(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】人形体及びその部品
(51)【国際特許分類】
A63H 3/36 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
A63H3/36 D
(21)【出願番号】P 2021194689
(22)【出願日】2021-11-30
(62)【分割の表示】P 2019174509の分割
【原出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 大介
【審査官】西村 民男
(56)【参考文献】
【文献】特許第6162270(JP,B1)
【文献】特開2016-10685(JP,A)
【文献】特開2010-17264(JP,A)
【文献】特開昭62-129075(JP,A)
【文献】実開平1-138492(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形体の部品であって、
腰部側に位置する胸部下方部と、
頭部側に位置する胸部上方部であって前記胸部下方部に対して人形体前方に回動可能に連結された胸部上方部と、を備え、
前記胸部上方部に設けられた軸部が、前記胸部下方部に設けられた係止部に係止されることで、前記胸部上方部と前記胸部下方部とが回動可能に支持され、
前記胸部上方部の前記軸部は、前記人形体の正面側に位置している、人形体の部品。
【請求項2】
前記胸部上方部は、前記頭部を回動可能に連結するように構成されており、
前記胸部上方部の前記軸部を含む回動軸は、前記頭部の回動軸よりも人形体前方に位置している、請求項1に記載の人形体の部品。
【請求項3】
前記胸部下方部は、前記腰部を回動可能に連結するように構成されており、
前記胸部上方部の前記軸部を含む回動軸は、前記腰部の回動軸よりも人形体前方に位置している、請求項1または請求項2に記載の人形体の部品。
【請求項4】
前記胸部上方部の回動軸を軸支する
前記軸部が前記胸部上方部に一体に設けられている、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の人形体の部品。
【請求項5】
前記胸部下方部は、
人形体下方側に位置する第1パーツと、
人形体上方側に位置し且つ前記第1パーツに対し、
前記軸部により軸支される回動軸と直行する第1回動軸の周りに人形体左右方向に回動可能に構成された第2パーツと、
を含む、請求項1から請求項
4の何れか1項に記載の人形体の部品。
【請求項6】
人形体背面に装飾部品を更に備え、
前記装飾部品は、前記胸部上方部および前記胸部下方部のうち前記胸部上方部に対して固定されている、請求項1から請求項
5の何れか1項に記載の人形体の部品。
【請求項7】
前記胸部下方部および前記胸部上方部は、前記胸部上方部が前記人形体前方に回動する間、人形体背面側において
、前記胸部下方部と前記胸部上方部との間に前記人形体の内部構造を露呈させる隙間が生じないように構成されている、請求項1から請求項
6の何れか1項に記載の人形体の部品。
【請求項8】
前記胸部下方部および前記胸部上方部は、それらの内部構造が、前記胸部上方部が前記人形体前方に回動する間に相互に干渉しないように構成されている、請求項1から請求項
7の何れか1項に記載の人形体の部品。
【請求項9】
請求項1から請求項
8の何れか1項に記載の人形体の部品を有する人形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に人形体の部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人形体の胴体部、腕部、脚部等の各部位に関節構造を設けることが記載されている。ユーザは、このような人形体を所望の姿勢にすることができ、例えば、前屈姿勢にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人形体のなかには多様な姿勢を形成可能なものもあり、何れの姿勢も適切に(違和感のないように)実現されることが求められうるのに対して、一般に、人形体の姿勢の多様化に伴い、構造が複雑化する傾向にある。
【0005】
本発明は、人形体が形成可能な姿勢を適切に多様化すると共に、これを比較的簡素な構成で実現することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの側面は人形体の関節構造に係り、前記関節構造は、腰部側に位置する胸部下方部と、頭部側に位置する胸部上方部であって前記胸部下方部に対して人形体前方に回動可能に連結された胸部上方部と、を備え、前記胸部上方部の回動軸は、前記人形体の正面側に位置している。
本発明の他の側面は、人形体の部品であって、腰部側に位置する胸部下方部と、頭部側に位置する胸部上方部であって前記胸部下方部に対して人形体前方に回動可能に連結された胸部上方部と、を備え、前記胸部上方部に設けられた軸部が、前記胸部下方部に設けられた係止部に係止されることで、前記胸部上方部と前記胸部下方部とが回動可能に支持され、前記胸部上方部の前記軸部は、前記人形体の正面側に位置している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、人形体が形成可能な姿勢を適切に多様化すると共に、これを比較的簡素な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る人形体を説明するための模式図。
【
図3】人形体の関節構造を説明するための断面模式図。
【
図4】人形体の関節構造を説明するための断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係る人形体1を示す模式図である。人形体1は、頭部11、胸部上方部(或いは単に胸部)12、胸部下方部(或いは腹部)13、腰部14、脚部15および腕部16を備える。個々の部位11~16は、隣接する部位に対して回動(或いは揺動)可能に支持される。例えば、頭部11は胸部上方部12に対して回動可能に支持され、胸部下方部13は腰部14に対して回動可能に支持され、脚部15は腰部14に対して回動可能に支持され、また、腕部16は胸部上方部12に対して回動可能に支持される。また、詳細については後述とするが、胸部上方部12及び胸部下方部13は互いに回動可能に固定される。
【0011】
このようにして人形体1の各部位には関節構造が設けられており、ユーザ(例えば、人形体1の所有者)は、このような人形体1を、例えば前屈姿勢等、所望の姿勢にすることができる。また、詳細については後述とするが、人形体1は装飾部品17を付随的に備え、この装飾部品17は胸部上方部12背面側に取り付けられる。
【0012】
尚、本明細書においては、各部位の位置関係を説明するのに際して、前(前方)、後(後方)、左(左側方)、右(右側方)、上(上方)、下(下方)等と記載する場合があるが、これらの表現は人形体1を基準とした相対的なものである。例えば、前は人形体1正面側に対応し、後は人形体1背面側に対応する。
【0013】
図2は、人形体1が有する関節構造STを説明するための分解図である。本実施形態においては、関節構造STは複数のパーツ2a~2iで構成される。これらパーツ2a~2iの個々は、隣接のパーツに対して固定的に取り付けられ又は回動可能に支持される。
【0014】
パーツ2aは、頭部11を回動可能に支持するための首部パーツないし頭部支持パーツであり、頭部11の支持を実現する軸部2a1を含む。パーツ2bは、パーツ2aを前後方向に回動可能に支持するための首部周辺パーツであり、パーツ2aは、このパーツ2bに支持された際に該回動を実現するための軸部2a2を更に含む。パーツ2cは、人形体1の背中を形成すると共に腕部16を回動可能に支持するための背部パーツないし腕部支持パーツである。パーツ2dは、詳細については後述とするが、前屈姿勢を適切に実現するための前屈用パーツである。パーツ2eは、胸部正面の上部を形成する正面上部パーツである。
【0015】
パーツ2cの正面側にはパーツ2dを取付け可能な取付け部2c1が設けられており、この取付け部2c1によりパーツ2c及び2dは相互に固定される。また、パーツ2cの背面側には装飾部品17を取付け可能な取付け部2c2が設けられており、この取付け部2c2によりパーツ2c及び装飾部品17は相互に固定される。パーツ2aを回動可能に支持するパーツ2bは、上記相互に固定されたパーツ2c及び2dに跨設されるように固定される。また、パーツ2eは、パーツ2dを覆うようにパーツ2c及び2dに対して固定される。
【0016】
パーツ2fは、胸部正面の中央部を形成する正面中央部パーツである。パーツ2gは、上腹部パーツである。パーツ2hは、下腹部パーツである。パーツ2iは、詳細については後述とするが、側屈姿勢を適切に実現するための側屈用パーツである。
【0017】
前述のパーツ2dは、パーツ2iに対して前後方向に回動可能に固定される。本実施形態では、パーツ2dには軸部2d1が設けられ且つ軸部2d1にパーツ2iが係止部2i1による係止によって回動可能に支持されるものとする。パーツ2iの正面側にはパーツ2fを取付け可能な取付け部2i2が設けられ、これによりパーツ2fはパーツ2iを覆うように固定される。パーツ2iの両側方側にはパーツ2gを取付け可能な取付け部2i3が設けられ、これによりパーツ2gはパーツ2iに対して固定される。また、パーツ2hの正面側には軸部2h1が設けられており、この軸部2h1がパーツ2iの開口2i4に嵌合することにより、パーツ2iはパーツ2hに対して左右方向に回動可能に固定される。
【0018】
上述のパーツ2a~2iは、胸部上方部12及び胸部下方部13を含む胸部全体を形成し、それらのうち、パーツ2a~2eは胸部上方部12を形成し且つパーツ2f~2iは胸部下方部13を形成する。尚、胸部上方部12及び胸部下方部13はそれぞれ胸部および腹部と表現可能であり、この観点で、胸部上方部12及び胸部下方部13は纏めて胴体部等と表現されてもよい。同様の観点で、上記関節構造STは、胴体部構造、胸部構造等とも表現可能である。
【0019】
図3及び
図4は、関節構造STについての断面模式図(
図1記載の線d1-d1を切断面とした断面構造の右側面図)を示す。前述のとおり、パーツ2dは軸部2d1によりパーツ2iに対して前後方向に回動可能に固定される。
図3は、パーツ2dをパーツ2iに対して回動させる前の状態を示し、これにより、胸部上方部12が胸部下方部13の直上に位置した状態となっている。
図4は、パーツ2dをパーツ2iに対して回動させた後の状態を示し、これにより、胸部上方部12が胸部下方部13に対して前傾姿勢となっている。
【0020】
このように、パーツ2dがパーツ2iに対して前後方向に回動可能であることにより、胸部上方部12を胸部下方部13に対して同方向に回動可能とし、例えば人形体1を前屈姿勢とする際、胸部全体(胴体部)をいわゆる猫背姿勢にすることが可能となる。ここで、パーツ2gの背面側には突出部2g1が設けられており、胸部全体を猫背姿勢にした際、この突出部2g1は、パーツ2cの内壁部に設けられた係止部2c3により係止される。これにより、胸部上方部12の胸部下方部13に対する可動許容範囲が制限される形となっている。胸部上方部12の胸部下方部13に対する回動角は、例えば20[度]以下、好適には2~17[度]の範囲内、より好適には5~15[度]の範囲内、で設定されうる。
【0021】
本実施形態では、
図3及び
図4から分かるように、パーツ2dの軸部2d1の軸心(胸部上方部12の胸部下方部13に対する回動軸)Ax1は、人形体1の正面側に位置している。ここでいう正面側に位置していることは、背面というよりは正面に偏った位置であることを示す。このような構成によれば、胸部全体を猫背姿勢にすることを可能とし、それにより、例えば上記前屈姿勢を違和感のないものにし、それと共に胸部上方部12及び胸部下方部13間(それらを構成するパーツ間。例えば、パーツ2e及び2f間。)の相互干渉を防止可能とする。よって、本実施形態によれば、人形体1が形成可能な姿勢の多様化が適切に且つ比較的簡素な構成で実現可能となる。
【0022】
上述のことは、本実施形態では、パーツ2dに軸部2d1が設けられ且つ軸部2d1にパーツ2iが回動可能に支持されることにより実現されるものとしたが、他の構造が採用されてもよい。例えば、他の実施形態として、パーツ2iに軸部が設けられ且つ該軸部にパーツ2dが回動可能に支持されてもよい。即ち、胸部上方部12の回動軸Ax1を軸支する軸部(軸部2d1相当)は、胸部上方部12に一体に設けられてもよいし、胸部下方部13に一体に設けられてもよい。尚、これらの態様によれば人形体1の部品点数を削減可能となるが、更に他の実施形態として、パーツ2d及び2i間の回動を実現可能とする別体の軸部(軸部2d1相当)を胸部上方部12及び胸部下方部13とは独立して設けることも可能である。
【0023】
また、軸心Ax1は、パーツ2aの軸部2a1の軸心(即ち、頭部11の回動軸)Ax2よりも前方に位置しているとよい。このような構成によれば、上記前屈姿勢に際して更に頭部11を胸部上方部12に対して前傾姿勢にした場合、該前屈姿勢をより適切な形にすることが可能となる。同様の理由で、軸心Ax1は腰部14の回動軸Ax3よりも前方に位置しているとよい。
【0024】
また、このような関節構造STにおいては、人形体1の背面に備えられる装飾部品17は、その取付け位置が上記前屈姿勢によって不自然なものになることのないように、胸部上方部12及び胸部下方部13のうち胸部上方部12に対して固定されるとよい。尚、装飾部品17は、一般に背中に背負う用途のものを模したものであればよく、本実施形態では所定のアイテムを収容するコンテナとするが、バックパック等、多様なものが採用されうる。
【0025】
更に本実施形態では、胸部下方部13において、
図2を参照しながら述べたように、パーツ2iがパーツ2hに対して左右方向に回動可能となっており、パーツ2gは、このパーツ2iに対して固定される。そのため、人形体1は側屈姿勢をとる際に胸部下方部13を側方に回動させることも可能となっている。よって、本実施形態によれば、人形体1が形成可能な姿勢の更なる多様化に有利と云える。
【0026】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1:人形体、ST:関節構造、12:胸部上方部、13:胸部下方部、AX1:胸部上方部の回動軸。