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特許7399937ワイヤ加工システム用の取外しトラフ、ワイヤ加工システム、ならびに取外しトラフからの1つ以上のワイヤの取り外し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】ワイヤ加工システム用の取外しトラフ、ワイヤ加工システム、ならびに取外しトラフからの1つ以上のワイヤの取り外し方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/048 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
H01R43/048 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021500895
(86)(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019069268
(87)【国際公開番号】W WO2020020726
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】18185278.1
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503231561
【氏名又は名称】コマツクス・ホールデイング・アー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コンテ,アロイス
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-287711(JP,A)
【文献】特開平9-286565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/00 - 43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ加工システム(1)用の取外しトラフ(22)であって、取外しトラフ(22)は、ワイヤ加工システム(1)のワイヤ加工機(5)によって加工されたワイヤ(15)を受け入れるように設計され、
取外しトラフ(22)の側壁(34、35)はそれぞれ、特に把持アーム(55)によって取外しトラフ(22)内のワイヤ(15)を機械的に把持するための1つ以上の窪み(90)および/または凹部を有し、
取外しトラフ(22)はリブ状の構造を有する、
取外しトラフ(22)。
【請求項2】
ワイヤ加工システム(1)用の取外しトラフ(22)であって、取外しトラフ(22)は、ワイヤ加工システム(1)のワイヤ加工機(5)によって加工されたワイヤ(15)を受け入れるように設計され、
取外しトラフ(22)の側壁(34、35)はそれぞれ、特に把持アーム(55)によって取外しトラフ(22)内のワイヤ(15)を機械的に把持するための1つ以上の窪み(90)および/または凹部を有し、
取外しトラフ(22)は、側壁(34、35)に複数の窪み(90)および/または凹部を有し、これら窪みおよび/または凹部は、互いに等距離に各側壁(34、35)に配置される、
取外しトラフ(22)。
【請求項3】
ワイヤ加工システム(1)用の取外しトラフ(22)であって、取外しトラフ(22)は、ワイヤ加工システム(1)のワイヤ加工機(5)によって加工されたワイヤ(15)を受け入れるように設計され、
取外しトラフ(22)の側壁(34、35)はそれぞれ、特に把持アーム(55)によって取外しトラフ(22)内のワイヤ(15)を機械的に把持するための1つ以上の窪み(90)および/または凹部を有し、
取外しトラフ(22)の底面(28)は、取外しトラフ(22)内にワイヤ(15)を部分的に置くように設計され、特に、取外しトラフ(22)の底部に面するワイヤ(15)の側面を機械的に把持するために等距離の間隔で配置された窪み(90)および/または凹部を有する、
取外しトラフ(22)。
【請求項4】
取外しトラフ(22)は深絞りによって製造されている、請求項1~のいずれか一項に記載の取外しトラフ(22)。
【請求項5】
取外しトラフ(22)は、取外しトラフ(22)の長手方向平面に対して対称であり、ワイヤ(15)が取外しトラフ(22)に配置されている場合、長手方向平面はワイヤ(15)の長手方向軸に沿って延びる、請求項1~のいずれか一項に記載の取外しトラフ(22)。
【請求項6】
取外しトラフ(22)は、複数の取外しトラフ部品、特に互いに同一である複数の取外しトラフ部品から構成される、請求項1~のいずれか一項に記載の取外しトラフ(22)。
【請求項7】
側壁(34、35)の窪み(90)および/または凹部は、側壁(34、35)がそれぞれ窪み(90)および/または凹部の位置で側面に対して開いているように設計される、請求項1~のいずれか一項に記載の取外しトラフ(22)。
【請求項8】
ワイヤ加工システム(1)用の取外しトラフ(22)であって、取外しトラフ(22)は、ワイヤ加工システム(1)のワイヤ加工機(5)によって加工されたワイヤ(15)を受け入れるように設計され、
取外しトラフ(22)の側壁(34、35)はそれぞれ、特に把持アーム(55)によって取外しトラフ(22)内のワイヤ(15)を機械的に把持するための1つ以上の窪み(90)および/または凹部を有し、
側壁(34、35)の窪み(90)および/または凹部は、これらが取外しトラフ(22)に配置されている場合、窪み(90)および/または凹部の間の所与の側壁(34、35)の残りのリブ(25、26)よりも、ワイヤ(15)の長手方向に沿ってより狭い幅を有する、
取外しトラフ(22)。
【請求項9】
ワイヤ加工システム(1)であって、
ワイヤ(15)を加工するためのワイヤ加工機(5)と、
請求項1~のいずれか一項に記載の取外しトラフ(22)と、を備え、
取外しトラフ(22)は、ワイヤ加工機(5)によって加工されたワイヤ(15)を受け入れるように設計され、
取外しトラフ(22)は、ワイヤトレイ(20)の回転および/または傾斜によってワイヤ(15)がワイヤトレイ(20)から取外しトラフ(22)に移動できるように、ワイヤ加工システム(1)のワイヤトレイ(20)の下方に配置される、ワイヤ加工システム(1)。
【請求項10】
取外しトラフ(22)は、ワイヤが取外しトラフ(22)内にある場合に、ワイヤ(15)の長手方向に沿ってワイヤトレイ(20)に対して変位可能であるように設計される、
請求項に記載のワイヤ加工システム(1)。
【請求項11】
ワイヤ(15)を把持して保持するための把持アーム(55)をさらに備え、
側壁(34、35)の窪み(90)および/または凹部ならびに/あるいは底面(28)の窪み(90)および/または凹部は、把持アーム(55)の一部を受け入れるように設計される、請求項9または10に記載のワイヤ加工システム(1)。
【請求項12】
把持アーム(55)は、それぞれ2つの把持フック(65、66、67、68)を備える2つのジョー(60、61)を有する、請求項10または11に記載のワイヤ加工システム(1)。
【請求項13】
ワイヤ加工システム(1)の取外しトラフ(22)、特に請求項1~のいずれか一項に記載の取外しトラフ(22)から1つ以上のワイヤ(15)を取り外すための方法であって、取外しトラフ(22)は、ワイヤ加工システム(1)のワイヤ加工機(5)によって加工されたワイヤ(15)を受け入れるように設計および配置され、
方法は、
把持アーム(55)の一部を取外しトラフ(22)の凹みおよび/または凹部内に移動させるステップと、
取外しトラフ(22)に配置されたワイヤ(15)を把持アーム(55)によって把持するステップと、
把持されたワイヤ(15)と共に把持アーム(55)を取外しトラフ(22)から移動させるステップと、を備える方法。
【請求項14】
取外しトラフ(22)に配置されたワイヤ(15)の把持中に、把持アーム(55)によってワイヤ(15)を把持するために互いに向かって移動する把持アーム(55)の2つのジョー(60、61)を除いて、把持アーム(55)は移動されない、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ加工システム用の取外しトラフ、ワイヤ加工システム、ならびに取外しトラフからの1つ以上のワイヤの取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧着機などのワイヤ加工機では、圧着ワイヤなどの加工済ワイヤは、最初にワイヤトレイに到達し、次にワイヤトレイから取外しトラフに放出される。いわゆるワイヤの製造ロット、すなわち所定の数のワイヤが取外しトラフに収集されるまで、いくつかのワイヤが取外しトラフに収集される。
【0003】
その後に、ワイヤの異なるバッチが混同されないように、ワイヤが手動または手で取外しトラフから取り外されるまで、ワイヤ加工機の動作を停止する必要がある。
【0004】
これは、ワイヤ加工機の動作の頻繁な中断に繋がる。ワイヤ加工機でこれまでに知られている取外しトラフからのワイヤの自動および/または機械的な取り外しは、技術的に非常に複雑であるか、ほとんど不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
とりわけ、ワイヤが、技術的に簡素かつ迅速な方法で、自動的におよび/または機械的に、取外しトラフから取り外されることができる、ワイヤ加工システム用の取外しトラフ、および/またはワイヤ加工システム、および/または方法に対する必要性があり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのような必要性は、独立請求項1によるワイヤ加工システム用の取外しトラフ、および/または独立請求項10によるワイヤ加工システム、および/または独立請求項14による方法によって満たされることができる。有利な実施形態は、従属請求項に規定されている。
【0007】
本発明の一態様によれば、ワイヤ加工システム用の取外しトラフが提案され、取外しトラフは、ワイヤ加工システムのワイヤ加工機によって加工されたワイヤを受け入れるように設計され、
取外しトラフの側壁の各々は、特に把持アームによって取外しトラフ内のワイヤを機械的に把持するための1つ以上の窪みおよび/または凹部を有する。
【0008】
これは、取外しトラフの形状のために、ワイヤまたはワイヤロットが、通常、自動化または機械化された方法で、技術的に簡素かつ迅速な方法で取外しトラフから取り出されることが可能であるという利点をもたらす。グリッパまたは把持アームの一部は、通常、取外しトラフの側壁および/または複数の側壁の窪みおよび/または凹部に挿入されることができ、その結果、グリッパまたは把持アームは、技術的に簡素な方法でワイヤまたはワイヤのバッチを把持して保持することができ、ワイヤを取外しトラフの外に移動させることができる。ワイヤを取外しトラフから自動的におよび/または機械的に取り外すオプションを使用すると、ワイヤのバッチが完了したときに、通常、ワイヤ加工機の動作を中断する必要が無い。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、ワイヤを加工するためのワイヤ加工機と、上記の取外しトラフと、を備えるワイヤ加工システムが提案され、取外しトラフは、ワイヤ加工機によって加工されたワイヤを受け入れるように設計され、取外しトラフは、ワイヤトレイの回転および/または傾斜によってワイヤがワイヤトレイから取外しトラフに移動できるように、ワイヤ加工システムのワイヤトレイの下方に配置される。
【0010】
これの利点は、ワイヤ加工機によって加工されたワイヤまたはワイヤのバッチが、取外しトラフの形状のために、通常、自動化または機械化された方法で、技術的に簡素かつ迅速な方法で取外しトラフから取り出し可能であることである。グリッパまたは把持アームの一部は、通常、取外しトラフの側壁および/または複数の側壁の窪みおよび/または凹部に挿入されることができ、その結果、グリッパまたは把持アームは、ワイヤ加工機で加工されたワイヤまたはワイヤのバッチを把持かつ保持してから、ワイヤを取外しトラフから移動させることができる。ワイヤを取外しトラフから自動的におよび/または機械的に取り外すオプションを使用すると、ワイヤのバッチが完了したときに、通常、ワイヤ加工機の動作を中断する必要が無い。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、ワイヤ加工システムの取外しトラフ、特に上記の取外しトラフから1つ以上のワイヤを取り外すための方法であって、取外しトラフは、ワイヤ加工システムのワイヤ加工機によって加工されたワイヤを受け入れるように設計および配置される方法が提案され、本方法は、把持アームの一部を取外しトラフの凹みおよび/または凹部内に移動させるステップと、取外しトラフに配置されたワイヤを把持アームによって把持するステップと、把持されたワイヤと共に把持アームを取外しトラフから移動させるステップと、を備える。
【0012】
これの1つの利点は、取外しトラフからのワイヤの自動的または機械的な把持および除去のために、ワイヤのバッチが製造されたときに、通常、ワイヤ加工機の動作を中断する必要が無いことである。この方法を使用すると、ワイヤは、一般に、技術的に簡素かつ迅速な方法で、取外しトラフから自動的におよび/または機械的に除去されることができる。
【0013】
本発明の実施形態の可能な特徴および利点は、とりわけ、本発明を限定することなく、以下に説明するアイデアおよび発見に基づいていると見なすことができる。
【0014】
取外しトラフの一実施形態によれば、取外しトラフはリブ状の構造を有する。これの利点の1つは、把持アームまたは機械式グリッパの一部が、通常、取外しトラフのいくつかのポイントでワイヤを容易に把持できることである。
【0015】
取外しトラフの一実施形態によれば、取外しトラフは、互いに等距離に側壁の各々に配置された、側壁に多数の窪みおよび/または凹部を有する。これの利点は、通常、把持アームの2つ以上の部分が、取外しトラフの側壁の両側および/またはワイヤの両側にある取外しトラフ内のワイヤを把持できることである。原則として、複数の把持アームがワイヤ、特により長いワイヤを同時に把持することができ、技術的に簡素かつ迅速な方法でワイヤを取外しトラフから除去することも可能である。
【0016】
取外しトラフの一実施形態によれば、取外しトラフ内にワイヤを部分的に置くように設計された取外しトラフの底面は、特に、取外しトラフの底部に面するワイヤの側面を機械的に把持するために等距離間隔で配置された窪みおよび/または凹部を有する。この場合の利点は、把持アームの一部が通常、技術的に簡素な方法でワイヤの一部または領域の下に入ることができるため、ワイヤをさらによく把持かつ保持できることである。
【0017】
取外しトラフの一実施形態によれば、取外しトラフは、深絞りによって製造されている。このようにして、取外しトラフの凹みおよび/または窪みは、技術的に簡素で費用対効果の高い方法で、かつ材料を節約する方法で設計することができる。
【0018】
取外しトラフの一実施形態によれば、取外しトラフは、取外しトラフの長手方向平面に対して対称であり、ワイヤが取外しトラフにある場合、長手方向平面はワイヤの長手方向軸に沿って延在する。結果として、取外しトラフは、取外しトラフの位置合わせに注意を払う必要が無いので、通常、技術的に簡素な方法で設置することができる。さらに、把持アームの部品は、一般に、同じ方法で取外しトラフの2つの反対側の側壁に挿入可能である。ここでも、2つの側壁の設計が対称であるため、通常、把持アームの位置合わせおよび/または把持アームの移動方向を考慮する必要は無い。一般に、これにより、取外しトラフからワイヤを取り外すことがさらに容易になる。
【0019】
取外しトラフの一実施形態によれば、取外しトラフは、複数の取外しトラフ部品、特に、互いに構造的に同一である複数の取外しトラフ部品から構成される。これの利点は、通常、取外しトラフの部品を技術的に簡素な方法で交換できるため、修理を迅速かつ安価に実行できることである。互いに構造的に同一の取外しトラフ部品の場合、取外しトラフの全てのポイントで同じ取外しトラフ構成要素を使用できるので、通常、交換または修理はさらに容易である。
【0020】
取外しトラフの一実施形態によれば、側壁の窪みおよび/または凹部は、側壁がそれぞれ、窪みおよび/または凹部の位置で側面に対して開いているように設計される。これの利点は、把持アームが通常、取外しトラフの側面から技術的に簡素な方法で挿入可能であること、および/または把持アームが、取外しトラフにあるワイヤを2つの対向する側面から技術的に簡素な方法でつかむ、または把持することができることである。
【0021】
取外しトラフの一実施形態によれば、ワイヤの長手方向に沿った側壁の窪みおよび/または凹部は、これらが取外しトラフに配置されている場合、窪みおよび/または凹部の間の所与の側壁の残りのリブよりも狭い幅を有する。これの利点は、ワイヤが通常、取外しトラフに特に強固に保持されることである。
【0022】
ワイヤ加工システムの一実施形態によれば、取外しトラフは、ワイヤが取外しトラフ内に配置された場合、ワイヤの長手方向に沿ってワイヤトレイに対して変位可能であるように設計される。結果として、取外しトラフは、通常、技術的に簡素な方法で、把持アームが特に技術的に簡素な方法で取外しトラフ内のワイヤをつかむことができる位置に移動されることができる。特に、取外しトラフは、通常、ワイヤが取外しトラフから取り外されるときに、ワイヤ加工機のどの部分も把持アームを妨害しない位置に移動されることができる。これは、把持アームの動きがより迅速に実行されることができるので、ワイヤが取外しトラフから機械的にさらに速く取り出し可能になることを意味する。
【0023】
ワイヤ加工システムの一実施形態によれば、ワイヤ加工システムは、ワイヤを把持して保持するための把持アームをさらに備え、側壁の窪みおよび/または凹部ならびに/あるいは底面の窪みおよび/または凹部は、把持アームの一部を受け入れるように設計される。これの利点は、窪みおよび/または凹部は、通常、把持アームに特に正確に適合されるか、または適合可能となり、その結果、ワイヤの除去が、一般に、技術的にさらに簡素に、さらに迅速に実行可能になることである。
【0024】
ワイヤ加工システムの一実施形態によれば、把持アームは2つのジョーを有し、各々が2つの把持フックを備える。これの利点は、ワイヤが通常、把持アームによって特にしっかりと保持されることが可能になることである。
【0025】
この方法の一実施形態によれば、取外しトラフに配置されたワイヤが把持されるとき、把持アームによってワイヤを把持するために互いに向かって移動する把持アームの2つのジョーを除いて、把持アームは移動されない。結果として、ワイヤまたはワイヤのバッチは、通常、把持アームによって特に確実に把持され、および/またはつかまれることが可能になる。
【0026】
本発明の可能な特徴および利点のいくつかは、取外しトラフおよび/またはケーブル加工システムおよび/または方法の種々の実施形態を参照して本明細書に記載されていることに留意されたい。当業者は、本発明のさらなる実施形態に到達するために、特徴部が適切に組み合わされ、適合され、または置き換え可能であることを認識するであろう。
【0027】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して以下に説明されるが、図面も説明も本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による取外しトラフの実施形態を有する、本発明によるワイヤ加工システムの実施形態の斜視図である。
図2図1の取外しトラフの斜視詳細図である。
図3図1の取外しトラフのさらなる斜視詳細図である。
図4】取外しトラフ内のワイヤのバッチ、および把持アームを備えた、図1の取外しトラフの斜視図である。
図5a図4の取外しトラフの斜視図であり、把持アームのジョーは開位置にある。
図5b図4の取外しトラフの斜視図であり、把持アームのジョーは閉位置にあり、ワイヤのバッチを把持している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
これらの図は単なる概略図であり、縮尺通りではない。同様の符号は、様々な図面の同様または同等の特徴部を指す。
【0030】
図1は、本発明による取外しトラフ22の実施形態を有する、本発明によるワイヤ加工システム1の実施形態の斜視図を示す。図2は、図1からの取外しトラフ22の斜視詳細図を示す。図3は、図1からの取外しトラフ22のさらなる斜視詳細図を示す。
【0031】
ワイヤ加工システム1は、ワイヤ加工機5、把持アーム55もしくは機械式グリッパを備えたハンドリングロボット30、および取外しトラフ22を備える。ワイヤ加工機5は、ワイヤ15を圧着接点に接続するための圧着機または圧着プレス8とすることができる。
【0032】
ワイヤ加工機5によって加工されたワイヤ15は、ワイヤトレイ20に到着する。1つまたは複数のワイヤ15は、図2に示す矢印に沿ってワイヤトレイ20を枢動または傾斜させることによって、ワイヤトレイ20からワイヤトレイ20の下方に斜めに配置された取外しトラフ22内に排出または移動される。
【0033】
通常、複数の加工済ワイヤ15は、バッチ、すなわち、特に同様に加工済ワイヤ15の所定の数のアイテムが取外しトラフ22に到達するまで、取外しトラフ22に収集される。次に、ワイヤ15またはワイヤ15のバッチが取り外される。ワイヤ15が取外しトラフ22から取り出される前に、ワイヤ15の複数のバッチが取外しトラフ22上の異なる位置に収集されることも可能である。
【0034】
取外しトラフ22は、2つの対向する側壁34、35を有し、U字形である。底面28は、ワイヤ15またはワイヤ15のバッチを載置または保持するために、側壁34、35の間、すなわち、U字形の中央に形成される。
【0035】
側壁34、35はそれぞれ、多数の窪み90および/または凹みまたは凹部を有する。これは、側壁34、35が複数の場所にギャップを有し、連続していないことを意味する。したがって、側壁34、35は、リブ状の構造を有する。窪み90および/または凹みまたは凹部は、互いに等距離に形成される。窪み90または凹みは、これらが取外しトラフ22に保持されている場合、ワイヤ15に対して垂直に延在する。
【0036】
側壁34、35の窪み90または凹みは、取外しトラフ22内のワイヤ15の長手方向(それらの最大範囲の方向)に平行な幅を有し、その幅は側壁34、35の残りのリブ25、26よりも狭い。
【0037】
把持アーム55または機械式グリッパの一部は、側壁34、35の窪み90および/または凹みに挿入されることができる。把持アーム55または機械式グリッパは、取外しトラフ22に配置されたワイヤ15またはワイヤ15のバッチを把持するように設計される。
【0038】
取外しトラフ22は、ワイヤ15またはワイヤ15のバッチが底面28上の取外しトラフ22内にあるとき、底部に垂直に、ワイヤ15またはワイヤ15のバッチを通る対称面に関して対称に設計される。したがって、側壁34、35のリブ25、26は互いに向かい合って配置され、側壁34、35の窪みまたは凹みは互いに向かい合って配置される。
【0039】
ワイヤ15を運ぶまたは支持する底面28もまた、窪み90および/または凹みを有する。これは、底面28が、窪み90または凹みまたは凹部によって繰り返し中断されることを意味する。したがって、取外しトラフ22内のワイヤ15は、それらの表面全体に亘って、またはそれらの下側全体が取外しトラフ22の底面28上にあるのではなく、取外しトラフ22の底面28の下側に触れるまたは接触するだけである。
【0040】
底面28もリブを伴って設計される。
【0041】
窪み90および/または底面28の凹みは、窪み90および/または凹みが形成されるワイヤ15の長手方向に沿った同じ点に存在することができる。これは、側壁34、35のリブ25、26が同時に形成されるか、または底面28のリブ25、26であることを意味する。
【0042】
図3に明確に見られるように、各リブ25、26は、ワイヤ15の軸線方向に2つの対向する側部に傾斜面31を有し、ワイヤ15が取外しトラフ22内にあるとき、底面28の高さ方向下向きに延在する。ベース面29は、底面28の各リブ25、26の間に形成され、補償面よりも低い高さにある。
【0043】
取外しトラフ22のリブ25/窪み面の中心から取外しトラフ22の直後に続くリブ26の中心への移動は、第1のリブ25の水平に延びる底面28で始まる。以下は、底面28から下向きに延在する傾斜面31である。次に、傾斜面31は、水平に延びるベース面29に繋がり、これは、ワイヤ15が取外しトラフ22内にあるときにワイヤ15の軸線に平行な方向に、リブ25、26の底面28よりも広い。ベース面29は底面28と平行に走っているが、より低い高さに位置している。水平に延びるベース面29の後に、第1のリブ25に直接隣接する第2のリブ26の傾斜面31が来る。第2のリブ26のこの傾斜面31に続いて、高さ位置は、第2のリブ26の底面28で、底面28の高さまで増加する。
【0044】
取外しトラフ22の側壁34、35は、取外しトラフ22の内側に、底面28と同様の設計の傾斜面40を有する。側壁34、35の傾斜面40は、所定のリブ25、26の側壁面、ワイヤ軸(ワイヤ15が取外しトラフ22内にあるときのワイヤ15の長手方向)に平行に延びる前記面から、ワイヤ軸に垂直に延びるリブ25、26の縁面42に繋がる。
【0045】
側壁34、35の内の1つは、その上側面において、他の側壁34、35の上側面とは異なって構成されることができる。図5aに示すように、左側壁34の上側面は、右側壁35の上側面とは異なる設計を有する。
【0046】
左側壁34は、その上側面にいくつかの表面を有し、表面の台形表面は水平に走り、それに隣接する3つの表面はそれぞれ、取外しトラフ22の内側の方向に斜め下向きに延びる。
【0047】
右側壁35の上側面は、リブ25、26の全幅に亘って延びる長方形の表面を有し、これは水平に延びる。さらに、これに隣接して、斜め下向きに延びる取外しトラフ22の内側の方向に単一の傾斜した長方形の表面が形成される。リブ25、26の中心の方向でこの長方形の表面に直接隣接するのは、ワイヤ15の長手方向軸に平行に延びる、側壁34、35の側壁面である。
【0048】
各リブ25、26の底面28は、リブ25、26の所与の側壁34、35の側壁面に連続的に合流する。
【0049】
ベース面29のそれぞれは、側壁34、35の窪み90または凹みに横方向に延在することができる。
【0050】
側壁34、35の窪み90または凹み、および底面28の窪み90または凹みの両方は、把持アーム55の一部を受け入れるように設計される。これは、把持アーム55の一部を窪み90または凹みに挿入できることを意味する。
【0051】
把持アーム55は、ワイヤ加工システム1においてワイヤ15を加工および/または把持、保持、移動、および解放する、ハンドリングロボット30の一部とすることができる。
【0052】
把持アーム55がハンドリングロボット30の一部ではなく、むしろ、ワイヤ15を把持するための閉位置およびワイヤ15を解放するための開位置を有する、手動で移動可能な技術的に簡素な把持アーム55であることも可能である。
【0053】
図4は、図1からの取外しトラフ22の斜視図を示しており、取外しトラフ22内のワイヤ15のバッチ、および把持アーム55を備える。
【0054】
把持アーム55は開位置にある-すなわち、把持アーム55のジョー60、61は、開いているか、または互いに離れて配置されている。把持アーム55および/または把持アーム55のジョー60、61は、取外しトラフ22の上に配置される。ワイヤ加工機5によって加工された複数のワイヤ15またはワイヤ加工機5によって加工されたワイヤ15のバッチは、取外しトラフ22内にある。それらは、複数のリブ25、26および窪み90または凹みまたは凹部によって中断された底面28上にある。
【0055】
把持アーム55の各ジョー60、61は2つの部分に分割されている-すなわち、各ジョー60、61は、2つの把持フック65~68を備える。把持フック65~68間の距離は、リブ25、26の幅に対応し、その結果、各把持フック65~68は、互いに直接隣接する2つのリブ25、26の間の窪み90または凹部に係合する。把持フック65~68が、リブ25、26の幅の倍数に対応する間隔を有することも可能である。
【0056】
図5aは、図4の取外しトラフ22の斜視図を示しており、把持アーム55のジョー60、61は開位置にある。図5bは、図4の取外しトラフ22の斜視図を示しており、把持アーム55のジョー60、61は閉位置にあり、ワイヤ15のバッチを把持している。
【0057】
次に、把持アーム55および/またはジョー60、61および/または把持フック65~68の一部が側壁34、35の窪み90内に移動するように、把持アーム55が下げられる。4つの把持フック65~68のそれぞれは、側壁34、35の窪み90または凹みに移動する。
【0058】
窪み90または凹部の幅は、本質的に、把持フック65~68の幅に対応するか、または把持フック65~68の幅よりも最小限に大きい。
【0059】
側壁34、35は、窪み90または凹みの領域の側面に開いている。これは、把持アーム55および/またはジョー60、61の一部が取外しトラフ22の外側に配置されることができ、同時に把持アーム55の一部が側壁34、35または側壁34、35の窪み90もしくは凹みを貫通して突出していることを意味する。
【0060】
しかしながら、側壁34、35が、窪み90または凹みの領域において側面に開いていない可能性もあり、その結果、把持アーム55またはその一部は、上方から取外しトラフ22内にのみ移動することができる。
【0061】
把持フック65~68および/または把持アーム55のジョー60、61の最下部分は、ベース面29の高さ、またはほぼベース面29の高さとすることができる。図5aでは、把持フック65~68および/または把持アーム55のジョー60、61の下側は、ベース面29上に載るか、および/またはそれに接触することができる。
【0062】
次に、把持アーム55のジョー60、61が閉じられ、および/または把持アーム55が図5aに示す開位置から図5bに示す閉位置に移行される。この場合、把持アーム55全体の位置は変更されない。ジョー60、61、したがって把持フック65~68は互いに向かって移動する。
【0063】
把持フック65~68の下部分は、閉鎖プロセス中に、ベース面29に沿って開位置から閉位置にスライドおよび/または移動し、および/またはそれに平行に移動する。結果として、ジョー60、61または把持フック65~68の一部は、ワイヤ15またはワイヤ15のバッチの下を移動する。
【0064】
閉じた後に、および/または閉位置において、ワイヤ15またはワイヤ15のバッチは、ここで、図5bに示すように、把持アーム55のジョー60、61または把持フック65~68によって、横方向および下方向に(すなわち、把持アーム55のベース面29に向かう方向に)保持されている。
【0065】
これで、把持アーム55または把持アーム55のジョー60、61を上方に、すなわち、底面28またはベース面29から離れるように移動されることができ、このようにして、ワイヤ15またはワイヤ15のバッチが取外しトラフ22から移動される。ワイヤ15は、把持アーム55によって箱に搬送および/または落下されることが可能である。ワイヤ15を把持アーム55からさらなる把持アームに移すことも可能である。
【0066】
ワイヤ15の長手方向に沿った異なる位置に配置された、ワイヤ15の複数のバッチが取外しトラフ22内に存在することも可能である。
【0067】
グリッパはまた、1つのジョー60、61のみを有することができる。
【0068】
各ジョー60、61が把持フック65~68の1つのみを有することも可能である。
【0069】
特に、取外しトラフ22内でより長く加工されたワイヤ15の場合、ワイヤ15またはワイヤ15のバッチが、異なる位置で複数のグリッパによって把持されることも考えられる。結果として、ワイヤ15は、さらに確実に保持され、および/または取外しトラフ22から運び出されることができる。
【0070】
バッチのワイヤ15は、通常、同じ長さを有し、図5bに例として示されるように、ワイヤ軸線の方向の実質的に同じ位置で取外しトラフ22に配置される。
【0071】
取外しトラフ22は、複数の取外しトラフ部品から構成されることができる。取外しトラフ部品は、互いに構造的に同一であり、鏡面対称とすることができるが、その結果、取外しトラフ部品の位置合わせ(例えば、前/後または右/左)は重要ではないものとなる。取外しトラフ部品は、ねじでの固定、ボルトでの接続および/または接着が可能である。
【0072】
複数の取外しトラフ部品で構成される取外しトラフ22の場合、損傷した取外しトラフ部品のみを交換する必要があるため、修理は特に簡単で安価である。
【0073】
取外しトラフ22は、図2に示すようにレール上に配置され、取外しトラフ22内にワイヤ15があるときに、取外しトラフ22の変位方向80に、ワイヤ15の長手方向軸線(長手方向軸線は、その最大延長方向に延びる)の方向に、ワイヤトレイ20に対して変位可能に設計される。変位運動は空気圧で実行可能である。取外しトラフ22をワイヤトレイ20および/またはワイヤ加工機5に対して移動させることにより、取外しトラフ22は、把持アーム55が、特に技術的に簡素かつ迅速な方法で、取外しトラフ22からワイヤ15を取り外すことができる位置にもたらされることができるが、それは、ワイヤトレイ20および/またはワイヤ加工機5の部品が把持アーム55の移動経路内に、または移動経路の近くに無いからである。したがって、把持アーム55の動きは、それほど正確に実行される必要は無く、および/またはその動きは高速で実行可能であるが、それは、把持アーム55の動きが止まった位置でも、把持アーム55および/またはその一部が短い時間さらに少し移動し続けるための、あるいは把持アーム55および/またはその一部が振動するための十分なスペースがあるからである。
【0074】
取外しトラフ22は、例えば、プレスされた板金部品とすることができる。例として、深絞りプラスチックも可能である。窪み90または凹みは、好ましくは、取外しトラフ22の製造または成形中に既に形成されているので、後で再び材料を除去する必要は無い。
【0075】
2つの側壁34、35のそれぞれは、把持アーム55の一部を挿入することができる単一の凹部または凹みまたは窪み90のみを有することも考えられる。
【0076】
把持フック65~68間の距離は、側壁34、35の窪み90および/または凹部の間の距離、ならびに/あるいは底面28の窪み90および/または凹部の間の距離に対応する。
【0077】
最後に、「有する」、「含む」などの用語は、他の要素またはステップを排除するものではなく、「a」または「an」などの用語は、複数の要素またはステップを排除しないことに留意されたい。さらに、上記の実施形態の内の1つを参照して説明された特徴またはステップはまた、上記の他の実施形態の他の特徴またはステップと組み合わせて使用可能であることに留意されたい。特許請求の範囲の符号は、限定的なものと見なされるべきではない。
【符号の説明】
【0078】
1 ワイヤ加工システム
5 ワイヤ加工機
8 圧着プレス
15 ワイヤ
20 ワイヤトレイ
22 取外しトラフ
25、26 リブ
28 底面
29 ベース面
30 ハンドリングロボット
31 底面の傾斜面
34、35 側壁
40 側壁の傾斜面
42 側壁の縁面
45 側壁の側壁面
55 把持アーム
60、61 ジョー
65、66、67、68 把持フック
80 取外しトラフの変位方向/ワイヤの長手方向軸
90 窪み
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b