(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】COVID-19新型コロナ肺炎を予防又は治療する医薬品、食品及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/47 20060101AFI20231211BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20231211BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231211BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231211BHJP
A23L 33/17 20160101ALI20231211BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20231211BHJP
【FI】
A61K38/47
A61K38/05
A61P11/00
A61P43/00 121
A23L33/17
A23L33/10
(21)【出願番号】P 2021551868
(86)(22)【出願日】2020-05-09
(86)【国際出願番号】 CN2020089422
(87)【国際公開番号】W WO2021217702
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】202010341811.3
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521387833
【氏名又は名称】広州新創憶薬物臨床研究有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】521387844
【氏名又は名称】広州新創意生物医薬有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】519144495
【氏名又は名称】広州威爾曼新薬研発有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGZHOU WELMAN NEW DRUG R&D CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 1608,No.116,TiYuDong Road,Tianhe District,Guangzhou,Guangdong 510620,China
(73)【特許権者】
【識別番号】520253328
【氏名又は名称】湘北威爾曼制薬股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】519144509
【氏名又は名称】南京康福順薬業有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANJING KANGFUSHUN PHARMACEUTICAL CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】E3 Building,No.9,Weidi Road,Xianlin Street,Qixia District Nanjing,Jiangsu 210046,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】孫明傑
(72)【発明者】
【氏名】孫天宇
(72)【発明者】
【氏名】李萇清
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1548152(CN,A)
【文献】特表2001-525814(JP,A)
【文献】Indian J Med Res.,2020年02月,Vol. 151,p. 160-171
【文献】CHINESE JOURNAL OF VIROLOGY,2020年03月,Vol. 36, No. 2,p. 160-164
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
31/00-31/80
45/00-45/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リゾチーム
とグリシルリジン酸またはその塩の組み合わせを含み、リゾチームとグリシルリジン酸又はその塩の重量比は100:1~10:1である、COVID-19新型コロナ肺炎を予防もしくは治療するための医薬品、又はCOVID-19新型コロナ肺炎の予防もしくは治療を補助するための食
品。
【請求項2】
前記医薬品はさらに、COVID-19新型コロナ肺炎を予防又は治療するために使用できる他の成分も含む、請求項
1に記載の医薬品又は食品。
【請求項3】
前記COVID-19新型コロナ肺炎を予防又は治療するために使用できる他の成分は、インターフェロン、オセルタミビル及びその塩、ロピナビル、リトナビル、ファビピラビル、リバビリン、レムデシビル、クロロキン及びその塩、ヒドロキシクロロキン及びその塩、アルビドール及びその塩、インターロイキン阻害剤、腫瘍壊死因子阻害剤、ヤヌスキナーゼ阻害剤、糖質コルチコイド、プロテアーゼ阻害剤、又は腸内環境調整剤の1つ又は複数から選択される、請求項2に記載の医薬品又は食品。
【請求項4】
前記医薬品の製剤形態は、経口剤、注射剤、吸入剤であり、前記医薬品又は食品の放出形態は、即時放出、遅延放出、持続放出又は制御放出である、請求項1に記載の医薬品又は食品。
【請求項5】
リゾチーム及びグリシルリジン酸又はその塩を含み、リゾチームとグリシルリジン酸又はその塩の重量比は100:1~10:1である、COVID-19新型コロナ肺炎を予防もしくは治療するための、又はCOVID-19新型コロナ肺炎の予防もしくは治療を補助するための、組成物。
【請求項6】
前記組成物におけるリゾチームとグリシルリジン酸又はその塩は、それぞれ別々の医薬品又は食品の中に存在するか、或いは同じ医薬品又は食品の中に併存する、請求項
5に記載の
組成物。
【請求項7】
前記COVID-19新型コロナ肺炎を予防又は治療するリゾチーム
及びグリシルリジン酸又はその塩を含む組成物はさらに、COVID-19新型コロナ肺炎を予防又は治療するために使用できる他の成分も含む、請求項5~6のいずれか一項に記載
の組成物。
【請求項8】
前記COVID-19新型コロナ肺炎を予防又は治療するために使用できる他の成分は、インターフェロン、オセルタミビル及びその塩、ロピナビル、リトナビル、ファビピラビル、リバビリン、レムデシビル、クロロキン及びその塩、ヒドロキシクロロキン及びその塩、アルビドール及びその塩、インターロイキン阻害剤、腫瘍壊死因子阻害剤、ヤヌスキナーゼ阻害剤、糖質コルチコイド、プロテアーゼ阻害剤、又は腸内環境調整剤の1つ又は複数から選択される、請求項
7に記載
の組成物。
【請求項9】
前記リゾチームの1日当たりの服用量は、0.5gから20gである、請求項
5~
6のいずれか一項に記載
の組成物。
【請求項10】
前記COVID-19新型コロナ肺炎は、COVID-19新型コロナウイルスの核酸検査で陽性を示すか、又はCOVID-19新型コロナ肺炎と臨床診断されている、請求項
5~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記COVID-19新型コロナ肺炎は、さらに気道抵抗の増加、呼気量の減少及び/又は腸管バリア機能障害が存在する、請求項
5~6のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療の分野に関し、特にCOVID-19新型コロナウイルス肺炎を予防又は治療することができる医薬品、食品及びその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2019年12月、中国・武漢の一部の医療施設で、原因不明の肺炎患者が相次いで現れ、鑑定により新型コロナウイルスCOVID-19による肺炎(新型コロナ肺炎)と特定された。その後、疫病が蔓延し、中国の武漢で新型コロナウイルス肺炎が爆発的に広がり、世界的なパンデミックとなった。新型コロナウイルスは感染力が強く、重症の新型コロナウイルス肺炎患者の死亡率は高い。現在、全世界で累計280万人以上の感染者が確認され、累計20万人以上が亡くなっている。これにより、人間社会に未曾有の人命と財産の損失をもたらした。
【0003】
COVID-19は、コロナウイルス科に属する新しいウイルスである。COVID-19は、SARSコロナウイルスと一定の類似性を持つが、明らかな違いもある。特に、ウイルスの遺伝子配列、無症候性キャリア、感染力、臨床症状、組織病理学などの面で大きな違いがある。病理観察の結果、新型コロナウイルス肺炎の患者は、SARS非定型肺炎に比べて、肺の線維化程度が低いが、肺の過形成や閉塞が多かった。
【0004】
現在、新型コロナ肺炎の治療に使用できるいくつかの医薬品が世界的に推奨されている。しかし、その多くは、緊急使用や人道的使用であり、依然として不十分なところが多い。例えば、汎用性の抗ウイルス剤はCOVID-19に対して明らかな活性を示さず、ウイルス性肺炎の対症療法に用いられる医薬品の多くも効果は低い。また、ウイルスを抑制するものの、明らかな毒性を持つ医薬品も数多くある。そのため、新型コロナ肺炎を安全で効果的に治療する医薬品が強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の一つは、新型コロナ肺炎を予防又は治療する医薬品を調製するための使用を提供することである。この目的を達成するために、本発明で採用した技術思想は、COVID-19新型コロナ肺炎を予防又は治療する医薬品の調製における、リゾチーム又はリゾチームを含む組み合わせの使用である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施態様では、前記組み合わせはさらに、グリシルリジン酸又はその塩を含む。
【0007】
いくつかの実施態様では、前記組み合わせはさらに、COVID-19新型コロナ肺炎を予防又は治療するために使用できる他の成分も含む。
【0008】
いくつかの実施態様では、前記COVID-19新型コロナ肺炎を予防又は治療するために使用できる他の成分は、インターフェロン、オセルタミビル及びその塩、ロピナビル、リトナビル、ファビピラビル、リバビリン、レムデシビル、クロロキン及びその塩、ヒドロキシクロロキン及びその塩、アルビドール及びその塩、インターロイキン阻害剤、腫瘍壊死因子阻害剤、ヤヌスキナーゼ阻害剤、糖質コルチコイド、プロテアーゼ阻害剤、腸内環境調整剤の1つ又は複数から選択される。
【0009】
いくつかの実施態様では、前記プロテアーゼ阻害剤は、ウリナスタチン、シベレスタット、ナファモスタット、又はトラネキサム酸から選択されてもよい。
【0010】
いくつかの実施態様では、前記インターロイキン阻害剤は、トシリズマブから選択されてもよい。
【0011】
いくつかの実施態様では、前記腫瘍壊死因子阻害剤は、アダリムマブ、インフリキシマブ、又はエタネルセプトから選択されてもよい。
【0012】
いくつかの実施態様では、前記ヤヌスキナーゼ阻害剤は、トファシチニブ又はバリシチニブから選択されてもよい。
【0013】
いくつかの実施態様では、前記腸内細菌叢調整剤は、プレバイオティクス又はプロバイオティクス菌から選択されてもよい。
【0014】
いくつかの実施態様では、前記組み合わせにおけるリゾチームとグリシルリジン酸又はその塩は、様々な方法で組み合わせることができる。いくつかの実施態様では、リゾチームとグリシルリジン酸又はその塩は、それぞれ別々の医薬品の中に存在する方法で組み合わせてもよい(組み合わせ包装、共同投与)。また、いくつかの他の実施態様では、リゾチームとグリシルリジン酸又はその塩を、同じ医薬品の中に併存する方法で組み合わせてもよい(配合製剤)。
【0015】
いくつかの実施態様では、前記組み合わせにおけるリゾチーム及びCOVID-19新型コロナ肺炎を予防又は治療に使用できる他の成分は、様々な方法で組み合わせることができる。それぞれ別々の医薬品の中に存在する方法(組み合わせ包装、共同投与)で組み合わせてもよく、同じ医薬品の中に併存する方法(配合製剤)で組み合わせてもよい。
【0016】
いくつかの実施態様では、前記医薬品の製剤形態は、薬用に適した様々な剤形であってもよく、例えば、経口剤、注射剤、吸入剤などであってもよい。
【0017】
いくつかの実施態様では、前記医薬品は、即時放出性製剤、遅延放出性製剤、持続放出性製剤又は制御放出製剤など、異なる放出形態の製剤であってもよい。
【0018】
いくつかの実施態様では、前記医薬品は、薬学的に適用可能な補助剤を含んでもよい。
【0019】
いくつかの実施態様では、前記組み合わせにおけるリゾチームとグリシルリジン酸又はその塩の重量比は、100:1~1:100、好ましくは100:1~2:1、より好ましくは100:1~5:1、さらに好ましくは100:1~10:1であってもよい。いくつかの好ましい態様では、両者は明らかな相乗効果を発揮できる。
【0020】
いくつかの実施態様では、前記リゾチームの1日当たりの服用量は、0.5gから20gであってもよい。
【0021】
いくつかの実施態様では、前記リゾチームの服用回数は、起きている時間の、1時間ごと、2時間ごと、4時間ごと、6時間ごと、8時間ごと、12時間ごと、24時間ごとなど、1~24時間ごとに1回としてもよい。
【0022】
本発明の第二の目的は、新型コロナ肺炎の予防又は治療を補助する食品を調製するための使用を提供することである。この目的を達成するために、本発明で採用した技術思想は、COVID-19新型コロナ肺炎の予防又は治療を補助する食品の調製における、リゾチーム又はリゾチームを含む組み合わせの使用である。
【0023】
いくつかの実施態様では、前記食品は、保健用食品又は特別医療用食品である。
【0024】
いくつかの実施態様では、前記組み合わせはさらに、グリシルリジン酸又はその塩を含む。
【0025】
いくつかの実施態様では、前記食品は、食品に適用される添加物も含む。
【0026】
いくつかの実施態様では、前記添加物は、防腐剤、着色料、調味料、香料、保存料、酸化防止剤、乳化剤、増粘剤、炭水化物、脂肪、ビタミン、アミノ酸、微量元素、タンパク質などである。
【0027】
いくつかの実施態様では、前記組み合わせにおけるリゾチームとグリシルリジン酸又はその塩は、様々な方法で組み合わせることができる。組み合わせ包装、共同使用などの、別々の食品の中に存在する方法で組み合わせてもよく、配合製剤などの、同じ食品の中に併存する方法で組み合わせてもよい。
【0028】
いくつかの実施態様では、前記組み合わせにおけるリゾチームとグリシルリジン酸又はその塩の重量比は、100:1~1:100、好ましくは100:1~2:1、より好ましくは100:1~5:1、さらに好ましくは100:1~10:1であってもよい。いくつかの好ましい態様では、両者は明らかな相乗効果を発揮できる。
【0029】
いくつかの実施態様では、前記リゾチームの1日当たりの服用量は、0.5gから20gであってもよい。
【0030】
いくつかの実施態様では、前記リゾチームの服用回数は、起きている時間の、1時間ごと、2時間ごと、4時間ごと、6時間ごと、8時間ごと、12時間ごと、24時間ごとなど、1~24時間ごとに1回としてもよい。
【0031】
本発明の第三の目的は、新型コロナ肺炎を予防又は治療する医薬品を提供することである。この目的を達成するために、本発明で採用した技術思想は、COVID-19新型コロナ肺炎を予防又は治療する医薬品であって、リゾチームを含む医薬品である。
【0032】
いくつかの実施態様では、前記医薬品はさらに、グリシルリジン酸又はその塩を含む。
【0033】
いくつかの実施態様では、前記医薬品はさらに、COVID-19新型コロナ肺炎を予防又は治療するために使用できる他の成分も含む。
【0034】
いくつかの実施態様では、前記COVID-19新型コロナ肺炎を予防又は治療するために使用できる他の成分は、インターフェロン、オセルタミビル及びその塩、ロピナビル、リトナビル、ファビピラビル、リバビリン、レムデシビル、クロロキン及びその塩、ヒドロキシクロロキン及びその塩、アルビドール及びその塩、インターロイキン阻害剤、腫瘍壊死因子阻害剤、ヤヌスキナーゼ阻害剤、糖質コルチコイド、プロテアーゼ阻害剤、腸内環境調整剤の1つ又は複数から選択される。
【0035】
いくつかの実施態様では、前記医薬品の製剤形態は、薬用に適した様々な剤形であってもよく、例えば、経口剤、注射剤、吸入剤などであってもよい。
【0036】
いくつかの実施態様では、前記医薬品は、即時放出性製剤、遅延放出性製剤、持続放出性製剤又は制御放出製剤など、異なる放出形態の製剤であってもよい。
【0037】
いくつかの実施態様では、前記医薬品は、薬学的に適用可能な補助剤を含んでもよい。
【0038】
いくつかの実施態様では、前記医薬品におけるリゾチームとグリシルリジン酸又はその塩の重量比は、100:1~1:100、好ましくは100:1~2:1、より好ましくは100:1~5:1、さらに好ましくは100:1~10:1であってもよい。いくつかの好ましい態様では、両者は明らかな相乗効果を発揮できる。
【0039】
本発明の第四の目的は、新型コロナ肺炎の予防又は治療を補助する食品を提供することである。この目的を達成するために、本発明で採用した技術思想は、COVID-19新型コロナ肺炎の予防又は治療を補助する食品であって、リゾチームを含む食品である。
【0040】
いくつかの実施態様では、前記食品はさらに、グリシルリジン酸又はその塩を含む。
【0041】
いくつかの実施態様では、前記食品は、食品に適用される添加物を含む。
【0042】
いくつかの実施態様では、前記添加物は、防腐剤、着色料、調味料、香料、保存料、酸化防止剤、乳化剤、増粘剤、炭水化物、脂肪、ビタミン、アミノ酸、微量元素、タンパク質などである。
【0043】
いくつかの実施態様では、前記食品におけるリゾチームとグリシルリジン酸又はその塩の重量比は、100:1~1:100、好ましくは100:1~2:1、より好ましくは100:1~5:1、さらに好ましくは100:1~10:1であってもよい。いくつかの好ましい態様では、両者は明らかな相乗効果を発揮できる。
【0044】
本発明の第五の目的は、新型コロナ肺炎を予防又は治療する方法を提供することである。この目的を達成するために、本発明で採用した技術思想は、所望の対象者に医薬品を投与することを含むCOVID-19新型コロナ肺炎を予防又は治療する方法であって、前記医薬品は有効量のリゾチームを含む、又は前記医薬品は有効量のリゾチームを含む組み合わせを含む方法である。
【0045】
いくつかの実施態様では、前記対象者はCOVID-19新型コロナウイルスの核酸検査で陽性を示す。
【0046】
いくつかの実施態様では、前記対象者はCOVID-19新型コロナ肺炎と臨床診断されている。
【0047】
いくつかの実施態様では、前記対象者はCOVID-19新型コロナウイルスの核酸検査で陽性を示すか、或いはCOVID-19新型コロナ肺炎と臨床診断されているのに加えて、さらに気道抵抗の増加又は呼気量の減少が存在する。
【0048】
いくつかの実施態様では、前記対象者はCOVID-19新型コロナウイルスの核酸検査で陽性を示すか、或いはCOVID-19新型コロナ肺炎と臨床診断されているのに加えて、さらに腸管バリア機能の障害が存在する。
【0049】
いくつかの実施態様では、前記組み合わせはさらに、グリシルリジン酸又はその塩を含む。
【0050】
いくつかの実施態様では、前記組み合わせはさらに、COVID-19新型コロナ肺炎を予防又は治療するために使用できる他の成分も含む。
【0051】
いくつかの実施態様では、前記COVID-19新型コロナ肺炎を予防又は治療するために使用できる他の成分は、インターフェロン、オセルタミビル及びその塩、ロピナビル、リトナビル、ファビピラビル、リバビリン、レムデシビル、クロロキン及びその塩、ヒドロキシクロロキン及びその塩、アルビドール及びその塩、インターロイキン阻害剤、腫瘍壊死因子阻害剤、ヤヌスキナーゼ阻害剤、糖質コルチコイド、プロテアーゼ阻害剤、腸内環境調整剤の1つ又は複数から選択される。
【0052】
いくつかの実施態様では、前記組み合わせにおけるリゾチームとグリシルリジン酸又はその塩は、様々な方法で組み合わせることができる。いくつかの実施態様では、リゾチームとグリシルリジン酸又はその塩は、それぞれ別々の医薬品の中に存在して、組み合わせ包装又は共同投与の方法で投与してもよい。また、いくつかの他の実施態様では、リゾチームとグリシルリジン酸又はその塩は同じ医薬品の中に併存して、配合製剤の方法で投与してもよい。
【0053】
いくつかの実施態様では、前記組み合わせにおけるリゾチーム及びCOVID-19新型コロナ肺炎を予防又は治療に使用できる他の成分は、様々な方法で組み合わせることができる。いくつかの実施態様では、それぞれ別々の医薬品の中に存在して、組み合わせ包装又は共同投与の方法で投与してもよい。また、いくつかの他の実施態様では、同じ医薬品の中に併存して、配合製剤の方法で投与してもよい。
【0054】
いくつかの実施態様では、前記医薬品の投与方法は、例えば経口服用、注射、吸入など様々な方法であってもよい。
【0055】
いくつかの実施態様では、前記医薬品は、即時放出性製剤、遅延放出性製剤、持続放出性製剤又は制御放出製剤など、異なる放出形態の製剤であってもよい。
【0056】
いくつかの実施態様では、前記医薬品は、薬学的に適用可能な補助剤を含んでもよい。
【0057】
いくつかの実施態様では、前記組み合わせにおけるリゾチームとグリシルリジン酸又はその塩の重量比は、100:1~1:100、好ましくは100:1~2:1、より好ましくは100:1~5:1、さらに好ましくは100:1~10:1であってもよい。いくつかの好ましい態様では、両者は明らかな相乗効果を発揮できる。
【0058】
いくつかの実施態様では、前記リゾチームの1日当たりの服用量は、0.5gから20gであってもよい。
【0059】
いくつかの実施態様では、前記医薬品の服用回数は、起きている時間の、1時間ごと、2時間ごと、4時間ごと、6時間ごと、8時間ごと、12時間ごと、24時間ごとなど、1~24時間ごとに1回としてもよい。
【0060】
本発明の第六の目的は、新型コロナ肺炎の予防又は治療を補助する方法を提供することである。この目的を達成するために、本発明で採用した技術思想は、所望の対象者に食品を投与することを含むCOVID-19新型コロナ肺炎の予防又は治療を補助する方法であって、前記食品は有効量のリゾチームを含む、又は前記食品は有効量のリゾチームを含む組み合わせを含む方法である。
【0061】
いくつかの実施態様では、前記食品は、保健用食品又は特別医療用食品である。
【0062】
いくつかの実施態様では、前記対象者はCOVID-19新型コロナウイルスの核酸検査で陽性を示す。
【0063】
いくつかの実施態様では、前記対象者はCOVID-19新型コロナ肺炎と臨床診断されている。
【0064】
いくつかの実施態様では、前記対象者はCOVID-19新型コロナウイルスの核酸検査で陽性を示すか、或いはCOVID-19新型コロナ肺炎と臨床診断されているのに加えて、さらに気道抵抗の増加又は呼気量の減少が存在する。
【0065】
いくつかの実施態様では、前記対象者はCOVID-19新型コロナウイルスの核酸検査で陽性を示すか、或いはCOVID-19新型コロナ肺炎と臨床診断されているのに加えて、さらに腸管バリア機能の障害が存在する。
【0066】
いくつかの実施態様では、前記組み合わせはさらに、グリシルリジン酸又はその塩を含む。
【0067】
いくつかの実施態様では、前記組み合わせにおけるリゾチームとグリシルリジン酸又はその塩は、様々な方法で組み合わせることができる。いくつかの実施態様では、リゾチームとグリシルリジン酸又はその塩は、それぞれ別々の食品の中に存在して、組み合わせ包装又は共同使用の方法で組み合わせられる。また、いくつかの他の実施態様では、リゾチームとグリシルリジン酸又はその塩は同じ食品の中に併存して、配合食品の方法で組み合わせられる。
【0068】
いくつかの実施態様では、前記組み合わせにおけるリゾチームとグリシルリジン酸又はその塩の重量比は、100:1~1:100、好ましくは100:1~2:1、より好ましくは100:1~5:1、さらに好ましくは100:1~10:1であってもよい。いくつかの好ましい態様では、両者は明らかな相乗効果を発揮できる。
【0069】
いくつかの実施態様では、前記食品は異なる方法、例えば経口投与、経鼻投与、吸入投与などにより投与してもよい。
【0070】
いくつかの実施態様では、前記食品は、即時放出、遅延放出、持続放出又は制御放出など、異なる放出形態としてもよい。
【0071】
いくつかの実施態様では、前記食品は、食品に適用される添加物も含む。例えば、防腐剤、着色料、調味料、香料、保存料、酸化防止剤、乳化剤、増粘剤、炭水化物、脂肪、ビタミン、アミノ酸、微量元素、タンパク質などである。
【0072】
いくつかの実施態様では、前記リゾチームの1日当たりの服用量は、0.5gから20gであってもよい。
【0073】
いくつかの実施態様では、前記食品の服用回数は、起きている時間の、1時間ごと、2時間ごと、4時間ごと、6時間ごと、8時間ごと、12時間ごと、24時間ごとなど、1~24時間ごとに1回としてもよい。
【0074】
発明の効果
本発明の有益な効果としては以下になる:
本発明が提供するリゾチーム又はその組み合わせによれば、COVID-19新型コロナウイルスによる細胞損傷を効果的に抑制し、COVID-19新型コロナウイルスによる炎症反応を抑制し、肺病変による気道閉塞や呼気量減少を改善し、腸管バリア機能を改善することができる。COVID-19新型コロナウイルス肺炎患者の高ウイルス負荷量、呼吸困難、腸管機能の低下に良好な治療効果を示す。新型コロナウイルスの感染率を低下させ、新型コロナ肺炎の重症率を低下させることができる。また、リゾチームの極めて高い安全性を考えると、新型コロナウイルス感染のリスクが高い未診断グループの新型コロナ肺炎の予防にも非常に重要な価値がある。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づいて詳細に説明する。具体的な実施形態の部分の内容は説明のためのものであり、限定的なものではない、すなわち、本発明の内容を何ら限定するものではないことが、理解されるべきである。
【0076】
定義:
”リゾチーム”:すなわちlysozymeである。本発明のリゾチームは、動物、植物、微生物由来のリゾチームであってもよく、天然のリゾチームの組換え体であってもよい。例えば、卵白リゾチーム、ヒトリゾチーム、組換えヒトリゾチーム、ファージリゾチームなどであってもよい。本発明におけるリゾチームには、その薬用塩、例えば塩酸塩、塩化物、硫酸塩、アミノ酸塩などが含まれる。リゾチームは、生体内に広く存在する内因性酵素としてフレミングにより初めて発見された。リゾチームは、世界中で食品や医薬品としての使用が承認されている。米国では安全に使用できる物質として認定されている。WHO、欧州の数か国、日本及び中国では食品添加物としての使用が認められている。中国、日本、シンガポールなどの国では、その薬用が承認されている。リゾチームは、ヘルペスウイルスに対して強い抗ウイルス力を持つことがわかっている。
【0077】
「COVID-19新型コロナウイルス」、即ち2019新型コロナウイルスは、2019年に発見されたウイルスで、コロナウイルス科に属する新しいウイルスである。
【0078】
「COVID-19新型コロナ肺炎」は即ち、COVID-19新型コロナウイルスの感染による肺炎のことである。COVID-19新型コロナウイルス肺炎の病理学的特徴、臨床症状及び診断基準は、中華人民共和国国家衛生健康委員会が発行した「新型コロナウイルス肺炎の診断及び治療プロトコル」に詳細に記載されている。COVID-19新型コロナ肺炎の多くの特徴は、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎及び非定型肺炎とは明かに異なっている。
【0079】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに説明するが、本発明の思想や効果を限定するものではない。
【0080】
実施例1:新型コロナ肺炎の患者及び感染ハイリスクグループへのリゾチームの適用
中国で2019年新型コロナ肺炎が流行した際、当社は湖北省に2回、リゾチームトローチ剤やリゾチーム腸溶錠などの抗菌薬を含む合計200万人民元以上の医薬品を寄付した。これらの医薬品が新型コロナの流行に対する反撃において積極的な役割を果たしていることが分かった。
【0081】
新たに新型コロナ肺炎と診断された9名の患者が、当社が提供したリゾチームトローチ剤及び/又はリゾチーム腸溶製剤を1日当たり0.5g~2gの分量範囲で服用し、基本的に毎日、服用し続けた結果、重症化したのは1名のみで、他の8名は皆軽症で、且つその後治癒した。計算により、重症化率は11.1%とであることが分かった。
【0082】
感染症発生期間中に高リスク地域に居住又は出張していた3名の対象者は、リゾチームトローチ剤及び/又はリゾチーム腸溶錠を1日当たり1g~1.5gの分量で毎日服用し続けて、復職後に核酸検査を行った結果、新型コロナウイルスへの感染は認められず、感染率は0%であった。
【0083】
『新型コロナウイルス肺炎の疫学的特徴分析』の報道によると、新型コロナウイルス肺炎患者では、重症・重篤な患者の割合が18.5%と高く、重症・重篤化すると、死亡率が50%にも近づく。我々は比較により、リゾチーム製剤の服用により、重症化率、ひいては死亡率が大幅に減少し、新型コロナの感染症流行を予防・治療するのに非常に積極的な作用があることを見出した。また、リゾチーム製剤は、新型コロナウイルスの感染ハイリスクグループに対して感染予防の効果もある。これは、感染症流行の蔓延や感染症流行の再発を抑制する上で重要な価値がある。
【0084】
実施例2:新型コロナウイルスに対するリゾチームのインビトロ試験
アフリカミドリザルの腎臓細胞を用いて、COVID-19新型コロナウイルスに対するリゾチームの効果を調べた。
【0085】
医薬品:リゾチーム、グリシルリジン酸モノアンモニウム。
【0086】
細胞:アフリカミドリザルの腎臓細胞(VeroE6細胞)
ウイルス:COVID-19、100TCID50の滴定量を使用。
【0087】
培養:滅菌済み96ウェル培養プレートに、2×105cells/mLの濃度のVeroE6細胞を各ウェルに100μLずつ加え、37℃で24時間培養した。培養プレートはウェルごとに、ブランク対照群、ウイルス対照群、リゾチーム低用量群、リゾチーム中用量群、リゾチーム高用量群、グリシルリジン酸モノアンモニウム低用量群、グリシルリジン酸モノアンモニウム高用量群に分け、各群は3ウェルとした。ブランク対照群を除き、各群に100TCID50のウイルス液を100μL/ウェルで添加し、37℃で5%CO2インキュベーターで2時間吸着させた後、培養プレートから細胞培養液を廃棄した。
【0088】
投薬:投与量に応じて、リゾチーム低用量群(500μg/ml)、リゾチーム中用量群(1000μg/ml)、リゾチーム高用量群(2000μg/ml)、グリシルリジン酸モノアンモニウム低用量群(1000μg/ml)、グリシルリジン酸モノアンモニウム高用量群(2000μg/ml)の各ウェルに医薬品の溶液を投入し、1ウェルあたり100μlとした。そして、37℃で4日間インキュベートした。
【0089】
細胞病変の観察:インキュベート後、細胞病変を光学顕微鏡で観察した(CPE)。細胞に現れる病変の程度を以下の6段階に分けて記録した:「-」は病変が存在しない、「±」は10%未満の細胞に病変が存在する、「+」は約25%の細胞に病変が存在する、そして「++」は約50%の細胞に病変が存在する、「+++」は約75%の細胞に病変が存在する、「++++」は75%以上病変が存在することを示す。各群の医薬品について、ウイルスによる細胞病変の抑制率を算出した。抑制率が高いほど効果が良いことを示します。
【0090】
結果:試験の主な結果を表1に示す。試験結果によれば、リゾチームによりCOVID-19ウイルスによる細胞病変を有意に抑制できることがわかった。グリシルリジン酸塩は、COVID-19ウイルスに対する抑制効果が低かった。
【0091】
【0092】
実施例3:新型コロナウイルス及び新型コロナウイルスに起因する炎症に対するリゾチームを含む組み合わせのインビトロ試験
リゾチームを含む組み合わせのCOVID-19ウイルスによる細胞病変に対する抑制作用、及びCOVID-19ウイルスによる炎症に対する抑制効果を研究した。
【0093】
医薬品、細胞、ウイルスなどはいずれも実施例2と同じである。
【0094】
培養プレートのグループ分けと投薬量は以下である:ブランク対照群、ウイルス対照群、リゾチーム群(350μg/ml)、リゾチームモノグリシルリジン酸モノアンモニウムI群(100μg/ml+1μg/ml)、リゾチームグリシルリジン酸モノアンモニウムII群(100μg/ml+5μg/ml)、リゾチームグリシルリジン酸モノアンモニウムIII群(100μg/ml+10μg/ml)、リゾチームグリシルリジン酸モノアンモニウムIV群(100μg/ml+50μg/ml)。
【0095】
実施例2と同様の方法で細胞病変を観察し、試験結果を表2に示した。また、病変のない細胞を採取してRNAを抽出し、定量PCR法によりTNF-α、IL-6などの炎症因子の相対的な発現レベルを測定し、試験結果を表3に示した。
【0096】
注:各医薬品組み合わせ群をリゾチーム群と比較して、p<0.05(#),p<0.01(##)である。
【0097】
注:各医薬品群をウイルス対照群と比較して、p<0.05(*),p<0.01(**)である。各医薬品組み合わせ群をリゾチーム群と比較して、p<0.05(#),p<0.01(##)である。
【0098】
表2と表3から分かるように、リゾチームとリゾチームを含む医薬品の組み合わせは、COVID-19ウイルスによる細胞病変に対して比較的良い抑制作用があり、且つCOVID-19ウイルスによる細胞内の炎症因子の上昇を有意に抑制できた。医薬品の組み合わせは、リゾチーム単独の場合と比較して、効果が明らかに良く、抑制率の明らかな向上、炎症因子レベルの明らかな低減、及び医薬品投与量の大幅な減少として表れている。グリシルリジン酸塩のリゾチームに対する強い増強効果が示唆され、特にグリシルリジン酸塩の低用量の場合の増強効果がより良い。
【0099】
実施例4:リゾチーム及びその組成物の煙を吸入したモルモットの気道抵抗及び肺機能に対する影響
慢性閉塞性肺疾患の動物モデリングとしては、煙曝露モデルが定番である。動物が煙を長期間吸入すると、粘液分泌の増加、気道の閉塞、肺機能の低下を起こす。本試験では、このモデリング方法を用いて、リゾチームの気道閉塞への影響を評価した。
【0100】
1. 試験医薬品
リゾチーム、グリシルリジン酸モノアンモニウム、グリシルリジン酸モノカリウム。
【0101】
2. 動物及び群分け
体重400~500gの雄のHartleyモルモットを、ブランク群、モデル群、リゾチーム経口投与群(200mg/kg)、リゾチーム吸入投与群(2mg/kg)、リゾチーム+グリシルリジン酸モノアンモニウム吸入投与群(2mg/kg+0.1mg/kg)、リゾチーム+グリシルリジン酸モノカリウム経口投与I群(200mg/kg+20mg/kg)、リゾチーム+グリシルリジン酸モノカリウム経口投与II群(200mg/kg+40mg/kg)に無作為に群分けし、各群8匹とする。
【0102】
3. モデリング
鼻と口のみから吸入させる煙曝露装置を用いて,ブランク群を除く各群の動物を、毎日5本のタバコの煙を40分間で吸入させて,週に5日,12週間続けさせる。
【0103】
4.医薬品の調製と投与
吸入投与用のリゾチームとグリシルリジン酸モノアンモニウムを、それぞれ粒子が10μm以下の粉末に粉砕する。経口投与用のリゾチームとグリシルリジン酸モノカリウムを、それぞれ生理食塩水に溶解する。
【0104】
ブランク群とモデル群を除くすべての群の動物に、モデリング開始後8週目から1日1回、4週間にわたって投与した。吸入投与群は、経口経鼻吸入曝露システムで投与し、経口投与群は、強制経口投与とした。ブランク群とモデル群には、生理食塩水を毎日強制経口投与した。
【0105】
5. テスト
投与終了後に、気道抵抗測定と100msの呼気量測定を行った。
【0106】
動物をダブルチャンバ式プレチスモグラフィ(double chamber plethysmography)に入れ、10分間落ち着かせてから、特異的気道抵抗(specific airway resistance,sRaw)を測定した。ケタミンの筋肉内注射で動物を麻酔した後、気管にカテーテルを挿入し、肺機能検査システムを用いて動物の100msの呼気量(force dexpiratory volume in 100ms,FEV100)を測定した。
【0107】
6. 試験結果と評価
動物の気道抵抗と100msの呼気量の測定結果を表4に示す。
【0108】
注:各投与群をモデル群と比較して、p<0.05(*),p<0.01(**)である。組み合わせの経口投与群をリゾチームの経口投与群を比較して、p<0.05(#),p<0.01(##)である。組み合わせの吸入群をリゾチームの吸入群を比較して、p<0.05(&),p<0.01(&&)である。
【0109】
本試験では、煙の長時間吸入により、動物の肺の気道抵抗の有意な増加と肺機能の有意な低下(呼気量の減少)を引き起こした。試験の結果から見れば、各投与群により、程度の違いはあるが、動物の肺の気道抵抗が減少し、呼気量が増加した。医薬品組み合わせ群とリゾチーム単独の群を比較すると、特にグリシルリジン酸類物質の用量が少ない場合には、グリシルリジン酸類物質により、リゾチームの効果が増強されたことがわかった。
【0110】
実施例5:リゾチーム及びその組み合わせのマウスのリポ多糖誘発腸管バリア機能障害に対する保護作用
【0111】
リポ多糖は、動物の腸管機能低下を引き起こす可能性がある。本実験は、リゾチーム及びその組み合わせのマウスのリポ多糖誘発腸管バリア機能障害に対する保護作用を研究した。
【0112】
試験医薬品:リゾチーム、グリシルリジン酸モノアンモニウム、グリシルリジン酸ジカリウム。
【0113】
試験動物:雄のCLグレードC57BL/6マウス、体重20~25g。
【0114】
動物の群分けと投与:動物を、ブランク群、モデル群、リゾチーム群(100mg/kg)、リゾチーム+グリシルリジン酸モノアンモニウムA群(100mg/kg+2mg/kg)、リゾチーム+グリシルリジン酸モノアンモニウムB群(100mg/kg+10mg/kg)、リゾチーム+グリシルリジン酸モノアンモニウムC群(100mg/kg+20mg/kg)、リゾチーム+グリシルリジン酸ジカリウム群(100mg/kg+2mg/kg)に無作為に群分けし、各群8匹とする。各医薬品群はそれぞれ用量によって強制経口投与で毎日投与し、ブランク群とモデル群には生理食塩水を投与した。30日間継続して投与した。
【0115】
モデリング:投与終了後、ブランク群を除くすべての群の動物にリポ多糖を15mg/kgで腹腔内注射し、ブランク群には生理食塩水を注射した。注射完了後、動物を12時間絶食させた。
【0116】
腸管透過性の測定:各群の動物にFITC-デキストラン(リン酸塩緩衝液に溶解させ)を600mg/kgで強制経口投与し、4時間後に目から採血し、血清中のFITC-デキストランの含有量を蛍光分光分析(励起波長480nm、発光波長520nm)により測定し、結果を表5に示した。
【0117】
腸管組織タイトジャンクション構成タンパク質発現の測定:動物の安楽死処置後、空腸組織を採取し、RNAを抽出し、定量的PCR法により組織中のoccludinタンパク質とClaudin-1タンパク質の相対的発現レベルを検出し、その結果を表6に示す。
【0118】
注:各医薬品群をモデル群と比較して、p<0.05(*),p<0.01(**)である。各医薬品組み合わせ群をリゾチーム群と比較して、p<0.05(#),p<0.01(##)である。
【0119】
注:各医薬品群をモデル群と比較して、p<0.05(*),p<0.01(**)である。各医薬品組み合わせ群をリゾチーム群と比較して、p<0.05(#),p<0.01(##)である。
【0120】
本実験では、リゾチーム及びその組成物のマウスのリポ多糖誘発腸管バリア機能障害に対する保護作用を研究した。モデル群にリポ多糖を注射したところ、血清中のデキストラン濃度がブランク群に比べて有意に高くなったことから、多量のデキストランが腸を経由して血中に入った、即ち、腸管透過性が増大していることを示した。また、モデル群の腸管では2種類のタイトジャンクション構成タンパク質の発現が低下しており、腸管バリア機能が低下していることを示した。今回の実験では、リゾチームとその組成物が、リポ多糖が誘発する腸管透過性の上昇を有意に抑制し、腸管組織におけるタイトジャンクション構成タンパク質の発現を有意に増加させ、腸管バリア機能障害に対して有意な保護効果を示すことがわかった。また、医薬品組み合わせ群はリゾチーム単独の群に比べて有意に効果があることがわかった。
【0121】
上記の複数の実施形態を組み合わせて、リゾチーム及びその組み合わせは、新型コロナウイルスによる細胞損傷を抑制し、新型コロナウイルスが誘発する炎症因子の発現を抑制し、肺気道閉塞を改善し、呼気量を増加させ、腸管バリア機能障害を改善することができ、新型コロナウイルスの感染率及び新型コロナウイルス肺炎の重症化率を低下させることができることが分かる。新型コロナ肺炎は医薬品の世界ではまだ新しい病気で、現在の臨床的見解によれば、患者は初期段階ではウイルス量が多く、中・後期段階では非常に顕著な呼吸窮迫症状を呈し、腸管バリアの機能不全により患者の持続感染や二次感染を引き起こし、回復が困難で、感染力が増大し、重症患者の死亡率が高いことなどが示されているので、本発明のリゾチーム及びその組み合わせは、様々な方法で新型コロナ肺炎を予防又は治療することが期待される。そして、その安全性が高く、投与量を増やすことができるため、新型コロナ肺炎を予防又は治療する好ましい選択肢になることが期待されている。