第2出力軸(車軸)16に出力する。また、遊星歯車機構20は、第1モータ11及び第2モータ12から入力された動力を、PTO軸15を介して作業装置7に出力し、車軸16を介して走行装置4に出力する。
遊星歯車機構20は、太陽歯車25、リング歯車26、遊星歯車27、遊星キャリア28を有している。太陽歯車25は、第1入力軸13と接続されており、第1入力軸13からの動力が入力される。リング歯車26は、内歯と外歯とを有している。内歯は、遊星歯車27と噛み合っている。外歯は、第1歯車29と噛み合っている。リング歯車26は、外歯から第1歯車29等を介して第2出力軸16へと動力を出力する。これにより、リング歯車26は、外歯から第1歯車29等を介して車軸(第2出力軸)16及び走行装置4へと動力を出力することができる。
【0022】
遊星歯車27は、リング歯車26の内歯及び太陽歯車25と噛み合っている。遊星キャリア28は、遊星歯車27を回転(自転及び公転)可能に支持している。遊星キャリア28には、第2入力軸14からの動力が入力される。遊星キャリア28には、第1軸30の一端側が接続されている。第1軸30の他端側には、第3歯車33が接続されている。第3歯車33は、第2入力歯車22と噛み合っている。
【0023】
伝達機構17は、第1入力軸13からの動力を遊星歯車機構20を介さずに第1出力軸15に伝達する第1伝達部31を備えている。第1伝達部31は、第1入力歯車21と噛み合う第2歯車32を有している。第2歯車32は、第1出力軸15と接続されている。第1入力軸13からの動力は、第1入力歯車21から第2歯車32を介して第1出力軸15に伝達される。
【0024】
動力伝達機構1は、第1出力軸15から第1駆動部23への動力の伝達を遮断可能な遮断機構35を備えている。詳しくは、遊星歯車機構20からの動力を出力する軸である第1出力軸15とこの第1出力軸15からの動力を受ける第1駆動部23との間に、第1出力軸15から第1駆動部23への動力の伝達を遮断する遮断機構35が設けられている。
遮断機構35は、第1伝達部31から第1出力軸15を介した第1駆動部23への動力の伝達を遮断可能である。本実施形態の場合、第1駆動部23が作業装置7であるため、遮断機構35は第1出力軸15から作業装置7への動力の伝達を遮断可能である。
【0025】
遮断機構35は、第1伝達部31から第1出力軸15を介した第1駆動部23への動力の伝達を許容する状態と遮断する状態とを切り換え可能な機構であればよく、具体的な機構は特に限定されない。遮断機構35は、例えばクラッチ等である。遮断機構35がクラッチである場合、クラッチを接続すると第1伝達部31から第1出力軸15を介した第1駆動部23への動力の伝達が許容され、クラッチを切断すると第1伝達部31から第1出力軸15を介した第1駆動部23への動力の伝達が遮断される。このように、遮断機構35を備えることによって、遊星歯車機構20から出力される動力が第1出力軸15を介して第1駆動部23に伝達されないようにすることができる。
【0026】
動力伝達機構1は、第2出力軸16の回転方向を切り換え可能な切り換え機構36を備えている。切り換え機構36は、第2出力軸16の回転方向を正転方向(時計回り方向)と逆転方向(反時計回り方向)と切り換え可能である。第2出力軸16が車軸16である場合、第2出力軸16の回転方向を正転方向とした場合、走行装置4の車輪5が正転して作業車両2は前進する。第2出力軸16の回転方向を逆転方向とした場合、走行装置4の車輪5が逆転して作業車両2は後進する。切り換え機構36は、第2出力軸16の回転方向を切り換え可能な機構であれば特に限定されず、例えば、レバー等の操作によって複数のギアの噛み合い形態を変更することにより第2出力軸16の回転方向を切り換える機構等である。
【0027】
伝達機構17は、遊星歯車機構20から第2出力軸16に動力を伝達する第2伝達部37を備えている。第2伝達部37には、切り換え機構36が設けられている。第2伝達部37は、第1歯車29、切り換え機構36、変速機構38とデフ装置39を有している。第1歯車29には、遊星歯車機構20のリング歯車26の外歯から出力された回転動力が伝達される。変速機構38は、作業車両2の副変速機構(主変速機構に加えて設けられる変速機構)であり、レバー等の操作によって作動し、第1歯車29の回転により第2伝達部37に伝達された回転動力の回転数を変化させる。デフ装置39は、変速機構38により変速された回転数の回転動力を第2出力軸16の左車軸と右車軸とに適当に配分して伝達する。
【0028】
上記した第一実施形態の動力伝達機構1によれば、第1モータ11が一定回転数で回転することにより、第1出力軸(PTO軸)15を一定回転数で駆動することができる。また、第2モータ12の回転数を変更することにより、第2出力軸(車軸)16の回転数を変化させて作業車両2の走行速度を制御することができる。また、第1モータ11と第2モータ12の動力を合成することによって、作業車両2に必要な走行トルクと走行速度とを制御することができる。また、PTO軸15に必要なトルクや回転数に合わせて第1モータ11を設計することにより、PTO軸15等の駆動の制御が容易となる。
【0029】
図2は、本発明の別の実施形態(第二実施形態)に係る動力伝達機構1を示している。
図2に示すように、第二実施形態の動力伝達機構1は、第一実施形態と同様に、第1モータ11、第2モータ12、第1入力軸13、第2入力軸14、第1出力軸15、第2出力軸16、伝達機構17を備えている。第一実施形態と第二実施形態で共通する構成は、同じ符号を付している。
【0030】
第1モータ11及び第2モータ12の構成は、第一実施形態と同じである。
第1入力軸13は、第1モータ11の動力が伝達(入力)される軸である。第1入力軸13は、第1モータ11から突出しており、第1モータ11の駆動によって回転する。第1入力軸13には、第1入力歯車21が取り付けられている。第1入力軸13は、第1モータ11の動力を、第1入力歯車21を介して遊星歯車機構20に伝達する。
【0031】
第2入力軸14は、第2モータ12の動力が伝達(入力)される軸である。第2入力軸14は、第2モータ12から突出しており、第2モータ12の駆動によって回転する。第2入力軸14には、第2入力歯車22が取り付けられている。第2入力歯車22には、第1伝達歯車40が噛み合っている。第1伝達歯車40には、第1伝達軸41が接続されている。第2入力軸14は、第2モータ12の動力を、第2入力歯車22、第1伝達歯車40、第1伝達軸41を介して遊星歯車機構20に伝達する。
【0032】
第1出力軸15は、第1駆動部23に動力を伝達(出力)する軸である。本実施形態の場合も、第1駆動部23は、作業車両2に装着される作業装置7である。第1出力軸15は、作業装置7に動力を伝達するPTO軸15である。第1出力軸(PTO軸)15は、伝達機構17から伝達される動力を作業装置7に出力する。作業装置7は、例えば油圧ポンプ等の油圧アクチュエータにより駆動される装置である。この場合、PTO軸15から出力された動力によって油圧アクチュエータが駆動され、油圧アクチュエータの駆動によって作業装置7が駆動される。
【0033】
第2出力軸16は、第2駆動部24に動力を伝達(出力)する軸である。本実施形態の場合も第一実施形態と同様に、第2駆動部24は作業車両2に備えられた走行装置4である。第2出力軸16は、伝達機構17から伝達される動力を走行装置4に出力する。第2出力軸16は、走行装置4の車輪5が接続される車軸16である。
伝達機構17は、第1モータ11と第2モータ12の少なくとも一方(即ち、いずれか一方又は両方)のモータの動力を作業装置7に出力する。伝達機構17は、第1入力軸13及び第2入力軸14から動力が入力される遊星歯車機構20を含んでいる。具体的には、伝達機構17は、図2に示す構成のうち、「遊星歯車機構20、第1入力歯車21、第2入力歯車22、第1歯車29、第1伝達歯車40、第1伝達軸41、第2伝達軸43、第2伝達歯車44、第3伝達歯車45、切り換え機構36、変速機構38、デフ装置(差動歯車装置)39」を含む。伝達機構17は、第1入力軸13及び第2入力軸14からの動力を、第1出力軸15及び第2出力軸16に出力する。
【0034】
遊星歯車機構20は、第1モータ11及び第2モータ12から入力された動力を走行装置4に出力する。また、遊星歯車機構20は、第1モータ11及び第2モータ12から入力された動力を作業装置7に出力する。
遊星歯車機構20は、太陽歯車25、リング歯車26、遊星歯車27、遊星キャリア28を有している。太陽歯車25は、第1伝達軸41と接続されており、第2入力軸14からの動力が第2入力歯車22、第1伝達歯車40、第1伝達軸41を介して入力される。リング歯車26は、内歯と外歯とを有している。内歯は、遊星歯車27と噛み合っている。外歯は、第1入力歯車21及び第1歯車29と噛み合っている。これにより、外歯には、第1入力軸13からの動力が伝達される。また、リング歯車26は、外歯から第1歯車29等を介して第2出力軸16へと動力を出力する。これにより、リング歯車26は、外歯から第1歯車29等を介して車軸(第2出力軸)16及び走行装置4へと動力を出力することができる。
【0035】
遊星歯車27は、リング歯車26の内歯及び太陽歯車25と噛み合っている。遊星キャリア28は、遊星歯車27を回転(自転及び公転)可能に支持している。遊星キャリア28には、第2伝達軸43の一端側が接続されている。第2伝達軸43の他端側には、第2伝達歯車44が接続されている。第2伝達歯車44は、第3伝達歯車45と噛み合っている。
【0036】
伝達機構17は、遊星歯車機構20から第1出力軸15に動力を伝達する第1伝達部31を備えている。第1伝達部31は、第2伝達歯車44と第3伝達歯車45とを有している。第3伝達歯車45は、第1出力軸15と接続されている。遊星キャリア28は、第2伝達軸43と第1伝達部(第2伝達歯車44、第3伝達歯車45)を介して、第1出力軸15に動力を出力する。本実施形態の場合、遊星キャリア28は、第2伝達軸43と第1伝達部(第2伝達歯車44、第3伝達歯車45)を介して、PTO軸15及び作業装置7に動力を出力する。
【0037】
動力伝達機構1は、第1出力軸15から第1駆動部23への動力の伝達を遮断可能な遮断機構35を備えている。遮断機構35の構成及び機能(作用)は、第一実施形態と同様であって、上述した通りである。
伝達機構17は、遊星歯車機構20から第2出力軸16に動力を伝達する第2伝達部37を備えている。第2伝達部37には、切り換え機構36が設けられている。第2伝達部37及び切り換え機構36の構成及び機能(作用)は、第一実施形態と同様であって、上述した通りである。
【0038】
第二実施形態の動力伝達機構1の場合、制御装置50は、作業装置7及び走行装置4の必要出力に応じて第1モータ11及び第2モータ12の回転数を変化させる。第1モータ11及び第2モータ12の回転数を変化させることで、車軸16(走行装置4)やPTO軸15(作業装置7)のきめ細かい制御が可能となる。具体的には、第1モータ11の回転動力はリング歯車26等を介して車軸16にそのまま出力されるため、第1モータ11の回転数とトルクとを調整することによって、走行装置4の駆動を制御することができる。また、制御装置50により制御した第1モータ11と第2モータ12の動力を合成することによって、PTO軸15に必要なトルクや回転数を出力することができ、作業装置7の駆動を制御することができる。
【0039】
図3は、本発明のさらに別の実施形態(第三実施形態)に係る動力伝達機構1を示している。
図3に示すように、第三実施形態の動力伝達機構1は、第一及び第二実施形態と同様に、第1モータ11、第2モータ12、第1入力軸13、第2入力軸14、第1出力軸15、第2出力軸16、伝達機構17を備えている。図3において、第三実施形態の構成のうち、第一又は第二実施形態と共通する構成は、第一又は第二実施形態と同じ符号を付している。
【0040】
第1モータ11及び第2モータ12の構成は、第一及び第二実施形態と同じである。
第1入力軸13は、第1モータ11の動力が伝達(入力)される軸である。第1入力軸13は、第1モータ11から突出しており、第1モータ11の駆動によって回転する。第1入力軸13には、第1入力歯車21が取り付けられている。第1入力軸13は、第1モータ11の動力を、第1入力歯車21を介して遊星歯車機構20に伝達する。
【0041】
第2入力軸14は、第2モータ12の動力が伝達(入力)される軸である。第2入力軸14は、第2モータ12から突出しており、第2モータ12の駆動によって回転する。第2入力軸14には、第2入力歯車22が取り付けられている。第2入力歯車22には、第1伝達歯車40が噛み合っている。第1伝達歯車40には、第1伝達軸41が接続されている。第2入力軸14は、第2モータ12の動力を、第2入力歯車22、第1伝達歯車40、第1伝達軸41を介して遊星歯車機構20に伝達する。
【0042】
第1出力軸15は、第1駆動部23に動力を伝達(出力)する軸である。本実施形態の場合も、第1駆動部23は、作業車両2に装着される作業装置7である。第1出力軸15は、作業装置7に動力を伝達するPTO軸15である。第1出力軸(PTO軸)15は、伝達機構17から伝達される動力を作業装置7に出力する。作業装置7は、例えば油圧ポンプ等の油圧アクチュエータにより駆動される装置である。この場合、PTO軸15から出力された動力によって油圧アクチュエータが駆動され、油圧アクチュエータの駆動によって作業装置7が駆動される。
【0043】
第2出力軸16は、第2駆動部24に動力を伝達(出力)する軸である。本実施形態の場合も第一及び第二実施形態と同様に、第2駆動部24は作業車両2に備えられた走行装置4である。第2出力軸16は、伝達機構17から伝達される動力を走行装置4に出力する。第2出力軸16は、走行装置4の車輪5が接続される車軸16である。
伝達機構17は、第1モータ11と第2モータ12の少なくとも一方(即ち、いずれか一方又は両方)のモータの動力を作業装置7に出力する。伝達機構17は、第1入力軸13及び第2入力軸14から動力が入力される遊星歯車機構20を含んでいる。具体的には、伝達機構17は、図3に示す構成のうち、「遊星歯車機構20、第1入力歯車21、第2入力歯車22、第1歯車29、第1伝達歯車40、第1伝達軸41、第2伝達軸43、第2伝達歯車44、第3伝達歯車45、切り換え機構36、変速機構38、デフ装置(差動歯車装置)39」を含む。伝達機構17は、第1入力軸13及び第2入力軸14からの動力を、第1出力軸15及び第2出力軸16に出力する。
【0044】
伝達機構17は、遊星歯車機構20から第1出力軸15に動力を伝達する第1伝達部31を備えている。第1伝達部31は、第1歯車29と第3伝達歯車45とを有している。第3伝達歯車45は、第1出力軸15と接続されている。
伝達機構17は、遊星歯車機構20から第2出力軸16に動力を伝達する第2伝達部37を備えている。第2伝達部37は、第2伝達歯車44、切り換え機構36、変速機構38、デフ装置39を有している。切り換え機構36及び変速機構38の構成及び機能(作用)は、第一実施形態と同様であって、上述した通りである。
【0045】
遊星歯車機構20は、第1モータ11及び第2モータ12から入力された動力を走行装置4に出力する。また、遊星歯車機構20は、第1モータ11及び第2モータ12から入力された動力を作業装置7に出力する。
遊星歯車機構20は、太陽歯車25、リング歯車26、遊星歯車27、遊星キャリア28を有している。太陽歯車25は、第1伝達軸41と接続されており、第2入力軸14からの動力が第2入力歯車22、第1伝達歯車40、第1伝達軸41を介して入力される。リング歯車26は、内歯と外歯とを有している。内歯は、遊星歯車27と噛み合っている。外歯は、第1入力歯車21及び第1歯車29と噛み合っている。これにより、外歯には、第1入力軸13からの動力が伝達される。また、リング歯車26は、外歯から第1歯車29等を介して第1出力軸15へと動力を出力する。これにより、リング歯車26は、外歯から第1歯車29等を介してPTO軸(第1出力軸)15及び作業装置7へと動力を出力することができる。
【0046】
遊星歯車27は、リング歯車26の内歯及び太陽歯車25と噛み合っている。遊星キャリア28は、遊星歯車27を回転(自転及び公転)可能に支持している。遊星キャリア28には、第2伝達軸43の一端側が接続されている。第2伝達軸43の他端側には、第2伝達歯車44が接続されている。第2伝達歯車44は、切り換え機構36に回転動力を伝達する。
【0047】
遊星キャリア28は、第2伝達軸43と第2伝達歯車44等を含む第2伝達部37を介して、第2出力軸16に動力を出力する。本実施形態の場合、遊星キャリア28は、第2伝達軸43と第2伝達部37を介して、車軸(第2出力軸)16及び走行装置4に動力を出力する。
動力伝達機構1は、第1出力軸15から第1駆動部23への動力の伝達を遮断可能な遮断機構35を備えている。遮断機構35の構成及び機能(作用)は、第一実施形態と同様であって、上述した通りである。
【0048】
第三実施形態の場合、制御装置50は、第一実施形態と同様に、動力伝達機構1の作動時において、第1モータ11を一定の回転数で回転させ、第2モータ12の回転数を必要に応じて変化させる。これにより、第1出力軸(PTO軸)15を一定回転数で駆動することができる。また、第2モータ12の回転数を変更することにより、第2出力軸(車軸)16の回転数を変化させて作業車両2の走行速度を制御することができる。また、第1モータ11と第2モータ12の動力を合成することによって、作業車両2に必要な走行トルクと走行速度とを制御することができる。また、PTO軸15に必要なトルクや回転数に合わせて第1モータ11を設計することにより、PTO軸15等の駆動の制御が容易となる。
【0049】
図1図2図3に示すように、第一、第二、第三実施形態の動力伝達機構1は、第1モータ11及び第2モータ12の動作を制御する制御装置50を備えている。制御装置50は、CPU等の演算部やRAMやROM等の記憶部を備えたコンピュータであって、記憶部に記憶された制御プログラム等に従って第1モータ11及び第2モータ12の動作を制御する。
【0050】
制御装置50は、第2出力軸16の所要回転数(要求される回転数)に応じて、第1モータ11及び第2モータ12に対して、第2出力軸16の所要回転数を得るために必要な回転数での駆動を指令する指令信号を送信する。第2出力軸16が車軸16である場合、制御装置50は、車輪5の所要回転数に応じて、第1モータ11及び第2モータ12に対して、車輪5の所要回転数を得るために必要な回転数での駆動を指令する指令信号を送信する。
【0051】
制御装置50は、例えば、第1モータ11の回転数を一定に維持し、第2モータ12の回転数を第2駆動部24(走行装置4)の必要出力(必要なトルク又は回転数)に応じて変化させる。或いは、制御装置50は、作業装置7及び走行装置4の必要出力(必要なトルク及び/又は回転数)に応じて第1モータ11及び第2モータ12の回転数を変化させる。制御装置50は、第1モータ11の回転数と第2モータ12の回転数との差を変化させることにより、遊星歯車機構20からの出力を変化させることができる。これにより、第2駆動部24(走行装置4)の必要出力に応じて、第2出力軸16の回転数及びトルクを変化させることができる。
【0052】
制御装置50は、第2出力軸16の回転方向を正転方向から逆転方向に変更する場合、切り換え機構36を作動させることができる。
動力伝達機構1において、第2出力軸16の回転方向を正転方向から逆転方向に変更するとき、第2モータ12は、第1モータ11の駆動により遊星歯車機構20に入力されて第2出力軸16を正転方向に回転させる動力を打ち消す方向の回転動力を遊星歯車機構20に入力する。
【0053】
ここで、切り換え機構36を作動させない場合、第1モータ11の駆動により遊星歯車機構20に入力されて第2出力軸16を正転方向に回転させる動力を打ち消すためには、打ち消す方向の大きな回転動力を第2モータ12から遊星歯車機構20に入力する必要がある。
一方、切り換え機構36を作動させる場合、第2出力軸16の回転方向を正転方向から逆転方向に変更するときに、切り換え機構36により第2出力軸16の回転方向を正転方向から逆転方向に切り換えることによって、切り換えない場合に比べて打ち消す方向の回転動力の入力を減少させることができる。これにより、第2出力軸16の回転方向を正転方向から逆転方向に変更する場合において、第2モータ12から遊星歯車機構20に入力する上述の打ち消す方向の回転動力を小さく或いは0とすることができる。
【0054】
以下、切り換え機構36を設けることによる利点について、具体例(図4図7参照)を挙げて説明する。図4図7において、M1は第1モータ11を意味し、M2は第2モータ12を意味する。また、横軸は、第1モータ11と第2モータの回転数(rpm)であり、右側(+)は正転方向の回転数、左側(-)は逆転方向の回転数である。縦軸は、第1モータ11と第2モータのトルク(N/m)であり、上側(+)は正転方向のトルク(正のトルク)、下側(-)は逆転方向のトルク(負のトルク)である。
【0055】
図4及び図5は、第一実施形態の動力伝達機構1を駆動した場合における第1モータ11及び第2モータ12のトルクと回転数の関係を示すモータNTカーブの一例を示している。図4は切り換え機構36を有する(又は作動させた場合)場合、図5は切り換え機構36を有さない場合(又は作動させない場合)を示している。
図4及び図5に示すモータNTカーブは、第1歯車29の歯数=77、第2歯車32の歯数=44、第3歯車33の歯数=154、第1入力歯車21の歯数=10、第2入力歯車22の歯数=77、太陽歯車25の歯数=27、遊星歯車27の歯数=18、リング歯車26の内歯の歯数=63、外歯の歯数=77とした場合を示している。各歯車の歯数はこの例には限定されないが、各歯車の歯数の大小関係はこの例に従うことが好ましい。
【0056】
図5に示すように、切り換え機構36を有さない場合、第1モータ11の回転数を正転方向に一定とした状態で、車輪5を逆転させる(作業車両2を後進させる)とき、つまり第2出力軸16の回転方向を逆転方向とするとき、第2モータ12の正転方向の回転数を第1モータ11の回転数よりも大きくする必要がある(右上の白丸を参照)。これは、第2出力軸16の回転方向を逆転方向とするためには、第2モータ12の正転方向の回転数を増加させることによって、第1モータ11の正転方向の回転を打ち消す必要があるためである。
【0057】
一方、図4に示すように、切り換え機構36を有する場合、第1モータ11の回転数を正転方向に一定とした状態で、車輪5を逆転させる(作業車両2を後進させる)とき、つまり第2出力軸16の回転方向を逆転方向とするとき、第2モータ12の正転方向の回転数を第1モータ11の回転数よりも大きくする必要がない。これは、切り換え機構36によって、第2出力軸16の回転方向を逆転方向に切り換えることができるため、第2モータ12の正転方向の回転数を増加させることによって第1モータ11の正転方向の回転を打ち消す必要がないためである。
【0058】
図6は、切り換え機構36を有する場合における第1モータ11の出力と第2モータ12の出力、切り換え機構36を有さない場合における第1モータ11の出力と第2モータ12の出力を示している。切り換え機構36を有する場合の第1モータ11の出力と第2モータ12の出力と、切り換え機構36を有さない場合の第1モータ11の出力と第2モータ12の出力とは、第2出力軸16から同じ出力(トルク)を得るために必要な第1モータ11の出力と第2モータ12の出力である。図6では、第2出力軸16の回転方向を逆転方向とする場合の第1モータ11の出力と第2モータ12の出力を示している。
【0059】
図6に示すように、切り換え機構36を有する場合、切り換え機構36を有さない場合に比べて、第2出力軸16から同じ出力を得るために必要な第2モータ12の出力を小さくすることができる。これは、上述したように、切り換え機構36を有する場合、切り換え機構36によって第2出力軸16の回転方向を逆転方向に切り換えることができるため、第2モータ12の正転方向の回転数を増加させることによって第1モータ11の正転方向の回転を打ち消す必要がないためである。
【0060】
図5図6に示したように、動力伝達機構1は、切り換え機構36を有する場合、第2モータ12の出力を小さくしても、第2出力軸16の回転方向を正転方向から逆転方向に切り換えることが可能となる。そのため、第2モータ12を小型化することができ、動力伝達機構1も小型化することが可能となる。
図7は、第二実施形態の動力伝達機構1を駆動した場合における第1モータ11及び第2モータ12のトルクと回転数の関係を示すモータNTカーブの例を示している。図7は切り換え機構36を有する場合を示している。
【0061】
図7に示すモータNTカーブは、第1歯車29の歯数=20、第1伝達歯車40の歯数=154、第2伝達歯車44の歯数=10、第3伝達歯車45の歯数=37、第1入力歯車21の歯数=10、第2入力歯車22の歯数=77、太陽歯車25の歯数=27、遊星歯車27の歯数=18、リング歯車26の内歯の歯数=63、外歯の歯数=20とした場合を示している。各歯車の歯数はこの例には限定されないが、各歯車の歯数の大小関係はこの例に従うことが好ましい。
【0062】
第二実施形態の動力伝達機構1も、切り換え機構36を有する場合、第一実施形態の動力伝達機構1と同様の理由により、第2モータ12の出力を小さくすることができる。これにより、第2モータ12を小型化することができ、動力伝達機構1も小型化することが可能となる。
図1図2図3に示すように、動力伝達機構1は、第2出力軸16の回転数を計測するセンサ51と、第2出力軸16の回転を停止するブレーキ52とを備えている。第2出力軸16が車軸16である場合、作業車両2は、車輪5の回転数を計測するセンサ51と、車輪5の回転を停止するブレーキ52とを備える。センサ51は、計測した第2出力軸(車軸)16の回転数の情報を制御装置50に送信する。ブレーキ52は、例えば、機械的に車輪5の回転を停止することができるメカブレーキであって、制御装置50からの制御信号によって作動する。
【0063】
以下、制御装置50が第2出力軸16の回転を停止させるときの制御について説明する。ここでは、第2出力軸16が車軸16である場合を例として、制御装置50が車輪5の回転を停止させるときの制御について説明する。但し、この制御は、第2出力軸16が車軸16以外の軸である場合にも適用できる。従って、以下の説明における車輪5を第2出力軸16と読み替えることができる。また、この制御は、制御装置50が第1出力軸15の回転を停止させるときの制御にも適用できる。この場合、動力伝達機構1は、センサ51が第1出力軸15の回転数を計測し、ブレーキ52が第1出力軸15の回転を停止する構成とし、以下の説明における車輪5を第1出力軸(PTO軸)15と読み替えればよい。
【0064】
図8は、制御装置50が車輪5の回転を停止させるときの制御フローの一例を示している。
制御装置50は、車輪5の所要回転数(要求される回転数)に応じて、第1モータ11及び第2モータ12に対して、車軸5が所要回転数(0以外)を得るために必要な回転数での駆動を指令する指令信号を送信する(S1)。これにより、第1モータ11と第2モータ12は、車輪5を所要回転数で回転させるために必要な回転数で回転する(S2)。
【0065】
次いで、制御装置50は、車輪5の回転を停止させるときに、指令信号として第1モータ11及び第2モータ12に対して、車輪5の所要回転数を0に制御する指令信号を送信する(S3)。例えば、制御装置50は、車輪5の回転を停止させるときに、指令信号として第1モータ11又は第2モータ12に回転を停止させる指令信号を送信する。もしくは、制御装置50は、車輪5の回転を停止させるときに、第1モータ11及び第2モータ12に対して車輪5の回転数を0とするために適当な回転数の比率で回転することを指令する指令信号を送信する。
【0066】
その後、制御装置50は、センサ51で計測された車輪5の回転数が0(rpm)であるか否かを判断する(S4)。センサ51で計測された車輪5の回転数が0でない場合(S4,No)、制御装置50は、ブレーキ52を作動させるための制御信号を送信し、ブレーキ52を作動させる(S5)。これにより、車輪5は停止する(S6)ため、車輪5の回転停止のための制御を終了する。センサ51で計測された車輪5の回転数が0である場合(S4,Yes)、車輪5は停止している(S5)ため、車輪5の回転停止のための制御を終了する。
【0067】
動力伝達機構1は、遊星歯車機構20を使用している関係上、制御装置50が第1モータ11及び第2モータ12に対して車輪5を停止させるために必要な回転数での駆動を指令する指令信号を送信した場合でも、車輪5の回転を完全に停止できない場合がある。別の言い方をすれば、第2出力軸16の回転数を0とするために第1モータ11及び第2モータ12の回転数を調整しても、回転数のバラツキが生じることによって、回転数0を維持できない場合がある。
【0068】
そのため、上述したように、制御装置50は、車輪5の回転を停止させるときに、車輪5の所要回転数を0に制御する指令信号を第1モータ11及び第2モータ12に対して送信した後、センサ51で計測された車輪5の回転数が0でないときにブレーキ52を作動させる。詳しくは、制御装置50は、車輪5の所要回転数が0である場合(車輪5を停止させる場合)において、所要回転数を0に制御する指令信号を第1モータ11及び第2モータ12に対して送信したにも関わらず、センサ51で計測された車輪5の回転数が0でない場合には、ブレーキ52に対して当該ブレーキを作動させるための指令信号を送信してブレーキ52を作動させる。これにより、車輪5を確実に停止させることが可能となる。そして、この車輪5の停止は、第1モータ11及び/又は第2モータ12の回転を維持した状態であっても行うことができる。そのため、第1出力軸15の回転を維持したままで、第2出力軸16及び車輪5を停止させることもできる。
【0069】
上記した実施形態の動力伝達機構1は、複数のモータ(第1モータ11、第2モータ12)から遊星歯車機構20に入力された動力を、要求される回転数が異なる複数の出力軸(第1出力軸15、第2出力軸16)へ効率良く分配することができる。また、複数の負荷(第1駆動部23、第2駆動部24)毎に必要な出力のモータを設置した場合と比べてモータを小型化することができる。また、複数の出力軸(第1出力軸15、第2出力軸16)の回転数を任意に制御することができる。また、油圧機構を使用する動力伝達機構に比べて効率が良い。
【0070】
また、上記した実施形態の動力伝達機構1においては、第1モータ11及び/又は第2モータ12の回転数を減少させる(減速する)ことによって、電力を発生させることができる。従って、上記した実施形態の動力伝達機構1は、第1モータ11及び/又は第2モータ12の回転数を減少させることによって、発電装置として利用することができる。
本発明に係る動力伝達機構1及び作業車両2の構成及び効果を纏めると以下の通りである。
【0071】
本発明の一態様の動力伝達機構1は、第1モータ11と、第2モータ12と、第1モータ11の動力が伝達される第1入力軸13と、第2モータ12の動力が伝達される第2入力軸14と、第1駆動部23に動力を伝達する第1出力軸15と、第2駆動部24に動力を伝達する第2出力軸16と、第1入力軸13及び第2入力軸14から動力が入力される遊星歯車機構20を含み、第1入力軸13及び第2入力軸14からの動力を第1出力軸15及び第2出力軸16に出力する伝達機構17と、を備えている。
【0072】
この構成によれば、複数のモータ(第1モータ11、第2モータ12)から遊星歯車機構20に入力された動力を複数の出力軸(第1出力軸15、第2出力軸16)から取り出すことができるため、複数の負荷(第1駆動部23、第2駆動部24)を効率良く駆動させることが可能な動力伝達機構1を提供できる。
また、動力伝達機構1は、第1出力軸15から第1駆動部23への動力の伝達を遮断可能な遮断機構35を備えている。
【0073】
この構成によれば、第1出力軸15への動力の出力が不要な場合には、遮断機構35によって、遊星歯車機構20から出力される動力が第1出力軸15から第1駆動部23に伝達されないようにすることができる。
また、動力伝達機構1は、第2出力軸16の回転方向を切り換え可能な切り換え機構36を備えている。
【0074】
この構成によれば、切り換え機構36によって第2出力軸16の回転方向を切り換え可能であるため、第2出力軸16の回転方向を切り換える際に、遊星歯車機構20から出力される回転動力の方向を切り換える必要がなくなる。そのため、第2出力軸16の回転方向を切り換えるために、高出力のモータを用いる必要がなくなり、モータを小型化することが可能となる。
【0075】
また、第2モータ12は、第2出力軸16の回転方向を正転方向から逆転方向に変更するときに、第1モータ11の駆動により遊星歯車機構20に入力されて第2出力軸16を正転方向に回転させる動力を打ち消す方向の回転動力を遊星歯車機構20に入力する。
この構成によれば、第1モータ11の駆動により遊星歯車機構20に入力されて第2出力軸16を正転方向に回転させる動力の少なくとも一部を、第2モータ12によって打ち消すことができるため、遊星歯車機構20から出力される回転動力の大きさや方向を適当に調整することができる。
【0076】
また、動力伝達機構1は、第2出力軸16の回転方向を正転方向から逆転方向に変更するときに、切り換え機構36により第2出力軸16の回転方向を正転方向から逆転方向に切り換えることによって、切り換えない場合に比べて打ち消す方向の回転動力の入力を減少させる。
この構成によれば、切り換え機構36を切り換えることによって、第2モータ12を高出力のものとしなくても、第2出力軸16の回転方向を正転方向から逆転方向に変更することが可能となる。そのため、第2モータ12を低出力のものとすることができ、第2モータ12の小型化が可能となる。
【0077】
また、第2モータ12は、第1モータ11よりも低出力且つ小型のモータである。
この構成によれば、動力伝達機構1の小型化及び低コスト化が可能となる。
また、第1モータ11は一定の回転数で回転し、第2モータ12は第2出力軸16の必要回転数に応じて回転数が変化する。
この構成によれば、第1モータ11の回転数を変化させずに第2モータ12の回転数を変化させることによって第2出力軸16を必要回転数で回転させることができるため、回転数の制御が容易である。この構成は、第一実施形態及び第三実施形態の動力伝達機構において好適である。
【0078】
また、第1モータ11及び第2モータ12は、第1出力軸及15及び第2出力軸16の必要回転数に応じて回転数が変化する。
この構成によれば、第1出力軸及15及び第2出力軸16の回転数をきめ細かく制御することができる。この構成は、第二実施形態の動力伝達機構において好適である。
また、遊星歯車機構20は、第1入力軸13からの動力が入力される太陽歯車25と、内歯と外歯とを有し、外歯から第2出力軸16へと動力を出力するリング歯車26と、内歯及び太陽歯車25と噛み合う遊星歯車27と、遊星歯車27を支持し且つ第2入力軸14からの動力が入力される遊星キャリア28と、を有している。
【0079】
この構成によれば、第1入力軸13からの動力を太陽歯車25に入力し、第2入力軸14からの動力を遊星キャリア28に入力し、リング歯車26から第2出力軸16へと動力を出力することができる。そのため、第1入力軸13及び第2入力軸14から入力された動力を効率良く第2出力軸16へと出力することができる。
また、遊星歯車機構20は、内歯と外歯とを有し、外歯に第1入力軸13からの動力が伝達され且つ外歯から第2出力軸16へと動力を出力するリング歯車26と、第2入力軸14から動力が入力される太陽歯車25と、内歯及び太陽歯車25と噛み合う遊星歯車27と、遊星歯車27を支持し且つ第1出力軸15に動力を出力する遊星キャリア28と、を有している。
【0080】
この構成によれば、第1入力軸13からの動力をリング歯車26に入力し、第2入力軸14からの動力を太陽歯車25に入力し、遊星キャリア28から第1出力軸15に動力を出力し、リング歯車26から第2出力軸16へと動力を出力することができる。そのため、第1入力軸13及び第2入力軸14から入力された動力を効率良く第2出力軸16へと出力することができる。
【0081】
また、遊星歯車機構20は、内歯と外歯とを有し、外歯に第1入力軸13からの動力が伝達され且つ外歯から第1出力軸15へと動力を出力するリング歯車26と、第2入力軸14から動力が入力される太陽歯車25と、内歯及び太陽歯車25と噛み合う遊星歯車27と、遊星歯車27を支持し且つ第2出力軸16に動力を出力する遊星キャリア28と、を有している。
【0082】
この構成によれば、第1入力軸13からの動力をリング歯車26に入力し、第2入力軸14からの動力を太陽歯車25に入力し、遊星キャリア28から第2出力軸16に動力を出力し、リング歯車26から第1出力軸15へと動力を出力することができる。そのため、第1入力軸13及び第2入力軸14から入力された動力を効率良く第2出力軸16へと出力することができる。
【0083】
また、伝達機構17は、第1入力軸13からの動力を遊星歯車機構20を介さずに第1出力軸15に伝達する第1伝達部31を備え、遮断機構35は、第1伝達部31から第1出力軸15を介した第1駆動部23への動力の伝達を遮断可能である。
この構成によれば、第1伝達部31によって第1入力軸13からの動力を遊星歯車機構20の影響を受けずに第1出力軸15に伝達することができるとともに、遮断機構35によって第1伝達部31から第1出力軸15を介した第1駆動部23への動力の伝達を遮断することができる。
【0084】
また、伝達機構17は、遊星歯車機構20から第1出力軸15に動力を伝達する第1伝達部31を備え、遮断機構35は、第1伝達部31から第1出力軸15を介した第1駆動部23への動力の伝達を遮断可能である。
この構成によれば、第1伝達部31によって遊星歯車機構20から第1出力軸15に動力を伝達することができるとともに、遮断機構35によって第1伝達部31から第1出力軸15を介した第1駆動部23への動力の伝達を遮断することができる。
【0085】
また、伝達機構17は、遊星歯車機構20から第2出力軸16に動力を伝達する第2伝達部37を備え、切り換え機構36は、第2伝達部37に設けられている。
この構成によれば、第2伝達部37によって遊星歯車機構20から第2出力軸16に動力を伝達することができるとともに、切り換え機構36によって第2伝達部37において第2出力軸16の回転方向を容易に且つ確実に切り換えることができる。
【0086】
また、動力伝達機構1は、作業車両2に装備される動力伝達機構であって、第1駆動部23は、作業車両2に装着される作業装置7であり、第2駆動部24は、作業車両2に備えられた走行装置4である。
この構成によれば、動力伝達機構1によって、作業車両2に装着される作業装置7と作業車両2に備えられた走行装置4とを効率良く駆動させることができる。
【0087】
また、第1出力軸15は、作業装置7が接続されるPTO軸15であり、第2出力軸16は、走行装置4の車輪5が接続される車軸16である。
この構成によれば、動力伝達機構1によって、作業装置7が接続されるPTO軸15と走行装置4の車輪5が接続される車軸16とを効率良く駆動させることができる。
作業車両2は、上記一態様の動力伝達機構1を備えている。
【0088】
この構成によれば、上記一態様の動力伝達機構1の効果を奏する作業車両2を提供できる。
本発明の別の一態様の動力伝達機構1は、走行装置4と作業装置7とを備えた作業車両2に設けられる動力伝達機構であって、第1モータ11と、第2モータ12と、第1モータ11及び第2モータ12からの動力が入力される遊星歯車機構20を含み、第1モータ11と第2モータ12の少なくとも一方のモータの動力を作業装置7に出力する伝達機構17と、を備えている。
【0089】
この構成によれば、走行装置4と作業装置7を備えた作業車両2に設けられる動力伝達機構1において、複数のモータ(第1モータ11、第2モータ12)を使用して作業装置7を効率良く駆動させることが可能となる。
また、遊星歯車機構20は、入力された動力を走行装置4に出力する。
この構成によれば、走行装置4と作業装置7を備えた作業車両2に設けられる動力伝達機構1において、複数のモータ(第1モータ11、第2モータ12)を使用して走行装置4と作業装置7を効率良く駆動させることが可能となる。
【0090】
動力伝達機構1は、第1モータ11及び第2モータ12の動作を制御する制御装置50を備え、制御装置50は、第1モータ11の回転数と第2モータ12の回転数との差を変化させることにより、遊星歯車機構20からの出力を変化させる。
この構成によれば、遊星歯車機構20からの出力を容易に且つ円滑に連続的に変化させることができる。
【0091】
また、制御装置50は、第1モータ11の回転数を一定に維持し、第2モータ12の回転数を走行装置4の必要出力に応じて変化させる。
この構成によれば、制御装置50により第2モータ12の回転数を変化させることによって、第2出力軸16を必要回転数で回転させることができるため、回転数の制御が容易である。この構成は、第一実施形態及び第三実施形態の動力伝達機構において好適である。
【0092】
また、制御装置50は、作業装置7及び走行装置4の必要出力に応じて第1モータ11及び第2モータ12の回転数を変化させる。
この構成によれば、制御装置50によって作業装置7及び走行装置4の出力をきめ細かく制御することができる。この構成は、第二実施形態の動力伝達機構において好適である。
【0093】
また、遊星歯車機構20は、第1モータ11からの動力が入力される太陽歯車25と、内歯と外歯とを有し、外歯から走行装置4へと動力を出力するリング歯車26と、内歯及び太陽歯車25と噛み合う遊星歯車27と、遊星歯車27を支持し且つ第2モータ12からの動力が入力される遊星キャリア28と、を有している。
この構成によれば、第1モータ11からの動力を太陽歯車25に入力し、第2モータ12からの動力を遊星キャリア28に入力し、リング歯車26から走行装置4へと動力を出力することができる。そのため、第1モータ11及び第2モータ12から入力された動力を効率良く走行装置4へと出力することができる。
【0094】
また、遊星歯車機構20は、内歯と外歯とを有し、外歯に第1モータ11からの動力が伝達され且つ外歯から走行装置4へと動力を伝達するリング歯車26と、第2モータ12からの動力が入力される太陽歯車25と、内歯及び太陽歯車25と噛み合う遊星歯車27と、遊星歯車27を支持し且つ作業装置7に動力を出力する遊星キャリア28と、を有している。
【0095】
この構成によれば、第1モータ11からの動力をリング歯車26に入力し、第2モータ12からの動力を太陽歯車25に入力し、遊星キャリア28から作業装置7に動力を出力し、リング歯車26から走行装置4へと動力を出力することができる。そのため、第1モータ11及び第2モータ12から入力された動力を効率良く走行装置4及び作業装置7へと出力することができる。
【0096】
また、遊星歯車機構20は、内歯と外歯とを有し、外歯に第1モータ11からの動力が伝達され且つ外歯から作業装置7へと動力を出力するリング歯車26と、第2モータ12からの動力が入力される太陽歯車25と、内歯及び太陽歯車25と噛み合う遊星歯車27と、遊星歯車27を支持し且つ走行装置4に動力を出力する遊星キャリア28と、を有している。
【0097】
この構成によれば、第1モータ11からの動力をリング歯車26に入力し、第2モータ12からの動力を太陽歯車25に入力し、遊星キャリア28から走行装置4に動力を出力し、リング歯車26から作業装置7へと動力を出力することができる。そのため、第1モータ11及び第2モータ12から入力された動力を効率良く走行装置4及び作業装置7へと出力することができる。
【0098】
また、動力伝達機構1は、第1モータ11の動力を遊星歯車機構20に伝達する第1入力軸13と、第2モータ12の動力を遊星歯車機構20に伝達する第2入力軸14と、伝達機構17から出力される動力を作業装置7に出力する第1出力軸15と、伝達機構17から出力される動力を走行装置4に出力する第2出力軸16と、を備え、第1出力軸15は、作業装置7が接続されるPTO軸15であり、第2出力軸16は、走行装置4の車輪5が接続される車軸16である。
【0099】
この構成によれば、第1出力軸15であるPTO軸15から作業装置7に動力を出力することができ、第2出力軸16である車軸16から走行装置4に動力を出力することができる。
また、動力伝達機構1は、第1出力軸15から作業装置7への動力の伝達を遮断可能な遮断機構35を備えている。
【0100】
この構成によれば、第1出力軸15から作業装置7への動力の出力が不要な場合には、遮断機構35によって、容易に且つ確実に、遊星歯車機構20から出力される動力が第1出力軸15から作業装置7に伝達されないようにすることができる。
また、動力伝達機構1は、第2出力軸16の回転方向を切り換え可能な切り換え機構36を備えている。
【0101】
この構成によれば、切り換え機構36によって第2出力軸16である車軸16の回転方向を切り換え可能であるため、車輪5の回転方向を切り換える際に、遊星歯車機構20から出力される回転動力の方向を切り換える必要がなくなる。そのため、車輪5の回転方向を切り換えるために、高出力のモータを用いる必要がなくなり、モータを小型化することが可能となる。
【0102】
作業車両2は、上記別の一態様の動力伝達機構1を備えている。
この構成によれば、上記別の一態様の動力伝達機構1の効果を奏する作業車両2を提供できる。
また、本発明のさらに別の一態様の動力伝達機構1は、第1モータ11と、第2モータ12と、第1モータ11及び第2モータ12の動力が入力され、入力された動力を出力軸(第2出力軸16)に出力する遊星歯車機構20と、出力軸(第2出力軸16)の所要回転数に応じて第1モータ11及び第2モータ12に対して所要回転数を得るために必要な回転数での駆動を指令する指令信号を送信する制御装置50と、出力軸(第2出力軸16)の回転数を計測するセンサ51と、出力軸(第2出力軸16)の回転を停止するブレーキ52と、を備え、制御装置50は、出力軸(第2出力軸16)の回転を停止させるときに、所要回転数を0に制御する指令信号を送信した後、センサ51で計測された回転数が0でないときにブレーキ52を作動させる。
【0103】
この構成によれば、制御装置50が出力軸(第2出力軸16)の回転を停止させるときに、所要回転数を0に制御する指令信号を送信したにも関わらず、センサ51で計測された回転数が0でないときに、ブレーキ52の作動によって出力軸(第2出力軸16)の回転を確実に停止させることができる。そのため、複数のモータ(第1モータ11、第2モータ12)の動力を遊星歯車機構20に入力して遊星歯車機構20から出力軸(第2出力軸16)に動力を出力する構成を備えた動力伝達機構1において、出力軸(第2出力軸16)の回転を確実に停止させることができる。
【0104】
また、作業車両2は、車体3と、車体3を走行可能に支持する車輪5と、第1モータ11と、第2モータ12と、第1モータ11及び第2モータ12の動力が入力され、入力された動力を車輪5の車軸16に出力する遊星歯車機構20と、車輪5の所要回転数に応じて第1モータ11及び第2モータ12に対して所要回転数を得るために必要な回転数での駆動を指令する指令信号を送信する制御装置50と、車輪5の回転数を計測するセンサ51と、車輪5の回転を停止するブレーキ52と、を備え、制御装置50は、車輪5の回転を停止させるときに、所要回転数を0に制御する指令信号を送信した後、センサ51で計測された回転数が0でないときにブレーキ52を作動させる。
【0105】
この構成によれば、制御装置50が車輪5の回転を停止させるときに、所要回転数を0に制御する指令信号を送信したにも関わらず、センサ51で計測された回転数が0でないときに、ブレーキ52を作動させることにより車輪5の回転を確実に停止させることができる。そのため、複数のモータ(第1モータ11、第2モータ12)の動力を遊星歯車機構20に入力して遊星歯車機構20から車輪5の車軸16に動力を出力する構成を備えた動力伝達機構1において、車輪5の回転を確実に停止させることができる。
【0106】
また、制御装置50は、車輪5の回転を停止させるときに、指令信号として第1モータ11又は第2モータ12に回転を停止させる指令信号を送信する。
この構成によれば、制御装置50が第1モータ11又は第2モータ12に回転を停止させる指令信号を送信することによって、車輪5の回転を円滑に停止させることができる。また、第1モータ11又は第2モータ12の一方を停止して他方の駆動を継続することによって、車輪5以外の駆動(作業装置7等)を継続した状態のままで車輪5の回転を停止することができる。
【0107】
また、作業車両2は、車軸16の回転方向を切り換え可能な切り換え機構36を備えている。
この構成によれば、切り換え機構36によって車軸16の回転方向を切り換え可能であるため、車輪5の回転方向を切り換える際に、遊星歯車機構20から出力される回転動力の方向を切り換える必要がなくなる。そのため、車輪5の回転方向を切り換えるために、高出力のモータを用いる必要がなくなる。
【0108】
また、作業車両2は、車体3に装着される作業装置7を駆動するPTO軸15と、第1モータ11からの動力が伝達される第1入力軸13と、第2モータ12からの動力が伝達される第2入力軸14と、を備え、遊星歯車機構20は、第1入力軸13からの動力及び第2入力軸14からの動力が入力され、入力された動力を車軸16及びPTO軸15に出力する。
【0109】
この構成によれば、作業車両2において、第1モータ11と第2モータ12からの動力を遊星歯車機構20に入力することによって、入力された動力を車軸16及びPTO軸15に出力することができる。そのため、車軸16及びPTO軸15を効率良く駆動させることができる。
また、遊星歯車機構20は、内歯と外歯とを有し、外歯から車軸16へと動力を伝達するリング歯車26と、第1入力軸13から動力が入力される太陽歯車25と、内歯及び太陽歯車25と噛み合う遊星歯車27と、遊星歯車27を支持し且つ第2入力軸14から動力が入力される遊星キャリア28と、を有し、第1入力軸13からの動力は、遊星歯車機構20を介さずにPTO軸15に伝達される。
【0110】
この構成によれば、第1入力軸13からの動力を太陽歯車25に入力し、第2入力軸14からの動力を遊星歯車機構20を介さずにPTO軸15に出力し、リング歯車26から車軸16へと動力を出力することができる。そのため、第1入力軸13及び第2入力軸14から入力された動力を効率良くPTO軸15及び車軸16へと出力することができる。
また、遊星歯車機構20は、内歯と外歯とを有し、外歯に第1入力軸13からの動力が伝達され且つ外歯から車軸16へと動力を伝達するリング歯車26と、第2入力軸14から動力が入力される太陽歯車25と、内歯及び太陽歯車25と噛み合う遊星歯車27と、遊星歯車27を支持し且つPTO軸15に動力を出力する遊星キャリア28と、を有している。
【0111】
この構成によれば、第1入力軸13からの動力をリング歯車26に入力し、第2入力軸14からの動力を太陽歯車25に入力し、遊星キャリア28からPTO軸15に動力を出力し、リング歯車26から車軸16へと動力を出力することができる。そのため、第1入力軸13及び第2入力軸14から入力された動力を効率良くPTO軸15及び車軸16へと出力することができる。
【0112】
また、遊星歯車機構20は、内歯と外歯とを有し、外歯に第1入力軸13からの動力が伝達され且つ外歯からPTO軸15へと動力を伝達するリング歯車26と、第2入力軸14から動力が入力される太陽歯車25と、内歯及び太陽歯車25と噛み合う遊星歯車27と、遊星歯車27を支持し且つ車軸16に動力を出力する遊星キャリア28と、を有している。
【0113】
この構成によれば、第1入力軸13からの動力をリング歯車26に入力し、第2入力軸14からの動力を太陽歯車25に入力し、遊星キャリア28から車軸16に動力を出力し、リング歯車26からPTO軸15へと動力を出力することができる。そのため、第1入力軸13及び第2入力軸14から入力された動力を効率良くPTO軸15及び車軸16へと出力することができる。
【0114】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0115】
1 動力伝達機構
2 作業車両
3 車体
5 車輪
7 作業装置
11 第1モータ
12 第2モータ
13 第1入力軸
14 第2入力軸
15 第1出力軸(PTO軸)
16 出力軸(第2出力軸(車軸))
20 遊星歯車機構
25 太陽歯車
26 リング歯車
27 遊星歯車
28 遊星キャリア
36 切り換え機構
50 制御装置
51 センサ
52 ブレーキ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9