(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】歯科用粘性材料梱包体の連結構造
(51)【国際特許分類】
A61C 5/66 20170101AFI20231211BHJP
B65D 63/00 20060101ALN20231211BHJP
【FI】
A61C5/66
B65D63/00
(21)【出願番号】P 2021522764
(86)(22)【出願日】2020-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2020020623
(87)【国際公開番号】W WO2020241600
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2019101646
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 巧
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05439131(US,A)
【文献】登録実用新案第3058990(JP,U)
【文献】中国実用新案第207658262(CN,U)
【文献】特開2007-252749(JP,A)
【文献】特開2010-022421(JP,A)
【文献】特開平06-199355(JP,A)
【文献】特開2001-294250(JP,A)
【文献】特開2018-042805(JP,A)
【文献】実開昭62-102699(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/66
B65D 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科治療に用いられる歯科用粘性材料が内部にそれぞれ充填されている複数の歯科用粘性材料梱包体と、
前記複数の歯科用粘性材料梱包体のそれぞれが連結されて前記複数の歯科用粘性材料梱包体を一体的に纏める連結部と、
を備え、
前記歯科用粘性材料梱包体は、一端に開口部を有する筒状の容器と、前記容器の一端に取り付けられて前記開口部を塞ぐ蓋体と、を有し、
前記開口部は、前記歯科用粘性材料梱包体の内部に充填されている前記歯科用粘性材料をかき出す又は搾り出すための開口であり、
前記蓋体は、前記歯科用粘性材料梱包体の内部に充填されている前記歯科用粘性材料の光や空気への露出を防ぐために、前記開口部を塞いで前記歯科用粘性材料を閉塞収納し、
前記複数の歯科用粘性材料梱包体は、前記蓋体に設けられる係止部によって前記連結部に連結され
、
前記連結部は環状部材であり、
前記係止部は、前記環状部材を挿通可能な貫通孔を有する挿通部であり、
前記環状部材が前記貫通孔に挿通されることにより、前記複数の歯科用粘性材料梱包体が前記連結部に連結される、
歯科用粘性材料梱包体の連結構造。
【請求項2】
前記歯科用粘性材料梱包体は、前記開口部と反対側の他端において、対向する縁部が接合されてなる封止部によって閉鎖されている、
請求項1に記載の歯科用粘性材料梱包体の連結構造。
【請求項3】
前記歯科用粘性材料梱包体は、歯科用シリンジであり、
前記開口部と反対側の他端に設けられ、シリンジ本体内に螺入可能な押し出し棒を有する、
請求項1に記載の歯科用粘性材料梱包体の連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯科用粘性材料梱包体の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科用の粘性材料を取り扱う場合、筒状の使い捨て容器(歯科用粘性材料梱包体)に充填されて提供されることが多い(例えば特許文献1参照)。これにより、歯科用粘性材料の保管や持ち運びを容易にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、歯科治療の現場においては、患者ごとの歯牙の修復部位や個人差に対応することができるように、複数種の色の歯科用粘性材料を準備しておくことが一般的である。また今後増えると見込まれる歯科訪問診療の際に、複数の歯科用粘性材料梱包体を纏めて持ち運びできることが望ましい。
【0005】
本開示は、複数の歯科用粘性材料梱包体の持ち運びを容易にできる歯科用粘性材料梱包体の連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一観点に係る歯科用粘性材料梱包体の連結構造は、歯科治療に用いられる歯科用粘性材料が内部にそれぞれ充填されている複数の歯科用粘性材料梱包体と、前記複数の歯科用粘性材料梱包体のそれぞれが連結されて前記複数の歯科用粘性材料梱包体を一体的に纏める連結部と、を備え、前記歯科用粘性材料梱包体は、一端に開口部を有する筒状の容器と、前記容器の一端に取り付けられて前記開口部を塞ぐ蓋体と、を有し、前記開口部は、前記歯科用粘性材料梱包体の内部に充填されている前記歯科用粘性材料をかき出す又は搾り出すための開口であり、前記蓋体は、前記歯科用粘性材料梱包体の内部に充填されている前記歯科用粘性材料の光や空気への露出を防ぐために、前記開口部を塞いで前記歯科用粘性材料を閉塞収納し、前記複数の歯科用粘性材料梱包体は、前記蓋体に設けられる係止部によって前記連結部に連結され、前記連結部は環状部材であり、前記係止部は、前記環状部材を挿通可能な貫通孔を有する挿通部であり、前記環状部材が前記貫通孔に挿通されることにより、前記複数の歯科用粘性材料梱包体が前記連結部に連結される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数の歯科用粘性材料梱包体の持ち運びを容易にできる歯科用粘性材料梱包体の連結構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る歯科用粘性材料梱包体の連結構造の概略構成を示す図である。
【
図2】第2実施形態に係る歯科用粘性材料梱包体の連結構造の概略構成を示す図である。
【
図3】第3実施形態に係る歯科用粘性材料梱包体の連結構造の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
[第1実施形態]
図1を参照して第1実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態に係る歯科用粘性材料梱包体の連結構造1(以下では単に「連結構造1」とも表記する)の概略構成を示す図である。歯科用粘性材料梱包体の連結構造1は、「歯科用粘性材料梱包体の連結体」や「歯科用粘性材料梱包連結体」とも表現できる。
【0011】
図1に示すように、連結構造1は、複数の歯科用粘性材料梱包体2(以下では単に「梱包体2」とも表記する)と、リング3(連結部、環状部材)とを備える。
【0012】
梱包体2は、歯科用粘性材料が内部に充填される。梱包体2は、一端に開口部6を有する筒状の容器4と、容器4の一端に取り付けられて開口部6を塞ぐ蓋体5と、を有する。また、梱包体2は、容器4の他端において、対向する縁部が接合されてなる封止部7によって閉鎖されている。梱包体2は、所謂チューブ形状である。
【0013】
梱包体2は、筒状の容器4の一端側の開口部6から容器4内側への工具の差込み等が許容され、これにより、開口部6から内部に充填されている歯科用粘性材料のかき出しや搾り出しが可能となっている。
【0014】
封止部7は、容器4の他端側において、筒状の容器4の端部がつぶされて対向する縁部分同士が接合された形態である。従って、梱包体2は、他の部材を追加することなしに他端側の開口を閉鎖させることができ、非常に簡易な形態とすることができる。
【0015】
容器4を構成する材料は特に限定されることはないが、所定の強度を有する硬い材料であることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリアミド,塩化ビニル樹脂、ナイロン、フェノール樹脂、ポリウレタン、飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂 、ポリ塩化ビニリデン、不飽和ポリエステル樹脂、ポリブタジエン、ポリスチレン、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合)樹脂、スチロール樹脂、ポリメチルペンテン、メタクリルスチレン、ABS(アクロル二トリル、ブタジエン、スチレン)樹脂、ポリカーボネート樹脂等を好ましく使用できる。そして容器4は押し出し成形にて作製されていることが好ましい。このように容器4を比較的硬い材料により構成することにより人の力等により大きくつぶれ、その際、又はつぶれが戻ったときに歯科用粘性材料に気泡が混入することを防止することができる。
【0016】
歯科用粘性材料は、歯科分野において歯科用充填材料や人工歯用材料、歯冠材作製用材料等である。具体的な例としては、コンポジットレジンと呼ばれているペースト状の材料であり、光を当てると固まる歯の色をした硬化樹脂であって、多官能モノマーをベースとし、レジン(樹脂)中にガラス粉末やシリカ粉末などのフィラーが分散されたものである。
【0017】
コンポジットレジン等の歯科用粘性材料は、光や空気中の酸素等により劣化する可能性があり、保管の際には光や空気への露出を防ぐことが望ましい。
【0018】
リング3は、複数の梱包体2のそれぞれが連結されて複数の梱包体2を一体的に纏める連結部として機能する。リング3は、例えば円環状の部材であり、樹脂製や金属製である。リング3は例えばキーリングなどと同様の形態をとり、複数の梱包体2を連結可能である。
【0019】
梱包体2は、蓋体5に設けられる挿通部8(係止部)によってリング3に連結される。挿通部8は、蓋体5の容器4が挿入される側と反対側の先端部から梱包体2の延在方向に突出して設けられる。挿通部8には、リング3を挿通可能な貫通孔9が設けられる。リング3に挿通部8の貫通孔9を通すことで複数の歯科用粘性材料梱包体2がリング3に連結されて、これにより複数の歯科用粘性材料梱包体2を一体的に纏めた連結構造1が構成される。
【0020】
ところで、コンポジットレジンなどの歯科用粘性材料には複数種の色のものが提供されており、歯科治療の現場において、複数種の色の歯科用粘性材料の中から患者の歯の色に合う材料を選択して用いるのが一般的である。このため、歯科用粘性材料梱包体2の複数色のものを纏めて持ち運びできるのが好ましい。本実施形態の連結構造1では、上記のとおりリング3によって複数の歯科用粘性材料梱包体2のそれぞれが連結されて一体的に纏めることができるので、複数の歯科用粘性材料梱包体2の持ち運びを容易にできる。また、任意の梱包体2をリング3に連結することができるので、一体的に纏める梱包体2の組合せを自由に選択できる。これにより、歯科治療のさまざまなタスクに応じて材料のセットを用意でき、また、一部使い終わった色の補充も容易にできるので、汎用性を向上できる。
【0021】
また、本実施形態では、複数の歯科用粘性材料梱包体2は、梱包体2の蓋体5に設けられる挿通部8によってリング3に連結される。つまり、梱包体2の容器4自体はリング3に連結されずに蓋体5を介して連結されるので、個々の梱包体2の容器4を蓋体5から取り外せば当該容器4を単体で使用できる。これによりリング3や他の梱包体2の影響を受けることなく各梱包体2を利用でき、複数の梱包体2を一体的に纏めた構成でも各梱包体の使い勝手を損ねることなく、作業効率の低下を抑制できる。
【0022】
また本実施形態によれば、複数の梱包体2が、単にリング3に連結されるだけでなく、蓋体5に設けられる挿通部8(係止部)によってリング3に連結される。個々の歯科用粘性材料梱包体2の使用後には、歯科用粘性材料の光や空気への露出を防ぐために開口部6を蓋体5に取り付けて閉塞収納する必要性がある。このため本実施形態の上記構成では、使用後には梱包体2を必然的にリング3に連結された蓋体5へと戻すこととなり、この結果梱包体2の紛失等を防ぐ効果がより高くなる。
【0023】
なお、リング3は、梱包体2の挿通部8の貫通孔9に挿通できればよく、円環状以外の環状部材(例えば
図3の長円状の環状部材20など)に置き換えてもよい。また、挿通部8は、リング3に係止できればよく、例えば爪状の部材によってリング3に係止する構成など、貫通孔9以外の係止構造を用いてもよい。
【0024】
[第2実施形態]
図2を参照して第2実施形態を説明する。
図2は、第2実施形態に係る歯科用粘性材料梱包体の連結構造1Aの概略構成を示す図である。
【0025】
図2に示すように、第2実施形態の連結構造1Aは、複数の歯科用粘性材料梱包体2を一体的に纏める連結部10の構成が第1実施形態のリング3と異なる。連結部10は、基部11と、この基部11に設けられる複数の凹部12とを有する。各凹部12は、梱包体2の開口部6側の端部を挿入でき、係止できるよう形成されている。
【0026】
第2実施形態の連結構造1Aでは、複数の歯科用粘性材料梱包体2が連結部10の凹部12に嵌合されることにより、複数の歯科用粘性材料梱包体2が連結部10に連結され、これにより複数の歯科用粘性材料梱包体2を一体的に纏めることができる。
【0027】
また本実施形態によれば、複数の梱包体2が、単に連結部10に連結されるだけでなく、個々の梱包体2が連結部10に連結されることで当該梱包体2の開口部6が連結部10の凹部12によって塞がれる。個々の歯科用粘性材料梱包体2の使用後には、歯科用粘性材料の光や空気への露出を防ぐために開口部6を凹部12に嵌合させて閉塞収納する必要性がある。このため本実施形態の上記構成では、使用後には梱包体2を必然的に連結部10に設けられた凹部12へと戻すこととなり、この結果梱包体2の紛失等を防ぐ効果がより高くなる。
【0028】
[第3実施形態]
図3を参照して第3実施形態を説明する。
図3は、第3実施形態に係る歯科用粘性材料梱包体の連結構造1Bの概略構成を示す図である。
【0029】
図3に示すように、第3実施形態の連結構造1Bは、環状部材20によって一体的に纏められる複数の歯科用粘性材料梱包体13の構造が第1、第2実施形態の梱包体2と異なる。
【0030】
歯科用粘性材料梱包体13は、所謂、歯科用シリンジと呼ばれるものである。歯科用粘性材料が充填される容器14の一端側の開口部16とは反対側の他端には、容器14内に螺入可能な押し出し棒17を有する。開口部16は蓋体15によって封止されており、蓋体15を開き、押し出し棒17を歯科用シリンジ本体(容器14)内に螺入することによって開口部16から押し出した充填物を掻き取って使用し、充填物を掻き取った後は再び開口部16を蓋体15で閉じることによって密閉して保管できる。
【0031】
そして、第3実施形態の歯科用シリンジ13においても、蓋体15に設けられる挿通部18(係止部)によって環状部材20に連結される。挿通部18は、蓋体15の容器14が挿入される側と反対側の先端部から歯科用シリンジ13の延在方向に突出して設けられる。挿通部18には、環状部材20を挿通可能な貫通孔19が設けられる。環状部材20が挿通部18の貫通孔19に挿通されることにより、複数の歯科用シリンジ13が環状部材20に連結されて、これにより複数の歯科用シリンジ13を一体的に纏めた連結構造1Bが構成される。
【0032】
また本実施形態によれば、複数の歯科用シリンジ13が、単に環状部材20に連結されるだけでなく、蓋体15に設けられる挿通部18(係止部)によって環状部材20に連結される。個々の歯科用シリンジ13の使用後には、歯科用粘性材料の光や空気への露出を防ぐために開口部16を蓋体15に取り付けて閉塞収納する必要性がある。このため本実施形態の上記構成では、使用後には歯科用シリンジ13を必然的に環状部材20に連結された蓋体15へと戻すこととなり、この結果歯科用シリンジ13の紛失等を防ぐ効果がより高くなる。
【0033】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0034】
本国際出願は2019年5月30日に出願された日本国特許出願2019-101646号に基づく優先権を主張するものであり、2019-101646号の全内容をここに本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0035】
1,1A,1B 歯科用粘性材料梱包体の連結構造
2 歯科用粘性材料梱包体
3 リング(連結部)
4 容器
5,15 蓋体
6,16 開口部
8,18 挿通部(係止部)
9,19 貫通孔
10 連結部
11 基部
12 凹部
13 歯科用シリンジ(歯科用粘性材料梱包体)
17 押し出し棒
20 環状部材(連結部)