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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】膨張層を備える電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20231211BHJP
   H01M 50/593 20210101ALI20231211BHJP
   H01M 50/591 20210101ALI20231211BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20231211BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20231211BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20231211BHJP
   C09K 21/14 20060101ALI20231211BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20231211BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H01M50/204 401F
H01M50/593
H01M50/591 101
H01M50/586
H01M50/588
H01M50/249
C09K21/14
C08L101/00
C08L63/00 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021510866
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 US2019048514
(87)【国際公開番号】W WO2020047059
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】62/723,689
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】グルニエ, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】カルサニ, ベンカテシュワルル
(72)【発明者】
【氏名】リー, ホン
(72)【発明者】
【氏名】ペスケンズ, ロニー
(72)【発明者】
【氏名】マンロー, カラム エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】マ, シュアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルリング, スチュアート ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ドーゲンボー, ランディー イー.
(72)【発明者】
【氏名】ムバロック, アリフ
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0301968(US,A1)
【文献】国際公開第2018/062172(WO,A1)
【文献】特開2010-165597(JP,A)
【文献】特開平04-272975(JP,A)
【文献】特開2008-117756(JP,A)
【文献】国際公開第2012/161181(WO,A1)
【文献】特開昭61-81467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 50/50-50/598
H01M 50/40-50/497
H01M 4/00-4/62
H01M 4/64-4/84
C09K 21/00-21/14
C08L 101/00
C08L 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングおよび自己支持フィルムまたはシートから選択される架橋した膨張層を備える電池であって、前記層が、
(a)脂成分であって、ここで、前記樹脂成分(a)が、エポキシ樹脂を含む、樹脂成分と、
(b)化剤であって、ここで前記硬化剤(b)は、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリ(アミンアミド)ポリエーテルアミンおよびそれらの組み合わせから選択され得るポリアミン官能性化合物を含む、硬化剤と、
(c)熱分解時に膨張ガスを提供する化合物と、を含む、硬化性膨張組成物から形成され、
化合物(a)~(c)が、互いに異な
ここで、
-樹脂成分(a)の総量が、前記組成物の総固体重量に基づいて、10~40重量%であり、
-硬化剤(b)の総量が、前記組成物の総固体重量に基づいて、10~30重量%であり、
-熱分解時に膨張ガスを提供する前記化合物(c)の総重量が、前記組成物の総固体重量に基づいて、0.1~25重量%である、
電池。
【請求項2】
熱分解時に膨張ガスを提供する前記化合物(c)が、メラミン、リン酸のアンモニウム塩、グアニジン、メチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、尿素、ジメチル尿素、ピロリン酸メラミン、ジシアンジアミド、グアニル尿素リン酸塩、グリシン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、二水酸化マグネシウム、三水酸化アルミニウム、ホウ酸、およびホウ酸エステルから選択される、請求項1記載の電池。
【請求項3】
リン源、ホウ素源、亜鉛源、酸源、および任意に、炭素源の組み合わせを含む添加剤(d)をさらに含み、それによって、単一の材料が、定義された要素のうちの2つ以上の源であり得る、請求項1~のいずれかに記載の電池。
【請求項4】
-存在する場合、リン源の総量が、前記組成物の総固体重量に基づいて、0.05~20重量%であり、ここで、前記リン源は、リン酸、リン酸モノアンモニウム、リン酸ジアンモニウム、リン酸トリス(2-クロロエチル)、リン含有アミド、ピロリン酸メラミン、またはそれらの組み合わせを含み;
-存在する場合、亜鉛源の総量が、前記組成物の総固体重量に基づいて、0.1~25重量%であり、
-存在する場合、ホウ素源の総量が、前記組成物の総固体重量に基づいて、0.1~10重量%であり、ここで、前記ホウ素源は、五ホウ酸アンモニウム、酸化ホウ素、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸エステル、またはそれらの組み合わせを含み、
-存在する場合、酸源の総量が、前記組成物の総固体重量に基づいて、5~30重量%であり、ここで、前記酸源は、リン酸生成材料、ホウ酸、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~のいずれかに記載の電池。
【請求項5】
ハウジングを画定する外壁要素と、任意に、内壁要素と、をさらに備え、前記架橋した膨張層が、少なくとも部分的に、前記外壁要素のいずれかの外側および/もしくは内側に適用されるか、あるいは、前記内壁要素が存在する場合に、前記架橋した膨張層が、少なくとも部分的に、前記外壁要素のいずれかの外側および/もしくは内側に、かつ/または前記内壁要素のいずれかの任意の側面に適用される、請求項1~のいずれかに記載の電池。
【請求項6】
前記電池が、リチウムイオン電池である、請求項1~のいずれかに記載の電池。
【請求項7】
電池を備える物品であって、請求項1~のいずれかに記載の架橋した膨張層が、前記電池と前記物品との間の前記電池に隣接する前記物品の一部に適用される、物品。
【請求項8】
前記物品が、リチウムイオン電池および乗客キャビンを備える車両であり、前記架橋した膨張層が、前記電池と前記車両本体との間の前記電池に隣接する前記車両の床の少なくとも一部に適用される、請求項に記載の物品。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載の硬化性膨張組成物の使用であって、前記電池の任意の部分に適用されるときに電池に対する防火を提供するため、かつ/もしくは電池の熱暴走を低減もしくは防止するため、または前記電池と前記物品との間の前記電池に隣接する前記物品の一部に適用されるときに電池を備える物品に対する防火を提供するための、使用。
【請求項10】
-請求項1~のいずれかに記載の硬化性膨張組成物を前記電池の任意の部分に適用して、その上にコーティングを形成し、かつ前記コーティングを硬化してその上に架橋した膨張コーティングを得ること、あるいは
-請求項1~のいずれかに記載の硬化性膨張組成物を膨張自己支持フィルムまたはシートに形成し、前記架橋した膨張自己支持フィルムまたはシートを電池に適用し、かつ電池への前記適用の前または後に前記膨張自己支持フィルムまたはシートを硬化させること、によって、電池への防火を提供する、または電池の熱暴走を低減もしくは防止する方法。
【請求項11】
-請求項1~のいずれかに記載の硬化性膨張組成物を前記電池と前記物品との間の前記電池に隣接する前記物品の一部に適用して、その上にコーティングを形成し、かつ前記コーティングを硬化してその上に架橋した膨張コーティングを得ること、あるいは
-請求項1~のいずれかに記載の硬化性膨張組成物を膨張自己支持フィルムまたはシートに形成し、前記膨張自己支持フィルムまたはシートを前記電池と前記物品との間の前記電池に隣接する前記物品の一部に適用し、かつ前記物品の前記一部への前記適用の前または後に前記膨張自己支持フィルムまたはシートを硬化させること、によって、電池を備える物品に対する防火を提供する方法。
【請求項12】
前記物品が、リチウムイオン電池および乗客キャビンを備える車両であり、前記架橋した膨張コーティングが、電池火災から前記車両の前記乗客キャビンを保護するように位置付けられる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性膨張組成物から堆積される架橋した膨張層を備える電池に関し、かつ電池および/または電池を備える物品、特にリチウムイオン電池を備える車両に対する防火を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、長い間モバイル電源として使用されてきた。特に、リチウムイオン電池の開発は、電力密度の増加につながっている。その結果、リチウムイオン電池の使用は、家電製品、特に携帯電話、タブレットおよびラップトップコンピュータ、医療機器、産業機器、特にハイブリッド/電気自動車を含む、種々の用途で広く普及している。
【0003】
しかしながら、多くの電池、特にリチウムイオン電池は、電池から急速に熱およびガスが排出され、火災の危険が生じる熱暴走に弱い。電池、特にリチウムイオン電池は、電池、特にリチウムイオン電池に関連する火災の危険を増大させる可燃性有機溶媒を含有する電解質組成物を含み得る。さらに、上記の例示の用途で使用される電池は、主に、複数の個々の電池セルを備える電池パックである。車、バス、およびトラックのようなハイブリッドまたは電気自動車用のリチウムイオン電池は、何千もの個々の電池セルを含有し得る。熱暴走は、製造上の欠陥、熱の蓄積、内部短絡、または外部衝撃もしくは外傷によって引き起こされる場合がある。1つの電池セルにおける熱暴走は、隣接する電池セルに影響を与えて制御不能な連鎖反応につながる場合があり、その結果、電池パック全体が発火する場合があり、それらの電池を備える車両の場合、車両全体に広がり、運転者および乗客を危険にさらす場合がある。
【0004】
電池パックの熱暴走に起因する携帯電話または電気自動車の発火を伴う最近の事態は、電池、電池セル、ならびに携帯電話、タブレットまたはラップトップコンピュータ、およびハイブリッドまたは電気自動車などの該電池を備える装置に対する、かつそれらの使用者に対するより良好な防火を提供する必要があることを明らかにする。
【0005】
したがって、電池セルまたは電池全体の熱暴走の場合に、火災の拡散が長期間防止または少なくとも抑制される電池を提供することが本発明の目的である。
【0006】
電池を備える物品およびその使用者を、電池の熱暴走に関連する火災の危険から保護することが本発明のさらなる目的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらおよび他の目的は、コーティングおよび自己支持フィルムまたはシートから選択される架橋した膨張層を備える電池によって達成され、層は、
(a)複数の官能基を有する1つ以上のオリゴマーまたはポリマー化合物を含む樹脂成分と、
(b)任意選択的に、樹脂成分(a)のオリゴマーまたはポリマー化合物の官能基と反応性である複数の官能基を有する硬化剤と、
(c)熱分解時に膨張ガスを提供する化合物と、を含む、硬化性膨張組成物から形成され、化合物(a)~(c)は、互いに異なる。
【0008】
本発明はさらに、電池を備える物品であって、本発明による架橋した膨張層が、電池と物品との間の電池に隣接する物品の一部に適用される、物品に関する。特に、物品は、リチウムイオン電池および乗客キャビンを備える車両であり得、架橋した膨張層は、電池と車両本体との間の電池に隣接する車両の床の少なくとも一部に適用される。
【0009】
さらなる態様によれば、本発明は、電池の任意の部分に適用されるときに電池に対する防火を提供するため、かつ/または電池の熱暴走を低減もしくは防止するために、本発明に従って定義される硬化性膨張組成物の使用を対象とする。
【0010】
なおさらなる態様によれば、本発明は、電池と物品との間の電池に隣接する物品の一部に適用されるときに、電池を備える物品に対する防火を提供するために、本発明に従って定義される硬化性膨張組成物の使用を対象とする。特に、物品は、リチウムイオン電池および乗客キャビンを備える車両であり得、硬化性膨張組成物を使用して、車両の乗客キャビンを電池火災から保護する。
【0011】
なおさらなる態様によれば、本発明は、本発明に従って定義される硬化性膨張組成物を電池の任意の部分に適用して、その上にコーティングを形成し、かつコーティングを硬化して、その上に架橋した膨張コーティングを得ることによって、電池への防火を提供する、または電池の熱暴走を低減もしくは防止する方法を対象とする。
【0012】
なおさらなる態様によれば、本発明は、本発明に従って定義される硬化性膨張組成物を膨張自己支持フィルムまたはシートに形成し、膨張自己支持フィルムまたはシートを電池に適用し、かつ電池への適用の前または後に膨張自己支持フィルムまたはシートを硬化させることによって、電池に対する防火を提供する、または電池の熱暴走を低減もしくは防止する方法を対象とする。
【0013】
なおさらなる態様によれば、本発明は、本発明に従って定義される硬化性膨張組成物を電池と物品との間の電池に隣接する物品の一部に適用して、その上にコーティングを形成し、かつコーティングを硬化してその上に架橋した膨張コーティングを得ることによって、電池を備える物品に対する防火を提供する方法を対象とする。特に、物品は、リチウムイオン電池および乗客キャビンを備える車両であり得、架橋した膨張コーティングは、車両の乗客キャビンを電池火災から保護するように位置付けられる。
【0014】
なおさらなる態様によれば、本発明は、本発明に従って定義される硬化性膨張組成物を膨張自己支持フィルムまたはシートに形成し、膨張自己支持フィルムまたはシートを電池と物品との間の電池に隣接する物品の一部に適用し、かつ物品の一部への適用の前または後に膨張自己支持フィルムまたはシートを硬化させることによって、電池を備える物品に対する防火を提供する方法を対象とする。特に、物品は、リチウムイオン電池および乗客キャビンを備える車両であり得、架橋した膨張自己支持フィルムまたはシートは、車両の乗客キャビンを電池火災から保護するように位置付けられる。
【0015】
本発明によれば、電池は、リチウムイオン電池であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による5mm厚の試料についての温度性能をグラフで示す図である。
図2】本発明による1mm、2mm、および5mm厚の試料についての温度性能をグラフで示す図である。
図3】本発明による5mm厚の試料についての温度性能をグラフで示す図である。
図4】本発明による0.18mm厚の試料についての温度性能をグラフで示す図である。
図5】本発明による1mm、2mm、および6mm厚の試料についての温度性能をグラフで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
任意の動作例以外、または別途示される場合、本明細書および特許請求の範囲で使用される構成成分、反応条件などの量を表すすべての数は、すべての例において「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、相反することが示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、かつ、等価物の見解の適用を特許請求の範囲に限定しようとするものではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有意な桁の数に照らし合わせて、かつ通常の四捨五入技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0018】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータは、近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数値も、それらのそれぞれの試験測定値に見出される標準偏差から必然的に生じる、特定の誤差を本質的に含有する。
【0019】
また、本明細書に列挙されるいずれの数値範囲も、その中に包含されるすべてのサブ範囲を含むことが意図されていることが理解されるべきである。例えば、「1~10」の範囲は、列挙された最小値1から列挙された最大値10の間(列挙された値を含む)、すなわち、1以上の最小値かつ10以下の最大値を有する、すべてのサブ範囲を含むことが意図される。
【0020】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用するとき、冠詞「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「1つ」のポリマー、「1つ」の硬化剤、「1つ」の炭素源、「1つ」の発泡剤、「1つ」の酸源、「1つ」の強化繊維、「1つ」の無機添加剤、「1つ」のコーティング組成物などを参照するが、これらの成分のうちの1つ以上を使用することができる。
【0021】
本明細書における「ヒドロカルビル」という用語は、炭素原子および水素原子を含む基を指し、炭素原子と直接結合した水素原子のうちの1つ以上は、-OH、-SHなどのような他の基によって置き換えられ得るか、または置換され得る。
【0022】
本明細書における「長鎖炭化水素置換基」という用語は、少なくとも6個の炭素原子を有するヒドロカルビルを指す。
【0023】
特許請求の範囲および本明細書全体を通して本明細書で使用される「電池」という用語は、個々の電池セルおよび複数の電池セルを備える電池パックを指す。
【0024】
本発明による電池は、コーティングおよび自己支持フィルムまたはシートから選択される層であって、
(a)複数の官能基を有する1つ以上のオリゴマーまたはポリマー化合物を含む樹脂成分と、
(b)任意選択的に、樹脂成分(a)のオリゴマーまたはポリマー化合物の官能基と反応性である複数の官能基を有する硬化剤と、
(c)熱分解時に膨張ガスを提供する化合物と、を含む硬化性膨張組成物から形成され、化合物(a)~(c)が、互いに異なる、層を備える。
【0025】
樹脂成分(a)
本発明で使用される複数の官能基を保有するオリゴマーまたはポリマー化合物は、特に限定されず、それには、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリビニル、フェノール樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、ポリイミド、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、およびシアネート樹脂が含まれるがこれらに限定されない。これらの樹脂の中では、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、および/またはポリウレタン樹脂が特に好適である。
【0026】
樹脂成分(a)の官能基は、ケトン、ヒドラジド、カルボジイミド、オキサゾリン、エポキシ、アミン、ビニル、アミド、カルバメート、尿素、メルカプタン、カルボン酸、(メタ)アクリロイル、イソシアネート、アルコキシシリル、無水物、ヒドロキシル、アルコキシ基、互いと反応することが可能である官能基、およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0027】
互いと反応することが可能である好適な官能基は、N-メチロールアミド基、シリコン結合加水分解性または縮合性基、例えば、クロロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アセトキシ、および/またはケトキシモ基を有するシラン基、例えば、空気酸素によって酸化乾燥することが可能であるエチレン系不飽和脂肪酸基、アゾメチン基、アゼチジン基、熱可逆性Diels-Alder反応が可能である基、例えば、フラン/マレイミドから選択され得る。樹脂成分(a)が互いと反応することが可能である官能基を含有する場合、それは、自己架橋と見なされ、硬化剤(b)の存在は、本発明の架橋した膨張層を形成する硬化性膨張組成物を提供するために必要ではない。
【0028】
樹脂成分(a)は、互いと反応することが可能である官能基と、硬化剤(b)の官能基と反応性である官能基との組み合わせも含有し得る。そのような場合、硬化剤(b)は、互いと反応することが可能である官能基間の架橋に加えて、硬化時に他の官能基と硬化剤(b)との間の架橋も提供するために追加的に存在し得る。しかしながら、樹脂成分(a)が互いと反応することが可能である官能基を有しない場合、硬化剤(b)の存在は、必須である。
【0029】
樹脂成分(a)に好適なエポキシ樹脂は、少なくとも1つのポリエポキシドを含む。ポリエポキシドは、少なくとも2つの1,2-エポキシ基を有する。通常、ポリエポキシドのエポキシ当量は、80~6000、典型的には100~700の範囲である。エポキシ化合物は、飽和または不飽和、環状、脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環式であり得る。それらは、ハロゲン、ヒドロキシ、およびエーテル基などの置換基(複数可)を含み得る。
【0030】
ポリエポキシドの例は、1つを超える、または通常は約2つの1,2-エポキシ当量を有するもの、つまり、1分子当たり平均2つのエポキシ基を有するポリエポキシドである。最も一般的に使用されるポリエポキシドは、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、レゾルシノール、ヒドロキノン、ベンゼンジメトル(benzenedimethol)、フロログルシノール、ビスフェノールF、およびカテコールなどのポリフェノールのポリグリシジルエーテル、または1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)エタン、2-メチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルシクロヘキシル)プロパン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、および1,2-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンなどの脂環式ポリオールなどのポリオールのポリグリシジルエーテルである。脂肪族ポリオールの例には、特に、トリヒドロキシメチルペンタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、スリメチロールプロパン、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールF、またはポリエーテルグリコール、例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、およびネオペンタンジオールが含まれる。
【0031】
特定の好適なポリエポキシドは、300g/当量未満のエポキシ当量を有する。実施例は、Hexion Inc.から市販されているEPON 828を含む。
【0032】
好適なエポキシ樹脂の別の基には、エピクロロヒドリンなどのエポキシ化合物と、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、または二量体化リノール酸などの脂肪族または芳香族ポリカルボン酸との反応によって形成されるポリカルボン酸のポリグリシジルエーテルが含まれる。
【0033】
本発明に従って使用することができる他の好適なエポキシ樹脂は、エポキシ脂環式エーテルおよびエステルなどのエポキシ化オレフィン系不飽和脂環式材料、オキシアルキレン基を含有するエポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂を含み、これは、エピハロヒドリンを、アルデヒドとエポキシフェノールノボラック樹脂またはエポキシクレゾールノボラック樹脂などの一価または多価フェノールとの縮合生成物と反応させることによって調製される。
【0034】
さらに、本発明に従って、本発明の膨張組成物のポリエポキシ官能性化合物として可撓性ポリエポキシド樹脂(a)を用いることが有利であり得る。これらの樹脂は、少量の分岐が許容されるが、概して、実質的に直鎖状材料である。好適な材料の例は、エポキシ化大豆油、BASF SE,Ludwigshafen Germanyから市販されているEMPOL 1010樹脂などの二量体酸系材料、ならびにビスフェノールAのポリグリシジルエーテルおよび酸官能性ポリブタジエンから調製された生成物などのゴム改質ポリエポキシド樹脂である。
【0035】
本発明に従って使用するための可撓性ポリエポキシドの他の好適な例には、可撓性酸官能性ポリエステルおよびポリエポキシドから調製されるエポキシ官能性付加物が含まれる。
【0036】
ASTM974-87によって判定される場合、酸官能性ポリエステルは、概して、少なくとも10mgKOH/g、概して約140~約350mgKOH/g、および好適には約180~約260mgKOH/gの酸値を有する。
【0037】
直鎖状ポリエステルは、本明細書で使用するための分岐状ポリエステルよりも好適である。酸官能性ポリエステルは、有機ポリカルボン酸またはその無水物を有機ポリオールでポリエステル化することによって調製することができる。通常、ポリカルボン酸およびポリオールは、脂肪族または芳香族二塩基酸およびジオールである。
【0038】
ポリエステルを作製するのに通常用いられるジオールには、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコール、および水素化ビスフェノールA、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、カプロラクトンジオールなどの他のジオール、例えば、イプシロン-カプロラクトンとエチレングリコールとの反応生成物、ヒドロキシアルキル化ビスフェノール、ポリエーテルグリコール、例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコールなどが含まれる。ジオールがより好適であるが、より高い官能性のポリオールも使用することができる。例には、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、グリセロール、イソソルビド、テトラメチルシクロブタンジオールなど、およびより低い分子量のポリオールをオキシアルキル化することによって産生されるものなどのより高い分子量のポリオールが含まれる。
【0039】
ポリエステルの酸成分は、1分子当たり2~36個の炭素原子を有する単量体ジカルボン酸または無水物を含む。有用な酸の中には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタル酸、クロレン酸、テトラクロロフタル酸、テトラブロモフタル酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ロジン酸、ジフェノール酸、没食子酸、および様々なタイプの他のジカルボン酸、例えば、不飽和C18脂肪酸のDiels-Alder付加物がある。
【0040】
ポリエステルは、安息香酸、ステアリン酸、酢酸、ヒドロキシステアリン酸、およびオレイン酸などの少量の単塩基性酸を含み得る。また、トリメリット酸などのより高いポリカルボン酸が用いられてもよい。酸が上で言及される場合、酸の代わりに無水物を形成するそれらの酸の無水物を使用することができることを理解されたい。また、ジメチルグルタレートおよびジメチルテレフタレートなどの酸の低級アルキルエステルも使用することができる。
【0041】
本発明によれば、エポキシ官能性付加物を作製するために使用されるポリエステルは、ポリカルボン酸を含むポリカルボン酸成分または7~16個の炭素原子を有する酸の混合物、およびジエチレングリコールの一部を含むポリオール成分から調製され得る。
【0042】
可撓性酸官能性ポリエステルおよびポリエポキシドのエポキシ官能性付加物を調製するために使用されるポリエポキシドは、本発明によるポリエポキシド官能性成分について上で定義されるものから選択することができる。
【0043】
他の好適なポリエポキシ官能性化合物は、エポキシ官能性アクリル樹脂である。そのような樹脂は、(メタ)アクリルモノマーのフリーラジカル付加重合によって、任意選択的に、ビニルモノマーまたは少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む他のモノマーと組み合わせて調製することができ、モノマー組成物は、1つの炭素-炭素二重結合を有する少なくとも1つのエポキシ官能性化合物を含む。
【0044】
好適なエポキシ官能性エチレン系不飽和モノマーは、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンオキシド、リモネンオキシド、2-エチルグリシジルアクリレート、2-エチルグリシジルメタクリレート、2-(n-プロピル)グリシジルアクリレート、2-(n-プロピル)グリシジルメタクリレート、2-(n-ブチル)グリシジルアクリレート、2-(n-ブチル)グリシジルメタクリレート、グリシジルメチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、(3’,4’-エポキシヘプチル)-2-エチルアクリレート、(3’,4’-エポキシヘプチル)-2-エチルメタクリレート、(6’,7’-エポキシヘプチル)アクリレート、(6’,7’-エポキシヘプチル)メタクリレート、アリル-3,4-エポキシヘプチルエーテル、6,7-エポキシヘプチルアリルエーテル、ビニル-3,4-エポキシヘプチルエーテル、3,4-エポキシヘプチルビニルエーテル、6,7-エポキシヘプチルビニルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、3-ビニルシクロヘキセンオキシド、アルファ-メチルグリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせから選択され得る。グリシジル(メタ)アクリレートは、特に好適である。
【0045】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に好適な追加のモノマーは、
-エチレン系不飽和ニトリル化合物、
-ビニル芳香族モノマー、
-エチレン系不飽和酸のアルキルエステル、
-エチレン系不飽和酸のヒドロキシアルキルエステル、
-エチレン系不飽和酸のアミド、
-エチレン系不飽和酸、
-エチレン系不飽和スルホン酸モノマーおよび/またはエチレン系不飽和リン含有酸モノマー、
-ビニルカルボキシレート、
-共役ジエン、
-少なくとも2つのエチレン系不飽和基を有するモノマー、および
-それらの組み合わせ、から選択することができる。
【0046】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に使用することができるエチレン系不飽和ニトリルモノマーの例には、アセチルまたは追加のニトリル基のいずれかにより置換され得る直鎖状または分岐状配置で2~4個の炭素原子を含有する重合性不飽和脂肪族ニトリルモノマーが含まれる。そのようなニトリルモノマーには、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルファ-シアノエチルアクリロニトリル、フマロニトリル、およびそれらの組み合わせが含まれ、アクリロニトリルが特に好適である。
【0047】
ビニル芳香族モノマーの代表例には、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、およびビニルトルエンが含まれる。好適には、ビニル芳香族モノマーは、スチレン、アルファ-メチルスチレン、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0048】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に使用することができる(メタ)アクリル酸のエステルには、n-アルキルエステル、アクリルのイソアルキルエステルもしくはtert-アルキルエステル、またはアルキル基が1~20個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸、メタクリル酸と、バーサチック酸、ネオデカン酸またはピバリン酸、ならびにヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーなどのネオ酸のグリシジルエステルとの反応生成物が含まれる。
【0049】
一般に、(メタ)アクリル酸の好適なアルキルエステルは、C~C20アルキル(メタ)アクリレート、好適にはC~C10アルキル(メタ)アクリレートから選択され得る。そのようなアクリレートモノマーの例には、n-ブチルアクリレート、二級ブチルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、およびセチルメタクリレートが含まれる。それは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせから(メタ)アクリル酸のエステルを選択するのに特に好適である。
【0050】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に使用することができるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーには、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、および高級アルキレンオキシド、またはそれらの混合物に基づくヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレートモノマーが含まれる。例には、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、およびヒドロキシブチルアクリレートが含まれる。好適には、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートから選択される。
【0051】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に使用することができるエチレン系不飽和酸のアミドには、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびジアセトンアクリルアミドが含まれる。特に好適なアミドモノマーは、(メタ)アクリルアミドである。
【0052】
エポキシ官能性アクリル樹脂を調製するために使用することができるビニルエステルモノマーには、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニル-2-エチルヘキサノエート、ステアリン酸ビニル、およびバーサチック酸のビニルエステルが含まれる。特に好適なビニルエステルは、酢酸ビニルである。
【0053】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に好適なエチレン系不飽和カルボン酸モノマーには、モノカルボン酸およびジカルボン酸のモノマー、ならびにジカルボン酸のモノエステルが含まれる。本発明を実施すると、特に、3~5個の炭素原子を含有するエチレン系不飽和脂肪族モノカルボン酸もしくはジカルボン酸または無水物を使用するのに好適である。モノカルボン酸モノマーの例には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸が含まれ、ジカルボン酸モノマーの例には、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、および無水マレイン酸が含まれる。他の好適なエチレン系不飽和酸の例には、ビニル酢酸、ビニル乳酸、ビニルスルホン酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、およびそれらの塩が含まれる。好適には、エチレン系不飽和カルボン酸モノマーは、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0054】
エポキシ官能性アクリル樹脂の調製に好適な共役ジエンモノマーには、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、3,7-ジメチル-1,3,6-オクタトリエン、2-メチル-6-メチレン-1,7-オクタジエン、7-メチル-3-メチレン-1,6-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-アミル-1,3-ブタジエン、3,7-ジメチル-1,3,7-オクタジエン、3,7-ジメチル-1,3,6-オクタトリエン、3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン、7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン、2,6-ジメチル-2,4,6-オクタトリエン、2-フェニル-1,3-ブタジエンおよび2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、ならびに1,3-シクロヘキサジエンから選択される共役ジエンモノマーが含まれる。1,3-ブタジエン、イソプレン、およびそれらの組み合わせは、特に好適な共役ジエンである。
【0055】
上で開示されるものから選択され得る樹脂成分(a)中の3つ以上または4つ以上の異なるポリエポキシ官能性化合物などの2つ以上の組み合わせを使用することも可能である。
【0056】
本発明による好適なポリエポキシ官能性化合物は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、エポキシフェノールノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、エポキシ官能性(ポリ)シロキサン、エポキシ官能性ポリシルフィド(polysilfide)、酸官能性ポリエステルのエポキシ官能性付加物、およびポリエポキシド、例えば、上で説明されるものから選択され得る。
【0057】
本発明で使用されるアクリル樹脂には、任意選択的に、1つ以上の他の重合性エチレン系不飽和モノマーと一緒のアクリル酸またはメタクリル酸の1つ以上のアルキルエステルのコポリマーが含まれる。アクリル酸またはメタクリル酸の有用なアルキルエステルには、アルキル基中に1~30個、および4~18個などの炭素原子を含有する脂肪族アルキルエステルが含まれる。非限定的な例には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、および2-エチルヘキシルアクリレートが含まれる。好適な他の共重合性エチレン系不飽和モノマーには、スチレンおよびビニルトルエンなどのビニル芳香族化合物、アクリロニトリルおよび4-メタクリロニトリルなどのニトリル、塩化ビニルおよびフッ化ビニリデンなどのビニルおよびハロゲン化物、ならびに酢酸ビニルなどのビニルエステルが含まれる。
【0058】
アクリルコポリマーは、ヒドロキシル官能基を含むことができ、これは、コポリマーを産生するために使用される反応物中に1つ以上のヒドロキシル官能性モノマーを含むことによって、しばしばポリマーに組み込まれる。有用なヒドロキシル官能性モノマーには、典型的には、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、カプロラクトンおよびヒドロキシアルキルアクリレートのヒドロキシ官能性付加物、ならびに対応するメタクリレート、ならびに以下に記載されるベータ-ヒドロキシエステル官能性モノマーなどのヒドロキシアルキル基に2~4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキルアクリレートおよびメタクリレートが含まれる。アクリルポリマーは、N-(アルコキシメチル)アクリルアミドおよびN-(アルコキシメチル)メタクリルアミドで調製することもできる。
【0059】
ベータ-ヒドロキシエステル官能性モノマーは、5~20個の炭素原子を有するエチレン系不飽和エポキシ官能性モノマーおよびカルボン酸から、またはエチレン系不飽和酸官能性モノマーと重合可能ではない少なくとも5個の炭素原子を含有するエチレン系不飽和酸官能性モノマーおよびエポキシ化合物から調製することができる。
【0060】
本発明で使用されるポリマーは、ポリウレタンでもあり得る。使用することができるポリウレタンの中には、OH/NCO当量比が1:1を超え、その結果遊離ヒドロキシル基が生成物中に存在するように、上で言及されるものなどのポリエステルポリオールまたはアクリルポリオールをポリイソシアネートと反応させることによって調製されるポリマーポリオールがある。
【0061】
活性水素含有カチオン性ポリマーを形成するのに好適なポリウレタンポリマーの追加の例には、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエーテルポリアミンをポリイソシアネートと反応させることによって調製されるポリウレタン、ポリ尿素、およびポリ(ウレタン-ウレア)ポリマーが含まれる。そのようなポリウレタンポリマーは、米国特許第6,248,225号に記載されている。
【0062】
本発明によれば、樹脂成分(a)についても、例えば、米国特許第5,108,832号明細書または同第5,070,119号明細書に開示されるように、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂、またはエポキシ樹脂およびポリウレタン樹脂の組み合わせを含む、異なる化学作用の複数の官能基を保有する複数のオリゴマーまたはポリマー化合物を使用することができる。
【0063】
樹脂成分(a)がエポキシ樹脂を含み、ポリアミンおよび/またはポリチオール官能性化合物が硬化剤として使用される場合、以下に考察されるように、樹脂成分(a)は、
(i)(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル、
(ii)化合物(i)とは異なる(メタ)アクリレート官能性化合物、またはそれらの組み合わせ、をさらに含み得る。
【0064】
(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステルは、ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸との反応から生じる(メタ)アクリルエステル基の複数のベータ-ヒドロキシエステルを含み得る。ポリエポキシドは、1:0.1~1:1.2、好適には1:0.5~1:1.2、より好適には1:1~1:1.05のエポキシ-カルボン酸当量比で、(メタ)アクリル酸と反応させることができる。
【0065】
ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸との反応生成物に使用することができるポリエポキシドは、本発明の膨張組成物の成分(a)に関して上で開示されるポリエポキシドから選択することができる。本発明による膨張組成物の(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(成分(b))を作製するために使用することができる特に好適なエポキシドは、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、エポキシフェニルノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、エポキシ官能性アクリル樹脂、エポキシ官能性ポリエステル、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0066】
(メタ)アクリル酸の特に好適なベータ-ヒドロキシエステルは、EPIKOTE 828(ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応生成物)と、AllnexからEBECRYL 3720)として市販されているアクリル酸との反応生成物である。
【0067】
(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(i)に加えて、または代替的に、化合物(i)とは異なる(メタ)アクリレート官能性化合物(ii)が、樹脂成分(a)中に存在し得る。これにより、本発明の膨張組成物の粘度は、好適に調整することができる。したがって、任意選択的な成分(ii)が、本発明の膨張組成物中の反応性希釈剤として機能すると考えられる。本発明の膨張組成物の任意選択的な(メタ)アクリレート官能性成分(ii)は、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、パラキシレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリエーテルグリコール、例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、およびそれらの組み合わせのポリ(メタ)アクリレートから選択され得る。
【0068】
本発明者らは、(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(i)および/またはそれとは異なる(メタ)アクリレート官能性化合物(ii)の添加が、組成物の硬化速度をかなり増加させることを発見した。
【0069】
理論に束縛されることなく、硬化速度のこの増加は、(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(i)のアクリル基またはそれとは異なる(メタ)アクリレート官能性化合物(ii)と、ポリアミンおよび/またはポリチオール官能性化合物との間のマイケル付加反応に起因すると考えられる。
【0070】
本発明の膨張組成物において、エポキシ樹脂は、20~95重量%、好適には、40~95重量%の量で存在し得、かつ(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(i)は、5~80重量%、好適には、5~60重量%の量で存在し得、それによって、重量パーセンテージは、エポキシ樹脂および(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(i)(複数可)の総重量に基づいている。
【0071】
さらに、本発明の膨張組成物において、エポキシ樹脂(a)は、25~95重量%、好適には、40~95重量%の量で存在し得、(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(i)は、5~75重量%、好適には、5~60重量%の量で存在し得、かつ化合物(i)とは異なる(メタ)アクリレート官能性化合物(ii)は、0~50重量%、好適には、5~30重量%の量で存在し得、重量パーセンテージは、化合物(a)、(i)、および(ii)の総重量に基づいている。
【0072】
本発明の膨張組成物において、樹脂成分(a)の量は、膨張組成物の総固体重量に基づいて、10~40重量%、例えば、15~38重量%、22~36重量%、または23~30重量%であり得る。代替的に、本発明の組成物中のポリマーの量は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19重量%~30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40重量%であり得る。上記の範囲のエンドポイントを任意に組み合わせて、本発明の膨張組成物中のポリマーの量を定義することができる。
【0073】
硬化剤(b)
本発明による硬化性膨張組成物で使用される硬化剤には、樹脂成分(a)のオリゴマーまたはポリマー化合物の官能基と反応して、それを硬化させることができる限り、特に制限はない。好適な硬化剤には、ポリアミン、例えば、ポリエーテルアミン、ポリアミド、ポリエポキシド、アミノプラスト樹脂、フェノール樹脂、ポリイソシアネート、ポリチオール、およびポリオールなどが含まれる。硬化は、周囲温度または熱の適用時のいずれかで行うことができる。
【0074】
硬化剤は、潜在性またはブロック硬化剤でもあり得、樹脂成分(a)の官能基と反応性である実際の官能基は、高温などの硬化条件下でのデブロッキング反応で生成または復元される。該タイプの好適な硬化剤は、例えば、ブロックポリイソシアネートである。したがって、本明細書で使用される場合、ポリイソシアネートという用語は、ブロックポリイソシアネートおよび遊離ポリイソシアネートを包含する。潜在性またはブロック硬化剤は、特に、適用および硬化の前に十分な貯蔵安定性およびポット寿命を確保するための単一成分組成物を提供するのに好適である。
【0075】
ポリアミン硬化剤は、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミンアミド、ポリエーテルアミン、例えば、Huntsman Cooperation,The Woodlands,Texasから市販されているもの、ポリシロキサンアミン、ポリスルフィドアミン、またはそれらの組み合わせから選択することができる。例には、ジエチレントリアミン、3,3-アミノ-ビス-プロピルアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m-キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3-ビス(アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、N-アミノエチルピペラジン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタンおよびジアミノジフェニルスルホン、ならびにポリアミンと脂肪酸との反応生成物が含まれ、例えば、BASFによって商標VERSAMIDで販売されている一連の材料を使用することができ、後者は特に好適である。
【0076】
加えて、任意の上記のポリアミンの付加物も使用することができる。ポリアミンの付加物は、ポリアミンをエポキシ樹脂などの好適な反応性化合物と反応させることによって形成される。この反応は、硬化剤中の遊離アミンの含有量を減少させ、それを低温および/または高湿度環境でより有用にする。
【0077】
硬化剤として、限定されないが、Jeffamine D-230、Jeffamine D-400、Jeffamine 600、Jeffamine 1000、Jeffamine 2005、およびJeffamine 2070などを含む、Huntsman Corp.から入手可能な様々なJeffamineなどの様々なポリエーテルアミンも使用することができる。
【0078】
硬化剤として、様々なポリアミドも使用することができる。概して、ポリアミドは、二量体脂肪酸とポリエチレンアミンとの反応生成物、および少量のモノマー脂肪酸を含有する。二量体脂肪酸は、モノマー脂肪酸のオリゴマー化によって調製される。ポリエチレンアミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミンなどのような任意の高級ポリエチレンアミンであり得、最も一般的に使用されるのは、ジエチレントリアミンである。硬化剤としてポリアミドを使用するとき、それは、層を耐食性と防水性との優れたバランスを有するようにすることができる。さらに、ポリアミドは、層を優れた柔軟性、適切な硬化速度、および他の有利な要因を有するようにすることもできる。
【0079】
ポリチオール化合物は、ポリスルフィドチオール、ポリエーテルチオール、ポリエステルチオール、ペンタエリスリトール系チオール、またはそれらの組み合わせから選択され得る。特に好適なポリチオール化合物は、Akzo Nobel Functional Chemicals GmbH&Co KG,Greiz,Germanyから市販されているThioplast(著作権)G4である。
【0080】
上で言及されるように、樹脂成分(a)がエポキシ樹脂、ポリアミンを含む場合、ポリチオール化合物またはそれらの組み合わせは、硬化剤(b)として使用され得る。
【0081】
本発明の膨張組成物において、成分(a)中のエポキシ基および(メタ)アクリレート基などの組み合わせた官能基と、成分(b)中の官能基との等価比は、2:1~1:2、好適には、1.05:1.0~1:2、特に好適には、1:1.4~1:2であり得る。
【0082】
本発明の膨張組成物において、硬化剤(b)の量は、典型的には、膨張組成物の総固体重量に基づいて、10~30重量%、例えば、15~20重量%、16~19重量%、または17~19重量%である。代替的に、本発明の組成物中の硬化剤の量は、10、11、12、13、14、または15重量%~18、19、20、21、22、23、24、または25重量%であり得る。上記の範囲のエンドポイントを任意に組み合わせて、本発明の膨張組成物中の様々な硬化剤の量を定義することができる。
【0083】
本発明の膨張組成物は、硬化プロモータも含み得る。硬化プロモータは、樹脂の硬化を加速させ、硬化温度を低下させ、硬化時間を短縮することができる一種の材料である。典型的な硬化プロモータには、脂肪族アミンプロモータ、例えば、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミンなど、無水物プロモータ、例えば、BDMA、DBUなど、ポリエーテルアミン触媒、スズプロモータ、例えば、ジブチルスズジラウレート、スタナスオクトエートなどが含まれる。本発明の一実施形態では、硬化プロモータは、Air Productsから市販されているANCAMINE K54である。
【0084】
好適な量の硬化プロモータは、膨張組成物の総固体重量に基づいて、0.1~5重量%、より好適には1~3重量%である。
【0085】
熱分解時に膨張ガスを提供する化合物(c)
【0086】
本発明の膨張組成物は、成分(c)として、熱分解時に膨張ガスを提供する化合物をさらに含む。
【0087】
膨張ガスは、高温の炎に曝露されると、防火性膨張組成物を発泡および膨潤させる役割を果たす。この膨張の結果、形成されるチャーは、下地基材を絶縁し、かつ保護する役割を果たす厚いマルチセル材料である。本発明の膨張組成物で使用され得る膨張ガス源は、窒素含有材料である。好適な窒素含有材料の例には、メラミン、リン酸の塩、グアニジン、メチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、尿素、ジメチル尿素、ピロリン酸メラミン、ジシアンジアミド、リン酸グアニル尿素、およびグリシンが含まれる。好適には、メラミンが使用される。二酸化炭素を遊離する材料などの他の従来の膨張ガス源も使用することができる。例は、炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属である。加熱時に分解すると水蒸気を放出する化合物、例えば、水酸化カルシウム、二水酸化マグネシウム、または三水酸化アルミニウムも使用され得る。そのような化合物の他の例は、ホウ酸ならびにホウ酸エステルおよび金属ホウ酸塩などのホウ酸誘導体である。
【0088】
本発明の膨張組成物中の成分(c)の好適な量は、0.1~25重量%、好適には1~10重量%の範囲であり得、それによって、重量パーセンテージは、組成物の総固体重量に基づいている。
【0089】
本発明の膨張組成物は、リン源、ホウ素源、亜鉛源、酸源、金属酸化物、例えば、事前加水分解テトラエチルオルトシリケート、酸化アルミニウム、チタンイソプロポキシド、炭素源、無機充填剤、鉱物繊維、例えば、PPGからのCHOPVANTAGE、LapinusからのCoatforceまたはRoxul繊維、レオロジー添加物、有機溶媒、顔料、発泡安定剤、およびそれらの組み合わせから選択される任意の添加物を含み得る。
【0090】
任意選択的なリン源は、例えば、リン酸、リン酸モノアンモニウムおよびリン酸ジアンモニウム、リン酸トリス(2-クロロエチル)、ホスホリルアミドなどのリン含有アミド、ならびにピロリン酸メラミンなどの種々の材料から選択することができる。好適には、リン源は、式(NHn+23n+1で表されるポリリン酸アンモニウムであり、式中、nは、少なくとも2の整数であり、好適には、nは、少なくとも50の整数である。本発明の膨張組成物は、組成物の総固体重量に基づいて、0.05~30重量%、好適には0.5~10重量%の範囲のリンの量を含有し得る。リンは、膨張組成物中のチャープロモータとして機能すると考えられる。
【0091】
任意選択的な亜鉛源は、種々の材料から選択することができる。亜鉛材料は、チャーにおけるスモールセル化構造の形成に寄与すると考えられる。チャーのスモールセルは、基材の良好な絶縁を提供し、外部補強材料がない場合でも、より良好にチャーの完全性を維持し、かつ基材に付着することが可能である。したがって、チャーの割れおよび基材からのその破断が最小限に抑えられ、下にある鋼により大きな保護の尺度が与えられる。亜鉛源である好適な材料の例には、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛およびリン酸亜鉛などの亜鉛塩、炭酸亜鉛が含まれ、亜鉛金属も使用することができる。好適には、ホウ酸亜鉛が利用される。本発明の膨張組成物は、組成物の総固体重量に基づいて、0.1~25重量%、好適には0.5~12重量%の範囲の量の亜鉛を含有し得る。
【0092】
ホウ素源は、五ホウ酸アンモニウムまたはホウ酸亜鉛、酸化ホウ素、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩、ホウ酸カリウムおよびホウ酸アンモニウム、ブチルホウ酸塩またはフェニルホウ酸塩などのホウ酸エステル、ならびにそれらの組み合わせから選択され得る。本発明の膨張組成物は、0.1~10重量%、好適には1~6重量%の範囲のホウ素の量を含有し得、それによって、重量パーセンテージは、組成物の総固体重量に基づいている。
【0093】
酸源は、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、二リン酸ジアンモニウム、ジアンモニウムペンタボレート、リン酸生成材料、ホウ酸、金属または有機ホウ酸塩、およびそれらの組み合わせから選択され得る。酸源の総量は、存在する場合、組成物の総固体重量に基づいて、5~30重量%であり得る。
【0094】
本発明の膨張組成物は、炭素源をさらに含む。炭素源は、火または熱に曝露するとチャーに変換し、それによって基材上に防火保護層を形成する。本発明によれば、炭素源は、例えば、芳香族化合物および/もしくは高油脂肪酸(TOFA)、ならびに/またはペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセロール、オリゴマーグリセロール、キシリトール、マンニトール、ソルビトールなどのポリヒドロキシ化合物、およびポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタンなどのポリマー、ならびにそれらの組み合わせであり得る。驚くべきことに、本発明の発明者らは、芳香族化合物および/またはトール油脂肪酸を含む炭素源が、本発明の膨張コーティング組成物中の炭素源として使用されるとき、得られた膨張層は、同様のタイプの膨張層と同等またはそれ以上の耐火性を有するだけでなく、低温を経た後もこれらの必要な特性を維持することができることを見出した。ポリマーがまた、炭素源であり得ることも理解されるであろう。
【0095】
本発明の膨張組成物において、炭素源の量は、膨張組成物の総重量に基づいて、最大18重量%、例えば、5~18重量%、11~17重量%、または12~16重量%であり得る。代替的に、本発明の組成物中の炭素源の量は、5、6、7、8、9、10、11、12、13重量%~15、16、17、18重量%であり得る。上記の範囲のエンドポイントを任意に組み合わせて、本発明の膨張組成物中の様々な炭素源の量を定義することができる。
【0096】
リン、亜鉛、ホウ素、および膨張ガスを、それぞれ、別個の供給源材料によって提供することができるか、または代替的に、単一の材料は、前述の追加の成分のうちの複数の供給源であり得ることを理解すべきである。例えば、ピロリン酸メラミンは、リンおよび膨張ガスの両方の供給源を提供することができる。
【0097】
任意選択的な補強充填剤は、他の充填剤よりも好適な繊維性補強剤およびプレートレット補強剤を含む、従来利用されている多数の材料の中から選定され得る。繊維性補強の例には、ガラス繊維、セラミック繊維、例えば、酸化アルミニウム/酸化ケイ素、および黒鉛繊維が含まれる。プレートレット補強には、ハンマーミルのガラスフレーク、マイカ、およびウォラストナイトが含まれる。他の好適な充填剤には、金属酸化物、酸化チタン、粘土、タルク、シリカ、珪藻土、lapinus(登録商標)繊維、および様々な顔料が含まれる。補強充填剤は、得られるチャーが硬質かつ均一であるように、チャー形成前およびチャー形成中の防火組成物の膨張を制御するのを補助すると考えられる。存在する場合、補強充填剤は、通常、膨張組成物の総固体重量に基づいて、1~50重量%の範囲の量で組成物中に存在する。
【0098】
本発明の膨張組成物は、レオロジー添加剤、有機溶媒、発泡安定剤、顔料、炎拡散制御剤などのような種々の従来の添加剤も含有し得る。これらの構成成分は、任意選択的であり、様々な量で添加することができる。
【0099】
上で言及されるように、架橋した膨張層は、活性化温度を上回る温度で膨張して、化合物(c)の熱分解を誘導し、任意選択的に炭化される。熱および火災の作用の際に、膨張した発泡体は、チャーになり始め、樹脂材料および任意選択的に存在する追加の炭素源は、電池または個々の電池セルの熱暴走を長期間防止するか、または少なくとも抑制するために、高温で安定性を示し、かつ保温性を提供する多孔質炭素ネットワークを形成する。
【0100】
膨張組成物は、第1のパッケージ(A)中の樹脂成分(a)および第2のパッケージ(B)中の成分(b)を有する2パッケージシステムとして構成され得、それによって、熱分解時に膨張ガスを提供する化合物(c)および添加剤(d)のいずれかが存在する場合、任意の組み合わせでパッケージ(A)もしくはパッケージ(B)のいずれかに含まれるか、または両方に含まれるか、または1つ以上のさらなるパッケージ(C)に含まれる。個々のパッケージは、膨張組成物を使用する前に混合される。
【0101】
本発明の硬化性膨張組成物は、それが調製されるとき、通常、マスティックなどの厚い材料の形態である。組成物は、溶媒を含まず、噴霧適用されることが特に好適である。所望される場合、希薄化は、キシレン、塩化メチレン、または1,1,1-トリクロロエタンなどの種々の従来の溶媒で達成することができる。
【0102】
本発明の硬化性膨張コーティング組成物は、所望に応じて様々な乾燥コーティング厚さを提供するために適用され得る。好適な乾燥コーティング厚さは、10~20,000ミクロン、例えば、50~5000ミクロン、例えば、100~2000ミクロンの範囲であり得る。
【0103】
代替的に、本発明の硬化性膨張組成物は、自己支持フィルムまたはシートに形成することができる。自己支持フィルムまたはシートは、その後、架橋した膨張自己支持フィルムまたはシートを形成するために硬化させる。一般に、本発明の硬化性膨張組成物は、当業者に周知の任意の技術、例えば鋳造成形プロセスによって、フィルムまたはシートに形成することができる。フィルムまたはシートは、基材に架橋した膨張自己支持フィルムまたはシートを適用する前に、架橋した膨張自己支持フィルムまたはシートを形成するために硬化させることができる。形成ステップ後、未硬化フィルムまたはシートを基材に適用し、次いで、その後硬化させて、本発明に従って架橋した膨張層を得ることは、本発明の範囲内でもある。この技術は、電池または電池を備える物品に対する防火を提供することに限定されないが、防火される任意の基材に適用可能である
【0104】
本発明の硬化性膨張コーティング組成物または架橋した膨張自己支持フィルムもしくはシートは、本発明による電池を得るために、電池、特にリチウムイオン電池の任意の構造要素に適用することができる。電池は、ハウジングを画定する外壁要素と、任意選択的に、内壁要素と、を含み得、架橋した膨張コーティングまたは架橋した膨張自己支持フィルムもしくはシートは、存在する場合、少なくとも部分的に、外壁要素のいずれかの外側および/もしくは内側、ならびに/または内壁要素のいずれかの任意の側面に適用される。外壁および/または内壁要素は、複合材料、鋼、アルミニウム、およびポリカーボネートのいずれかから選択される材料を含み得る。
【0105】
電池、特にリチウムイオン電池は、複数の個々の電池セルを備える電池パックであり得、架橋した膨張コーティングまたは架橋した膨張自己支持フィルムもしくはシートは、個々の電池セルのうちの少なくともいくつかを、膨張状態、および任意選択的に、炭化状態で互いに熱絶縁するように位置付けられる。加えて、硬化性膨張コーティング組成物または架橋した膨張自己支持フィルムもしくはシートは、上で考察されるように、電池パックのハウジング壁および内部分割壁に適用され得る。
【0106】
電池を備える物品およびその使用者に対する防火を提供するために、硬化性膨張コーティング組成物または架橋した膨張自己支持フィルムもしくはシートを、電池と物品との間の電池に隣接する物品の一部に適用して、物品を電池から絶縁することも本発明の範囲内である。そのような場合、本発明による従来の電池または電池を用いることができる。物品は、例えば、携帯電話、タブレット、またはラップトップコンピュータであり得る。
【0107】
代替的に、物品は、ハイブリッドもしくは電気自動車、バス、またはトラックなどの車両であり得る。そのような車両では、車両本体、例えば、車本体の床部分の下に平らな電池パックとしてのその重量のために、電池、特にリチウムイオン電池を位置付けることが一般的である。そのような場合、本発明の硬化性膨張コーティングまたは架橋した膨張自己支持フィルムもしくはシートは、電池と車両本体との間の電池に隣接する車両の床部分に適用され得る。これにより、電池の熱暴走または電池火災の場合、車本体、特に乗客キャビンは、火災が乗客キャビンに拡散しないように架橋した膨張層によって保護され、乗客キャビンのヒートアップは、乗客が、そのような事態の場合に車両から安全に脱出するのに十分な時間を有するように長期間の間制限される。
【0108】
本発明を以下の態様によってさらに説明する。
【0109】
態様1.コーティングおよび自己支持フィルムまたはシートから選択される架橋した膨張層を備える電池であって、層が、
(a)複数の官能基を有する1つ以上のオリゴマーまたはポリマー化合物を含む樹脂成分と、
(b)任意選択的に、樹脂成分(a)のオリゴマーまたはポリマー化合物の官能基と反応性である複数の官能基を有する硬化剤と、
(c)熱分解時に膨張ガスを提供する化合物と、を含む、硬化性膨張組成物から形成され、
化合物(a)~(c)が、互いに異なる、電池。
【0110】
態様2.樹脂成分(a)が、1つ以上のエポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリビニル樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、およびシアネート樹脂を含む、態様1に記載の電池。
【0111】
態様3.樹脂成分(a)の官能基が、エポキシ、アミン、ビニル、アミド、カルバメート、尿素、メルカプタン、カルボン酸、(メタ)アクリロイル、イソシアネート、アルコキシシリル、無水物、ヒドロキシル、アルコキシ基、互いと反応することが可能である官能基、およびそれらの組み合わせから選択される、態様1または2に記載の電池。
【0112】
態様4.互いと反応することが可能である官能基が、N-メチロールアミド基、シリコン結合加水分解性または縮合性基を有するシラン基、エチレン系不飽和脂肪酸基、アゾメチン基、アゼチジン基、熱可逆性Diels-Alder反応が可能である基から選択される、態様3に記載の電池。
【0113】
態様5.樹脂成分(a)が、互いと反応することが可能である官能基を有しない場合、硬化剤(b)の存在が必須である、態様1~4のいずれかに記載の電池。
【0114】
態様6.硬化剤(b)が、ポリアミン、ポリアミド、ポリオール、ポリチオール、アミノプラスト樹脂、フェノール樹脂、ポリイソシアネート、およびポリエポキシドのうちの1つ以上を含む、態様1~5のいずれかに記載の電池。
【0115】
態様7.樹脂化合物(a)が、エポキシ樹脂を含み、硬化剤(b)が、必須であり、かつ
-脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリ(アミンアミド)ポリエーテルアミン、およびそれらの組み合わせから選択され得るポリアミン官能性化合物、もしくは
-ポリスルフィドチオール、ポリエーテルチオール、ポリエステルチオール、ペンタエリスリトール系チオール、およびそれらの組み合わせから選択され得るポリチオール官能性化合物、または
-それらの組み合わせ、を含む、態様1~6のいずれかに記載の電池。
【0116】
態様8.エポキシ樹脂が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、エポキシフェノールノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、エポキシ官能性アクリル樹脂、エポキシ官能性ポリエステル、またはそれらの組み合わせから選択される、態様2~7のいずれかに記載の電池。
【0117】
態様9.熱分解時に膨張ガスを提供する化合物(c)が、メラミン、リン酸のアンモニウム塩、グアニジン、メチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、尿素、ジメチル尿素、ピロリン酸メラミン、ジシアンジアミド、グアニル尿素リン酸塩、グリシン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、二水酸化マグネシウム、三水酸化アルミニウム、ホウ酸、およびホウ酸エステルから選択される、態様1~8のいずれかに記載の電池。
【0118】
態様10.リン源、ホウ素源、亜鉛源、酸源、炭素源、補強充填剤、レオロジー添加剤、有機溶媒、顔料、発泡安定剤、接着促進剤、腐食抑制剤、UV安定剤、およびそれらの組み合わせから選択される添加剤(d)をさらに含む、態様1~9のいずれかに記載の電池。
【0119】
態様11.さらなる添加剤が、リン源、ホウ素源、亜鉛源、酸源、および任意選択的に、炭素源の組み合わせを含み、それによって、単一の材料が、定義された要素のうちの2つ以上の源であり得る、態様10に記載の電池。
【0120】
態様12.樹脂成分(a)が、
(i)(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル、
(ii)化合物(i)とは異なる(メタ)アクリレート官能性化合物、またはそれらの組み合わせ、をさらに含む、態様7~11のいずれかに記載の電池。
【0121】
態様13.(メタ)アクリル酸のベータ-ヒドロキシエステル(i)が、ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸との反応から生じる複数のベータ-ヒドロキシ(メタ)アクリルエステル基を含み、ポリエポキシドが、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、エポキシフェノールノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、エポキシ官能性アクリル樹脂、エポキシ官能性ポリエステル、またはそれらの組み合わせから選択され得る、態様12に記載の電池。
【0122】
態様14.(メタ)アクリル酸(i)のベータ-ヒドロキシエステルが、1:0.1~1:1.015のエポキシカルボン酸当量比で、ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸との反応生成物を含む、態様13に記載の電池。
【0123】
態様15.(メタ)アクリレート官能性化合物(ii)が、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、パラキシレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびそれらの組み合わせのポリ(メタ)アクリレートから選択される、態様12~14のいずれかに記載の電池。
【0124】
態様16.
-樹脂成分(a)の総量が、組成物の総固体重量に基づいて、10~40重量%であり、
-硬化剤(b)の総量が、組成物の総固体重量に基づいて、10~30重量%であり、
-熱分解時に膨張ガスを提供する化合物(c)の総重量が、組成物の総固体重量に基づいて、0.1~25重量%であり、
-存在する場合、リン源の総量が、組成物の総固体重量に基づいて、0.05~20重量%であり、
-存在する場合、亜鉛源の総量が、組成物の総固体重量に基づいて、0.1~25重量%であり、
-存在する場合、ホウ素源の総量が、組成物の総固体重量に基づいて、0.1~10重量%であり、
-存在する場合、酸源の総量が、組成物の総固体重量に基づいて、5~30重量%である、態様1~15のいずれかに記載の電池。
【0125】
態様17.化合物(c)の熱分解を誘導するために、活性化温度を超える温度に曝露されるときに、架橋した膨張層が膨張し、任意選択的に、炭化される、態様1~16のいずれかに記載の電池。
【0126】
態様18.ハウジングを画定する外壁要素と、任意選択的に、内壁要素と、をさらに備え、架橋した膨張層が、存在する場合、少なくとも部分的に、外壁要素のいずれかの外側および/もしくは内側に、かつ/または内壁要素のいずれかの任意の側面に適用される、態様1~17に記載の電池。
【0127】
態様19.外壁要素および/または内壁要素のいずれかが、複合材料、スチール、アルミニウム、およびポリカーボネートのいずれかから選択される材料を含む、態様18に記載の電池。
【0128】
態様20.電池が、複数の個々の電池セルを備える電池パックであり、架橋した膨張層が、個々の電池セルのうちの少なくとも1つを、膨張状態、および任意選択的に、炭化状態で互いに熱絶縁するように位置付けられる、態様19に記載の電池。
【0129】
態様21.電池が、リチウムイオン電池である、態様1~20のいずれかに記載の電池。
【0130】
態様22.電池を備える物品であって、態様1~17のいずれかに記載の架橋した膨張層が、電池と物品との間の電池に隣接する物品の一部に適用される、物品。
【0131】
態様23.電池が、態様1~21のいずれかに記載の電池である、態様22に記載の物品。
【0132】
態様24.物品が、リチウムイオン電池および乗客キャビンを備える車両であり、架橋した膨張層が、電池と車両本体との間の電池に隣接する車両の床の少なくとも一部に適用される、態様22または23に記載の物品。
【0133】
態様25.態様1~17のいずれかに記載の硬化性膨張組成物の使用であって、電池の任意の部分に適用されるときに電池に対する防火を提供するため、かつ/または電池の熱暴走を低減もしくは防止するための、使用。
【0134】
態様26.電池が、リチウムイオン電池である、態様25に記載の使用。
【0135】
態様27.電池と物品との間の電池に隣接する物品の一部に適用されるときに、電池を備える物品に対する防火を提供する、態様1~17のいずれかに記載の硬化性膨張組成物の使用。
【0136】
態様28.物品が、リチウムイオン電池および乗客キャビンを備える車両であり、硬化性膨張コーティング組成物が、電池火災から車両の乗客キャビンを保護するために使用される、態様27に記載の使用。
【0137】
態様29.態様1~17のいずれかに記載の硬化性膨張組成物を電池の任意の部分に適用して、その上にコーティングを形成し、かつコーティングを硬化してその上に架橋した膨張コーティングを得ることによって、電池に防火を提供するか、または電池の熱暴走を低減もしくは防止する、方法。
【0138】
態様30.態様1~17のいずれかに記載の硬化性膨張組成物を膨張自己支持フィルムまたはシートに形成し、膨張自己支持フィルムまたはシートを電池に適用し、かつ電池への適用の前または後に膨張自己支持フィルムまたはシートを硬化させることによって、電池に防火を提供するか、または電池の熱暴走を低減もしくは防止する、方法。
【0139】
態様31.電池が、リチウムイオン電池である、態様29または30に記載の方法。
【0140】
態様32.態様1~17のいずれかに記載の硬化性膨張コーティング組成物を、電池と物品との間の電池に隣接する物品の一部に適用して、その上にコーティングを形成し、かつコーティングを硬化してその上に架橋した膨張コーティングを得ることによって、電池を備える物品に対する防火を提供する、方法。
【0141】
態様33.態様1~17のいずれかに記載の硬化性膨張組成物を膨張自己支持フィルムまたはシートに形成し、膨張自己支持フィルムまたはシートを、電池と物品との間の電池に隣接する物品の一部に適用し、かつ物品の部分への適用の前または後に膨張自己支持フィルムまたはシートを硬化させることによって、電池を備える物品に対する防火を提供する、方法。
【0142】
態様34.物品が、リチウムイオン電池および乗客キャビンを備える車両であり、架橋した膨張コーティングが、電池火災から車両の乗客キャビンを保護するように位置付けられる、請求項33または34に記載の方法。
【0143】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図したものであり、限定することを意図したものではない。
【実施例
【0144】
実施例1
エポキシ系樹脂パックであるPittchar(登録商標)XP成分A、ならびにポリアミン硬化剤およびガス源としてメラミンを含有する硬化パックであるPittchar(登録商標)XP成分Bの両方は、PPG Industries Pittsburg PAから市販されており、それぞれ、75重量%および25重量%の量で混合した。混合物を、Graco Plural成分噴霧機を使用して、新鮮なサンドブラスト鋼板(厚さ=5mm、サイズ15.24cm×15.24cm、SA2.5)に噴霧し、23℃で最短7日間硬化させた。硬化コーティングの乾燥コーティング厚さは、5mmであった。
【0145】
コーティングされた試料の裏面上に、中心点に熱電対を取り付けて、試料を通して温度を監視した。次いで、コーティングされたパネルの中心を、トーチへの方向に架橋した膨張コーティングを有するプロパントーチ(直径3.5cm、プロパン)から4cmの距離に位置付けした。炎の温度を、炎の基部の近くに配置された第2の熱電対を通して監視し、900~1000℃の間で安定したままであることが見出された。コーティングされた基材の裏面での温度、およびコーティングされていない同一の鋼板の比較のために、長期間測定した。結果を図1に示す。
【0146】
実施例2
鋼板の寸法が、25.4cm×25.4cmであり、1、2、および5mmの硬化コーティングの様々な乾燥コーティング厚さで手ブラシによって、コーティング組成物を適用したことを除いて、実施例1を繰り返した。
【0147】
膨張コーティングを伴わない対照試料は、30分間の炎曝露で最高温度360℃に達したが、温度は、1mmの膨張コーティングでコーティングされた鋼についてのみ最大147℃に上昇し、2mmのコーティングについては114℃に上昇し、5mmのコーティングについては80℃に上昇した。結果を図2に示す。
【0148】
実施例3
実施例1の膨張コーティング組成物(厚さ=1、2、および5mm)の遊離フィルムを、矩形成形型(ポリプロピレンシートから切断)を使用して鋳造し、23℃で7日間硬化させた。フィルム剥離後、片面に裏打ちされた市販の接着フィルム(3M 950転写テープ)を各フィルムの裏面上に適用した。試料を鋼板サイズ(15.24cm×15.24cm)に切断し、その後ライナーを剥離し、膨張コーティングを鋼基材(鋼板:厚さ5mm、サイズ15.24cm×15.24cm)に押し付けた。
【0149】
実施例1のような炎試験を繰り返した。膨張コーティングを伴わない対照試料は、30分間の炎曝露で最高温度360℃に達したが、温度は、1mmの膨張コーティングでコーティングされた鋼についてのみ最大102℃に上昇し、2mmのコーティングについては107℃に上昇し、5mmのコーティングについては93℃に上昇した。
【0150】
実施例4
典型的にはリチウムイオン電池(3/7w/wエチレンカーボネート/メチルエチルカーボネート中1.2MのLi+OH-)で使用される燃焼液体電解質によって、プロパントーチを置き換えたことを除いて、実施例1を繰り返した。炎温度は、650℃前後であった。
【0151】
実施例1のような炎試験を繰り返した。膨張コーティングを伴わない対照試料は、30分間の炎曝露で142℃の最高温度に達したが、5mmのコーティングでコーティングされた鋼については、温度は最大71℃までしか上昇しなかった。
【0152】
結果を図3に示す。
【0153】
実施例5
エポキシ系樹脂パックおよびガス源としてのメラミンであるSteelguard(登録商標)951成分A、ならびにポリアミン硬化剤を含有する硬化パックであるSteelguard(登録商標)951成分Bの両方は、PPG Industries Pittsburg PAから市販されており、それぞれ、45重量%および55重量%の量で混合した。混合物を、Graco Plural成分噴霧機を使用して、アルミパネル(厚さ=0.64mm、サイズ7.5cm×15.1cm)に噴霧し、23℃で最短7日間硬化させた。硬化コーティングの乾燥コーティング厚さは、0.18mmであった。
【0154】
コーティングされた試料の裏面上に、中心点に熱電対を取り付けて、試料を通して温度を監視した。パネルの裏側を熱絶縁ウールで覆った。次いで、コーティングされたパネルの中心を、トーチへの方向に架橋した膨張コーティングを有するプロパントーチから17cmの距離に位置付けした。炎の温度を、炎の基部の近くに配置された第2の熱電対を通して監視し、850~1000℃の間で安定したままであることが見出された。コーティングされた基材の裏面での温度、およびコーティングされていない同一のアルミニウムパネルの比較のために、3分間測定した。
【0155】
結果を図4に示す。
【0156】
実施例6
以下の寸法を有する鋼板を使用した(厚さ=5mm、サイズ25cm×25cm)ことを除いて、実施例5を繰り返した。コーティング組成物をハンドブラシによって鋼板に適用し、23℃で最短7日間乾燥させた。硬化コーティングの様々な乾燥コーティング厚さ(1、2、および6mm)を観察した。
【0157】
膨張フィルムを伴わない対照試料は、30分間の炎曝露で最高温度360℃に達したが、温度は、1mmの2K CPFPフィルムでコーティングされた鋼についてのみ最大209℃に上昇し、2mmフィルムについては160℃、6mmフィルムについては117℃に上昇した。
【0158】
結果を図5に示す。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
コーティングおよび自己支持フィルムまたはシートから選択される架橋した膨張層を備える電池であって、前記層が、
(a)複数の官能基を有する1つ以上のオリゴマーまたはポリマー化合物を含む樹脂成分と、
(b)任意に、樹脂成分(a)の前記オリゴマーまたはポリマー化合物の前記官能基と反応性である複数の官能基を有する硬化剤と、
(c)熱分解時に膨張ガスを提供する化合物と、を含む、硬化性膨張組成物から形成され、
化合物(a)~(c)が、互いに異なる、電池。
(項2)
前記樹脂成分(a)が、1つ以上のエポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリビニル樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、およびシアネート樹脂を含む、上記項1に記載の電池。
(項3)
前記樹脂成分(a)の前記官能基が、エポキシ、アミン、ビニル、アミド、カルバメート、尿素、メルカプタン、カルボン酸、(メタ)アクリロイル、イソシアネート、アルコキシシリル、無水物、ヒドロキシル、アルコキシ基、互いと反応することが可能である官能基、およびそれらの組み合わせから選択される、上記項1または2に記載の電池。
(項4)
互いと反応することが可能である前記官能基が、N-メチロールアミド基、シリコン結合加水分解性または縮合性基を有するシラン基、エチレン系不飽和脂肪酸基、アゾメチン基、アゼチジン基、熱可逆性Diels-Alder反応が可能である基から選択される、上記項3に記載の電池。
(項5)
前記樹脂化合物(a)が、エポキシ樹脂を含み、前記硬化剤(b)が、必須であり、かつ
-脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリ(アミンアミド)ポリエーテルアミン、およびそれらの組み合わせから選択され得るポリアミン官能性化合物、もしくは
-ポリスルフィドチオール、ポリエーテルチオール、ポリエステルチオール、ペンタエリスリトール系チオール、およびそれらの組み合わせから選択され得るポリチオール官能性化合物、または
-それらの組み合わせ、を含む、上記項1~4のいずれかに記載の電池。
(項6)
熱分解時に膨張ガスを提供する前記化合物(c)が、メラミン、リン酸のアンモニウム塩、グアニジン、メチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、尿素、ジメチル尿素、ピロリン酸メラミン、ジシアンジアミド、グアニル尿素リン酸塩、グリシン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、二水酸化マグネシウム、三水酸化アルミニウム、ホウ酸、およびホウ酸エステルから選択される、上記項1~5のいずれかに記載の電池。
(項7)
リン源、ホウ素源、亜鉛源、酸源、および任意に、炭素源の組み合わせを含む添加剤(d)をさらに含み、それによって、単一の材料が、定義された要素のうちの2つ以上の源であり得る、上記項1~6のいずれかに記載の電池。
(項8)
-樹脂成分(a)の総量が、前記組成物の総固体重量に基づいて、10~40重量%であり、
-硬化剤(b)の総量が、前記組成物の総固体重量に基づいて、10~30重量%であり、
-熱分解時に膨張ガスを提供する前記化合物(c)の総重量が、前記組成物の総固体重量に基づいて、0.1~25重量%であり、
-存在する場合、リン源の総量が、前記組成物の総固体重量に基づいて、0.05~20重量%であり、
-存在する場合、亜鉛源の総量が、前記組成物の総固体重量に基づいて、0.1~25重量%であり、
-存在する場合、ホウ素源の総量が、前記組成物の総固体重量に基づいて、0.1~10重量%であり、
-存在する場合、酸源の総量が、前記組成物の総固体重量に基づいて、5~30重量%である、上記項1~7のいずれかに記載の電池。
(項9)
ハウジングを画定する外壁要素と、任意に、内壁要素と、をさらに備え、前記架橋した膨張層が、存在する場合、少なくとも部分的に、前記外壁要素のいずれかの外側および/もしくは内側に、かつ/または前記内壁要素のいずれかの任意の側面に適用される、上記項1~8のいずれかに記載の電池。
(項10)
前記電池が、リチウムイオン電池である、上記項1~9のいずれかに記載の電池。
(項11)
電池を備える物品であって、上記項1~8のいずれかに記載の架橋した膨張層が、前記電池と前記物品との間の前記電池に隣接する前記物品の一部に適用され、好ましくは、前記物品が、リチウムイオン電池および乗客キャビンを備える車両であり、前記架橋した膨張層が、前記電池と前記車両本体との間の前記電池に隣接する前記車両の床の少なくとも一部に適用される、物品。
(項12)
上記項1~8のいずれかに記載の硬化性膨張組成物の使用であって、前記電池の任意の部分に適用されるときに電池に対する防火を提供するため、かつ/もしくは電池の熱暴走を低減もしくは防止するため、または前記電池と前記物品との間の前記電池に隣接する前記物品の一部に適用されるときに電池を備える物品に対する防火を提供するための、使用。
(項13)
-上記項1~8のいずれかに記載の硬化性膨張組成物を前記電池の任意の部分に適用して、その上にコーティングを形成し、かつ前記コーティングを硬化してその上に架橋した膨張コーティングを得ること、あるいは
-上記項1~8のいずれかに記載の硬化性膨張組成物を膨張自己支持フィルムまたはシートに形成し、前記架橋した膨張自己支持フィルムまたはシートを電池に適用し、かつ電池への前記適用の前または後に前記膨張自己支持フィルムまたはシートを硬化させること、によって、電池への防火を提供する、または電池の熱暴走を低減もしくは防止する方法。
(項14)
-上記項1~8のいずれかに記載の硬化性膨張組成物を前記電池と前記物品との間の前記電池に隣接する前記物品の一部に適用して、その上にコーティングを形成し、かつ前記コーティングを硬化してその上に架橋した膨張コーティングを得ること、あるいは
-上記項1~8のいずれかに記載の硬化性膨張組成物を膨張自己支持フィルムまたはシートに形成し、前記膨張自己支持フィルムまたはシートを前記電池と前記物品との間の前記電池に隣接する前記物品の一部に適用し、かつ前記物品の前記一部への前記適用の前または後に前記膨張自己支持フィルムまたはシートを硬化させること、によって、電池を備える物品に対する防火を提供する方法。
(項15)
前記物品が、リチウムイオン電池および乗客キャビンを備える車両であり、前記架橋した膨張コーティングが、電池火災から前記車両の前記乗客キャビンを保護するように位置付けられる、上記項14に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5