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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】被覆生物活性物質
(51)【国際特許分類】
   C05G 5/30 20200101AFI20231211BHJP
   C05G 3/40 20200101ALI20231211BHJP
   A01N 25/26 20060101ALI20231211BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
C05G5/30
C05G3/40
A01N25/26
A01N25/10
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020535897
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031543
(87)【国際公開番号】W WO2020032224
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2018151065
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018170130
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】福山 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】上田 真澄
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑弥
(72)【発明者】
【氏名】飛永 恭兵
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-514518(JP,A)
【文献】特開平10-077201(JP,A)
【文献】特開2008-001550(JP,A)
【文献】特開2000-007736(JP,A)
【文献】特開2006-273773(JP,A)
【文献】特開2004-307523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05G 5/30
C05G 3/40
A01N 25/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥料及び農薬からなる群より選ばれる1種類以上である生物活性物質(E)の粒子が、樹脂組成物(D)で被覆された被覆生物活性物質であって、前記樹脂組成物(D)が、水に対する下限臨界溶液温度(LCST)が10~40℃の範囲にある温度応答性樹脂(A)の粒子と、吸水性樹脂(B)の粒子、樹脂(C)とを構成成分として含む組成物であり、
樹脂(C)が、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂及びアルキド樹脂からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂である被覆生物活性物質(F)。
【請求項2】
前記樹脂組成物(D)に含まれる前記温度応答性樹脂(A)の粒子と、前記吸水性樹脂(B)の粒子との重量比率(A)/(B)が30/70~97/3である請求項1に記載の被覆生物活性物質。
【請求項3】
下記式(1)によって算出される温度依存指数(K)が0.5~2.0である請求項1又は2に記載の被覆生物活性物質。
式(1)
= P25/P35
[P25:温度25℃の水中における生物活性物質(E)の溶出率が80%に達する日数、
35:温度35℃の水中における生物活性物質(E)の溶出率が80%に達する日数]
【請求項4】
前記温度応答性樹脂(A)が、構成単量体としてN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はN-ビニルアルキルアミド(a2)と、架橋剤(c)とを含み(メタ)アクリル酸(塩)(b)を構成単量体として含まない樹脂(A1)であり、
前記吸水性樹脂(B)が、構成単量体として(メタ)アクリル酸(塩)(b)と架橋剤(c)とを含みN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)を構成単量体として含まない樹脂(B1)である請求項1~3いずれかに記載の被覆生物活性物質。
【請求項5】
前記吸水性樹脂(B)の構成単量体中の(メタ)アクリル酸(塩)(b)の構成比率が95~99.99モル%である請求項4に記載の被覆生物活性物質。
【請求項6】
前記温度応答性樹脂(A)の構成単量体のN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)が、N-イソプロピルアクリルアミドである請求項4又は5に記載の被覆生物活性物質。
【請求項7】
下記式(2)によって算出される温度依存指数(K)が0.5~2.0である請求項1又は2に記載の被覆生物活性物質。
式(2)
= P15/P25
[P15:温度15℃の水中における生物活性物質(E)の溶出率が80%に達する日数、
25:温度25℃の水中における生物活性物質(E)の溶出率が80%に達する日数]
【請求項8】
前記温度応答性樹脂(A)が、構成単量体としてN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/若しくはN-ビニルアルキルアミド(a2)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)と、架橋剤(c)とを含む樹脂(A2)、及び/又は、構成単量体としてN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/若しくはN-ビニルアルキルアミド(a2)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)と、架橋剤(c)と、(メタ)アクリル酸(塩)(b)とを含み、構成単量体中の(メタ)アクリル酸(塩)(b)の構成比率が5モル%未満である樹脂(A3)であり、
吸水性樹脂(B)が、構成単量体として(メタ)アクリル酸(塩)(b)と架橋剤(c)とを含む樹脂(B2)である請求項1、2及び7のいずれかに記載の被覆生物活性物質。
【請求項9】
前記N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はN-ビニルアルキルアミド(a2)が、N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)であり、
温度応答性樹脂(A)の構成単量体中のN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)のモル比率(a1)/(h)が85/15~95/5である請求項8に記載の被覆生物活性物質。
【請求項10】
前記吸水性樹脂(B)の構成単量体中の(メタ)アクリル酸(塩)(b)の構成比率が95~99.99モル%である請求項8又は9に記載の被覆生物活性物質。
【請求項11】
前記温度応答性樹脂(A)の構成単量体のN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)が、N-イソプロピルアクリルアミドである請求項8~10いずれかに記載の被覆生物活性物質。
【請求項12】
前記温度応答性樹脂(A)の粒子の含有量が前記樹脂組成物(D)の重量に基づいて1~30重量%である請求項1~11いずれかに記載の被覆生物活性物質。
【請求項13】
生物活性物質(E)の粒子の個数平均粒子径が0.3~15mmである請求項1~12のいずれかに記載の被覆生物活性物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面を樹脂組成物で被覆された被覆生物活性物質に関する。詳しくは、肥料又は農薬の溶出速度の温度依存性が小さい被覆肥料又は被覆農薬に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の被覆肥料や被覆農薬の溶出速度は、それが施用された土壌ないし水の温度の影響を受ける。温度が上昇すれば溶出速度は上昇し、反対に、温度が低下すれば溶出速度は低下する。このように温度の変化に伴って溶出速度が変化することを、溶出速度の温度依存性といい、通常の被覆肥料はこの温度依存性を有している。
極端な温度上昇の場合、溶出速度も極端に大きくなることから、作物にとって肥料過多の状態となりやすい。反対に、地温が低く推移した場合には、その溶出速度が極端に小さくなり、必要な肥料が供給されない。
【0003】
温度依存性を低減した被覆肥料としては、例えばトリプロピレングリコールとイソシアネートとの反応によって得られるポリウレタンで被覆された被覆肥料が知られている(特許文献1)。しかし、さらに温度依存性の小さい被覆肥料や被覆農薬が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-89605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、肥料又は農薬の溶出速度の温度依存性が小さい被覆肥料又は被覆農薬、例えば高温領域(例えば35℃)における肥料又は農薬の溶出速度の上昇が抑制された、又は、低温領域(例えば15~25℃)における溶出速度の差が小さい、温度依存性の小さい被覆肥料や被覆農薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、肥料及び農薬からなる群より選ばれる1種類以上である生物活性物質(E)の粒子が、樹脂組成物(D)で被覆された被覆生物活性物質であって、前記樹脂組成物(D)が、水に対する下限臨界溶液温度(LCST)が10~40℃の範囲にある温度応答性樹脂(A)と、吸水性樹脂(B)とを構成成分として含む組成物である被覆生物活性物質(F)である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、溶出速度の温度依存性が小さい被覆肥料や被覆農薬を提供することができる。本発明によれば、例えば高温領域において生物活性物質の溶出速度の上昇が抑制された被覆肥料や被覆農薬を提供することが可能となる。また、本発明によれば、低温領域における溶出速度の差が小さく、温度依存性の小さい被覆肥料や被覆農薬を提供することが可能となる。本発明の被覆生物活性物質が肥料を含む場合は、該被覆生物活性物質を使用することにより、極端な温度上昇が起こった場合であっても、温度上昇に追随して肥料の溶出速度が極端に大きくなることがなく、作物にとって肥料過多の状態になり難い。また、肥料を被覆する樹脂組成物の成分に、例えば水に対する下限臨界溶液温度(LCST)の値が小さな温度応答性樹脂(A)を用いることで、温度が低下しても肥料の溶出速度が極端に減少することはなく、作物等が栄養飢餓の状態に陥り難い。また前記被覆生物活性物質が農薬を含む場合においても同様の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の被覆生物活性物質(F)は、肥料及び農薬からなる群より選ばれる1種類以上である生物活性物質(E)の粒子が、樹脂組成物(D)で被覆された被覆生物活性物質であって、樹脂組成物(D)が、水に対する下限臨界溶液温度(LCST)が10~40℃の範囲にある温度応答性樹脂(A)と、吸水性樹脂(B)とを構成成分として含む組成物である。また、好ましくは、生物活性物質(E)は農薬又は肥料である。
温度応答性樹脂(A)及び吸水性樹脂(B)は、粒子の形態で樹脂組成物(D)に含まれていることが好ましい。好ましい態様においては、樹脂組成物(D)は、温度応答性樹脂(A)の粒子及び吸水性樹脂(B)の粒子を含む。粒子の形状は特に限定されず、例えば、球(真球を含む)、楕円体、フィラー等の形状であってよい。
本発明の被覆生物活性物質(F)は、肥料及び農薬からなる群より選ばれる1種類以上である生物活性物質(E)の溶出速度の温度依存性が小さいものである。
本発明の一態様においては、高温において、温度上昇による生物活性物質(E)の溶出速度の上昇を抑制することができる。また別の一態様においては、低温において、温度低下による生物活性物質(E)の溶出速度の低下を抑制することができる。本明細書中、特に断らない場合は、溶出速度の温度依存性に関して、高温とは25℃以上の温度を指し、低温とは25℃以下の温度を指す。25℃は、高温、低温のいずれであってもよい。
【0009】
温度応答性樹脂(A)は、水に対する下限臨界溶液温度(LCST)が10~40℃の範囲にある樹脂である。
水に対する下限臨界溶液温度(LCST)とは、その温度より高い温度では水に溶解せず、水と接触してもこれに溶解せず、その温度以下では水に溶解する温度をいう。LCSTの測定方法は以下の通りである。温度応答性樹脂(A)1.0重量%水溶液の5~60℃における透過率(通常波長670nm)をUV-vis分光光度計(例えば、(株)島津製作所製、UV-2550)を用いて測定し、透過率50%となる温度をLCSTとする。
一態様において、高温における生物活性物質(E)の溶出速度の上昇を抑制する観点から、温度応答性樹脂(A)として、LCSTが25~35℃の樹脂が好ましい。別の一態様において、低温における生物活性物質(E)の溶出速度の低下を抑制する観点からは、温度応答性樹脂(A)として、LCSTが15~25℃の樹脂が好ましい。
【0010】
本発明に用いられる前記LCSTが10~40℃の範囲にある温度応答性樹脂(A)として、構成単量体に以下の単量体を含む重合体又は共重合体を使用することができる。単量体としては、N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)(アルキル基の炭素数は1~3)、N-ビニルアルキルアミド(a2)、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニルエーテル誘導体、メチルセルロース等の水溶性セルロースエーテル等が挙げられるがこれらに限られない。上記の単量体を、温度応答性を付与する単量体ともいう。本明細書における「(メタ)アクリル」は「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
温度応答性樹脂(A)は、構成単量体に上記の単量体1種又は2種以上を含む樹脂であることが好ましい。一態様において、温度応答性樹脂(A)として、構成単量体にN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はN-ビニルアルキルアミド(a2)を含む樹脂が好ましく、構成単量体にN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)を含む樹脂がより好ましい。N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及びN-ビニルアルキルアミド(a2)は、それぞれ1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0011】
高温における生物活性物質(E)の溶出速度の上昇を抑制する観点からは、温度応答性樹脂(A)は、構成単量体にN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はN-ビニルアルキルアミド(a2)と、架橋剤(c)とを含み、(メタ)アクリル酸(塩)(b)を構成単量体として含まない樹脂(A1)であることが好ましい。温度応答性樹脂(A)としてこのような樹脂を含む樹脂組成物(D)で生物活性物質(E)を被覆することにより、高温における生物活性物質(E)の溶出速度の上昇を効果的に抑制することができる。N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はN-ビニルアルキルアミド(a2)として、好ましくはN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)を使用する。より好ましくは、温度応答性樹脂(A)は、構成単量体としてN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)と架橋剤(c)を含み、(メタ)アクリル酸(塩)(b)を構成単量体として含まない樹脂(A1-1)である。
温度応答性樹脂(A)が、構成単量体にN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はN-ビニルアルキルアミド(a2)と、架橋剤(c)とを含む場合、N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及びN-ビニルアルキルアミド(a2)の合計重量と、架橋剤(c)の重量比率((a1)+(a2))/(c)は、95/5~99.9/0.1が好ましい。また、N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及びN-ビニルアルキルアミド(a2)の合計使用量が、温度応答性樹脂(A)の構成単量体中に50~99.9重量%が好ましい。
樹脂(A1-1)の構成単量体中のN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)と、架橋剤(c)の重量比率(a1)/(c)は、95/5~99.9/0.1が好ましい。N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)の使用量は、樹脂(A1-1)の構成単量体中に50~99.9重量%が好ましい。
本明細書中、「(メタ)アクリル酸(塩)」は、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩を指す。
【0012】
前記N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)としては、アクリルアミド又はメタクリルアミドの窒素原子と結合した水素原子が1個のアルキル基、又は2個のアルキル基で置換されたものが挙げられ、アルキル基としては炭素数が1~3個の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられる。N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)として、例えば、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N’-ジエチルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-n-プロピルメタクリルアミド等が挙げられる。これらのうち、被覆生物活性物質(F)の温度依存指数(K)の観点で好ましくはN-イソプロピルアクリルアミド、N,N’-ジエチルアクリルアミドであり、より好ましくは、N-イソプロピルアクリルアミドである。
N-ビニルアルキルアミド(a2)として、N-ビニルノルマルプロピルアミド(N-ビニル-n-プロピルアミド)、N-ビニルイソプロピルアミド等が挙げられ、N-ビニルノルマルプロピルアミドが好ましい。
【0013】
例えば、前記温度応答性樹脂(A)のうち、N-イソプロピルアクリルアミドを重合して得られるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)は、32℃付近を境にこれより低温側では水に溶解し、高温側では不溶となる。肥料又は農薬が樹脂組成物(D)を透過する速度は樹脂組成物の吸水性に依存すると考えられ、吸水性が低くなるほど肥料又は農薬の透過性が低下する。したがって、例えば、32℃以上の高温側で水に溶けにくくなるN-イソプロピルアクリルアミドと架橋剤(c)とを構成単量体とする樹脂(A1-1)の粒子を樹脂組成物(D)に添加することで高温(例えば35℃)時の生物活性物質(E)の溶出速度の上昇を抑制できると考えられる。
また、アルキル基の種類によってこの溶解から不溶解に変わる温度は異なり、例えばN-ノルマル-プロピルアクリルアミドは23℃である。また、N-ビニルノルマルプロピルアミドを重合して得られるポリ(N-ビニルノルマルプロピルアミド)では、LCSTは32℃である。本発明ではN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はN-ビニルアルキルアミド(a2)としては2種以上を併用することができ、それによって膨潤の温度を調整できる。
【0014】
低温における生物活性物質(E)の溶出速度の低下を抑制する観点からは、温度応答性樹脂(A)として、構成単量体としてN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/若しくはN-ビニルアルキルアミド(a2)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)と、架橋剤(c)とを含む樹脂(A2)、及び/又は、構成単量体としてN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/若しくはN-ビニルアルキルアミド(a2)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)と、架橋剤(c)と、(メタ)アクリル酸(塩)(b)とを含み、構成単量体中の(メタ)アクリル酸(塩)(b)の構成比率が5モル%未満である樹脂(A3)が好ましい。
N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及びN-ビニルアルキルアミド(a2)は上記と同じである。
N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はN-ビニルアルキルアミド(a2)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)とを併用することにより、温度応答性樹脂(A)のLCSTを、例えば15~25℃に調整することができる。N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はN-ビニルアルキルアミド(a2)は、好ましくはN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)である。
樹脂(A2)及び(A3)において、構成単量体中のN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及びN-ビニルアルキルアミド(a2)の合計と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)とのモル比率((a1)+(a2))/(h)は、85/15~95/5が好ましい。樹脂(A2)及び(A3)において、構成単量体中のN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及びN-ビニルアルキルアミド(a2)の合計と、架橋剤(c)の重量比率((a1)+(a2))/(c)は、95/5~99.9/0.1が好ましい。N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及びN-ビニルアルキルアミド(a2)の合計使用量は、樹脂(A2)及び(A3)において、構成単量体中に50~99.9重量%が好ましい。
【0015】
樹脂(A2)は、好ましくは、構成単量体としてN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)と架橋剤(c)とを含む樹脂(A2-1)である。樹脂(A3)は、好ましくは、構成単量体としてN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)と架橋剤(c)と(メタ)アクリル酸(塩)(b)とを含み、構成単量体中の(メタ)アクリル酸(塩)(b)の構成比率が5モル%未満である樹脂(A3-1)である。
樹脂(A2-1)及び(A3-1)において、構成単量体中のN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)のモル比率(a1)/(h)は、85/15~95/5が好ましい。樹脂(A2-1)及び(A3-1)において、N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)と、架橋剤(c)の重量比率(a1)/(c)は、95/5~99.9/0.1が好ましい。N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)の使用量は、樹脂(A2-1)及び(A3-1)において、構成単量体中に50~99.9重量%が好ましい。
【0016】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)として、好ましくはプロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレートであり、より好ましくはブチルアクリレート、ブチルメタクリレートであり、さらに好ましくはブチルメタクリレートである。(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)は、樹脂(A2)及び(A3)において、構成単量体中に5~15モル%含まれることが好ましい。
【0017】
上記樹脂(A3)は、その構成単量体に(メタ)アクリル酸(塩)(b)を含み、構成単量体中の(メタ)アクリル酸(塩)(b)の構成比率が5モル%未満である。(メタ)アクリル酸(塩)(b)は、樹脂(A3)の構成単量体中に0.01モル%以上5モル%未満が好ましく、より好ましくは0.01~3モル%である。(メタ)アクリル酸(塩)(b)の構成比率は、構成単量体中の(メタ)アクリル酸及びその塩の合計のモル比率である。(メタ)アクリル酸(塩)(b)における(メタ)アクリル酸の塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、及びリチウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、並びにアミン塩が挙げられる。これらのうち、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0018】
前記架橋剤(c)としては、ラジカル重合性不飽和基を2個以上有する架橋剤が挙げられる。例えば、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタン及びペンタエリスリトールトリアリルエーテル等が挙げられる。これらのうち、好ましくはN,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルであり、より好ましくは、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミドである。
【0019】
前記温度応答性樹脂(A)には上記以外の単量体を配合することもできる。上記の温度応答性を付与する単量体、架橋剤(c)等の単量体と共重合させる単量体(その他の単量体ともいう)としては、親水性単量体及び疎水性単量体があり、それらの1種類以上の単量体を使用することができる。この場合、共重合するその他の単量体の種類と量を選ぶことにより温度応答性樹脂(A)のLCSTを調節可能である。例えば、疎水性単量体との共重合によりLCSTを低温側へ、親水性単量体との共重合によりLCSTを高温側に移動させることが可能となる。
【0020】
共重合可能な親水性単量体としては、例えばヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、N-ビニル-2-ピロリドン、各種メトキシポリエチレングリコールアクリレート、各種メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド等のグループより選ばれる一種又は二種以上が好ましい。また、疎水性単量体としては、例えば、N-n-ブチルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N-n-ヘキシルアクリルアミド、N-t-オクチルアクリルアミド、N-n-オクチルアクリルアミド、N-n-ドデシルアクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-t-ブチルメタクリルアミド、N-n-ヘキシルメタクリルアミド、N-n-オクチルメタクリルアミド、N-t-オクチルメタクリルアミド、N-n-ドデシルメタクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド誘導体(アルキル基の炭素数は4以上、好ましくは4~12);N,N-ジグリシジルアクリルアミド、N-(4-グリシドキシブチル)アクリルアミド、N-(5-グリシドキシペンチル)アクリルアミド、N-(6-グリシドキシヘキシル)アクリルアミド、N,N-ジグリシジルメタクリルアミド、N-(4-グリシドキシペンチル)メタクリルアミド、N-(5-グリシドキシヘキシル)メタクリルアミド等のN-(ω-グリシドキシアルキル)(メタ)アクリルアミド誘導体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類;スチレン、α-メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン等のグループより選ばれる一種又は二種以上が好ましい。
【0021】
温度応答性樹脂(A)は、粒子の形態であることが好ましく、体積平均粒子径は、1~100μmであることが好ましい。温度応答性樹脂(A)の体積平均粒子径が上記範囲であると、後記の樹脂(C)に対する分散性が良好となる。温度応答性樹脂(A)の体積平均粒子径は、10~80μmがより好ましい。
温度応答性樹脂(A)の体積平均粒子径は、JIS Z 8825に準じて、乾式粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製、LS 13320)で測定することができる。
【0022】
本発明の被覆生物活性物質(F)に使用される吸水性樹脂(B)としては、特に限定されず、例えば自重の10倍以上(好ましくは30倍以上)から1000倍程度の水を吸収する能力のある親水性架橋高分子であって、その構成単位にカルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基、リン酸(塩)基、第三級アミノ基、第四級アンモニウム塩基、水酸基、ポリエチレンオキシドなどの親水性基を有する吸水性樹脂を挙げることができる。吸水性樹脂(B)は、生物活性物質(E)の溶出速度を制御する目的で温度応答性樹脂(A)と併用される。カルボン酸(塩)は、カルボン酸及び/又はその塩を指す。スルホン酸(塩)、リン酸(塩)等についても同様である。
樹脂組成物(D)からの生物活性物質(E)の溶出挙動の観点から、吸水性樹脂(B)の体積平均粒子径は、1~200μmが好ましく、より好ましくは5~100μmであり、さらに好ましくは20~70μmである。吸水性樹脂(B)の体積平均粒子径が1μm未満では吸水性樹脂(B)による溶出時期、溶出速度の変化が小さい場合があり、溶出挙動の制御の観点で適さない場合がある。また、体積平均粒子径が200μmを超えると均一性の良い被覆生物活性物質の作製が困難となってしまい、被膜に欠陥を生じやすい場合がある。体積平均粒子径は、JIS Z 8825に準じて、乾式粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製、LS 13320)で測定することができる。
【0023】
吸水性樹脂(B)の吸水倍率は、通常10~1,000倍であり、好ましくは30~900倍であり、より好ましくは50~800倍である。吸水性樹脂(B)の吸水倍率が10倍未満であると、植物体に生物活性物質(E)とともに充分な水分を供給することが困難な場合がある。吸水倍率が1,000倍を超える吸水性樹脂は現在製造しにくい。本発明において、上記した「吸水倍率」は、例えば、以下の方法により測定可能である。
(吸水倍率の測定)
乾燥吸水性樹脂(B)の一定量(W1g)を秤取り、過剰量(例えば、前記吸水性樹脂の予想吸水量の1.5倍以上の重量)のイオン交換水(電気伝導度5μS/cm以下)に浸漬し、25℃で48時間恒温槽中に放置して、前記吸水性樹脂(B)を膨潤させる。余剰の水を濾過により除去した後、吸水膨潤した吸水性樹脂(B)の重量(W2g)を測定し、次式により吸水倍率を求める。
吸水倍率=(W2-W1)/W1
この吸水倍率の測定に際しては、重量W1、W2の測定は、例えば、精密な電子天秤((株)島津製作所製、LIBROR AEG-220; LIBROR EB-3200-D等)を用いて測定することが好ましい。
上記の吸水性樹脂(B)は乾燥した粉末等を用いてもよいし、乾燥せずに含水ゲル重合体をそのまま用いてもよい。
【0024】
吸水性樹脂(B)の添加量はその体積平均粒子径や吸水倍率によって異なるが、通常、樹脂組成物(D)に基づいて(樹脂組成物(D)中に)0.4~50重量%が好ましく、1~50重量%が好ましく、2~20重量%がより好ましく、3~15重量%であることがさらに好ましい。吸水性樹脂(B)の使用量が樹脂組成物(D)の0.4重量%未満では吸水性樹脂(B)による溶出時期、溶出速度の変化が小さいため、溶出挙動の制御の観点で適さない場合がある。また、吸水性樹脂(B)の使用量が樹脂組成物(D)の50重量%を超えると親水性が大きくなりすぎるため、溶出開始時期の調節が困難となる場合がある。加えて、均一な被膜の形成も困難となる場合がある。
【0025】
前記吸水性樹脂(B)は、その構成単量体として不飽和結合を有するカルボン酸(塩)を含むことが好ましい。不飽和結合を有するカルボン酸(塩)として、(メタ)アクリル酸(塩)(b)を含むことが好ましい。(メタ)アクリル酸(塩)(b)としては、(メタ)アクリル酸又はその塩(例えばアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩)が挙げられる。(メタ)アクリル酸(塩)(b)以外の不飽和結合を有するカルボン酸(塩)として、マレイン酸(塩)、ビニルスルホン酸(塩)、スチレンスルホン酸(塩)、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(塩)、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸(塩)、及び2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸(塩)などのアニオン性不飽和単量体が挙げられる。これらのうち、好ましくは、(メタ)アクリル酸とその塩、より好ましいものはアクリル酸とその塩である。(メタ)アクリル酸の塩の例としては、(メタ)アクリル酸のナトリウム塩、カリウム塩、及びリチウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、並びにアミン塩が挙げられる。これらのうち、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩が最も好ましい。吸水性樹脂(B)の構成単量体中の(メタ)アクリル酸(塩)(b)の構成比率は95~99.99モル%であることが好ましい。
【0026】
前記吸水性樹脂(B)は、その構成単量体に架橋剤(c)を含むこともできる。前記架橋剤(c)としては、温度応答性樹脂(A)で例示した架橋剤(c)を用いることができる。
吸水性樹脂(B)の構成単量体として、温度応答性樹脂(A)で例示した上記の親水性単量体及び疎水性単量体から選択される1種以上を使用してもよい。
【0027】
吸水性樹脂(B)として、ポリアスパラギン酸塩系吸水性樹脂、ポリグルタミン酸塩系吸水性樹脂、ポリアルギン酸塩系吸水性樹脂、デンプン系吸水性樹脂、セルロース系吸水性樹脂等の天然物由来の吸水性樹脂を使用することもできる。
【0028】
一態様において、吸水性樹脂(B)として、構成単量体として(メタ)アクリル酸(塩)(b)と架橋剤(c)とを含む樹脂(B2)が好ましく、構成単量体として(メタ)アクリル酸(塩)(b)と架橋剤(c)を含み、N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)を構成単量体として含まない樹脂(B1)がより好ましい。樹脂(B1)は、構成単量体にN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及びN-ビニルアルキルアミド(a2)を含まない樹脂であることがさらに好ましい。樹脂(B1)及び(B2)の構成単量体中の(メタ)アクリル酸(塩)(b)の構成比率は95~99.99モル%であることが好ましい。
【0029】
一態様においては、温度応答性樹脂(A)が、構成単量体としてN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はN-ビニルアルキルアミド(a2)と、架橋剤(c)とを含み、(メタ)アクリル酸(塩)(b)を構成単量体として含まない樹脂(A1)であり、前記吸水性樹脂(B)が、構成単量体として(メタ)アクリル酸(塩)(b)と架橋剤(c)とを含みN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)を構成単量体として含まない樹脂(B1)であることが好ましい。N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はN-ビニルアルキルアミド(a2)は、好ましくはN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)である。樹脂(A1)は、好ましくは上記の樹脂(A1-1)である。樹脂組成物(D)が上記の温度応答性樹脂及び樹脂(B1)を含むと、高温における生物活性物質(E)の溶出速度の上昇を効果的に抑制することができる。後記の被覆生物活性物質(F)の温度依存指数(K)を0.5~2.0とする観点からも、樹脂組成物(D)は上記温度応答性樹脂樹脂(A)及び樹脂(B1)を含むことが好ましい。
【0030】
別の一態様においては、温度応答性樹脂(A)が、構成単量体としてN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/若しくはN-ビニルアルキルアミド(a2)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)と、架橋剤(c)とを含む樹脂(A2)、及び/又は、構成単量体としてN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/若しくはN-ビニルアルキルアミド(a2)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(h)と、架橋剤(c)と、(メタ)アクリル酸(塩)(b)とを含み、構成単量体中の(メタ)アクリル酸(塩)(b)の構成比率が5モル%未満である樹脂(A3)であり、吸水性樹脂(B)が、構成単量体として(メタ)アクリル酸(塩)(b)と架橋剤(c)とを含む樹脂(B2)であることが好ましい。樹脂組成物(D)が上記の樹脂(A2)及び/又は(A3)と、樹脂(B2)とを含むと、低温における生物活性物質(E)の溶出速度の低下を効果的に抑制することができる。後記の被覆生物活性物質(F)の温度依存指数(K)を0.5~2.0とする観点からも、樹脂組成物(D)は上記の樹脂(A2)及び/又は(A3)(好ましくは(A2)又は(A3))と、樹脂(B2)とを含むことが好ましい。樹脂(B2)は、N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)を構成単量体として含まない樹脂(B1)であることが好ましい。N-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)及び/又はN-ビニルアルキルアミド(a2)は、好ましくはN-アルキル(メタ)アクリルアミド(a1)である。樹脂(A2)は、好ましくは上記の樹脂(A2-1)であり、樹脂(A3)は、好ましくは上記の樹脂(A3-1)である。
【0031】
温度応答性樹脂(A)及び吸水性樹脂(B)の製造法としては、例えば水溶液重合法、逆相懸濁重合法、噴霧重合法、光開始重合法、放射線重合法等が例示される。好ましい重合方法は、ラジカル重合開始剤を使用した水溶液重合法である。この場合のラジカル重合開始剤の種類と使用量、ラジカル重合条件についても特に限定はなく、通常と同様にできる。なお、これらの重合系に必要に応じて各種添加剤、連鎖移動剤(例えば、チオール化合物等)、界面活性剤等を添加しても差し支えない。
【0032】
本発明の生物活性物質(E)を被覆する樹脂組成物(D)に含まれる前記温度応答性樹脂(A)と前記吸水性樹脂(B)の重量比率(A)/(B)は、溶出速度及び温度依存性の観点から、30/70~97/3が好ましく、35/65~90/10がより好ましく、40/60~80/20がさらに好ましい。
【0033】
樹脂組成物(D)に含まれる温度応答性樹脂(A)の含有量は、温度依存性の観点から、樹脂組成物(D)の重量に基づいて1~30重量%が好ましく、2~28重量%がより好ましく、3~28重量%がさらに好ましく、4~25重量%がさらにより好ましく、5~25重量%が特に好ましい。
【0034】
前記樹脂組成物(D)は、前記温度応答性樹脂(A)と前記吸水性樹脂(B)の他に樹脂(C)を含有していることが好ましい。樹脂組成物(D)は、温度応答性樹脂(A)の粒子、吸水性樹脂(B)の粒子、及び、温度応答性樹脂(A)及び吸水性樹脂(B)とは異なる樹脂である樹脂(C)を含み、樹脂(C)中に温度応答性樹脂(A)の粒子及び吸水性樹脂(B)の粒子が分散している樹脂組成物であることが好ましい。例えば均一に温度応答性樹脂(A)の粒子と吸水性樹脂(B)の粒子をこの樹脂(C)中に分散させることで樹脂組成物(D)を形成することが好ましい。
【0035】
前記樹脂(C)としては、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アルキド樹脂及びこれらの2種以上の併用が挙げられる。樹脂組成物(D)は、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂及びアルキド樹脂からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂(C)を含むことが好ましい。これらのうち、肥料の樹脂被膜としてよく使われる点で、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂が好ましく、さらにポリウレタン樹脂が好ましい。
樹脂組成物(D)中の樹脂(C)の含有量は、75~98重量%が好ましく、85~98重量%がより好ましい。
【0036】
好ましいポリウレタン樹脂の組成としては、ポリオール成分、ポリイソシアネート及びアミン化合物を硬化させて得られるポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0037】
ポリオール成分としては、ひまし油、ひまし油誘導体、又はそれらのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの付加物が挙げられる。ひまし油誘導体としては、ひまし油の一部加水分解物、ひまし油のジオール類(ひまし油をジオール類(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール)でエステル交換したエステル交換体)、ひまし油とグリセリン、トリメチロールプロパンなどのポリオールとのエステル交換体を挙げることができる。これらの中で、ひまし油をエチレングリコール又はプロピレングリコールでエステル交換した誘導体(エステル交換体)が好ましく使用される。
【0038】
ポリイソシアネートは、特に限定されないが、芳香族系のポリイソシアネートが好ましい。具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等、あるいはこれらの変性体、例えば、ウレア変性体、二量体、三量体、カルボジイミド体、アロハネート変性体、ビュレット変性体などが挙げられる。これらは2種類以上を併せて使用することができ、また、工業的に使用されるいわゆる「粗製」ポリイソシアネートであってもよい。上記のうちMDI、粗製MDI、カルボジイミド化MDI(液状MDI)、TDI、粗製TDIなどが特に好ましい。
【0039】
また、ポリイソシアネートは、上記のポリイソシアネートから調製されたイソシアネート基末端プレポリマーとして使用することが好ましい。かかるイソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネートと、ポリオールとを反応させることにより調製することができる。イソシアネート基末端プレポリマーを調製するのに使用するポリオールとして、上記のひまし油又はひまし油誘導体が好ましい。一態様において、ポリウレタン樹脂は、ポリオール成分、イソシアネート基末端プレポリマー及びアミン化合物を硬化させて得られるポリウレタン樹脂であることが好ましい。イソシアネート基末端プレポリマーを調製する方法は、公知の方法でよく、ポリイソシアネートとポリオールとのNCO基/活性水素基の当量比を、1.1~50.0、好ましくは1.2~25.0として、30~130℃、好ましくは40~90℃で1~5時間反応を行うことにより得られる。
【0040】
本発明におけるアミン化合物としては、アルキルアミン類又はアミン系ポリオールが用いられる。アルキルアミン類としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルイソプロピルアミンなどが挙げられる。また、アミン系ポリオールとしては、ジ-又はトリ-エタノールアミン、N-メチル-N,N’-ジエタノールアミン等の低分子アミン系ポリオール、あるいはエチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,6-ヘキサンジアミンのようなアミノ化合物にプロピレンオキサイド(PO)又はエチレンオキサイド(EO)等のアルキレンオキサイド(AO)を付加したアミン系ポリオールが挙げられる。アミノ化合物にAOを付加したアミン系ポリオールとして、例えば、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシエチル]エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシエチル]-1,6-ヘキサンジアミン等が挙げられる。特に好ましいものは、反応性と物性が良好となることから、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、及び、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシエチル]エチレンジアミン又はそれらを主成分とするオキシプロピレン化エチレンジアミン、オキシエチレン化エチレンジアミンである。
【0041】
本発明において、アミン化合物としてアミン系ポリオールが好ましく用いられる。アミン系ポリオールを用いた場合には、得られるポリウレタン樹脂と、温度応答性樹脂(A)及び吸水性樹脂(B)との良好な相溶性が得られ、均一な被膜が容易に形成される。アミン系ポリオールは反応を促進すると共に架橋剤及び鎖延長剤としても働き、良好な硬化性と強靭な被膜物性が得られる。
【0042】
本発明の一態様において、高温における生物活性物質(E)の溶出速度の上昇を抑制する観点から、被覆生物活性物質(F)は、下記式(1)によって算出される温度依存指数(K)が0.5~2.0であることが好ましい。温度依存指数(K)が0.5~2.0であると、高温における生物活性物質(E)の溶出速度の上昇を効果的に抑制することができ、溶出速度の温度依存性を小さくすることができる。温度依存性の観点により、温度依存指数(K)は0.8~1.5であることがより好ましい。
式(1)
= P25/P35
[P25:温度25℃の水中における生物活性物質(E)の溶出率が80%に達する日数、
35:温度35℃の水中における生物活性物質(E)の溶出率が80%に達する日数]
【0043】
前記温度依存指数(K)は1に近い値である程、温度に対する溶出量の依存性が小さいことを示す。
前記温度依存指数(K)とは、水温を25℃又は35℃に調整した水中において、被覆生物活性物質(F)からの生物活性物質(E)の溶出率が80%に達する日数の比を表したものである。
生物活性物質(E)の溶出率の算出は、以下の方法で行う。以下は、25℃又は35℃の水中における生物活性物質(E)の溶出率を求める場合の方法である。
被覆生物活性物質(F)10gを容積250mLのガラス容器の底部に静置させ、25℃又は35℃に調整した水を被覆生物活性物質(F)が浸るように200mL注ぎ、ガラス容器の蓋を閉めて、ガラス容器を25℃又は35℃に設定した小型環境試験機(例えば、エスペック社製、SU-222)に設置する。試験開始前(水を注ぐ前)の被覆生物活性物質(F)に含まれる生物活性物質(E)の量を基準として、試験開始前の被覆生物活性物質(F)に含まれる生物活性物質(E)の量(g)と、ガラス容器の水中へ溶解した生物活性物質(E)の量(g)との比率を生物活性物質(E)の溶出率(%)とする。即ち生物活性物質(E)の溶出率(%)は、下記式により算出する。
生物活性物質(E)の溶出率(%)=100×(ガラス容器の水中へ溶解した生物活性物質(E)の量(g))/(試験開始前の被覆生物活性物質(F)に含まれる生物活性物質(E)の量(g))
温度25℃の水中における上記生物活性物質(E)の溶出率が80%に達するまでに要する日数をP25、温度35℃の水中における生物活性物質(E)の溶出率が80%に達するまでに要する日数をP35とする。ガラス容器の水中へ溶解した生物活性物質(E)の量は、試験開始後、一定期間ごとにガラス容器の水溶液をサンプリングして測定する。サンプリング及び測定によって得られる生物活性物質(E)の溶出率の値を、試験開始からの日数に対してプロットしグラフを描くことで、生物活性物質(E)の溶出率が80%に到達する日数を求めることができる。例えば、7日ごとに1mL、ガラス容器の水溶液をサンプリングして、サンプリング溶液中の生物活性物質(E)の量を測定し、7日ごとのサンプリングによって得られる生物活性物質(E)の溶出率の値を、試験開始からの日数に対してプロットしグラフを描くことで、生物活性物質(E)の溶出率が80%に到達する日数を求めることができる。25℃及び35℃下における生物活性物質(E)の溶出率が80%に達するまでに要する日数の比率(P25/P35)を求めることで、前記温度依存指数(K)を得る。
【0044】
生物活性物質(E)量の測定は、生物活性物質(E)の種類に応じた方法で行うことができる。例えば、生物活性物質(E)に尿素を使用した場合、サンプリング溶液中の尿素量の測定は以下の方法で行うことができる。
前記サンプリング溶液20μLにウレアーゼを含む測定溶液80μLを加え、水中の尿素濃度を比色法により測定するキット(例えば、BioAssay Systems社のQuantiChrom Urea Assay Kit II)を使用して、分光光度計(例えば、BioTEK Instruments社のPowerWave XS)を用いて尿素の吸収波長(557nm)における吸光度を測定し、所定濃度に調製した尿素水溶液から尿素量を算出する。
【0045】
別の一態様においては、低温における生物活性物質(E)の溶出速度の低下を抑制する観点からは、被覆生物活性物質(F)は、下記式(2)によって算出される温度依存指数(K)が0.5~2.0であることが好ましい。温度依存指数(K)が0.5~2.0であると、低温における生物活性物質(E)の溶出速度の低下を効果的に抑制することができ、溶出速度の温度依存性を小さくすることができる。温度依存指数(K)は0.8~1.5であることがより好ましい。
式(2)
= P15/P25
[P15:温度15℃の水中における生物活性物質(E)の溶出率が80%に達する日数、
25:温度25℃の水中における生物活性物質(E)の溶出率が80%に達する日数]
【0046】
前記温度依存指数(K)は1に近い値である程、温度に対する溶出量の依存性が小さいことを示す。
前記温度依存指数(K)とは、水温を15℃又は25℃に調整した水中において、被覆生物活性物質(F)からの生物活性物質(E)の溶出率が80%に達する日数(P15、P25)の比(P15/P25)を表したものである。
【0047】
温度25℃の水中における生物活性物質(E)の溶出率は、上記の生物活性物質(E)の溶出率を求める方法で水温を25℃に調整して求めることができる。温度15℃の水中における生物活性物質(E)の溶出率は、上記の生物活性物質(E)の溶出率を求める方法で、水温を15℃に調整して求めることができる。
【0048】
被覆生物活性物質(F)の被覆状態は、生物活性物質(E)の溶出速度がコントロールされれば表面を完全に被覆されていなくても差し支えないが、表面全体を被覆することが好ましい。
前記生物活性物質(E)の粒子に樹脂組成物(D)を被覆する方法は、特に限定されないが、流動状態とした生物活性物質(E)の粒子に樹脂組成物(D)を構成する成分を加えればよい。生物活性物質(E)の粒子を流動状態にするには、流動層又は噴流層等の装置が使用できる。その際に、樹脂組成物(D)を構成する成分の温度応答性樹脂(A)の粒子と吸水性樹脂(B)の粒子とを、マトリックスとしての樹脂(C)に予め一部又は全部の成分を混合してそれを生物活性物質(E)の粒子に加えて、樹脂組成物(D)の被膜を形成することができる。また温度応答性樹脂(A)の粒子と吸水性樹脂(B)の粒子とマトリックスとしての樹脂(C)をそれぞれ独立に生物活性物質(E)の粒子に加えて被覆装置内で混合させ、生物活性物質(E)の表面に樹脂組成物(D)の被膜を形成することもできる。被覆生物活性物質(F)における樹脂組成物(D)の被膜の厚さは特に限定されないが、例えば、10~200μmが好ましい。
【0049】
本発明で使用する生物活性物質(E)とは、農業、林業、園芸などに関連する生物に対して活性を有する物質のことを意味するが、具体的には農作物や有用植物などの植物体の育成、保護の目的で用いられるものであり、増収、農作物の高品質化、病害防除、害虫防除、有害動物防除、雑草防除、更には、農作物の生育促進、生育抑制、矮化などの効果をもたらすものであって、本発明においては肥料及び農薬である。
【0050】
肥料としては、窒素質肥料、燐酸質肥料、加里質肥料、植物必須要素のカルシウム、マグネシウム、硫黄、鉄、微量要素やケイ素等を含有する肥料を挙げることができる。肥料は1種であっても、2種以上であってもよい。肥料は、好ましくは常温で固体であり、より好ましくは粒状である。窒素質肥料として硫酸アンモニア、尿素、硝酸アンモニア、イソブチルアルデヒド縮合尿素、アセトアルデヒド縮合尿素等が挙げられ、燐酸質肥料としては過燐酸石灰、熔成リン肥、焼成リン肥等が挙げられ、加里質肥料としては硫酸加里、塩化加里、けい酸加里肥料等が挙げられ、その形態としては特に限定はない。肥料の三要素の合計成分量が30%以上の高度化成肥料や配合肥料、有機質肥料、さらに、硝酸化成抑制材や農薬を添加した肥料も本発明に使用することができる。その中でも、生物活性物質(E)の粒子が尿素の粒子であると、その使用目的に対して比較的高い効果が得られる。一態様において、生物活性物質(E)として、尿素が好ましい。
【0051】
農薬としては病害防除剤、害虫防除剤、有害動物防除剤、雑草防除剤、植物生長調節剤などを挙げることができ、これらであればその種類に制限なく使用することができる。病害防除剤とは、病原微生物の有害作用から農作物等を保護するために用いられる薬剤であり、主として殺菌剤が挙げられる。害虫防除剤とは、農作物等を加害する害虫を防除する薬剤であり、主として殺虫剤が挙げられる。有害動物防除剤とは、農作物等を加害する植物寄生性ダニ、植物寄生性線虫、野鼠、鳥、その他の有害動物を防除するために用いる薬剤である。雑草防除剤とは、農作物や樹木等に有害となる草木植物の防除に用いられる薬剤であり、除草剤とも呼ばれる。植物生長調節剤とは、植物の生理機能の増進あるいは抑制を目的に用いられる薬剤である。その中でも、殺虫作用及び殺菌作用の両方又は片方の作用を有する農薬は本発明に好ましく、その種類に制限なく使用することができる。
【0052】
本発明において使用する農薬は、常温で固体の粒状である。また、本発明においては、農薬が水溶性であっても、水難溶性であっても、水不溶性のものであっても用いることができ特に限定されるものではない。その中でも本発明においては、接触等により保護すべき植物体内に移行し薬効を示す浸透移行性の農薬が好ましい。本発明に利用できる農薬の具体例を下記に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、農薬は1種であっても、2種以上の複合成分からなるものであっても良い。
【0053】
具体的には、1-(6-クロロ-3-ピリジルメチル)-N-ニトロイミダゾリジン-2-イリデンアミン(一般名:イミダクロプリド)、o,o-ジエチル-S-2-(エチルチオ)エチルホスホロジチオエート(一般名:エチルチオメトン)、2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-7-ベンゾ〔b〕フラニル=N-ジブチルアミノチオ-N-メチルカルバマート(一般名:カルボスルファン)、(E)-N-(6-クロロ-3-ピリジルメチル)-N-エチル-N´-メチル-2-ニトロビニリデンジアミン(一般名:ニテンピラム)、(±)-5-アミノ-(2,6-ジクロロ-α,α,α-トリフルオロ-p-トルイル)-4-トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール-3-カルボニトリル(一般名:フィプロニル)、ブチル=2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチルベンゾフラン-7-イル=N,N´-ジメチル-N,N´-チオジカルバマート(一般名:フラチオカルブ)、エチル=N-〔2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチルベンゾフラン-7-イルオキシカルボニル(メチル)アミノチオ〕-N-イソプロピル-β-アラニナート(一般名:ベンフラカルブ)、
【0054】
1-ナフチル-N-メチルカーバメート(一般名:NAC)、(1RS,3SR)-2,2-ジクロロ-N-[1-(4-クロロフェニル)エチル]-1-エチル-3-メチルシクロプロパンカルボキサミド(一般名:カルプロパミド)、(RS)-2-シアノ-N-[(R)-1-(2,4-ジクロロフェニル)エチル]-3,3-ジメチルブチラミド(一般名:ジクロシメット)、5-メチル-1,2,4-トリアゾロ〔3,4-b〕ベンゾチアゾール(一般名:トリシクラゾール)、1,2,5,6-テトラヒドロピロロ〔3,2,1-ij〕キノリン-4-オン(一般名:ピロキロン)、(RS)-5-クロロ-N-(1,3-ジヒドロ-1,1,3-トリメチルイソベンゾフラン-4-イル)-1,3-ジメチルピラゾール-4-カルボキサミド(一般名:フラメトピル)、3-アリルオキシ-1,2-ベンゾイソチアゾール-1,1-ジオキシド(一般名:プロベナゾール)、2-クロロ-4-エチルアミノ-6-イソプロピルアミノ-s-トリアジン(一般名:アトラジン)、1-(2-クロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イルスルホニル)-3-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル尿素(一般名:イマゾスルフロン)、S-ベンジル=1,2-ジメチルプロピル(エチル)チオカルバマート(一般名:エスプロカルブ)、エチル=(RS)-2-[4-(6-クロロキノキサリン-2-イルオキシ)フェノキシ]プロピオナート(一般名:キザロホップブチル)、ブチル=(R)-2-[4-(4-シアノ-2-フルオノフェノキシ)フェノキシ]プロピオナート(一般名:シハロホップブチル)、2-メチルチオ-4-エチルアミノ-6-(1,2-ジメチルプロピルアミノ)-s-トリアジン(一般名:ジメタメトリン)、2-メチルチオ-4,6-ビス(エチルアミノ)-s-トリアジン(一般名:シメトリン)、1-(α,α-ジメチルベンジル)-3-(パラトリル)尿素(一般名:ダイムロン)、2-クロロ-N-(3-メトキシ-2-テニル)-2´,6´-ジメチルアセトアニリド(一般名:テニルクロール)、α-(2-ナフトキシ)プロピオンアニリド(一般名:ナプロアニリド)、メチル=3-クロロ-5-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イルカルバモイルスルファモイル)-1-メチルピラゾール-4-カルボキシラート(一般名:ハロスルフロンメチル)、エチル=5-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イルカルバモイルスルファモイル)-1-メチルピラゾール-4-カルボキシラート(一般名:ピラゾスルフロンエチル)、S-(4-クロロベンジル)-N,N-ジエチルチオカーバメート(一般名:ベンチオカーブ)、メチル=α-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イルカルバモイルスルファモイル)-o-トルアート(一般名:ベンスルフロンメチル)、2-ベンゾチアゾール-2-イルオキシ-N-メチルアセトアニリド(一般名:メフェナセット)等を挙げることができる。
【0055】
生物活性物質(E)の粒子の粒子径は特に限定されるものではないが、個数平均粒子径が好ましくは0.3~15mmである。生物活性物質(E)の粒子の個数平均粒子径は、例えば、肥料の場合においては、容易に取扱いができ、発塵の少なさの観点により1.0~11.0mmであることが好ましく、農薬の場合においては容易に取扱いができ、発塵の少なさの観点により0.3~3.0mmであることが好ましい。
個数平均粒子径は、JIS 8827-1に準じて、生物活性物質(E)の粒子をデジタルマイクロスコープ(例えば、キーエンス社製、VHX-200)で観察して画像処理することにより測定することができる。
【0056】
本発明で用いる生物活性物質(E)の粒子は、生物活性物質(E)を含む粒子であり、生物活性物質単独で造粒されたもの、あるいはクレー、カオリン、タルク、ベントナイト、炭酸カルシウムなどの担体や、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、澱粉類などの結合剤を用いて造粒したものであっても構わない。
また、必要に応じ、例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の界面活性剤や廃糖蜜、動物油、植物油、水素添加油、脂肪酸、脂肪酸金属塩、パラフィン、ワックス、グリセリンなどを含有したものであっても構わない。
【0057】
本発明の被覆生物活性物質(F)は、温度変化が生じる栽培環境でも生物活性物質の溶出速度が変化せず、夏期や冬期を跨いで栽培期間中に温度の上昇と下降(又は下降と上昇)が生じる作型において好ましく適用できる。
【0058】
本発明の被覆生物活性物質(F)が適用できる作物としては、特に限定されるものではないが、食用作物、飼料作物、工芸作物、園芸作物(果樹、蔬菜、花卉等)等が挙げられる。食用作物としては、例えば、イネ、ムギ類、トウモロコシ、イモ類、マメ類等が挙げられ、蔬菜としては、例えば、葉菜類、果菜類、根菜類が挙げられ、花卉としては、例えば、1年草、2年草、宿根草が挙げられる。これらの中でも、生育速度が早く温度条件への生育反応が鋭敏である作物の栽培に好適に用いられる。
本発明の被覆生物活性物質(F)は、例えば、作物を栽培する土壌や水に施用することができる。
【実施例
【0059】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0060】
<粒子径の測定方法>
温度応答性樹脂(A)及び吸水性樹脂(B)の体積平均粒子径は、JIS Z 8825に準じて測定した。測定には、乾式粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製、LS 13320)を用いた。後記の吸水性樹脂(B-1)及び(B-2)の体積平均粒子径は35μmであった。
生物活性物質(E)として使用した尿素の粒子の個数平均粒子径は、JIS 8827-1に準じて、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX-200)で粒子を観察し、画像処理することにより測定した。
【0061】
製造例1<ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(A-1)の製造>
反応容器にN-イソプロピルアクリルアミド10gとN,N-メチレンビスアクリルアミド0.025g、イオン交換水85gを加え、200rpmで撹拌しながら、70℃で30分間窒素置換を行った。続いて、5gのイオン交換水に2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(V-50)0.1gを溶解させ、この水溶液を系内に滴下することで重合を開始させ、重合は70℃で1時間かけて行った。反応終了後、粒子分散液を遠心分離(15000rpm)することにより、樹脂粒子と上澄み液を分離し、沈殿させた樹脂粒子を水に再分散させた。この操作を3回繰り返してポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(A-1)の粒子を精製した。得られた(A-1)の粒子の体積平均粒子径は35μmであった。ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(A-1)の下限臨界溶液温度(LCST)は、32℃であった。
【0062】
製造例2<ポリ(N-ビニルノルマルプロピルアミド)(A-2)の製造>
製造例1において、N-イソプロピルアクリルアミドの代わりにN-ビニルノルマルプロピルアミドを用いること以外は、製造例1と同じ操作を行い、ポリ(N-ビニルノルマルプロピルアミド)(A-2)の粒子を作製した。得られたポリ(N-ビニルノルマルプロピルアミド)(A-2)の粒子の体積平均粒子径は35μmであった。ポリ(N-ビニルノルマルプロピルアミド)(A-2)のLCSTは、32℃であった。
【0063】
製造例3<N-イソプロピルアクリルアミド-ブチルメタアクリレート共重合体(A-3)の製造>
反応容器にN-イソプロピルアクリルアミド5部とブチルメタクリレート0.6部と、N,N-メチレンビスアクリルアミド0.06部と、1,4-ジオキサン30部を加え、200rpmで撹拌しながら、25℃で5分間窒素置換を行った。続いて、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1部を上記反応容器に添加することで重合を開始させ、重合は70℃で4時間かけて行った。反応終了後、メタノール/水=1/1混合溶液で再沈殿させ、減圧乾燥することによりN-イソプロピルアクリルアミド-ブチルメタクリレート共重合体(A-3)の粒子を精製した。得られた粒子の体積平均粒子径は35μmであった。N-イソプロピルアクリルアミド-ブチルメタクリレート共重合体(A-3)のLCSTは、20℃であった。
【0064】
製造例4<ポリ(N-エチルアクリルアミド)(A’-2)の製造>
製造例1において、N-イソプロピルアクリルアミドの代わりにN-エチルアクリルアミドを用いること以外は、製造例1と同じ操作を行い、ポリ(N-エチルアクリルアミド)(A’-2)の粒子を作製した。得られたポリ(N-エチルアクリルアミド)(A’-2)の粒子の体積平均粒子径は35μmであった。ポリ(N-エチルアクリルアミド)(A’-2)のLCSTは、73℃であった。
【0065】
製造例5<ポリウレタン樹脂(C-1)製造用のイソシアネート基末端プレポリマー(C-1-2)の製造>
反応容器にひまし油32部とジフェニルメタンジイソシアネート68部を仕込み、70℃で3時間反応させることで、NCO%が19%のイソシアネート基末端プレポリマー(C-1-2)を得た。
【0066】
実施例1 <被覆生物活性物質(F-1)の作製>
製造例1で製造した7.2部のポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(A-1)の粒子、1.8部の吸水性樹脂(B-1)の粒子(「サンフレッシュ ST-500MPSA」、三洋化成工業(株)製)、35.4部のひまし油、8.3部のアミン化合物(C-1-1)(ニューポール NP-300、三洋化成工業(株)製)、1.0部のエチルメチルケトンを混合した後、製造例5で製造した47.3部のイソシアネート基末端プレポリマー(C-1-2)を添加し、撹拌を行った。これにより、ひまし油、アミン化合物(C-1-1)及びイソシアネート基末端プレポリマー(C-1-2)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(A-1)の粒子及び吸水性樹脂(B-1)を含む混合溶液を得た。この混合溶液60gを噴流層による流動コーティング装置を用い、装置内で浮遊している市販の尿素(個数平均粒子径3mm)1kgに対してスプレー噴霧で添加し被覆を行い、室温硬化させることで被覆生物活性物質(F-1)を作製した。被覆生物活性物質(F-1)の被膜の膜厚は60μmであった。
被覆生物活性物質(F-1)は、尿素粒子が、(A-1)の粒子、(B-1)の粒子及びポリウレタン樹脂(C-1)を含む樹脂組成物で被覆された被覆生物活性物質である。ポリウレタン樹脂(C-1)は、上記のひまし油、アミン化合物(C-1-1)及びイソシアネート基末端プレポリマー(C-1-2)が反応して生成したポリウレタン樹脂である。
【0067】
実施例2~4 <被覆生物活性物質(F-2)~(F-4)の作製>
実施例1において、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(A-1)の粒子及び吸水性樹脂(B-1)の粒子の使用量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同じ操作を行い、被覆生物活性物質(F-2)~(F-4)を作製した。被覆生物活性物質(F-2)~(F-4)の被膜の膜厚は60μmであった。
【0068】
実施例5~7 <被覆生物活性物質(F-5)~(F-7)の作製>
実施例1において、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(A-1)の粒子の代わりに製造例2で製造したポリ(N-ビニルノルマルプロピルアミド)(A-2)の粒子を用い、ポリ(N-ビニルノルマルプロピルアミド)(A-2)及び吸水性樹脂(B-1)の粒子の使用量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同じ操作を行い、被覆生物活性物質(F-5)~(F-7)を作製した。被覆生物活性物質(F-5)~(F-7)の被膜の膜厚は60μmであった。
【0069】
実施例8~10 <被覆生物活性物質(F-8)~(F-10)の作製>
実施例1において、ポリ(N-ビニルノルマルプロピルアミド)(A-2)の粒子をさらに用い、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(A-1)、ポリ(N-ビニルノルマルプロピルアミド)(A-2)及び吸水性樹脂(B-1)の粒子の使用量を表1に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、被覆生物活性物質(F-8)~(F-10)を作製した。被覆生物活性物質(F-8)~(F-10)の被膜の膜厚は60μmであった。
【0070】
実施例11 <被覆生物活性物質(F-11)の作製>
実施例1において、吸水性樹脂(B-1)の粒子の代わりに吸水性樹脂(B-2)の粒子(「サンフレッシュ ST-100MC」、三洋化成工業(株)製)を用い、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(A-1)及び吸水性樹脂(B-2)の粒子の使用量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同じ操作を行い、被覆生物活性物質(F-11)を作製した。被覆生物活性物質(F-11)の被膜の膜厚は60μmであった。
【0071】
実施例12 <被覆生物活性物質(F-12)の作製>
製造例1で製造した11.5部のポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(A-1)の粒子、11.5部の吸水性樹脂(B-1)の粒子(「サンフレッシュ ST-500MPSA」、三洋化成工業(株)製)、77部のポリエチレンを混合し、撹拌を行った。この混合溶液60gを噴流層による流動コーティング装置を用い、装置内で浮遊している市販の尿素(個数平均粒子径3mm)1kgに対してスプレー噴霧で添加し被覆を行い、室温硬化させることで被覆生物活性物質(F-12)を作製した。被覆生物活性物質(F-12)の被膜の膜厚は60μmであった。被覆生物活性物質(F-12)は、尿素粒子が、(A-1)の粒子、(B-1)の粒子及びポリエチレン樹脂(C-2)を含む樹脂組成物で被覆された被覆生物活性物質である。
【0072】
実施例13~15 <被覆生物活性物質(F-13)~(F-15)の作製>
実施例1において、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(A-1)の粒子の代わりに製造例3で製造したN-イソプロピルアクリルアミド-ブチルメタアクリレート共重合体(A-3)の粒子を用い、N-イソプロピルアクリルアミド-ブチルメタアクリレート共重合体(A-3)及び吸水性樹脂(B-1)の粒子の使用量を表2に示す量に変更した以外は、実施例1と同じ操作を行い、被覆生物活性物質(F-13)~(F-15)を作製した。被覆生物活性物質(F-13)~(F-15)の被膜の膜厚は60μmであった。
【0073】
実施例16 <被覆生物活性物質(F-16)の作製>
実施例12において、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(A-1)の粒子の代わりに、製造例3で製造したN-イソプロピルアクリルアミド-ブチルメタアクリレート共重合体(A-3)の粒子を用い、N-イソプロピルアクリルアミド-ブチルメタアクリレート共重合体(A-3)及び吸水性樹脂(B-1)の粒子の使用量を表2に示す量に変更した以外は、実施例12と同じ操作を行い、被覆生物活性物質(F-16)を作製した。被覆生物活性物質(F-16)の被膜の膜厚は60μmであった。
【0074】
比較例1 <被覆生物活性物質(F’-1)の作製>
実施例1において、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(A-1)の粒子と吸水性樹脂(B-1)の粒子を用いずに、実施例1と同量のひまし油、アミン化合物(C-1-1)(ニューポール NP-300、三洋化成工業(株)製)を混合した後、イソシアネート基末端プレポリマー(C-1-2)を添加し、撹拌を行った。得られた溶液を用いて実施例1と同様の操作で尿素を被覆して、比較のための樹脂被膜(D’-1)を有する被覆生物活性物質(F’-1)を作製した。被膜(D’-1)の膜厚は60μmであった。
【0075】
比較例2 <被覆生物活性物質(F’-2)の作製>
実施例1において、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(A-1)の粒子を用いず、吸水性樹脂(B-1)の粒子の使用量を表3に示す量に変更した以外は実施例1と同じ操作を行い、比較のための樹脂被膜(D’-2)を有する被覆生物活性物質(F’-2)を作製した。被膜(D’-2)の膜厚は60μmであった。
【0076】
比較例3 <被覆生物活性物質(F’-3)の作製>
実施例1において、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(A-1)の粒子の代わりにポリアクリルアミド(A’-1)の粒子を用いること以外は、実施例1と同様の操作を行うことで比較のための樹脂被膜(D’-3)を有する被覆生物活性物質(F’-3)を作製した。被膜(D’-3)の膜厚は60μmであった。なお、ポリアクリルアミド(A’-1)はLCSTを有さない。
【0077】
比較例4 <被覆生物活性物質(F’-4)の作製>
実施例1において、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(A-1)の粒子の代わりに製造例4で製造したポリ(N-エチルアクリルアミド)(A’-2)の粒子を用い、ポリ(N-エチルアクリルアミド)(A’-2)及び吸水性樹脂(B-1)の粒子の使用量を表3に示す量に変更した以外は、実施例1と同じ操作を行い、被覆生物活性物質(F’-4)を作製した。被覆生物活性物質(F’-4)の被膜の膜厚は60μmであった。
【0078】
実施例及び比較例の被覆生物活性物質(F)又は(F’)について、被膜を構成する樹脂組成物の組成などを表1~3に示す。
【0079】
実施例と比較例で得られた被覆生物活性物質(F)又は(F’)を用いて以下の方法で溶出試験を行った。
【0080】
<尿素溶出率>
尿素溶出率の算出は以下の方法で行った。
被覆生物活性物質(F-1)~(F-16)、(F’-1)~(F’-4)それぞれ10gを容積250mLのガラス容器の底部に静置させ、15℃、25℃または35℃に調整した水を被覆生物活性物質が浸るように200mL注ぎ、ガラス容器の蓋を閉めて、ガラス容器を15℃、25℃又は35℃に設定した小型環境試験機(エスペック社製、SU-222)に設置した。
試験開始前の被覆生物活性物質に含まれる尿素量を基準として、試験開始前の被覆生物活性物質に含まれる尿素量(g)と、試験開始後にガラス容器の水中へ溶解した尿素量(g)との比率を尿素溶出率(%)とした。尿素溶出率(%)は、下記式により算出した。
尿素溶出率(%)=100×(ガラス容器の水中へ溶解した尿素量(g))/(試験開始前の被覆生物活性物質に含まれる尿素量(g))
水の温度を15℃、25℃又は35℃に調整し、各温度において、上記尿素溶出率が80%に達するまでに要する日数をP15、P25、P35とした。
尿素量の測定方法は、7日ごとに1mL、ガラス容器中の水溶液をサンプリングして、前記サンプリング溶液10μLにウレアーゼを含む測定溶液80μLを加えBioAssay Systems社のQuantiChrom Urea Assay Kit IIを使用して、BioTEK Instruments社のPowerWave XSを用いて尿素の吸収波長(557nm)における吸光度を測定し、所定濃度に調製した尿素水溶液から尿素量を算出した。7日ごとのサンプリングによって得られる尿素溶出率の値を、試験開始からの日数に対してプロットしグラフを描くことで、15℃、25℃又は35℃の水中における尿素溶出率が80%に達するまでに要する日数を求めた。得られた各温度の水中における尿素溶出率が80%に達するまでに要する日数から、下記の温度依存指数K及びKを得た。
また、上記の尿素溶出率をプロットしたグラフから、15℃、25℃又は35℃における試験開始から30日後の尿素溶出率を求めた。
実施例1~12について、25℃又は35℃の水中における試験開始から30日後の尿素溶出率と、これらから計算した25℃の水中における尿素溶出率(%)に対する35℃の水中における尿素溶出率(%)の比(35℃での尿素溶出率(%)/25℃での尿素溶出率(%)の比)の表1に示す。
実施例13~16について、15℃又は25℃の水中における試験開始から30日後の尿素溶出率と、これらから計算した15℃の水中における尿素溶出率(%)に対する25℃の水中における尿素溶出率(%)の比(25℃での尿素溶出率(%)/15℃での尿素溶出率(%)の比)の表2に示す。
比較例1~4について、15℃、25℃又35℃における試験開始から30日後の尿素溶出率を表3に示す。また、これらから計算した15℃の水中における尿素溶出率(%)に対する25℃の水中における尿素溶出率(%)の比(25℃での尿素溶出率(%)/15℃での尿素溶出率(%)の比)、及び、25℃の水中における尿素溶出率(%)に対する35℃の水中における尿素溶出率(%)の比(35℃での尿素溶出率(%)/25℃での尿素溶出率(%)の比)を表3に示す。
【0081】
<温度依存指数(K)>
実施例1~12及び比較例1~4の被覆生物活性物質(F)及び(F’)の温度依存指数(K)は、温度25℃の水中における尿素溶出率が80%に達する日数(P25)、温度35℃の水中における尿素溶出率が80%に達する日数(P35)から下記式(1)で求めた。結果を表1及び3に示す。
式(1)
= P25/P35
[P25:温度25℃の水中における尿素溶出率が80%に達する日数、
35:温度35℃の水中における尿素溶出率が80%に達する日数]
【0082】
実施例13~16及び比較例1~4の被覆生物活性物質(F)及び(F’)の温度依存指数(K)は、温度15℃の水中における尿素溶出率が80%に達する日数(P15)、温度25℃の水中における尿素溶出率が80%に達する日数(P25)から下記式(2)で求めた。結果を表2及び3に示す。
式(2)
= P15/P25
[P15:温度15℃の水中における尿素溶出率が80%に達する日数、
25:温度25℃の水中における尿素溶出率が80%に達する日数]
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
表1~3から明らかなように、実施例1~12で得られた被覆生物活性物質は比較例1~4の被覆生物活性物質に比べ、25℃と35℃の生物活性物質(E)の溶出速度比がはるかに1に近いので、この温度範囲内において温度に依存せずに同等の速度で肥料などの生物活性物質を放出できると考えられる。
実施例13~16で得られた被覆生物活性物質は比較例1~4の被覆生物活性物質に比べ、15℃と25℃の溶出速度比が1に近いので、この温度範囲内において温度に依存せずに同等の速度で肥料などの生物活性物質を放出できると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の被覆された生物活性物質、具体的には肥料や農薬は、温度変化の大きい環境下であっても、作物に対して安定的に肥料や農薬の有効成分を供給し、生育と収量の向上をもたらす。