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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】跳躍運動用マット
(51)【国際特許分類】
   A63B 6/02 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
A63B6/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021006230
(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公開番号】P2022110681
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 直矢
(72)【発明者】
【氏名】板花 俊希
(72)【発明者】
【氏名】川端 洋明
(72)【発明者】
【氏名】岡村 尚美
【審査官】西村 民男
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-760(JP,A)
【文献】特開2005-224453(JP,A)
【文献】特開2017-226230(JP,A)
【文献】特開2020-204143(JP,A)
【文献】登録実用新案第3200236(JP,U)
【文献】登録実用新案第3146951(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 1/00-26/00
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1反発層と、前記第1反発層と重なるように配置された第2反発層とを含む弾性変形部を備え、
前記第1反発層の圧縮弾性率は、前記第2反発層の圧縮弾性率より大きく、
前記第1反発層および前記第2反発層のエネルギー損失率は60%以下であり、
前記弾性変形部は、前記第2反発層から見て前記第1反発層と反対側に位置し、前記第2反発層と重なるように配置されたクッション層を含み、
前記クッション層のエネルギー損失率は、前記第1反発層および前記第2反発層のエネルギー損失率よりも大きい、跳躍運動用マット。
【請求項2】
前記弾性変形部は、前記第1反発層から見て前記第2反発層と反対側に位置し、前記第1反発層と重なるように配置された保護層を含む、請求項1に記載の跳躍運動用マット。
【請求項3】
前記第1反発層および前記第2反発層は、発泡樹脂製の板状体、ラバー製の板状体、および樹脂製の立体網状構造体からなる群から選択される1つである、請求項1または請求項2に記載の跳躍運動用マット。
【請求項4】
前記弾性変形部は、前記第1反発層と前記第2反発層との間に位置する、少なくとも1つ以上の追加反発層を含む、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の跳躍運動用マット。
【請求項5】
前記第1反発層の前記圧縮弾性率は、前記第2反発層の前記圧縮弾性率の2倍以上である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の跳躍運動用マット。
【請求項6】
前記第1反発層の前記圧縮弾性率は1000N/mm以上であり、
前記第2反発層の前記圧縮弾性率は1000N/mm未満である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の跳躍運動用マット。
【請求項7】
前記弾性変形部を内部に保持する袋状部材と、
前記袋状部材の外周を覆う外層部材とを備える、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の跳躍運動用マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、跳躍運動用マットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の伸縮性を有する線条を立体的に不規則に絡めて部分的に溶着した立体網状構造体からなる跳躍運動用マットが知られている(たとえば、特開2005-224453号公報参照)。特開2005-224453号公報では、跳躍運動用マットの全面において均等な高反発力により跳躍できる跳躍運動用マットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-224453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特開2005-224453号公報では、大きく跳躍する場合と小さく跳躍する場合の両方で、使用者が十分に跳躍具から反発力を受けて跳躍しているという満足感、つまり良好な使用感を得ることについて開示も示唆もしていない。
【0005】
本開示の目的は、大きく跳躍する場合と小さく跳躍する場合の両方で、使用者が良好な使用感が得られる跳躍運動用マットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従った跳躍運動用マットは、弾性変形部を備える。弾性変形部は、第1反発層と第2反発層とを含む。第2反発層は、第1反発層と重なるように配置される。第1反発層の圧縮弾性率は、第2反発層の圧縮弾性率より大きい。第1反発層および第2反発層のエネルギー損失率は60%以下である。
【発明の効果】
【0007】
上記によれば、大きく跳躍する場合と小さく跳躍する場合の両方で、使用者が良好な使用感が得られる跳躍運動用マットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る跳躍運動用マットの断面模式図である。
図2図1に示した跳躍運動用マットの弾性変形部を示す斜視模式図である。
図3】実施の形態2に係る跳躍運動用マットの断面模式図である。
図4】実施の形態3に係る跳躍運動用マットの断面模式図である。
図5】実施の形態4に係る跳躍運動用マットの断面模式図である。
図6】エネルギー損失率の算出方法を説明するためのグラフである。
図7】エネルギー損失率の算出方法を説明するためのグラフである。
図8】エネルギー損失率の算出方法を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0010】
(実施の形態1)
<跳躍運動用マットの構成>
図1は、実施の形態1に係る跳躍運動用マットの断面模式図である。図2は、図1に示した跳躍運動用マットの弾性変形部を示す斜視模式図である。図1および図2に示すように、跳躍運動用マット1は、弾性変形部10と、袋状部材5と、外層部材6とを主に備える。袋状部材5は、弾性変形部10を内部に保持する。外層部材6は、袋状部材5の外周を覆う。
【0011】
弾性変形部10は、反発層2と、クッション層3と、保護層4とを含む。反発層2は、第1反発層2aと第2反発層2bとを有する。反発層2は、クッション層3と保護層4とに挟まれるように配置される。異なる観点から言えば、弾性変形部10は、クッション層3と反発層2と保護層4とが積層された積層体である。
【0012】
反発層2は、第1反発層2aと第2反発層2bとの積層体である。第1反発層2aに隣接するように保護層4が配置されている。第2反発層2bに隣接するようにクッション層3が配置されている。第1反発層2a、第2反発層2b、クッション層3、保護層4の形状は板状である。弾性変形部10におけるクッション層3、反発層2および保護層4の積層方向に沿った断面における、第1反発層2a、第2反発層2b、クッション層3、保護層4の断面形状は四角形状である。
【0013】
第1反発層2aの圧縮弾性率は、第2反発層2bの圧縮弾性率より大きい。このようにすれば、比較的小さな跳躍運動では相対的に第2反発層2bが大きく変形し、使用者に十分な反発力を伝えることで使用者の使用感を向上させることができる。また、比較的大きな跳躍運動では、相対的に大きな衝撃を第1反発層2aが負担し、当該第1反発層2aの変形に起因する大きな反発力を使用者に伝えることができる。この結果、大きな跳躍運動においても使用者の使用感を向上させることができる。
【0014】
たとえば、第1反発層2aの圧縮弾性率は、第2反発層2bの圧縮弾性率の2倍以上である。この場合、比較的大きな跳躍運動の衝撃を第1反発層2aで主に負担できる。一方、比較的小さな跳躍運動の衝撃を第2反発層2bで主に負担できる。この結果、大きな跳躍運動および小さな跳躍運動の両方において使用者の使用感をより向上させることができる。第1反発層2aの圧縮弾性率は、第2反発層2bの圧縮弾性率の3倍以上でもよく、4倍以上でもよく、9倍以上でもよい。この場合、使用感を向上させることができる跳躍運動の大きさの範囲を広げることができる。
【0015】
第1反発層2aの圧縮弾性率は1000N/mm以上であり、第2反発層2bの圧縮弾性率は1000N/mm未満である。この場合、比較的大きな跳躍運動の衝撃を第1反発層2aで主に負担することができるとともに、比較的小さな跳躍運動の衝撃を第2反発層2bで主に負担することができる。なお、第1反発層2aの圧縮弾性率は1300N/mm以上でもよく、1500N/mm以上でもよく、2000N/mm以上でもよく、2500N/mm以上でもよい。この場合、相対的に大きな跳躍運動の衝撃を第1反発層2aにより十分に負担することができる。また、第2反発層2bの圧縮弾性率は800N/mm以下であってもよく、500N/mm以下であってもよく、300N/mm以下であってもよい。この場合、比較的小さな跳躍運動の衝撃を第2反発層2bで主に負担することができる。
【0016】
また、第1反発層2aの圧縮弾性率は6000N/mm以下でもよく、3000N/mm以下でもよく、1500N/mm以下でもよい。第2反発層2bの圧縮弾性率は200N/mm以上であってもよく、500N/mm以上であってもよい。
【0017】
第1反発層2aおよび第2反発層2bのエネルギー損失率は60%以下である。第1反発層2aおよび第2反発層2bのエネルギー損失率は55%以下でもよく、50%以下でもよい。第1反発層2aのエネルギー損失率と第2反発層2bのエネルギー損失率とは同じでもよいが異なっていてもよい。第2反発層2bのエネルギー損失率が第1反発層2aのエネルギー損失率より小さくてもよい。
【0018】
第1反発層2aおよび第2反発層2bは、樹脂製の立体網状構造体である。具体的には、ポリエステルエラストマーからなる立体網状構造体を用いることができる。なお、第1反発層2aおよび第2反発層2bを、発泡樹脂製の板状体またはラバー製の板状体としてもよい。板状体を構成する樹脂、ラバーを総称して発泡体とし、例えば天然ゴム(NR)、ブタジエンラバー(BR)、ポリウレタン(PU)を用いることができる。
【0019】
クッション層3は、跳躍運動による衝撃が跳躍運動用マットの置かれた床面に伝わることを抑制するように、第1反発層2aの圧縮弾性率より小さい圧縮弾性率を有する事が好ましい。また、クッション層3のエネルギー損失率は、第1反発層2aおよび第2反発層2bのエネルギー損失率より大きいことが好ましい。この場合、クッション層3の衝撃吸収性能を高める事ができる。クッション層3としては、任意の材料を用いることができるが、たとえばチップウレタンなどの樹脂からなる板状体を用いることができる。
【0020】
保護層4は、使用者が跳躍運動用マット1の保護層4側の表面を跳躍面として用いる場合に、跳躍運動による衝撃が反発層2に速やかに伝わるように、第1反発層2aの圧縮弾性率より大きい圧縮弾性率を有することが好ましい。また、保護層4のエネルギー損失率は、第1反発層2aおよび第2反発層2bのエネルギー損失率と同等以下であることが好ましい。この場合、保護層4での衝撃の吸収を抑制し、跳躍運動による衝撃を反発層2により多く伝えることができる。保護層4としては、任意に材料を用いることができるが、たとえばポリウレタン(PU)の発泡体を用いることができる。
【0021】
図2に示すように、第1反発層2a、第2反発層2b、クッション層3、保護層4の平面形状における幅Wは同じであるが、異なっていてもよい。第1反発層2a、第2反発層2b、クッション層3、保護層4の平面形状における長さLは同じであるが、異なっていてもよい。第1反発層2aの厚さT1は第2反発層2bの厚さT2と同じであってもよいが、異なっていてもよい。たとえば厚さT2が厚さT1より大きくてもよい。この場合、相対的に圧縮弾性率が第1反発層2aより小さい第2反発層2bの厚さT2を大きくしておくことで、使用者が大きく跳躍したときに、第2反発層2bの変形が限界に達して跳躍による衝撃を使用者が感じる、といった問題の発生を抑制できる。
【0022】
反発層2の厚さTは、たとえば300mm以下とすることができる。当該厚さTは、好ましくは200mm以下である。この場合、跳躍運動用マット1の取扱が容易となる。第1反発層2aの厚さT1および第2反発層2bの厚さT2は、たとえば100mm以下である。当該厚さT1は、70mm以下でもよく、60mm以下でもよく、50mm以下でもよい。クッション層3の厚さT3は、たとえば50mm以下である。当該厚さT3は、40mm以下でもよく、30mm以下でもよい。保護層4の厚さT4は、たとえば50mm以下である。当該厚さT4は40mm以下でもよく、30mm以下でもよく、20mm以下でもよい。クッション層3の厚さT3は保護層4の厚さT4より大きくてもよい。この場合、跳躍運動時の床への衝撃をクッション層3によって効果的に吸収できる。
【0023】
袋状部材5は、弾性変形部10を内部に保持できれば任意の構成を採用できる。たとえば、弾性変形部10の外形に沿った立体形状の袋部材であって、弾性変形部10を内部に挿入するための開口部が形成されたものを袋状部材5として用いる事ができる。開口部は、たとえばファスナーなどにより開閉可能となっていてもよい。袋状部材5を構成する材料は、布、不織布、樹脂フィルムなどでもよい。弾性変形部10は、袋状部材5の内部に保持されるため、第1反発層2a、第2反発層2b、クッション層3および保護層4が互いに接着剤などによって固定されていなくてもよい。このように第1反発層2aなど弾性変形部10を構成する部材が互いに固定されていない場合、これらの部材を袋状部材5の内部に挿入する作業を容易に行うことができる。なお、第1反発層2a、第2反発層2b、クッション層3および保護層4を予め互いに固定しておいてもよい。この場合、弾性変形部10を構成する部材の積層順番を正確に規定することができる。このため、袋状部材5の内部に弾性変形部10を挿入する工程において、誤った積層順番で当該部材が袋状部材5の内部に挿入されるといった問題の発生を防止できる。
【0024】
外層部材6は、袋状部材5の外周を覆うように配置される。外層部材6は、袋状部材5の外周を覆うことができれば任意の構成を採用できる。たとえば、弾性変形部10が収容された袋状部材5を内部に挿入するための開口部が形成されたものを外層部材6として用いる事ができる。開口部は、たとえばファスナーなどにより開閉可能となっていてもよい。外層部材6を構成する材料は、布、樹脂フィルムなど任意の材料でもよい。
【0025】
<跳躍運動用マットの使用方法>
使用者が跳躍運動用マット1を用いて跳躍運動を行う場合、たとえば保護層4側の表面が上になるように跳躍運動用マット1を床に置く。使用者は、保護層4側の当該表面上に乗って跳躍運動を行う。つまり、跳躍運動用マット1において保護層4側(第1反発層2a側)の表面は、使用者が跳躍運動を行う跳躍面となる。跳躍運動としては、たとえば跳躍運動用マット1の上側の表面(跳躍面)から使用者の足がほとんど離れないような小さな(緩やかな)跳躍運動を行ってもよい。あるいは、跳躍運動として、跳躍運動用マット1の上側の表面から使用者の足が十分に離れるような、大きな跳躍運動を行ってもよい。
【0026】
<作用効果>
本開示に従った跳躍運動用マット1は、弾性変形部10を備える。弾性変形部10は、第1反発層2aと第2反発層2bとを含む。第2反発層2bは、第1反発層2aと重なるように配置される。第1反発層2aの圧縮弾性率は、第2反発層2bの圧縮弾性率より大きい。第1反発層2aおよび第2反発層2bのエネルギー損失率は60%以下である。
【0027】
このようにすれば、弾性変形部10が圧縮弾性率の異なる第1反発層2aおよび第2反発層2bの積層体を含むので、比較的小さな跳躍運動では相対的に第2反発層2bが大きく変形し、第2反発層2bの変形に起因する反発力を使用者に伝えることで、使用者が良好な使用感を得ることができる。また、比較的大きな跳躍運動では、相対的に大きな衝撃を第1反発層2aが負担し、当該第1反発層2aの変形に起因する大きな反発力を使用者に伝えることができる。この結果、大きな跳躍運動においても使用者が良好な使用感を得ることができる。
【0028】
ここで、第1反発層2a側の表面を跳躍面として使用者が用いる場合を考える。このとき、上述した第1反発層2aは相対的に大きな圧縮弾性率を有するため、比較的小さな跳躍運動では当該第1反発層2aは局所的にほとんど変形しない。そのため、使用者の小さな跳躍運動による衝撃は、第1反発層2aのほぼ全面を介して第2反発層2bに伝えられる。この結果、第2反発層2bの全体で使用者の小さな跳躍運動による力を受けることで、結果的に使用者が感じる反発力を十分に大きくできる。このため、使用者の使用感をより向上させることができる。
【0029】
また、比較的大きな跳躍運動では、第1反発層2a側の表面を跳躍面として使用者が用いることで、当該跳躍運動による大きな衝撃を第1反発層2aへ直接的に(第2反発層2bを介することなく)伝える事ができる。このため、第1反発層2aが当該衝撃によって大きく変形し、結果的に大きな反発力を使用者に伝えることができる。この結果、大きな跳躍運動においても使用者の使用感を向上させることができる。
【0030】
また、第1反発層2aおよび第2反発層2bのエネルギー損失率は60%以下であるため、跳躍運動による衝撃が第1反発層2aおよび第2反発層2bにおいて吸収される程度が抑制される。そのため、使用者に対して十分な反発力を伝えることができるので、使用者の使用感を向上させることができる。
【0031】
上記跳躍運動用マット1において、弾性変形部10は、クッション層3を含む。クッション層3は、第2反発層2bから見て第1反発層2aと反対側に位置する。クッション層3は第2反発層2bと重なるように配置される。
【0032】
この場合、跳躍運動用マット1を床面に置く際に、クッション層が床に面するようにすることで、跳躍運動による衝撃が床面に伝わることを抑制できる。
【0033】
上記跳躍運動用マット1において、弾性変形部10は、保護層4を含む。保護層4は、第1反発層2aから見て第2反発層2bと反対側に位置する。保護層4は、第1反発層2aと重なるように配置される。
【0034】
この場合、跳躍運動用マット1における保護層4側の表面を使用者が跳躍面として使用する際に、使用者が少なくとも保護層4を介して第1反発層2aに接することになる。第1反発層2aが、たとえば立体網状構造体などにより構成されている場合には、第1反発層2aの表面は当該立体網状構造体の構造に起因する凹凸形状を有する。上記のような保護層4が形成されることで、このような凹凸を使用者が直接的に感じることを抑制できる。このため、跳躍運動用マット1の跳躍面の触感を向上させることができる。
【0035】
上記跳躍運動用マット1において、第1反発層2aおよび第2反発層2bは、発泡樹脂製の板状体、ラバー製の板状体、および樹脂製の立体網状構造体からなる群から選択される1つである。
【0036】
この場合、本開示に係る跳躍運動用マット1における、相対的に高い圧縮弾性率と相対的に小さなエネルギー損失率とを有する反発層2を実現できる。
【0037】
上記跳躍運動用マット1において、第1反発層2aの圧縮弾性率は、第2反発層2bの圧縮弾性率の2倍以上である。
【0038】
この場合、比較的大きな跳躍運動の衝撃を第1反発層2aで主に負担する一方、比較的小さな跳躍運動の衝撃を第2反発層2bで主に負担することで、大きな跳躍運動および小さな跳躍運動の両方において使用者の使用感をより向上させることができる。
【0039】
上記跳躍運動用マット1において、第1反発層2aの圧縮弾性率は1000N/mm以上である。第2反発層2bの圧縮弾性率は1000N/mm未満である。
【0040】
この場合、比較的大きな跳躍運動の衝撃を第1反発層2aで主に負担することができるとともに、比較的小さな跳躍運動の衝撃を第2反発層2bで主に負担することができる。
【0041】
上記跳躍運動用マット1は、袋状部材5と外層部材6とを備える。袋状部材5は、弾性変形部10を内部に保持する。外層部材6は、袋状部材5の外周を覆う。
【0042】
この場合、弾性変形部10を構成する複数の部材同士を接着することなく、袋状部材5の内部に弾性変形部10を保持することで当該弾性変形部10の形状を維持することができる。また、使用者が跳躍運動用マット1に触れたときに、当該使用者の触感がよくなるように外層部材6を構成する材料を適宜選択することができる。このため、弾性変形部10の構成は共通として、外層部材6の色や素材などを適宜選択することで、跳躍運動用マット1のバリエーションを容易に増やすことができる。
【0043】
(実施の形態2)
<跳躍運動用マットの構成>
図3は、実施の形態2に係る跳躍運動用マットの断面模式図である。図3に示した跳躍運動用マット1は、基本的には図1および図2に示した跳躍運動用マット1と同様の構成を備えるが、反発層2が第1反発層2a、第2反発層2bおよび追加反発層2cという3層を有している点が図1および図2に示した跳躍運動用マット1と異なっている。追加反発層2cは、第1反発層2aと第2反発層2bとの間に配置されている。追加反発層2cは、図3に示すように1つでもよいが、2以上の複数としてもよい。
【0044】
追加反発層2cの圧縮弾性率は、第1反発層2aの圧縮弾性率の値より小さくてもよい。この場合、相対的に小さな跳躍運動による衝撃を第2反発層2bおよび追加反発層2cにより負担することができる。追加反発層2cの圧縮弾性率は、第2反発層2bの圧縮弾性率より大きくてもよい。この場合、小さな跳躍運動による衝撃による追加反発層2cの変形量を小さくし、結果的に第2反発層2bの全面に当該衝撃を伝えることができる。追加反発層2cのエネルギー損失率は60%以下であってもよい。この場合、跳躍運動による衝撃が追加反発層2cにおいて吸収される程度が抑制される。
【0045】
<作用効果>
上記跳躍運動用マット1において、弾性変形部10は、少なくとも1つ以上の追加反発層2cを含む。少なくとも1つ以上の追加反発層2cは、第1反発層2aと第2反発層2bとの間に位置する。
【0046】
この場合、図1および図2に示した跳躍運動用マット1による効果と同様の効果が得られるとともに、1つ以上の追加反発層2cの圧縮弾性率およびエネルギー損失率を適宜調整することで、弾性変形部10の特性を変更することができる。
【0047】
(実施の形態3)
<跳躍運動用マットの構成>
図4は、実施の形態3に係る跳躍運動用マット1の断面模式図である。図4に示した跳躍運動用マット1は、基本的には図1および図2に示した跳躍運動用マット1と同様の構成を備えるが、保護層4を有さない点が図1および図2に示した跳躍運動用マット1と異なっている。なお、反発層2の構成として、図3に示した跳躍運動用マット1の弾性変形部10における反発層2と同じ構成を採用してもよい。
【0048】
<作用効果>
上記跳躍運動用マット1において、弾性変形部10は、反発層2とクッション層3とからなる。この場合、図1および図2に示した跳躍運動用マット1の弾性変形部10による効果と同様の効果が得られる。さらに、跳躍運動用マット1の構成部材を少なくすることで、図1および図2に示した跳躍運動用マット1より低コストで製造できる。
【0049】
(実施の形態4)
<跳躍運動用マットの構成>
図5は、実施の形態4に係る跳躍運動用マットの断面模式図である。図5に示した跳躍運動用マット1は、基本的には図1および図2に示した跳躍運動用マット1と同様の構成を備えるが、クッション層3を有さない点が図1および図2に示した跳躍運動用マット1と異なっている。なお、反発層2の構成として、図3に示した跳躍運動用マット1の弾性変形部10における反発層2と同じ構成を採用してもよい。また、第2反発層2bの厚さを、第1反発層2aの厚さより十分に厚くすることで、跳躍運動による衝撃が床面などに伝わることを抑制できる。
【0050】
<作用効果>
上記跳躍運動用マット1において、弾性変形部10は、反発層2と保護層4とからなる。この場合、図1および図2に示した跳躍運動用マット1の弾性変形部10による効果と同様の効果が得られる。さらに、跳躍運動用マット1の構成部材を少なくすることで、図1および図2に示した跳躍運動用マット1より低コストで製造できる。
【0051】
(実施例)
本開示に係る跳躍運動用マットの効果を確認するための実験を行った。
【0052】
<試料>
ID1~ID6までの6種類の跳躍運動用マットを試験体として準備した。ID1~ID6のそれぞれについて、3つの試験体を準備した。各IDにおける試験体の構成を下記の表1および表2に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
表1は、各IDにおける試験体の構成を示している。各試験体は、図4に示した跳躍運動用マット1と同様の構成とした。すなわち、図4に示すように弾性変形部10として反発層2とクッション層3とを備える跳躍運動用マットを試験体として用いた。
【0056】
反発層2の第1反発層2aおよび第2反発層2bと、クッション層3とを構成する材料の特性を表2に示す。表2における立体網状構造体としては、東洋紡株式会社製のブレスエアー(登録商標)を用いた。また、チップポリウレタンとしては、イノアック社製軟質ウレタンフォームCH402を用いた。
【0057】
表1および表2から分かるように、ID1およびID2は第1反発層2aおよび第2反発層2bを同じ材料により構成している。また、ID3~ID6では、第1反発層2aおよび第2反発層2bを互いに異なる特性の材料により構成している。ID3およびID4では、第1反発層2aを構成する材料の圧縮弾性率は、第2反発層2bを構成する材料の圧縮弾性率より小さい。ID5およびID6では、第1反発層2aを構成する材料の圧縮弾性率は、第2反発層2bを構成する材料の圧縮弾性率より大きい。ID1~ID6のすべてにおいて、第1反発層2aおよび第2反発層2bのエネルギー損失率は60%以下となっている。
【0058】
表2に示した圧縮弾性率は、以下のようにして求めた。すなわち、島津製作所製万能試験機(オートグラフ)AG-Xplusを用いて、記号A~Eで示される各材料からなるサンプルについて荷重と変位量とを計測した。なお、サンプルのサイズは縦×横が100mm×100mmで厚みは50mm以上とする。厚みが50mmに満たないサンプルは複数枚重ねることで50mm以上を確保する。圧縮弾性率の測定方法は以下の通りである。まず、被測定物より大きな上下の平板に被測定物を挟む形で圧縮する。そして、圧縮荷重が20N~30N間の荷重-変位曲線から被測定物の圧縮弾性率を算出する。
【0059】
表2に示したエネルギー損失率は、以下の方法を用いて求めた。サンプル(被落錘物)のサイズは縦×横が100mm×100mmで厚みは50mm以上とする。厚みが50mmに満たないサンプルは複数枚重ねることで50mm以上を確保する。圧縮弾性率が1000N/mm未満である、相対的に圧縮弾性率が低い材質記号C、D、Eについては、落錘の衝撃力を小とした条件を用いた。具体的には、4kgの落下物をサンプル(被落錘物)の上面より高さ30mmから落下させる。このとき、サンプルに加えられる荷重とサンプルの変位量とを測定する。その結果、図6に示すように荷重(単位:N)と変位(単位:mm)との関係を示すグラフが得られる。
【0060】
なお、図6図8は、エネルギー損失率の算出方法を説明するためのグラフである。図6図8の横軸は変位量を示し、縦軸は荷重を示す。図6に示すように、落下物をサンプルに落下させると、サンプルの変位量がグラフの原点15から最大変位量および最大荷重を示す第1点16まで線分18に沿って増加する。このプロセスでは、サンプルは落下物によって圧縮変形されている。その後、サンプルの弾性力により当該サンプルの形状が復元する。このとき、サンプルの変位量および荷重は、第1点16から第2点17まで線分19に沿って減少する。
【0061】
圧縮変形時の仕事量をX1、復元時の仕事量をX2とすると、図7に示すように、仕事量X1は線分18と横軸とにより規定される領域20の面積として規定される。また、図8に示すように、仕事量X2は線分19と横軸とにより規定される領域30の面積として規定される。エネルギー損失率は、X2/X1として算出される。
【0062】
また、圧縮弾性率が1000N/mm以上である、相対的に圧縮弾性率が高い材質記号A、Bについては、落錘の衝撃力を大とした条件を用いた。具体的には、4kgの落下物をサンプル(被落錘物)の上面より高さ100mmから落下させる。このとき、上述した材質記号C、D、Eの場合と同様に、サンプルに加えられる荷重とサンプルの変位量とを測定する。その後、測定された荷重と変位との関係から、上述した方法と同様の方法によりエネルギー損失率を算出する。
【0063】
<試験内容>
反発比の測定:
ID1~ID6のそれぞれの跳躍運動用マットの第1反発層2a側の表面に、3.5kgの鉄球を高さ70cmの位置から自由落下させ、当該表面に対する鉄球の入射速度と反射速度とを測定し、入射速度に対する反射速度の比を反発比として求めた。なお、各IDの数値は、それぞれ3つの試料において測定した反発比の平均値とした。
【0064】
跳躍の官能評価:
3名の試験者が、各IDのそれぞれの跳躍運動用マットの第1反発層側の表面を用いて大きい跳躍と小さい跳躍とを実施し、10段階評価を行った。なお、各IDの数値は、それぞれ3つの試料において評価した値の平均値とした。
【0065】
<結果>
結果を表3に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
表3に示すように、反発比についてはID3およびID4の反発比が他のID1、ID2、ID5、ID6の反発比より小さかった。これは、ID3およびID4における第1反発層2aの圧縮弾性率が、ID1、ID2、ID5、ID6における第1反発層2aの圧縮弾性率より小さいことに起因すると考えられる。
【0068】
また、ID1およびID2については、小さい跳躍の官能評価結果と大きい跳躍の官能評価結果とに差があった。一方、ID3~ID6については、それぞれ小さい跳躍の官能評価結果と大きい跳躍の官能評価結果とに大きな差は無かった。
【0069】
さらに、ID5、ID6における官能評価は、ID3、ID4における官能評価より良好であった。なお、表3において、官能評価の欄における「A」の表示は10段階で8以上(優良)、「B」の表示は10段階で6,7(良好)、「C」の表示は10段階で4,5(普通)を意味する。
【0070】
上記のように、本開示に係る跳躍運動用マットでは大きな跳躍と小さな跳躍との両方において同程度の使用感を得られることが示された。さらに、第1反発層の圧縮弾性率を第2反発層の圧縮弾性率より大きくすることで、大きな跳躍および小さな跳躍の両方について良好な使用感が得られることが示された。
【0071】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。矛盾のない限り、今回開示された実施の形態の少なくとも2つを組み合わせてもよい。本開示の基本的な範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0072】
1 跳躍運動用マット、2 反発層、2a 第1反発層、2b 第2反発層、2c 追加反発層、3 クッション層、4 保護層、5 袋状部材、6 外層部材、10 弾性変形部、15 原点、16 第1点、17 第2点、18,19 線分、20,30 領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8