(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】容量制御弁
(51)【国際特許分類】
F04B 27/18 20060101AFI20231211BHJP
F16K 31/126 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
F04B27/18 B
F16K31/126 Z
(21)【出願番号】P 2021512302
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2020015176
(87)【国際公開番号】W WO2020204132
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2019071631
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】葉山 真弘
(72)【発明者】
【氏名】福留 康平
(72)【発明者】
【氏名】神崎 敏智
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 渉
(72)【発明者】
【氏名】白藤 啓吾
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-027049(JP,A)
【文献】特開2000-161234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/18
F16K 31/126
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入圧力の吸入流体が通過する吸入ポートおよび制御圧力の制御流体が通過する制御ポートが形成されたバルブハウジングと、
前記吸入流体により収縮方向の力を受ける圧力駆動部と、
前記圧力駆動部から開弁方向の力を受ける弁体と該弁体が接離する弁座とにより構成される主弁と、
を備える容量制御弁であって、
前記弁体は
、前記主弁の開放時及び閉塞時のいずれも前記制御流体により閉塞方向への力を受けるように配置されている容量制御弁。
【請求項2】
前記バルブハウジングには貫通孔が形成されており、該貫通孔には前記圧力駆動部から前記弁体に力を伝達するロッドが摺動可能に配置されている請求項1に記載の容量制御弁。
【請求項3】
前記バルブハウジングに前記弁体を閉塞方向に付勢するスプリングが配置されている請求項1または2に記載の容量制御弁。
【請求項4】
前記弁体は球体である請求項1ないし3のいずれかに記載の容量制御弁。
【請求項5】
前記バルブハウジングに固定されるとともに前記圧力駆動部を収容するケースを備え、該ケースには吸入圧力の吸入流体が流通する第2の吸入ポートが形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の容量制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体の容量を可変制御する容量制御弁に関し、例えば、自動車の空調システムに用いられる容量可変型圧縮機の吐出量を圧力に応じて制御する容量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の空調システムに用いられる容量可変型圧縮機は、エンジンにより回転駆動される回転軸、回転軸に対して傾斜角度を可変に連結された斜板、斜板に連結された圧縮用のピストン等を備え、斜板の傾斜角度を変化させることにより、ピストンのストローク量を変化させて流体の吐出量を制御するものである。この斜板の傾斜角度は、容量制御弁を用いて、流体を吸入する吸入室の吸入圧力Ps、ピストンにより加圧された流体を吐出する吐出室の吐出圧力Pd、斜板を収容した制御室の制御圧力Pcを利用しつつ、制御室内の圧力を適宜制御することで連続的に変化させ得るようになっている。
【0003】
このような容量制御弁は、ベローズに一体に取り付けられた弁体を軸方向に移動させることで、制御圧力Pcと吸入圧力Psとを均衡させる流れを生じさせるものであって、弁体には該弁体を開方向に移動させる制御圧力Pcが作用しており、ベローズが収容された空間には吸入室の吸入圧力Psが供給されるものがある。
【0004】
容量可変型圧縮機の連続駆動時において、容量制御弁は、制御圧力Pcと吸入圧力Psとにより弁体を軸方向に移動させることで、主弁を開閉して容量可変型圧縮機の制御室の制御圧力Pcを調整している。容量可変型圧縮機における制御室の圧力が制御されることで、回転軸に対する斜板の傾斜角度は連続的に変化し、ピストンのストローク量が変化し吐出される流体の吐出量が増減し、空調システムの冷却能力が調整される。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3783434号公報(第20頁~第22頁、第11図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にあっては、容量可変型圧縮機の連続駆動時において、容量制御弁は制御室の制御圧力Pcと吸入室の吸入圧力Psにより制御室の制御圧力Pcを自律的に制御できるものの、制御圧力Pcは弁体を開方向に作用させる方向に作用しているため、外部的な振動等により制御圧力Pcが瞬間的に高くなると弁体が誤作動により開放する虞があった。また、弁体が開放されたときに、制御圧力Pcの制御流体は吸入室内に流れ込み、ベローズを過度に収縮させてしまう方向に作用する虞があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、制御精度の高い容量制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の容量制御弁は、
吸入圧力の吸入流体が通過する吸入ポートおよび制御圧力の制御流体が通過する制御ポートが形成されたバルブハウジングと、
前記吸入流体により収縮方向の力を受ける圧力駆動部と、
前記圧力駆動部から開弁方向の力を受ける弁体と該弁体が接離する弁座とにより構成される主弁と、
を備える容量制御弁であって、
前記弁体は前記制御流体により閉塞方向への力を受けるように配置されている。
これによれば、弁体は制御流体により閉塞方向への力を受けているため、制御流体の制御圧力が高まるように変動しても主弁が開放するような誤作動は生じない。また、制御圧力の増加に基づきピストンのストローク量を変動させるタイプの容量可変型圧縮機にこの容量制御弁を適用することができる。
【0009】
前記バルブハウジングには貫通孔が形成されており、該貫通孔には前記圧力駆動部から前記弁体に力を伝達するロッドが摺動可能に配置されていてもよい。
これによれば、主弁の開放時に制御圧力の制御流体が制御ポートから吸入ポートに流れ込んでも、圧力駆動部への流れ込みを抑制できるため、圧力駆動部は吸入流体の吸入圧によって応答性高く感応する。
【0010】
前記バルブハウジングに前記弁体を閉塞方向に付勢するスプリングが配置されていてもよい。
これによれば、主弁の閉塞時には弁体は弁座に付勢されており、また主弁の開放時には弁体はロッドとスプリングから互いに反対方向の力を受けているため、振動等が生じても安定して主弁の閉塞・開放状態が維持される。
【0011】
前記弁体は球体であってもよい。
これによれば、弁体が吸入流体及び制御流体から受ける受圧面積を充分に確保することができる。
【0012】
前記バルブハウジングに固定されるとともに前記圧力駆動部を収容するケースを備え、該ケースには吸入圧力の吸入流体が流通する第2の吸入ポートが形成されていてもよい。
これによれば、簡素な構造により、圧力駆動部が収容される空間と主弁が配置される空間とを独立・隔離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例の容量制御弁の構造を示す断面図である。
【
図2】実施例の容量制御弁の主弁が閉塞された状態を示す断面図である。
【
図3】実施例の容量制御弁の主弁が開放された状態を示す断面図である。
【
図4】変形例の容量制御弁の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る容量制御弁を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0015】
実施例1に係る容量制御弁につき、
図1から
図3を参照して説明する。以下、
図1の正面側から見て左右側を容量制御弁の左右側として説明する。
【0016】
本発明の容量制御弁Vは、自動車等の空調システムに用いられる図示しない容量可変型圧縮機に組み込まれ、冷媒である作動流体(以下、単に「流体」と表記する)の圧力を可変制御することにより、容量可変型圧縮機の吐出量を制御し空調システムを所望の冷却能力となるように調整している。
【0017】
先ず、容量可変型圧縮機について説明する。容量可変型圧縮機は、吐出室と、吸入室と、制御室と、複数のシリンダと、を備えるケーシングを有している。尚、容量可変型圧縮機には、制御室と吐出室とを直接連通する図示しない連通路が設けられており、この連通路には制御室と吐出室との圧力を平衡調整させるための固定オリフィス(
図1参照。)が設けられている。
【0018】
また、容量可変型圧縮機は、ケーシング1の外部に設置される図示しないエンジンにより回転駆動される回転軸と、制御室内において回転軸に対してヒンジ機構により偏心状態で連結される斜板と、斜板に連結され各々のシリンダ内において往復動自在に嵌合された複数のピストンと、を備え、電磁力により開閉駆動される容量制御弁Vを用いて、流体を吸入する吸入室の吸入圧力Ps、ピストンにより加圧された流体を吐出する吐出室の吐出圧力Pd、斜板を収容した制御室の制御圧力Pcを利用しつつ、制御室内の圧力を適宜制御することで斜板の傾斜角度を連続的に変化させることにより、ピストンのストローク量を変化させて流体の吐出量を制御している。
【0019】
具体的には、制御室内の制御圧力Pcが低圧であるほど、回転軸に対する斜板の傾斜角度は小さくなりピストンのストローク量が減少するが、一定以下の圧力となると、回転軸に対して斜板が略垂直状態、すなわち垂直よりわずかに傾斜した状態となる。このとき、ピストンのストローク量は最小となり、ピストンによるシリンダ内の流体に対する加圧が最小となることで、吐出室への流体の吐出量が減少し、空調システムの冷却能力は最小となる。一方で、制御室内の制御圧力Pcが高圧であるほど、回転軸に対する斜板の傾斜角度は大きくなりピストンのストローク量が増加するが、一定以上の圧力となると、回転軸に対して斜板が最大傾斜角度となる。このとき、ピストンのストローク量は最大となり、ピストンによるシリンダ内の流体に対する加圧が最大となることで、吐出室への流体の吐出量が増加し、空調システムの冷却能力は最大となる。
【0020】
図1に示されるように、容量可変型圧縮機に組み込まれる容量制御弁Vは、吸入室内の吸入圧力Psにより主弁50の開閉制御を行い、制御ポート15と吸入ポート13との連通を開閉することで、制御室内の制御圧力Pcを可変制御している。すなわち本発明に係る容量制御弁Vは、容量可変型圧縮機の出口側を制御(Pc-Ps制御)するタイプの制御弁に分類される。なお、本実施例の容量制御弁Vは、容量可変型圧縮機の外部に組み込まれる外部制御弁(ECV)でもよいし、或いは容量可変型圧縮機の内部に組み込まれる内部制御弁(MCV)であってもよい。
【0021】
本実施例において、主弁50は、ロッド52の先端に固定的に取付けられた球状の弁体51と、このロッド52の先端部が挿通されたバルブハウジング10の内径部に形成された弁座53とにより構成されており、弁体51が弁座53に接離することで、主弁50が開閉するようになっている。
【0022】
次いで、容量制御弁Vの構造について説明する。
図1に示されるように、容量制御弁Vは、金属材料または樹脂材料により形成されたバルブハウジング10と、このバルブハウジング10を外嵌して固定されたケース11と、バルブハウジング10内に軸方向に往復動自在に配置された弁体51と、ケース11内に配置され、圧力駆動室40における吸入圧力Psに応じて弁体51に軸方向左方への付勢力を付与する圧力駆動部61と、から主に構成されている。
【0023】
ケース11は、軸方向左端部が開放されるとともに右端部が閉塞された有底の筒状に形成されており、このケース11の軸方向左端部に対してバルブハウジング10の軸方向右端部が挿嵌されることにより一体に略密封状態で接続固定されている。
【0024】
バルブハウジング10には、容量可変型圧縮機の制御室と連通する軸方向に平行に開口した制御ポート15と、容量可変型圧縮機の吸入室と連通する吸入ポートとして径方向に開口した吸入ポート13と、が形成されている。また、ケース11には、容量可変型圧縮機の吸入室と連通する第2の吸入ポートとして径方向に開口した第2吸入ポート14が形成されている。尚、これらのポートは、容量制御弁Vの軸方向左側から、制御ポート15、吸入ポート13、第2吸入ポート14の順に配置されている。
【0025】
バルブハウジング10は、軸方向に貫通形成されており、その先端部10cにフィルタ16が外嵌状に被覆していることで、バルブハウジング10内への異物の侵入が抑制されている。このフィルタ16の端面に貫通形成された開口部が制御ポート15を構成している。また、バルブハウジング10の先端部10cに筒状のキャップ17が内嵌されており、このキャップ17の内周部に、弁体51を保持するとともに図示右方向、すなわち閉弁方向に付勢するスプリング58が設けられている。更に、この制御ポート15は、主弁50の軸線上から外れた下側位置に開口し、且つ制御ポート15の内側にキャップ17の先細り状の先端部17aが面しているため、異物の侵入抑制効果が高められている。
【0026】
また、バルブハウジング10の内部には、制御ポート15に連通して弁体51が収容された第1弁室20と、吸入ポート13に連通してロッド52が挿通された第2弁室30と、が形成されている。また、ケース11の内部には、第2吸入ポート14に連通して圧力駆動部61が収容された圧力駆動室40が形成されている。なお、第2弁室30と圧力駆動室40は、いずれも吸入圧力Psの吸入流体が流入して同圧となるため、ケース11の外面の吸入ポート13及び第2吸入ポート14の間にOリング等のシール材を取り付けずともよい。
【0027】
また、バルブハウジング10及びケース11の内部には、球形状を成す弁体51及びこの弁体51が接続されたロッド52が軸方向に往復動自在に配置され、バルブハウジング10の内周部には、弁体51よりも小径の挿通孔10aと、この挿通孔10aよりも小径でロッド52の外周面が摺動可能な貫通孔としてのガイド孔10bとが同芯位置で貫通形成されている。更に、挿通孔10aの軸方向左側の内径部には、弁体51における弁口径面積Cに相当する外面が接離可能な弁座53が形成されている。
【0028】
バルブハウジング10の内部において、第1弁室20と第2弁室30は、軸方向に往復動する弁体51と弁座53との接離により開閉可能に仕切られている。詳しくは、
図2に示されるように、主弁50が開放されたときには、第1弁室20と第2弁室30が連通され、また
図3に示されるように、主弁50が閉塞されたときには、第1弁室20と第2弁室30は隔離されている。尚、ガイド孔10bの内周面とロッド52の外周面との間は、径方向に僅かな隙間が形成されており、ロッド52は、バルブハウジング10に対して軸方向に円滑に相対移動可能となっている。また、弁体51が接続されたロッド52の先端部52aは先細り状の小径に形成されているため、主弁50の開放時に流体の流路を確保することができる。
【0029】
図1に示されるように、主弁50は、第1弁室20に配置された球体からなる弁体51と、一端が弁体51に接続されてガイド孔10bに挿通され、弁体51よりも小径の軸体からなるロッド52と、このロッド52の他端が接続され、ロッド52を介し弁体51に軸方向の駆動力を付与する圧力駆動部61と、を有している。
【0030】
また、弁体51の左端部には、キャップ17の先端部17aに支持されたスプリング58の端部が嵌着されており、このスプリング58は、弁体51を弁座53に着座させるように、すなわち図示右方向である閉弁方向に弁体51を付勢している。また、スプリング58は、後述する圧力駆動部61に設けられるコイルスプリング63よりもバネ定数が小さく設定されている。
【0031】
圧力駆動部61は、圧力駆動室40に収容されており、軸方向に伸縮可能に形成されたベローズコア62と、このベローズコア62に内蔵されたコイルスプリング63と、ベローズコア62の軸方向左端の自由端部62aに嵌設されたアダプタ64と、から主に構成され、ベローズコア62の軸方向右端の基端部62bは、ケース11に固定的に接続されている。
【0032】
また、圧力駆動部61は、ベローズコア62の自由端部62aと基端部62bとの間で圧縮されたコイルスプリング63の付勢力により、ロッド52を介し弁体51を開弁方向に付勢した状態になっている。すなわち圧力駆動部61は、弁体51に開弁方向の駆動力を作用させるとともに、スプリング58による閉弁方向の反力を受けられるようになっている。
【0033】
次いで、容量制御弁Vの動作、主に主弁50の開閉動作について説明する。
【0034】
先ず、吸入圧力Psが比較的小さい通常の制御時における開閉動作について説明する。
図2に示されるように、容量制御弁Vは、吸入圧力Psが通常の制御時において、弁体51は図示左側の開弁方向に付勢され、弁座53から離間することで、主弁50は開放状態となっている。
【0035】
詳しくは、弁体51には、軸方向右向きすなわち閉塞方向に、スプリング58による付勢力(Fsp)が作用し、また弁口径面積Cに制御圧力Pcを乗じた付勢力(Fpc)が作用し、更にベローズ有効面積Aと弁口径面積Cとの差分の面積A-Cに吸入圧力Psを乗じた付勢力(Fps)が作用している。一方で弁体51には、軸方向左向きすなわち開放方向に、ベローズコア62内のコイルスプリング63の付勢力(Fbel)が作用している。尚ベローズコア62自体の付勢力を考慮する際には、コイルスプリング63自体の付勢力にベローズコア62自体の付勢力を加算すればよい。
【0036】
すなわち弁体51には、軸方向右向きを正として、力F1=Fsp+Fpc+Fps-Fbelが作用している。通常の制御時においては、吸入圧力Psが小さいことから、F1<0、すなわち弁体51は軸方向左向きに付勢され、弁座53から離間することで、主弁50は力F1に応じた開度で開放されている。なお、弁口径面積C、ベローズ有効面積A、スプリング58、コイルスプリング63を任意の寸法・特性に設計変更することで、所望のPc-Ps特性に設定することが可能となる。
【0037】
次に、空調システムの出力を上昇させる操作が行われ、空調システムの膨張弁の出力が増加し、容量可変型圧縮機の吸入室に供給される吸入流体の流量や吸入圧力Psが増加する場合における開閉動作について説明する。
図3に示されるように、容量制御弁Vは、吸入圧力Psが高まることで、弁体51は図示右側の閉弁方向に付勢され、弁座53に着座することで、主弁50は閉塞状態となっている。
【0038】
詳しくは、弁体51には、上述と同様に、軸方向右向きすなわち閉塞方向に、スプリング58による付勢力(Fsp)が作用し、また弁口径面積Cに制御圧力Pcを乗じた付勢力(Fpc)が作用し、更にベローズ有効面積Aと弁口径面積Cとの差分の面積A-Cに吸入圧力Psを乗じた付勢力(Fps)が作用している。一方で弁体51には、軸方向左向きすなわち開放方向に、ベローズコア62内のコイルスプリング63の付勢力(Fbel)が作用している。すなわち弁体51には、軸方向右向きを正として、力F2=Fsp+Fpc+Fps-Fbelが作用している。吸入圧力Psが最大の制御時においては、吸入圧力Psが大きいことから、F2≧0、すなわち弁体51は軸方向右向きに付勢され、弁座53に着座することで、主弁50は閉塞されている。
【0039】
このように、弁体51は制御圧力Pcの制御流体により閉塞方向への力を受けているため、制御圧力Pcが高まるように変動しても主弁50が開放するような誤作動は生じない。よって、制御圧力Pcの増加に基づきピストンのストローク量を変動させるタイプの容量可変型圧縮機にこの容量制御弁を適用することができる。
【0040】
また、バルブハウジング10に形成されたガイド孔10bに、圧力駆動部61から弁体51に力を伝達するロッド52が摺動可能に配置されていることで、主弁50の開放時に制御圧力Pcの制御流体が制御ポート15から吸入ポート13に流れ込んでも、圧力駆動部61が収容される圧力駆動室40への流れ込みを抑制できるため、圧力駆動部61は吸入流体の吸入圧力Psによって応答性高く感応する。
【0041】
また、弁体51を閉塞方向に付勢するスプリング58が配置されていることで、主弁50の閉塞時には弁体51は弁座53に付勢されており、また主弁50の開放時には弁体51はロッド52とスプリング58から互いに反対方向の力を受けているため、振動等が生じても安定して主弁50の閉塞・開放状態が維持される。
【0042】
更に、弁体51は球体であることで、弁体51が吸入流体及び制御流体から受ける受圧面積を充分に確保することができる。
【0043】
また、バルブハウジング10に固定されるとともに圧力駆動部61を収容するケース11に、吸入圧力Psの吸入流体が連通する第2吸入ポート14が形成されていることで、簡素な構造により、圧力駆動部61が収容される圧力駆動室40と主弁50が配置される第1弁室20、第2弁室30とを独立・隔離することができる。
【0044】
次に、変形例に係る容量制御弁につき、
図4を参照して説明する。なお、上記した実施例と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0045】
バルブハウジング10及びケース11の内部には、球形状を成す弁体51及びこの弁体51が接続されたロッド52が軸方向に往復動自在に配置され、バルブハウジング10の内周部には、弁体51よりも小径の挿通孔10aと、この挿通孔10aよりも小径でロッド52の外周面が摺動可能な貫通孔としてのガイド孔10bと、このガイド孔10bよりも拡径された拡径孔10dとが同芯位置で貫通形成されている。更に挿通孔10aの軸方向左側の内径部には、弁体51が接離可能な弁座53が形成されている。
【0046】
また拡径孔10dの左端の拡径段部10eには、ロッド52の外周面に取付けられた鍔部66に支持された保持スプリング65の端部が嵌着されており、この保持スプリング65は、弁体51を弁座53に着座させた状態で保持するように、すなわち図示右方向である閉弁方向に弁体51を付勢している。
【0047】
このようにすることで、容量制御弁Vは、吸入圧力Psが高まった場合に、弁体51が図示右側の閉弁方向に付勢される付勢力を高めることができ、弁座53に着座することで、主弁50は確実な閉塞状態となっている。
【0048】
詳しくは、弁体51には、上述と同様に、軸方向右向きすなわち閉塞方向に、スプリング58による付勢力(F
sp)が作用し、また弁口径面積Cに制御圧力Pcを乗じた付勢力(F
pc)が作用し、更にベローズ有効面積Aと弁口径面積Cとの差分の面積A-Cに吸入圧力Psを乗じた付勢力(F
ps)が作用し(
図3参照)、これに加えて保持スプリング65による付勢力(F
sp2)が作用している。一方で弁体51には、軸方向左向きすなわち開放方向に、ベローズコア62内のコイルスプリング63の付勢力(F
bel)が作用している。すなわち弁体51には、軸方向右向きを正として、力F3=F
sp+F
pc+F
ps+F
sp2-F
belが作用している。吸入圧力Psが最大の制御時においては、吸入圧力Psが大きいことから、F3≧0、すなわち弁体51は軸方向右向きに高い付勢力で付勢され、弁座53に着座することで、主弁50は確実に閉塞されている。
【0049】
このように、吸入圧力Psが高まった場合に、ベローズコア62が収縮しても、ロッド52がこのベローズコア62の収縮に追従して共に動作することになり、ロッド52を保持することができ、その耐久性を向上することができる。
【0050】
なお、保持スプリング65は、上記した変形例に限られず、ロッド52を軸方向左向きすなわち開放方向に付勢力を作用してもよく、このようにすることで、ロッド52と弁体51とを一体に保持することができる。
【0051】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0052】
例えば、前記実施例では、主弁50を構成する弁体51とロッド52とが固定的に接続されているが、これに限らず弁体及びロッドが離間可能に当接した状態であってもよいし、あるいは、ロッドと弁体が一体に構成され、すなわちロッドが弁体を兼ねるように構成されてもよい。
【0053】
また例えば、前記実施例では、バルブハウジング10とケース11とは別体に構成されていたが、一体に形成されてもよい。
【0054】
また、圧力駆動部61は、内部にコイルスプリングを使用せず、ベローズコア62が付勢力を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 バルブハウジング
10a 挿通孔
10b ガイド孔(貫通孔)
11 ケース
13 吸入ポート
14 第2吸入ポート(第2の吸入ポート)
15 制御ポート
20 第1弁室
30 第2弁室
40 圧力駆動室
50 主弁
51 弁体
52 ロッド
53 弁座
58 スプリング
61 圧力駆動部
62 ベローズコア
63 コイルスプリング
64 アダプタ
65 保持スプリング
Pc 制御圧力
Pd 吐出圧力
Ps 吸入圧力
V 容量制御弁