(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20231211BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
E02F9/26 A
E02F9/20 N
E02F9/20 J
(21)【出願番号】P 2020219140
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐井 拓真
(72)【発明者】
【氏名】松本 厚
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-187002(JP,A)
【文献】特開2008-255839(JP,A)
【文献】特開2012-237161(JP,A)
【文献】特開2020-105883(JP,A)
【文献】特開2020-100940(JP,A)
【文献】特開2019-065567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、
前記原動機の動力によって作動する作業装置と、
前記原動機が駆動している状態で前記作業装置の作動が第1所定時間以上行われなかった場合に前記原動機を停止させるオートストップを実行するオートストップ制御部と、
前記原動機又は前記作業装置に関する情報を表示する表示装置と、
前記表示装置を制御する表示制御部と、
前記原動機の始動を指令する始動位置と、前記原動機の停止を指令する停止位置と、前記原動機の駆動時に保持される中立位置とに切り換え可能なイグニッションスイッチと、
を備え、
前記表示制御部は、前記オートストップの実行時に前記表示装置の表示を所定のオートストップ用表示に変更させ、前記オートストップを実行してから第2所定時間が経過するまで前記原動機の再始動操作が行われなかった場合に前記オートストップ用表示から非表示状態に切り換え
、
前記イグニッションスイッチが前記中立位置の状態でオートストップが開始された後、第3所定時間内に前記イグニッションスイッチが前記中立位置から前記始動位置に切り換えられた場合は、前記原動機は、再始動し、
前記イグニッションスイッチが前記中立位置の状態でオートストップが開始された後、前記第3所定時間を超えた場合には、前記イグニッションスイッチが前記中立位置から前記始動位置に切り換えられても前記原動機は再始動せず、前記イグニッションスイッチが前記中立位置から前記停止位置に切り換えられて、さらに、前記始動位置に切り換えられた場合に、前記原動機は再始動する作業機。
【請求項2】
前記オートストップ用表示は、オートストップを実行したことを示す表示、オートストップを示すアイコンを強調する表示、及び前記原動機の再始動方法を示す表示のうちのいずれか1つ以上を含む、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記第1所定時間から第2所定時間が経過するまで前記原動機の再始動操作が行われなかった場合に、前記表示装置への電力供給を遮断する請求項1または2に記載の作業機。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記原動機が駆動していて前記作業装置の作動が行われていない状態が前記第1所定時間より短い第4所定時間継続したときに、前記表示装置にオートストップ実行予告表示を行わせる請求項1~
3のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項5】
前記オートストップ実行予告表示は、オートストップ実行までの時間を示す表示、オートストップ又はオートストップの予告を示すアイコンの表示、及びオートストップの実行を予告する文字表示のうちのいずれか1つ以上を含む、請求項
4に記載の作業機。
【請求項6】
前記表示装置に電力を供給するバッテリを備え、
前記表示制御部は、前記バッテリの残容量またはバッテリ電圧に応じて前記第2所定時間の長さを変更する請求項1~
5のいずれか1項に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された作業機が知られている。
特許文献1に開示された作業機は、原動機の始動を指令する始動位置と原動機の停止を指令する停止位置とに切り換え可能なイグニッションスイッチと、原動機が駆動している状態で作業装置の作動が第1所定時間以上行われなかった場合に原動機を停止させるオートストップを実行するオートストップ制御部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、特許文献1のような作業機では、作業装置の作動が第1所定時間以上行われなかったときに自動的に原動機を停止させることができる。しかしながら、オートストップの実行時に表示装置の表示を停止させると、オペレータが作業機に何が起こっているのかを把握できない場合がある。一方で、原動機が停止した後も表示装置に表示状態を継続させることが考えられるが、その場合には、原動機が停止した状態で表示装置によって蓄電装置(バッテリ)が消費され続けてしまうことがあった。
【0005】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、オートストップの実行時にオペレータが作業機の状態を把握することができ、かつ長時間に亘って表示装置が表示されることを防止する作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る作業機は、原動機と、前記原動機の動力によって作動する作業装置と、前記原動機が駆動している状態で前記作業装置の作動が第1所定時間以上行われなかった場合に前記原動機を停止させるオートストップを実行するオートストップ制御部と、前記原動機又は前記作業装置に関する情報を表示する表示装置と、前記表示装置を制御する表示制御部と、前記原動機の始動を指令する始動位置と、前記原動機の停止を指令する停止位置と、前記原動機の駆動時に保持される中立位置とに切り換え可能なイグニッションスイッチと、を備え、前記表示制御部は、前記オートストップの実行時に前記表示装置の表示を所定のオートストップ用表示に変更させ、前記オートストップを実行してから第2所定時間が経過するまで前記原動機の再始動操作が行われなかった場合に前記オートストップ用表示から非表示状態に切り換え、前記イグニッションスイッチが前記中立位置の状態でオートストップが開始された後、第3所定時間内に前記イグニッションスイッチが前記中立位置から前記始動位置に切り換えられた場合は、前記原動機は、再始動し、前記イグニッションスイッチが前記中立位置の状態でオートストップが開始された後、前記第3所定時間を超えた場合には、前記イグニッションスイッチが前記中立位置から前記始動位置に切り換えられても前記原動機は再始動せず、前記イグニッションスイッチが前記中立位置から前記停止位置に切り換えられて、さらに、前記始動位置に切り換えられた場合に、前記原動機は再始動する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、オートストップの実行時にオペレータが作業機の状態を把握することができる。また、オートストップの実行後に長時間に亘って表示装置が表示されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】作業機の油圧システム(油圧回路)の概略図である。
【
図3】オートストップの経過時間と表示装置の画面の推移を示す図である。
【
図4】オートストップ、イグニッションスイッチ、原動機の駆動の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図5は、本実施形態に係る作業機1の全体構成を示す概略側面図である。本実施形態では、作業機1として旋回作業機であるバックホーが例示されている。
先ず、作業機1の全体構成を説明する。
図5に示すように、作業機1は、機体(旋回台)2と、走行装置3と、作業装置4とを備えている。機体2上にはキャビン5が搭載されている。キャビン5の室内には運転席6が設けられている。
【0010】
本実施形態においては、作業機1の運転席6に着座した運転者(オペレータ)の前側(
図5の矢印A1方向)を前方、運転者の後側(
図5の矢印A2方向)を後方、運転者の左側(
図5の手前側)を左方、運転者の右側(
図5の奥側)を右方として説明する。
また、前後方向K1に直交する方向である水平方向を機体幅方向として説明する。機体2の幅方向の中央部から右部、或いは、左部へ向かう方向を機体外方として説明する。言い換えれば、機体外方とは、機体幅方向であって機体2の幅方向の中心から離れる方向のことである。機体外方とは反対の方向を、機体内方として説明する。言い換えれば、機体内方とは、機体幅方向であって機体2の幅方向の中心に近づく方向である。
【0011】
図5に示すように、走行装置3は、左側に設けられた走行体3Lと、右側に設けられた走行体3Rとを有する。走行体3L及び走行体3Rは、駆動輪11aと、従動輪11bと、複数の転輪11eと、駆動輪11a、従動輪11b、及び転輪11eを回転自在に支持するフレーム11cと、駆動輪11a、従動輪11b、及び転輪11eに架け渡されたベルト11dとを有するクローラ式の走行装置である。走行体3Lのフレーム11cには、第1走行モータMLが支持されており、第1走行モータMLの動力が走行体3Lの駆動輪11aに伝達される。走行体3Rのフレーム11cには、第2走行モータMRが支持されており、第2走行モータMRの動力が走行体3Rの駆動輪11aに伝達される。
【0012】
走行装置3の前部には、ドーザ装置7が装着されている。ドーザ装置7は、ドーザシリンダを伸縮することにより昇降(ブレードを上げ下げ)させることができる。
機体2は、走行装置3上に旋回ベアリング8を介して縦軸(上下の方向に延伸する軸心)回りに旋回自在に支持されている。機体2は、油圧モータ(油圧アクチュエータ)からなる旋回モータMTによって旋回駆動される。機体2は、縦軸回りに旋回する旋回基板9と、ウエイト10とを有している。旋回基板9は、鋼板等から形成されており、旋回ベアリング8に連結されている。ウエイト10は、機体2の後部に設けられている。機体2の後部には、原動機E1が搭載されている。原動機E1は、ディーゼルエンジンである。なお、原動機E1は、電動モータであってもよいし、ディーゼルエンジン及び電動モータを有するハイブリッド型であってもよい。
【0013】
機体2は、機体幅方向の中央のやや右寄りの前部に支持ブラケット13を有している。支持ブラケット13には、スイングブラケット14が、縦軸回りに揺動自在に取り付けられている。スイングブラケット14には、作業装置4が取り付けられている。
図5に示すように、作業装置4は、ブーム15と、アーム16と、バケット(作業具)17とを有している。ブーム15の基部は、スイングブラケット14に横軸(機体幅方向に延伸する軸心)回りに回動自在に枢着されている。これによって、ブーム15が上下に揺動自在とされている。アーム16は、ブーム15の先端側に横軸回りに回動自在に枢着されている。これによって、アーム16が前後或いは上下に揺動自在とされている。バケット17は、アーム16の先端側にスクイ動作及びダンプ動作可能に設けられている。作業機1は、バケット17に代えて或いは加えて、油圧アクチュエータにより駆動可能な他の作業具(予備アタッチメント)を装着することが可能である。他の作業具(予備アタッチメント)としては、油圧ブレーカ、油圧圧砕機、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等が例示できる。
【0014】
スイングブラケット14は、機体2内に備えられたスイングシリンダC2の伸縮によって揺動自在とされている。ブーム15は、ブームシリンダC3の伸縮によって揺動自在とされている。アーム16は、アームシリンダC4の伸縮によって揺動自在とされている。バケット17は、バケットシリンダ(作業具シリンダ)C5の伸縮によってスクイ動作及びダンプ動作自在とされている。ドーザシリンダ、スイングシリンダC2、ブームシリンダC3、アームシリンダC4、バケットシリンダC5は、油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)によって構成されている。なお、作業装置4は、機体2に設けられたものであればよく、ブーム15、アーム16及びバケット(作業具)17以外を有していてもよい。
【0015】
図2は、作業機1の油圧アクチュエータを作動させる油圧回路(油圧システム)の概略を示している。
図2に示すように、作業機1の油圧システムは、ブームシリンダC3、アームシリンダC4、バケットシリンダC5、旋回モータMT等の作業系油圧アクチュエータと、第1走行モータML、第2走行モータMR等の走行系油圧アクチュエータとを作動させるシステムである。なお、
図2の油圧システムは、説明の便宜上、ドーザシリンダ及びスイングシリンダC2を制御する回路を省略している。
【0016】
作業機1の油圧システムは、第1油圧ポンプP1と、第2油圧ポンプP2と、複数の制御弁33を有している。第1油圧ポンプP1は、作業系油圧アクチュエータ及び走行系油圧アクチュエータに作動油を供給するポンプである。第1油圧ポンプP1は、例えば、定容量ポンプ、或いは、可変容量ポンプである。また、第2油圧ポンプP2は、信号用又は制御用等の作動油、即ち、パイロット油を供給するポンプである。複数の制御弁33は、作業系油圧アクチュエータ、走行系油圧アクチュエータを制御する弁である。複数の制御弁33には、油路34を介して第1油圧ポンプP1が接続されている。
【0017】
複数の制御弁33は、ブームシリンダC3を制御するブーム制御弁33C、アームシリンダC4を制御するアーム制御弁33D、バケットシリンダC5を制御するバケット制御弁33E、旋回モータMTを制御する旋回制御弁33F、第1走行モータMLを制御する第1走行制御弁33G、第2走行モータMRを制御する第2走行制御弁33Hを含んでいる。
【0018】
ブーム制御弁33Cは、油路43を介してブームシリンダC3に接続されている。アーム制御弁33Dは、油路44を介してアームシリンダC4に接続されている。バケット制御弁33Eは、油路45を介してバケットシリンダC5に接続されている。旋回制御弁33Fは、油路46を介して旋回モータMTに接続されている。第1走行制御弁33Gは、油路(第1油路)47を介して第1走行モータMLに接続されている。第2走行制御弁33Hは、油路(第2油路)48を介して第2走行モータMRに接続されている。
【0019】
ブーム制御弁33Cの受圧部には、ブーム電磁弁37Cが接続されている。アーム制御弁33Dの受圧部には、アーム電磁弁37Dが接続されている。バケット制御弁33Eの受圧部には、バケット電磁弁37Eが接続されている。旋回制御弁33Fの受圧部には、旋回電磁弁37Fが接続されている。第1走行制御弁33Gの受圧部には、前進電磁弁37G1及び後進電磁弁37G2が接続されている。第2走行制御弁33Hの受圧部には、前進電磁弁37H1及び後進電磁弁37H2が接続されている。
【0020】
即ち、複数の制御弁33には、それぞれの制御弁33に対応して、電磁弁37(37C、37D、37E、37F、37G1、37G2、37H1、あるいは、37H2)が接続されている。各電磁弁37には、油路(パイロット油路)49を介して第2油圧ポンプP2が接続され、
当該電磁弁37の開度に応じて当該電磁弁37に対応する制御弁33の受圧部に作用するパイロット圧が変化する。
【0021】
ブーム制御弁33C、アーム制御弁33D、バケット制御弁33E、旋回制御弁33F、第1走行制御弁33G、第2走行制御弁33Hは、例えば、直動スプール形の切換弁である。複数の制御弁33(33C、33D、33E、33F、33G、33H)のそれぞれは、当該制御弁33に対応する複数の電磁弁37を介して受圧部に作用するパイロット油によって、当該制御弁33に供給された作動油の方向等を切り換え、作業系油圧アクチュエータ(ブームシリンダC3、アームシリンダC4、バケットシリンダC5、旋回モータMT)、或いは、走行系油圧アクチュエータ(第1走行モータML、第2走行モータMR)に供給される作動油の流量等を制御する。
【0022】
作業系油圧アクチュエータは、操縦装置19(操縦装置19L、操縦装置19R)によって操作される。操縦装置19Lは、操作部材40Lと、操作部材40Lの揺動量を検出する第1操作検出部41Lとを有している。操作部材40Lは、中立位置から、前、後、右、左に揺動自在なレバーである。第1操作検出部41Lは、操作部材40Lの前、後、右、左の中立位置からの揺動量(操作量)を検出するポテンションメータである。
【0023】
操作部材40Lをオペレータ等が操作すると、操作部材40Lの操作量及び操作方向が第1操作検出部41Lにより検出され、検出された操作量及び操作方向は、CPU等から構成された制御装置60に入力される。制御装置60は、操作部材40Lの操作量及び操作方向に応じて、旋回制御弁33Fの受圧部に接続された旋回電磁弁37Fのソレノイドを励磁し、当該旋回電磁弁37Fの開度を制御する。その結果、旋回制御弁33Fの受圧部にパイロット圧が作用し、当該旋回制御弁33Fの位置が切り換えられ、当該位置に応じて旋回モータMTの回転方向が切り換えられる。
【0024】
また、操作部材40Lをオペレータ等が操作すると、操作部材40Lの操作量及び操作方向が第1操作検出部41Lにより検出され、制御装置60は、操作部材40Lの操作量及び操作方向に応じて、アーム制御弁33Dの受圧部に接続されたアーム電磁弁37Dのソレノイドを励磁し、当該アーム電磁弁37Dの開度を制御する。その結果、アーム制御弁33Dの受圧部にパイロット圧が作用し、当該アーム制御弁33Dの位置が切り換えられ、位置に応じてアームシリンダC4が伸縮する。
【0025】
操縦装置19Rは、操作部材40Rと、操作部材40Rの揺動量を検出する第2操作検出部41Rとを有している。操作部材40Rは、中立位置から、前、後、右、左に揺動自在なレバーである。第2操作検出部41Rは、操作部材40Rの前、後、右、左の中立位置からの揺動量(操作量)を検出するポテンションメータである。
操作部材40Rをオペレータ等が操作すると、操作部材40Rの操作量及び操作方向が第2操作検出部41Rにより検出され、検出された操作量及び操作方向は制御装置60に入力される。制御装置60は、操作部材40Rの操作量及び操作方向に応じて、ブーム制御弁33Cの受圧部に接続されたブーム電磁弁37Cのソレノイドを励磁し、当該ブーム電磁弁37Cの開度を制御する。その結果、ブーム制御弁33Cの受圧部にパイロット圧が作用し、当該ブーム制御弁33Cの位置が切り換えられ、当該位置に応じてブームシリンダC3が伸縮する。
【0026】
また、操作部材40Rをオペレータ等が操作すると、操作部材40Rの操作量及び操作方向が第2操作検出部41Rにより検出され、制御装置60は、操作部材40Rの操作量及び操作方向に応じて、バケット制御弁33Eの受圧部に接続されたバケット電磁弁37Eのソレノイドを励磁し、当該バケット電磁弁37Eの開度を制御する。その結果、バケット制御弁33Eの受圧部にパイロット圧が作用し、当該バケット制御弁33Eの位置が切り換えられ、位置に応じてバケットシリンダC5が伸縮する。
【0027】
以上のように、操縦装置19L及び操縦装置19Rを操作することによって、機体2、ブーム15、アーム16、バケット(作業具)17を操作することができる。
図1は、作業機1の制御ブロックの概略図をしている。
図1に示すように、作業機1は、制御装置60を備えている。制御装置60は、上述したように電磁弁等の油圧制御を行う他に、オートアイドル制御(AI制御)及びオートストップ制御を行うオートストップ制御部60aと、原動機E1の駆動制御を行う始動制御部60bとを備えている。制御装置60は、プログラムの命令を実行するCPU(Central Processing Unit)、コンピュータプログラムを格納したROM(read only memory)、各種の制御プログラムを展開するRAM(random access memory)、各種の制御プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶部(記録媒体)などにより構成されている。
【0028】
制御装置60には、ガバナセンサからのガバナ角度(ガバナ位置)、アクセル100の操作量(角度)、アイドルスイッチ(AI-SW)101のオン信号/オフ信号、原動機回転センサ102で検出した原動機回転数、アクチュエータの角度センサ103が検出したアームの角度、ブームの角度などの信号が入力される。
AI制御では、オートストップ制御部60aは、原動機E1が駆動されている状態で操縦装置19が所定時間以上操作されていない場合に、原動機回転数を予め定められたアイドリングの原動機回転数に低下させる。
【0029】
駆動制御は、始動制御部60bにより、制御装置60に接続されたイグニッションスイッチ110の状態に基づいて行われる。イグニッションスイッチ110は、原動機E1の停止位置110aと、中立位置110bと、原動機E1の始動を指令する始動位置110cとに切換え可能である。例えば、始動制御部60bは、原動機E1の始動が停止した状態で、イグニッションスイッチ110が停止位置110aから中立位置110bに切り換えられ、中立位置110bから始動位置110cに切り換えられた場合に、原動機E1を始動する。原動機E1の始動後は、イグニッションスイッチ110は、始動位置110cから中立位置110bに自動的に戻るようになっている。
【0030】
オートストップ制御では、オートストップ制御部60aは、原動機E1が始動(駆動)している状態であって作業装置4の作動(操縦装置29の操作)が行われていない状態が予め定められた第1所定時間(オートストップ時間)T1以上になった場合に、原動機E1の駆動を停止するオートストップを実行する。なお、オートストップが実行された場合、制御装置60には、オートストップが実行されたことを示すフラグ(実行フラグ)が記憶される。実行フラグは、オートストップのリセットにより消去される。
【0031】
図1に示すように、作業機1は、表示装置51、表示制御部52と、を備えている。表示装置51は、液晶パネル、有機ELパネル等から構成されていて、作業機1に関する様々な情報、例えば、原動機E1及び作業装置4に関する様々な情報などを表示する。表示制御部52は、表示装置51の表示等に関する制御を行う。なお、表示装置51、表示制御部52等は作業機1に搭載された蓄電装置(バッテリ)に接続されていて、原動機E1の停止時には、蓄電装置の電力によって作動する。
【0032】
図3に示すように、表示制御部52は、原動機E1が駆動している場合は、表示装置51に運転画面M1を表示させる。運転画面M1は、運転(作業)に関する情報を表示する画面であり、例えば、原動機E1の回転数を表示する回転数表示部53aと、水温を表示する水温表示部53bと、油温を表示する油温表示部53cと、警告、異常、状態を示すアイコン表示部53dとを含んでいる。運転画面M1の表示は、一例であり限定されない。
【0033】
表示装置51の表示制御部52は、オートストップと連動して表示装置51の表示を変更する。以下、表示制御部52のオートストップの連動について説明する。
図3に示すように、オートストップ制御部60aは、原動機E1が駆動し且つ作業装置4の作動(操縦装置29の操作)が行われていない状態(状態A)になってからの経過時間を演算し、第1所定時間(オートストップ時間)T1に達した時点でオートストップを実行する。一方、表示制御部52は、オートストップが実行される第1所定時間T1よりも所定時間T3前(状態Aになってから第4所定時間T4に達した時点)から表示装置51の表示をオートストップ実行予告表示に変更させる。具体的には、
図3に示すように、表示制御部52は、表示装置51に運転画面M1を表示させている状態で、所定時間T4から第1所定時間T1に達する間に、運転画面M3のアイコン表示部53dにオートストップを示すアイコンを点灯させる。このオートストップを示すアイコンは、所定時間後にオートストップが実行されることを予告するオートストップ実行予告表示の一例である。なお、オートストップ実行予告表示は、作業装置が作動していない状態がそのまま継続した場合にオートストップが実行されることをオペレータに把握させることができるものであればよく、特に限定されない。例えば、オートストップ実行までの時間を示す表示、オートストップ予告用のアイコンの表示、オートストップの実行を予告する文字表示、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。
【0034】
表示制御部52は、オートストップの実行後(第1所定時間T1に達した時点)に運転画面M1の表示を所定のオートストップ用表示に変更する。例えば、
図3に示すように、アイコン表示部53dを点滅させる。なお、オートストップ用表示は、アイコンの点滅に限らず、オペレータにオートストップが実行されたことを把握させることができるものであればよい。例えば、オートストップを示すアイコンを点滅以外の方法で強調表示(例えば表示色変更、拡大など)してもよく、オートストップを実行したことを示す文字列や専用のアイコン等の画像を表示させてもよく、前記原動機の再始動方法を示す表示を行ってもよく、それらの表示を組み合わせて行ってもよい。
さらに、表示制御部52は、第1所定時間T1から第2所定時間T2後に運転画面M1を表示状態から非表示状態に切り換える。即ち、表示制御部52は、運転画面M1に運転に関する情報を全く表示しない。言い換えれば、表示制御部52は、運転画面M1に文字、数字、図形などを一切表示しないようにする。
【0035】
なお、本実施形態では、表示制御部52は、オートストップの開始から所定時間T3前の所定時間T4から第1所定時間T1までの長さよりも、第1所定時間T1から第2所定時間T2までの長さを長く設定しているが、これに限らず、所定時間T1~T4は適宜設定すればよい。
また、表示制御部52が、蓄電装置の残容量、蓄電装置のバッテリ電圧、表示装置51或いは作業機1に備えられる電装品の消費電力量のうちの1または複数を監視し、監視結果に応じて第2所定時間T2を設定するようにしてもよい。この場合、例えば、蓄電装置の残容量が少ないほど第2所定時間T2を短く設定し、蓄電装置のバッテリ電圧が低いほど第2所定時間T2を短く設定し、消費電力量が大きいほど第2所定時間T2を短く設定すればよい。あるいは、蓄電装置の残容量或いは蓄電装置のバッテリ電圧と消費電力量との組み合わせに基づいて第2所定時間T2を設定してもよい。
また、第1所定時間T1から第2所定時間T2が経過したときに、表示制御部52が表示装置51を非表示状態に切り替えるとともに、制御装置60が蓄電装置から表示装置51への電力供給を遮断するようにしてもよい。第1所定時間T1から第2所定時間T2が経過したときに、制御装置60が蓄電装置から表示装置51を含む作業機1の電装品(イグニッションスイッチ110が停止位置110aのときに電力供給が遮断されるように設定されている電装品。例えば、室内灯、作業灯、前照灯、各種信号ライト、各種ボタンのライトなど。)への電力供給を遮断するようにしてもよい。
【0036】
図4は、オートストップ、イグニッションスイッチの切換え、原動機の駆動との関係を示している。
図4に示すように、オートストップが実行(オートストップON)されてから、原動機E1の駆動を再始動する場合は、オートストップの実行後の第3所定時間T5以内に、イグニッションスイッチ110が中立位置110bから始動位置110cに切り換えられた場合は、制御装置60(始動制御部60b)は、原動機E1を再始動する。
【0037】
一方、
図4に示すように、オートストップが実行(オートストップON)されてから第3所定時間T5後は、イグニッションスイッチ110が中立位置110bから停止位置110aに切り換えられて、さらに、始動位置110cに切り換えられた場合に、制御装置60(始動制御部60b)は、原動機E1を再始動する。
つまり、オートストップの実行後、第3所定時間T5以内であれば、イグニッションスイッチを中立位置110bから始動位置110cに切り換えるだけで、原動機E1の再始動ができる一方、第3所定時間T5を超えると、通常の原動機E1の始動の手順を行わなければ原動機E1の再始動ができないようになっている。
【0038】
作業機1は、原動機E1と、原動機E1の動力によって作動する作業装置4と、原動機E1が駆動している状態で作業装置4の作動が第1所定時間以上行われなかった場合に原動機E1を停止させるオートストップを実行するオートストップ制御部60aと、原動機E1又は作業装置4に関する情報を表示する表示装置51と、表示装置51を制御する表示制御部52と、を備え、表示制御部52は、オートストップの実行時に表示装置51の表示を所定のオートストップ用表示に変更させ、オートストップを実行してから第2所定時間T2が経過するまで原動機E1の再始動操作が行われなかった場合にオートストップ用表示から非表示状態に切り換える。これによれば、オートストップ後に表示装置51の表示がオートストップ用表示に変更されることから、運転者等にオートストップが実行されたことを把握させることができる。また、第2所定時間T2が経過するとオートストップ用表示から非表示状態に切り換得られるので、オートストップの実行後に長時間に亘って表示装置51が表示されることを防止することができる。
【0039】
前記オートストップ用表示は、例えば、オートストップを実行したことを示す表示、オートストップを示すアイコンを強調する表示、及び前記原動機の再始動方法を示す表示のうちのいずれか1つ以上を含むものであってもよい。これによれば、オートストップが実行されたことを運転者等が容易に把握することができる。
また、第1所定時間から第2所定時間が経過するまで原動機E1の再始動操作が行われなかった場合に、表示装置51への電力供給を遮断する。これによれば、オートストップの実行後に長時間に亘って表示装置51で電力が消費されることを確実に防止できる。
【0040】
また、表示制御部52は、原動機E1が駆動していて作業装置の作動が行われていない状態が第1所定時間T1より短い第4所定時間T4継続したときに、表示装置51にオートストップ実行予告表示を行わせる。前記オートストップ実行予告表示は、例えば、オートストップ実行までの時間を示す表示、オートストップ又はオートストップの予告を示すアイコンの表示、及びオートストップの実行を予告する文字表示のうちのいずれか1つ以上であってもよい。これによれば、作業装置が作動していない状態がそのまま続いた場合にオートストップが実行されることを運転者等に把握させることができる。
【0041】
原動機E1の始動を指令する始動位置と、原動機E1の停止を指令する停止位置と、原動機E1の駆動時に保持される中立位置とに切り換え可能なイグニッションスイッチ110を備え、イグニッションスイッチ110が中立位置の状態でオートストップが開始された後、第3所定時間内にイグニッションスイッチ110が中立位置から始動位置110cに切り換えられた場合は、原動機E1は、再始動し、イグニッションスイッチ110が中立位置の状態でオートストップが開始された後、第3所定時間を超えた場合には、イグニッションスイッチ110が中立位置から始動位置に切り換えられても原動機E1は再始動せず、イグニッションスイッチ110が中立位置から停止位置に切り換えられて、さらに、始動位置に切り換えられた場合に、原動機E1は再始動するする。これによれば、オートストップ後に第3所定時間内であれば簡単に原動機E1を再始動することができる。
【0042】
また、表示装置51に電力を供給するバッテリを備え、表示制御部52は、バッテリの残容量またはバッテリ電圧に応じて第2所定時間T2の長さを変更する構成としてもよい。これによれば、バッテリの残容量またはバッテリ電圧に応じてオートストップ用表示の表示継続時間を設定することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0043】
1 :作業機
51 :表示装置
52 :表示制御部
53a :回転数表示部
53b :水温表示部
53c :油温表示部
53d :アイコン表示部
60 :制御装置
60a :オートストップ制御部
60b :始動制御部
110 :イグニッションスイッチ
110a :停止位置
110b :中立位置
110c :始動位置
T1 :第1所定時間
T2 :第2所定時間
T3 :所定時間
T4 :第4所定時間
T5 :第3所定時間