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特許7399854ポリフッ化ビニリデン-アクリレートと熱可塑性ポリウレタンの多層保護フィルム
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  • 特許-ポリフッ化ビニリデン-アクリレートと熱可塑性ポリウレタンの多層保護フィルム 図1
  • 特許-ポリフッ化ビニリデン-アクリレートと熱可塑性ポリウレタンの多層保護フィルム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】ポリフッ化ビニリデン-アクリレートと熱可塑性ポリウレタンの多層保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/40 20060101AFI20231211BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B32B27/40
B32B27/30 A
B32B27/30 D
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020526985
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 EP2018081653
(87)【国際公開番号】W WO2019097033
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】62/587,429
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521518057
【氏名又は名称】エスヴェーエム ルクセンブルク
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】コレット デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】バーク トマス
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533222(JP,A)
【文献】特表2000-517258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の層と第2の層を含み;
前記第1の層がポリフッ化ビニリデン(PVDF)/アクリレートポリマーブレンドを含み、前記第2の層がポリカプロラクトンベース熱可塑性ポリウレタンからなり;
前記第1の層が、前記第2の層の主表面に接合されており、
PVDF/アクリレートポリマーの質量比が、70/30~95/5であり、
前記PVDF/アクリレートポリマーブレンドが、PVDFホモポリマーとPVDFコポリマーのブレンドを含む、
多層フィルム。
【請求項2】
前記アクリレートがポリメチルメタクリレート(PMMA)である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記第1の層の厚さが約0.2ミル~約3ミルである、請求項1又は2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記第1の層の厚さが約0.5ミル~約1.5ミルである、請求項3に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記第2の層の厚さが約3ミル~約8ミルである、請求項1~4のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記第2の層の厚さが約4.5ミル~約5.5ミルである、請求項5に記載の多層フィルム。
【請求項7】
前記第1の層の厚さが約0.5ミル~約1.5ミルであり、前記第2の層の厚さが約4.5ミル~約5.5ミルである、請求項1~6のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項8】
感圧接着剤を含む第3の層を更に含み、第3の層が、前記第2の層が前記第1の層と第3の層との間になるように、前記第2の層の反対側の主表面に接合されていることを特徴とする、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項9】
約80光沢単位を超える光沢を有する、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項10】
光透過率の変化が約7%未満のSharpie(登録商標)汚染耐性を有する、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項11】
黄色度の変化が約10未満のタール汚染耐性を有する、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項12】
60°光沢の低下が20光沢単位以下であるような擦傷耐性を有する、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項13】
前記第1の層と前記第2の層が押出可能である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項14】
透明多層フィルムである、請求項1~13のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項15】
第1の層と第2の層を含む多層フィルムであって、
前記第1の層がポリフッ化ビニリデン(PVDF)/アクリレートポリマーブレンドを含み、
PVDF/アクリレートポリマーの質量比が、70/30~95/5であり、
前記PVDF/アクリレートポリマーブレンドが、PVDFホモポリマーとPVDFコポリマーのブレンドを含み;
前記第2の層がポリカプロラクトンベース熱可塑性ポリウレタンからなり、前記第1の層は、前記第2の層の主表面に接合されており;
約80光沢単位を超える光沢、光透過率の変化が約7%未満であるSharpie(登録商標)汚染耐性、黄色度の変化が約10未満のタール汚染耐性、および60°光沢の低下が20光沢単位以下であるような擦傷耐性を有する、前記多層フィルム。
【請求項16】
透明多層フィルムである、請求項15に記載の多層フィルム。
【請求項17】
多層フィルムを作製する方法であって、
(a)ポリフッ化ビニリデン(PVDF)/アクリレートポリマーブレンドを含む第1の層を形成すること;
(b)ポリカプロラクトンベース熱可塑性ポリウレタンからなる第2の層を形成すること、および
(c)前記第2の層に前記第1の層を接合すること
を含み、
PVDF/アクリレートポリマーの質量比が、70/30~95/5であり、
前記PVDF/アクリレートポリマーブレンドが、PVDFホモポリマーとPVDFコポリマーのブレンドを含む、前記方法。
【請求項18】
前記第1の層と前記第2の層が、共押出されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の層と前記第2の層が、逐次的に押し出される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
多層フィルムが透明多層フィルムである、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互相関
本願は、2017年11月16日に出願された米国仮出願第62/587,429号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本開示は、多層保護フィルムに関し、より詳細には、溶剤などの刺激性もしくは腐食性の化学物質、または熱、日光、水分、風、破片、泥などの不利な環境条件もしくは要素、または例えば雨、雹、雪もしくは霙などの悪天候にさらされる表面を保護するための、熱可塑性ポリウレタン多層保護フィルムに関する。更により詳細には、本開示は、ポリフッ化ビニリデン/アクリレートポリマー層と、ポリカプロラクトンベース熱可塑性ポリウレタン層とを含む多層保護フィルム、およびその多層フィルムを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタンフィルムなどの保護ポリマーフィルムは、熱、日光、水分、風、破片、泥、または例えば雨、雹、雪、もしくは霙などの悪天候によるものなどの極端な環境条件もしくは要素、および溶剤などの刺激性または腐食性の化学物質に曝される可能性のある任意の剥き出しまたは塗装済みの金属、ガラスまたはプラスチックの表面に、強く耐久性のある遮蔽物を提供するために使用される。これらの保護ウレタンフィルムは、そうした状況下での摩耗、欠け、劣化または変色、および表面の損耗による損傷の防止に有用である。こうしたフィルムは、例えば、乗用車、トラック、電化製品、モバイルデバイス、コンピュータ、電子ディスプレイ画面などを保護するために使用し得る。
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマーは、紫外線放射ならびに極端な温度および湿度に対して高い耐性を有する。したがって、高い耐紫外線性、光学的透明度、耐久性、および光沢を有するポリフッ化ビニリデンを含む押出可能な多層保護フィルムを提供できれば望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本開示は一般に、有害な環境条件もしくは要素、または刺激性化学物質から表面を保護するのに有用な有益な特性を有するポリフッ化ビニリデン/アクリレートポリマー層と1つまたは複数の熱可塑性ポリウレタン層とを含む熱可塑性多層保護フィルムに関する。
本開示の一態様によると、多層フィルムが提供される。多層フィルムは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)/アクリレートポリマーブレンドを含む第1の層と、ポリカプロラクトンベース熱可塑性ポリウレタンを含む第2の層を含んでもよく、第1の層は、第2の層の主表面に接合されている。一実施形態において、PVDF/アクリレートポリマーブレンドは、PVDFとポリメチルメタクリレート(PMMA)を含んでもよい。別の実施形態において、PVDF/アクリレートポリマーブレンドは、アクリレートホモポリマーとコポリマーのブレンドを含んでもよい。
【0004】
いくつかの実施形態において、第1の層と第2の層は、押出可能であってもよい。いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリウレタン層は、脂肪族ポリカプロラクトンベース熱可塑性ポリウレタンの1つまたは複数の層を含んでもよい。いくつかの実施形態において、PVDF/アクリレートポリマー層と熱可塑性ポリウレタン層は、共押出されてもよい。
本開示の別の態様によると、多層フィルムは、感圧接着剤(pressure sensitive adhesive)を含む第3の層を含んでもよく、第3の層は、第2の層が第1の層と第3の層との間になるように、第2の層の反対側の主表面に接合されている。
本開示の更に別の態様によると、多層フィルムが提供される。多層フィルムは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)/アクリレートポリマーブレンドを含む第1の層と、ポリカプロラクトンベース熱可塑性ポリウレタンを含む第2の層を含んでもよい。第1の層は、第2の層の主表面に接合されていてもよい。多層フィルムは、約80光沢単位を超える光沢、光透過率の変化が約7%未満のSharpie(登録商標)汚染耐性(stain resistance)、黄色度の変化が約10未満のタール汚染耐性、および60°光沢の低下が20光沢単位以下であるような擦傷耐性を有してもよい。
【0005】
本開示の更に別の態様によると、多層フィルムを作製する方法が提供される。方法は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)/アクリレートポリマーブレンドを含む第1の層を形成すること、ポリカプロラクトンベース熱可塑性ポリウレタンを含む第2の層を形成すること、および第2の層に第1の層を接合することを含んでもよい。いくつかの実施形態において、第1の層と第2の層は、共押出されてもよい。他の実施形態において、第1の層と第2の層は、逐次的に押し出されてもよい。
本開示の様々な実施形態によって満たされる望ましい対象物についての本明細書における記述は、これらの対象物のいずれかまたは全てが、本開示の最も一般的な実施形態において、またはそれより具体的な実施形態のいずれかにおいて、個別的にも全体としても、必須の特徴として存在することを含意または示唆することを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の2層フィルムの例示的な実施形態を示す断面図である。
図2図2は、本開示の3層フィルムの例示的な実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
特に注記する場合を除き、定量値はいずれも、「約」または「およそ」などの語が記載されているか否かに関わらず、概算値である。本明細書に記載の材料、方法、および実施例は、例示に過ぎず、限定を意図するものではない。分子量または分子質量の値は概算値であり、説明のために提供されているに過ぎない。
本開示は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)/アクリレートポリマーブレンド層と、1つまたは複数の熱可塑性ポリウレタン層とを含む多層保護フィルムを提供する。図1は、PVDF/アクリレート層20と熱可塑性ポリウレタン層30とを含む多層フィルム10の例示的な実施形態を示す。多層保護フィルムは、例えば高い耐紫外線性、光学的透明度、耐久性、および光沢などの、表面の保護に有用な有益で望ましい特性を有し得る。
本明細書において使用する場合、「PVDF」は、PVDFのホモポリマー(例えば、Kynar720、Arkema)、ならびに例えば約30質量%以下などの少量のテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびエチレンが挙げられるがこれに限定されない他のエチレン系不飽和モノマーを含有するフッ化ビニリデンコポリマーを含むことを意味する。PVDFコポリマーの例としては、Solef21508(Solvay S.A.)、Kynar Flex3120-50(Arkema)、Kynar Super Flex2500(Arkema)、Kynar Flex2750(Arkema)、Kynar Flex2850-00(Arkema)、およびKynar Flex3120-10(Arkema)が挙げられるが、これに限定されない。
【0008】
アクリレートポリマーは、少量の他のアクリレートならびに/または例えばスチレン、アルファ-メチルスチレンおよびアクリロニトリルなどのエチレン系不飽和モノマーとのコポリマーを含む、低級アルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル)メタクリレートのホモポリマーおよびコポリマーを含むことができる。PMMAポリマーの例としては、Plexiglas(登録商標)VS-100(Arkema)、Plexiglas(登録商標)V825(Arkema)、およびPlexiglas(登録商標)V920(Arkema)が挙げられるが、これに限定されない。
いくつかの実施形態において、PVDF/アクリレートポリマー比(質量で)は、約50/50~約95/5である。他の実施形態において、PVDF/アクリレートポリマー比(質量で)は、約60/40~約90/10である。更に他の実施形態において、PVDF/アクリレートポリマー比(質量で)は、約70/30~約80/20である。一実施形態において、PVDF/アクリレートポリマー比(質量で)は、約70/30である。
【0009】
PVDF/アクリレートポリマーブレンドは、紫外線吸収化合物(例えば、Tinuvin(登録商標)234、BASF)ならびに例えばシアノアクリレートエステル、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、酸化防止剤、ベンゾトリアゾール(benzotrizole)、非高分子ベンゾフェノンなどの熱および紫外線安定剤、および擦傷防止添加剤(例えば、GANZPEARL(Aica Kogyo Co.)、PMX200-30m000cSt(Xiameter Dow Corning)、およびPMX200-100,00cSt(Xiameter Dow Corning))が挙げられるが、これに限定されない添加剤を含有することができる。
【0010】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、例えばポリカーボネート、ポリエステルおよびポリカプロラクトンなどの任意のアクリル相溶性ポリマーとすることができる。TPU層は、例えばポリカプロラクトンベース熱可塑性ポリウレタンの層に接合させたポリエステルベース熱可塑性ポリウレタンポリマーの層などの、同じまたは異なる熱可塑性ポリウレタンポリマーの複数の層を含有してもよい。熱可塑性ポリウレタンポリマーは、可塑剤、酸化防止剤、フィラー、および顔料などの少量の添加剤を含有することができる。一実施形態において、多層フィルムは、脂肪族ポリカプロラクトンベース熱可塑性ポリウレタンの1つまたは複数の層を含んでもよい。脂肪族ポリカプロラクトンベース熱可塑性ポリウレタンの例としては、Lubrizol CLC93AVおよびArgoGUARD(登録商標)49510(Argotec、Greenfield、MA)が挙げられるが、これに限定されない。
【0011】
PVDF/アクリレートポリマーブレンド層の厚さは、約3ミル以下とすることができる。一実施形態において、PVDF/アクリレートポリマーブレンド層の厚さは、約0.4ミル~約3ミルとすることができる。別の実施形態において、PVDF/アクリレートポリマーブレンド層の厚さは、約0.5ミル~約1.5ミルである。熱可塑性ポリウレタン層の厚さは、約6ミル以下とすることができる。一実施形態において、熱可塑性ポリウレタン層の厚さは、約3ミル~約6ミルである。別の実施形態において、熱可塑性ポリウレタン層の厚さは、約4.5ミル~約5.5ミルである。一実施形態において、PVDF/アクリレートポリマーブレンド層の厚さは、約0.5ミルであり、熱可塑性ポリウレタン層の厚さは、約5.5ミルである。別の実施形態において、PVDF/アクリレートポリマーブレンド層の厚さは、約1ミルであり、熱可塑性ポリウレタン層の厚さは、約5ミルである。
【0012】
図2を参照すると、多層フィルム10は、熱可塑性ポリウレタン層30の、PVDF/アクリレートポリマーブレンド層20に接合させた表面とは反対側の表面に接合させた接着剤40を含んでもよい。例えば、熱可塑性ポリウレタン基層は、コロナ処理され、ポリアクリレートベース接着剤、シリコーンベース接着剤、合成および天然ゴム、ポリブタジエンおよびコポリマー、ならびにポリイソプレンおよびコポリマーを含むが、これに限定されない接着剤に積層させてもよい。一実施形態において、接着剤は、感圧接着剤(PSA)である。
任意に、多層フィルムのPVDF/アクリレートポリマーブレンド層は、トップコートでコーティングしてもよい。
本開示の一態様によると、多層フィルムは、清明または透明であってもよく、塗料保護などのある特定の用途に適したものであってもよい。しかしながら、いくつかの実施形態において、多層フィルムは、所望に応じて着色されていてもよいことが理解される。例えば、多層フィルムの1つまたは複数の層は、顔料または他の着色剤を含んでもよい。多層フィルムは、表面への適用前に、保護すべき表面に適合するような形状およびサイズとしてもよい。例えば、多層フィルムは、車両の様々な部品を紫外光、天候、例えば泥、岩などの破片による擦傷から保護するために使用してもよい。
【0013】
本開示の別の態様によると、多層フィルムを作製する方法が提供される。方法は、(a)PVDF/アクリレート層を形成すること、(b)熱可塑性ポリウレタンの1つまたは複数の層を含む熱可塑性ポリウレタン層を形成すること、および(c)熱可塑性ポリウレタン層にPVDF/アクリレート層を接合することを含んでもよい。
【0014】
多層シートの層は、押出、カレンダー加工および溶液流延などの当技術分野で公知の従来の方法を用いて形成することができる。例えば、多層シートは、マルチマニホールド共押出ダイまたは共押出フィードブロックアプローチを用いたPVDF/アクリレートポリマーブレンド層と熱可塑性ポリウレタン層の共押出によって形成することができる。2台押出機フィードブロックプロセスでは、PVDF/アクリレートブレンドを押出機バレル中で溶融させ、ヒーターで加熱できる第1のアダプタセクションとアダプタチューブを通して共押出フィードブロックに圧送することができ、そこで、PVDF/アクリレートブレンドは、第2のアダプタセクションを通して第2の押出機から供給されて来る熱可塑性ポリウレタンポリマーの溶融物流と接触する。層流のため、2つの溶融物流の混合は起こらず、2つの別々の材料の層が密接に接触することとなる。次いで、層状に組み合わされた溶融物流は、加工ダイへと入り、そこで、ダイリップから出てくる最終複合製品の形態が確立される。
3台押出機フィードブロックプロセスなどの従来の方法を使用して、PVDF/アクリレートポリマーブレンドの最上層と、熱可塑性ポリウレタンの2層を含む層とを含む多層シートを作製してもよい。
【実施例
【0015】
(実施例1~3)
UV安定化したペレット状のPVDFフッ素化熱可塑性ホモポリマー(Kynar720、Arkema)を、メルトフローが非常に高いペレット状のPMMA熱可塑性樹脂(Plexiglas(登録商標)VS-100、Arkema)と、表1に詳述する複数の比率で乾式ブレンドした。樹脂を55℃で最低4時間乾燥させ、次いで、シート押出ダイを装着した1.75インチ単軸スクリュー押出機を用いて高光沢PETフィルム上にフィルムとして流延した。フィルムは、3ロールチルロールスタックを用いて冷却し、クエンチした。およそ24時間後、ブレンドされたPVDF/PMMAのフィルムをPET担体から剥離し、光学特性を測定した。別段の定めがない限り、光沢は、60度(°)の角度で測定し、100光沢単位(GU)の黒色ガラス標準を用いて較正する(「GU,60°」または「60°光沢」)。値を表1に提示する。
【0016】
【表1】

良好な光学性能、即ち、高い光透過率、低い黄色度(YI)、良好な光沢および名目で1程度のヘイズ値を有するフィルムが実現された。
他の重要な物理的特性には、表2に報告するように、擦傷および汚染に対する耐性が含まれる。
【表2】
【0017】
Sharpie(登録商標)汚染耐性は、黒色Sharpie(登録商標)マーカーのコーティングをフィルムに塗布し、マーカーを2分間固化させた後、イソプロピルアルコール(IPA)を染み込ませた綿布を用い、IPA70%でインクが落ちなくなるまで激しく払拭することによって測定された。Sharpie(登録商標)汚染耐性は、元のフィルムと、着色し次いでIPAで払拭したフィルムとの%単位の光透過率の差として報告された。
【0018】
タール汚染耐性は、タールの染みをフィルムに塗布させ、タール/フィルム標本を80℃で60分間ベーキングすることによって測定された。次いで、GMのバグ・タールリムーバを用い、綿布でタールを除去した。タール耐性は、暴露前後のフィルムのYIの差を報告することで測定された。
擦傷耐性は、200グリットのサンドペーパーを用い、一定荷重下で所定数の研磨払拭を行う研磨前後のフィルムの60°光沢によって測定した。擦傷回復性は、元の光沢値と研磨24時間後のフィルムの光沢値との差として報告された。
【0019】
促進UV劣化に対する耐性を、QUVおよびキセノンアークにより行い、同様の結果が得られた。キセノンアーク劣化は、Volkswagen AG PV3927 Non Metallic Materials Weather Aging in Dry, Hot Climate、別名Kalahari Testに従い遂行した。Kalahari Testの結果を、表3に提示する。
【0020】
【表3】
【0021】
(実施例4~6)
UV安定化したペレット状のPVDFフッ素化熱可塑性コポリマー(Solef21508;Solvay S.A.)を、メルトフローが非常に高いペレット状のPMMAコポリマー熱可塑性樹脂(Plexiglas(登録商標)VS-100)と、表1に詳述する複数の比率で乾式ブレンドした。樹脂を55℃で最低4時間乾燥させ、次いで、シート押出ダイを装着した1.75インチ単軸スクリュー押出機を用いて高光沢PETフィルム上にフィルムとして流延した。フィルムは、3ロールチルロールスタックを用いて冷却し、クエンチした。およそ24時間後、ブレンドされたPVDF/PMMAのフィルムをPET担体から剥離し、光学特性を測定した。その値を表4に提示する。
【0022】
【表4】

コポリマーベースのフィルムは、PVDFホモポリマー/PMMAブレンドと同様の光学特性を有していた。
他の重要な物理的特性には、表5に提示するように、擦傷および汚染に対する耐性が含まれる。
【0023】
【表5】

Sharpie(登録商標)およびタール汚染耐性の両方の特性は、ホモポリマーPVDFを含有するブレンドである実施例1~3と比較して劣っていた。擦傷耐性と回復特性は、PVDFブレンドのホモポリマーとコポリマーの両方で同様であった。
【0024】
(実施例7~9)
Line F共押出ラインで3つの複合フィルムサンプルを完成させた。この試験の目的は、優れた汚染耐性、光学的透明度、低着色、および高い光沢と共押出フィルム層均一性を提供するハードコートを有する2層表面保護フィルムを共押出するための標準的な製造設備とプロセスを用いて、0.0005インチPVDF-PMMA/0.0055インチCLC93AV TPU(脂肪族ポリカプロラクトン熱可塑性ポリマー)共押出フィルムを製造することであった。フィルムは、取り付けを容易とするために適切な機械的特性を必要とし、それらは、低い割線係数、高い伸びおよびスナップバックまたはフィルム伸長回復性であった。加えて、複合フィルムは、取り付けと、自動車が使用されるあらゆる環境で自動車が直面する可能性のある環境ストレスの両方によって引き起こされる層間剥離に抵抗するための良好な層間接合強度を必要とした。
【0025】
ハードコート試験調合物:複合フィルムのハードコート調合物のそれぞれの概要を表6に示す。各調合物は、先に判定された最適なブレンド比である70%PVDFと30%PMMAを中心として設計された。共押出に先立ち、調合物の実施例7と実施例8を溶融配合し、2軸スクリュー押出によりペレット化したが、実施例8の反復である調合物の実施例9は、ペレットとして乾式ブレンドしただけである。
【表6】
【0026】
フィルム変換:フィルム加工は、概説するように、2段階で達成された:
段階1:0.002インチ2層フィルムの共押出物は、0.0015インチCLC93AV層と共に、0.0005インチPVDF-PMMAハードコートで構成されていた。ハードコートは、下層としての配向で流延させ、次いで溶融フィルムをチルロールスタック上で冷却しながらPETフィルム担体と組み合わせた。
段階2:段階1で製造した複合フィルムの厚さ0.0015インチのCLC93AV層の上に、追加の0.004インチのCLC93AVの押出コーティング(2回目のパス)を行い、複合フィルムの全厚を6ミルとした。
複合フィルム層の厚さは、断面顕微鏡測定により確認した。
重要な物理的特性を、表7~9に提示するように測定した。
【0027】
【表7】
【表8】
【0028】
【表9】

2軸スクリュー押出配合した実施例8と乾式ブレンドした実施例9との間の測定された物理的特性の差に基づくと、フィルム品質の差は、無視できるものであった。
【0029】
本発明を、そのある特定の好適な実施形態に従い本明細書において詳細に説明したが、それに対する多くの修正および変更が当業者により実施されてもよい。したがって、上記開示は、それによって限定がなされると解釈すべきではなく、そうした前述の明白な変形を含み、下記の特許請求の範囲の精神および範囲によってのみ限定されるもの解釈すべきである。
図1
図2