(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】低温タンクを制御するための方法、対応する低温タンク及び対応する潜水船
(51)【国際特許分類】
F17C 13/02 20060101AFI20231211BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20231211BHJP
B63G 8/12 20060101ALI20231211BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
F17C13/02 302
B63B25/16 D
B63B25/16 H
B63G8/12 A
F17C13/00 302A
(21)【出願番号】P 2021525233
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(86)【国際出願番号】 EP2019081034
(87)【国際公開番号】W WO2020099410
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-10-12
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511093144
【氏名又は名称】ナバル グループ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】ヤニク リオ
(72)【発明者】
【氏名】カロリーヌ ソレイルハック
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-145024(JP,A)
【文献】特開2010-218879(JP,A)
【文献】特開2017-006856(JP,A)
【文献】特開2001-141193(JP,A)
【文献】特表2009-541662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/02
B63B 25/16
B63G 8/12
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化されたガスを含有するチャンバー(40)を備える低温タンク(38)を制御するための方法であって、液化されたガスがチャンバー(40)中で液相(44)及び気相(46)を形成していて、方法が、
気相(46)の圧力を表すパラメータ及び液相(44)における圧力を表すパラメータを測定する工程
を含み、方法が、
液相(44)の温度を表すパラメータを測定する工程
;
液相(44)の温度を表すパラメータ、液相(44)における圧力を表すパラメータ及び気相(46)の圧力を表すパラメータから、液相(44)の合計の質量を決定する工程
;
液相(44)の温度を所定の閾値と比較する工程;
液相(44)の温度が閾値より高い場合には、低温タンク(38)をパージする必要を伝える工程;
液相(44)の温度の時間発展を表すパラメータを得る工程;並びに
液相(44)の温度と、液相(44)の温度の時間発展を表すパラメータと、パージの閾値とから、低温タンク(38)をパージする必要がある予測される日付を計算する工程
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
液相(44)の温度の時間発展を表すパラメータを得る工程;
液相(44)の温度の時間発展を表すパラメータの第一の試験を行って、第一の結果を得る工程;及び
第一の結果に基づいて、低温タンク(38)のメンテナンスについての必要を伝える工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液相(44)の温度の時間発展を表すパラメータが、液相(44)の温度を表すパラメータの時間導関数であり、第一の試験が、液相(44)の温度を表すパラメータの時間導関数の、所定の閾値との比較であり、液相(44)の温度を表すパラメータの時間導関数が所定の閾値より大きい場合に、メンテナンスについての必要が伝えられる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
液相(44)の温度の時間発展を表すパラメータを得る工程;
液相(44)の温度の時間発展を表すパラメータの第二の試験を行って、第二の結果を得る工程;及び
第二の結果に基づいて、チャンバー(40)の熱的絶縁性の損失を伝える工程
をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
液相(44)の温度の時間発展を表すパラメータが、液相(44)の温度の時間導関数であり、第二の試験が、液相(44)の温度の時間導関数の連続性を表すパラメータを計算して、連続性を表すパラメータを所定の閾値と比較することを含み、連続性を表すパラメータが閾値より大きい場合には、熱的絶縁性の損失が報告される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
低温タンク(38)が、動力発生システム(34)を備える推進システム(18)によって推進される潜水船(10)中に配置されている、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
液化されたガスを含有するチャンバー(40)であって、液化されたガスがチャンバー(40)中で液相(44)及び気相(46)を形成している、チャンバー(40);
液相(44)における圧力を表すパラメータを測定するように配置された第一の圧力センサー(60);
気相(46)における圧力を表すパラメータを測定するように配置された第二の圧力センサー(62);
液相(44)の温度を表すパラメータを測定するように配置された温度センサー(64);並びに
第一の圧力センサー(60)、第二の圧力センサー(62)及び温度センサー(64)を制御するように
、液相(44)の温度、液相(44)における圧力及び気相(46)の圧力から液相(44)の合計の質量を決定するように
、液相(44)の温度を所定の閾値と比較するように、液相(44)の温度が閾値より高い場合には、低温タンク(38)をパージする必要を伝えるように、液相(44)の温度の時間発展を表すパラメータを得るように、かつ液相(44)の温度と、液相(44)の温度の時間発展を表すパラメータと、パージの閾値とから、低温タンク(38)をパージする必要がある予測される日付を計算するように構成された制御モジュール(66)
を備える低温タンク(38)。
【請求項8】
動力発生システム(34)と、請求項
7に記載の少なくとも1つの低温タンク(38)とを備える推進システム(18)を備える非大気性推進の潜水船(10)であって、低温タンク(38)中に含有されている液化されたガスが酸素であり、酸化剤として動力発生システム(34)に供給される、潜水船(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化されたガスを含有するチャンバーを備える低温タンクを制御するための方法に関するものであり、液化されたガスはチャンバー中で液相及び気相を形成していて、方法は以下の工程:気相の圧力を表すパラメータ及び液相における圧力を表すパラメータを測定する工程を含む。
【0002】
本発明はまた、低温タンク、及びこのようなタンクを備える潜水船に関するものである。
【背景技術】
【0003】
非大気性推進システム(又はAIP、非大気依存推進の略)は、外部の空気の使用なしに、長期間の間、運転することができる潜水船のための、比較的新しい種類の動力発生システムである。このシステムは、非大気性の潜水船について、その外気チューブ(又は「シュノーケル」)を持ち出す必要を回避し、それによって水面付近に浮上する必要を限定し、それによって攻撃の受けやすさを限定する。
【0004】
非大気性推進システムは、従来の潜水船に、それらの潜水自律性における著しい改善(従来の推進方式を有する潜水船については数十時間であるのに対して、数日)、及び結果的にそれらの静音性における著しい改善をもたらす。
【0005】
非大気性推進システムは、標準的な燃料を使用する従来の燃焼エンジン、例えばディーゼルエンジンと、潜水船内で、低温タンク中に、液体形態で貯蔵された酸素とを備える。液体酸素はまた、乗員によって呼吸される空気の一部を新たにするのに使用することができ、このことは、さらなる自律性の増加に寄与する。
【0006】
タンク中の液体酸素の量、並びに絶縁の性能を制御することは、潜水船の自律性及び安全性を評価することに対して重要である。加えて、低温タンクは、船の外部へのベントを必要とする場合があり、これは、ステルス性を必要とする任務の状況において、未然に予測される必要がある。
【0007】
従って、低温タンクの管理は、特に閉じられた環境であり、かつ高いレベルのステルス性を維持する必要がある潜水船において、大きな課題である。
【0008】
現在のタンク管理方法は、タンク中に含有される質量を推定するための、及び絶縁性の低下を検出するための、タンクの内部圧力の測定に頼っている。
【0009】
しかし、本発明は、これらの方法の正確性及び信頼性をさらに改善するのに有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、特に潜水船において、液化されたガスのタンクの、より正確かつ信頼性のある管理を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これを達成するために、以下の工程:
液相の温度を表すパラメータを測定する工程;並びに
液相の温度を表すパラメータ、液相における圧力を表すパラメータ及び気相の圧力を表すパラメータから、液相の合計の質量を決定する工程
をさらに含む、前述の種類の制御方法を提供することが本発明の目的である。
【0012】
特定の実施態様によれば、本発明による方法は、以下の特徴:
方法が以下の工程:
液相の温度の時間発展を表すパラメータを得る工程、
液相の温度の時間発展を表すパラメータの第一の試験を行って、第一の結果を得る工程、及び
第一の結果に基づいて、低温タンクのメンテナンスについての必要を伝える工程
をさらに含むこと;
液相の温度の時間発展を表すパラメータが、液相の温度を表すパラメータの時間導関数であり、第一の試験が、液相の温度を表すパラメータの時間導関数の、所定の閾値との比較であり、液相の温度を表すパラメータの時間導関数が閾値より大きい場合に、メンテナンスについての必要が伝えられること;
方法が以下の工程:
液相の温度の時間発展を表すパラメータを得る工程、
液相の温度の時間発展を表すパラメータの第二の試験を行って、第二の結果を得る工程、及び
第二の結果に基づいて、チャンバーの熱的絶縁性の損失を伝える工程
をさらに含むこと;
液相の温度の時間発展を表すパラメータが、液相の温度を表すパラメータの時間導関数であり、第二の試験が、液相の温度の時間導関数の連続性を表すパラメータを計算して、連続性を表すパラメータを所定の閾値と比較することを含み、連続性を表すパラメータが閾値より大きい場合には、熱的絶縁性の損失が伝えられること;
方法が以下の工程:
液相の温度を、所定の閾値に対して比較する工程、及び
液相の温度が閾値より高い場合には、低温タンクをパージする必要を伝える工程
をさらに含むこと;
方法が以下の工程:
液相の温度の時間発展を表すパラメータを得る工程、
液相の温度と、液相の温度の時間発展を表すパラメータと、パージの閾値とから、低温タンクをパージする必要がある予測される日付を計算する工程
をさらに含むこと;並びに/又は
低温タンクが、動力発生システムを備える推進システムによって推進される潜水船中に配置されていること
のうち1つ又は複数を有し、これらの特徴は、単独で、又は任意の技術的に可能な組み合わせで用いられる。
【0013】
本発明はまた、
液化されたガスを含有するチャンバーであって、液化されたガスがチャンバー中で液相及び気相を形成している、チャンバー;
液相における圧力を表すパラメータを測定するように配置された第一の圧力センサー;
気相における圧力を表すパラメータを測定するように配置された第二の圧力センサー;
液相の温度を表すパラメータを測定するように配置された温度センサー;並びに
第一の圧力センサー、第二の圧力センサー及び温度センサーを制御するように、かつ液相の温度、液相における圧力及び気相の圧力から液相の合計の質量を決定するように構成された制御モジュール
を備える低温タンクに関する。
【0014】
さらに、本発明は、動力発生システムと、先に画定された少なくとも1つの低温タンクとを備える推進システムを備える非大気性推進の潜水船であって、低温タンク中に含有されている液化されたガスが酸素であり、酸化剤として動力発生システムを供給する、非大気性推進の潜水船に関するものである。
【0015】
本発明は、例としてのみ与えられる、かつ添付の図面を参照してされる以下の説明から、より良く理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図1の潜水船の低温タンクの模式的な断面図である。
【
図3】
図2のタンク中に含有される流体の温度の時間発展のグラフ表示である。
【
図4】
図2のタンク中に含有される流体の温度の時間発展のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1において、積水12中に、積水12の水面14の下に潜水した潜水船10が示されている。
【0018】
「潜水船」は、十分に潜水した行程を、特に一日以上の期間、行くことができ、行くように意図されている船を意味する。このような船はまた、水面に戻ることもできる。
【0019】
潜水船10は、積水12から水密に隔離された内部空間を画定する船体16、並びに内部空間中に収容された推進システム18、及び推進システム18によって駆動され、かつ潜水船を動かすために適している少なくとも1つのプロペラ20を備える。
【0020】
潜水船10は、非大気性推進の潜水船であり、すなわち推進システム18は、その動作のために外部の空気を必要としない。
【0021】
推進システム18は、公知の方式で、プロペラ20を駆動させる電気モーター22、電気モーター22に動力を供給するオルタネーター24及びタービン26を備える熱的/電気的なシステムである。推進システム18は、蒸気発生器28、コンデンサ30、タービン26を駆動させる熱交換器32、及び熱交換器32のための熱を発生させる動力発生システム34、より詳細には燃焼器、をさらに備える。
【0022】
推進システム18は、エタノールなどを含有する燃料タンク36、及び酸素を含有する低温タンク38をさらに備える。低温タンク38及び燃料タンク36は、動力発生システム34に、ここでは燃焼器に、動力発生システム34中で酸化剤として作用して発熱燃焼反応に関与する酸素及び燃料を、それぞれ供給する。
【0023】
低温タンク38は、
図2に、より詳細に示されていて、液体酸素を貯蔵するための内部空間を画定する、特に二重の壁である、熱的に絶縁の壁42を備える貯蔵チャンバー40を備える。
【0024】
低温タンク38中に含有される酸素は、チャンバー40中で、液相44及び気相46を形成し、液相44の上部表面47によって分けられている。
【0025】
低温タンク38が、重力のその場所における方向に沿って配向された上昇方向Z-Z’に関連して、
図2に示されている。気相46より密度が高い液相44は、Z-Z’上昇方向に対してチャンバー40の下部を占め、気相46は、Z-Z’上昇方向に対してチャンバー40の上部を占める。
【0026】
低温タンク38は、チャンバー40の下部に開口している第一の導管50と、チャンバー40の上部に開口している第二の導管52とをさらに備える。特に、第一の導管50は、液体酸素についてのチャンバー40への入口導管であり、特に、第二の導管52は、チャンバー40からの出口導管である。
【0027】
第一の導管50及び第二の導管52は、第一の導管50及び第二の導管52を通じてのチャンバー40中への流体の流入及び流出を制御するために適した第一のバルブ54及び第二のバルブ56によってそれぞれ供給される。
【0028】
有利には、第一の導管50及び第二の導管52は、熱的絶縁ジャケット(図示されていない)を備える。
【0029】
第一の導管50及び第二の導管52は、壁42を通って、チャンバー40と、第一のバルブ54及び第二のバルブ56との間に延在している内側部分を、それぞれ備える。
【0030】
有利には、上昇方向Z-Z’に対して、第一の導管50の内側部分は、チャンバー40の底面58を通って開口していて、チャンバー40の低い充填率においてであっても、第一の導管50が液相44に通じることを確実にしている。
【0031】
1つの実施態様において、低温タンク38は、チャンバー40の下部に配置された第一の圧力センサー60と、チャンバー40の上部に配置された第二の圧力センサー62とをさらに備える。
【0032】
第一の及び第二の圧力センサー60、62は、それぞれ、チャンバー40中に含有される酸素の液相44における、及び気相46における静水圧を測定するように構成されている。
【0033】
より正確には、第一の及び第二の圧力センサー60、62は、それぞれ、ある点における液相44の、及びある点における気相46の静水圧を表すパラメータを測定するように構成されている。「表すパラメータ」は、センサーが、直接的な計算によって圧力を直接的に得ることを可能とする物理的な量を測定することを意味する。
【0034】
有利には、液相44における圧力を表すパラメータは、液相44における圧力自体であり、気相46の圧力を表すパラメータは、気相46の圧力自体である。
【0035】
低温タンク40は、液相44の温度を測定するように構成された、チャンバー40の下部に配置された温度センサー64をさらに備える。
【0036】
有利には、液相44の温度を表すパラメータは、液相44の温度である。
【0037】
より具体的には、温度センサー64は、ある点における液相44の温度を表すパラメータを測定するように構成されている。有利には、温度を表すパラメータは、液相44の温度自体である。
【0038】
温度センサー64は、例えばPT100型の白金抵抗温度計である。
【0039】
有利には、温度センサー64が、低い充填率であっても、液相44の温度を測定することができるように、温度センサー64は第一の導管50の内側部分に配置され、チャンバー40の下部を向いている。
【0040】
第一の圧力センサー60、第二の圧力センサー62及び温度センサー64は、第一の圧力センサー60で液相44の圧力における、気相46の圧力における、及び液相44の温度におけるそれぞれの時間変化を監視するように構成された制御モジュール66に接続されている。
【0041】
制御モジュール66は、コンピュータプログラムを実行するように構成されたプロセッサと、データを記憶するように構成されたメモリとを備える。
【0042】
制御モジュール66はまた、下で説明される低温タンク38を制御するための方法を行うように、かつ温度及び圧力の測定に基づいて、チャンバー40に含有される液相44の質量、起こり得る低温タンク38のメンテナンスについての必要、起こり得るチャンバー40の熱的絶縁性の低下、及び起こり得る低温タンク38をパージする必要を判定するために、並びに低温タンク38のパージについて要求される日付を予測するように、構成されている。
【0043】
タンク38は、ポンプを備える、及び第一の導管50及び第二の導管52に、パージバルブ70を通して流体的に接続されているパージモジュール68をさらに備える。パージモジュール68は、気相46の一部を引き込むように、特に第二の導管52を通して引き込むように、構成されていて、チャンバー40中の気相46の圧力を低下させて、このことは液相44の一部の蒸発を引き起こす。液相44の一部の蒸発は、酸素の蒸発のエンタルピーに応じて、チャンバー40における温度を低下させる。
【0044】
パージモジュール68による低温容器38のパージは、引き抜かれる気相46の一部をベントする能力を必要とし、このことは、閉じられた環境において問題となり得る。
【0045】
代わりの実施態様において、低温容器38は、チャンバー40の下部に配置された第一の圧力センサー60及びチャンバー40の上部に配置された第二の圧力センサー62の代わりに、差圧伝送器(図示されていない)を備える。
【0046】
差圧伝送器は、例えば、低温容器38の外側に配置されている。特に、このことは、差圧伝送器が液相との接触を断つことを可能とする。
【0047】
上で説明された潜水船10の低温タンク38を制御するための方法が、これより説明される。低温タンク38は、液相44及び気相46を形成する液体酸素を含有する。
【0048】
方法は、第一の圧力センサー60によって液相44における圧力を、第二の圧力センサー62によって気相46の圧力を、及び温度センサー64によって液相44の温度を、繰り返し測定する工程を含む。
【0049】
より一般的には、圧力センサー60、62及び温度センサー64は、それぞれ、液相44における圧力、気相46の圧力及び液相44の温度を表すパラメータを測定する。有利には、表すパラメータは、それぞれ、液相44における圧力、気相46における圧力、及び液相44の温度のそれら自体である。
【0050】
温度及び圧力の測定は制御モジュール66によって行われ、測定の結果はメモリに記憶される。
【0051】
方法は、温度及び圧力の測定から、液相44の質量mを決定する工程をさらに含む。
【0052】
液相44における液体酸素の密度ρは、制御モジュール66によって、液相44の温度から推定される。
【0053】
次いで、チャンバー40の充填高さhは、測定された液相44における圧力と気相46の圧力との差である圧力差ΔP、及び静水圧平衡式ΔP=ρgh(式中、gは重力加速度)に基づいて定められる。
【0054】
充填高さhは、第一の圧力センサー60と液相44の上部表面47との間の高さである。これは、気相46が液相44よりかなり密度が小さいとき、気相46における圧力が実質的に均一と考えられるためである。
【0055】
次いで、液相44の質量mが、チャンバー40の充填高さh及び形状の関数として計算される。
【0056】
例えば、チャンバー40の質量mは、チャンバー40の形状の関数としての直接的な計算によって得られる。チャンバー40が半径Rを有する形の円筒状である場合、液相の質量mは、式:m=ρhΠR2によって得られる。
【0057】
代わりに、チャンバー40が複雑な形状を有する場合、質量mは、前もって定められてメモリに記憶された充填チャートから得られる。
【0058】
液相44の質量mは、操作者に知らせるために、例えばスクリーンに、表示される。
【0059】
チャンバー40中に含有される液体酸素の質量の正確かつ連続的な測定は、潜水船10の残りの自律性の、より信頼性のある管理を可能とする。
【0060】
方法は、起こり得る低温タンク38のメンテナンスについての必要を検出するための工程をさらに含む。液相44の温度の時間発展は、温度センサー64を通じて得られる温度測定から決定され、温度の時間導関数は、制御モジュール66によって繰り返し計算される。
【0061】
温度の時間導関数は、所定の閾値と比較されて、制御モジュール66は、温度の時間導関数が閾値以上である場合に、タンク38がメンテナンスを必要とすると決定する。
【0062】
次いで、低温タンク38のメンテナンスについての必要が、例えばスクリーンにメッセージを表示することによって、操作者に知らされる。
【0063】
このメンテナンスについての必要の検出が、時間tの関数としての液相の温度Tのグラフ表示である
図3に示されている。温度の時間導関数T’は、すなわち温度曲線Tの局所的な傾きは、時間tに伴って増加する。グラフにおいて記載されているある瞬間t
mにおいて、温度Tの時間導関数T’が閾値T’
maxを超過して、制御モジュール66は、低温タンク58のメンテナンスについての必要を伝える。温度の時間導関数の閾値T’
maxは、0.5K/hrから1桁以内の値を有し、例えばより詳細には0.5K/hrに等しい。
【0064】
典型的には、温度Tの時間導関数T’における増加は、1年又は複数年の規模の時間スケールで観察される。
【0065】
液相44の温度を監視することによって、メンテナンスについての必要を検出することは、低温タンク38の特有のエイジングを考慮に入れずに、一定の間隔でメンテナンスが行われていた既存の方法よりも、正確な情報を提供する。
【0066】
方法は、容器40の熱的絶縁性の任意の低下を検出する工程をさらに含む。液相44の温度の時間導関数T’は、上で説明されるように繰り返し計算される。チャンバー40の熱的絶縁性の損失は、液相44の温度の時間導関数T’が不連続的に増加するときに検出される。
【0067】
これによって意味されるのは、
図4中に、ある瞬間t
pにおいて示されるように、時間tの関数としての液相44の温度Tの曲線が、傾きにおける不連続を示すことである。瞬間t
pは、制御モジュール66による、チャンバー40の絶縁性の低下の検出に対応していて、それは一般に緊急の介入を必要とする。
【0068】
このような傾斜の不連続を検出するために、制御モジュール66は、液相44の温度Tの時間導関数の連続性を表すパラメータを計算し、このパラメータを所定の連続性閾値と比較する。制御モジュール66は、連続性を表すパラメータが連続性閾値より大きいとき、傾きの不連続を検出する。
【0069】
パラメータは、例えば、液相44の温度の時間導関数の2つの連続する値の差である。
【0070】
次いで、絶縁性の低下が、例えばスクリーンにメッセージを表示することによって、及び/又は可聴式の警告の手法によって、操作者に伝えられる。
【0071】
液相44の温度からの絶縁性の損失の検出は、従来から使用されている方法による気相46の圧力の監視による絶縁性の損失の検出より速い。このことは、絶縁性の低下に対する、より速い応答を可能とし、低温容器38の損傷のリスクを低減する。
【0072】
方法は、低温タンク38をパージする必要を決定する工程、及びパージする必要を予測する工程をさらに含む。時間の関数としての、液相44の温度の時間発展は、先に説明されるように決定される。
【0073】
低温タンクをパージする必要は、液相44の温度が所定のパージの閾値を超過するときに、制御モジュール66によって決定される。
【0074】
パージの閾値は、例えば110Kに等しい。
【0075】
パージの閾値が超過されるとき、タンクをパージする必要が、例えばスクリーンにメッセージを表示することによって、操作者に伝えられる。
【0076】
加えて、制御モジュール66は、液相44の温度、閾値、及び先のように計算された液相44の温度の時間導関数に基づいて、タンク38がパージされる必要がある日付を予測する。
【0077】
次のパージが必要となる予測された日付は、例えばスクリーンにその日付を表示することによって、操作者に報告される。
【0078】
このことは、特に潜水船10の水面浮上の間に、高いステルス性を維持する必要がある潜水船10の任務を避けて、パージが計画されることを可能とする。
【0079】
低温タンク38をパージする必要を決定及び予測するための液相44の温度の使用は、従来から使用されている気相圧力の追跡より信頼性が高い。
本発明の実施形態としては、以下の実施形態を挙げることができる。
(付記1)
液化されたガスを含有するチャンバー(40)を備える低温タンク(38)を制御するための方法であって、液化されたガスがチャンバー(40)中で液相(44)及び気相(46)を形成していて、方法が、
気相(46)の圧力を表すパラメータ及び液相(44)における圧力を表すパラメータを測定する工程
を含み、方法が、
液相(44)の温度を表すパラメータを測定する工程;並びに
液相(44)の温度を表すパラメータ、液相(44)における圧力を表すパラメータ及び気相(46)の圧力を表すパラメータから、液相(44)の合計の質量を決定する工程
をさらに含むことを特徴とする方法。
(付記2)
液相(44)の温度の時間発展を表すパラメータを得る工程;
液相(44)の温度の時間発展を表すパラメータの第一の試験を行って、第一の結果を得る工程;及び
第一の結果に基づいて、低温タンク(38)のメンテナンスについての必要を伝える工程
をさらに含む、付記1に記載の方法。
(付記3)
液相(44)の温度の時間発展を表すパラメータが、液相(44)の温度を表すパラメータの時間導関数であり、第一の試験が、液相(44)の温度を表すパラメータの時間導関数の、所定の閾値との比較であり、液相(44)の温度を表すパラメータの時間導関数が所定の閾値より大きい場合に、メンテナンスについての必要が伝えられる、付記2に記載の方法。
(付記4)
液相(44)の温度の時間発展を表すパラメータを得る工程;
液相(44)の温度の時間発展を表すパラメータの第二の試験を行って、第二の結果を得る工程;及び
第二の結果に基づいて、チャンバー(40)の熱的絶縁性の損失を伝える工程
をさらに含む、付記1~3のいずれか1項に記載の方法。
(付記5)
液相(44)の温度の時間発展を表すパラメータが、液相(44)の温度の時間導関数であり、第二の試験が、液相(44)の温度の時間導関数の連続性を表すパラメータを計算して、連続性を表すパラメータを所定の閾値と比較することを含み、連続性を表すパラメータが閾値より大きい場合には、熱的絶縁性の損失が報告される、付記4に記載の方法。
(付記6)
液相(44)の温度を所定の閾値と比較する工程;及び
液相(44)の温度が閾値より高い場合には、低温タンク(38)をパージする必要を伝える工程
をさらに含む、付記1~5のいずれか1項に記載の方法。
(付記7)
液相(44)の温度の時間発展を表すパラメータを得る工程;
液相(44)の温度と、液相(44)の温度の時間発展を表すパラメータと、パージの閾値とから、低温タンク(38)をパージする必要がある予測される日付を計算する工程
をさらに含む、付記6に記載の方法。
(付記8)
低温タンク(38)が、動力発生システム(34)を備える推進システム(18)によって推進される潜水船(10)中に配置されている、付記1~7のいずれか1項に記載の方法。
(付記9)
液化されたガスを含有するチャンバー(40)であって、液化されたガスがチャンバー(40)中で液相(44)及び気相(46)を形成している、チャンバー(40);
液相(44)における圧力を表すパラメータを測定するように配置された第一の圧力センサー(60);
気相(46)における圧力を表すパラメータを測定するように配置された第二の圧力センサー(62);
液相(44)の温度を表すパラメータを測定するように配置された温度センサー(64);並びに
第一の圧力センサー(60)、第二の圧力センサー(62)及び温度センサー(64)を制御するように、かつ液相(44)の温度、液相(44)における圧力及び気相(46)の圧力から液相(44)の合計の質量を決定するように構成された制御モジュール(66)
を備える低温タンク(38)。
(付記10)
動力発生システム(34)と、付記9に記載の少なくとも1つの低温タンク(38)とを備える推進システム(18)を備える非大気性推進の潜水船(10)であって、低温タンク(38)中に含有されている液化されたガスが酸素であり、酸化剤として動力発生システム(34)に供給される、潜水船(10)。