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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両の車体後部構造
(51)【国際特許分類】
   B62J 21/00 20060101AFI20231211BHJP
   B62J 25/06 20200101ALI20231211BHJP
【FI】
B62J21/00
B62J25/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021138172
(22)【出願日】2021-08-26
(65)【公開番号】P2023032191
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】青木 宏次
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-226977(JP,A)
【文献】特開2014-65472(JP,A)
【文献】特開2011-246072(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第830467(GB,A)
【文献】中国実用新案第201457579(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 21/00
B62J 25/06
B62J 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後部同乗者が足を載せる同乗者用ステップ(26)と、前記同乗者用ステップ(26)を車体フレーム(6)に支持するステップフレーム(14)と、前記ステップフレーム(14)よりも後方に配置され、後部同乗者の衣服が後輪(5)に触れないようにガードするガード部材(16)と、を備える鞍乗り型車両の車体後部構造において、
前記ステップフレーム(14)は、前記同乗者用ステップ(26)および前記ガード部材(16)の両方を支持するステップブラケット(38)を備え、
前記ステップフレーム(14)は、延出方向の基端部(34b,35b)が前記車体フレーム(6)に固定されるフレーム部材(34,35)と、前記フレーム部材(34,35)の延出方向の先端部(34a,35a)に固定される前記ステップブラケット(38)と、を備え、
前記ステップブラケット(38)は、前記フレーム部材(34,35)に固定されるブラケット基部(38c)と、前記ブラケット基部(38c)の後方に延びるブラケット先端部(38e)と、を備え、
前記ガード部材(16)は、前記ブラケット先端部(38e)に支持されており、
前記フレーム部材(34,35)はパイプ材で構成され、
前記フレーム部材(35)の延出方向の先端部(34a,35a)には、前記パイプ材を平板状に潰した平板部(35c)が連なり、
前記平板部(35c)と前記ブラケット先端部(38e)との間に、前記ガード部材(16)が挟持されていることを特徴とする鞍乗り型車両の車体後部構造。
【請求項2】
前記ブラケット基部(38c)には、前記同乗者用ステップ(26)が支持されていることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両の車体後部構造。
【請求項3】
前記ブラケット基部(38c)は、前記同乗者用ステップ(26)を、回動軸(52)を介して折り畳み可能に支持し、
前記ブラケット先端部(38e)は、前記ブラケット基部(38c)から前記回動軸(52)の軸方向に延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両の車体後部構造。
【請求項4】
前記ステップブラケット(38)は、前記ブラケット先端部(38e)が前記ブラケット基部(38c)よりも車幅方向外側に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の鞍乗り型車両の車体後部構造。
【請求項5】
前記ガード部材(16)は、前記ステップフレーム(14)に支持される前端部(42b)に、車幅方向に延びるカラー部材(55)を備え、
前記平板部(35c)、前記ステップブラケット(38)および前記カラー部材(55)を貫通する締結ボルト(56)によって、前記ガード部材(16)が前記ステップフレーム(14)に固定されていることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の鞍乗り型車両の車体後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両の車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗り型車両の後輪の一側方に、同乗者の衣服が後輪に接触しないようにガードするガード部材が配置されたものがある(例えば、特許文献1参照)。例えば、ガード部材の前部は、後部同乗者用のステップと共にステップフレームで支持されている。
ステップフレームは、例えばパイプ材を車両側面視で後方側に凸のV字状に配置し、ステップフレームのV字の頂部に同乗者用ステップが取り付けられるとともに、ステップフレームの頂部の後方に別途の取付部を設け、この取付部にガード部材の前部が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-174455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術のように、例えばステップフレームがパイプ材で構成されたりすると、ステップフレームに同乗者用ステップおよびガード部材の両方を取り付けることが難しくなる。このため、別途の取付部を設ける等の対応を行うと、取付精度や支持強度に課題が生じることがある。
本発明の目的は、同乗者用ステップおよびガード部材を容易に取り付けることが可能な鞍乗り型車両の車体後部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、後部同乗者が足を載せる同乗者用ステップ(26)と、前記同乗者用ステップ(26)を車体フレーム(6)に支持するステップフレーム(14)と、前記ステップフレーム(14)よりも後方に配置され、後部同乗者の衣服が後輪(5)に触れないようにガードするガード部材(16)と、を備える鞍乗り型車両の車体後部構造において、前記ステップフレーム(14)は、前記同乗者用ステップ(26)および前記ガード部材(16)の両方を支持するステップブラケット(38)を備え、前記ステップフレーム(14)は、延出方向の基端部(34b,35b)が前記車体フレーム(6)に固定されるフレーム部材(34,35)と、前記フレーム部材(34,35)の延出方向の先端部(34a,35a)に固定される前記ステップブラケット(38)と、を備え、前記ステップブラケット(38)は、前記フレーム部材(34,35)に固定されるブラケット基部(38c)と、前記ブラケット基部(38c)の後方に延びるブラケット先端部(38e)と、を備え、前記ガード部材(16)は、前記ブラケット先端部(38e)に支持されており、前記フレーム部材(34,35)はパイプ材で構成され、前記フレーム部材(35)の延出方向の先端部(34a,35a)には、前記パイプ材を平板状に潰した平板部(35c)が連なり、前記平板部(35c)と前記ブラケット先端部(38e)との間に、前記ガード部材(16)が挟持されていることを特徴とする。
この構成によれば、ステップフレームが、同乗者用ステップおよびガード部材の両方を支持するステップブラケットを備えることで、同乗者用ステップおよびガード部材をステップフレームに容易に取り付けることができ、取付精度及び支持強度を確保することができる。
また、ステップブラケットの後方側のブラケット先端部によって、ガード部材を可及的に近い位置で支持可能となり、ガード部材の支持剛性を高めることができる。なお、請求項で用いる「固定」は、溶接および締結の両方含む。
また、ステップフレームにおけるフレーム部材の平板部とブラケット先端部とで、ガード部材を強固に支持することができる。
【0007】
請求項2に記載した発明は、前記ブラケット基部(38c)には、前記同乗者用ステップ(26)が支持されていることを特徴とする。
この構成によれば、同乗者用ステップよりも後方側でガード部材を支持することができる。また、同乗者用ステップおよびガード部材からそれぞれ作用する荷重を分散させやすくすることができる。
【0008】
請求項3に記載した発明は、前記ブラケット基部(38c)は、前記同乗者用ステップ(26)を、回動軸(52)を介して折り畳み可能に支持し、前記ブラケット先端部(38e)は、前記ブラケット基部(38c)から前記回動軸(52)の軸方向に延びていることを特徴とする。
この構成によれば、ブラケット先端部が同乗者用ステップの折り畳み方向を避けて延びるため、同乗者用ステップとブラケット先端部との干渉を避けることができる。
【0010】
請求項4に記載した発明は、前記ステップブラケット(38)は、前記ブラケット先端部(38e)が前記ブラケット基部(38c)よりも車幅方向外側に位置するように形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、ステップフレームにおけるフレーム部材の平板部とブラケット先端部との間の距離を広げることができる。これにより、ステップフレームの支持剛性(特に捩り剛性)を高め、ガード部材を強固に支持することができる。
【0011】
請求項5に記載した発明は、前記ガード部材(16)は、前記ステップフレーム(14)に支持される前端部(42b)に、車幅方向に延びるカラー部材(55)を備え、前記平板部(35c)、前記ステップブラケット(38)および前記カラー部材(55)を貫通する締結ボルト(56)によって、前記ガード部材(16)が前記ステップフレーム(14)に固定されていることを特徴とする。
この構成によれば、ステップブラケットおよび平板部でカラー部材を挟持しながら、これらを貫通する締結ボルトによってステップフレームとガード部材とを強固に連結することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ステップフレームに同乗者用ステップおよびガード部材の両方を支持する一体のステップブラケットを備えることで、同乗者用ステップおよびガード部材をステップフレームに容易に取り付けることができ、取付精度及び支持強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態における自動二輪車の要部の左側面図である。
図2】同乗者用ステップ、ガード部材およびその周辺の左側面図である。
図3】上記同乗者用ステップおよびガード部材の両方を支持するステップブラケットの拡大図である。
図4】上記ステップブラケット周辺の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UPが示されている。
【0015】
<車両全体>
図1及び図2は、実施形態の自動二輪車(鞍乗り型車両)1の要部を示している。自動二輪車1は、バーハンドル(不図示)で操舵される前輪(不図示)と、パワーユニット4で駆動される後輪5と、を備えている。自動二輪車1は、運転者が車体を跨いで乗車する鞍乗り型車両である。
自動二輪車1は、車体の骨格となる車体フレーム6を備えている。車体フレーム6は、ヘッドパイプ7、メインフレーム(不図示)、ピボットフレーム(不図示)、左右一対のシートフレーム11、左右一対のサブフレーム12、ダウンフレーム13を備えている。
【0016】
ヘッドパイプ7は、前輪を含むステアリング系部品(不図示)を操舵可能に支持している。メインフレームは、ヘッドパイプ7から後斜め下方に延び、燃料タンク21を支持している。ピボットフレームは、メインフレームの後端部から下方に延びている。ピボットフレームには、車幅方向に延びるピボット軸22が設けられている。ピボット軸22には、後輪5を上下揺動可能に支持するスイングアーム23の前端部が取り付けられている。左右のシートフレーム11は、メインフレームの上部から後方に延び、シート24を支持している。左右のサブフレーム12は、それぞれピボットフレームから後斜め上方に延びて、シートフレーム11の後部に結合されている。
【0017】
左右のサブフレーム12の途中には、ステップフレーム14が取り付けられ、ステップフレーム14には、後部同乗者が足を載せる同乗者用ステップ26が支持されている。車体左右一方側(左側)において、サブフレーム12の後端部と、ステップフレーム14と、に渡って、後部同乗者の衣服が後輪5に触れないようにガードするガード部材16が取り付けられている。ガード部材16は、横向きに乗車した後部同乗者が足を載せる足載せ部と一体に設けられている。
ダウンフレーム13は、ヘッドパイプ7から下方に延び、ピボットフレームと共にパワーユニット4を支持している。
【0018】
シート24は、運転者が座る運転者着座部24aと、運転者着座部24aの後方に配置されて同乗者が座る同乗者着座部24bと、を備えている。燃料タンク21の後部からシート24の前部に渡る範囲の下方は、車幅方向外側から左右一対のサイドカバー27で覆われている。シート24の後部の下方からシート24の後方に渡る範囲は、リアカバー28で覆われている。左右サイドカバー27の後端部とリアカバー28の左右前端部との間には、車体フレーム6のクッション連結部12bが配置されている。クッション連結部12bは、サブフレーム12の後端部12aよりも前方で、シートフレーム11とサブフレーム12との間に渡設されている。左右のクッション連結部12bとスイングアーム23の左右アーム後部との間には、左右一対の緩衝器29が配置されている。スイングアーム23の左アームの周囲には、パワーユニット4から後輪5に動力を伝達するチェーン(不図示)およびこれを覆うチェーンカバー31が設けられている。後輪5は、上方からリアフェンダ32で覆われている。
【0019】
図2に示すように、左右一対のステップフレーム14は、それぞれ前後に配置された2本のステップパイプ(フレーム部材)34,35と、ステップパイプ34,35の下端部34a,35aに取り付けられたステップブラケット38と、を備えている。2本のステップパイプ34,35は、それぞれの上端部34b,35bが前後に空間を隔てて配置されるとともに、これらの上端部34b,35bがサブフレーム12の途中にそれぞれ結合されている。2本のステップパイプ34,35の上端部34b,35bは、サブフレーム12の途中に溶接にて固定されるが、前記溶接に代わりボルト締結等にて固定されてもよい。2本のステップパイプ34,35は、それぞれの下端部34a,35aが前後に当接又は近接されて配置されている。サブフレーム12および2本のステップパイプ34,35で囲まれる空間S1は、車両側面視で三角形状をなしている。ステップフレーム14は、2本のパイプ材で構成されるものに限らず、ガセット部材等の補強部材を備えたり鋳造部材を備えたりしてもよい。
【0020】
2本のステップパイプ34,35のそれぞれの下端部34a,35aには、ステップブラケット38が溶接にて取り付けられている。なお、2本のステップパイプ34,35の下端部34a,35a同士も溶接にて結合されていても良い。ステップブラケット38は、2本のステップパイプ34,35の下端部34a,35aに対して、ボルト締結等にて固定されてもよい。
ステップブラケット38の車幅方向外側の面には、同乗者用ステップ26を支持するベースプレート51が溶接にて取り付けられている。
【0021】
ガード部材16は、同乗者が同乗者着座部24b(図1参照)に横向きに座ったとき、同乗者の衣服が後輪5に触れないようにガードするドレスガード部41と、同乗者の足を載せる足載せ部42と、を備えている。
ドレスガード部41は、車両側面(車幅方向に直交する平面)に沿うように形成され、後輪5の側方に配置されている。ドレスガード部41は、主ガード枠41a、副ガード枠41b、複数の線状部材41cを備えている。
【0022】
主ガード枠41aは、車両側面視で後方に凸の浅いV字形状をなしている。主ガード枠41aの上辺の前端部41dは、サブフレーム12の後端部12aに結合された連結プレート43に取り付けられている。詳しくは、主ガード枠41aの前端部41dは、車幅方向に延びるカラー部材で構成され、この前端部41dと連結プレート43とを貫通する締結ボルト44とナット(不図示)とによって、連結プレート43に締結されている。主ガード枠41aの下辺は、上辺に対して短く、この下辺の前方に足載せ部42が連なっている。
【0023】
副ガード枠41bは、車両側面視で前上方に凸のV字状をなしている。副ガード枠41bは、上辺において前後方向に延びる第1直線部41eと、前辺において上下方向に延びる第2直線部41fと、を備えている。第1直線部41eの後端部は、主ガード枠41aの上辺に結合されている。第2直線部41fの下端は、足載せ部42に結合されている。足載せ部42と主ガード枠41aとの間には、複数の線状部材41cが渡設されている。
【0024】
足載せ部42は、車両側面視で前後方向に延びる主足載せ枠42aを備えている。主足載せ枠42aは、後端が主ガード枠41aの下端と一体に繋がり、前端部42bがステップフレーム14の下端部に支持されている。主足載せ枠42aは、前後方向中間領域が車幅方向外側に変位するように形成されている。主足載せ枠42aの内側には、前後方向に延びる複数の線状部材42cが渡設されている。主ガード枠41a及び主足載せ枠42aは、一体成形のガード枠46を構成している。
【0025】
<ステップブラケット>
図3および図4に示すように、ステップパイプ34,35は、車両側面視で後下方に凸のV字状に配置されている。ステップパイプ34,35の各下端部34a,35aは、互いに平行に配置されている。ステップパイプ34,35の各下端部34a,35aの車幅方向外側の面には、ステップブラケット38が溶接にて取り付けられている。下側のステップパイプ34は、車両側面視で後ろ下がりの直線状に形成され、上側のステップパイプ35は、下端部35aの上方で、車両側面視で略垂直となるように屈曲している。
【0026】
ステップブラケット38は、ブラケット基部38c、傾斜部38dおよびブラケット先端部38eを備えている。
ブラケット基部38cは、ステップパイプ34,35の各下端部34a,35aに車幅方向外側から重なるように、側面視矩形状をなしている。
傾斜部38dは、ブラケット基部38cの下端から後下方へ、下側ほど車幅方向外側に位置するように傾斜して延びている。
ブラケット先端部38eは、傾斜部38dの下端から後下方へ、ブラケット基部38cと平行に(車両側面と平行に)延びている。
【0027】
ステップブラケット38は、全体的にブラケット基部38cから後下方へ延びるように形成されている。ステップブラケット38の延び方向と直交する幅方向の両側には、ブラケット基部38c、傾斜部38dおよびブラケット先端部38eに渡る側縁から車幅方向内側に屈曲して延びる補強フランジ38bが形成されている。
傾斜部38dは、前下方側の側縁が車両側面視で傾斜することで、後下方側ほど幅方向で狭まる台形状に形成されている。ブラケット先端部38eは、ブラケット基部38cに対して、幅方向で後上方側にオフセットしている。
【0028】
ステップブラケット38の長手方向は、ステップパイプ34,35の各下端部34a,35aの延びる方向(後ろ下がりの方向)に沿っている。
ステップブラケット38は、鋼板のプレス成型によって一体形成されている。
【0029】
ブラケット基部38cは、内面がステップパイプ34,35の各下端部34a,35aの車幅方向外側に溶接にて結合されている。ブラケット基部38c両側の補強フランジ38bがステップパイプ34,35の各下端部34a,35aに溶接されてもよい。ブラケット基部38cにおける平坦とされた外面には、同乗者用ステップ26を支持するベースプレート51が例えば溶接にて結合されている。
【0030】
上記したように、ステップパイプ34,35の長手方向に延びるステップブラケット38は、ブラケット基部38c、傾斜部38dおよびブラケット先端部38eが車幅方向に屈曲しながら一体に連なり、かつこれらに渡って幅方向両側の側縁に一対の補強フランジ38bを形成することで、ステップブラケット38の剛性を高めることができる。これにより、ステップブラケット38における同乗者用ステップ26およびガード部材16を支持するための支持剛性を向上させることができる。
【0031】
図4に示すように、同乗者用ステップ26は、ステップブラケット38のブラケット基部38cに溶接にて結合されたベースプレート51と、ベースプレート51に回動軸(支軸)52を介して揺動可能に支持されたステップ本体53とを備えている。
ベースプレート51は、ブラケット基部38cの外面に沿うプレート底部51aと、プレート底部51aにおけるステップブラケット38の長手方向の両端から車幅方向外側に屈曲して延びる一対のプレート側部51bと、を備えている。回動軸52は、ベースプレート51の一対のプレート側部51bを貫通するように取り付けられている。
【0032】
ステップ本体53は、一対のプレート側部51b間に配置されるとともに回動軸52が貫通する被支持部53aと、被支持部53aから車幅方向外側に延び、ゴムなどで覆われた足掛け部53bと、を備えている。図4に示すステップ本体53は、図示せぬストッパーにより、ほぼ水平に延びるように保たれた使用可能状態にある。この状態からステップ本体53を矢印Aの向き(即ち、車両側面視で後斜め上方)に約90°揺動させて、折り畳み状態(即ち、収納状態)とすることができる。
【0033】
上側(ブラケット先端部38eがオフセットした側)のステップパイプ35は、下端部35aの後下方に、ステップパイプ35を車両側面に沿うように平たく潰して形成された平板部35cを備えている。平板部35cは、ブラケット先端部38eと車幅方向で対向している。
【0034】
足載せ部42の前端部42bは、車幅方向に延びるカラー部材55で構成されている。すなわち、足載せ部42は、その前端部42bに、車幅方向に延びるカラー部材55を備えている。カラー部材55は、足載せ部42の部材外径よりも長く形成されている。
カラー部材55は、ステップブラケット38と、ステップパイプ35の平板部35cと、の間に配置されている。詳しくは、カラー部材55は、ステップブラケット38、カラー部材55および平板部35cを貫通した締結ボルト56と、平板部35cの車幅方向内側に配置されたナット57と、によって、ステップブラケット38および平板部35cに締結されている。
【0035】
上記したように、ステップブラケット38のブラケット先端部38eを車幅方向外側に突出させたことで、ブラケット先端部38eと平板部35cとの距離を大きくし、このブラケット先端部38e、平板部35c間にカラー部材55を挟持するように配置した。これにより、足載せ部42に同乗者が足を載せたときに、足載せ部42に作用する下向きの荷重によって主足載せ枠42aに発生する捩りモーメントを、高い捩り剛性で支えることができる。また、ステップフレーム14と主足載せ枠42aとの接続を強固にすることができる。
【0036】
以上説明したように、上記実施形態における鞍乗り型車両の車体後部構造は、後部同乗者が足を載せる同乗者用ステップ26と、同乗者用ステップ26を車体フレーム6に支持するステップフレーム14と、ステップフレーム14よりも後方に配置され、後部同乗者の衣服が後輪5に触れないようにガードするガード部材16と、を備え、ステップフレーム14は、同乗者用ステップ26およびガード部材16の両方を支持する一体のステップブラケット38を備えている。
この構成によれば、ステップフレーム14が、同乗者用ステップ26およびガード部材16の両方を支持するステップブラケット38を備えることで、同乗者用ステップ26およびガード部材16をステップフレーム14に容易に取り付けることができ、取付精度及び支持強度を確保することができる。
【0037】
また、上記鞍乗り型車両の車体後部構造において、ステップフレーム14は、延出方向の各上端部34b,35bがそれぞれ車体フレーム6に固定される一対のステップパイプ34,35と、一対のステップパイプ34,35の延出方向の各下端部34a,35aに固定されるステップブラケット38と、を備え、ステップブラケット38は、一対のステップパイプ34,35に固定されるブラケット基部38cと、ブラケット基部38cの後下方に延びるブラケット先端部38eと、を備え、ガード部材16は、ブラケット先端部38eに支持されているので、ステップブラケット38の後方側のブラケット先端部38eによって、ガード部材16を可及的に近い位置で支持可能となり、ガード部材16の支持剛性を高めることができる。
【0038】
また、上記鞍乗り型車両の車体後部構造において、ブラケット基部38cには、同乗者用ステップ26が支持されているので、同乗者用ステップ26よりも後方側でガード部材16を支持することができる。また、同乗者用ステップ26およびガード部材16からそれぞれ作用する荷重を分散させやすくすることができる。
【0039】
また、上記鞍乗り型車両の車体後部構造において、ブラケット基部38cは、同乗者用ステップ26を、回動軸52を介して折り畳み可能に支持し、ブラケット先端部38eは、ブラケット基部38cから回動軸52の軸方向に延びているので、ブラケット先端部38eが同乗者用ステップ26の折り畳み方向を避けて延びるため、同乗者用ステップ26とブラケット先端部38eとの干渉を避けることができる。
【0040】
また、上記鞍乗り型車両の車体後部構造において、一対のステップパイプ34,35はそれぞれパイプ材で構成され、一方(上側)のステップパイプ35の延出方向の下端部34a,35aには、パイプ材を平板状に潰した平板部35cが連なり、平板部35cとブラケット先端部38eとで、ガード部材16が支持されているので、ステップフレーム14におけるステップパイプ35の平板部35cとブラケット先端部38eとで、ガード部材16を強固に支持することができる。
【0041】
また、上記鞍乗り型車両の車体後部構造において、ステップブラケット38は、ブラケット先端部38eがブラケット基部38cよりも車幅方向外側に変位するように形成されているので、ステップフレーム14におけるステップパイプ35の平板部35cとブラケット先端部38eとの間の距離を広げることができる。これにより、ステップフレーム14の支持剛性(特に捩り剛性)を高め、ガード部材16を強固に支持することができる。
【0042】
また、上記鞍乗り型車両の車体後部構造において、ガード部材16は、ステップフレーム14に支持される前端部42bに、車幅方向に延びるカラー部材55を備え、平板部35c、ステップブラケット38およびカラー部材55を貫通する締結ボルト56によって、ガード部材16がステップフレーム14に固定されているので、ステップブラケット38および平板部35cでカラー部材55を挟持しながら、これらを貫通する締結ボルト56によってステップフレーム14とガード部材16とを強固に連結することができる。
【0043】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、ガード部材16は、ステップパイプ35に形成された平板部35cとステップブラケット38とに取り付けられるが、平板部35cに替わるブラケット等を別途設けてもよい。
本実施形態の車体後部構造は、自動二輪車以外の鞍乗り型車両に適用してもよい。前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪(四輪バギー等)の車両も含まれる。また、原動機に電気モータを含む車両に適用してもよい。
上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
5 後輪
6 車体フレーム
14 ステップフレーム
16 ガード部材
26 同乗者用ステップ
34,35 ステップパイプ(フレーム部材)
34a,35a 下端部(先端部)
34b,35b 上端部(基端部)
35c 平板部
38 ステップブラケット
38c ブラケット基部
38e ブラケット先端部
42b 前端部
52 回動軸
55 カラー部材
56 締結ボルト
図1
図2
図3
図4