(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】モータ、および回転機器
(51)【国際特許分類】
H02K 13/00 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
H02K13/00 V
(21)【出願番号】P 2020566103
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2019040053
(87)【国際公開番号】W WO2020148952
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2019005211
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】平林 晃一郎
(72)【発明者】
【氏名】イン ボーラー
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-022619(JP,A)
【文献】特開2009-071925(JP,A)
【文献】特開2002-051509(JP,A)
【文献】特開平06-165443(JP,A)
【文献】特開2017-073950(JP,A)
【文献】特開2017-073918(JP,A)
【文献】特開2016-127733(JP,A)
【文献】米国特許第05949173(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に設けられた整流子と、
前記整流子に接触するブラシと、
前記ブラシに対向する壁面を有するブラケットと、
前記ブラシと前記壁面とに接触する変形部と、
を備え、
前記ブラケットは、
前記変形部よりも前記整流子側に設けられた突出部
を備え、
前記突出部は、前記壁面から前記ブラシに向けて突出して
おり、
前記変形部に接触する壁面の一部分には凹部が設けられており、
前記回転軸の軸方向における前記凹部が有する2つの端部のうち、一方の端部は前記ブラケットの開口部を形成し、他方の端部は傾斜面を形成している
、モータ。
【請求項2】
径方向において、前記突出部は、前記整流子側における前記変形部の端部に接触する
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記凹部の他方の端部は、
前記回転軸の軸方向において、前記壁面の一部分の中間部にある
請求項
2に記載のモータ。
【請求項4】
前記変形部は、
前記壁面に接触する第1樹脂部と、
前記ブラシと前記第1樹脂部との間に設けられ、前記第1樹脂部よりも硬い第2樹脂部と
を備え、
前記第2樹脂部の前記整流子側の端部は、前記第1樹脂部の前記整流子側の端部よりも前記整流子側に位置し、
前記突出部は、前記第1樹脂部の前記整流子側の端部よりも前記整流子側に位置する
請求項1~
3のいずれか一つに記載のモータ。
【請求項5】
前記変形部は、
前記ブラシに対向する前記ブラケットの第1壁面と、前記ブラシとの間に設けられる第1変形部と、
前記第1壁面に対向する前記ブラケットの第2壁面と、前記ブラシとの間に設けられた第2変形部と
を備え、
前記ブラケットは、
前記第1壁面から前記ブラシに向けて突出し、前記第1変形部よりも前記整流子側に設けられた第1突出部と、
前記第2壁面から前記ブラシに向けて突出し、前記第2変形部よりも前記整流子側に設けられた第2突出部と
を備える請求項1~
4のいずれか一つに記載のモータ。
【請求項6】
前記第2突出部は、
前記第1変形部の前記整流子側の端部よりも前記整流子側に位置する
請求項
5に記載のモータ。
【請求項7】
前記第2変形部は、
前記第2壁面と、前記整流子に接触する前記ブラシの接触面とは反対側の面との間に設けられ、かつ前記第1変形部よりも変形し易い
請求項
5又は6に記載のモータ。
【請求項8】
前記変形部は、
前記整流子とは反対側の前記ブラシの端部を囲んでいる
請求項1~
7のいずれか一つに記載のモータ。
【請求項9】
前記変形部は、復元力を有する
請求項1~
8のいずれか一つに記載のモータ。
【請求項10】
一端部と、前記ブラシが取り付けられる他端部と、前記一端部と前記他端部との間に形成された屈曲部とを有する端子部
を備え、
前記ブラケットは、
前記端子部を収容し、前記壁面を有する収容部
を備え、
前記変形部は、
前記他端部と前記壁面とに接触する
請求項1~
9のいずれか一つに記載のモータ。
【請求項11】
前記ブラケットは、
前記ブラシに対向する2つの壁面を接続する底面を有し、
前記突出部は、
前記壁面、および前記底面から前記ブラシに向けて突出している
請求項1に記載のモータ。
【請求項12】
前記底面は、
前記突出部側の高さが高くなるように傾斜した傾斜面である
請求項
11に記載のモータ。
【請求項13】
前記ブラシと前記整流子との間には、樹脂部に対して別部材としての潤滑剤が設けられる
請求項1~
12のいずれか一つに記載のモータ。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか一つに記載のモータと、
前記回転軸に取り付けられるウォームと、
前記ウォームに噛み合うギアと、
を備える回転機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ、および回転機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシの屈曲部分とブラシホルダとに固着され、ブラシの振動を低減させるダンパー部材を設け、静音性を向上させるモータが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記モータでは、例えば、ブラシの振動によってダンパー部材がモータの回転軸側、すなわち、整流子と接触するブラシの先端側に移動し、ブラシと整流子との電気的な接触を妨げるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記を課題の一例とするものであり、静音性を向上させ、かつブラシと整流子との電気的接触を向上させるモータ、および回転機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るモータは、回転軸に設けられた整流子と、整流子に接触するブラシと、ブラシに対向する壁面を有するブラケットと、ブラシと壁面とに接触する変形部と、を備える。ブラケットは、変形部よりも整流子側に設けられた突出部を備える。突出部は、壁面からブラシに向けて突出している。前記変形部に接触する壁面の一部分には凹部が設けられている。前記回転軸の軸方向における前記凹部が有する2つの端部のうち、一方の端部は前記ブラケットの開口部を形成し、他方の端部は傾斜面を形成している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る回転機器の平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る回転機器の底面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る回転機器の第1筐体を取り外した斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る回転機器の第1筐体を取り外した平面図である。
【
図7】
図7は、ブラケットをフレーム側から見た正面図である。
【
図9】
図9は、ブラケットをフレーム側から見た正面図である。
【
図10】
図10は、ブラケットをフレーム側から見た斜視図である。
【
図12】
図12は、変形例に係るブラケット本体部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係るモータ、および回転機器について図面を参照して説明する。実施形態に係るモータは、回転機器に設けられる。
【0009】
なお、以下に説明する実施形態によりモータ、および回転機器の用途が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0010】
実施形態に係る回転機器1について
図1~
図4を参照し説明する。
図1は、実施形態に係る回転機器1の平面図である。
図2は、実施形態に係る回転機器1の底面図である。
図3は、実施形態に係る回転機器1の第1筐体2Aを取り外した斜視図である。
図4は、実施形態に係る回転機器1の第1筐体2Aを取り外した平面図である。
【0011】
回転機器1は、例えば、車両用の空調システムなどに用いられるアクチュエータとして好適に用いることができ、風量等を制御するためのルーバーの回動動作を制御することができる。
【0012】
回転機器1は、筐体2と、モータ3と、ギア群4(ギア機構)と、回転角度検出センサ5とを備える。
【0013】
筐体2は、第1筐体2Aと、第2筐体2Bとを備える。筐体2は、モータ3と、ギア群4と、回転角度検出センサ5とを収容する。
【0014】
第1筐体2Aは、筐体2の天面部となる第1面部20と、第1面部20の外周部に設けられた第1側壁部21とを備える。第1筐体2Aには、第1側壁部21によって囲まれた開口部(不図示)が第1面部20と対向するように形成される。また、第1筐体2Aの第1側壁部21には、外部コネクタ(不図示)が差し込まれる第1差し込み部22が形成される。
【0015】
第2筐体2Bは、筐体2の底面部となる第2面部23と、第2面部23の外周部に設けられた第2側壁部24とを備える。第2筐体2Bには、第2側壁部24によって囲まれた開口部25が第2面部23と対向するように形成される。また、第2筐体2Bの第2側壁部24には、外部コネクタ(不図示)が差し込まれる第2差し込み部26が形成される。
【0016】
筐体2は、第1筐体2Aの開口部と、第2筐体2Bの開口部25とを付き合わせた状態で、第1筐体2Aと第2筐体2Bとを連結して構成される。第1差し込み部22と第2差し込み部26とが連結して、外部コネクタを収容するコネクタが構成される。なお、筐体2は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ABS等の樹脂材料で形成される。
【0017】
また、第1筐体2Aには、第2筐体2B側に延出する複数の係合部200が、第1側壁部21の外周部に一体に形成されている。そして、係合部200には係合凹部201が設けられている。一方、第2筐体2Bには、第1筐体2Aの複数の係合部200にそれぞれに対応する複数の突起202(以下、係合突起202と呼称する。)が第2側壁部24に一体に形成されている。係合突起202は係合部200の係合凹部201に係合する。
【0018】
なお、本実施形態では、第1筐体2Aに係合部200を設け、第2筐体2Bに係合突起202を設けるようにしているが、第2筐体2Bに係合部を設け、第1筐体2Aに係合突起を設けるようにしてもよい。
【0019】
また、第1筐体2A、および第2筐体2Bにおける一側辺の両端部には、それぞれ外方へ突出する片210(以下、接合片210と称する。)が形成される。接合片210には、所定の緊締具(不図示)が挿通される連結孔211が設けられており、第1筐体2Aと第2筐体2Bとは、4つの連結孔211を介して所定の緊締具により強固に連結される。
【0020】
また、第1筐体2Aには、例えば、ボルトやビスなどの締結具(不図示)を挿通可能な第1貫通孔220を有する円筒状の突出部221が第1面部20から突出して形成されている。そして、第2筐体2Bには、突出部221が嵌合する第2貫通孔222が設けられる。
【0021】
モータ3は、ステッピングモータ、ブラシレスモータなど公知のモータで構わないが、図示の例ではDCモータであり、モータ3の回転軸311には、ギア群4に含まれるウォーム40が装着される。モータ3には、第1筐体2Aの第1差し込み部22と第2筐体2Bの第2差し込み部26とによって構成される差し込み口27に設けられた接続端子8、およびフレキシブル基板7を介して外部コネクタから電力が供給される。モータ3の構成については、後述する。
【0022】
ギア群4は、ウォーム40と、第1伝達ギア41と、第2伝達ギア42と、出力ギア43(回転体)とを備える。ウォーム40は、モータ3の回転軸311とともに回転する。ウォーム40は、モータ3とは反対側の頂部40aが第2筐体2Bによって回転自在に支持される。
【0023】
ウォーム40の回転は、第1伝達ギア41のヘリカルギア41aに伝達されるとともに、ヘリカルギア41aと同軸上に設けられた、ヘリカルギア41aよりも相対的に小径の小径ギア41bを介して第2伝達ギア42に伝達される。そして、第2伝達ギア42の回転は、出力ギア43に伝達される。また、出力ギア43には、出力軸44が連接されている。モータ3の回転は、所定の減速比で減速されて、出力軸44から外部へ出力される。
【0024】
回転角度検出センサ5は、出力ギア43の回転角を制御するために、出力ギア43の回転角を検出する。
【0025】
次に、モータ3について
図5、および
図6を参照し説明する。
図5は、モータ3の斜視図である。
図6は、モータ3の分解斜視図である。
【0026】
モータ3は、フレーム30と、複数のマグネット(不図示)と、アマチュア31と、ブラケット32とを備える。
【0027】
フレーム30は、底部300と、底部300の周縁に沿って設けられた筒部(以下、側壁部と呼称する。)301とを備える。
【0028】
底部300には、回転軸方向において外側に突出する軸受部303が形成される。軸受部303には、アマチュア31の回転軸311(モータ3の回転軸311)を外部に導出する孔部302が形成される。なお、軸受部303の内部には、回転軸を回転可能に支持する軸受け(不図示)が設けられる。
【0029】
側壁部301は、アマチュア31の外周を覆うように形成される。また、側壁部301には、底部300とは反対側に開口部304が形成される。側壁部301のアマチュア31に対向する内壁面(不図示)には、複数のマグネットがアマチュア31から離間して配置されている。
【0030】
アマチュア31は、コア310と、コア310の複数のポール310aに巻回されるコイル(不図示)と、コア310に固定された回転軸311と、整流子312とを備える。
【0031】
コア310は、回転軸311の軸方向に沿って複数の金属板が積層されて構成される。金属板としては、例えば、電磁鋼板が挙げられる。回転軸311は、コア310を貫通するようにコア310の中央に配置されている。
【0032】
整流子312は、回転軸311の外周面に設けられる。具体的には、整流子312は、回転軸311の周方向に沿って設けられる。整流子312は、モータ3の外部に導出される回転軸311の一方の端部とは反対側に位置する他方の端部側に設けられた複数の板金312aを備える。
【0033】
板金312aには、コア310の各ポール310aに巻回されたコイルの端部が半田などによって接続されている。なお、整流子312側の回転軸311の端部は、軸受33に回転可能に支持される。
【0034】
次に、ブラケット32について、
図7、および
図8を参照し説明する。
図7は、ブラケット32をフレーム30側から見た正面図である。
図8は、ブラケット32の分解斜視図である。ブラケット32は、軸受プレート320と、ブラケット本体部(以下、本体部と呼称する。)321と、一対の端子部322と、一対のブラシ323と、一対の変形部324とを備える。
【0035】
プレート(以下、軸受プレートと呼称する。)320は、フレーム30(
図5、および
図6参照)とは反対側から本体部321に取り付けられる。軸受プレート320には、中央に軸受部320aが形成される。軸受部320aは、本体部321とは反対側に向けて窪んでおり、軸受33が収容される。また、軸受プレート320には、軸受部320aを挟んで一対の孔部(以下、挿入孔と呼称する。)320bが形成される。挿入孔320bには、端子部322の端部340aが挿入される。
【0036】
ここで、本体部321について、
図7~
図10を参照し説明する。
図9は、本体部321をフレーム30側から見た正面図である。
図10は、本体部321をフレーム30側から見た斜視図である。
【0037】
本体部321は、回転軸311(
図6参照)の軸方向に沿って肉厚に構成される。本体部321には、整流子312(
図6参照)が配置される孔部(以下、挿入孔と呼称する。)330と、端子部322、ブラシ323の一部、および変形部324を収容する一対の収容部331とが形成される。
【0038】
挿入孔330は、長円形であり、回転軸311の軸方向に沿って形成される。挿入孔330には、整流子312が回転軸311と共に挿入される。
【0039】
収容部331は、コア310側の天面(以下、正面壁と呼称する。)321aから回転軸311の軸方向に沿って、具体的には、正面壁321aから軸受プレート320側に向けて窪むように形成される。収容部331は、コア310側から見た場合にT字状となるように、第1収容部332と、第2収容部333とによって形成される。
【0040】
第1収容部332は、長円形である挿入孔330の長手方向に沿って形成される。第1収容部332の底部332aには、端子部322の端部340aが挿入される孔部(以下、挿入孔と呼称する。)332bが形成される。
【0041】
第2収容部333は、第1収容部332と交差するように形成され、第1収容部332の一方の端部が第1側壁面333a(第2壁面)に接続される。すなわち、第1収容部332と第2収容部333とは連通している。第2収容部333の整流子312側の端部には、第2収容部333と挿入孔330とが連通するように開口部334が形成される。この開口部334は、軸受プレート320側及びアマチュア31側に開口している。また、開口部334は第1収容部332と第2収容部333の開口部の一部となっており、これら開口部の一部はアマチュア31側に開口している。第2収容部333には、第1側壁面333aに対向する第2側壁面333b(第1壁面)に凹部335が形成される。なお、第2収容部333には、挿入孔330又は第2収容部333内の空間Sに対向する第3側壁面333cが形成され、第1側壁面333aと第2側壁面333bとは第3側壁面333cによって接続される。
【0042】
凹部335には、
図11に示すように、モータ3の回転軸311の軸方向における一方の端部335e、具体的には正面壁321a側の端部335eに開口部334の一部分を形成する開口部335aが形成される。すなわち、回転軸311の軸方向において、凹部335は2つの端部335e、335fを備え、一方の端部335eは開口部335aを形成し、他方の端部335fは傾斜面335bを備える。一方の端部335eは正面壁321a側の端部であり、他方の端部335fは第2収容部333の底部333d側の端部である。
図11は、
図9のXI-XI断面における概略図である。凹部335は、回転軸311の軸方向における第2側壁面333bの中間部335cまで形成される。すなわち、凹部335は、正面壁321aから回転軸311の軸方向に沿って形成され、正面壁321aとは反対側の端部335fが、第2収容部333の底部333dよりも正面壁321a側となるように形成され、回転軸311の軸方向において第2側壁面333b(壁面の一部分)の中間部335cにある。
【0043】
なお、凹部335では、正面壁321aと反対側の端部335fに傾斜面335bが形成される。傾斜面335bは、第2収容部333側となるにつれて、回転軸311の軸方向において開口部335aからの距離が長くなるように形成される。
【0044】
また、本体部321は、
図8~
図10に示すように、第1突出部336と、第2突出部337とを備える。第1突出部336、および第2突出部337は、第2収容部333の整流子312側の端部に形成される。第1突出部336、および第2突出部337は、対向するように形成される。第1突出部336、および第2突出部337は、第2収容部333の空間S又は開口部334の一部分を形成する。
【0045】
具体的には、第1突出部336は、第2側壁面333bからブラシ323に向けて突出し、変形部324を構成する第1変形部350の第1樹脂部350aよりも整流子312側に設けられる。また、第2突出部337は、第1側壁面333aからブラシ323に向けて突出し、変形部324を構成する第2変形部351が有する整流子312側における端部よりも整流子312側に設けられる。第1突出部336、および第2突出部337は、径方向において、整流子312側における変形部324の端部に接触する。
【0046】
端子部322には、
図7、および
図8に示すように、一端部340と、他端部341とが形成される。また、端子部322には、一端部340と他端部341との間に屈曲部342が形成される。端子部322は、L字状の金属板に曲げ加工などを行うことで屈曲した形状に形成される。
【0047】
一端部340は、本体部321の第1収容部332に収容される。コア310(
図6参照)とは反対側の一端部340の端部340aは、第1収容部332の挿入孔332b(
図9参照)、および軸受プレート320の挿入孔320bに挿入され、軸受プレート320から突出する。軸受プレート320から突出した一端部340は、フレキシブル基板7(
図3参照)や、接続端子8(
図3参照)を介して外部コネクタと電気的に接続される。
【0048】
他端部341は、本体部321の第2収容部333に収容される。他端部341は、一端部340に対し本体部321の挿入孔330とは反対側、すなわち回転軸311の径方向外側に向けて延びるように形成される。他端部341には、ブラシ323が取り付けられる。
【0049】
ブラシ323は、変形可能な板状であり、導電性を有する。ブラシ323は、接触面323aにおいて整流子312に接触する。ブラシ323は、端子部322の他端部341に取り付けられる。なお、接触面323aと整流子312との間には、潤滑剤が存在する。この潤滑剤は、前述した第1樹脂部350aに対して別部材として設けられており、公知の潤滑剤を用いることができる。
【0050】
変形部324は、第2収容部333に収容される。変形部324は、第1変形部350と、第2変形部351と、第3変形部352とを備える。変形部324は、復元力を有し、ブラシ323の振動を抑制する機能を有する。
【0051】
第1変形部350は、ブラシ323に対向する第2収容部333の第2側壁面333b(第1壁面)と、ブラシ323との間に設けられる。具体的には、第1変形部350は、第2側壁面333bと、整流子312に接触するブラシ323の面との間に設けられる。第1変形部350は、第1樹脂部350aと、第2樹脂部350bとを備える。
【0052】
第1樹脂部350aは、ゲルで構成される。ゲルは、例えば、2液性硬化タイプや紫外線硬化タイプや、熱硬化タイプである。なお、ゲルは、第2収容部333の第2側壁面333bに形成された凹部335にディスペンサーのノズル(不図示)が挿入され、注入される。第1樹脂部350aは、第2側壁面333bに接触する。
【0053】
第1樹脂部350aの整流子312側の端部は、本体部321の第1突出部336に接触する。これにより、第1樹脂部350aは、整流子312側への移動を第1突出部336によって抑止される。すなわち、第1突出部336は、第1樹脂部350aの整流子312側への流出を抑制するストッパーとして機能する。
【0054】
第2樹脂部350bは、平板状であり、例えば弾性を有する弾性部材としてのゴムで構成される。第2樹脂部350bは、第1樹脂部350aよりも硬い。第2樹脂部350bは、ブラシ323と第1樹脂部350aと間に設けられる。第2樹脂部350bは、ブラシ323に固定される。第2樹脂部350bの整流子312側の端部は、第1樹脂部350aの整流子312側の端部よりも整流子312側に突出しており、第1樹脂部350aの整流子312側の端部を支持する。従って、第1樹脂部350aの整流子312側の端部は、第2樹脂部350bによって支持されてブラシ323側への変形を抑制された状態で、第1突出部336によって整流子312側への移動が抑止される。
【0055】
第2変形部351は、端子部322よりも整流子312側に設けられ、かつ第2収容部333の第1側壁面333a(第2壁面)とブラシ323との間に設けられる。具体的には、第2変形部351は、第1側壁面333aと、整流子312に接触するブラシ323の接触面323aとは反対側の面323bとの間に設けられる。第2変形部351は、ゲルで構成される。なお、第2変形部351は、第1変形部350よりも変形し易い部材によって構成される。
【0056】
第2変形部351の端部は、本体部321の第2突出部337に接触しており、整流子312側への移動が第2突出部337によって抑止される。すなわち、第2突出部337は、第2変形部351の整流子312側への流出を抑制するストッパーとして機能する。
【0057】
第2変形部351は、第2変形部351の整流子312側の端部が第1変形部350の整流子312側の端部よりも整流子312側に位置するように設けられる。換言すると、第2突出部337は、第1変形部350の整流子312側の端部よりも整流子312側に位置する。第2変形部351は、第1変形部350の整流子312側の端部を、ブラシ323を挟んで支持する。
【0058】
第3変形部352は、径方向において、端子部322に対し、第2変形部351とは反対側に設けられる。具体的には、第3変形部352は、端子部322と第2収容部333の第1側壁面333aとの間に設けられる。このため、第3変形部352と第2変形部351との間を仕切る、仕切り部材として端子部322が配置されている。また、整流子312とは反対側の第3変形部352の端部は、端子部322と第2収容部333の第3側壁面333cとの間を第1変形部350に向けて延びるように設けられる。すなわち、第3変形部352は、第2収容部333の第1側壁面333a、および第3側壁面333cに沿って形成される。第3変形部352は、整流子312とは反対側に位置する端子部322、およびブラシ323を囲むように設けられる。
【0059】
第3変形部352は、ゲルによって構成される。第3変形部352は、第1変形部350の第1樹脂部350a、または第2変形部351と同じ部材を有していてもよく、異なる部材によって構成されてもよい。なお、第3変形部352は、第1変形部350の第1樹脂部350aと一体に構成されてもよい。また、第2変形部351、および第3変形部352を構成するゲルは、第1変形部350の第1樹脂部350aと同様にディスペンサーによって凹部335からゲルが注入されてもよい。
【0060】
モータ3は、整流子312に接触するブラシ323を本体部321に形成された収容部331に収容し、収容部331の第1側壁面333a~第3側壁面333cに接触する変形部324を備える。また、本体部321には、変形部324よりも整流子312側に、ブラシ323に向けて突出する第1突出部336、および第2突出部337が設けられる。具体的には、本体部321には、第1側壁面333aからブラシ323に向けて突出する第1突出部336と、第2側壁面333bからブラシ323に向けて突出する第2突出部337とが設けられる。
【0061】
これにより、整流子312側の変形部324、具体的には、第1変形部350の第1樹脂部350aが第1突出部336に接触し、第2変形部351の端部が第2突出部337に接触する。そのため、モータ3は、変形部324が整流子312側へ流出することを抑制することができ、整流子312とブラシ323との接触箇所に変形部324が流出することを抑制することができる。従って、モータ3は、ブラシ323と整流子312との電気的接触を向上させることができる。
【0062】
また、モータ3は、変形部324を設けることで、ブラシ323の振動を減衰させ、静音性を向上させることができる。
【0063】
また、本体部321のうち、変形部324に接触する壁面の一部分である第2側壁面333bには凹部335が形成される。凹部335において、モータ3の回転軸311の軸方向における一方の端部335eに開口部335aが形成される。
【0064】
これにより、ディスペンサーのノズルを凹部335に挿入し、ゲルを第2収容部333に供給することができ、ディスペンサーのノズルがブラシ323に接触することを抑制することができ、ブラシ323の変形を抑制することができる。
【0065】
また、回転軸311の軸方向において、凹部335の一方の端部335eは、開口部335aを形成し、凹部335の他方の端部335fは、傾斜面335bを形成する。
【0066】
これにより、ディスペンサーのノズルからゲルを供給する場合に、ゲルを第2収容部333に向けて流すことができ、凹部335からゲルが溢れることを抑制することができる。
【0067】
また、凹部335の他方の端部335fは、回転軸311の軸方向において、第2側壁面333bの一部分の中間部335cにある。すなわち、凹部335は、第2収容部333の底部333dまでは形成されない。
【0068】
これにより、ディスペンサーのノズルから供給されたゲルを中間部335cから第2収容部333の底部333dに向けて流すことができ、ディスペンサーのノズルから供給されたゲルが直接、底部333dに衝突して第2収容部333からゲルが溢れることを抑制することができる。
【0069】
また、第1変形部350は、第2側壁面333bに接触する第1樹脂部350aと、ブラシ323と第1樹脂部350aとの間に設けられ、第1樹脂部350aよりも硬い第2樹脂部350bとを備える。また、第1突出部336は、第1樹脂部350aの整流子312側の端部よりも整流子312側に位置する。また、第2樹脂部350bの整流子312側の端部は、第1樹脂部350aの整流子312側の端部よりも整流子312側に位置する。
【0070】
本実施形態では、第1樹脂部350aの整流子312側の端部を第2樹脂部350bによって支持することで、第1樹脂部350aの整流子312側の端部が第2樹脂部350b側へ移動することを抑制する。そのため、モータ3は、第1樹脂部350aが整流子312側へ流出することを抑制することができ、ブラシ323と整流子312との電気的接触を向上させることができる。
【0071】
また、第2突出部337は、第1変形部350の整流子312側の端部よりも整流子312側に位置する。
【0072】
これにより、第1変形部350の整流子312側の端部は、ブラシ323を挟んで第2変形部351によって支持される。そのため、第1変形部350の整流子312側の端部が、第2変形部351側へ移動することを抑制することができる。従って、モータ3は、第1樹脂部350aが整流子312側へ流出することを抑制することができ、ブラシ323と整流子312との電気的接触を向上させることができる。
【0073】
また、第2変形部351は、第1側壁面333aと、整流子312に接触するブラシ323の接触面323aとは反対側の面323bとの間に設けられ、かつ第1変形部350よりも変形し易い。
【0074】
これにより、モータ3は、ブラシ323を整流子312に向けて押し付ける力が大きくなることを抑制し、ブラシ323と整流子312との接触抵抗を低減しつつ、ブラシ323の振動を抑制することができる。
【0075】
また、第3変形部352は、整流子312とは反対側のブラシ323の端部を囲むように形成される。
【0076】
これにより、モータ3は、ブラシ323の振動が本体部321に伝達されることを抑制することができ、静音性を向上させることができる。
【0077】
変形部324は、復元力を有する。
【0078】
これにより、モータ3は、ブラシ323の振動を抑制することができ、静音性を向上させることができる。
【0079】
変形部324は、端子部322の他端部341と、第2収容部333の第1側壁面333a~第3側壁面333cとに接触するように形成される。
【0080】
これにより、モータ3は、ブラシ323の振動が端子部322を介して本体部321に伝達されることを抑制し、静音性を向上させることができる。
【0081】
なお、モータ10が有するブラケット本体部321(本体部321)は、
図12、および
図13に示すブラケット本体部3210(以下、本体部3210)であってもよい。
図12は、変形例に係るブラケット本体部3210の斜視図であり、
図13は、変形例に係るブラケット3200の斜視図である。以下では、上述した本体部321、およびブラケット32に対して、変形例に係る本体部3210、およびブラケット3200が異なる部分を説明し、同一の部分には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0082】
ブラケット3200は、軸受プレート320と、一対の端子部322と、一対のブラシ323と、一対の変形部324とを備える。そして、ブラケット3200は、本体部321に換えて、本体部3210を備え、さらに、一対の樹脂部400を有する。
【0083】
本体部3210には、整流子312(
図6参照)が配置される挿入孔330と、端子部322、ブラシ323の一部、および変形部324を収容する一対の収容部331とが形成される。さらに、本体部3210には、一対の樹脂部400を貯蔵する一対の貯蔵部410が形成される。
【0084】
収容部331は、第1収容部332と、第2収容部333とによって形成される。変形部324は、第2収容部333に収容される。変形部324は、第1変形部350と、第2変形部351と、第3変形部352とを備える。第1変形部350は、第1樹脂部350aと、第2樹脂部350bとを備える。変形部324は、復元力を有し、ブラシ323の振動を抑制する機能を有する。
【0085】
本体部3210は、本体部321と同様、第1突出部336と、第2突出部337とを備える。第1突出部336、および第2突出部337は、第2収容部333の整流子312側の端部に形成される。第1突出部336、および第2突出部337は、対向するように形成される。第1突出部336は、第1樹脂部350aの整流子312側への流出を抑制するストッパーとして機能する。第2突出部337は、第2変形部351の整流子312側への流出を抑制するストッパーとして機能する。
【0086】
そして、本体部3210において、第2収容部333の第2側壁面333bには、第1側壁面333aから離れる方向に凹む凹部(以下、貯蔵部として呼称する)410が形成されている。貯蔵部410は、第2収容部333と連通するように、第2側壁面333bに形成されたスリット状の連通部410aと、連通部410aと繋がる筒状の第3収容部410bとを備える。連通部は路又は通路となる。
【0087】
貯蔵部410が貯蔵する樹脂部400は、第1樹脂部350aと同一のゲルで構成される。ゲルは、第3収容部410bにディスペンサーのノズル(不図示)が挿入され、注入される。これにより、第3収容部410b、連通部410aにゲルが充填され、樹脂部400が形成される。そして、ノズルからのゲルの注入が継続されることで、さらに、第2収容部333にゲルが流入し、第1樹脂部350aが形成される。
【0088】
樹脂部400は、第1樹脂部350aを構成するゲルが枯渇することを防止する供給源として機能する。また、樹脂部400は、第1樹脂部350aが減衰しきれなかったブラシ323の振動を減衰させることができる。従って、変形例に係るブラケット3200は、ブラシ323の振動が端子部322を介して本体部3210に伝達されることを確実に抑制し、静音性を向上させることができる。
【0089】
なお、モータ10は、
図14~16に示すように、一対のカーボンブラシ113を用いたモータであってもよい。
図14は、変形例に係るモータ10の正面図である。
図15は、変形例に係るモータ10の斜視図である。
図16は、
図14のXIV-XIV断面図である。
【0090】
具体的には、変形例に係るモータ10の本体部100は、ブラシ113に向けて突出する第1突出部101と、第2突出部102と備える。さらに、変形例に係るモータの本体部100は、第1突出部101が突出する第1側壁面101aと第2突出部102が突出する第2側壁面102aとを接続する底部103a(底面)からブラシ113に向けて突出する第3突出部103を備える。
【0091】
第3突出部103は、整流子111側の第2収容部110の端部に形成される。第1突出部101~第3突出部103は、連続して形成される。すなわち、第3突出部103は、第1突出部101と第2突出部102とを接続するように形成される。
【0092】
なお、底部103aは、第3突出部103側となるにつれて、高さが高くなるように傾斜した傾斜面である。すなわち、底部103aは、第3突出部103側から下り勾配となるように形成される。
【0093】
変形例に係るモータ100は、第3突出部103によって変形部112が整流子111側へ流出することを抑制することができる。従って、変形例に係るモータ100は、ブラシ113と整流子111との電気的接触を向上させることができる。
【0094】
また、変形例に係るモータ100は、第3突出部103側となるにつれて高さが高くなる底部103aを備える。これにより、変形例に係るモータ100は、変形部112が整流子111側へ流出することをさらに抑制することができる。従って、変形例に係るモータ100は、ブラシ113と整流子111との電気的接触をさらに向上させることができる。
【0095】
なお、第3突出部は、上記した実施形態に係るモータ3に設けられてもよい。
【0096】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 回転機器、3 モータ、4 ギア群(ギア機構)、30 フレーム、31 アマチュア、32 ブラケット、100 モータ、101 第1突出部、102 第2突出部、103 第3突出部、103a 底部(底面)、311 回転軸、312 整流子、320 軸受プレート、321 ブラケット、322 端子部、323 ブラシ、324 変形部、331 収容部、332 第1収容部、333 第2収容部、333a 第1側壁面(第2壁面)、333b 第2側壁面(第1壁面)、333c 第3側壁面、335 凹部、335a 開口部、335c 中間部、336 第1突出部、337 第2突出部、340 一端部、341 他端部、342 屈曲部、350 第1変形部、350a 第1樹脂部、350b 第2樹脂部、351 第2変形部、352 第3変形部