(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】電気機械のための固定子組立体
(51)【国際特許分類】
H02K 5/24 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
H02K5/24 A
(21)【出願番号】P 2020557167
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2019059247
(87)【国際公開番号】W WO2019201736
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-14
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デュマ, エリク
(72)【発明者】
【氏名】パリ, フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】カロス, トマ
(72)【発明者】
【氏名】モット, エマニュエル
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-245352(JP,A)
【文献】実公昭51-012642(JP,Y2)
【文献】特開2008-271680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のハウジング部分(4)と、第2のハウジング部分(38)と、少なくとも前記第1のハウジング部分(4)に挿入される固定子ボディ(72)と、前記固定子ボディ(72)を前記第1のハウジング部分(4)に回転可能に連結するための連結手段(80、28)と、前記固定子ボディ(72)を前記第1のハウジング部分(4)に固定するための第1の固定手段(104)と、前記ハウジング部分(4、38)を互いに固定するための第2の固定手段(114)とを備える、電気機械のための固定子組立体(2、120)であって、前記固定子ボディ(72)と前記第1の固定手段との間および2つの前記ハウジング部分(4、38)間に軸方向に介在されるリングシール(86)を備えることを特徴とする、固定子組立体(2、120)。
【請求項2】
前記リングシール(86)が、前記固定子ボディ(72)と前記第1の固定手段との間に軸方向に介在される内側径方向部分(88)と、前記ハウジング部分(4、38)間に軸方向に介在される外側径方向部分(90)とを備える、請求項1に記載の固定子組立体(2、120)。
【請求項3】
前記内側径方向部分(88)が、軸方向(z→)に対して直角な対称面を認め、前記外側径方向部分(90)が、前記軸方向(z→)に対して直角な対称面を認め、前記内側径方向部分(88)の前記対称面と前記外側径方向部分(90)の前記対称面との間の軸方向オフセット(Δ)が、3mm未満であ
り、
前記リングシールの少なくとも一部は、高い弾性限界を有する薄鋼板で構成される、請求項2に記載の固定子組立体(2、120)。
【請求項4】
前記内側径方向部分(88)および/または前記外側径方向部分(90)の軸方向厚さが、0.25mmから0.8mmの間である、請求項2または3に記載の固定子組立体(2、120)。
【請求項5】
前記第1のハウジング部分(4)が、円筒状空洞(66)を有し、前記固定子ボディ(72)が、前記円筒状空洞(66)に挿入され、前記連結手段が、前記固定子ボディ(72)から径方向外方に突出する軸方向直線状リブ(80)と、前記第1のハウジング部分(4)に形成されかつ前記円筒状空洞(66)から径方向外方に延在する軸方向直線状スロット(28)とを有し、前記リブ(80)が、前記スロット(28)内に収められる、請求項1から4のいずれか一項に記載の固定子組立体(2、120)。
【請求項6】
前記リングシール(86)に形成された第1の軸方向貫通オリフィス(98)、前記リブ(80)に形成された第2の軸方向貫通オリフィス(100)、および、前記スロット(28)と軸方向に位置合わせされて前記第1のハウジング部分(4)に形成された第3の軸方向オリフィス(102)を含み、前記第3のオリフィス(102)が、ねじ山を有し、前記固定子組立体が、前記第1のオリフィス(98)および前記第2のオリフィス(100)を通過して前記第3のオリフィス(102)の前記ねじ山と協働するねじ山付きピン(104)を備える、請求項5に記載の固定子組立体(2、102)。
【請求項7】
前記ピン(104)に関連付けられたワッシャ(112)を備え、前記ピン(104)が、ヘッド(106)を有し、前記ワッシャ(112)が、前記固定子ボディ(72)と前記ヘッド(106)との間に軸方向に介在される、請求項6に記載の固定子組立体(2、120)。
【請求項8】
前記第2の固定手段が、前記第2のハウジング部分(38)に形成された第1の軸方向貫通ボア(96)、前記第1のハウジング部分(4)に形成された第2の軸方向ボア(94)、および、ねじ(114)を備え、前記第2のボア(94)が、ねじ山を有し、前記ねじ(114)が、前記第1のボア(96)を通過して前記第2のボア(94)の前記ねじ山と協働する、請求項5から7のいずれか一項に記載の固定子組立体(2、120)。
【請求項9】
前記リングシール(86)が、少なくとも部分的に薄鋼板で作られる、請求項1から8のいずれか一項に記載の固定子組立体(2、120)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の固定子組立体(2、120)を有する、モータ車両のための電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械に装備されるように設計された固定子組立体の分野に関し、より詳細には、電気駆動またはハイブリッド電気駆動のモータ車両の電気牽引機械に装備されるように設計された固定子組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気駆動またはハイブリッド電気駆動のモータ車両の動力ユニットに装備されるように典型的に設計された電気機械は、ハウジングに内蔵された固定子を含む。
【0003】
このようにして固定子をハウジングに内蔵することにより、固定子はハウジング内で片持ちにされ、それにより、非常に高エネルギーで低周波数の振動モードの出現がもたらされる。モータ車両の電気牽引機械の場合、典型的には、おおよそ650Hzの固定子のねじれモードが、電気機械の軸の周りで出現する。電気機械によって送達されるトルクは、これらのモードを著しく励起させて著しい振動を生じさせる、一定数の高調波を含む。これは、固定子組立体の音響および振動の信頼性への悪影響を有し、つまり、組立体の機械強度は、これらの振動モードでの運転時に脅かされ、また、引き起こされた振動は、車両の乗員にとって不愉快な音響雑音を発生させる。したがって、ねじりたわみ性がより低い、ハウジングと固定子との間の組込み連結(liaison d’encastrement)が必要とされている。
【0004】
文献JPS649435は、ねじ山付きステムを使用して固定子ハウジング内に固定される片持ち固定子を開示している。心出しリングシールが、固定子の組付けを促進し、かつ、不完全な心出しおよびねじ山付きステムのねじ込みのばらつきにつきものの振動を制限するが、固定子自体のねじれモードによってもたらされる振動を制限することはできない。
【発明の概要】
【0005】
上述のことを考慮し、本発明は、前述の欠点を克服する固定子組立体を提案することを目的としている。
【0006】
より具体的には、本発明は、固定子組立体の音響および振動の信頼性を改善するために、固定子とハウジングとの間の組込み連結の剛性を増大させることを目的としている。
【0007】
この目的のために、第1のハウジング部分、第2のハウジング部分、少なくとも第1のハウジング部分に挿入される固定子ボディ、固定子ボディを第1のハウジング部分に回転可能に連結するための連結手段、固定子ボディを第1のハウジング部分に固定するための第1の固定手段、および、ハウジング部分を互いに固定するための第2の固定手段を備える、電気機械のための固定子組立体が提案される。
【0008】
その一般的特徴のうちの1つによれば、この組立体は、固定子ボディと第1の固定手段との間および前述の2つのハウジング部分間に軸方向に挿入されたリングシールを備える。
【0009】
そのようなリングシールを含むことにより、単一の部品を使用してハウジングの内側と外側との間にシールを作り出すこと、および、固定子とハウジングとの間の組込み連結の剛性を増大させることが可能になる。剛性が増大することにより、そのように配置されたリングシールは、平坦な状態で機能し、その平面において非常に高い剛性を提供する。これは、固定子組立体の音響および振動の信頼性を強化する。
【0010】
特定の実施形態によれば、リングシールは、固定子ボディと第1の固定手段との間に軸方向に介在される内側径方向部分、および、ハウジング部分間に軸方向に介在される外側径方向部分を備える。
【0011】
そのように配置されたリングシールは、ハウジングによって堅固に保持される。これは、リングシールが固定子とハウジングとの間の組込み連結の剛性をさらに増大させることを可能にする。
【0012】
有利には、内側径方向部分は、軸方向に対して直角な対称面を認め、外側径方向部分は、軸方向に対して直角な対称面を認め、内側径方向部分の対称面と外側径方向部分の対称面との間の軸方向オフセットは、3mm未満である。
【0013】
そのような軸方向オフセットの制限は、固定子上のリングシールの支持面がハウジング部分上のリングシールの支持面により近づけられることを可能にする。これは、組込み連結の剛性を増大させることへのリングシールの関与を最大限に高める。
【0014】
有利には、内側径方向部分および/または外側径方向部分の軸方向厚さは、0.25mmから0.8mmの間である。
【0015】
1つの実施形態では、第1のハウジング部分は、円筒状空洞を有し、固定子ボディは、円筒状空洞に挿入され、連結手段は、固定子ボディから径方向外方に突出する軸方向直線状リブと、第1のハウジング部分に形成されかつ円筒状空洞から径方向外方に延在する軸方向直線状スロットとを有し、リブは、スロット内に収められる。
【0016】
有利には、組立体は、リングシールに形成された第1の軸方向貫通オリフィス、リブに形成された第2の軸方向貫通オリフィス、および、スロットと軸方向に位置合わせされて第1のハウジング部分に形成された第3の軸方向オリフィスを含み、第3のオリフィスは、ねじ山を有し、組立体は、第1のオリフィスおよび第2のオリフィスを通過して第3のオリフィスのねじ山と協働するねじ山付きピンを備える。
【0017】
第1のオリフィスおよび第2のオリフィスを通過して第3のオリフィスのねじ山と協働するねじ山付きピンの使用は、リングシール、固定子、および第1のハウジング部分がしっかりと固定されることを可能にする。
【0018】
ワッシャがピンに関連付けられてもよく、ピンは、ヘッドを有し、ワッシャは、固定子ボディとヘッドとの間に軸方向に介在される。
【0019】
そのようなワッシャは、ピンを締め付けるときに、ねじれ強さおよび圧縮強さを増大させる。
【0020】
第2の固定手段は、第2のハウジング部分に形成された第1の軸方向貫通ボア、第1のハウジング部分に形成された第2の軸方向貫通ボア、およびねじを備えることが好ましく、第2のボアは、ねじ山を有し、ねじは、第1のボアを通過して第2のボアのねじ山と協働する。
【0021】
第1のボアを通過して第2のボアのねじ山と協働するねじの使用は、ハウジング部分がしっかりと固定されることを可能にする。
【0022】
1つの実施形態では、リングシールは、少なくとも部分的に薄鋼板で作られ、好ましくは高い弾性限界を有する薄鋼板で作られる。
【0023】
薄鋼板で作られたシールは、固定子とハウジングとの間の組込み連結の剛性を著しく強化し、高い弾性限界を有する薄鋼板では特にそうである。
【0024】
シールの限られた厚さは、固定子組立体を作り上げる部品の幾何公差を補償するのに役立ち、生成される応力を制限する。
【0025】
別の態様によれば、上記で定義されたような固定子組立体を含むモータ車両のための電気機械が提案される。
【0026】
本発明の他の目的、特性、および利点は、単に非限定的な例として挙げられた以下の説明において、また、添付の図面を参照しながら、提示される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施形態による固定子組立体の径方向図である。
【
図3】
図1および2における組立体を作り上げる要素の分解組立斜視図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態による組立体の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1から3は、電気機械(図示せず)に装備されるように設計された固定子組立体2の概略図である。この場合、固定子2が装備される電気機械は、電気駆動またはハイブリッド電気駆動のモータ車両の電気牽引機械である。
【0029】
組立体2は、とりわけ、
図2および3に示された第1のハウジング部分4を備える。部分4は、対称軸6に対して軸対称である。直接正規直交ベクトル基底8が、部分4に付属される。基底8は、ベクトルx
→、ベクトルy
→、およびベクトルz
→を含む。ベクトルz
→は、軸6に平行である。
【0030】
本願では、そうでないことが指定されていない限り、「軸方向の(axial)」、「軸方向に(axialement)」、「径方向の(radial)」、「径方向に(radialement)」、および「接線方向の(tangentiel)」という用語は、軸6に関連すると理解されるものとする。さらに、「円筒状の(cylindrique)」という用語は、その慣例的な定義に従って理解されるものとし、すなわち、円筒状表面は、所与の曲線に一致する所与の方向における直線を含む表面である。
【0031】
第1の部分4は、主ボディ10を備える。ボディ10は、軸6の周りに円形軸方向断面を有して円筒状である。ボディ10は、外側円筒状表面12と内側円筒状表面14との間に径方向に延在する。表面12および14は、軸6の周りの円形軸方向断面、ならびに直径d12およびd14をそれぞれ有して円筒状である。
【0032】
部分4は、後壁16を有する。壁16は、外側軸方向表面18と内側軸方向表面20との間に軸方向に延在する。表面18および20は、平坦であり、かつ、ベクトルz→に対して直角である。表面18、20は、表面12、14をそれぞれ延長する。壁16は、貫通開口部22を有する。開口部22は、軸6の周りに円形軸方向断面を有して円筒状であり、かつ、直径d22のものである。開口部22は、回転子シャフト(図示せず)を受け入れるように設計される。
【0033】
部分4は、表面12の周縁の周りに一定の間隔で離間された4つの径方向突出部24を有する。突出部24は、ベクトルz→の方向に関して円筒状である。突出部24は、互いに実質的に同一である。
【0034】
部分4は、表面12の周縁の周りに一定の間隔で離間された4つの径方向突出部26を有する。突出部26は、突出部24と軸方向に位置合わせされる。突出部24は、壁16と突出部26との間に軸方向に位置決めされる。突出部26は、ベクトルz→の方向に関して円筒状である。径方向における突出部26の厚さは、径方向における突出部24の厚さよりも厳密に大きい。突出部26は、互いに実質的に同一である。
【0035】
部分4は、4つの軸方向直線状スロット28を有する。スロット28は、ベクトルz→の方向に関して円筒状である。スロット28は、表面14の周縁の周りに一定の間隔で離間される。スロット28は、表面14から径方向外方に延在して、表面14に内部溝を形成する。スロット28は、突出部24および26それぞれと径方向および内方に位置合わせされる。
【0036】
部分4は、
図3に示されたカラー30を有する。カラー30は、表面12から径方向外方に延在する。カラー30は、ベクトルz
→の方向の周りに円筒状である。突出部26は、突出部24とカラー30との間に軸方向に位置決めされる。カラー30は、突出部26の反対側の外側軸方向表面31によって軸方向に区切られる。したがって、部分4は、表面18と31との間に軸方向に延在する。
【0037】
全体として、カラー30は、外側円筒状表面32により径方向に区切られる。表面32は、軸6の周りに円形軸方向断面を有して円筒状であり、かつ、直径d32のものである。局所的には、カラー30は、12個の径方向フランジ34を有する。フランジ34は、ベクトルz→の方向の周りに円筒状である。フランジ34は、表面32の周縁の周りに一定の間隔で離間される。やはり局所的には、カラー30は、4つの径方向フランジ36を有する。フランジ36は、フランジ34よりも厚い。フランジ36は、円筒状表面32の周縁の周りに一定の間隔で離間される。より具体的には、フランジ36は、突出部24および26と軸方向に位置合わせされる。したがって、各フランジ36は、隣り合う2つのフランジ34間で接線方向に延在する。
【0038】
図1から3を参照すると、組立体2は、第2のハウジング部分38を有する。部分38は、軸6に対して軸対称である。部分4および38は、組み立てられると、電気機械のためのハウジングを形成する。
【0039】
部分38は、軸6の周りに円筒状である主ボディ40を備える。ボディ40は、外側円筒状表面42と内側円筒状表面44との間に径方向に延在する。表面42、44はそれぞれ、軸6の周りに円形軸方向断面を有して円筒状であり、かつ、それぞれ直径d
42およびd
44のものである。直径d
42およびd
44はそれぞれ、直径d
12およびd
14に等しい:
【0040】
部分38は、内側軸方向表面48と外側軸方向表面50との間で軸方向に延在する後壁46を有する。表面42、44は、表面50、48にそれぞれ接続される。
【0041】
壁46は、円筒状貫通開口部52を有する。開口部52は、軸6の周りに円形軸方向断面を有して円筒状であり、かつ、直径d22に実質的に等しい直径d52のものである。開口部52は、開口部22と同様に、回転子シャフト(図示せず)を受け入れるように設計される。
【0042】
部分38は、カラー54を有する。カラー54は、ベクトルz→の方向の周りに円筒状である。全体的に、カラー54は、外側円筒状表面56によって径方向に区切られる。表面56は、軸6の周りに円形軸方向断面を有して円筒状であり、かつ、直径d56のものである。直径d56は、直径d32に実質的に等しい。局所的には、カラー54は、比較的薄い12個の径方向フランジ58、および、比較的厚い4個の径方向フランジ60を有する。フランジ58、60は、フランジ36、34とそれぞれ軸方向に位置合わせされる。したがって、カラー54は、カラー30と実質的に同一である。
【0043】
カラー54は、近位前表面62と遠位前表面64(図には示されていない)との間に軸方向に延在する。表面62および64は、平坦であり、かつ、ベクトルz→に対して直角である。したがって、部分38は、表面50と64との間に軸方向に延在する。さらに、表面64および31は、ハウジング内に収められる固定子のための密閉された座を形成するために、互いに直接または間接的に対接するように設計された継目歩道(seam sidewalk)を形成する。
【0044】
部分38は、
図2に示された4つの軸方向直線状スロット61を有する。スロット61は、スロット34と軸方向に位置合わせされる。スロット61の軸方向断面は、スロット34の軸方向断面と実質的に同一である。したがって、スロット61は、表面44から径方向内方に延在して、表面44に内部溝を形成する。
【0045】
図2に示されるように、部分4は、空洞66を含む。空洞66は、ベクトルz
→の方向に関して円筒状である。空洞66は、表面20と31との間で軸方向に延在する。空洞66は、表面14、およびスロット28を区切る表面により、径方向および外側に区切られる。
【0046】
部分38は、円筒状の空洞68を含む。空洞68は、表面64と48との間で軸方向に延在する。空洞68は、表面44、およびスロット61の内側表面により、径方向に区切られる。
【0047】
組立体2は、固定子70を含む。固定子70は、とりわけ、固定子ボディ72および固定子巻線74を備える。
【0048】
固定子ボディ72は、円筒状であり、かつ、軸6に対して軸対称である。全体的に、固定子ボディ72は、外側円筒状表面78と内側円筒状表面79との間で径方向に延在する。表面78および79は、軸6の周りに円形軸方向断面を有して円筒状である。表面78の円形軸方向断面の直径d78は、直径d14にわずかに満たない。
【0049】
局所的には、固定子ボディ72は、4つのリブ80を有する。リブ80は、ベクトルz→の方向において直線状である。リブ80は、表面78の周縁の周りに一定の間隔で離間される。リブ80は、表面78から径方向外方に延在する。リブ80は、固定子ボディ72の全軸方向長さに沿って延在する。リブ80の厚さは、スロット28の深さにわずかに満たない。
【0050】
固定子ボディ72は、前表面82と前表面84との間に軸方向に延在する。表面82および84は、平坦であり、かつ、ベクトルz→に対して直角である。
【0051】
組立体2は、リングシール86を有する。シール86は、円筒状であり、かつ、軸6に対して軸対称である。シール86は、空洞66および68をハウジングの外側から封止するように、また、要素4と38と72との間の組込み連結の剛性を強化するように意図されている。
【0052】
シール86は、高い弾性限界を有する薄鋼板で作られる。例えば、シール86は、以下の表の鋼で作られ得る:
【0053】
シール86は、実質的に平坦であり、かつ、ベクトルz
→に対して直角である。シール86は、軸6の周りに円形軸方向断面を有しかつ直径d
86iのものである内側円筒状表面(参照されず)により、径方向に区切られる。全体的に、シール86は、軸6の周りに円形軸方向断面を有しかつ直径d
86eのものである外側円筒状表面(参照されず)により、径方向に区切られる。直径d
86iは、直径d
78に厳密に満たない。直径d
86eは、直径d
14よりも厳密に大きく、また、好ましくは直径d
12にわずかに満たない。より具体的には、示された例では:
【0054】
局所的には、シール86は、4つのラグ87によって径方向に延長される。ラグ87は、シール86の外側表面の周縁の周りに一定の間隔で離間される。ラグ87の径方向厚さは、フランジ36の径方向厚さに実質的に等しい。
【0055】
シール86は、内側径方向部分88および外側径方向部分90に分割される。部分88と90との間の境界は、シール86の平坦な表面上への固定子ボディ72の軸方向突出部に対応する。言い換えれば、部分88は、直径d86iおよびd78の、軸6の周りの2つの回転柱間に位置決めされた部分を有する。さらに、部分88は、4つのリブ80とそれぞれ軸方向に位置合わせされた、シール86の4つの部分を有する。部分90は、シール86の残りの部分に相当する。
【0056】
部分88および90は、対称面Psymetrie_88およびPsymetrie_90(図示せず)をそれぞれ認める。面Psymetrie_88およびPsymetrie_90は、ベクトルz→に対して直角であり、かつ、部分88および90の軸方向厚さの中央に位置決めされる。第1の実施形態では、面Psymetrie_88およびPsymetrie_90は、同じである。シール86の厚さは、0.25mmから0.8mmの間である。
【0057】
シール86は、その軸方向表面のうちの一方にリブ92を有する。リブ92は、シール86の軸方向表面の周縁全体の周りに延在する。リブ92は、外側径方向部分90上に形成される。リブ92は、径方向突出部において、シール86の外側径方向境界から距離l92の位置に位置決めされ、距離l92は、一定である。言い換えれば、リブ92は、全体として、d14よりも大きい直径d92の円を軸6の周りに形成する。局所的には、リブ92は、この円に対して軸6から遠ざかり、間隔は、ゼロから、スロット28の径方向深さよりもわずかに大きい最大値まで変化する。したがって、リブ92は、シール86の向きに応じて表面64または表面31と完全接触し得る。
【0058】
図3を参照すると、部分4は、12個の軸方向ボア94を含む。ボア94は、止り穴である。ボア94は、円筒状であり、かつ、ベクトルz
→に平行な軸の周りに円形断面を有し、かつ、直径d
94のものである。ボア94は、ねじ山を付けられる。12個のボア94は、12個のフランジ34内にそれぞれ形成される。
【0059】
部分38は、12個の軸方向ボア96を有する。ボア96は、円筒状であり、かつ、ベクトルz→に平行な軸の周りに円形軸方向断面を有し、かつ、直径d96のものである。ボア96は、貫通ボアであり、かつ、ボア94と同様にねじ山を付けられる。12個のボア96は、12個のフランジ58内にそれぞれ形成される。直径d94およびd96は、実質的に等しい。
d94=d96±1%
【0060】
シール86は、4つの軸方向オリフィス98を有する。オリフィス98は、円筒状であり、かつ、ベクトルz→に平行な軸の周りに円形軸方向断面を有し、かつ、直径d98のものである。オリフィス98は、ラグ87と径方向および内方に位置合わせされる。
【0061】
固定子ボディ72は、4つの軸方向オリフィス100を有する。軸方向オリフィス100は、円筒状であり、かつ、ベクトルz→に平行な軸の周りに円形軸方向断面を有し、かつ、直径d100のものである。4つのオリフィス100は、4つのリブ80内にそれぞれ形成される。
【0062】
図2を参照すると、部分4は、4つの軸方向オリフィス102を含む。オリフィス102は、止り穴であり、かつ、ねじ山を付けられる。オリフィス102は、円筒状であり、かつ、ベクトルz
→に平行な軸の周りに円形軸方向断面を有し、かつ、直径d
102のものである。4つのオリフィス102は、4つの突出部24内にそれぞれ形成される。直径d
98、d
100、およびd
102は、実質的に等しい。
【0063】
図3を参照すると、組立体2は、4つのねじ山付きピン104を有する。各ピン104は、ヘッド106、ねじ山なし部分108、およびねじ山付き部分110を有する。部分108は、ヘッド106と部分110との間に軸方向に位置決めされる。部分108および110は、直径d
98にわずかに満たない直径d
104の円形軸方向断面を有して円筒状である。部分110のねじ山は、オリフィス102のねじ山と協働するように設計される。
【0064】
4つのワッシャ112が、4つのピン104にそれぞれ関連付けられる。ワッシャ112の内径d112iは、直径d104よりもわずかに大きい。ワッシャ112の外半径r112eは、オリフィス98の軸とリブ92との間の最小距離に厳密に満たない。
【0065】
ワッシャ112は、非磁性材料で作られることが好ましい。例えば、以下の表内の鋼のうちの1つが、ワッシャ112を作るために使用され得る:
【0066】
組立体2は、12個のねじ114を有する。各ねじ114は、ヘッド116、およびねじ山付きステム118を備える。ステム118の直径d118およびねじ山は、ボア96の直径d96およびねじ山ならびにボア94の直径d94およびねじ山と協働するように設計される。
【0067】
組立体2は、以下の通りに組み立てられ得る。
【0068】
最初に、固定子70が、空洞66に挿入される。より具体的には、固定子ボディ72が、空洞66内に完全に収められ、一方で、巻線74の一部分が、空洞66の外へ軸方向に突出する。リブ80は、スロット28に入る。
【0069】
次いで、シール86が、表面82に接触して配置される。このレイアウトでは、部分88は、表面82に対接し、部分90は、表面31に軸方向に対接する。
【0070】
次いで、ピン104が、オリフィス98、100、および102に挿入されて回される。それにより、部分110のねじ山がオリフィス102のねじ山と協働する。ピン104が締め付けられると、要素4、70、および86は、堅固な組立体を形成する。
【0071】
この実施形態では、シール86は、
図3に示された位置に配置され、つまり、リブ92が要素4および70に向かい合った状態で配置される。シール86は、本発明の範囲から逸脱することなしに、リブ92が要素4および70に隣接する位置に自然に位置し得る。この場合、リブ92は、表面31に軸方向に押し付けられる。
【0072】
次いで、部分38は、表面31および64が軸方向に互いに面するように、部分4と接触する。より具体的には、部分38は、フランジ60がフランジ26に面するように配置されるように、部分4に対して配向される。このレイアウトでは、表面64は、リブ92と直接接触する。
【0073】
次いで、ねじ114が締め付けられる。それにより、ステム118のねじ山がボア96および94のねじ山と協働する。ねじ114が締め付けられると、要素4、70、86、および38は、堅固な組立体を形成する。表面64は、リブ92を軸方向に圧迫して、ハウジングの内部空間と外側空間との間にシールを作り出す。シール86は、継目歩道31と64との間で圧迫され、かつ、固定子ボディ72に軸方向に対接する。ピン104を使用して固定子ボディ72を固定すること、および、高い弾性限界および薄い厚さを有する薄鋼板からシール86を作ることは、固定子ボディ72とハウジングとの間の組込み連結の剛性を増大させるのに役立つ。
【0074】
図1から3に示された例では、組立体2は、突出部24、突出部26、フランジ36、ラグ87、フランジ60、オリフィス98、オリフィス100、オリフィス102、ワッシャ112、およびピン104をそれぞれが備える4つのサブ組立体を有するが、異なる数のそのようなサブ組立体を選択することは、本発明の範囲から逸脱することなしに当然可能である。フランジ34、フランジ58、ボア94、ボア96、およびねじ114をそれぞれが有する別の数のサブ組立体を選択することもまた、本発明の範囲から逸脱することなしに可能である。リブ80およびスロット28をそれぞれが有する別の数のサブ組立体を選択することもまた、本発明の範囲から逸脱することなしに可能である。
【0075】
図1から3に示された例では、オリフィス102だけにねじ山が付けられるが、オリフィス98および100のうちの一方にねじ山が付けられることは、本発明の範囲から逸脱することなしに当然可能である。同様に、ボア96は、ねじ山なしとされ得る。
【0076】
図4は、本発明の第2の実施形態による固定子組立体120の概略図である。同じ要素は、同じ参照記号を使用して示されている。
【0077】
組立体120の固定子ボディ72の軸方向長さは、組立体2の固定子ボディ72の軸方向長さよりも短い。内側径方向部分88は、外側径方向部分90に対して軸方向にオフセットされる。面Psymetrie_88とPsymetrie_90との間の軸方向オフセットΔは、固定子ボディ72が空洞66の底に設置されたときの表面31と82との間のオフセットに実質的に等しい。オフセットΔは、厳密に3mm未満であることが好ましい。
【0078】
この実施形態では、シール86は、部分88および90に加えて、円筒状部分122を有する。部分122は、ベクトルz→の方向に関して円筒状である。部分122の軸方向断面は、固定子ボディ72の軸方向突出部に対応する。部分122の軸方向厚さは、オフセットΔに実質的に等しい。
【0079】
この実施形態では、この配置は、固定子ボディ72が部分4よりも軸方向に短い場合でも、ハウジングの内側空間と外側空間との間にシールを作り出すこと、および、組込み連結の剛性を増大させることを可能にする。
【0080】
第2の実施形態では、シール86は、固定子ボディ72の軸方向長さの減少を考慮に入れるように設計される。しかし、固定子ボディ72の軸方向長さの増大を考慮に入れるようにシール86を適応させることが、本発明の範囲から逸脱することなしに、当然可能である。
【0081】
ハウジングの内側と外側との間にシールを作り出すことにより、液圧流体の吸引が促進される。それにより、液圧流体の変位が少なくなるため、吸込み点のオイルサージが傾斜の影響を受けにくくなる。ハウジングと固定子ボディとの間の組込み連結の剛性を増大させることにより、この連結に現れ得る振動が効果的に吸収され、したがって、本発明による固定子組立体の音響および振動の信頼性が強化される。