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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】バッテリ温調システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/24 20190101AFI20231211BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20231211BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20231211BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20231211BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20231211BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20231211BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20231211BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20231211BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20231211BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20231211BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B60L58/24
B60L50/60
B60L53/14
B60L3/00 S
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/6571
H01M10/6569
H02J7/00 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022008040
(22)【出願日】2022-01-21
(65)【公開番号】P2023106974
(43)【公開日】2023-08-02
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】大垣 徹
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-027797(JP,A)
【文献】特開2017-097971(JP,A)
【文献】特開2016-113040(JP,A)
【文献】特開2019-193319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 58/24
B60L 50/60
B60L 53/14
B60L 3/00
H01M 10/613
H01M 10/615
H01M 10/625
H01M 10/633
H01M 10/6571
H01M 10/6569
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源であるモータに電力を供給するバッテリと、
前記バッテリからの電力が供給され、バッテリ温度を調整する温調装置と、
前記バッテリ温度を所定の温度領域に維持させるように前記温調装置を制御する第1制御を実行する制御装置と、を備えるバッテリ温調システムであって、
前記制御装置は、
ユーザのスケジュール情報と連携して前記車両の駐車予定情報を取得し、
前記駐車予定情報に基づいて、前記車両の駐車予定期間が所定期間以上であるか否かを判断し、
前記駐車予定期間が前記所定期間未満であると判断したとき、前記車両の駐車時に前記第1制御を実行し、
前記駐車予定期間が前記所定期間以上であると判断したとき、前記車両の駐車時に前記第1制御を実行せず、
前記ユーザが保持するユーザ端末と前記車両との距離を推定し、
前記車両の駐車時に前記第1制御を実行していない場合、前記距離が所定距離以下となったとき前記第1制御を開始する、バッテリ温調システム。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリ温調システムであって、
前記制御装置は、前記駐車予定期間が前記所定期間以上であると判断したとき、前記車両の駐車時に前記第1制御よりも少ない消費電力で前記温調装置を制御する第2制御を実行する、バッテリ温調システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバッテリ温調システムであって、
前記制御装置は、前記車両の駐車時に前記第1制御を実行していない場合、前記駐車予定情報により得られた駐車予定終了時刻より所定時間前に前記第1制御を開始する、バッテリ温調システム。
【請求項4】
車両の駆動源であるモータに電力を供給するバッテリと、
前記バッテリからの電力が供給され、バッテリ温度を調整する温調装置と、
前記バッテリ温度を所定の温度領域に維持させるように前記温調装置を制御する第1制御を実行する制御装置と、を備えるバッテリ温調システムであって、
前記制御装置は、
ユーザのスケジュール情報と連携して前記車両の駐車予定情報を取得し、
前記駐車予定情報に基づいて、前記車両の駐車予定期間が所定期間以上であるか否かを判断し、
前記駐車予定期間が前記所定期間未満であると判断したとき、前記車両の駐車時に前記第1制御を実行し、
前記駐車予定期間が前記所定期間以上であると判断したとき、前記車両の駐車時に前記第1制御を実行せず、
前記ユーザが保持するユーザ端末と前記車両との距離を推定し、
前記スケジュール情報が登録されていない場合、且つ、前記距離が所定距離以上となったとき、駐車予定終了時刻を登録するように前記ユーザ端末に報知する、バッテリ温調システム。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載のバッテリ温調システムであって、
前記バッテリは、外部電源からの電力により蓄電可能であり、
前記温調装置は、前記外部電源からの電力及び前記バッテリからの電力が選択的に供給される、バッテリ温調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両などに搭載されるバッテリの温度を調整するバッテリ温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の気候変動に対する具体的な対策として、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化している。車両においても、CO2排出量の削減が強く要求され、駆動源の電動化が急速に進んでいる。具体的には、電気自動車(Electrical Vehicle)あるいはハイブリッド電気自動車(Hybrid Electrical Vehicle)といった、車両の駆動源としての電動機と、この電動機に電力を供給可能な二次電池としてのバッテリと、を備える車両の開発が進められている。
【0003】
このような電動車両では、車両性能の維持の観点から、駐車時にバッテリの温度が所定の温度領域に調整される。例えば、特許文献1には、駐車時に所定のタイミングで温度制御部が起動し、バッテリ温度が所定閾値を超えた際にバッテリ温度を調整する温度調整装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、車両の駐車スケジュールを取得し、駐車開始前の走行中にバッテリの充放電制御を行い、駐車時におけるバッテリ温度の調整のために必要な電力を用意するバッテリ温調システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6579320号公報
【文献】特開2016-113040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両が所定の時間駐車される場合、特許文献1や特許文献2のように駐車時にバッテリ温度を所定の温度領域に保温し続けることは、電力を使用し続けることにつながる。駐車時に車両が外部電源に接続(プラグイン)されている場合には、電気代がかさむ。また、車両が外部電源に接続されていない(プラグオフ)場合には、バッテリからの電力が保温に使用され、バッテリの充電状態(SOC:State Of Charge)が低下する。SOCの低下後は保温の継続が困難となり、バッテリ出力の低下や走行可能距離の低下といった悪影響が発生する。一方、車両の駐車時にバッテリ温度が所定の温度領域に調整されていないと、車両発進時にバッテリの使用制限がかかる場合が生じ得る。
【0007】
本発明は、車両の利便性を維持しながら、消費電力を低下させることが可能なバッテリ温調システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
車両の駆動源であるモータに電力を供給するバッテリと、
前記バッテリからの電力が供給され、バッテリ温度を調整する温調装置と、
前記バッテリ温度を所定の温度領域に維持させるように前記温調装置を制御する第1制御を実行する制御装置と、を備えるバッテリ温調システムであって、
前記制御装置は、
ユーザのスケジュール情報と連携して前記車両の駐車予定情報を取得し、
前記駐車予定情報に基づいて、前記車両の駐車予定期間が所定期間以上であるか否かを判断し、
前記駐車予定期間が前記所定期間未満であると判断したとき、前記車両の駐車時に前記第1制御を実行し、
前記駐車予定期間が前記所定期間以上であると判断したとき、前記車両の駐車時に前記第1制御を実行せず、
前記ユーザが保持するユーザ端末と前記車両との距離を推定し、
前記車両の駐車時に前記第1制御を実行していない場合、前記距離が所定距離以下となったとき前記第1制御を開始する
また、本発明は、
車両の駆動源であるモータに電力を供給するバッテリと、
前記バッテリからの電力が供給され、バッテリ温度を調整する温調装置と、
前記バッテリ温度を所定の温度領域に維持させるように前記温調装置を制御する第1制御を実行する制御装置と、を備えるバッテリ温調システムであって、
前記制御装置は、
ユーザのスケジュール情報と連携して前記車両の駐車予定情報を取得し、
前記駐車予定情報に基づいて、前記車両の駐車予定期間が所定期間以上であるか否かを判断し、
前記駐車予定期間が前記所定期間未満であると判断したとき、前記車両の駐車時に前記第1制御を実行し、
前記駐車予定期間が前記所定期間以上であると判断したとき、前記車両の駐車時に前記第1制御を実行せず、
前記ユーザが保持するユーザ端末と前記車両との距離を推定し、
前記スケジュール情報が登録されていない場合、且つ、前記距離が所定距離以上となったとき、駐車予定終了時刻を登録するように前記ユーザ端末に報知する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両の利便性を維持しながら、消費電力を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のバッテリ温調システム1が搭載された車両Vを示す概略図である。
図2】本発明のバッテリ温調システム1の構成を示すブロック図である。
図3】本発明のバッテリ温調システム1を動作させたときの、ユーザ端末20と車両Vとの距離、バッテリ2のSOC、及び、バッテリ温度の時間変化を表すグラフである。
図4】制御装置5による制御フローを示す図である。
図5】省電力制御を実行した場合における、本発明のバッテリ温調システム1を動作させたときの、ユーザ端末20と車両Vとの距離、バッテリ2のSOC、及び、バッテリ温度の時間変化を表すグラフである。
図6】スケジュール情報が登録されていない状態で車両Vの駐車が開始する場合における制御フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態であるバッテリ温調システムについて図面を参照しながら説明する。
【0012】
[車両]
図1及び図2に示すように、本実施形態のバッテリ温調システム1は、車両Vに搭載されている。車両Vは、例えば、プラグイン・ハイブリッド車や電気自動車等の電動車両であり、充電ステーションや自宅等に設けられた外部電源10からの電力によりバッテリ2を蓄電可能に構成される。車両Vは、バッテリ2に蓄電された電力によって、駆動源であるモータ7を駆動することで走行可能に構成される。
【0013】
車両Vは、外部電源10から延びる充電ケーブル11の充電プラグ11aを車両Vに設けられた充電インレット8に接続することで、外部電源10に接続(プラグイン)される。なお、車両Vと外部電源10との接続はこれに限られない。例えば、外部電源10から送電される電力を非接触で受電可能な受電コイル等を車両Vに設ける構成であってもよい。また、車両Vは、必ずしも外部電源10からの電力によりバッテリ2を蓄電可能である必要はない。
【0014】
車両Vは、ユーザが保持するユーザ端末20と通信可能に構成されている。ユーザ端末20は、例えば、ユーザが持ち運び可能なスマートフォンやタブレット端末である。
【0015】
[バッテリ温調システム]
バッテリ温調システム1は、バッテリ2と、バッテリ2を冷却又は加温する温調装置3と、バッテリ2の状態を検知するセンサ部4と、温調装置3を制御する制御装置5と、を備える。
【0016】
バッテリ2は、バッテリセル(不図示)を複数積層して構成され、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池である。バッテリ2は、充電プラグ11aが充電インレット8に接続されることで外部電源10に接続され、外部電源10からの電力により蓄電可能に構成される。バッテリ2に蓄電された電力は、電力変換装置6に含まれるインバータを介して直流から交流に変換され、モータ7に供給される。また、車両Vの制動時にモータ7で発電された交流が電力変換装置6に入力されると、インバータを介して交流が直流に変換され、バッテリ2に供給される。すなわち、バッテリ2は、回生電力により蓄電可能に構成される。
【0017】
温調装置3は、バッテリ2に設けられた冷媒流路に冷媒を流すことで、バッテリ2を冷却する冷却装置を備える。冷却装置は、例えば水冷式であり、ポンプで冷媒を循環させ、ラジエータで冷媒を冷やす。冷却装置にはヒーターが設けられており、バッテリ2を加温することができる。
【0018】
温調装置3には、バッテリ2に蓄電された電力が供給される。また、車両Vが外部電源10に接続されているときには、外部電源10からの電力が供給可能なように構成されている。なお、温調装置3は、車両Vが外部電源10に接続されているとき、外部電源10からの電力及びバッテリ2からの電力が選択的に供給される構成であってもよい。
【0019】
センサ部4は、バッテリ2の温度(以下、バッテリ温度とも称する)を取得する温度センサ4aと、バッテリ2の電圧を測定する電圧センサ4bと、バッテリ2に流れる電流を測定する電流センサ4cと、を備える。
【0020】
制御装置5は、バッテリ2の充放電を制御するバッテリ制御部5aと、温調装置3を制御する温調制御部5bと、ユーザ端末20と通信してユーザの行動スケジュールを取得するスケジュール取得部5cと、ユーザ端末20の位置情報を取得するユーザ位置取得部5dと、から構成される。例えば、制御装置5は、プロセッサ、メモリ、インターフェース等を備えるECU(Electronic Control Unit)によって実現される。なお、バッテリ制御部5a、温調制御部5b、スケジュール取得部5c、及びユーザ位置取得部5dは、それぞれ別体の制御装置で構成されていてもよい。
【0021】
バッテリ制御部5aには、バッテリ温度、バッテリ2の電圧、及びバッテリ2の電流等がセンサ部4から入力される。また、バッテリ制御部5aは、入力された電圧や電流を用いて、バッテリ2のSOCを算出する。バッテリ制御部5aは、これらの入力値やSOCに基づき、バッテリ2の充放電を制御する。
【0022】
温調制御部5bは、バッテリ温度を目標温度領域に維持させるように温調装置3を制御する。本制御を通常温調制御とも称する。温調制御部5bは、車両Vの走行中に温調装置3を制御することに加えて、車両Vの駐車中にも制御を行う。例えば、車両Vが高温環境下にあるとき、温調制御部5bは、バッテリ制御部5aから現在のバッテリ温度を取得し、バッテリ温度を目標温度領域(例えば30℃前後)に維持させるように温調装置3を制御し、バッテリ2を冷却する。同様に、車両Vが低温環境下にあるとき、温調制御部5bは、バッテリ制御部5aから現在のバッテリ温度を取得し、バッテリ温度を目標温度領域に維持させるように温調装置3を制御し、バッテリ2を加温する。ここで、通常温調制御は、本発明における「第1制御」に相当する。
【0023】
スケジュール取得部5cは、ユーザ端末20と通信可能に構成されており、ユーザ端末20でユーザが予め登録したスケジュール情報と連携し、ユーザのスケジュール情報を取得する。例えば、スケジュール取得部5cは、ユーザ端末20で登録された旅行の出発/到着予定日時、目的地、車両Vの走行予定情報、及び駐車予定情報(駐車予定開始時刻や駐車予定終了時刻を含む)を取得する。スケジュール情報を取得するタイミングは任意であり、例えば、車両Vの起動時に取得される。
【0024】
なお、ユーザのスケジュール情報がユーザ端末20とは異なる外部サーバに記憶されている場合、スケジュール取得部5cはネットワークを介して外部サーバと通信し、ユーザのスケジュール情報を取得してもよい。また、ユーザのスケジュール情報が車両Vに備え付けられるナビゲーション装置に記憶されている場合、スケジュール取得部5cはナビゲーション装置からユーザのスケジュール情報を取得してもよい。
【0025】
ユーザ位置取得部5dは、ユーザ端末20と通信可能に構成されており、GPS(Global Positioning System)信号を受信したユーザ端末20の位置情報を取得する。これにより、ユーザ位置取得部5dは、ユーザ端末20と車両Vとの距離を推定することができる。位置情報を取得するタイミングは任意であり、例えば、所定の間隔毎に行われる。
【0026】
[バッテリ温調システムによる制御]
図3は、車両Vの駐車中及び駐車前後の走行中における、ユーザ端末20と車両Vとの距離、バッテリ2のSOC、及び、バッテリ温度の時間変化を示す。図中の実線は、車両Vの駐車時に通常温調制御を実行しない場合の時間変化である。図中の破線は、温調装置3に対して通常温調制御(すなわち、バッテリ温度を目標温度領域に維持させる制御)を常時実行する場合の時間変化である。バッテリ温度のグラフ中には、通常温調制御を実行する場合の目標温度領域と車両V周囲の外気温度も示す。なお、図3は、外気温度がバッテリの目標温度よりも低い場合(例えば低温環境下で車両Vを走行及び駐車させる場合)の一例である。
【0027】
時刻t0において、車両Vは起動し走行を開始する。例えば、車両Vは自宅から空港の駐車場に向かって走行を開始する。車両Vの走行中においては、バッテリ温度が目標温度領域内に維持されるように、温調制御部5bは温調装置3に対して通常温調制御を実行する。通常温調制御を実行する際、温調装置3にはバッテリ2からの電力が供給され、バッテリ2のSOCは低下する。なお、バッテリ2のSOCの低下分には、モータ7を駆動するための消費電力分も含まれ得る。
【0028】
また、時刻t0において、スケジュール取得部5cは、ユーザ端末20に登録されたユーザのスケジュール情報と連携して、車両Vの駐車予定情報を取得する。駐車予定情報は、駐車予定開始時刻及び駐車予定終了時刻と、これらから算出される駐車予定期間とを含む。
【0029】
時刻t1において、車両Vは空港の駐車場に駐車される。時刻t1以後、ユーザは車両Vから離れ、飛行機に搭乗し、目的地に到着する。よって、ユーザが保持するユーザ端末20と車両Vとの距離が大きくなる。
【0030】
時刻t1において、スケジュール取得部5cは駐車予定情報を参照し、車両Vの駐車予定期間が所定期間以上(例えば1日以上)であるか否かを判断する。図3の一例では、駐車予定期間が7月21日から7月28日までであるため所定期間以上と判断し、すなわち、駐車後しばらくの間は、車両Vを使用する可能性が低いと判断する。
【0031】
車両Vの駐車予定期間が所定期間以上であると判断すると、温調制御部5bは温調装置3に対して通常温調制御を終了する。時刻t1以後、温調制御部5bは通常温調制御を実行していないため、バッテリ温度は目標温度領域には維持されなくなり、目標温度領域より低い外気温度に向かって低下する。
【0032】
時刻t2において、バッテリ2のバッテリ温度が目標温度領域から外れる。仮に温調制御部5bが通常温調制御を実行する場合、破線で示すように、バッテリ温度が目標温度領域から外れないように制御する。この場合、通常温調制御に必要な電力がバッテリ2から消費され、バッテリ2のSOCが低下する。本実施形態では、駐車後のしばらくの間車両Vを使用する可能性が低い場合には、温調制御部5bが通常温調制御を実行しない。したがって、温調制御部5bが通常温調制御を実行する場合と比較して、駐車時におけるバッテリ2の消費電力は抑制され、SOCの低下を抑制することができる。また、駐車時に車両Vが外部電源10に接続されている場合には、温調制御部5bが通常温調制御を実行する場合と比較して、外部電源10の消費電力を抑制することができる。
【0033】
時刻t3は、車両Vの駐車予定終了時刻t4よりも所定時間前の時刻であり、すなわち、間もなく駐車が終了する時刻である。時刻t3において、温調制御部5bは再び通常温調制御を実行する。このような構成により、外気温度に維持されていたバッテリ温度が、車両Vの走行開始時にバッテリ2を正常に作動させることができる目標温度領域まで加温される。ここで、所定時間とは、現在の時刻t3からバッテリ温度を通常温調制御により温調し、駐車予定終了時刻t4までにバッテリ温度が目標温度領域に到達するために必要な時間である。
【0034】
時刻t4において、ユーザは目的地から車両Vへ戻り、駐車が終了する。そして、ユーザは車両Vの走行を開始する。
【0035】
なお、本実施形態では、車両Vの駐車予定終了時刻よりも所定時間前である時刻t3に通常温調制御を開始したが、これに限られない。例えば、ユーザが保持するユーザ端末20と車両Vとの距離が所定距離以下となったときに通常温調制御を開始してもよい。このような構成により、ユーザが駐車予定終了時刻t4よりも早く目的地から車両Vに戻ってきた場合であっても、ユーザの移動に合わせて、車両Vの走行開始時にバッテリ2を正常に作動させることができるように、バッテリ温度を通常温調制御により予め加温させることができる。
【0036】
次に、図4を参照し、制御装置5によるバッテリ2の温度を調整する制御について説明する。
【0037】
ステップS100において、スケジュール取得部5cは、ユーザ端末20にユーザのスケジュール情報が登録されているか否かを判断する。スケジュール情報が登録されていない場合(NO)、再びステップS100に戻り、スケジュール情報が登録されるまで監視する。スケジュール情報が登録されている場合(YES)、ステップS110に進む。
【0038】
ステップS110において、スケジュール取得部5cは、スケジュール情報に基づく駐車予定情報を取得して参照する。
【0039】
ステップS120において、スケジュール取得部5cは、車両Vの駐車が開始したか否かを判断する。例えば、車両Vが一定期間停止した場合に駐車が開始したと判断してもよいし、駐車予定開始時刻になった場合に駐車が開始したと判断してもよい。スケジュール取得部5cは、車両Vの駐車が開始していないと判断した場合(NO)、駐車が開始するまで監視する。車両Vの駐車が開始したと判断された場合(YES)、ステップS130に進む。
【0040】
ステップS130において、スケジュール取得部5cは、車両Vの駐車予定期間が所定期間以上か否かを判断する。駐車予定期間が所定期間未満であると判断した場合(NO)には、駐車期間が短いため、ステップS180に進み、温調制御部5bは通常温調制御を実行する。駐車予定期間が所定期間以上と判断した場合(YES)、ステップS140に進む。
【0041】
ステップS140において、温調制御部5bは、車両Vの走行中に実行していた通常温調制御を終了する。
【0042】
ステップS150において、スケジュール取得部5cは、現時刻が駐車予定終了時刻より所定時間前か否かを判断する。現時刻が駐車予定終了時刻より所定時間前である場合(YES)には、間もなく駐車が終了するため、ステップS180に進む。ステップS180において、温調制御部5bは通常温調制御を実行する。これにより、車両Vの走行開始時にバッテリ温度を適切な温度とすることができる。したがって、車両Vの走行開始時にバッテリ2の使用制限がかかるのを回避でき、車両Vの利便性を維持することができる。現時刻が駐車予定終了時刻より所定時間前ではない場合(NO)には、ステップS160に進む。
【0043】
ステップS160において、ユーザ位置取得部5dはユーザ端末20と車両Vとの距離を推定する。
【0044】
ステップS170において、スケジュール取得部5cは、ユーザ端末20と車両Vとの距離が所定距離以下か否かを判断する。当該距離が所定距離以下である場合には、ステップS180に進み、温調制御部5bは通常温調制御を実行する。当該距離が所定距離より大きい場合には、ステップS150に戻る。これにより、ユーザの予定が変更された場合であっても、ユーザの移動に合わせてバッテリ2を通常温調制御により予め加温させることができる。
【0045】
このように、本実施形態のバッテリ温調システム1では、車両Vの駐車予定期間が所定期間以上であると判断したとき、車両Vの駐車時に、バッテリ温度を目標温度領域に維持させるように温調装置3を制御する通常温調制御を実行しない。これにより、車両Vを使用する可能性が低いとき、バッテリ温度の調整を制限し、駐車時における温調装置3の消費電力を低下させることができる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0047】
上記実施形態において、駐車予定期間が所定期間以上と判断した場合、温調制御部5bは、通常温調制御を終了し、通常温調制御よりも少ない消費電力で温調装置3を制御する省電力制御を実行してもよい。具体的には、図4のステップS140において、温調制御部5bは、通常温調制御を終了して省電力制御を実行してもよい。省電力制御は、バッテリ2の性能を大きく低下させないよう、バッテリ2の性能維持のための最低限レベルの温調制御である。ここで、省電力制御は、本発明における「第2制御」に相当する。
【0048】
省電力制御を実行することで、図5に示すように、車両の駐車時に、バッテリ温度は、通常温調制御の目標温度領域よりも低い省電力制御の目標温度領域に維持される。車両Vの駐車時に省電力制御を実行することで、車両Vを使用する可能性が低い場合にはバッテリ2の性能維持のための最低限レベルの温調制御に留めることができる。したがって、上記実施形態と同様に、消費電力を低下させることができる。
【0049】
上記実施形態では、スケジュール取得部5cは、車両Vの駐車前に車両Vの駐車予定情報を取得したが、車両Vの駐車前にユーザのスケジュール情報が登録されていない場合も考えられる。例えば、図6に示すように、ステップS100でスケジュール情報が登録されていない場合(NO)であって、ステップS102で車両Vの駐車が開始したと判断する場合(YES)が考えられる。このとき、制御装置5は、ユーザに対して、駐車予定終了時刻を登録するように促す処理を行ってもよい。
【0050】
具体的には、ステップS104において、ユーザ位置取得部5dは、ユーザ端末20と車両Vとの距離を取得する。ステップS106において、ユーザ位置取得部5dは、当該距離が所定距離以上であるか否かを判断する。当該距離が所定距離以上である場合(YES)には、ステップS108において、スケジュール取得部5cは、駐車予定終了時刻を登録するようにユーザ端末20に報知する。ステップS108の後、ユーザが駐車予定終了時刻を登録したとき、図4に示したステップS130から制御を開始する。このような構成により、車両Vを使用する可能性が低い場合に駐車予定終了時刻を登録するようユーザに促すことで、温調制御部5bは、通常温調制御を実行しない期間を把握することが容易になる。
【0051】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0052】
(1) 車両(車両V)の駆動源であるモータ(モータ7)に電力を供給するバッテリ(バッテリ2)と、
前記バッテリからの電力が供給され、バッテリ温度を調整する温調装置(温調装置3)と、
前記バッテリ温度を目標温度領域に維持させるように前記温調装置を制御する第1制御を実行する制御装置(制御装置5)と、を備えるバッテリ温調システムであって、
前記制御装置は、
ユーザのスケジュール情報と連携して前記車両の駐車予定情報を取得し、
前記駐車予定情報に基づいて、前記車両の駐車予定期間が所定期間以上であるか否かを判断し、
前記駐車予定期間が前記所定期間未満であると判断したとき、前記車両の駐車時に前記第1制御を実行し、
前記駐車予定期間が前記所定期間以上であると判断したとき、前記車両の駐車時に前記第1制御を実行しない、バッテリ温調システム。
【0053】
(1)によれば、制御装置は、駐車予定情報に基づいて、車両の駐車予定期間が所定期間以上であるか否かを判断し、駐車予定期間が所定期間未満であると判断したとき、第1制御を実行する。したがって、車両を使用する可能性が高い場合にはバッテリ温度の調整を行うことで、バッテリの使用制限がかかるのを回避でき、車両の利便性を維持することができる。また、制御装置は、駐車予定期間が所定期間以上であると判断したとき、車両の駐車時に第1制御を実行しない。したがって、車両を使用する可能性が低い場合にはバッテリ温度の調整を制限し、温調装置の消費電力を低下させることができる。
【0054】
(2) (1)に記載のバッテリ温調システムであって、
前記制御装置は、前記駐車予定期間が前記所定期間以上であると判断したとき、前記車両の駐車時に前記第1制御よりも少ない消費電力で前記温調装置を制御する第2制御を実行する、バッテリ温調システム。
【0055】
(2)によれば、制御装置は、駐車予定期間が所定期間以上であると判断したとき、車両の駐車時に第1制御よりも少ない消費電力で温調装置を制御する第2制御を実行するので、車両を使用する可能性が低い場合にはバッテリの性能維持のための最低限レベルの温調制御に留めることができる。したがって、消費電力を低下させることができる。
【0056】
(3) (1)又は(2)に記載のバッテリ温調システムであって、
前記制御装置は、前記車両の駐車時に前記第1制御を実行していない場合、前記駐車予定情報により得られた駐車予定終了時刻より所定時間前に前記第1制御を開始する、バッテリ温調システム。
【0057】
(3)によれば、制御装置は、車両の駐車時に第1制御を実行していない場合、駐車予定情報により得られた駐車予定終了時刻より所定時間前に第1制御を開始するので、車両の走行開始時にバッテリ温度を適切な温度とすることができる。したがって、車両の走行開始時にバッテリの使用制限がかかるのを回避でき、車両の利便性を維持することができる。
【0058】
(4) (1)から(3)のいずれか一項に記載のバッテリ温調システムであって、
前記制御装置は、
前記ユーザが保持するユーザ端末と前記車両との距離を推定し、
前記車両の駐車時に前記第1制御を実行していない場合、前記距離が所定距離以下となったとき前記第1制御を開始する、バッテリ温調システム。
【0059】
(4)によれば、車両の駐車時に第1制御を実行していない場合、ユーザ端末と車両との距離が所定距離以下となったとき第1制御を開始するので、ユーザの移動に合わせて、車両の運転開始時にバッテリ温度を適切な温度とすることができる。したがって、車両の運転開始時にバッテリの使用制限がかかるのを回避でき、車両の利便性を維持することができる。
【0060】
(5) (1)から(4)のいずれか一項に記載のバッテリ温調システムであって、
前記制御装置は、
前記ユーザが保持するユーザ端末と前記車両との距離を推定し、
前記スケジュール情報が登録されていない場合、且つ、前記距離が所定距離以上となったとき、駐車予定終了時刻を登録するように前記ユーザ端末に報知する、バッテリ温調システム。
【0061】
(5)によれば、スケジュール情報が登録されていない場合、且つ、ユーザ端末と車両との距離が所定距離以上となったとき、駐車予定終了時刻を登録するようにユーザ端末に報知するので、第1制御を実行しない期間を把握することが容易になる。
【0062】
(6) (1)から(5)のいずれか一項に記載のバッテリ温調システムであって、
前記バッテリは、外部電源からの電力により蓄電可能であり、
前記温調装置には、前記外部電源からの電力及び前記バッテリからの電力が選択的に供給される、バッテリ温調システム。
【0063】
(6)によれば、温調装置には、外部電源からの電力及びバッテリからの電力が選択的に供給される。温調装置が外部電源からの電力で温調装置が作動可能な場合には、第1制御を実行しないことで外部電源からの電力の消費を抑制することができる。また、温調装置がバッテリからの電力で作動可能な場合には、第1制御を実行しないことでバッテリのSOC低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 バッテリ温調システム
2 バッテリ
3 温調装置
5 制御装置
7 モータ
20 ユーザ端末
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6