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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】付加的な版作製システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/112 20170101AFI20231211BHJP
   B29C 64/277 20170101ALI20231211BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231211BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20231211BHJP
【FI】
B29C64/112
B29C64/277
B33Y10/00
B33Y30/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020571646
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2019072282
(87)【国際公開番号】W WO2020038951
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】62/719,959
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518146050
【氏名又は名称】エスコ-グラフィックス イメージング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】シーヴァーズ ヴォルフガング
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0031973(US,A1)
【文献】国際公開第2018/114655(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0249048(US,A1)
【文献】特開2004-188983(JP,A)
【文献】特表2008-506990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷版を構築するためのプロセスであって、前記プロセスは、
a)所定の波長範囲の放射光で硬化可能な複数のn層の感光性ポリマーを基材上に連続的に堆積させるステップと、
b)第1のアドレス指定可能な有効範囲面積を有し、前記所定の波長範囲の放射光を放出するように構成された大面積放射光源を用いて、各層の堆積後に各層1~(n-m)を硬化させるステップと、
c)小面積放射光源を用いて、各層の堆積後に層(n-m+1)~層nを選択的に硬化させるステップであって、前記小面積放射光源は1又は2以上の第2の離散的アドレス指定可能な有効範囲面積を備え、前記第2の離散的アドレス指定可能面積の各々は、前記第1のアドレス指定可能面積よりも小さく、前記印刷版で印刷される所望の画像に従って変調されるステップと、
d)未硬化ポリマーを層(n-m+1)~nから除去するステップと、
e)層1~nをデタック処理用の大面積放射光源で硬化させるステップと、
を含み、
前記複数のn層を連続的に堆積させるステップは、少なくとも1つのインクジェット・プリントヘッドと、前記大面積放射光源と、前記小面積放射光源とを備えた印刷組立体を、前記基材に対して間隔を置いて配置するステップと、前記基材と前記印刷組立体の間に相対運動をもたらすステップとを含み、
前記少なくとも1つのインクジェット・プリントヘッドは、複数(n)個のインクジェット・プリントヘッドを含み、少なくとも1つの前記大面積放射光源は、後続の層(n-m+1)~nの堆積の前に1~(n-m)のインクジェット層によって堆積された各層を硬化させるように構成された単一の大面積放射光源を備え、前記小面積放射光源は、堆積の後に層(n-m+1)~nを硬化させるように位置決めされる、
プロセス。
【請求項2】
前記所定の波長範囲は、紫外(UV)波長範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記大面積放射光源はLED-UV大面積放射光源を備え、前記小面積放射光源はUVレーザである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記小面積放射光源は、UV光源と、前記光源からの光を変調するためのデジタルミラーデバイスとを備える、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記小面積放射光源は、個別にアドレス指定可能なLEDのアレイ又はマトリックスを備える、請求項2に記載のプロセス。
【請求項6】
軸に関して回転可能なドラム上に前記基材を配置するステップと、前記ドラムが回転する間に、前記印刷組立体を前記ドラムに対して平行移動させるステップとをさらに含む、請求項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記基材をフラットベッド上に固定するステップと、前記印刷組立体をガントリのキャリッジ上に配置するステップと、前記キャリッジを前記ガントリに沿って前記基材に対して第1の方向に移動させるステップと、前記ガントリを前記基材に対して前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に移動させるステップとをさらに含む、請求項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記基材を可動ステージ上に配置するステップと、前記印刷組立体をキャリッジ上に配置するステップと、前記基材を第1の方向に移動させるステップと、前記キャリッジを前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に移動させるステップとをさらに含む、請求項に記載のプロセス。
【請求項9】
付加製造によって印刷版を構築するためのシステムであって、
印刷組立体であって、
所定の波長範囲の放射光で硬化可能な感光性ポリマーの層を基材上に堆積させるように構成された複数のノズルを備える1又は2以上のインクジェット・プリントヘッドと、
前記所定の波長範囲の放射光を放出するように構成された少なくとも1つの大面積放射光源と、
前記印刷版によって印刷される所望の画像に応じた解像度及び変調で前記所定の波長範囲の放射光を放出するように構成された小面積放射光源とを備える、印刷組立体と、
前記基材と前記印刷組立体との間の相対運動をもたらすための手段と、を備え、
前記少なくとも1つのインクジェット・プリントヘッドは、複数(n)個のインクジェット・プリントヘッドを含み、前記少なくとも1つの大面積放射光源は、後続の層(n-m+1)~nの堆積の前に1~(n-m)のインクジェット層によって堆積された各層を硬化させるように構成された単一の大面積放射光源を備え、前記小面積放射光源は、堆積の後に層(n-m+1)~nを硬化させるように位置決めされる、
システム。
【請求項10】
前記基材と前記印刷組立体との間の相対運動をもたらすための手段は、軸上で回転して第1の方向の相対運動をもたらすように構成され、前記基材を受け入れるように構成されたドラムと、前記ドラムに対して第2の方向に移動するように構成されたキャリッジとを備える、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムはフラットベッド構成を有し、前記基材と前記印刷組立体との間の相対運動をもたらすための手段は、前記基材を受け入れるように構成されたステージと、ガントリ上に取り付けられたキャリッジとを備える、請求項に記載のシステム。
【請求項12】
前記ガントリは、前記ステージに対して第1の方向に移動するように構成され、前記キャリッジは、ガントリに対して前記第1の方向に直交する第2の方向に移動するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ステージは、前記ガントリに対して第1の方向に移動するように構成され、前記キャリッジは、前記ガントリに対して前記第1の方向と直交する第2の方向に移動するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記システムは、X軸及びY軸に沿った、前記印刷組立体に対する前記基材の移動をもたらすように構成され、前記印刷組立体は、X方向及び-X方向への相対移動、Y方向及び-Y方向への相対移動、又はそれらの組み合わせの間に印刷し硬化させるように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記インクジェット・プリントヘッドと前記基材との間の距離は調整可能である、請求項14のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
前記距離は、前記感光性ポリマー層の厚さに基づいて調整可能である、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記印刷版の前記印刷面から未硬化ポリマーを除去するための組立体と、前記印刷版の前記印刷面をデタック処理するための大面積放射光源とをさらに備える、請求項16のいずれかに記載のシステム。
【請求項18】
前記印刷版をデタック処理するための前記大面積放射光源はUV-C光源を備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記未硬化ポリマーを除去するための組立体は、前記印刷版を受け入れるための1対のローラと、前記ローラの一方と前記印刷版の前記印刷面との間に位置決めされたウェブとを備える、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年8月20日出願の米国特許仮出願第62/719959号「付加的な版作製システム及び方法」に関連しかつその優先権を主張するものであり、その開示内容全体は、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
印刷版を作製するための付加製造技術の利用は、欧州特許第1437882号、欧州特許第2199066号、欧州特許第2199065号、欧州公開第3000602号、及び欧州公開第3181357号を含むがこれらに限定されない、数多くの参考文献に記載されており、これらの全ては参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
一般に、いくつかの従来技術の方法は、比較的粗い解像度(例えば、10~600dpi)を備えた構造だけを提供するのに適しており、このプロセスの有用性は、その範囲の粗い画像解像度だけを必要とする用途に制限される。高解像度インクジェット・プリントヘッドによる吐出に適した比較的低粘度のポリマーは比較的脆弱で、硬化後の柔軟性が制限されるが、硬化後の柔軟性が比較的高いポリマーは、通常、比較的高い粘度を有しており、そのために粗い解像度のインクジェット・プリントヘッドでしか機能しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許第1437882号
【文献】欧州特許第2199066号
【文献】欧州特許第2199065号
【文献】欧州公開第3000602号
【文献】欧州公開第3181357号
【文献】米国特許第6567205号
【文献】米国特許第4780730号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、付加製造技術は、比較的大量の化学廃棄物及び感光性ポリマー廃棄物の発生につながる従来の方法よりも環境に優しい。従って、本技術分野では、付加製造を用いてより高い解像度を備えた印刷版を作製するための改善されたプロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、印刷版を構築するためのプロセスを備える。このプロセスは、複数(n)層の感光性ポリマーを基材上に連続的に堆積させるステップと、所定の波長範囲(非限定的にUVなど)の放射光を放出するように構成された大面積放射光源を用いて、各層の堆積後に各層1~(n-m)を硬化させるステップと、印刷版で印刷される所望の画像に従って変調された小面積放射光源を用いて、層(n-m+1)~層nを選択的に硬化させるステップとを含む。大面積放射光源は第1のアドレス指定可能な有効範囲面積を有し、小面積放射光源は1又は2以上の第2の離散的アドレス指定可能な有効範囲面積を備え、第2の離散的アドレス指定可能面積の各々は、第1のアドレス指定可能面積よりも小さい。次いで、未硬化ポリマーを層(n-m+1)~nから除去し、層(n-m+1)~nをデタック処理用大面積放射光源で硬化させる。大面積放射光源はLED-UV大面積光源を備えることができ、小面積放射光源は、UVレーザ、UV光源、及びその光源からの光を変調するためのデジタルミラーデバイス、又は個別にアドレス指定可能なLEDのアレイ又はマトリックスを備えることができる。
【0007】
複数の層を連続的に堆積させるステップは、一般的に、少なくとも1つのインクジェット・プリントヘッドと、大面積放射光源と、小面積放射光源とを備えた印刷組立体を、基材に対して間隔を置いて配置するステップと、基材と印刷組立体との間に相対運動をもたらすステップとを含むことができる。一実施形態では、基材は、軸に関して回転可能なドラムの上に配置され、印刷組立体は、ドラムが回転する間、ドラムと平行に移動される。別の実施形態では、基材をフラットベッド上に固定することができ、印刷組立体をガントリのキャリッジ上に配置することができ、キャリッジをガントリに沿って基材に対して第1の方向に移動させることができ、ガントリを基材に対して第1の方向と垂直な第2の方向に移動させることができる。さらに別の実施形態では、基材を可動ステージ上に配置することができ、印刷組立体をキャリッジ上に配置することができ、基材を第1の方向に移動させることができ、キャリッジを第1の方向と垂直な第2の方向に移動させることができる。印刷組立体は、複数のインクジェット・プリントヘッドを備えることができ、各プリントヘッドは、複数のノズルと、後続層の堆積の前に各層を硬化させるように構成された1又は2以上の大面積放射光源とを備える。
【0008】
本発明の別の態様は、付加製造によって印刷版を構築するためのシステムを備える。このシステムは、印刷組立体と、基材と印刷組立体との間の相対運動をもたらすための手段とを備える。印刷組立体は、各々が基材上に感光性ポリマーの層を堆積させるように構成された複数のノズルを備える1又は2以上のインクジェット・プリントヘッドと、感光性ポリマーを硬化させるために所定の波長範囲の放射光を放出するように構成された少なくとも1つの大面積放射光源と、印刷版によって印刷される所望の画像に応じた解像度及び変調で所定の波長範囲の放射光を放出するように構成された小面積放射光源と、を備える。
【0009】
一実施形態では、基材と印刷組立体の間の相対運動をもたらすための手段は、第1の方向に相対運動をもたらうために軸上で回転するように構成され、基材を受け入れるように構成されたドラムと、ドラムに対して第2の方向に移動するように構成されたキャリッジとを備えることができる。別の実施形態では、このシステムはフラットベッド構成を有することができ、基材と印刷組立体との間の相対運動をもたらすための手段は、基板を受け入れるように構成されたステージと、ガントリ上に取り付けられたキャリッジとを備える。ガントリは、ステージに対して第1の方向に移動するように構成され、キャリッジは第1の方向と直交する第2の方向にガントリに対して移動するように構成することができ、又は、ステージは、ガントリに対して第1の方向に移動するように構成され、キャリッジは、ガントリに対して第1の方向と直交する第2の方向に移動するように構成することができる。
【0010】
印刷組立体は、複数(n)個のインクジェット・プリントヘッドと、後続の層(n-m+1)~nの堆積の前に1~(n-m)のインクジェット層によって堆積された各層を硬化させるように構成された単一の大面積放射光源とを備えることができ、小面積放射光源は、(n-m+1)個の層の堆積の後に(n-m+1)個の層を硬化させるように位置決めすることができる。このシステムは、X軸及びY軸に沿った、印刷組立体に対する基材の移動をもたらすように構成することができ、印刷組立体は、X方向及び-X方向への相対移動、Y方向及び-Y方向への相対移動、又はそれらの組み合わせの間に印刷し硬化させるように構成される。インクジェット・プリントヘッドと基材との間の距離は、調整可能とすることができる、感光性ポリマー層の厚さに基づいて調整可能である。システムはさらに、印刷版の印刷面から未硬化ポリマーを除去するための組立体と、UV-C光源などの印刷版の印刷面をデタック処理するための大面積放射光源とをさらに含むことができる。未硬化ポリマーを除去するための組立体は、印刷版を受け入れるための1対のローラと、ローラの一方と印刷版の印刷面との間に位置決めされたウェブとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来技術による印刷版を作製するための例示的な付加製造プロセスステップを模式的に示す。
図2図1の従来技術による例示的なプロセスの付加ステップを模式的に示す。
図3】本発明の例示的な実施形態のステップを模式的に示す。
図4図3の例示的な実施形態の付加ステップを模式的に示す。
図5A】本発明のドラム型実施形態に従って、付加製造によって印刷版を作製するための例示的なシステムを示す。
図5B】本発明のフラットベッド型実施形態に従って、付加製造によって印刷版を作製するための例示的なシステムを示す。
図5C】ガントリ上のキャリッジのX方向並進及び-X方向並進の間に堆積及び硬化を可能にする、フラットベッド型実施形態で使用可能な第1のキャリッジ構成を示す。
図5D】ガントリ上のキャリッジのX方向並進及び-X方向並進の間に堆積及び硬化を可能にする、フラットベッド型実施形態で使用可能な第2のキャリッジ構成を示す。
図6】本発明の別実施形態に従って、付加製造によって印刷版を作製するための別の例示的なシステムを示す。
図7】未硬化のポリマーを除去して、ポリマー堆積の最終ステップ後にデタック処理するための例示的なシステムを示す。
図8】例示的なマルチプリントヘッド・フラットベッド型実施形態を示す。
図9】本発明の一実施形態によるプロセスで作製された例示的なn層構造を示す。
図10】ポリマー堆積の最終ステップ後に未硬化のポリマーを除去するための別の例示的なシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、付加製造技術を用いて印刷版を作製するための一般的なプロセスは、ステップA1で、インクジェット・プリントヘッド14を用いてポリエステルなどの基体シート12上に感光性ポリマー10の第1層を所望のパターンに印刷するステップと、その後、ステップB1で、例えば大面積UV-LEDヘッドなどの大面積紫外(UV)光源からの、感光性ポリマーを硬化させるのに適した波長の放射光を用いて、印刷後の感光性ポリマーの各層を硬化させるステップとを含む。図2に示すように、このプロセスが繰り返され、ステップA2及びB2で第2層が作製される。ステップA及びBは、全印刷層の全厚が所望の厚さになるまで、合計n回実行される。肩部を形成するために、後続の層の各々は先行する層よりも小さい領域を被覆する。従来技術のプロセスは、最終層が堆積され、硬化された時点で終了する。
【0013】
図3に示すように、本明細書に記載する新規なプロセスでは、合計n個の印刷層の内で、層1~n-mは、個々の印刷ドットの支持肩部を形成するのに対し、上部m個の層又は複数の層(mは1又は2以上とすることができる)は、支持肩部の上部に印刷細部を形作る。1又は複数の上部m個の層の各々は、ステップA(n-m+1)~A(n)で堆積された後で、次の層を印刷する前に、UVレーザなどの小さな放射光スポットを用いて選択的に硬化され、この放射光は印刷版上の所望の画像に従って変調される。次に、図4に示すように、選択的硬化ステップの後、未硬化ポリマーは、ステップDで吸収性ウェブなどを用いて除去される。最後に、ステップEで、印刷版を「デタック処理する」ために(ここで除去される未硬化ポリマーが硬化ポリマーと接触していた界面におけるあらゆる粘着性又はタック性を取り除くために)、印刷版は、UV-C放射光を放出するような大面積LED-UV放射光を用いて硬化される。デタック処理用大面積光源は、層1~(n-m)の硬化に使用される大面積光源と異なる光源でも、同じ光源でもよい。
【0014】
図9に模式的に図示するように、4個のノズルを備えた単一のインクジェット・プリントヘッドを用いて、印刷は、層1に対して、次に層2、3、4、5、6に対して順番に、各印刷列1、2及び3を印刷するステップ(各列の堆積後に硬化ステップを伴う)を含み、図示のピラミッド構造をもたらす。n=6、m=2の場合、層1~4は大面積光源を用いて硬化され、層5及び6は小面積光源を用いて硬化される。層の総数nと詳細層の数mは、何らかの特定の数に限定されない。本明細書でさらに説明するように、複数のプリントヘッドを有する組立体により、プロセスの速度を上げる層堆積の別のシーケンスを可能にすることができる。
【0015】
このプロセスは、図5Aに示すような装置500によって実施することができる。この装置は、基材501とインクジェット・プリントヘッド502との間に相対運動をもたらすための、図5Aに示すドラムなどの機構510と、大面積放射光源504と、小面積放射光源506とを備え、ポリマー層508を連続的に堆積させて硬化させることができるようになっている。図5Aに示すように、この機構は、基材が取り付けられたドラム510を備え、このドラム510が軸Xを中心に回転してY方向への相対運動をもたらすが、インクジェット・プリントヘッド502、大面積放射光源504、及びレーザ放射光源506を備えた印刷組立体503は、ドラムに対してZ方向に固定された関係のままで、キャリッジ上などをX軸に対して平行移動する。
【0016】
小面積放射光源506はレーザ光源を備えること又は本技術分野で公知の他のUV光源を備えることができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,567,205号に記載されるような、光源からの放射光を変調するためのデジタルミラーデバイス(DMD)とUVランプとを備えた画像処理エンジンが挙げられる。この手法は、フラットベッド型実施形態に特に適しているであろう。別の実施形態では、小面積光源は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,780,730号に記載されるような、個別にアドレス指定可能なUV-LEDのアレイ又はマトリクスを備えることができる。マトリックス又はアレイのLEDは、米国特許第6,567,205号に記載されるようなDMDによってもたらされる変調と同様に、画像データと、ポリマー版とLEDアレイ又はマトリクスとの間の相対移動とに応じて、変調をオンオフすることができる。
【0017】
図5Bに示すように、フラットベッド型実施形態550などの別実施形態では、基材552は、テーブル554上に平坦なシートとして配置することができ、一方で、印刷組立体556(インクジェット・プリントヘッド562、大面積放射光源564、及びレーザ放射光源566を備える、図5Aに示すのと同様の構成)は、シートをY方向に横断するように構成されたガントリ570上をX方向に移動可能である。別の実施形態では、キャリッジがY方向に相対移動可能であり、ガントリはX方向に相対移動可能とすることができることを理解されたい。さらに別のフラットベッド関係では、テーブル554は、第1の方向に(例えば、Y軸に沿って)並進するように構成された可動ステージと、第1の方向に垂直な第2の方向に(例えば、X軸に沿って)可動な印刷組立体556とを備えることができる。さらに別の実施形態では、印刷組立体556は完全に静止し、可動ステージは、X方向とY方向の両方に並進して相対的な動きを与えるように構成される。
【0018】
図5Cに示すようなフラットベッド型の一実施形態では、キャリッジが一方向にだけ印刷し硬化させるのではなく、シートを横切ってX方向と-X方向の両方に相対運動する時に印刷し硬化させ、それによって作業速度を上げることができるように、単一のインクジェット・プリントヘッド562に対して複数の大面積光源564を配置する(又は、図5Dのような単一の大面積光源564に対して複数のインクジェット・プリントヘッド562を相対的に配置する)ことが好都合であろう。図5C及び5Dに示す構成において、次の列が堆積される間にレーザが先に堆積されたポリマーの列を露光するように、レーザ光源は、インクジェット・プリントヘッドのY寸法だけ、インクジェット・プリントヘッドからオフセットして位置決めすることができ、それによって、X方向及び-X方向の横断によってもn層の硬化が可能となる。X方向と-X方向の両方で硬化させるように構成されたさらに別の実施形態(図示せず)では、印刷組立体の両端部に、図5Cのインクジェット及び複数の大面積レーザ光源と、或いは図5Dの複数のインクジェット・プリントヘッド及び単一の大面積レーザ光源と整列させて、複数のレーザ光源を設けることができる。図5Bに示す方向と垂直な方向に横断するように構成されたガントリ又は基材の場合、インクジェット・プリントヘッド及び光源の方向は、図5B~5Dの変形形態のいずれかに従って双方向の動作を可能にするように、適切に再配置できることを理解されたい。
【0019】
各構成において、印刷組立体又は少なくともそのインクジェット・プリントヘッド部分は、基材に対してZ方向(X方向とY方向の両方に直交する)に可動とすることができ、吐出口から堆積位置までの距離が不変のままであるように、連続する各層について層厚に相当する距離だけ、Z方向に基材から増分的に遠ざかることができる。このZ方向距離は、堆積される感光性ポリマーの粘度とインクジェット・プリントヘッドの構造の関数とすることができる。インクジェット・プリントヘッドとUV光源の間の距離、並びにドラムの回転速度もまた、感光性ポリマーの粘度の関数とすることができる。ドラムの回転に対するキャリッジの横断速度は、キャリッジがドラムの1回転と同じ時間でインクジェット堆積領域の幅を横切るように制御されるので、このプロセスにより、ドラム上にはポリマーの隣接ストライプ間に重なり又は隙間のない状態で感光性ポリマーの螺旋状渦巻線が堆積される。図5に示す構成では、印刷組立体は、ドラムが反時計回りの方向に回転する間に、第1のパスで左から右へ正のX方向に、第2のパスで右から左へ負のX方向に横断することができる(又は、キャリッジが左側に戻って、左から右だけ印刷することができる)。本発明は、一種類の移動(左から右へ、右から左へ、又はそれらの組み合わせ)に限定されるものではない。
【0020】
図6に示すように、マルチインクジェット・プリントヘッド装置600は、連続的に配置された複数のインクジェット・プリントヘッド601、602、603、及び604を備える。インクジェット・プリントヘッド601は、第1のストライプで第1層を堆積させ、インクジェット・プリントヘッド602は、第1層の上に第2のストライプで第2層を堆積させ、インクジェット・プリントヘッド603は、第2層の上に第3のストライプで第3層を堆積させ、インクジェット・プリントヘッド604は、第3層の上に第4のストライプで第4層を堆積させる。UV-LED光源610などの大面積放射光源は、新たに堆積された第1、第2及び第3のストライプ上に放射光を放出して、堆積後にそれらを硬化させるために配置される。UVレーザ光源620は、第4のストライプを堆積後に選択的に硬化させるために、標的化放射光を放出する。典型的に、各インクジェット・プリントヘッドは、一列に配置されたノズルのアレイ又はマトリックスを備え、個々のノズルは、所望の画像を印刷するように構成された印刷版を作製するために望まれるポリマー構造に従って、噴射する又は噴射しないように制御可能である。印刷組立体は、図6に示すようにドラムが反時計回りの方向に回転する間に、ドラムをX方向に左から右へ横断し、ドラム及び印刷組立体の速度は、ドラム上の隣接ストライプ間に隙間又は重なりのない状態で螺旋状に連続するストライプを堆積させるように調整される。
【0021】
図6では4個のインクジェット・プリントヘッドで示すが、n個の層が堆積される理想的な構成では、n個のインクジェット・プリントヘッドが存在できることを理解されたい。nは常に2以上、好ましくは3以上であるが、2又は3以上のいずれの値でもよい。大面積光源のサイズは、(n-1)×(1つのインクジェット・プリントヘッドの幅)であることが好ましい。
【0022】
また、マルチジェット構成は、フラットベッド型配置でも使用することができる。1つのマルチジェット構成では、複数の吐出口は、第1の方向と垂直な第2の方向に移動するように構成されたステージ上の基材の上方を、第1の方向に移動するように構成されたキャリッジの上に配置することができる。第2のマルチジェット構成では、複数の吐出口は、第2の方向に移動するように構成されたガントリ上を第1の方向に移動するように構成されたキャリッジの上に位置決めすることができる。複数のインクジェットに対して位置決めされた複数の光源を設けることができ、インクジェットのシーケンスは、キャリッジがX方向と-X方向の両方で印刷し硬化させることができるように制御することができ、又は一方向でだけ印刷するように印刷組立体を設定することができる。例示的な構成を図8に示す。作動時、印刷組立体は、「低速軸」に沿って増分的に移動し、「低速軸」に沿う各増分的ステップの前に、「高速軸」に沿う全パスを終了する。従って、図8に示す各印刷「ステップ」は、高速軸に沿う単一パスを指す。このように、ステップ1は、プリントヘッド1を用いて、ポリマーの最左ストリップを層1に堆積させる。次いで、印刷組立体は「低速軸」に沿って増分移動し、ステップ2で、層1の中央ストリップがプリントヘッド1によって堆積され、層2の最左ストリップがプリントヘッド2によって堆積される。次に、印刷組立体は再び「低速軸」に沿って増分移動し、ステップ3で、層1の最右ストリップがプリントヘッド1によって堆積され、層2の中央ストリップがプリントヘッド2によって堆積され、層3の最左ストリップがプリントヘッド3によって堆積される。プリントヘッド1及び2の上方及び下方に取り付けられた大面積UV光源を用いて、高速軸に沿う各パスが後続UVヘッドにより硬化され、その次のパスは逆方向に堆積される。例えば、ステップ1がこのページの向きに合わせて上向きに進行する場合、最下のUV光源が硬化を提供することになり、ステップ2は、(印刷組立体が低速軸に沿ってプリントヘッド1の幅だけ増分的に移動した後で)下向きに進行し、最上のUV光源が硬化を提供することになる。次いで、層3の硬化は、小面積UV光源によって行うことができ、これは個別にアドレス指定可能な画素のマトリックス又はアレイで示される(その各画素は、個別にアドレス指定可能なLED、DMD及び単一のUV光源を用いてアドレス指定可能な画素、又はレーザを用いてアドレス指定可能な点で構成することができる)。インクジェット・プリントヘッドは全て、同じ平面内に配置することができ、又は各々は基材から異なる距離だけ離して配置することができ、又はその距離は調整可能とすることができる。一部の組立体では、複数のインクジェットヘッド及び放射光源は、高速軸に沿った1回のパスで複数の層を堆積できるように配置することができる。
【0023】
図5Bのみに示されているが、図5A~6に示される各装置は、デジタルメモリ590に保存されるような印刷版を作製するための命令に従って、インクジェット(複数可)、大面積放射光源(複数可)、及び小面積放射光源と連動させて、基材と印刷組立体との間の相対運動を制御するために、少なくとも1つのコントローラ580を備えることを理解されたい。コントローラ及びデジタルメモリは、グラフィック画像を処理して、ドラム、ガントリ、キャリッジ、及び/又は可動ステージを移動させるためのモータ、インクジェット、及び放射光源に、対応する制御信号を与えるために、本技術分野で公知のいずれかのプロセッサ又はコンピュータを備えることができる。図示しないが、各インクジェットは、インクジェットが堆積させる放射線硬化性材料の供給源に対する接続部を備える。このような接続部は、複数のインクジェットに供給するための共通リザーバ、各インクジェット用の交換可能なカートリッジ、又は本技術分野で公知のいずれかのタイプも構成を備えることができる。
【0024】
印刷版の層を堆積させ硬化させるための本明細書に示す装置のいずれの場合も、ステップDの後で非硬化ポリマーを除去するための吸収性ウェブは、基材を横断するローラとして提供することができ、例えば、図5A及び6に示す構成においてドラムと接触するように構成されたローラに取り付ける、又はフラットベッド型実施形態において基材を横断するための別個のガントリに取り付けることができる。または、どちらの実施形態でも、基材は、ドラム又はフラットベッドから取り外し、その後、別個の処理ステーションでウェブと接触させることができる。ステップEで印刷版を「デタック処理する」ために使用される大面積LED-UVライトは、図5A~6のいずれかに示す大面積光源とすることができ、又は、図7に示すような、ウェブとの接触とデタック露光を順次提供する装置を備えた処理ステーションなどの別個の処理ステーションに設けられた別個のバンク光源とすることができる。ウェブの構成は、印刷版上方のローラに取り付けられたウェブとして模式的に示しているが、図10に示すような標準的なフレキソ版熱処理装置の構成と類似することができる。図10に示すように、印刷版とウェブは2つのローラ間を通過し、ウェブは印刷版から未硬化のポリマーを除去する。次に、使用済みウェブは廃棄スプールの上に巻き付けられ、後で処分されるか、又は本技術分野で公知のように別の方法で処理される。図7に模式的に示すような専用のデタック処理ステップではなく、溶媒版処理作業に用いることが一般的に知られている乾燥オーブンなどの標準的なポリマー版設備でデタッック処理を実行することができ、この設備は、デタック処理用にUVA及びUVC蛍光管の引き出しを有することができる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「大面積放射光源」は、印刷版細部に望まれる最終的な解像度よりも大きな比較的粗い放射有効範囲を有する光源を指すが、「小面積放射光源」は、印刷版上に形成される最小ドットに望まれる解像度以下の解像度を備えた光源を指す。本明細書では、UVスペクトルで発光する例示的な放射光源に関連して説明したが、本発明は、何らかの特定の波長の放射光に限定されるものではなく、何らかの特定の波長で硬化可能なポリマーに限定されるものではない。
【0026】
本発明を特定の実施形態に関連して本明細書に図示し記載するが、本発明は、示した詳細に限定することを意図するものではない。むしろ、特許請求の範囲の等価物に関する領域及び範囲内で、本発明から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0027】
501 基材
502 インクジェット・プリントヘッド
504 大面積放射光源
506 小面積放射光源
508 ポリマー層
510 ドラム
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10