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特許7399871T細胞に高い転写活性を有するキメラプロモーター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】T細胞に高い転写活性を有するキメラプロモーター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20231211BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20231211BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231211BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20231211BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231211BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/85 Z ZNA
C12N15/13
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020555282
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 CN2018124687
(87)【国際公開番号】W WO2019129175
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】201711476630.6
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520233869
【氏名又は名称】上海細胞治療集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI CELL THERAPY GROUP CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】銭 其軍
(72)【発明者】
【氏名】金 華君
(72)【発明者】
【氏名】王 超
(72)【発明者】
【氏名】何 周
(72)【発明者】
【氏名】李 林芳
(72)【発明者】
【氏名】孫 娟娟
(72)【発明者】
【氏名】黄 晨
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/157579(WO,A2)
【文献】国際公開第2014/133468(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/195049(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/11
C12N 5/0783
C12N 5/10
C12N 15/85
C12N 15/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1に示されるヌクレオチド配列を有するエンハンサーsDTSと、当該エンハンサーに作動可能に連結され、SEQ ID NO:3に示されるヌクレオチド配列を有するEF1αプロモーターからなり;上記エンハンサーsDTSが、上記EF1αプロモーターの5’末端に位置することを特徴とする増強されたプロモーター。
【請求項2】
請求項1に記載の増強されたプロモーターを含有する核酸コンストラクト。
【請求項3】
上記核酸コンストラクトは、5’末端から3’末端まで、作動可能に連結される上記増強されたプロモーター、目的のタンパク質のコード配列及び転写ターミネーターを順に含有する発現カセットである請求項2に記載の核酸コンストラクト。
【請求項4】
請求項1に記載の増強されたプロモーターを含有するベクター。
【請求項5】
上記ベクターは一過性発現ベクター、ウイルス発現ベクター又は転置可能なベクターから選ばれる真核発現ベクターであるか、あるいは、
上記ベクターは、目的の遺伝子の発現カセットをホスト細胞のゲノムへ組み込むためのベクターである、請求項4に記載のベクター。
【請求項6】
上記ベクターは転置可能なベクターであり、上記転置可能なベクターは、piggybac、sleeping beauty、frog prince、Tn5又はTyから選ばれる転置因子を含有する請求項5に記載のベクター。
【請求項7】
上記転置可能なベクターの5’LTRと3’LTRの間に、順に、作動可能に連結される上記増強されたプロモーター、一つ又は複数の制限エンドヌクレアーゼの制限サイト又は任意的な目的のコード配列、及び転写終了配列を含有することを特徴とする請求項5に記載のベクター。
【請求項8】
上記3’LTRの3’末端に作動可能にトランスポゼースのコード配列及びそのプロモーター配列が連結される請求項7に記載のベクター。
【請求項9】
上記ベクターの核酸配列は、SEQ ID NO:12に示される請求項4に記載のベクター。
【請求項10】
上記転写終了配列は、SV40 polyA転写終了配列である請求項7に記載のベクター。
【請求項11】
上記目的の遺伝子は、PD-1一本鎖抗体のコード配列である請求項5に記載のベクター。
【請求項12】
上記制限サイトは、AscI制限サイト、XbaI制限サイト、PvuI制限サイト、EcoRI制限サイト及びSalI制限サイトから選ばれることを特徴とする請求項7に記載のベクター。
【請求項13】
請求項1に記載の増強されたプロモーターの、外来遺伝子のT細胞内の発現を促進することにおける使用。
【請求項14】
請求項1に記載の増強されたプロモーター又は請求項2又は請求項3に記載の核酸コンストラクト又は請求項4乃至請求項12のいずれか一項に記載のベクターを含有するT細胞。
【請求項15】
上記T細胞のゲノムに、請求項1に記載の増強されたプロモーターをプロモーターとすることで目的の外来遺伝子の発現を駆動させる発現カセットが組み込まれている請求項14に記載のT細胞。
【請求項16】
T細胞のゲノムに、請求項1に記載の増強されたプロモーター及び当該プロモーターと作動可能に連結される抗体のコード配列を含有する発現カセットを組み込んでいる、安定的に抗体を発現するT細胞。
【請求項17】
上記抗体は、PD-1抗体、PD-L1抗体、CTLA4抗体、CD40抗体、CD40L抗体、CD47抗体、CD137抗体、CD28抗体、CD27抗体、OX40抗体、DNAM-1抗体、GITR抗体、ICSOS抗体、2B4抗体、CD160抗体、TIM3抗体、LAG3抗体、BTLA抗体及びTIGIT抗体から選ばれるいずれか一種の抗体である請求項16に記載のT細胞。
【請求項18】
上記PD-1抗体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:10に示され、又は、上記PD-1抗体のコード配列は、SEQ ID NO:11に示された請求項17に記載のT細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子生物学分野に属し、T細胞に高い活性を有するプロモーター及びその用途に関わる。上記プロモーターは、人工合成されたキメラプロモーターであり、当該プロモーターは、T細胞に高い活性を有する。本発明は、当該プロモーターを含む組換えベクター、組換えウイルス、及び上記プロモーターの外来遺伝子に対する制御が遺伝子組み換えT細胞治療における用途を関わる。
【背景技術】
【0002】
がんは、100年前に研究されたが、今までも完全には克服されていない。。手術治療、化学療法、放射線療法などの治療法の出現により、がん患者の生存率は大幅に改善されたが、これらの治療法は世界中の数千万人のがん患者を救うには十分ではない。バイオテクノロジーの活発な発展により、バイオセラピーは新しい治療法として産生され、現在、がん治療の分野で4番目に大きな治療法となる。
【0003】
バイオテクノロジーが、免疫療法(細胞、サイトカイン、抗体、ワクチンなど)、遺伝子療法、血管新生を調節する療法、小分子標的薬、幹細胞および組織工学再生医療などの複数のモードを含む。その中でも、がんの免疫療法は2013年にサイエンス雑誌で最も注目されている6つの科学分野の1つに選ばれて以来、学術機関や製薬会社から多大な注目を集めている。
【0004】
がんの免疫療法には、主に養子細胞療法、免疫調節剤、腫瘍ワクチン、及び免疫チェックポイント遮断薬が含まれる。その中で、免疫チェックポイント遮断薬は多くのがん、特に悪性および化学薬物耐性がある癌に大きな影響を与えるから、4つの免疫チェックポイント遮断薬がFDAに承認される;さらに、養子細胞療法の分野では、特に新世代のCAR-T細胞療法技術は、白血病やリンパ腫などの血液腫瘍に対して驚くべき治療効果を示す。現在、CAR-T細胞の調製は主にウイルスおよび非ウイルス発現系に基づき、ウイルスベクターは細胞の複製および挿入突然変異を引き起こし、それが生物学的安全性の問題を引き起こす可能性がある。2013年、MDアンダーソンがんセンターのクーパー(Cooper)実験室は、非ウイルストランスフェクション法を使用し、つまり、Sleeping Beauty(SB)トランスポゾンシステムで遺伝子修飾を行い、CD19抗原特異的CAR-T細胞を得た。
【0005】
プロモーターは、遺伝子の構成要素の一つであり、通常は構造遺伝子の5’末端の上流にあり、RNAポリメラーゼが認識・結合し、転写を開始するDNA配列である。プロモーターは、導入された遺伝子の発現効率に影響を与える重要な要素の1つであり、高効率のプロモーターを選択することが外来遺伝子の高効率発現の鍵となる点である。
【0006】
プロモーターの転写モードにより、それらは3つに分けられる:構成的プロモーター、組織または器官特異的プロモーターおよび誘導性プロモーター。
【0007】
構成的プロモーターは、構成的プロモーターの調節で、異なる組織、器官、発生段階での遺伝子発現に明らかな違いがないものであって、そして構成的プロモーターと呼ばれる。哺乳類動物で一般的に使用される構成的プロモーターが、ウイルス由来のマウスまたはヒトのサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(それぞれmCMVおよびhCMVと略される)、およびサル液胞ウイルスSV40プロモーター;天然ヒトゲノム由来のEF1αプロモーター、ユビキチンプロモーター(ユビキチン、略してUbi)、β-アクチンプロモーター、PGK-1プロモーター、Rosa26プロモーター、HSP70プ
ロモーター、GAPDHプロモーター、eIF4A1プロモーター、Egr1プロモーター、FerHプロモーター 、SM22αプロモーター、エンドセリン-1プロモーターなどを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
腫瘍免疫療法では、外来遺伝子の効率かつ安定な発現を維持することが非常に重要である。ただし、一部のウイルス由来の構成的プロモーターは、一過性の発現活性が高い(CMVプロモーターなど)が、エピジェネティックな修飾のために、その発現はオフにされやすい;一方、一部のヒト由来の天然構成プロモーターまたは腫瘍特異的プロモーターは安定した発現を示すが、それらの発現活性は比較的弱く、免疫療法のニーズを満たすことは困難である。したがって、研究者は一連の、外来遺伝子の発現に広く使用されているキメラプロモーターCAG(ヒトCMVエンハンサー-ニワトリβ-actinプロモーター-ウサギβ-globinイントロンを含む)を代表とするシスエレメントを含む人工キメラプロモーターを設計・構築し、それらのプロモーターが、主に発現を安定させる役割を果たすプロモーターコア配列と、発現効率を高めることができる上流エンハンサーまたは下流イントロンを含む。
【0009】
エンハンサー(enhancer)は、それに関連する遺伝子の転写頻度を増加させるDNA配列を指し、プロモーターを介して下流の遺伝子の転写を増加させる。有効的なエンハンサーは、遺伝子の5’末端、または遺伝子の3’末端に位置してもよく、遺伝子のイントロンに位置してもよい。エンハンサーの効果は非常にはっきりで、遺伝子転写の頻度を10-200倍、ないし千倍に増やすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来技術における発現ベクタープロモーターの転写強度の不足という技術的問題を解決するために、発明者ら、多くの試験と創造的な労働を通じて、一連の新しいキメラプロモーターを設計・構築し、その中からT細胞で効率的に発現できる複数のプロモーターを得た。当該プロモーターは、T細胞における外来遺伝子(全長抗体遺伝子など)の高効率発現を促進するのに特に適する。
【0011】
したがって、本発明の一つによると、エンハンサーsDTSと、エンハンサーに作動可能に連結されたプロモーターからなる増強されたプロモーター配列(すなわちキメラプロモーター)を提供し、ただし、上記エンハンサーsDTSの配列は、SEQ ID NO:1に示された。
一つまたは複数の実施の形態において、上記プロモーターは、EF1αプロモーター、PGKプロモーター、β-actinプロモーター、hCMVプロモーター、EEF2プロモーター、CAGプロモーター、U6プロモーターとSV40プロモーターから選べられる。
一つまたは複数の実施の形態において、上記プロモーターは、EF1αプロモーター、hCMVプロモーターとβ-actinプロモーターであって、より好ましくは、EF1αプロモーターである。
一つまたは複数の実施の形態において、上記エンハンサーが、上記プロモーターの5’末端又は3’末端に位置し、好ましくは上記プロモーターの5’末端に位置する。
一つまたは複数の実施の形態において、上記増強されたプロモーター配列の核酸配列は、SEQ ID NO:1に示された核酸配列とSEQ ID NO:3に示された核酸配列からなる。
【0012】
本発明が、さらに核酸コンストラクトを提供し、上記ヌクレオチドコンストラクトが、本文に記載された増強されたプロモーター配列を含有する。
一つまたは複数の実施の形態において、上記核酸コンストラクトは、5’末端から3’末端まで、作動可能に連結される上記増強されたプロモーター配列、目的のタンパク質的コード配列及び転写ターミネーターを順に含有する発現カセットである。
【0013】
本発明が、さらにベクターを提供し、上記ベクターが、本文に記載された増強されたプロモーター配列を含有する。
一つまたは複数の実施の形態において、上記ベクターは、真核発現ベクターであり、一過性発現ベクター、ウイルス発現ベクター和転置可能なベクターから選べられるものである。
一つまたは複数の実施の形態において、上記ベクターは、目的の遺伝子の発現カセットを、ホスト細胞のゲノムに組み込むためのベクターであり、好ましくは、転置可能なベクターである。
一つまたは複数の実施の形態において、上記転置可能なベクターが、piggybac、sleeping beauty、frog prince、Tn5又はTyから選べられる転置因子を含む。
一つまたは複数の実施の形態において、上記転置可能なベクターの5’LTRと3’LTRの間に、順に、作動可能に連結される上記増強されたプロモーター配列、一つ又は複数の制限エンドヌクレアーゼの制限サイト又は任意的な目的のコード配列、及び転写終了配列を含有する。
一つまたは複数の実施の形態において、3’LTRの3’末端には、さらに作動可能にトランスポゼースのコード配列及びそのプロモーター配列を連結している。
一つまたは複数の実施の形態において、上記ベクターは、さらに一つ又は複数の選択可能なマーカーを含有する。
一つまたは複数の実施の形態において、上記目的のコード配列は、抗体のコード配列である。
一つまたは複数の実施の形態において、上記抗体は、PD-1抗体、PD-L1抗体、CTLA4抗体、CD40抗体、CD40L抗体、CD47抗体、CD137抗体、CD28抗体、CD27抗体、OX40抗体、DNAM-1抗体、GITR抗体、ICSOS抗体、2B4抗体、CD160抗体、TIM3抗体、LAG3抗体、BTLA抗体とTIGIT抗体から選べられる;好ましくは、PD-1一本鎖抗体である。
一つまたは複数の実施の形態において、上記制限サイトは、AscI制限サイト、XbaI制限サイト、PvuI制限サイト、EcoRI制限サイトとSalI制限サイトから選べられる。
一つまたは複数の実施の形態において、上記ベクターの核酸配列は、SEQ ID NO:12に示された。
【0014】
本発明が、さらに本文に記載された増強されたプロモーター配列が、外来遺伝子(例えば全長抗体遺伝子)のT細胞での発現を促進することにおける応用も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】:各プロモーターヌクレオチド配列を持つ発現ベクターの構造の模式図。
図2】:T細胞株で発現したpNB328-E-EGFP、pNB338A-E-EGFP、pNB338B-E-EGFPプラスミドの蛍光強度(図2A)と陽性率(図2B)。
図3】:T細胞株で発現したpNB328-E-Nluc、pNB338B-E-Nluc、pNB328-hC-Nluc、pNB338B-hC-Nluc、pNB328-β-Nluc、pNB338B-β-NlucプラスミドのNluc蛍光値。
図4】:pNB328-E-m279V、pNB338B-E-m279V、pNB328-hC-m279V、pNB338B-hC-m279V、pNB328-β-m279V、pNB338B-β-m279Vプラスミドが、PD-1抗体発現を発現することの比較。
図5】:EF1a及びsDTS+EF1aプロモーターは、CHO細胞におけるEGFPタンパク質の発現を仲介する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に含まれる一部の用語を説明する。本明細書で特に定義がない限り、本明細書で使用される各用語は、当技術分野で公知されている意味を有することを理解すべく。
【0017】
本発明において、用語「発現カセット」とは、作動可能に連結されたプロモーターおよび遺伝子コード配列を含む、遺伝子を発現するために必要な完全なエレメントを指す。
用語「コード配列」とは、核酸配列にそのタンパク質産物を直接に確定するアミノ酸配列部分を指す。コード配列の境界は、通常にmRNAの5 ’オープンリーディングフレームのすぐ上流のリボソーム結合部位(原核細胞の場合)と、mRNAの3’オープンリーディングフレームのすぐ下流の転写終結配列によって決定される。コード配列は、DNA、cDNAと組換え核酸配列を含んでも良いが、それらに限定されない。
【0018】
用語「一本鎖抗体」(scFv)とは、抗体軽鎖可変領域(VL区)アミノ酸配列と重鎖可変領域(VH区)アミノ酸配列をヒンジで連結してなる、抗原と結合する能を有する抗体フラグメントを指す。ある実施の形態において、目的な一本鎖抗体(scFv)は、目的の抗体から由来する。目的の抗体は、ヒトマウスキメラ抗体およびヒト化抗体を含むヒト抗体であっても良い。抗体は、分泌型と膜アンカー型であっても良い。
【0019】
用語「作動可能に連結され」又は「作動可能に連結」とは、DNA調節配列(例えばエンハンサー、プロモーターなど)が、目的のタンパク質のコード配列が発現できるように当該コード配列と連結することを指す。
【0020】
本発明は、プロモーター活性を改良することにより、遺伝子の発現を促進する強度を向上させ、T細胞における外来遺伝子、特に全長抗体遺伝子の高効率発現を実現する。
【0021】
本発明の増強されたプロモーター配列は、エンハンサーsDTSと、エンハンサーに作動可能に連結されたプロモーターからなり、ただし、上記エンハンサーsDTSの配列は、SEQ ID NO:1に示された。
【0022】
本発明の増強されたプロモーター配列におけるプロモーターは、本分野に通常にT細胞で外来遺伝子を発現するための各類プロモーター配列であっても良く、EF1αプロモーター、PGKプロモーター、β-actinプロモーター、hCMVプロモーター、EEF2プロモーター、CAGプロモーター、U6プロモーターとSV40プロモーターを含むが、それらに限定されない;好ましくは、プロモーターは、EF1αプロモーター、hCMVプロモーターとβ-actinプロモーターであり、より好ましくは、EF1αプロモーターである。例示的なEF1αプロモーターのヌクレオチド配列は、SEQ ID
NO:3に示されても良い;例示的なhCMVプロモーターのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:4に示されても良い;例示的なβ-actinプロモーターのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:5に示されても良い。
【0023】
ある実施の形態において、本発明の増強されたプロモーター配列は、SEQ ID NO:1とSEQ ID NO:3、4又は5からなり、好ましくは、SEQ ID NO:1とSEQ ID NO:3からなる。
【0024】
本発明が、本文に記載された増強されたプロモーター配列を含む核酸コンストラクトを
含む。
【0025】
ある実施の形態において、当該核酸コンストラクトは、本文に記載された増強されたプロモーター配列と目的のタンパク質のコード配列を含有する発現カセットである。発現カセットには、通常に、ホスト細胞に識別され、転写される配列を終了する転写終了配列(即、転写ターミネーター)を含有する。転写終了配列が、本文に記載されたコード配列と、3’末端に作動可能に連結する。選択されるホスト細胞において機能を有する任意なターミネーターは、本発明に用いられても良く、SV40 polyA転写終了配列を含むが、それに限定されない。
【0026】
ある実施の形態において、上記核酸コンストラクトは、ベクターである。ベクターは、通常にプラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルスとコスミドを含むが、それらに限定されない。ベクターは、一過性発現ベクター、ウイルス発現ベクターと転置可能なベクターを含む発現ベクターであっても良い。好ましくは、ベクターは、真核発現ベクターである。ベクターとして使えるウイルスは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスとレンチウイルスを含むが、それらに限定されない。
【0027】
通常に、好適なベクターが、ホスト細胞で機能する少なくとも一つの複製開始点、便利な制限エンドヌクレアーゼ制限サイトと一つ又は複数の選択可能なマーカーを含む。
選択可能な制限サイトが、AscI制限サイト、XbaI制限サイト、PvuI制限サイト、EcoRI制限サイトとSalI制限サイトを含むが、それらに限定されない。通常に、上記コード配列が、本発明的増強されたプロモーター配列と転写終了配列と、作動可能に連結されるように、ベクターには、一部の制限サイトが、本発明に記載された増強されたプロモーター配列と転写終了配列の間に位置し、当該位置でベクターを切断し、目的のタンパク質のコード配列を插入する。
【0028】
ウイルスベクターに感染された細胞集団から発現細胞を同定・選択するために、選択可能なマーカーが、選択可能なマーカー遺伝子又はレポーター遺伝子のうちのいずれか一つ又は両者を含む。有用な選択可能なマーカー遺伝子が、例えばneoなどの抗生物質耐性遺伝子を含む。適合的レポーター遺伝子が、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼまたは緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子を含んでも良い。
【0029】
ある実施の形態において、ベクターは、目的の遺伝子の発現カセットを、ホスト細胞のゲノムに組み込むためのベクターであり、好ましくは、転置可能なベクターである。ある実施の形態において、当該転置可能なベクターは、piggybac、sleeping
beauty、frog prince、Tn5又はTyから選べられる転置因子を含む真核発現ベクターである。こんな転置可能なベクターが、対応するトランスポゾンの5’逆方向末端反復配列(5’LTR)と対応するトランスポゾンの3’逆方向末端反復配列(3’LTR)を含有する。トランスポゼースは、piggybac、sleeping beauty、frog prince、Tn5又はTy転置システムから由来するトランスポゼースであっても良い。異なる転置システムから由来するトランスポゼースを使用する際に、上記ベクターにおける5’LTRと3’LTRの配列もそれに応じて、当該転置システムと適応する配列へ変化することは、当業者に容易的に確定されることである。
【0030】
ある実施の形態において、トランスポゼースは、piggybac転置システムから由来するトランスポゼースである。そして、これらの実施の形態において、トランスポゾン5’逆方向末端反復配列と3’逆方向末端反復配列は、それぞれにpiggybacトラ
ンスポゾンの5’逆方向末端反復配列と3’逆方向末端反復配列である。ある実施の形態において、トランスポゾン5’逆方向末端反復配列は、CN 201510638974.7(その内容は引用の方式で本明細書に取り入られる)SEQ ID NO:1に示された。ある実施の形態において、トランスポゾン3’逆方向末端反復配列は、CN 201510638974.7 SEQ ID NO:4に示された。ある実施の形態において、piggybacトランスポゼースは、c-mycを含む核局在化シグナルコード配列のトランスポゼースである。ある実施の形態において、piggybacトランスポゼースのコード配列は、CN 201510638974.7 SEQ ID NO:5に示された。
トランスポゼースコード配列のプロモーターは、本分野に既知の、トランスポゼースコード配列の発現を制御するための各種プロモーターであっても良い。ある実施の形態において、CMVプロモーターで、トランスポゼースコード配列の発現を制御する。CMVプロモーターの配列は、CN 201510638974.7 SEQ ID NO:6に示された。
【0031】
ある実施の形態において、本発明のベクターは、CN 201510638974.7に開示されたpNB328ベクターを骨格とするが、本文に記載された増強されたプロモーター配列で、当該ベクターに元に含まれるEF1αプロモーターを取り替える。
【0032】
ある実施の形態において、本発明のベクターは空のベクターであり、即、目的のタンパク質のコード配列を含有しないものである。通常に、これらの空のベクターが、制限で目的のタンパク質のコード配列を、上記増強されたプロモーター配列と転写終了配列の間に連結するために、本文に記載された増強されたプロモーター配列、一つ又は複数の制限エンドヌクレアーゼ制限サイトと転写終了配列を順に含有する。ある実施の形態において、本発明のベクターは、本文に記載された増強されたプロモーター配列と転写終了配列の間に、目的のタンパク質のコード配列を挿入したベクターであって、好ましくは転置可能なベクターである。これらのベクターにおいて、5’LTRと3’LTRの間に、本文に記載された増強されたプロモーター配列、目的のタンパク質のコード配列と転写終了配列を順に含有し、好ましくは、3’LTRの3’末端にトランスポゼースのコード配列及びそのプロモーター配列も含有する。
【0033】
本発明が、本文に記載された各ヌクレオチド配列の相補配列も含む。本文の多ヌクレオチド配列は、DNA形式又はRNA形式であっても良い。
【0034】
本文に記載されたヌクレオチド配列は、通常にPCR増幅法で得られる。具体的に、本文に開示されたヌクレオチド配列に従ってプライマーを設計し、市販のcDNAライブラリー又は本分野の当業者が既知の一般的な方法で調整するcDNAライブラリーをテンプレートとし、増幅で関連する配列を得られる。配列が長い場合、2回又は以上のPCR増幅を実行し、増幅されたフラグメントを正しい順序でつなぎ合わせることがよくある。ある実施の形態において、適切な場合、人工合成の方法で、本発明の特定のヌクレオチド配列を合成することができる。
【0035】
本発明において、目的のタンパク質は、本分野に公知される各種のタンパク質、酵素、抗体及び必要な機能を持つ他のタンパク質を含むが、それらに限定されない。好ましくは、目的のタンパク質は、単鎖抗体、またはキメラ抗原受容体(CAR)などを含む、抗腫瘍効果を有する様々な抗体などの、T細胞で発現する必要がある当技術分野で既知のタンパク質である。
【0036】
本発明の増強されたプロモーター配列は、T細胞における様々な抗体、好ましくは全長抗体の遺伝子発現を促進するのに特に適している。例示的な抗体が、PD-1抗体、PD
-L1抗体、CTLA4抗体、CD40抗体、CD40L抗体、CD47抗体、CD137抗体、CD28抗体、CD27抗体、OX40抗体、DNAM-1抗体、GITR抗体、ICSOS抗体、2B4抗体、CD160抗体、TIM3抗体、LAG3抗体、BTLA抗体とTIGIT抗体等を含むが、それらに限定されない。
【0037】
ある実施の形態において、T細胞でPD-1抗体を発現するために、又はPD-1抗体の発現カセットをT細胞のゲノムに組み込むために、本発明の発現ベクターが、本文に記載された増強されたプロモーター配列とPD-1抗体のコード配列を含有する。
【0038】
従来のトランスフェクション法で、本発明のベクターを目的の細胞に導入することができる;これらの導入方法が、ウイルス形質導入、マイクロインジェクション、パーティクルボンバードメント、遺伝子銃法による形質転換、電気による形質転換などを含むが、これらに限定されない。ある実施の形態において、電気による形質転換で、本文に記載されたベクターを、目的の細胞へトランスフェクトする。
【0039】
目的の細胞は、当分野で公知される様々なT細胞であっても良く、末梢血Tリンパ球、細胞障害性キラーT細胞(CTL)、ヘルパーT細胞、サプレッサー/制御性T細胞、γδT細胞、サイトカイン誘発性キラー細胞(CIK)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)およびその他の混合細胞集団T細胞を含むが、それらに限定されない。ある実施の形態において、T細胞は、B細胞悪性腫瘍患者のPBMCから由来しても良い。ある実施の形態において、T細胞は初代培養T細胞である。
【0040】
そして、ある実施の形態において、本発明が、本文に記載された増強されたプロモーター配列が、外来遺伝子(例えば全長抗体遺伝子)のT細胞での発現を促進することにおける応用を提供する。
【0041】
ある実施の形態において、本発明が、さらに本文に記載された増強されたプロモーター配列又は核酸コンストラクト又はベクターを含有するT細胞も提供する。好ましくは、上記T細胞のゲノムに、プロモーターとして、本文に記載された増強されたプロモーター配列を、目的の外来遺伝子が発現する発現カセットを促進するように組み込んでいる。より好ましくは、本発明のT細胞的ゲノムに、本文に記載された増強されたプロモーター配列と当該プロモーター配列と作動可能に連結されたPD-1抗体のコード配列を含有する発現カセットを組み込んでいる。ある実施の形態において、本文に記載されたエンハンサー配列を含まないが同じプロモーター配列を含むコントロールT細胞と比較して、同じ条件下で測定された本発明のT細胞における目的のタンパク質の発現量は、コントロールT細胞における目的のタンパク質の発現量の少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、および少なくとも1.5倍である。
【0042】
ある実施の形態において、本文に記載されたPD-1抗体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:11に示され、その例示的なコード配列は、SEQ ID NO:10に示された。
【0043】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用いて詳細に説明する。当業者は、以下の実施形態が本発明を例示するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解する。特定の技術または条件が実施例に示されていない場合、それは、当該分野の文献に記載されている技術または条件(例えば、J.Sambrookら著、Huang Peitangら翻訳、第3版、科学出版社の「分子クローニング実験ガイド」を参照する)に従って、または製品仕様に従って実行されるものとする。メーカーを標識していない試薬または機器は、いずれも市販される一般的な製品である。
【0044】
実施例1:各プロモーターのヌクレオチド配列を持つ発現ベクターの構築
1.増強された緑色蛍光タンパク質EGFP発現ベクターの構築
上海捷瑞生物会社に委託し、配列sDTS-LTR(SEQ ID NO:2)を合成し、AscI制限サイトを配列の上流に導入し、XbaI制限サイトをその下流に挿入し、それを、AscI + XbaIで二重制限したpNB328ベクター(pNB328ベクターの構造と配列については、CN 201510638974.7を参照し、その全内容は、引用の方式で本明細書に取り入られる;pNB328ベクターが、EF1αプロモーターを含む)にロードし、pNB338A-Eと呼ばれる組換えプラスミドを形成する。
【0045】
上海捷瑞生物会社に委託し、配列sDTS(SEQ ID NO:1)を合成し、XbaI制限サイトを配列の上流に導入し、PvuI制限サイトをその下流に挿入し、それを、XbaI+PvuIで二重制限したpNB328ベクターにロードし、pNB338B-Eと呼ばれるEF1αを含む組換えプラスミドを形成する(その核酸配列は、SEQ ID NO:12に示された)。
【0046】
上海捷瑞生物会社に委託し、緑色蛍光タンパク質EGFP遺伝子配列(その核酸配列は、SEQ ID NO:8に示され、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:9に示された)を合成し、EcoRI制限サイトを配列の上流に導入し、SalI制限サイトをその下流に挿入し、それを、EcoRI+SalIで二重制限したpNB328ベクター、pNB338A-EベクターとpNB338B-Eベクターにロードし、それぞれにpNB328-E-EGFP、pNB338A-E-EGFPとpNB338B-E-EGFPと呼ばれる組換えプラスミドを形成する。
【0047】
2.各種プロモーターを持つルシフェラーゼレポーター遺伝子発現ベクターの構築
上海捷瑞生物会社に委託し、pNL1.3.CMV[secNluc-CMV]プラスミドにおけるナノルシフェラーゼ(Nano luciferase、単にNlucいう)遺伝子のコード配列(その核酸配列は、SEQ ID NO:6に示され、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:7に示された)、EcoRI制限サイトを配列の上流に導入し、SalI制限サイトをその下流に挿入し、それを、EcoRI+SalIで二重制限したpNB328-EベクターとpNB338B-Eベクターにロードし、それぞれにpNB328-E-NlucとpNB338B-E-NLucと呼ばれる組換えプラスミドを形成する。
【0048】
上海捷瑞生物会社に委託し、SEQ ID NO:4とSEQ ID NO:5に示されたhCMVプロモーターとβ-Actinプロモーターヌクレオチド配列を合成し、XbaI制限サイトを配列の上流に導入し、EcoRI制限サイトをその下流に挿入し、それを、XbaI+EcoRIで二重制限したpNB328-E-NLucベクター(元のpNB328-E-NLucベクターのEF1αプロモーターを置き換える)にロードし、それぞれにpNB328-hC-NlucとpNB328-β-NLucと呼ばれる組換えプラスミドを構築する;同時に、それを、XbaI+EcoRIで二重制限したpNB338B-E-NLucベクターにロードし、それぞれにpNB338B-hC-NlucとpNB338B-β-NLucと呼ばれる組換えプラスミドを構築する。
【0049】
3.各種プロモーターを持つPD-1抗体発現ベクターの構築
上海捷瑞生物会社に委託し、PD-1抗体ヌクレオチド配列(核酸配列は、SEQ ID NO:10に示され、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:11に示された)を合成し、EcoRI制限サイトを配列の上流に導入し、SalI制限サイトをその下流に挿入し、それを、EcoRI+SalIで二重制限したpNB328-E-NLuc 、p
NB328-hC-NLuc、pNB328-β-NLuc、pNB338B-E-NLuc、pNB338B-hC-NlucとpNB338B-β-NLucベクターにロードし、それぞれにpNB328-E-m279V、pNB328-hC-m279V、pNB328-β-m279V、pNB338B-E-m279V、pNB338B-hC-m279VとpNB338B-m279Vと呼ばれる組換えプラスミドを形成する。
各発現ベクターの構造の模式図を図1に示す。
【0050】
実施例2:T細胞の構築
Filcoll分離法で、ドナー血液から末梢血単核細胞(PBMC)を分離した。PBMCを2-4時間付着培養し、その中に、付着していない懸濁した細胞は、最初のT細胞である;懸濁した細胞を15ml遠心チューブに集め、1200rpmで3分間遠心し、上清を捨て、生理食塩水を加え、1200rpmで3分間遠心し、生理食塩水を捨て、このステップを繰り返した。
【0051】
実施例2:T細胞の構
1.5mlの遠心チューブ15本を取り、各チューブに5×10個の細胞を加え、1-15の番号を付け、1200rpmで3分間遠心し、上清を捨て、エレクトロポレーションキット(Lonza製)を用意し、各チューブに100ulの比率でエレクトロポレーション試薬を加え、6ugの上記プラスミドをチューブ1-15に加え、細胞を別々に再懸濁し混合した;混合溶液をエレクトロポレーションカップに移し、それをエレクトロポレーション機器に入れ、必要な手順を選択し、電気ショックを実行した;キットにおけるマイクロピペットを使用し、エレクトロポレーションされた細胞懸濁液を、培養液(2%FBSを含むAIM-V培養液)を含む6ウェルプレートに移し、均一まで混合して、37°C、5%CO2でインキュベートし、6時間後、刺激因子IL-2、CD3抗体およびCD28抗体を加え、37℃、5%CO2で3-4日間培養し、T細胞の成長状況を観察し、EGFP、NlucおよびPD-1抗体を発現するT細胞を取得した。
【0052】
実施例3:EGFPを発現するpNB328-E-EGFP、pNB338A-E-EGFP、pNB338B-E-EGFPプラスミドの比較・同定
実施例2で得られたプラスミドpNB328-E-EGFP、pNB338A-E-EGFP、およびpNB338B-E-EGFPで修飾された活性化T細胞を、エレクトロポレーション後8日目および18日目にそれぞれ蛍光顕微鏡で観察し、5×10個の細胞ペレットを収集し、細胞ペレットをPBSで2回洗浄し、400ul PBSを加えて細胞をフローチューブに移し、機械でテストした。
【0053】
結果を図2Aち2Bおよび表1に示されたように、pNB338B-E-EGFPプラスミドの発現は、陽性率と蛍光強度ともpNB338A-E-EGFPプラスミドの発現よりも優れ、pNB338A-E-EGFPプラスミドの発現は、陽性率と蛍光強度ともpNB328-E-EGFPプラスミドの発現よりも優れた。これは、sDTS配列を含むプラスミドの発現がsDTS配列を含まないプラスミドの発現よりも強く、sDTS配列が、EF1αプロモーターの前と5’LTRの後に位置する方式で組み合わるプラスミド(pNB338B-E-EGFP)の発現がより強いことを示している。
【0054】
【表1】
【0055】
実施例4:Nluを発現するpNB328-E-Nluc、pNB338B-E-Nluc、pNB328-hC-Nluc、pNB338B-hC-Nluc、pNB328-β-Nluc、pNB338B-β-Nlucプラスミドの比較
実施例2に構築されたpNB328-E-Nluc、pNB338B-E-Nluc、pNB328-hC-Nluc、pNB338B-hC-Nluc、pNB328-β-Nluc、pNB338B-β-Nlucプラスミドで修飾された活性化T細胞を、7日目と17日目に、2×10細胞の数で細胞を回収し、2×10細胞/ウェルで3mlのAIM-V培地を入れた6ウェルプレートに播種し、37℃、5%COインキュベーターに入れ、24時間培養した後、細胞上清を回収し、後で使用するために-20℃で保存した。多機能マイクロプレートリーダーで、細胞上清へ分泌した新しいフルオレセインNlucの蛍光値を検出した。
【0056】
結果を下の図3と表2-4に示されたように、異なるプロモーター(EF1α/hCMV/β-Actin)を持ち、sDTS配列を含むプラスミド(pNB338B-E-Nluc、pNB338B-hC-Nluc、pNB338B-β-Nluc)が、sDTS配列を持たないが同じプロモーターを持つプラスミド(pNB328-E-Nluc、pNB328-hC-Nluc、pNB328-β-Nluc)よりも高い発現されたNluc蛍光値を持っている。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
結果によって、異なるプロモーターの仲介で、sDTS配列を含む発現プラスミドのいずれかも、sDTS配列を含まないプラスミドより優れ、かつ発現しようとする遺伝子と関係ないことを知られる。
【0061】
実施例5:pNB328-E-m279V、pNB338B-E-m279V、pNB328-hC-m279V、pNB338B-hC-m279V、pNB328-β-m279V、pNB338B-β-m279Vプラスミドが、PD-1抗体発現を発現することの比較
実施例2に構築されたpNB328-E-m279V、pNB338B-E-m279V、pNB328-hC-m279V、pNB338B-hC-m279V、pNB328-β-m279V、pNB338B-β-m279Vプラスミドで修飾された活性化T細胞を、8日目と18日目に、2×10細胞の数で細胞を回収し、2×10細胞/ウェルで3mlのAIM-V培地を入れた6ウェルプレートに播種し、37℃、5%COインキュベーターに入れ、24時間培養した後、細胞上清を回収し、後で使用するために-20℃で保存した。二重抗体サンドイッチELISAより、ヒト化の組換えタンパク質でELISAプレートをコーティングし、HRP標識マウス抗ヒトIgG4 mAbの検出を行い、標準として市販の抗PD-1抗体を使用し、50倍希釈後にサンプルを定量的に検出した。
【0062】
結果を下の図4と表5-7に示されたように、異なるプロモーター(EF1α/hCMV/β-Actin)を持ち、sDTS配列を含むプラスミド(pNB338B-E-m279V、pNB338B-hC-m279V、pNB338B-β-m279V)が、sDTS配列を持たないが同じプロモーターを持つプラスミド(pNB338B-E-m279V、pNB338B-hC-m279V、pNB338B-β-m279V)よりも高い発現されたPD-1抗体の量を持っている。
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】
【表7】
【0066】
これらの結果によって、異なるプロモーターの仲介で、sDTS配列を含む発現プラスミドのいずれかもsDTS配列を含まないものより優れる;同時に、sDTS配列を含むプラスミドは、レポーター遺伝子の発現だけでなく、機能性タンパク質の発現にも優れていることも示している。
【0067】
比較例1:EF1a及びsDTS+EF1aプロモーターは、CHO細胞におけるEGFPタンパク質の発現を仲介する
実施例1で構築されたpNB328-E-EGFPとpNB338B-E-EGFPを使用し、それぞれにCHO細胞をトランスフェクトした。具体的に、遠心チューブ2本を取り、各チューブに5×10個のCHO細胞を加え、1200rpmで3分間遠心し、上清を捨て、エレクトロポレーションキット(Lonza製)を用意し、各チューブに比率で合計で100ulのエレクトロポレーション試薬を加え、各チューブに6ugのpNB328-E-EGFPと6ugのpNB338B-E-EGFPを加え、細胞を別々に再懸濁し混合した;混合溶液をエレクトロポレーションカップに移し、それをエレクトロポレーション機器に入れ、必要な手順を選択し、電気ショックを実行した。エレクトロポレーション後、CHO細胞を10%FBS 1640 / DMEM(1:1混合)培地
で37℃、5%COインキュベーターで培養した。エレクトロポレーション後の8日目に、5×10の細胞ペレットを収集し、細胞ペレットをPBSで2回洗浄し、400ul PBSを加えて細胞をフローチューブに移し、機械でテストした。結果は、図5に示された。
【0068】
8日目に、pNB338B-E-EGFPを導入したCHO細胞の陽性率は、pNB328-E-EGFPを導入したCHO細胞の陽性率の約1.9倍である。実施例3には、8日目に、pNB338B-E-EGFPを導入したT細胞の陽性率は、pNB328-E-EGFPを導入したT細胞の陽性率の約4.3倍である。この結果は、本発明の増強されたプロモーターが、T細胞におけるプロモーター転写の強度を特異的に増強することができることを示している。
【0069】
比較例2:pNB338h-E-m279V、pNB338h-hC-m279V、pNB338h-β-m279V、pNB338e-E-m279V、pNB338e-hC-m279V、pNB338e-β-m279Vプラスミドが、PD-1抗体発現を発現することの比較
実施例1の方法でpNB338h-β-m279V、pNB338h-hC-m279V、pNB338h-β-m279V、pNB338e-β-m279V、pNB338e-hC-m279VとpNB338e-β-m279V組換えプラスミドを構築した;pNB338B-E-m279V、pNB338B-hC-m279VとpNB338B-β-m279Vとが異なり、pNB338h-β-m279V、pNB338h-hC-m279VとpNB338h-β-m279Vには、sDTS配列の代わりにhCMVエンハンサー配列を使用し、pNB338e-β-m279V、pNB338e-hC-m279VとpNB338e-β-m279Vには、sDTS配列の代わりにCD3eエンハンサーを使用した。
【0070】
pNB338h-β-m279V、pNB338h-hC-m279V、pNB338h-β-m279V、pNB338e-β-m279V、pNB338e-hC-m279V、pNB338e-β-m279Vプラスミドで修飾された活性化T細胞を、8日目と18日目に、2×10細胞の数で細胞を回収し、2×10細胞/ウェルで3mlのAIM-V培地を入れた6ウェルプレートに播種し、37℃、5%COインキュベーターに入れ、24時間培養した後、細胞上清を回収し、後で使用するために-20℃で保存した。二重抗体サンドイッチELISAより、ヒト化の組換えタンパク質でELISAプレートをコーティングし、HRP標識マウス抗ヒトIgG4 mAbの検出を行い、標準として市販の抗PD-1抗体を使用し、50倍希釈後にサンプルを定量的に検出した。
【0071】
結果は、異なるプロモーターを持ち、sDTS配列を含むプラスミドが発現したPD-1抗体の量は、いずれか対応するプロモーターを含み、hCMVエンハンサー配列またはCD3eエンハンサー配列を含むプラスミドよりも高いことを示した。
【0072】
これらの結果は、異なるプロモーターの仲介で、sDTS配列を含む発現プラスミドが、他のエンハンサー配列プラスミドよりも優れていることを示した;同時に、sDTS配列を含むプラスミドが特定の遺伝子を発現する能は、遺伝子発現を仲介する他のエンハンサー配列よりも強いことも示した。
図1
図2
図3
図4
図5