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特許7399949非アルコール性脂肪性肝炎治療のための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】非アルコール性脂肪性肝炎治療のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4741 20060101AFI20231211BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
A61K31/4741
A61P1/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021512244
(86)(22)【出願日】2019-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 CA2019050915
(87)【国際公開番号】W WO2020006631
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】62/694,848
(32)【優先日】2018-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/809,351
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521002165
【氏名又は名称】アルジャーノン・ファーマスーティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ウィリアムズ
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】MY-5116の主要活性代謝物MY-1250のラット腹腔浸出細胞からのHistamine遊離および肥満細胞の脱顆粒に対する作用,アレルギー,1986年,35 巻 10 号,1028-1036
【文献】Mechanism of action of MY-1250, an activemetabolite of Repirinast, in inhibiting histamine release from rat mast cells.,British Journal of Pharmacology,1992年,105(3),587-590
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/327
A61K 31/33-31/80
A61K 33/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61P 1/00-43/00
BIOSIS(STN)
CAplus(STN)
EMBASE(STN)
MEDLINE(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レピリナストを含む、対象において小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患を予防又は治療するための医薬組成物
【請求項2】
レピリナストの量が、対象1kgあたり1mg~20mgの間である、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
レピリナストの量が、対象1kgあたり3mg~10mgの間である、請求項2に記載の医薬組成物
【請求項4】
レピリナストの量が、対象1kgあたり約10mgである、請求項3に記載の医薬組成物
【請求項5】
非アルコール性脂肪性肝疾患が非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項6】
非アルコール性脂肪性肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎由来肝細胞癌である、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2018年7月6に出願された米国仮出願第62/694,848号、及び2019年2月22に出願された米国仮出願第62/809,351号の優先権を主張するものであり、これら出願の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、非アルコール性脂肪性肝疾患を治療するための化合物の使用、詳細には、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪肝、及び非アルコール性脂肪性肝炎を治療するための特定の試験化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、肝細胞に貯蔵された過剰の脂肪を特徴とする、一定範囲の肝臓の状態を包含する。その病名が意味するとおり、原因は、一般に、アルコール消費とは無関係である。これは、アルコールの多用によって引き起こされるアルコール性肝疾患とは対照的である。最も一般的には、NAFLDは、非アルコール性単純性脂肪肝又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のいずれかである。
【0004】
非アルコール脂肪肝は、肝臓に脂肪があるが、炎症又は肝細胞損傷がほとんど又はまったくない状態である。非アルコール脂肪肝は、通常、進行して肝損傷又は合併症を引き起こすことはない。
【0005】
NASHは、脂肪肝及び肝臓炎症の両方を含む。非アルコール性脂肪肝だけを伴うものは、一般に無症候性であるが、NASHに伴う炎症及び肝細胞損傷は、肝臓の線維化又は瘢痕化を引き起こす場合があり、重篤な場合では、硬変(進行した瘢痕化)又は肝臓がんにつながることもある。それに関して、NASH及び硬変の一般的な徴候及び症状として、腹部の腫脹、皮膚表面のすぐ下での血管肥大、男性における胸部肥大、及び黄疸を挙げることができる。
【0006】
NASHのリスクを高める要因としては、糖尿病、肥満、高フルクトース食、遺伝的性質、及び加齢が挙げられる。食事及び運動を改善することが、NAFLDを管理し、インスリン抵抗性を低減する効率的な手段ではあるものの、現在、NAFLD又はNASHに治癒はなく、あらゆる個体に作用する単独治療は存在しない。NAFLD及びNASHの治療に現在使用されている薬物は、脂肪減少を増進し、かつ/又は生物医学的マーカーレベルを改善する助けになることはあるが、いずれも、肝臓瘢痕化が始まってしまった後で、NAFLD及びNASHを逆転又は軽減させることは示されていない。
【0007】
NAFLD及びNASHのネズミモデルは、多くの慢性肝炎障害に共通の特徴である自発的な肝臓脂肪変性に最終的には至る代謝性肝傷害の十分に特徴付けられた実験モデルである。この食餌性モデルでは、脂肪肝への進行が高度に予測可能及び再現可能であり、インスリン抵抗性及び肥満により脂肪変性がもたらされる(Ishiiら、Female spontaneously diabetic Torii fatty rats develop nonalcoholic steatohepatitis-like hepatic lesions、World J Gastroenterol、21(30):9067-78 (2015); Kucera 0及びCervinkova Z、Experimental models of nonalcoholic fatty liver disease in rats、World J Gastroenterol、20(26):8364-76 (2014); Takahashiら、Animal models of nonalcoholic fatty liver disease/nonalcoholic steatohepatitis、World J Gastroenterol、18(19);2300-08 (2012))。
【0008】
マウスにおけるNASH由来肝細胞癌(「NASH-HCC」)の(Stelic Animal Model又はSTAM(商標)として知られる)そうしたモデルの1つでは、皮下ストレプトゾトシン(「STZ」)曝露に続く継続的な高脂肪食によって、6~16週間という比較的短い期間で、ヒトNASHの主要な証しであるトランスアミナーゼ及び血漿脂質の中等度の増加を含めて、ヒトNASH-HCCの全カスケードに似通った、糖尿病、有意な脂肪変性、慢性小葉炎症、細胞周囲の線維化、肝硬変、及びHCCがもたらされる(Fujii Mら、A murine model for non-alcoholic steatohepatitis showing evidence of association between diabetes and hepatocellular carcinoma、Med Mol Morphol、46(3):141-52 (2013))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Ishiiら、Female spontaneously diabetic Torii fatty rats develop nonalcoholic steatohepatitis-like hepatic lesions、World J Gastroenterol、21(30):9067-78 (2015)
【文献】Kucera 0及びCervinkova Z、Experimental models of nonalcoholic fatty liver disease in rats、World J Gastroenterol、20(26):8364-76 (2014)
【文献】Takahashiら、Animal models of nonalcoholic fatty liver disease/nonalcoholic steatohepatitis、World J Gastroenterol、18(19);2300-08 (2012)
【文献】Fujii Mら、A murine model for non-alcoholic steatohepatitis showing evidence of association between diabetes and hepatocellular carcinoma、Med Mol Morphol、46(3):141-52 (2013)
【文献】Gittoら、Treatment of nonalcoholic steatohepatitis in adults: present and future、Gastroenterol Res Pract、2015: 732870 (2015)
【文献】Paschos P及びTziomalos K、Nonalcoholic fatty liver disease and the renin-angiotensin system: Implications for treatment、World J Hepatol、4(12):327-31 (2012)
【文献】Musso Gら、A meta-analysis of randomized trials for the treatment of nonalcoholic fatty liver disease、Hepatology、52(1):79-104 (2010)
【文献】Georgescu EFら、Angiotensin-receptor blockers as therapy for mild-to-moderate hypertension-associated non-alcoholic steatohepatitis、World J Gastroenterol、15(8):942-54 (2009)
【文献】Takakuraら、Characterization of non-alcoholic steatohepatitis、Anticancer Res、34(9):4849-55 (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、NAFLD及びNASHを治療及び/又は緩和するための、通常は他の病理について潜在的な治療薬として研究されている既存の薬物の新規の使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態では、本発明は、対象における小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患の予防又は治療においてのセファランチン(Cepharanthine)についての方法及び使用を提供する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、対象における小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患の予防又は治療においてのレピリナスト(Repirinast)についての方法及び使用を提供する。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、対象における小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患の予防又は治療においてのイフェンプロジル半酒石酸塩(Ifenprodil Hemitartrate)についての方法及び使用を提供する。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、対象における小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患の予防又は治療においてのブロマンタン(Bromantane)についての方法及び使用を提供する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、対象における小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患の予防又は治療においてのトシル酸スプラタスト(Suplatast Tosylate)についての方法及び使用を提供する。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、対象における小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患の予防又は治療においてのアクタリット(Actarit)についての方法及び使用を提供する。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、対象における小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患の予防又は治療においてのロベンザリット(Lobenzarit)についての方法及び使用を提供する。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、対象における小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患の予防又は治療においてのイルソグラジン(Irsogladine)についての方法及び使用を提供する。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、対象における小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患の予防又は治療においてのイストラデフィリン(Istradefylline)についての方法及び使用を提供する。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、対象における小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患の予防又は治療においてのトラパジル(Trapadil)についての方法及び使用を提供する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、対象における小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患の予防又は治療においてのベミチル(Bemithyl)についての方法及び使用を提供する。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、対象における小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患の予防又は治療においてのセニクリビロクについての方法及び使用を提供する。
【0023】
さらなる態様では、非アルコール性脂肪性肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎である。
【0024】
本発明の一実施形態では、非アルコール性脂肪性肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎由来肝細胞癌である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
例示的な実施形態は、図面の参考図において例証される。本明細書で開示する実施形態及び図は、限定するものというより例証となるものとみなされるものである。
図1】「媒体(vehicle)」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む11の処置群とからなる、C57BL/6マウスの第1の研究における12の研究群それぞれについての、単位/Lとしての血漿(Plasma)アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)からなる肝機能及び疾患進行の評価を示すグラフである。ボンフェローニ多重比較検定を使用して判定されたとおりに、平均値±SDを示す。
図2a】「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む11の処置群とからなる、C57BL/6マウスの12の研究群それぞれについての、HE染色肝臓切片の代表的な顕微鏡写真である。上方のパネルは、50倍の倍率で撮影されている。下方のパネルは、200倍の倍率である。各研究群の素性は、各パネルペアにおいて上方のパネルの上に載せている。
図2b】「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む11の処置群とからなる、C57BL/6マウスの12の研究群それぞれについての、HE染色肝臓切片の代表的な顕微鏡写真である。上方のパネルは、50倍の倍率で撮影されている。下方のパネルは、200倍の倍率である。各研究群の素性は、各パネルペアにおいて上方のパネルの上に載せている。
図2c】「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む11の処置群とからなる、C57BL/6マウスの12の研究群それぞれについての、HE染色肝臓切片の代表的な顕微鏡写真である。上方のパネルは、50倍の倍率で撮影されている。下方のパネルは、200倍の倍率である。各研究群の素性は、各パネルペアにおいて上方のパネルの上に載せている。
図2d】「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む11の処置群とからなる、C57BL/6マウスの12の研究群それぞれについての、HE染色肝臓切片の代表的な顕微鏡写真である。上方のパネルは、50倍の倍率で撮影されている。下方のパネルは、200倍の倍率である。各研究群の素性は、各パネルペアにおいて上方のパネルの上に載せている。
図3】「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む11の処置群とからなる、C57BL/6マウスの12の研究群それぞれについての、NAFLD活性スコアを示すグラフである。ボンフェローニ多重比較検定を使用して判定されたとおりに、平均値±SDを示す。
図4】「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む11の処置群とからなる、C57BL/6マウスの12の研究群それぞれについての、脂肪変性スコアを示すグラフである。ボンフェローニ多重比較検定を使用して判定されたとおりに、平均値±SDを示す。
図5】「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む11の処置群とからなる、C57BL/6マウスの12の研究群それぞれについての、小葉炎症スコアを示すグラフである。ボンフェローニ多重比較検定を使用して判定されたとおりに、平均値±SDを示す。
図6】「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む11の処置群とからなる、C57BL/6マウスの12の研究群それぞれについての、肝細胞風船化スコアを示すグラフである。ボンフェローニ多重比較検定を使用して判定されたとおりに、平均値±SDを示す。
図7】「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含めたブロマンタン及びイストラデフィリン処置群とからなるC57BL/6マウスの研究群についての、シリウスレッド染色肝臓切片の代表的な顕微鏡写真である。パネルは、200倍の倍率で撮影されている。各研究群の素性は、各パネルペアにおいて上方のパネルの上に載せている。
図8】「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含めたブロマンタン及びイストラデフィリン処置群とからなるC57BL/6マウスの研究群についての、シリウスレッド陽性面積(Sirius red-positive area)を示すグラフである。ボンフェローニ多重比較検定を使用して判定されたとおりに、平均値±SDを示す。
図9】正常(NASHなし)群と、「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む5つの処置群とからなる、C57BL/6マウスの第2の研究における7つの研究群についての、単位/Lとしての血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)からなる肝機能及び疾患進行の評価を示すグラフである。ボンフェローニ多重比較検定を使用して判定されたとおりに、平均値±SDを示す。
図10a】正常(NASHなし)群と、「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む5つの処置群とからなる、C57BL/6マウスの7つの研究群それぞれについての、HE染色肝臓切片の代表的な顕微鏡写真である。上方のパネルは、50倍の倍率で撮影されている。下方のパネルは、200倍の倍率である。各研究群の素性は、各パネルペアにおいて上方のパネルの上に載せている。
図10b】正常(NASHなし)群と、「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む5つの処置群とからなる、C57BL/6マウスの7つの研究群それぞれについての、HE染色肝臓切片の代表的な顕微鏡写真である。上方のパネルは、50倍の倍率で撮影されている。下方のパネルは、200倍の倍率である。各研究群の素性は、各パネルペアにおいて上方のパネルの上に載せている。
図10c】正常(NASHなし)群と、「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む5つの処置群とからなる、C57BL/6マウスの7つの研究群それぞれについての、HE染色肝臓切片の代表的な顕微鏡写真である。上方のパネルは、50倍の倍率で撮影されている。下方のパネルは、200倍の倍率である。各研究群の素性は、各パネルペアにおいて上方のパネルの上に載せている。
図11】正常(NASHなし)群と、「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む5つの処置群とからなる、C57BL/6マウスの7つの研究群それぞれについての、NAFLD活性スコアを示すグラフである。ボンフェローニ多重比較検定を使用して判定されたとおりに、平均値±SDを示す。
図12】正常(NASHなし)群と、「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む5つの処置群とからなる、C57BL/6マウスの7つの研究群それぞれについての、脂肪変性スコアを示すグラフである。ボンフェローニ多重比較検定を使用して判定されたとおりに、平均値±SDを示す。
図13】正常(NASHなし)群と、「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む5つの処置群とからなる、C57BL/6マウスの7つの研究群それぞれについての、小葉炎症スコアを示すグラフである。ボンフェローニ多重比較検定を使用して判定されたとおりに、平均値±SDを示す。
図14】正常(NASHなし)群と、「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む5つの処置群とからなる、C57BL/6マウスの7つの研究群それぞれについての、肝細胞風船化スコアを示すグラフである。ボンフェローニ多重比較検定を使用して判定されたとおりに、平均値±SDを示す。
図15a】正常(NASHなし)群と、「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む5つの処置群とからなる、C57BL/6マウスの7つの研究群それぞれについての、シリウスレッド染色肝臓切片の代表的な顕微鏡写真である。パネルは、200倍の倍率で撮影されている。各研究群の素性は、各パネルペアにおいて上方のパネルの上に載せている。
図15b】正常(NASHなし)群と、「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む5つの処置群とからなる、C57BL/6マウスの7つの研究群それぞれについての、シリウスレッド染色肝臓切片の代表的な顕微鏡写真である。パネルは、200倍の倍率で撮影されている。各研究群の素性は、各パネルペアにおいて上方のパネルの上に載せている。
図16】正常(NASHなし)群と、「媒体」対照群と、陽性対照処置群であるテルミサルタンを含む5つの処置群とからなる、C57BL/6マウスの7つの研究群の、百分率としての線維化面積、すなわち、シリウスレッド陽性面積からなる肝機能及び疾患進行の評価を示すグラフである。ボンフェローニ多重比較検定を使用して判定されたとおりに、平均値±SDを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明者らは、他の病理における使用について承認されているいくつかの薬理化合物が、肝臓脂肪変性、小葉炎症、及び肝細胞風船化の抑制又は緩和において活性成分として有用であり、NASHの予防及び/又は治療において有用となりうることを見出した。一部の実施形態では、NASH-HCCのネズミSTAM(商標)モデルにおいて、肝臓脂肪変性、小葉炎症、及び肝細胞風船化のレベルが抑制又は緩和されることが見出される。本明細書に記載する実験結果によれば、本明細書に記載の化合物は、一部の実施形態において、NASH及び/又はNASH由来HCCの予防及び/又は治療において有用となることが示されている。
【0027】
以下の実施例及びデータは、2つの研究において、肝臓脂肪変性、小葉炎症、及び肝細胞風船化を抑制又は緩和する効果を示すものである。第1の研究では、治療有効量の10種の薬理化合物を投与した。第2の研究では、治療有効量の5種の薬理化合物を投与した。以下では「試験薬剤」として承知される薬理化合物は、他の病理における使用について承認されており、送達及び吸収の目的のために薬学的に許容される媒体を用いて製剤されている。
【0028】
NAFLD及びNASH治療のために現在提案されている療法は、薬理化合物テルミサルタンを投与することであり(Gittoら、Treatment of nonalcoholic steatohepatitis in adults: present and future、Gastroenterol Res Pract、2015:732870 (2015); Paschos P及びTziomalos K、Nonalcoholic fatty liver disease and the renin-angiotensin system: Implications for treatment、World J Hepatol、4(12):327-31 (2012); Musso Gら、A meta-analysis of randomized trials for the treatment of nonalcoholic fatty liver disease、Hepatology、52(1):79-104 (2010); Georgescu EFら、Angiotensin-receptor blockers as therapy for mild-to-moderate hypertension-associated non-alcoholic steatohepatitis、World J Gastroenterol、15(8):942-54 (2009))、この化合物を、本明細書に記載する実験実施例において陽性対照として使用した。
【0029】
テルミサルタン、すなわち、2-(4-{[4-メチル-6-(1-メチル-1H-1,3-ベンゾジアゾール-2-イル)-2-プロピル-1H-1,3-ベンゾジアゾール-1-イル]メチル}フェニル)安息香酸は、当業界において高血圧の治療で知られているアンジオテンシン受容体遮断薬である。テルミサルタンの化学構造は、
【0030】
【化1】
【0031】
である。
【0032】
本明細書に記載するとおりのNASH-HCCの動物モデルでは、通常、治療有効量を、ヒト最大日用量と同等の動物日用量として算出することができる。
【0033】
セファランチンの使用
セファランチン、すなわち、(14S,27R)-22,33-ジメトキシ-13,28-ジメチル-2,5,7,20-テトラオキサ-13,28-ジアザオクタシクロ[25.6.2.216,19.13,10.121,25.04,8.014,39.031,35]ノナトリアコンタ-1(33),3,8,10(39),16,18,21(36),22,24,31,34,37-ドデカエンは、当業界において、放射線誘発白血球減少症、特発性血小板減少性紫斑病、円形及び粃糠性脱毛症、口内乾燥症、サルコイドーシス、難治性貧血、並びに種々のがん関連状態の治療で知られている抗炎症性及び抗悪性腫瘍性化合物である。セファランチンの化学構造は、
【0034】
【化2】
【0035】
である。
【0036】
一態様において、本発明は、対象において小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患をセファランチン又は薬学的に許容されるその変形形態によって治療又は予防するという使用及び方法を提供する。非アルコール性脂肪性肝疾患は、NASH又はNASH-HCCである場合がある。
【0037】
一実施形態では、セファランチンの使用量は、対象1kgあたり0.5mg~10mgの間である。好ましい一実施形態では、セファランチンの使用量は、対象1kgあたり1mg~4mgの間である。更に好ましい一実施形態では、セファランチンの使用量は、対象1kgあたり約2.25mgである。更に好ましい一実施形態では、セファランチンの使用量は、対象1kgあたり約2.5mgである。
【0038】
セファランチン又は薬学的に許容されるその変形形態は、経口的に、静脈内に、又は当業界で知られている要領で対象に投与することができる。セファランチン又は薬学的に許容されるその変形形態は、薬学的に許容される1種又は複数の賦形剤と共に投与されてもよい。
【0039】
レピリナストの使用
レピリナスト、すなわち、3-メチルブチル7,8-ジメチル-4,5-ジオキソ-5,6-ジヒドロ-4H-ピラノ[3,2-c]キノリン-2-カルボキシレートは、当業界で抗ヒスタミン薬として知られている。レピリナストの化学構造は、
【0040】
【化3】
【0041】
である。
【0042】
一態様において、本発明は、対象において小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患をレピリナスト又は薬学的に許容されるその変形形態によって治療又は予防するという使用及び方法を提供する。非アルコール性脂肪性肝疾患は、NASH又はNASH-HCCである場合がある。
【0043】
一実施形態では、レピリナストの使用量は、対象1kgあたり1日2mg~50mgの間である。好ましい一実施形態では、レピリナストの使用量は、対象1kgあたり1日5mg~10mgの間である。更に好ましい一実施形態では、レピリナストの使用量は、対象1kgあたり1日約10mgである。
【0044】
レピリナスト又は薬学的に許容されるその変形形態は、経口的に、静脈内に、又は当業界で知られている要領で対象に投与することができる。レピリナスト又は薬学的に許容されるその変形形態は、薬学的に許容される1種又は複数の賦形剤と共に投与されてもよい。
【0045】
イフェンプロジルの使用
イフェンプロジル、すなわち、4-[2-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)-1-ヒドロキシプロピル]フェノールは、当業界で、選択的NMDA受容体(グルタミン酸)拮抗薬として知られている。化学構造は、
【0046】
【化4】
【0047】
である。
【0048】
本明細書における実施例で試験した一部の実施形態では、次の構造:
【0049】
【化5】
【0050】
を有する、イフェンプロジル半酒石酸塩、すなわち、4-[2-(4-ベンジルピペリジン-1-イウム-1-イル)-1-ヒドロキシプロピル]フェノール;2,3,4-トリヒドロキシ-4-オキソブタノエートを使用した。
【0051】
一態様において、本発明は、対象において小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患をイフェンプロジル半酒石酸塩又は薬学的に許容されるその変形形態によって治療又は予防するという使用及び方法を提供する。非アルコール性脂肪性肝疾患は、NASH又はNASH-HCCである場合がある。
【0052】
一実施形態では、イフェンプロジルの使用量は、対象1kgあたり1日0.1mg~5mgの間である。好ましい一実施形態では、イフェンプロジルの使用量は、対象1kgあたり1日0.5mg~3mgの間である。更に好ましい一実施形態では、イフェンプロジルの使用量は、対象1kgあたり1日約1mgである。
【0053】
イフェンプロジル半酒石酸塩又は薬学的に許容されるその変形形態は、経口的に、静脈内に、又は当業界で知られている要領で対象に投与することができる。イフェンプロジル半酒石酸塩又は薬学的に許容されるその変形形態は、薬学的に許容される1種又は複数の賦形剤と共に投与されてもよい。
【0054】
ブロマンタンの使用
ブロマンタン、すなわち、N-(4-ブロモフェニル)アダマンタン-2-アミンは、神経衰弱症治療の分野で知られているアダマンタンファミリーの非定型精神刺激及び抗不安薬物である。ブロマンタンの化学構造は、
【0055】
【化6】
【0056】
である。
【0057】
一態様において、本発明は、対象において小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患をブロマンタン又は薬学的に許容されるその変形形態によって治療又は予防するという使用及び方法を提供する。非アルコール性脂肪性肝疾患は、NASH又はNASH-HCCである場合がある。
【0058】
一実施形態では、ブロマンタンの使用量は、対象1kgあたり1日0.8mg~5mgの間である。好ましい一実施形態では、ブロマンタンの使用量は、対象1kgあたり1日1.7mg~3.3mgの間である。更に好ましい一実施形態では、ブロマンタンの使用量は、対象1kgあたり1日約1.7mgである。
【0059】
ブロマンタン又は薬学的に許容されるその変形形態は、経口的に、静脈内に、又は当業界で知られている要領で対象に投与することができる。ブロマンタン又は薬学的に許容されるその変形形態は、薬学的に許容される1種又は複数の賦形剤と共に投与されてもよい。
【0060】
トシル酸スプラタストの使用
トシル酸スプラタスト、すなわち、(3-{[4-(3-エトキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]アミノ}-3-オキソプロピル)(ジメチル)スルホニウム4-メチルベンゼンスルホネートは、当業界で抗アレルギー薬として知られているTh2サイトカイン阻害薬である。トシル酸スプラタストの化学構造は、
【0061】
【化7】
【0062】
である。
【0063】
一態様において、本発明は、対象において小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患をトシル酸スプラタスト又は薬学的に許容されるその塩によって治療又は予防するという使用及び方法を提供する。非アルコール性脂肪性肝疾患は、NASH又はNASH-HCCである場合がある。
【0064】
一実施形態では、トシル酸スプラタストの使用量は、対象1kgあたり1日1mg~10mgの間である。好ましい一実施形態では、トシル酸スプラタストの使用量は、対象1kgあたり1日2mg~8mgの間である。別の好ましい一実施形態では、トシル酸スプラタストの使用量は、対象1kgあたり1日4.5mg~5.4mgの間である。更にまた好ましい一実施形態では、トシル酸スプラタストの使用量は、対象1kgあたり1日約5mgである。
【0065】
トシル酸スプラタスト又は薬学的に許容されるその塩は、経口的に、静脈内に、又は当業界で知られている要領で対象に投与することができる。トシル酸スプラタスト又は薬学的に許容されるその塩は、薬学的に許容される1種又は複数の賦形剤と共に投与されてもよい。
【0066】
アクタリットの使用
アクタリット、すなわち、(4-アセトアミドフェニル)酢酸は、当業界において関節リウマチの治療で知られている疾患修飾性抗リウマチ薬である。アクタリットの化学構造は、
【0067】
【化8】
【0068】
である。
【0069】
一態様において、本発明は、対象において小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患をアクタリット又は薬学的に許容されるその変形形態によって治療又は予防するという使用及び方法を提供する。非アルコール性脂肪性肝疾患は、NASH又はNASH-HCCである場合がある。
【0070】
一実施形態では、アクタリットの使用量は、対象1kgあたり1日3.75mg~6.25mgの間である。好ましい一実施形態では、アクタリットの使用量は、対象1kgあたり1日4.16mg~5.83mgの間である。別の好ましい一実施形態では、アクタリットの使用量は、対象1kgあたり1日4.58mg~5.42mgの間である。更にまた好ましい一実施形態では、アクタリットの使用量は、対象1kgあたり1日約5mgである。
【0071】
アクタリット又は薬学的に許容されるその変形形態は、経口的に、静脈内に、又は当業界で知られている要領で対象に投与することができる。アクタリット又は薬学的に許容されるその変形形態は、薬学的に許容される1種又は複数の賦形剤と共に投与されてもよい。
【0072】
ロベンザリットの使用
ロベンザリット、すなわち、2-[(2-カルボキシフェニル)アミノ]-4-クロロ安息香酸は、当業界において関節炎の治療で知られている免疫調節薬である。ロベンザリットの化学構造は、
【0073】
【化9】
【0074】
である。
【0075】
一態様において、本発明は、対象において小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患をロベンザリット又は薬学的に許容されるその変形形態によって治療又は予防するという使用及び方法を提供する。非アルコール性脂肪性肝疾患は、NASH又はNASH-HCCである場合がある。
【0076】
一実施形態では、ロベンザリットの使用量は、対象1kgあたり1日1mg~10mgの間である。好ましい一実施形態では、ロベンザリットの使用量は、対象1kgあたり1日2mg~7mgの間である。別の好ましい一実施形態では、ロベンザリットの使用量は、対象1kgあたり1日3mg~5mgの間である。更にまた好ましい一実施形態では、ロベンザリットの使用量は、対象1kgあたり1日約4mgである。
【0077】
ロベンザリット又は薬学的に許容されるその変形形態は、経口的に、静脈内に、又は当業界で知られている要領で対象に投与することができる。ロベンザリット又は薬学的に許容されるその変形形態は、薬学的に許容される1種又は複数の賦形剤と共に投与されてもよい。
【0078】
イルソグラジンの使用
イルソグラジン、すなわち、6-(2,5-ジクロロフェニル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミンは、消化性潰瘍疾患及び急性胃炎の治療において使用される粘膜保護薬として当業界で知られているホスホジエステラーゼ阻害薬である。イルソグラジンの化学構造は、
【0079】
【化10】
【0080】
である。
【0081】
一態様において、本発明は、対象において小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患をイルソグラジン又は薬学的に許容されるその変形形態によって治療又は予防するという使用及び方法を提供する。非アルコール性脂肪性肝疾患は、NASH又はNASH-HCCである場合がある。
【0082】
一実施形態では、イルソグラジンの使用量は、対象1kgあたり1日0.0416mg~0.125mgの間である。好ましい一実施形態では、イルソグラジンの使用量は、対象1kgあたり1日0.066mg~0.1mgの間である。更に好ましい一実施形態では、イルソグラジンの使用量は、対象1kgあたり1日約0.08mgである。更に好ましい一実施形態では、イルソグラジンの使用量は、対象1kgあたり1日約0.07mgである。
【0083】
イルソグラジン又は薬学的に許容されるその変形形態は、経口的に、静脈内に、又は当業界で知られている要領で対象に投与することができる。イルソグラジン又は薬学的に許容されるその変形形態は、薬学的に許容される1種又は複数の賦形剤と共に投与されてもよい。
【0084】
イストラデフィリンの使用
イストラデフィリン、すなわち、8-[(E)-2-(3,4-ジメトキシフェニル)ビニル]-1,3-ジエチル-7-メチル-3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2,6-ジオンは、当業界においてパーキンソン病におけるジスキネジーの治療で知られている選択的A2A受容体拮抗薬である。イストラデフィリンの化学構造は、
【0085】
【化11】
【0086】
である。
【0087】
一態様において、本発明は、対象において小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患をイストラデフィリン又は薬学的に許容されるその変形形態によって治療又は予防するという使用及び方法を提供する。非アルコール性脂肪性肝疾患は、NASH又はNASH-HCCである場合がある。
【0088】
一実施形態では、イストラデフィリンの使用量は、対象1kgあたり1日0.1mg~5mgの間である。好ましい一実施形態では、イストラデフィリンの使用量は、対象1kgあたり1日0.3mg~1.3mgの間である。更に好ましい一実施形態では、イストラデフィリンの使用量は、対象1kgあたり1日約1.3mgである。
【0089】
イストラデフィリン又は薬学的に許容されるその変形形態は、経口的に、静脈内に、又は当業界で知られている要領で対象に投与することができる。イストラデフィリン又は薬学的に許容されるその変形形態は、薬学的に許容される1種又は複数の賦形剤と共に投与されてもよい。
【0090】
トラパジル(Trapidil)の使用
トラパジル、すなわち、N,N-ジエチル-5-メチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-アミンは、当業界で、血管拡張薬、抗血小板薬、及び血小板由来成長因子拮抗薬として知られている。トラパジルの化学構造は、
【0091】
【化12】
【0092】
である。
【0093】
一態様において、本発明は、対象において小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患をトラパジル又は薬学的に許容されるその変形形態によって治療又は予防するという使用及び方法を提供する。非アルコール性脂肪性肝疾患は、NASH又はNASH-HCCである場合がある。
【0094】
一実施形態では、トラパジルの使用量は、対象1kgあたり1日4.16mg~5.83mgの間である。好ましい一実施形態では、トラパジルの使用量は、対象1kgあたり1日4.58mg~5.41mgの間である。更に好ましい一実施形態では、トラパジルの使用量は、対象1kgあたり1日約5mgである。更に別の一実施形態では、対象において1kgあたり5mgのトラパジルを使用する前に、対象において10mg/kgの単回用量のトラパジルを使用した。
【0095】
トラパジル又は薬学的に許容されるその変形形態は、経口的に、静脈内に、又は当業界で知られている要領で対象に投与することができる。トラパジル又は薬学的に許容されるその変形形態は、薬学的に許容される1種又は複数の賦形剤と共に投与されてもよい。
【0096】
ベミチルの使用
ベミチル、すなわち、2-エチルスルファニル-1H-ベンゾイミダゾールは、当業界で、合成アクトプロテクター(actoprotector)、抗酸化物質、及び抗変異原性薬として知られており、身体能力を増強するために使用されることが多い。ベミチルの化学構造は、
【0097】
【化13】
【0098】
である。
【0099】
一態様において、本発明は、対象において小葉炎症又は非アルコール性脂肪性肝疾患をベミチル又は薬学的に許容されるその変形形態によって治療又は予防するという使用及び方法を提供する。非アルコール性脂肪性肝疾患は、NASH又はNASH-HCCである場合がある。
【0100】
一実施形態では、ベミチルの使用量は、対象1kgあたり1日0.5mg~30mgの間である。好ましい一実施形態では、ベミチルの使用量は、対象1kgあたり1日1mg~25mgの間である。更に好ましい一実施形態では、ベミチルの使用量は、対象1kgあたり1日5mg~20mgの間である。更にまた好ましい一実施形態では、ベミチルの使用量は、対象1kgあたり1日約8mgである。更に一層好ましい一実施形態では、ベミチルの使用量は、対象1kgあたり1日約17mgである。
【0101】
ベミチル又は薬学的に許容されるその変形形態は、経口的に、静脈内に、又は当業界で知られている要領で対象に投与することができる。ベミチル又は薬学的に許容されるその変形形態は、薬学的に許容される1種又は複数の賦形剤と共に投与されてもよい。
【0102】
組み合わせた使用
別の態様において、本発明は、対象において、NASH又はNASH-HCCを、セファランチン、レピリナスト、イフェンプロジル半酒石酸塩、ブロマンタン、トシル酸スプラタスト、アクタリット、ロベンザリット、イルソグラジン、イストラデフィリン、及びトラパジルの1つ又は複数を組み合わせて治療又は予防するという使用及び方法を提供する。別の態様において、本発明は、対象において、NASH又はNASH-HCCを、コレステロール低下薬、糖尿病薬、抗高血圧薬、又はビタミンEの1つ又は複数と組み合わせた、セファランチン、レピリナスト、イフェンプロジル半酒石酸塩、ブロマンタン、トシル酸スプラタスト、アクタリット、ロベンザリット、イルソグラジン、イストラデフィリン、及びトラパジルの1つ又は複数によって治療又は予防するという使用及び方法を提供する。
【0103】
組み合わせて使用されるコレステロール低下薬の例としては、アトルバスタチン(Lipitor)、フルバスタチン(Lescol)、ロバスタチン、ピタバスタチン(Livalo)、プラバスタチン(Pravachol)、ロスバスタチンカルシウム(Crestor)、シンバスタチン(Zocor)及びナイアシン、アリロクマブ(Praluent)、エボロクマブ(Repatha)、アリロクマブ(Praluent)、及びエボロクマブ(Repatha)が挙げられる。組み合わせて使用される糖尿病薬の例としては、インスリンが挙げられる。組み合わせて使用される抗高血圧薬の例としては、降圧薬、カルシウムチャネル遮断薬、ACE阻害薬 アンジオテンシンII受容体遮断薬、利尿薬、及びβ遮断薬が挙げられる。既知のアンジオテンシンII受容体拮抗薬の例には、アンジオテンシンI受容体サブタイプ拮抗薬及びアンジオテンシンII受容体サブタイプ拮抗薬の両方が含まれる。適切なアンジオテンシンII受容体拮抗薬としては、ロサルタン及びバルサルタンが挙げられる。適切なカルシウムチャネル遮断薬としては、たとえば、ベラパミル、ジルチアゼム、ニカルジピン、ニフェジピン、アムロジピン、フェロジピン、ニモジピン、及びベプリジルが挙げられる。利尿薬としては、たとえば、フロセミド、diuril、アミロライド、及びhydrodiurilが挙げられる。ロサルタン、カンデサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、オルメサルタン、イルベサルタン等は、血圧降下薬として使用することができる。
【0104】
本明細書で使用する用語「有効量」とは、治療を受ける対象において所望の予防又は治療効果を付与するのに十分な活性成分の量を指す。一態様において、肝臓脂肪変性、小葉炎症、肝細胞風船化、又はNASH由来HCCを抑制又は緩和するための有効量は、その1つ又は複数の症状、状態、又は進行を改善又は軽減する。一部の実施形態では、症状、状態、又は進行は、疾患進行と関連した種々の指標を測定する、当業界で知られている方法を使用して、たとえば、肝臓切片を免疫組織化学染色によって分析することにより、判定及び評価がなされる。
【0105】
一部の実施形態では、有効量は、当業者によって、たとえば、投与経路及び頻度、薬理化合物を受け入れる対象の体重及び種を評価しながら求められる。一部の実施形態では、有効量の薬理化合物が、薬学的に許容される媒体と共に製剤され、対象に投与される。
【0106】
本明細書で使用する用語「薬学的に許容される」とは、媒体が、薬理化合物と適合すると同時に、治療を受ける対象にとっても安全であると、当業界で知られていることを意味する。一部の実施形態では、薬学的に許容される媒体は、当業者によって、たとえば、薬理化合物の前記媒体への溶解性を評価しながら決定される。
【0107】
本発明の例示的な実施形態について、以下の実施例に関連して更に記載するが、実施例は、例証となるものであり、限定する性質のものではない。第1の研究では、治療有効量の10種の薬理化合物を投与した。第2の研究では、治療有効量の5種の薬理化合物を投与した。
【実施例1】
【0108】
材料及び方法
雄の新生C57BL/6マウスを使用した。マウスはすべて、研究開始前に、日本エスエルシー株式会社(日本国浜松市)から入手した、病原体をもたない妊娠14日のマウスから出生した。
【0109】
NASH-HCCのネズミSTAM(商標)モデルは、当業界で知られている以前に記載されている方法(Takakuraら、Characterization of non-alcoholic steatohepatitis、Anticancer Res、34(9):4849-55 (2014); Fujiiら(2013))に従って実行した。雄のマウスにおいて、出生後2日の時点で200μgのストレプトゾトシン(STZ、Sigma社、米国ミズーリ州)を単独で皮下注射し、4週齢(28±2日目)を過ぎてから、高脂肪食(日本クレア株式会社、日本国東京都)を制約なく与えて継続的に給餌することにより、NASHを誘発させた。
【0110】
NASHが誘発された後、6週齢(42±2日目)の時点で、処置開始の前日に、マウスを、体重に基づき、それぞれ8匹のマウスからなる12の個々の研究群にランダム化した。
【0111】
ランダム化から1日後、6週齢プラス1日(43±2日目、処置1日目)から9週齢まで(以下では「処置期間」と呼ぶ)、マウスに1日1回の経口処置を施した。12のうち11の研究群(以下では「処置群」と呼ぶ)におけるマウスは、薬学的に許容される媒体と共に製剤された別個の薬理化合物によって個々に処置した。こうした11群それぞれに与えられた薬理化合物は、10種のうちの1種の試験薬剤又は陽性対照としてのテルミサルタンのいずれかであった。すべての群における薬学的に許容される媒体を、0.5%のカルボキシメチルセルロース(CMC)とした。残りの試験群(以下では「媒体対照群」と呼ぶ)におけるマウスは、活性成分を含まない薬学的に許容される同じ媒体で個々に処置した。処置期間の間、個々の体重を毎日測定した。マウスの生存、臨床徴候、及び挙動も、毎日モニターした。
【0112】
【表1】
【0113】
各場合において、10mL/kgの体積の0.5%CMCを、Table 1 (表1)に示したとおりの活性成分と共に(又は活性成分なしで)、6週齢から屠殺するまでの9週齢まで経口投与した。1つの例外がトラパジルであり、トラパジルは、0日目に120mg/kgの1回の投与で、次いで、処置1日目からは60mg/kgの日用量で経口投与した。次いで、9週齢の時点ですべてのマウスを屠殺した。分析のために、すべてのマウスから血液サンプルを集め、各マウスから肝臓を取り出した。
【0114】
動物研究のために選択された用量は、既知のヒト最大日用量を考慮し、成人の平均体重(約60~70kg)で割って、ヒトのmg/kg用量を得ることにより求めた。次いで、従来の投与量換算表(dosing table)に基づき、その数に12を掛けて、マウス用量に変換した。Nair及びJacob、J Basic Clin Pharm March 2016-May 2016、7(2):27-31を参照されたい。
【0115】
各マウスについて、次の測定及び評価を行った。
【0116】
体重:処置期間を通して、すべてのマウスの体重を毎日測定した。
【0117】
血液サンプル採取及び生化学分析:屠殺したすべてのマウスから血液を集め、さらなる分析又は発送のために凍結させた。
【0118】
血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT):肝機能及び疾患進行の指標としてのアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)について、各血液サンプルからの血漿を、FUJI DRI CHEM (富士フイルム株式会社、日本国)で分析した。
【0119】
肝臓サンプル採取、生化学分析、及び組織学分析:屠殺したすべてのマウスから肝臓を取り出し、さらなる分析又は発送のために凍結させた。
【0120】
肝臓質量:屠殺したすべてのマウスからの肝臓は、取り出した後、グラムで秤量した。
【0121】
肝臓組織病理学:取り出した肝臓をホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、次いで、横断切片(4μm)を調製した。
【0122】
脂肪性肝炎の評価:肝臓脂肪変性、小葉炎症、及び肝細胞風船化を組織学的に評価するために、肝臓横断切片を、標準技術を使用するヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色にかけた。脂肪変性の評価については倍率を50倍、炎症の評価及び風船化の評価については倍率をそれぞれ200倍とした、厚さ4μmのH&E染色肝臓横断切片のランダムに選択した3つの視野において、各肝臓横断切片における脂肪性肝炎重症度のレベルを、0 (正常)、1~2 (NAFLD)、3~4 (境界)、又は5以上(NASH)のNAFLD活性スコアによって示した。NAFLD活性スコアは、1)肝臓脂肪変性スコア(0~3)、2)小葉炎症スコア(0~2)、3)肝細胞風船化スコア(0~2)の重み付けなしの合計である。
【0123】
媒体群、並びにブロマンタン、イストラデフィリン、及びテルミサルタン処置群の肝臓横断切片は、線維化面積の百分率を組織学的に推定するために、標準技術を使用するシリウスレッド染色にもかけた。線維化面積の定量分析については、シリウスレッド染色された切片の明視野像を、デジタルカメラ(DFC295、Leica社、ドイツ国)を200倍の倍率で使用して、中心静脈の周囲で捉え、1切片につき5視野における陽性面積を、ImageJソフトウェア(国立保健研究所、米国)を使用して測定した。
【0124】
統計分析
値は、算術平均である。両側異分散(2標本不等分散)スチューデントt検定を使用して、研究群と陽性対照群の比較を行った。複数の群についてのボンフェローニ事後統計補正分析(ボンフェローニ多重比較検定)に従って、0.05未満のP値を統計的に有意とみなした。この場合では、補正係数は、研究群の数に対応する12とした。選択したP値分類及び統計的有意性レベルを、通常の規則に従い、Table 2 (表2)に、その対応する分類スコアと並べて示す。
【0125】
【表2】
【0126】
結果
肝機能評価:肝機能及び疾患進行を、以前に記載したとおりに血漿ALTによって評価した。結果を図1に要約する。
【0127】
脂肪性肝炎評価:脂肪性肝炎及び疾患進行を、以前に記載したとおりの肝臓横断切片のH&E染色によって評価した。12の研究群それぞれについてのHE染色肝臓切片の代表的な顕微鏡写真を、図2a図2dに示す。
【0128】
各研究群のNAFLD活性スコアは、各研究群におけるすべてのマウスのNAFLD活性スコア平均からなるものとした。各動物についての脂肪変性スコア、小葉炎症スコア、及び肝細胞風船化スコアをもとにスコアを求めた。結果を図3図6に要約する。
【0129】
脂肪性肝炎及び疾患進行を、以前に記載したとおりの肝臓横断切片のシリウスレッド染色によっても評価した。媒体、ブロマンタン、イストラデフィリン、及びテルミサルタン研究群についてのシリウスレッド染色肝臓切片の代表的な顕微鏡写真を図7に示す。結果を図8に示す。
【0130】
ブロマンタン及びイストラデフィリン処置群、並びにテルミサルタン陽性対照について、媒体対照に比べて、NAFLD活性スコアの統計的に有意な低下が認められた。ブロマンタン、イルソグラジン、及びイストラデフィリン処置群について、媒体対照に比べて、肝細胞風船化スコアの統計的に有意な低下が認められた。
【0131】
ブロマンタン及びイストラデフィリン群は、媒体群に比べて、線維化面積(シリウスレッド陽性面積)の有意な減少を示した。テルミサルタン群における線維化面積は、媒体群に比べて減少する傾向があった。媒体群からの肝臓切片は、肝臓小葉の中心周囲領域におけるコラーゲン沈着の増加を示した。
【0132】
特に、ブロマンタン及びイストラデフィリンについての、統計的に有意であり、臨床的に関連のあるNAFLD活性スコアの総合的な低下から、これらの化合物が、NASH及びその続発症の予防及び/又は治療において有用となりうることが示唆される。
【実施例2】
【0133】
材料及び方法
前と同様に、雄の新生C57BL/6マウスを使用した。マウスはすべて、研究開始前に、日本エスエルシー株式会社(日本国浜松市)から入手した、病原体をもたない妊娠14日のマウスから出生した。
【0134】
NASH-HCCのネズミSTAM(商標)モデルは、当業界で知られている以前に記載されている方法(Takakuraら、Characterization of non-alcoholic steatohepatitis、Anticancer Res、34(9): 4849-55 (2014); Fujiiら(2013))に従って実行した。雄のマウスにおいて、出生後2日の時点で200μgのストレプトゾトシン(STZ、Sigma社、米国ミズーリ州)を単独で皮下注射し、4週齢(28±2日目)を過ぎてから、高脂肪食(日本クレア株式会社、日本国東京都)を制約なく与えて継続的に給餌することにより、NASHを誘発させた。
【0135】
NASHが誘発された後、6週齢(42±2日目)の時点で、処置開始の前日に、マウスを、その体重に基づき、それぞれ8匹のマウスからなる7つの個々の研究群にランダム化した。
【0136】
ランダム化から1日後、6週齢プラス1日(43±2日目、処置1日目)から9週齢まで、マウスに1日1回の経口処置を施した。7つのうち6つの研究群におけるマウスは、薬学的に許容される媒体と共に製剤された治療量の薬理化合物によって個々に処置した。こうした6群それぞれに与えられた薬理化合物は、4種のうちの1種の試験薬剤又は陽性対照としてのテルミサルタンのいずれかであった。すべての群における薬学的に許容される媒体を、0.5%のCMCとした。残りの試験群、媒体対照群におけるマウスは、活性成分を含まない薬学的に許容される同じ媒体で個々に処置した。処置期間の間、個々の体重を毎日測定した。マウスの生存、臨床徴候、及び挙動も、毎日モニターした。
【0137】
【表3】
【0138】
各場合において、10mL/kgの体積の0.5%CMCを、Table 3 (表1)に示したとおりの活性成分と共に(又は活性成分なしで)、6週齢から9週齢まで経口投与した。次いで、9週齢の時点ですべてのマウスを屠殺した。分析のために、すべてのマウスから血液サンプルを集め、各マウスから肝臓を取り出した。
【0139】
動物研究のために選択された用量は、既知のヒト最大日用量を考慮し、成人の平均体重(約60~70kg)で割って、ヒトのmg/kg用量を得ることにより求めた。次いで、従来の投与量換算表に基づき、その数に12を掛けて、マウス用量に変換した。Nair及びJacob、J Basic Clin Pharm March 2016-May 2016、7(2): 27-31を参照されたい。
【0140】
各マウスについて、次の測定及び評価を行った。
【0141】
体重:処置期間を通して、すべてのマウスの体重を毎日測定した。
【0142】
血液サンプル採取及び生化学分析:屠殺したすべてのマウスから血液を集め、さらなる分析又は発送のために凍結させた。
【0143】
血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT):肝機能及び疾患進行の指標としてのアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)について、各血液サンプルからの血漿を、FUJI DRI CHEM (富士フイルム株式会社、日本国)で分析した。
【0144】
肝臓サンプル採取、生化学分析、及び組織学分析:屠殺したすべてのマウスから肝臓を取り出し、さらなる分析又は発送のために凍結させた。屠殺したすべてのマウスからの肝臓は、取り出した後、グラムで秤量した。
【0145】
肝臓組織病理学:取り出した肝臓をホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、次いで、横断切片(4μm)を調製した。
【0146】
脂肪性肝炎の評価:肝臓脂肪変性、小葉炎症、及び肝細胞風船化を組織学的に評価するために、肝臓横断切片を、標準技術を使用するヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色にかけた。脂肪変性の評価については倍率を50倍、炎症の評価及び風船化の評価については倍率をそれぞれ200倍とした、厚さ4μmのH&E染色肝臓横断切片のランダムに選択した3つの視野において、各肝臓横断切片における脂肪性肝炎重症度のレベルを、0 (正常)、1~2 (NAFLD)、3~4 (境界)、又は5以上(NASH)のNAFLD活性スコアによって示した。NAFLD活性スコアは、1)肝臓脂肪変性スコア(0~3)、2)小葉炎症スコア(0~2)、3)肝細胞風船化スコア(0~2)の重み付けなしの合計である。
【0147】
処置群の肝臓横断切片は、線維化面積の百分率を組織学的に推定するために、標準技術を使用するシリウスレッド染色にもかけた。線維化面積の定量分析については、シリウスレッド染色された切片の明視野像を、デジタルカメラ(DFC295、Leica社、ドイツ国)を200倍の倍率で使用して、中心静脈の周囲で捉え、1切片につき5視野における陽性面積を、ImageJソフトウェア(国立保健研究所、米国)を使用して測定した。
【0148】
統計分析
値は、算術平均である。両側異分散(2標本不等分散)スチューデントt検定を使用して、研究群と陽性対照群の比較を行った。複数の群についてのボンフェローニ事後統計補正分析(ボンフェローニ多重比較検定)に従って、0.05未満のP値を統計的に有意とみなした。この場合では、補正係数は、研究群の数に対応する7とした。選択したP値分類及び統計的有意性レベルを、通常の規則に従い、Table 2 (表2) (上記)に、その対応する分類スコアと並べて示している。
【0149】
結果
肝機能評価:肝機能及び疾患進行を、以前に記載したとおりに血漿ALTによって評価した。結果を図9に要約する。
【0150】
脂肪性肝炎評価:脂肪性肝炎及び疾患進行を、以前に記載したとおりの肝臓横断切片のH&E染色によって評価した。7の研究群それぞれについてのHE染色肝臓切片の代表的な顕微鏡写真を、図10a図10cに示す。
【0151】
各研究群のNAFLD活性スコアは、各研究群におけるすべてのマウスのNAFLD活性スコア平均からなるものとした。各動物についての脂肪変性スコア、小葉炎症スコア、及び肝細胞風船化スコアをもとにスコアを求めた。結果を図11図14に要約する。
【0152】
ブロマンタン高及びセニクリビロク処置群、並びにテルミサルタン陽性対照について、媒体対照に比べて、NAFLD活性スコアの統計的に有意な低下が認められた。ブロマンタン高処置群並びにテルミサルタン陽性対照について、媒体対照に比べて、脂肪変性スコアの統計的に有意な低下が認められた。
【0153】
ブロマンタン低、ブロマンタン高、ベミチル、及びセニクリビロク群を含む研究群のすべてが、媒体群に比べて、線維化面積(シリウスレッド陽性面積)の統計的に有意な減少を示したことは意義深い。ベミチル群は、特に統計的に有意な線維化面積の減少を示した。テルミサルタン群における線維化面積も、媒体群に比べて減少する傾向があった。
【0154】
特に、ブロマンタン高、ベミチル、及びセニクリビロクについての、統計的に有意であり、臨床的に関連のあるNAFLD活性スコアの総合的な低下から、これらの化合物が、NASH及びその続発症の予防及び/又は治療において有用となりうることが示唆される。
【0155】
結論
結論として、上記試験薬剤、特に、ブロマンタン、イストラデフィリン、及びセニクリビロクの投与は、NAFLD活性スコア、肝臓脂肪変性、小葉炎症、及び肝細胞風船化を減らすことにおいて改善を示しており、NASHの予防及び/又は治療において有用となりうる。詳細には、40mg/kgのブロマンタン及び18mg/kgのイストラデフィリンに次いで、30mg/kgのセニクリビロクによって処置した群で、改善がより良好となった。
【0156】
10mg/kgのテルミサルタンの経口投与でも、媒体群に比べて、NAFLD活性スコア、肝臓脂肪変性、小葉炎症、及び肝細胞風船化の改善が示された。
【0157】
本記述全体にわたって、当業者により十分に理解してもらうために、詳細な細目を述べている。しかし、よく知られている要素は、本開示を不必要にわかりにくくするのを回避するために、詳細に示していない又は述べていない場合もある。したがって、記述及び図面は、限定するものというより例証となるものという意味で考えられる。
【0158】
いくつかの例示的な態様及び実施形態について上で論じてきたが、当業者なら、その一定の変更、並べ替え、追加、及び下位組合せ(sub-combinations)を認識するところとなる。したがって、以下の添付の請求項、及び今後導入される請求項は、全体として本明細書の最も広い解釈と矛盾せずに、そうした変更、並べ替え、追加、及び下位組合せをすべて含むように解釈されるものとする。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図10c
図11
図12
図13
図14
図15a
図15b
図16