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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】自転車用両脚スタンドおよび自転車
(51)【国際特許分類】
   B62H 1/04 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
B62H1/04
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022011498
(22)【出願日】2022-01-28
(65)【公開番号】P2023110205
(43)【公開日】2023-08-09
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(72)【発明者】
【氏名】板垣 貴浩
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】実公昭13-013067(JP,Y1)
【文献】特開2007-153137(JP,A)
【文献】特開2007-176313(JP,A)
【文献】特開2008-162460(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0235979(US,A1)
【文献】実開昭59-042768(JP,U)
【文献】特開2007-283883(JP,A)
【文献】実開平03-057191(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車に取り付けられ、接地状態と跳ね上げ状態とを切り替え可能な自転車用両脚スタンドであって、
前記接地状態において地面に接する接地部を含むスタンド部材であって、後輪車軸よりも後方に回動中心が位置するように回動自在に自転車に支持されるスタンド部材と、
前記跳ね上げ状態における前記スタンド部材の前端よりも前方に回動中心が位置するように回動自在に自転車に支持されるレバー部材であって、前記跳ね上げ状態において前記レバー部材の回動中心よりも前方に位置する操作部を含むレバー部材と、
前記レバー部材と前記スタンド部材とをリンク結合するリンク部材と、
を備え、
前記跳ね上げ状態において前記操作部を下方に押し下げて前記レバー部材を回動させることによって、前記接地部が下方に移動するように前記スタンド部材を回動させ得るように構成されており、
前記跳ね上げ状態における側面視において、前記レバー部材は後輪の外周よりも内側に位置する、自転車用両脚スタンド。
【請求項2】
前記リンク部材は、前記跳ね上げ状態から前記接地状態への切り替えに際して長さが実質的に伸びない部材である、請求項1に記載の自転車用両脚スタンド。
【請求項3】
前記レバー部材は、後輪車軸よりも下側において第1支持部材によって回動自在に支持される、請求項1または2に記載の自転車用両脚スタンド。
【請求項4】
前記レバー部材は、一端部および他端部と、前記一端部と前記他端部との間に位置する中間部とを有し、
前記レバー部材の前記中間部が前記第1支持部材によって支持される、請求項3に記載の自転車用両脚スタンド。
【請求項5】
前記レバー部材の前記一端部が前記操作部であり、
前記レバー部材の前記他端部に前記リンク部材が接続されている、請求項4に記載の自転車用両脚スタンド。
【請求項6】
前記スタンド部材は、後輪車軸よりも下側において第2支持部材によって回動自在に支持される、請求項1から5のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【請求項7】
前記第2支持部材は、後輪車軸付近に固定される一対の固定板であり、
前記スタンド部材は、前記一対の固定板によって支持される、請求項6に記載の自転車用両脚スタンド。
【請求項8】
前記スタンド部材は、前記接地部から延びる一対の脚部をさらに含み、
前記一対の脚部の一方に、前記リンク部材が接続されている、請求項1から7のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【請求項9】
前記跳ね上げ状態における側面視において、前記レバー部材の前記操作部の上面が水平方向となす角は45°以下である、請求項1から8のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【請求項10】
前記接地状態における側面視において、前記レバー部材の前記操作部の上面が水平方向となす角は90°以下である、請求項1から9のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【請求項11】
前記跳ね上げ状態において、前記レバー部材の前端部は、前記操作部を含んでおり、前記レバー部材は、前記跳ね上げ状態における側面視において前記前端部の下面が前方斜め上向きに傾斜した形状を有している、請求項1から10のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【請求項12】
前記レバー部材の前記操作部は、前記跳ね上げ状態において前記レバー部材の最下点よりも上側に位置している、請求項1から11のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【請求項13】
前記レバー部材の前記操作部は、前記跳ね上げ状態において前記レバー部材の前端に位置しており、
前記レバー部材の前記操作部の幅は、前記レバー部材の前記操作部以外の部分の幅よりも大きい、請求項1から12のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【請求項14】
前記跳ね上げ状態において、前記レバー部材の操作部は、ペダルの回転軌跡の最後点よりも後側に位置する、請求項1から13のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【請求項15】
前記跳ね上げ状態において、前記レバー部材の操作部は、ペダルの回転軌跡の最下点と後輪の接地点とを結ぶ直線よりも上側に位置する、請求項1から14のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【請求項16】
前記レバー部材の前記操作部は、上面視において、最前に位置しているときの左右のペダルの最外端と、スタンド部材の左右端とを頂点とする多角形の内側に位置している、請求項1から15のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【請求項17】
前記レバー部材と前記リンク部材との接続部をレバー接続部と呼び、前記スタンド部材と前記リンク部材との接続部をスタンド接続部と呼ぶとき、
前記跳ね上げ状態において、前記レバー接続部は、前記レバー部材の回動中心と前記スタンド接続部とを結ぶ直線よりも上側に位置する、請求項1から16のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【請求項18】
前記跳ね上げ状態から前記接地状態への切り替えの際、前記レバー接続部は前方かつ上方に移動する、請求項17に記載の自転車用両脚スタンド。
【請求項19】
前記跳ね上げ状態から前記接地状態への切り替えの際、前記レバー部材の回動中心と前記スタンド接続部との距離が小さくなる、請求項17または18に記載の自転車用両脚スタンド。
【請求項20】
請求項1から19のいずれかに記載の自転車用両脚スタンドを備えた自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用両脚スタンドおよび自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車は、手軽に利用できる交通手段として、老若男女を問わず、広く普及している。また、近年では、運転者のペダル踏力をモータの駆動力で補助する電動補助自転車の普及も進んでいる。電動補助自転車は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-196080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自転車用のスタンドとしては、両脚スタンドが広く用いられている。両脚スタンドを搭載された自転車では、ユーザは、スタンド掛けの際、スタンド操作のために車両の最後端まで足を大きく移動させる必要がある。そのため、ユーザは、ハンドルを持ったままでは足がスタンドに届きにくく、スタンド操作時に姿勢を大きく変化させることを強いられるおそれがある。自転車に重い荷物が積載されている場合には、ハンドルを持ったまま安定な状態で操作を行えることが好ましい。また、自転車の後部に大きな荷物が積載されていたり、リアチャイルドシートが取り付けられていたりする場合、車両の最後端に位置するスタンドが見えにくい、という問題もある。
【0005】
本発明の実施形態は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、スタンド掛けを、降車位置から後方に足を大きく移動させることなく行うことができる、自転車用両脚スタンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、以下の項目に記載の自転車用両脚スタンドおよび自転車を開示している。
【0007】
[項目1]
自転車に取り付けられ、接地状態と跳ね上げ状態とを切り替え可能な自転車用両脚スタンドであって、
前記接地状態において地面に接する接地部を含むスタンド部材であって、後輪車軸よりも後方に回動中心が位置するように回動自在に自転車に支持されるスタンド部材と、
前記跳ね上げ状態における前記スタンド部材の前端よりも前方に回動中心が位置するように回動自在に自転車に支持されるレバー部材であって、前記跳ね上げ状態において前記レバー部材の回動中心よりも前方に位置する操作部を含むレバー部材と、
前記レバー部材と前記スタンド部材とをリンク結合するリンク部材と、
を備え、
前記跳ね上げ状態において前記操作部を下方に押し下げて前記レバー部材を回動させることによって、前記接地部が下方に移動するように前記スタンド部材を回動させ得るように構成されており、
前記跳ね上げ状態における側面視において、前記レバー部材は後輪の外周よりも内側に位置する、自転車用両脚スタンド。
本発明の実施形態による自転車用両脚スタンドは、接地状態において地面に接する接地部を含むスタンド部材に加えて、スタンド部材の前端よりも前方に回動中心が位置するように回動自在に自転車に支持されるレバー部材と、レバー部材とスタンド部材とをリンク結合するリンク部材とを備えており、レバー部材は、跳ね上げ状態においてその回動中心よりも前方に位置する操作部を含んでいる。そして、本発明の実施形態による自転車用両脚スタンドは、跳ね上げ状態においてレバー部材の操作部を下方に押し下げてレバー部材を回動させることによって、接地部が下方に移動するようにスタンド部材を回動させ得るように構成されている。このような構成により、跳ね上げ状態から接地状態へと切り替えるスタンド操作(「スタンド掛け」と呼ばれる)を、降車位置から後方に足を大きく移動させることなく行うことができる。そのため、自転車に重い荷物が積載されている場合でも、ハンドルを持ったまま安定な状態で(つまり姿勢を大きく変化させることなく)スタンド掛けを行うことが可能となる。また、ハンドルを持ったまま操作部に体重をかけることができるので、比較的楽にスタンド掛けを行うことができる。さらに、自転車にリアチャイルドシートが取り付けられている場合でも、レバー部材の操作部が運転者から見えやすい位置にあるので、その点からもスタンド掛けを好適に行うことができる。また、本発明の実施形態による自転車用両脚スタンドでは、跳ね上げ状態における側面視において、レバー部材が後輪の外周よりも内側に位置するので、自転車が段差を乗り越える際などのレバー部材への引っ掛かり(接触)が防止され得る。
【0008】
[項目2]
前記リンク部材は、前記跳ね上げ状態から前記接地状態への切り替えに際して長さが実質的に伸びない部材である、項目1に記載の自転車用両脚スタンド。
スタンド掛けを行うときにスタンド部材、レバー部材およびリンク部材をリンク機構として好適に機能させる観点からは、リンク部材は、跳ね上げ状態から接地状態への切り替えに際して長さが実質的に伸びない部材であることが好ましい。
【0009】
[項目3]
前記レバー部材は、後輪車軸よりも下側において第1支持部材によって回動自在に支持される、項目1または2に記載の自転車用両脚スタンド。
後輪車軸周辺およびその上側には、自転車の他の部材が少なからず配置され得る。そのため、レイアウトの容易さの観点からは、レバー部材は、後輪車軸よりも下側において支持されることが好ましい。
【0010】
[項目4]
前記レバー部材は、一端部および他端部と、前記一端部と前記他端部との間に位置する中間部とを有し、
前記レバー部材の前記中間部が前記第1支持部材によって支持される、項目3に記載の自転車用両脚スタンド。
【0011】
[項目5]
前記レバー部材の前記一端部が前記操作部であり、
前記レバー部材の前記他端部に前記リンク部材が接続されている、項目4に記載の自転車用両脚スタンド。
【0012】
[項目6]
前記スタンド部材は、後輪車軸よりも下側において第2支持部材によって回動自在に支持される、項目1から5のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【0013】
[項目7]
前記第2支持部材は、後輪車軸付近に固定される一対の固定板であり、
前記スタンド部材は、前記一対の固定板によって支持される、項目6に記載の自転車用両脚スタンド。
【0014】
[項目8]
前記スタンド部材は、前記接地部から延びる一対の脚部をさらに含み、
前記一対の脚部の一方に、前記リンク部材が接続されている、項目1から7のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【0015】
[項目9]
前記跳ね上げ状態における側面視において、前記レバー部材の前記操作部の上面が水平方向となす角は45°以下である、項目1から8のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
スタンド掛けを好適に行う観点からは、跳ね上げ状態における側面視において、レバー部材の操作部の上面が水平方向となす角がある程度小さいことが好ましい。具体的には、操作部の上面が水平方向となす角は45°以下であることが好ましく、10°以下であることがより好ましい。
【0016】
[項目10]
前記接地状態における側面視において、前記レバー部材の前記操作部の上面が水平方向となす角は90°以下である、項目1から9のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【0017】
[項目11]
前記跳ね上げ状態において、前記レバー部材の前端部は、前記操作部を含んでおり、前記レバー部材は、前記跳ね上げ状態における側面視において前記前端部の下面が前方斜め上向きに傾斜した形状を有している、項目1から10のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【0018】
[項目12]
前記レバー部材の前記操作部は、前記跳ね上げ状態において前記レバー部材の最下点よりも上側に位置している、項目1から11のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【0019】
[項目13]
前記レバー部材の前記操作部は、前記跳ね上げ状態において前記レバー部材の前端に位置しており、
前記レバー部材の前記操作部の幅は、前記レバー部材の前記操作部以外の部分の幅よりも大きい、項目1から12のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
スタンド掛けをいっそう容易に行う観点からは、レバー部材の操作部が、跳ね上げ状態においてレバー部材の前端に位置していることが好ましい。また、レバー部材の操作部の幅が、レバー部材の操作部以外の部分の幅よりも大きいと、レバー部材の操作性をいっそう向上させることができる。
【0020】
[項目14]
前記跳ね上げ状態において、前記レバー部材の操作部は、ペダルの回転軌跡の最後点よりも後側に位置する、項目1から13のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【0021】
[項目15]
前記跳ね上げ状態において、前記レバー部材の操作部は、ペダルの回転軌跡の最下点と後輪の接地点とを結ぶ直線よりも上側に位置する、項目1から14のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【0022】
[項目16]
前記レバー部材の前記操作部は、上面視において、最前に位置しているときの左右のペダルの最外端と、スタンド部材の左右端とを頂点とする多角形の内側に位置している、項目1から15のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
レバー部材の操作部が、上面視において、最前に位置しているときの左右のペダルの最外端と、スタンド部材の左右端とを頂点とする多角形の内側に位置していると、自転車が転倒したときに操作部に過大な負荷がかかることを防止できる。
【0023】
[項目17]
前記レバー部材と前記リンク部材との接続部をレバー接続部と呼び、前記スタンド部材と前記リンク部材との接続部をスタンド接続部と呼ぶとき、
前記跳ね上げ状態において、前記レバー接続部は、前記レバー部材の回動中心と前記スタンド接続部とを結ぶ直線よりも上側に位置する、項目1から16のいずれかに記載の自転車用両脚スタンド。
【0024】
[項目18]
前記跳ね上げ状態から前記接地状態への切り替えの際、前記レバー接続部は前方かつ上方に移動する、項目17に記載の自転車用両脚スタンド。
【0025】
[項目19]
前記跳ね上げ状態から前記接地状態への切り替えの際、前記レバー部材の回動中心と前記スタンド接続部との距離が小さくなる、項目17または18に記載の自転車用両脚スタンド。
【0026】
[項目20]
項目1から19のいずれかに記載の自転車用両脚スタンドを備えた自転車。
【発明の効果】
【0027】
本発明の実施形態によると、スタンド掛けを、降車位置から後方に足を大きく移動させることなく行うことができる、自転車用両脚スタンドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態による自転車1を模式的に示す左側面図である。
図2A】接地状態にあるときのスタンド40の周辺を示す図である。
図2B】跳ね上げ状態にあるときのスタンド40の周辺を示す図である。
図3A】接地状態にあるときのスタンドアセンブリSAを模式的に示す正面図である。
図3B】接地状態にあるときのスタンドアセンブリSAを模式的に示す左側面図である。
図4A】跳ね上げ状態にあるときのスタンドアセンブリSAを模式的に示す斜視図である。
図4B】跳ね上げ状態にあるときのスタンドアセンブリSAを模式的に示す分解斜視図である。
図5】スタンド掛けの際のスタンド40の形状変化(各部材の位置および向きの変化)を示す図であり、上段および下段にはそれぞれ跳ね上げ状態および接地状態におけるスタンド40を示し、中段には跳ね上げ状態と接地状態との中間の状態におけるスタンド40を示している。
図6】跳ね上げ状態におけるスタンド40を示す図である。
図7】レバー部材60の操作部60Pの好ましい配置の例を示す上面図である。
図8】レバー部材60の他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態による自転車を説明する。以下で参照する図面において、同一の構成要素には同一の参照符号を付すこととし、その構成要素についての説明は繰り返さない。また、各図中に示されている構成要素の寸法は、各構成要素の実際の寸法や、構成要素同士の実際の寸法比率を必ずしも忠実に表してはいない。なお、以下の説明および図面における、前、後、左、右、上、下は、それぞれ自転車のサドル(シート)に着座した乗員から見たときの前、後、左、右、上、下を意味する。言うまでもないが、本発明は以下に例示する実施形態に限定されるものではない。
【0030】
[自転車の概略構成]
図1を参照しながら、本発明の実施形態による自転車1を説明する。図1は、自転車1を模式的に示す左側面図である。ここで例示している自転車1は、電動補助自転車である。自転車1は、図1に示すように、前輪2、後輪3、車体フレーム10、駆動ユニット20および両脚スタンド40を備える。
【0031】
車体フレーム10は、ヘッドパイプ11、ダウンチューブ12、シートチューブ13、ブラケット(不図示)、一対のチェーンステー15および一対のシートステー16を含む。車体フレーム10は、典型的には、金属材料(例えばアルミニウム合金)から形成されている。
【0032】
ヘッドパイプ11は、自転車1の前部に配置されている。ヘッドパイプ11に、ダウンチューブ12の前端部が接続されている。ダウンチューブ12は、ヘッドパイプ11から後方斜め下向きに延びている。ダウンチューブ12の後端部に、シートチューブ13が接続されている。シートチューブ13は、ダウンチューブ12の後端部から後方斜め上向きに延びている。ブラケットは、ダウンチューブ12の後端部に取り付けられている。ブラケットの後端部に、一対のチェーンステー15が接続されている。一対のチェーンステー15は、後輪3を左右から挟むように配置されている。各チェーンステー15の後端部には、各シートステー16の一端部が接続されている。一対のシートステー16は、後輪3を左右から挟むように配置されている。各シートステー16の他端部は、シートチューブ13の上端部に接続されている。
【0033】
ヘッドパイプ11には、ハンドルステム4が回転自在に挿入されている。ハンドルステム4の上端部には、ハンドル5が固定されている。ハンドルステム4の下端部には、フロントフォーク6が固定されている。フロントフォーク6の下端部には、前輪2が車軸2aによって回転可能に支持されている。ヘッドパイプ11およびハンドルステム4の前方には、前輪2の上方に位置するようにフロントバスケット7が配置されている。
【0034】
シートチューブ13は、円筒状である。シートチューブ13には、シートパイプ8が挿入されている。シートパイプ8の上端部には、サドル(シート)9が取り付けられている。
【0035】
一対のチェーンステー16の後端部には、後輪3が車軸3aによって回転可能に支持されている。後輪3の右方には、車軸3aと同軸に従動スプロケット32が配置されている。従動スプロケット32は、一方向クラッチ(不図示)を介して後輪3に連結されている。後輪3の上方には、リアキャリア17が設けられている。リアキャリア17には、後輪32の上方に位置するようにチャイルドシート(リアチャイルドシート)18が取り付けられている。
【0036】
駆動ユニット20は、ブラケットに懸架されている。駆動ユニット20は、例えば、締結金具(不図示)によってブラケットに取り付けられている。駆動ユニット20は、電動モータ21と、電動モータ21を収容し、駆動ユニット20の外形を規定するハウジング22とを含む。駆動ユニット20は、さらに、電動モータ21を制御するコントローラ(モータ制御部:不図示)を含む。
【0037】
ハウジング22の前部には、クランク軸23が左右方向に貫通している。クランク軸23は、ハウジング22に対して複数の軸受け(不図示)を介して回転可能に支持されている。
【0038】
クランク軸23の両端には、一対のクランクアーム24が取り付けられている。一対のクランクアーム24のそれぞれの先端部には、ペダル26が取り付けられている。乗員がペダル26を踏み込むことにより、クランク軸23が回転する。
【0039】
クランク軸23と同軸に、駆動スプロケット31が配置されている。駆動スプロケット31と従動スプロケット32との間に、チェーン34が巻き掛けられている。また、チェーン34は、補助スプロケット33にも巻き掛けられている。駆動スプロケット31および補助スプロケット33は、チェーン34を介して、後輪3に駆動力を伝達する。具体的には、乗員がペダル26を踏み込むことにより発生するペダル踏力は、駆動スプロケット31を回転させ、チェーン34を介して、後輪3を前転方向に回転させる駆動力として後輪3に伝達される。また、電動モータ21が作動することにより発生する回転力は、補助スプロケット33を回転させ、チェーン34を介して、後輪3を前転方向に回転させる駆動力として後輪3に伝達される。これにより、乗員がペダル26を踏み込むことにより発生するペダル踏力を、電動モータ21から出力される駆動力によってアシストすることができる。
【0040】
シートチューブ13の後方には、バッテリユニット35が配置されている。バッテリユニット35は、駆動ユニット20の電動モータ21に電力を供給する。バッテリユニット35は、バッテリおよびバッテリ制御部(いずれも不図示)を有する。バッテリは、充放電可能な充電池である。バッテリ制御部は、バッテリの充放電を制御するとともに、バッテリの出力電流および残容量等を監視する。バッテリユニット35と駆動ユニット20との間に、バッテリから電動モータ21へ電力を供給する電力線が設けられる。
【0041】
両脚スタンド(以下では単に「スタンド」と呼ぶ)40は、後輪3の車軸3a付近に固定される一対の固定板81、82(右側の固定板82は図1では不図示)を介して、自転車1の本体に取り付けられている。スタンド40は、ユーザの操作により、「接地状態」と「跳ね上げ状態」とを切り替え可能である。なお、本明細書では、スタンド40と一対の固定板81、82とをまとめて「スタンドアセンブリ」と呼ぶことがある。また、スタンド40が接地状態にあるときのスタンドアセンブリの状態も「接地状態」と呼び、スタンド40が跳ね上げ状態にあるときのスタンドアセンブリの状態も「跳ね上げ状態」と呼ぶことがある。
【0042】
図2Aは、接地状態にあるときのスタンド40の周辺を示す図であり、図2Bは、跳ね上げ状態にあるときのスタンド40の周辺を示す図である。自転車1が駐車されているとき、スタンド40は接地状態である。ユーザは、自転車1に乗って移動する際、スタンド40を図2Aに示す接地状態から図2Bに示す跳ね上げ状態に切り替える。また、ユーザは、自転車を駐車する際、スタンド40を図2Bに示す跳ね上げ状態から図2Aに示す接地状態に切り替える(このスタンド操作は「スタンド掛け」と呼ばれる)。
【0043】
[スタンドアセンブリの構成]
図1図2Aおよび図2Bに加えて図3A図3B図4Aおよび図4Bも参照しながら、自転車1のスタンドアセンブリSAの構成を説明する。図3Aおよび図3Bは、接地状態にあるときのスタンドアセンブリSAを模式的に示す正面図および左側面図である。図4Aおよび図4Bは、跳ね上げ状態にあるときのスタンドアセンブリSAを模式的に示す斜視図および分解斜視図である。
【0044】
図3A図4Bに示すように、スタンドアセンブリSAは、スタンド部材50、レバー部材60およびリンク部材70を備えるスタンド40と、一対の固定板81、82とを含んでいる。また、スタンドアセンブリSAは、ロックレバー91と、一対のコイルばね92、93とをさらに含んでいる。
【0045】
スタンド部材50は、接地部51と、一対の脚部52、53とを含んでいる。接地部51は、スタンド40の接地状態において地面に接する部分である。一対の脚部52、53は、接地部51から延びている。より具体的には、一対の脚部52、53は、接地部51の左端および右端から延びており、左右方向に互いに離れて位置している。
【0046】
スタンド部材50は、例えば金属材料から形成されている。スタンド部材50は、例えば棒状部材に対して曲げ加工およびプレス加工などを行うことによって形成され得る。図示している例では、スタンド部材50には、接地部51と一対の脚部52、53とを互いに接続する複数の棒状の補強部材54A、54B、54C、54Dが設けられている。スタンド部材50の形状は、図示している例に限定されない。補強部材54A、54B、54C、54Dは、省略されてもよい。
【0047】
スタンド部材50は、一対の固定板81、82に回動自在に接続されている。ここでは、一対の脚部52、53のそれぞれの端部(跳ね上げ状態における前端部)に接続孔52a、53a(図4B参照)が形成されているとともに、一対の固定板81、82のそれぞれに接続孔81a、82a(図4B参照)が形成されており、スタンド部材50は、接続孔52aおよび81aに挿通されるピン93Aおよび接続孔53aおよび82aに挿通されるピン93Bによって、一対の固定板81、82に接続されている。
【0048】
図2Aおよび図2Bに示しているように、スタンド部材50の回動中心rc1(ピン93A、93Bの中心軸)は、後輪3の車軸3aよりも後方に位置している。つまり、スタンド部材50は、後輪3の車軸3aよりも後方に回動中心rc1が位置するように回動自在に自転車1に支持されている。図示している例では、スタンド部材50は、後輪3の車軸3aよりも下側において固定板81、82によって支持されている。
【0049】
ロックレバー91は、左側の脚部52に回動可能に接続されている。ここでは、左側の脚部52の端部近傍(跳ね上げ状態における前端部近傍)に接続孔52b(図4B参照)が形成されているとともに、ロックレバー91に接続孔91a(図4B参照)が形成されており、ロックレバー91は、接続孔52bおよび91aに挿通されるピン94によって、左側の脚部52に接続されている。ロックレバー91は、左側の固定板81に対して引っ掛かることによって、左側の固定板81に対するスタンド部材50の回動を止める機能を奏する。
【0050】
ロックレバー91と左側の固定板81とには、コイルばね92が接続されている。ロックレバー91は、左側の固定板81に引っ掛かってスタンド部材50の回動を止める「ロック位置」と、左側の固定板81から離れてスタンド部材50の回動を許容する「ロック解除位置」との間で移動可能である。ロックレバー91は、コイルばね92の付勢力により、通常はロック位置に位置している。ロックレバー91は、ユーザに足先等で操作されることにより、ロック位置からロック解除位置へと移動し得る。
【0051】
右側の脚部53には、外側(右側)にやや突き出るように係止部55が設けられている。この係止部54と右側の固定板82とに、コイルばね93が接続されている。右側の脚部53は、コイルばね93によって、左側の脚部52と同じ方向に付勢されている。
【0052】
レバー部材60は、ユーザによる操作に供される操作部60Pを含んでいる。レバー部材60を、一端部および他端部と、一端部と他端部との間に位置する中間部とに区分すると、レバー部材60の一端部が操作部60Pである。図示している例では、レバー部材60は、レバー本体61と、操作ペダル62とから構成されている。
【0053】
レバー本体61は、側面視でくの字状に折れ曲がった形状を有する。より具体的には、レバー本体61は、跳ね上げ状態において下向きに凸となるように折れ曲がっている。レバー本体61は、例えば金属材料から形成されている。
【0054】
操作ペダル62は、板状の部分を含んでいる。操作ペダル62は、レバー本体61の一端部に取り付けられており、操作部60Pに位置している。図示している例では、操作ペダル62は、複数のビス63によってレバー本体61に取り付けられている。操作ペダル62の左右方向に沿った幅W1(図3A参照)は、レバー本体61の左右方向に沿った幅W2(図3A参照)よりも大きい。そのため、レバー部材60の操作部60Pの幅は、レバー部材60の操作部60P以外の部分の幅よりも大きい。なお、本明細書では、操作ペダル62の幅W1(操作部60Pの幅でもある)は、操作ペダル62の左右方向に沿った最大幅を指すものとする。操作ペダル62の幅W1は、例えば30mm以上80mm以下である。操作ペダル62は、例えば樹脂材料、ゴム材料または金属材料から形成されている。
【0055】
レバー部材60は、左側の固定板81に回動自在に接続されている。ここでは、レバー本体61の中間部に接続孔61a(図4B参照)が形成されているとともに、左側の固定板81の前部の下端部に接続孔81b(図4B参照)が形成されており、レバー部材60は、接続孔61aおよび81bに挿通されるピン95によって、左側の固定板81に接続されている。
【0056】
図2Bに示しているように、レバー部材60の回動中心rc2(ピン95の中心軸)は、跳ね上げ状態におけるスタンド部材50の前端よりも前方に位置している。つまり、レバー部材60は、跳ね上げ状態におけるスタンド部材50の前端よりも前方に回動中心rc2が位置するように回動自在に自転車1に支持されている。図示している例では、レバー部材60は、後輪3の車軸3aよりも下側において左側の固定板81によって支持されている。また、レバー部材60の中間部が左側の固定板81によって支持されている。
【0057】
レバー部材60の操作部60Pは、図2Bに示すように、跳ね上げ状態においてレバー部材60の回動中心rc2よりも前方に位置している。また、操作部60Pは、跳ね上げ状態においてレバー部材60の最下点よりも上側に位置している。
【0058】
なお、図2Bには、ペダル26の回転軌跡rtを一点鎖線で示している。図2Bに示すように、操作部60Pは、跳ね上げ状態においてペダル26の回転軌跡rtの最後点p1よりも後側に位置している。また、図2Bには、ペダル26の回転軌跡rtの最下点p2と後輪3の接地点p3とを結ぶ直線L1を二点鎖線で示している。図2Bに示すように、操作部60Pは、跳ね上げ状態においてこの直線L1よりも上側に位置している。
【0059】
また、図2Bに示すように、跳ね上げ状態における側面視において、レバー部材60は、後輪3の外周よりも内側に位置している。つまり、レバー部材60は、跳ね上げ状態における側面視において後輪3の外周よりも外側に位置する部分を含んでいない。
【0060】
上述したように、右側の固定板82がスタンド部材50を支持しているのに対し、左側の固定板81は、スタンド部材50とレバー部材60とを支持している。本明細書では、左側の固定板81の前部81f(つまりレバー部材60を支持する部分)を「第1支持部材」と呼び、左側の固定板81の後部81r(つまりスタンド部材50を支持する部分)および右側の固定板82をまとめて「第2支持部材」と呼ぶことがある。
【0061】
リンク部材70は、レバー部材60とスタンド部材50とをリンク結合する。具体的には、リンク部材70は、レバー部材60の他端部(操作部60Pでない方の端部)に接続されているとともに、スタンド部材50の左側の脚部52に接続されている。ここでは、リンク部材70の一端部に接続孔70a(図4B参照)が形成されているとともに、レバー本体61の端部(跳ね上げ状態における後端部)に接続孔61b(図4B参照)が形成されており、リンク部材70は、接続孔70aおよび61bに挿通されるピン96によって、レバー部材60に回動自在に接続されている。また、リンク部材70の他端部に接続孔70b(図4B参照)が形成されているとともに、左側の脚部52に接続孔52c(図4B参照)が形成されており、リンク部材70は、接続孔70bおよび52cに挿通されるピン97によって、スタンド部材50に回動自在に接続されている。
【0062】
図示している例では、リンク部材70は、棒状部材である。リンク部材70は、例えば金属材料から形成されている。以下の説明では、レバー部材60とリンク部材70との接続部を「レバー接続部」と呼び、スタンド部材50とリンク部材70との接続部を「スタンド接続部」と呼ぶことがある。
【0063】
図5を参照しながら、本実施形態の自転車1におけるスタンド掛けを説明する。図5は、スタンド掛けの際のスタンド40の形状変化(各部材の位置および向きの変化)を示す図である。図5の上段および下段には、それぞれ跳ね上げ状態および接地状態におけるスタンド40が示されており、図5の中段には、跳ね上げ状態と接地状態との中間の状態におけるスタンド40が示されている。
【0064】
図5の上段に示しているように、跳ね上げ状態において、レバー接続部Lcは、レバー部材60の回動中心rc2とスタンド接続部Scとを結ぶ直線L2よりも上側に位置している。本実施形態の自転車1では、スタンド掛けは、跳ね上げ状態における操作部60Pを下方に押し下げることによって行われる。操作部60Pの押し下げは、例えばユーザの足によって行われる。
【0065】
操作部60Pが押し下げられると、レバー部材60は、図5の中段に示しているように前回り(図中では反時計回り)に回動するので、レバー接続部Lcは前方かつ上方に移動し、それに伴ってスタンド接続部Scも前方に移動する。このとき、レバー部材60の回動中心rc2とスタンド接続部Scとの距離が小さくなる。そして、スタンド接続部Scの前方への移動に伴って、接地部51が下方に移動するようにスタンド部材50が後回り(図中では時計回り)に回動する。
【0066】
図5の下段に示しているように、スタンド部材50の接地部51が地面に接する位置まで移動してスタンド40が接地状態になることにより、スタンド掛けが完了する。
【0067】
このように、スタンド40は、跳ね上げ状態において操作部60Pを下方に押し下げてレバー部材を回動させることによって、接地部51が下方に移動するようにスタンド部材50を回動させ得るように構成されている。
【0068】
上述したように、本実施形態における自転車1のスタンド40は、接地状態において地面に接する接地部51を含むスタンド部材50に加えて、スタンド部材50の前端よりも前方に回動中心rc2が位置するように回動自在に自転車1に支持されるレバー部材60と、レバー部材60とスタンド部材50とをリンク結合するリンク部材70とを備えており、レバー部材60は、跳ね上げ状態においてその回動中心rc2よりも前方に位置する操作部60Pを含んでいる。そして、スタンド40は、跳ね上げ状態においてレバー部材60の操作部60Pを下方に押し下げてレバー部材60を回動させることによって、接地部51が下方に移動するようにスタンド部材50を回動させ得るように構成されている。このような構成により、スタンド掛けを、降車位置から後方に足を大きく移動させることなく行うことができる。そのため、自転車1に重い荷物が積載されている場合でも、ハンドル5を持ったまま安定な状態で(つまり姿勢を大きく変化させることなく)スタンド掛けを行うことが可能となる。また、ハンドル5を持ったまま操作部60Pに体重をかけることができるので、比較的楽にスタンド掛けを行うことができる。さらに、自転車1にリアチャイルドシート18が取り付けられている場合でも、レバー部材60の操作部60Pが運転者から見えやすい位置にあるので、その点からもスタンド掛けを好適に行うことができる。また、スタンド40では、跳ね上げ状態における側面視において、レバー部材60が後輪3の外周よりも内側に位置するので、自転車1が段差を乗り越える際などのレバー部材60への引っ掛かり(接触)が防止され得る。
【0069】
また、既に説明したことからも理解されるように、スタンド掛けの際、レバー部材60は、回動中心rc2を支点、操作部60Pを力点、リンク部材70に接続された端部を作用点とする「てこ」として機能するので、操作荷重の軽減を図ることもできる。
【0070】
スタンド掛けを行うときにスタンド部材50、レバー部材60およびリンク部材70をリンク機構として好適に機能させる観点からは、リンク部材70は、跳ね上げ状態から接地状態への切り替えに際して長さが実質的に伸びない部材であることが好ましい。ここで、リンク部材70の長さが「実質的に伸びない」とは、スタンド掛けの際に通常想定される程度の引張荷重がリンク部材70に作用しても長さがほとんど増加しないことを意味している。なお、リンク部材70は、例示した棒状部材に限定されず、例えばワイヤーであってもよい。
【0071】
後輪3の車軸3a周辺およびその上側には、自転車1の他の部材が少なからず配置され得る。そのため、レイアウトの容易さの観点からは、レバー部材60は、図2Aなどに示したように、後輪3の車軸3aよりも下側において支持されることが好ましい。
【0072】
既に説明したように、レバー部材60の操作部60Pは、スタンド掛けの際にユーザの操作に供される部分である。そのため、スタンド掛けを好適に行う観点からは、跳ね上げ状態における側面視において、操作部60Pの上面が水平方向となす角α(図5の上段参照)がある程度小さいことが好ましい。具体的には、操作部60Pの上面が水平方向となす角αは45°以下であることが好ましく、10°以下であることがより好ましい。なお、図5には、操作部60Pの上面が水平方向に対して後回り(図中では時計回り)に傾斜している場合を例示しているが、図6に示すように、操作部60Pの上面が水平方向に対して前回り(図中では反時計回り)に傾斜していてもよい。そのため、操作部60Pの上面が水平方向に対して後回りに傾斜している場合の傾斜角を正の値で表し、前回りに傾斜している場合の傾斜角を負の値で表すことにすると、「操作部60Pの上面が水平方向となす角αが45°以下である」とは、操作部60Pの上面の傾斜角が±45°以内であることを意味している。同様に、「操作部60Pの上面が水平方向となす角αが10°以下である」とは、操作部60Pの上面の傾斜角が±10°以内であることを意味している。
【0073】
なお、接地状態における側面視において、操作部60Pの上面が水平方向となす角β(図5の下段参照)は、例えば90°以下である。
【0074】
また、スタンド掛けをいっそう容易に行う観点からは、図4Aなどに例示したように、レバー部材60の操作部60Pが、跳ね上げ状態においてレバー部材60の前端に位置していることが好ましい。また、レバー部材60の操作部60Pの幅が、レバー部材60の操作部60P以外の部分の幅よりも大きいと、レバー部材60の操作性をいっそう向上させることができる。
【0075】
図7に、レバー部材60の操作部60Pの、上面視における好ましい配置の例を示す。図7には、最前に位置しているときの左右のペダル26の最外端と、跳ね上げ状態におけるスタンド部材50の左右端とを頂点とする多角形(四角形)Poを鎖線で示している。図7に示すように、操作部60Pは、上面視においてこの多角形Poの内側に位置していることが好ましい。このように操作部60Pが上面視において多角形Poの内側に位置していると、自転車1が転倒したときに操作部60Pが地面に直接当たりにくくなるので、操作部60Pに過大な負荷がかかることを防止できる。なお、図7には、最前に位置しているときの左右のペダル26の最外端間の距離D1が、スタンド部材50の左右端間の距離D2よりも大きい例を示しているが、距離D1は距離D2よりも小さくてもよい。
【0076】
図2Bなどに示した例では、跳ね上げ状態において、レバー部材60の前端部が操作部60Pを含んでおり、レバー部材60は、跳ね上げ状態における側面視において前端部の下面が前方斜め上向きに傾斜した形状を有している。このような形状を有するレバー部材60は、側面視でくの字状に折れ曲がった形状のレバー本体61を有するものに限定されない。図8は、レバー部材60の他の例を示す側面図である。図8に示す例では、レバー部材60は、側面視で直線状である。また、図8に示す例では、跳ね上げ状態における操作部60Pの上面が水平方向となす角が比較的小さくなるように、操作ペダル62が側面視で三角形状である。このような操作ペダル62は、図3Aなどに示した操作ペダル62と同様、例えば樹脂材料またはゴム材料から形成され得る。
【0077】
ここまでの説明では、電動補助自転車である自転車1を例示したが、本発明の実施形態による自転車は、電動補助自転車でなくてもよい。また、ここまでの説明では、2つの車輪(1つの前輪2および1つの後輪3)を備える自転車1を例示したが、本発明の実施形態による自転車は、3つ以上の車輪を備える自転車であってもよい。
【0078】
上述したように、本発明の実施形態による自転車用両脚スタンド40は、自転車1に取り付けられ、接地状態と跳ね上げ状態とを切り替え可能な自転車用両脚スタンド40であって、前記接地状態において地面に接する接地部51を含むスタンド部材50あって、後輪車軸3aよりも後方に回動中心rc1が位置するように回動自在に自転車1に支持されるスタンド部材50と、前記跳ね上げ状態における前記スタンド部材50の前端よりも前方に回動中心rc2が位置するように回動自在に自転車1に支持されるレバー部材60であって、前記跳ね上げ状態において前記レバー部材60の回動中心rc2よりも前方に位置する操作部60Pを含むレバー部材60と、前記レバー部材60と前記スタンド部材50とをリンク結合するリンク部材70と、を備える。自転車用両脚スタンド40は、前記跳ね上げ状態において前記操作部60Pを下方に押し下げて前記レバー部材60を回動させることによって、前記接地部51が下方に移動するように前記スタンド部材50を回動させ得るように構成されている。前記跳ね上げ状態における側面視において、前記レバー部材60は後輪3の外周よりも内側に位置する。
【0079】
本発明の実施形態による自転車用両脚スタンド40は、接地状態において地面に接する接地部51を含むスタンド部材50に加えて、スタンド部材50の前端よりも前方に回動中心rc2が位置するように回動自在に自転車1に支持されるレバー部材60と、レバー部材60とスタンド部材50とをリンク結合するリンク部材70とを備えており、レバー部材60は、跳ね上げ状態においてその回動中心rc2よりも前方に位置する操作部60Pを含んでいる。そして、本発明の実施形態による自転車用両脚スタンド40は、跳ね上げ状態においてレバー部材60の操作部60Pを下方に押し下げてレバー部材60を回動させることによって、接地部51が下方に移動するようにスタンド部材50を回動させ得るように構成されている。このような構成により、跳ね上げ状態から接地状態へと切り替えるスタンド操作(「スタンド掛け」と呼ばれる)を、降車位置から後方に足を大きく移動させることなく行うことができる。そのため、自転車1に重い荷物が積載されている場合でも、ハンドル5を持ったまま安定な状態で(つまり姿勢を大きく変化させることなく)スタンド掛けを行うことが可能となる。また、ハンドル5を持ったまま操作部60Pに体重をかけることができるので、比較的楽にスタンド掛けを行うことができる。さらに、自転車1にリアチャイルドシート18が取り付けられている場合でも、レバー部材60の操作部60Pが運転者から見えやすい位置にあるので、その点からもスタンド掛けを好適に行うことができる。また、本発明の実施形態による自転車用両脚スタンド40では、跳ね上げ状態における側面視において、レバー部材60が後輪3の外周よりも内側に位置するので、自転車1が段差を乗り越える際などのレバー部材60への引っ掛かり(接触)が防止され得る。
【0080】
ある実施形態では、前記リンク部材70は、前記跳ね上げ状態から前記接地状態への切り替えに際して長さが実質的に伸びない部材である。
【0081】
スタンド掛けを行うときにスタンド部材50、レバー部材60およびリンク部材70をリンク機構として好適に機能させる観点からは、リンク部材70は、跳ね上げ状態から接地状態への切り替えに際して長さが実質的に伸びない部材であることが好ましい。
【0082】
ある実施形態では、前記レバー部材は、後輪車軸3aよりも下側において第1支持部材81fによって回動自在に支持される。
【0083】
後輪車軸3a周辺およびその上側には、自転車1の他の部材が少なからず配置され得る。そのため、レイアウトの容易さの観点からは、レバー部材60は、後輪車軸3aよりも下側において支持されることが好ましい。
【0084】
ある実施形態では、前記レバー部材60は、一端部および他端部と、前記一端部と前記他端部との間に位置する中間部とを有し、前記レバー部材60の前記中間部が前記第1支持部材81fによって支持される。
【0085】
ある実施形態では、前記レバー部材60の前記一端部が前記操作部60Pであり、前記レバー部材60の前記他端部に前記リンク部材70が接続されている。
【0086】
ある実施形態では、前記スタンド部材は、後輪車軸3aよりも下側において第2支持部材81r、82によって回動自在に支持される。
【0087】
ある実施形態では、前記第2支持部材81r、82は、後輪車軸3a付近に固定される一対の固定板81、82であり、前記スタンド部材50は、前記一対の固定板81、82によって支持される。
【0088】
前記スタンド部材50は、前記接地部51から延びる一対の脚部52、53をさらに含み、前記一対の脚部52、53の一方に、前記リンク部材70が接続されている。
【0089】
ある実施形態では、前記跳ね上げ状態における側面視において、前記レバー部材60の前記操作部60Pの上面が水平方向となす角αは45°以下である。
【0090】
スタンド掛けを好適に行う観点からは、跳ね上げ状態における側面視において、レバー部材60の操作部60Pの上面が水平方向となす角αがある程度小さいことが好ましい。具体的には、操作部60Pの上面が水平方向となす角αは45°以下であることが好ましく、10°以下であることがより好ましい。
【0091】
ある実施形態では、前記接地状態における側面視において、前記レバー部材60の前記操作部60Pの上面が水平方向となす角βは90°以下である。
【0092】
ある実施形態では、前記跳ね上げ状態において、前記レバー部材60の前端部は、前記操作部60Pを含んでおり、前記レバー部材60は、前記跳ね上げ状態における側面視において前記前端部の下面が前方斜め上向きに傾斜した形状を有している。
【0093】
ある実施形態では、前記レバー部材60の前記操作部60Pは、前記跳ね上げ状態において前記レバー部材60の最下点よりも上側に位置している。
【0094】
ある実施形態では、前記レバー部材60の前記操作部60Pは、前記跳ね上げ状態において前記レバー部材60の前端に位置しており、前記レバー部材60の前記操作部60Pの幅は、前記レバー部材60の前記操作部60P以外の部分の幅よりも大きい。
【0095】
スタンド掛けをいっそう容易に行う観点からは、レバー部材60の操作部60Pが、跳ね上げ状態においてレバー部材60の前端に位置していることが好ましい。また、レバー部材60の操作部60Pの幅が、レバー部材60の操作部60P以外の部分の幅よりも大きいと、レバー部材60の操作性をいっそう向上させることができる。
【0096】
ある実施形態では、前記跳ね上げ状態において、前記レバー部材60の操作部60Pは、ペダル26の回転軌跡rtの最後点p1よりも後側に位置する。
【0097】
ある実施形態では、前記跳ね上げ状態において、前記レバー部材60の操作部60Pは、ペダル26の回転軌跡rtの最下点p2と後輪3の接地点p3とを結ぶ直線L1よりも上側に位置する。
【0098】
ある実施形態では、前記レバー部材60の前記操作部60Pは、上面視において、最前に位置しているときの左右のペダル26の最外端と、スタンド部材50の左右端とを頂点とする多角形Poの内側に位置している。
【0099】
レバー部材60の操作部60Pが、上面視において、最前に位置しているときの左右のペダル26の最外端と、スタンド部材50の左右端とを頂点とする多角形Poの内側に位置していると、自転車1が転倒したときに操作部60Pに過大な負荷がかかることを防止できる。
【0100】
ある実施形態では、前記レバー部材60と前記リンク部材70との接続部をレバー接続部Lcと呼び、前記スタンド部材50と前記リンク部材70との接続部をスタンド接続部Scと呼ぶとき、前記跳ね上げ状態において、前記レバー接続部Lcは、前記レバー部材60の回動中心rc2と前記スタンド接続部Scとを結ぶ直線L2よりも上側に位置する。
【0101】
ある実施形態では、前記跳ね上げ状態から前記接地状態への切り替えの際、前記レバー接続部Lcは前方かつ上方に移動する。
【0102】
ある実施形態では、前記跳ね上げ状態から前記接地状態への切り替えの際、前記レバー部材60の回動中心rc2と前記スタンド接続部Scとの距離が小さくなる。
【0103】
本発明の実施形態による自転車1は、上述したいずれかの構成を有する自転車用両脚スタンド40を備える。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の実施形態によると、スタンド掛けを、降車位置から後方に足を大きく移動させることなく行うことができる、自転車用両脚スタンドを提供することができる。本発明の実施形態は、種々の自転車に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1:自転車、2:前輪、2a:前輪の車軸、3:後輪、3a:後輪の車軸、4:ハンドルステム、5:ハンドル、6:フロントフォーク、7:フロントバスケット、8:シートパイプ、9:サドル、10:車体フレーム、11:ヘッドパイプ、12:ダウンチューブ、13:シートチューブ、15:チェーンステー、16:シートステー、17:リアキャリア、18:チャイルドシート(リアチャイルドシート)、20:駆動ユニット、21:電動モータ、22:ハウジング、23:クランク軸、24:クランクアーム、26:ペダル、31:駆動スプロケット、32:従動スプロケット、33:補助スプロケット、34:チェーン、35:バッテリユニット、40:両脚スタンド、50:スタンド部材、51:接地部、52・53:脚部、60:レバー部材、60P:操作部、61:レバー本体、62:操作ペダル、70:リンク部材、81・82:固定板、91:ロックレバー、92・93:コイルばね、Lc:レバー接続部、Sc:スタンド接続部、rc1:スタンド部材の回動中心、rc2:レバー部材の回動中心、rt:ペダルの回転軌跡、SA:スタンドアセンブリ
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8