(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】光学的撮像素子用の眼鏡レンズ、および拡張現実眼鏡
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20231211BHJP
G02C 7/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02C7/00
(21)【出願番号】P 2022070643
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2018543621の分割
【原出願日】2017-03-10
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】102016105060.1
(32)【優先日】2016-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516087698
【氏名又は名称】トーツ・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TOOZ TECHNOLOGIES GMBH
【住所又は居所原語表記】Turnstrasse 27, 73430 Aalen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ピュッツ、イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィトコフ、モムチル
(72)【発明者】
【氏名】エッティグ、ラモナ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒェルス、ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】バルテル、カイ
(72)【発明者】
【氏名】カルタル、エルスン
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-503865(JP,A)
【文献】特開2015-132821(JP,A)
【文献】特表2017-514172(JP,A)
【文献】特開2002-156600(JP,A)
【文献】米国特許第08294994(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
G02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像生成器(21)上に提示される初期画像の仮想画像を生成する光学ユニット用の眼鏡レンズ(3)であって、本体(41)と、前記本体(41)へ取り付けられた少なくとも1つの補完素子(43)とを含む前記眼鏡レンズにおいて、
-前記少なくとも1つの補完素子(43)に隣接する少なくとも層内の前記本体(41)は第1の屈折率n
1
を有する材料からなり、前記本体(41)は、眼に対向する内面(13)と、眼から離れる方向に向く外面(17)と、ビーム経路を前記内面(13)と前記外面(17)間に入力結合するための入力結合部分(25)と前記ビーム経路を前記本体(41)から結合するための出力結合構造(31)との間に延伸する光誘導部分であって、前記光誘導部分において、入力結合されたビーム経路は、前記内面(13)および/または前記外面(17)の少なくとも1つの反射部分(R1、R2、R3、R4)における反射により前記出力結合構造(31)へ誘導される、前記光誘導部分と、を含み、
-前記少なくとも1つの補完素子(43)は前記本体(41)の前記内面(13)に取り付けられ、前記少なくとも1つの補完素子は前記本体(41)の前記内面(13)の反射部分(R1、R2、R3、R4)と重なり、粘着性または固体中間層(45)が、前記本体(41)の前記内面(13)の反射部分(R1、R2、R3、R4)を有する前記少なくとも1つの補完素子(43)の少なくとも前記重なり領域内の、前記少なくとも1つの補完素子(43)と前記本体(41)間に配置される、眼鏡レンズ(3)において、
前記粘着性または固体中間層(45)の材料は条件n
2
<n
1
×sin(θ
E
)を満たす第2の屈折率n
2
を有し、ここでθ
E
は、前記入力結合部分(25)から発し前記反射部分(R1、R2、R3、R4)に入射する前記ビーム経路の光線の入射角を表し、前記入射角は、前記ビーム経路の前記光線の少なくとも50%の入射角がθ>θ
E
となるように選択され、
前記補完素子は、使用者の屈折異常を補償するための補正レンズ(43)の形態であり、
前記本体(41)は前記光誘導部分の少なくとも領域上に表面層(53、55、59、61、71、73)を含み、
前記本体(41)の前記表面層は、前記粘着性または固体中間層に隣接する少なくとも1つの層(53、55、59、61)を含み、
前記本体の前記表面層は複数の層(71、73)からなり、
-前記層(71、73)は、その屈折率が前記第2の屈折率n
2より大きい材料からなり、
-前記粘着性または固体中間層(45)に隣接する前記層は、前記第1の屈折率n
1または前記第1の屈折率n
1と1000分の5以上の差がない屈折率を有する材料からなり、
-前記層の前記屈折率は前記粘着性または固体中間層(45)に隣接する前記層から増加することを特徴とす
る眼鏡レンズ(3)。
【請求項2】
画像生成器(21)上に提示される初期画像の仮想画像を生成する光学ユニット用の眼鏡レンズ(3)であって、本体(41)と、前記本体(41)へ取り付けられた少なくとも1つの補完素子(43)とを含む前記眼鏡レンズにおいて、
-前記少なくとも1つの補完素子(43)に隣接する少なくとも層内の前記本体(41)は第1の屈折率n
1
を有する材料からなり、前記本体(41)は、眼に対向する内面(13)と、眼から離れる方向に向く外面(17)と、ビーム経路を前記内面(13)と前記外面(17)間に入力結合するための入力結合部分(25)と前記ビーム経路を前記本体(41)から結合するための出力結合構造(31)との間に延伸する光誘導部分であって、前記光誘導部分において、入力結合されたビーム経路は、前記内面(13)および/または前記外面(17)の少なくとも1つの反射部分(R1、R2、R3、R4)における反射により前記出力結合構造(31)へ誘導される、前記光誘導部分と、を含み、
-前記少なくとも1つの補完素子(43)は前記本体(41)の前記内面(13)に取り付けられ、前記少なくとも1つの補完素子は前記本体(41)の前記内面(13)の反射部分(R1、R2、R3、R4)と重なり、粘着性または固体中間層(45)が、前記本体(41)の前記内面(13)の反射部分(R1、R2、R3、R4)を有する前記少なくとも1つの補完素子(43)の少なくとも前記重なり領域内の、前記少なくとも1つの補完素子(43)と前記本体(41)間に配置される、眼鏡レンズ(3)において、
前記粘着性または固体中間層(45)の材料は条件n
2
<n
1
×sin(θ
E
)を満たす第2の屈折率n
2
を有し、ここでθ
E
は、前記入力結合部分(25)から発し前記反射部分(R1、R2、R3、R4)に入射する前記ビーム経路の光線の入射角を表し、前記入射角は、前記ビーム経路の前記光線の少なくとも50%の入射角がθ>θ
E
となるように選択され、
前記補完素子は、使用者の屈折異常を補償するための補正レンズ(43)の形態であり、
前記本体(41)は前記光誘導部分の少なくとも領域上に表面層(53、55、59、61、71、73)を含み、
前記本体の前記表面層は屈折率勾配を有する材料からなり、最低屈折率が前記第1の屈折率n
1と1000分の5以上の差がない屈折率であり、前記表面層は前記最低屈折率で前記粘着性または固体中間層(45)に隣接するようなやり方で配向されることを特徴とす
る眼鏡レンズ(3)。
【請求項3】
画像生成器(21)上に提示される初期画像の仮想画像を生成する光学ユニット用の眼鏡レンズ(3)であって、本体(41)と、前記本体(41)へ取り付けられた少なくとも1つの補完素子(43)とを含む前記眼鏡レンズにおいて、
-前記少なくとも1つの補完素子(43)に隣接する少なくとも層内の前記本体(41)は第1の屈折率n
1
を有する材料からなり、前記本体(41)は、眼に対向する内面(13)と、眼から離れる方向に向く外面(17)と、ビーム経路を前記内面(13)と前記外面(17)間に入力結合するための入力結合部分(25)と前記ビーム経路を前記本体(41)から結合するための出力結合構造(31)との間に延伸する光誘導部分であって、前記光誘導部分において、入力結合されたビーム経路は、前記内面(13)および/または前記外面(17)の少なくとも1つの反射部分(R1、R2、R3、R4)における反射により前記出力結合構造(31)へ誘導される、前記光誘導部分と、を含み、
-前記少なくとも1つの補完素子(43)は前記本体(41)の前記内面(13)に取り付けられ、前記少なくとも1つの補完素子は前記本体(41)の前記内面(13)の反射部分(R1、R2、R3、R4)と重なり、粘着性または固体中間層(45)が、前記本体(41)の前記内面(13)の反射部分(R1、R2、R3、R4)を有する前記少なくとも1つの補完素子(43)の少なくとも前記重なり領域内の、前記少なくとも1つの補完素子(43)と前記本体(41)間に配置される、眼鏡レンズ(3)において、
前記粘着性または固体中間層(45)の材料は条件n
2
<n
1
×sin(θ
E
)を満たす第2の屈折率n
2
を有し、ここでθ
E
は、前記入力結合部分(25)から発し前記反射部分(R1、R2、R3、R4)に入射する前記ビーム経路の光線の入射角を表し、前記入射角は、前記ビーム経路の前記光線の少なくとも50%の入射角がθ>θ
E
となるように選択され、
前記補完素子は、使用者の屈折異常を補償するための補正レンズ(43)の形態であり、
前記粘着性または固体中間層(45)の前記材料は、前記本体(41)の前記内面(13)および/または前記外面(17)へ適用される担体材(57)
としての膜へ塗布されることを特徴とす
る眼鏡レンズ(3)。
【請求項4】
画像生成器(21)上に提示される初期画像の仮想画像を生成する光学ユニット用の眼鏡レンズ(3)であって、本体(41)と、前記本体(41)へ取り付けられた少なくとも1つの補完素子(43)とを含む前記眼鏡レンズにおいて、
-前記少なくとも1つの補完素子(43)に隣接する少なくとも層内の前記本体(41)は第1の屈折率n
1
を有する材料からなり、前記本体(41)は、眼に対向する内面(13)と、眼から離れる方向に向く外面(17)と、ビーム経路を前記内面(13)と前記外面(17)間に入力結合するための入力結合部分(25)と前記ビーム経路を前記本体(41)から結合するための出力結合構造(31)との間に延伸する光誘導部分であって、前記光誘導部分において、入力結合されたビーム経路は、前記内面(13)および/または前記外面(17)の少なくとも1つの反射部分(R1、R2、R3、R4)における反射により前記出力結合構造(31)へ誘導される、前記光誘導部分と、を含み、
-前記少なくとも1つの補完素子(43)は前記本体(41)の前記内面(13)に取り付けられ、前記少なくとも1つの補完素子は前記本体(41)の前記内面(13)の反射部分(R1、R2、R3、R4)と重なり、粘着性または固体中間層(45)が、前記本体(41)の前記内面(13)の反射部分(R1、R2、R3、R4)を有する前記少なくとも1つの補完素子(43)の少なくとも前記重なり領域内の、前記少なくとも1つの補完素子(43)と前記本体(41)間に配置される、眼鏡レンズ(3)において、
前記粘着性または固体中間層(45)の材料は条件n
2
<n
1
×sin(θ
E
)を満たす第2の屈折率n
2
を有し、ここでθ
E
は、前記入力結合部分(25)から発し前記反射部分(R1、R2、R3、R4)に入射する前記ビーム経路の光線の入射角を表し、前記入射角は、前記ビーム経路の前記光線の少なくとも50%の入射角がθ>θ
E
となるように選択され、
前記補完素子は、使用者の屈折異常を補償するための補正レンズ(43)の形態であり、
前記本体(41)の前記内面(13)および/または前記外面(17)の前記少なくとも1つの反射部分(R1、R2、R3、R4)は自由形式(63、65)を有し、
前記粘着性または固体中間層(45)は一様な厚さを有し、キャッピング層(67、69)が、前記本体(41)から離れる方向に向く前記粘着性または固体中間層(45)の側に貼り付けられ、前記キャッピング層は前記本体(41)の前記材料または第4の屈折率を有する材料からなり、ここで、前記第4の屈折率は前記第1の屈折率n
1と1000分の5以上の差がない屈折率であり、前記キャッピング層(67、69)は、
前記粘着性または固体中間層(45)から離れる方向に向く側に光学的に平面の球面を有することを特徴とす
る眼鏡レンズ(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像生成器上に提示される初期画像の仮想画像を生成する撮像光学ユニット用の眼鏡レンズに関する。加えて、本発明はスマート眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
スマート眼鏡は頭部装着型ディスプレイの特殊形式である。頭部装着型ディスプレイの従来形式は、眼の前に装着される画面であってコンピュータ生成画像またはカメラにより記録された画像を使用者へ提示する画面を使用する。このような頭部装着型ディスプレイはしばしば嵩張り、周囲の直接知覚を許容しない。カメラにより記録された画像またはコンピュータ生成画像を周囲の即時知覚を妨げることなく使用者へ提示することができる頭部装着型ディスプレイが最近開発された。このような頭部装着型ディスプレイ(以下、スマート眼鏡と呼ぶ)は、日常生活においてこの技術の使用を容易にする。
【0003】
スマート眼鏡は様々なやり方で提供され得る。特にそのコンパクト性と美的許容性とにより識別される1つのタイプのスマート眼鏡は眼鏡レンズ内の電波誘導の原理に基づく。電波誘導に効果的な眼鏡レンズの部分は以下では光導波路と呼ばれる。ここで、画像生成器により生成された光が、眼鏡レンズの外で平行化され眼鏡レンズの端面を介し入力結合され、ここから光は光導波路内で多重反射により眼の前へ伝播する。次に、光導波路内に置かれた光学素子が光を眼の瞳の方向に出力結合する。眼鏡レンズ内への入力結合と眼鏡レンズからの出力結合はこの場合回折、反射、または屈折的やり方で行われ得る。回折入力結合または出力結合の場合、入力および出力結合素子とほぼ同じライン数を有する回折格子が使用され、個々の格子の強分散効果(strongly dispersive effect)はこれら自身の間で補償される。一例として、回折格子に基づく入力および出力結合素子は米国特許出願第2006/0126181A1号明細書および米国特許出願第2010/0220295A1号明細書に記載されている。反射または屈折入力または出力結合素子を有するスマート眼鏡の例は米国特許出願第2012/0002294A1号明細書に記載されている。
【0004】
眼鏡装着者の視力障害/屈折異常の場合、これは、観察者に対向する側の球状、円環状または個々に成形された面により概して補正される。レンズ後面に光導波路の光学的有効面を有するスマート眼鏡の場合、この場合に個人化された領域は、前記面を含み、したがって、データ撮像に必要な表面特性の変化を引き起こす。これは、入力データの撮像品質の劣化(最大で撮像の破壊)に至る。原理的に、同じことはまた、例えばFSP(前面累進:front side progressive)眼鏡レンズの場合またはそうでなければ光学的補正が前面と後面で分割されるレンズの場合などの眼鏡前面へ適用される。
【0005】
したがって、光学設計(すなわち光導波路)を個々の補正毎に適合させること無しにレンズの後面の撮像品質と個々の補正度数との両方を保証するために、撮像に貢献し、必要とされる表面形式において反射され続ける光と、外部からレンズを通して観察者の眼に到達する光とが、妨害されることなく補正領域を伝わり、したがって所望補正を得るように出力結合の必要性がある。
【0006】
出力結合が必要とされる第2の応用分野は、スマート眼鏡と追加の表面近傍機能(surface-near functions)との組み合わせにある。一例として、レンズの容積内の吸収または分極層または吸収材が通常、使用者の眼に到達する日光の強度を低減するサングラス機能を実現するために使用される。これはまた、例えばフォトクロミック層、電気光学系などの適応系を含み得る。しかし、吸収の増加は、ディスプレイの撮像を容易にすべき光もまた著しく低減されるという無用な副作用を生じる。光導波路内の反射の結果として、光は吸収層を複数回そして比較的平坦な角度で通過するので、ディスプレイの使用光は不要な日光より大きな係数だけさらに低減される。表面近傍機能の別の例は、体積ホログラム、ホログラフィ光学素子(HOE:holographic optical element)、回折光学素子(DOE:diffractive optical element)、透かし彫り、被覆、ステッカ、印刷、装飾要素、飾りなどである。眼鏡レンズの機能層は例えば米国特許第6,231,183B1号明細書に記載されている。
【0007】
国際公開第2015/158833号パンフレットは、光チャネルを眼鏡レンズの前面と後面から出力結合する目的のために、一方では光チャネルと他方では前面または後面との間に空気ギャップまたは角度選択干渉層構造を配置することを提案している。光チャネルを眼鏡レンズの前面と後面から出力結合することにより、光チャネルはまた、スクラッチ、指紋、水滴などから保護され、結果的に、環境影響による画像伝送の障害も回避される。
【0008】
しかし、空気ギャップおよび角度選択干渉層構造変形形態は技術的に困難である。空気ギャップによる解決策では、最大の挑戦は機械的安定性および長期安定性を保証することにある。光学機能は、変形、環境影響、汚染物の移動および拡散、または部品の構成要素、および汚れにより損なわれ得る。角度選択干渉層構造の場合、技術的挑戦は、特に大量生産(100を越える個々の層が必要とされる)と、機械的および熱的安定性を保証することとにその本質がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の第1の目的は、仮想画像を生成する撮像光学ユニットに有利な眼鏡レンズを提供することにある。第2の目的は有利な撮像光学ユニットを提供することにあり、本発明の第3の目的は一対の有利なスマート眼鏡を提供することにある。
【0010】
第1の目的は請求項1に記載の眼鏡レンズにより実現され、第2の目的は請求項17に記載の撮像光学ユニットにより実現され、第3の目的は請求項18に記載の一対のスマート眼鏡により実現される。従属請求項は本発明の有利な構成を含む。
【0011】
画像生成器上に提示される初期画像の仮想画像を生成する撮像光学ユニット用の本発明による眼鏡レンズは、本体と、本体へ取り付けられた少なくとも1つの相補素子とを含む。少なくとも1つの相補素子は、この場合、被覆、膜、光学的成形部品、電気光学系などであり得る。
【0012】
本体は、少なくとも1つの相補素子に隣接する少なくとも層内では、第1の屈折率n1を有する本体材料からなる。特に、この屈折率n1は本体全体にわたって一定であり得る。次に、特に、本体は一様な材料からなり得る。さらに、本体は、眼に対向する内面、眼から離れる方向に向く外面、および光誘導部分を含む。ここで、光誘導部分は、撮像ビーム経路を内面と外面間に入力結合するための入力結合部分と撮像ビーム経路を本体から結合するための出力結合構造との間に延伸する。光誘導部分では、入力結合された撮像ビーム経路は、内面および/または外面の少なくとも一方の反射部分における反射により出力結合構造へ誘導される。
【0013】
少なくとも1つの相補素子は本体の内面または外面へ取り付けられ、前記少なくとも1つの相補素子は本体の内面および/または外面の少なくとも一方の反射部分と重なる。粘着性または固体中間層が、本体の少なくとも1つの反射部分を有する少なくとも1つの相補素子の少なくとも重なり領域内の少なくとも1つの相補素子と本体間に配置される。ここで、粘着性中間層は高粘性を有し得る:すなわち粘着性であるまたは低粘度を有する(すなわち流れやすい)。
【0014】
本発明による眼鏡レンズでは、粘着性または固体中間層の材料は、条件n2<n1 sin(θE)を満たす第2の屈折率n2を有する。ここで、θEは入力結合部分から発し少なくとも1つの反射部分に入射する撮像ビーム経路の光線の入射角を表し、前記入射角は、撮像ビーム経路の光線の少なくとも50%、特には少なくとも75%が少なくとも1つの反射部分上で入射角θ>θEを有するようなやり方で選択される。しかし、θEは、撮像ビーム経路の光線の少なくとも90%、より好適には少なくとも95%、理想的には100%が少なくとも1つの反射部分上で入射角θ>θEを有するようなやり方で選択されることが好ましい。
【0015】
好適には、粘着性または固体中間層の材料はさらに、撮像ビーム経路の光線の20%未満、特には5%未満、好適には1%未満を吸収するようなやり方で選択される。
【0016】
前述の条件が満たされれば、第2の屈折率n2は、少なくとも1つの反射部分全体における全反射の臨界角が、入力結合部分から発し反射部分に入射する撮像ビーム経路の光線の入射角θE未満となるようなやり方で第1の屈折率n1未満である。ここで、臨界角と入射角は、本体の内面または外面の反射部分のそれぞれの点において垂直な表面から測定される。入射角θEは、入力結合部分から直接発する光線の入射角、または入力結合部分から発し、少なくとも1つの反射部分により光誘導部分内で既に反射された光線の入射角のいずれかであり得る。周囲から眼鏡レンズ内に入射ししたがって撮像ビーム経路の一部でない光線の場合、反射面における入射角は臨界角未満であるので、このような光線は、中間層に対する光導波路の界面における全反射の影響を受けにくく、眼鏡レンズを通過し得る。
【0017】
好適には、前述の条件n2<n1 sin(θE)は、可能な限り低い透過により損失を得るために撮像ビーム経路の全波長範囲内で満たされる。加えてまたはその代わりに、前述の条件n2<n1 sin(θE)は、真のカラー仮想画像を生成することができるために全可視波長範囲内で満たされる。しかし、真のカラー画像が必要とされないいくつかのケースでは、条件n2<n1 sin(θE)は、そうでなければ可視波長範囲の一部に対してだけ満たされ得る。この場合、撮像ビーム経路もまたスペクトルのこの部分に制限され得る。しかし、用途に依存して、反射部分を通る透過による撮像ビーム経路のスペクトル部分の損失もまた受容され得る。
【0018】
粘着性または固体中間層により、光チャネルは眼鏡レンズの前面と後面から出力結合され得る。ここで、中間層は、より容易に生成され得、空気ギャップまたは干渉層構造より熱的および機械的の両方で高い安定性を有する。
【0019】
本発明による眼鏡レンズの有利な構成では、少なくとも1つの相補素子は第1の屈折率に対応する第3の屈折率を有するので、眼鏡レンズを通過する環境光線による障害は大いに回避され得る。本明細書の範囲内で、対応屈折率は、1000分の5以下、好適には1000分の1以下だけ互いに異なる指標を意味するものと理解されるべきである。
【0020】
本発明による眼鏡レンズでは、粘着性または固体中間層は、少なくとも1つの相補素子と本体の少なくとも1つの反射部分との重なりの領域内だけに存在する必要がある。しかし、製造観点からは、粘着性または固体中間層が、少なくとも1つの相補素子が本体へ取り付けられる領域全体内に存在すれば有利である。これは、様々な接触領域内に様々な材料を有する中間層を配置する必要性を免除する。さらに、様々な材料の中間層間の遷移は、眼鏡レンズを通過する環境光線が中間層により異なるやり方で屈折されるので屈折率の変化により中間層間の横方向境界において視認可能だろう。これは、中間層間の境界が視野の端上にあれば必ずしも厄介ではない。しかし、粘着性または固体中間層が、少なくとも1つの相補素子が本体へ取り付けられる領域全体内に存在すれば、中間層は、眼鏡装着者により気付かれず、したがって厄介な影響を及ぼさないすべての環境光線の一様な屈折を生ずるだけだろう。
【0021】
本発明による眼鏡レンズでは、本体は少なくとも光誘導部分の領域内に表面層を含み得る。ここで、本体の表面層は例えば、第1の屈折率を有する材料または第1の屈折率に対応する屈折率を有する材料で作られた粘着性または固体中間層に隣接する少なくとも1つの層を含み得る。一例として、光誘導部分の少なくとも1つの領域上のこのような表面層は、本体の材料の屈折率差により出力結合素子を通過する環境光を偏向させる充填部無しに、例えばフレネル構造として眼鏡レンズの外面にしばしば形成される恐らく本機能層を含む出力結合構造を充填することを可能にする。この充填が粘着性または固体中間層の材料で行われれば、この充填部は、本体の材料とは異なる屈折率の理由と充填部の厚さ変動の理由とで視認可能であろう、そしてこの充填部は眼鏡レンズを通過する環境光を偏向させるだろう。出力結合部分の領域内で適用される屈折率整合(refractive-index-matched)表面層の結果として、光学的平坦面を有する光誘導部分の外面が保証され得るので、中間層は、光学的平坦面上に一様な厚さを有する層を形成し得る。次に、中間層は、中間層が存在する領域内ですべての環境光線の一様な屈折を生ずるだけだろう。前記一様な屈折は、眼鏡装着者により気付かれず、したがって厄介な影響を及ぼさない。
【0022】
本体の表面層はまた、その屈折率が第2の屈折率より大きい材料からなる複数の層からなり得る。このとき、粘着性または固体中間層に隣接する層は、第1の屈折率を有する材料または第1の屈折率に対応する屈折率を有する材料からなる。層の屈折率は粘着性または固体中間層に隣接する層から増加する。このようにして、粘着性または固体中間層に対する入射角は徐々に増加され得るので、撮像ビーム経路が光導波路に入ると、光導波路への入射角はそれらの層を有する表面層無しの場合より小さくなり得る。同じ効果はまた、多くの層を有する表面層の代わりに、屈折率勾配を有する材料で作られた表面層が使用されれば実現され得る。ここで、最低屈折率は第1の屈折率に対応し、表面層は、最低屈折率を有する表面層が粘着性または固体中間層に隣接するようなやり方で配向される。
【0023】
本発明による眼鏡レンズの有利な発展形態では、例えば10μm~2mmの範囲内、好適には100μm~1mmの範囲内、特には200μm~500μmの範囲内の厚さを有する膜または成形部部分が、粘着性または固体中間層と本体間にまたは粘着性または固体中間層と本体の表面層間に存在し得る。これらが第1の屈折率に対応する屈折率を必ずしも有する必要が無くても、膜材料の屈折率が第1の屈折率に対応すれば有利である。膜は、中間層を硬化する際に恒久的または一時的形式として働き得る程度そして幾何学形状を予め定める程度に、眼鏡レンズの製造を簡略化し得る。膜の別の利点は、中間層が第1の膜に貼り付けられることができることと、次に膜が本体の表面層上に貼り付けられるということとからなる。これはさらに、中間層の材料が表面層の材料または本体の材料上の良い接着性を必ずしも有する必要が無いように膜が接着剤として働き得るので、材料選択肢の拡大を容易にする。膜はまた、この場合露光が酸素の遮断下で起こり得るので、特別なUV硬化接着剤を使用する際に有利であり得る。
【0024】
しかし、粘着性または固体中間層自体の材料もまた接着剤であり得、これにより例えば相補素子が本体へ固定される。代替的に、表面層が接着剤であるという選択肢もあり、これにより、中間層が貼り付けられる粘着性または固体中間層または膜は本体へ接着接合される。原理的に、粘着性または固体中間層と表面層の両方が接着剤として具現化されることも可能である。
【0025】
膜を参照して既に説明したように、粘着性または固体中間層は、担体材(carrier material)へ貼り付けられ、次に担体材と共に本体へ取り付けられ得る。しかし、担体材は必ずしも膜である必要は無い。一例として、相補素子もまた粘着性または固体中間層の担体材として働き得る。
【0026】
本体の内面および/または外面の少なくとも一方の反射部分は自由形式を有し得る。ここで、自由形式は、球状または円環状としてまたは任意の他の通常の幾何学形状により記述可能である必要無く自由に定義され得る面を意味するものとして理解されるべきである。このようにして、光誘導部分の反射部分は、撮像を共働整形(co-form)または補正する機能を採用し得るように撮像ビーム経路を操作し得る。自由形式面の場合、θEは、撮像ビーム経路の光線の少なくとも50%、特には少なくとも75%が、撮像を共働整形または補正する自由形式面の効果を損なわないように自由形式面の各点において入射角θ>θEを有するようなやり方で、選択されるべきである。好適には、θEは、ここでは撮像ビーム経路の光線の少なくとも90%、より好適には少なくとも95%、理想的には100%が自由形式面の各点において入射角θ>θEを有するようなやり方で選択される。ここで、撮像ビーム経路の光線は必ずしも完全に平行化されないがその代りに通常は小さな広がりを有し得、このとき出力結合構造は例えば眼の方向に出力結合される撮像ビーム経路の最終コリメーションを保証するということに注意すべきである。対照的に、撮像を共働整形または補正する機能の無い純粋反射面の場合、全反射面の上の必要とされる割合の光線が入射角θ>θEを有する限り、必要とされる割合未満の光線が入射角θ>θEを有するゾーンが存在し得る。ここで、入射角θ>θEを有する光線が少なければ少ないほど、必要とされる割合未満の光線が入射角θ>θEを有するゾーンの空間的サイズは仮想画像の空間的強度変動を知覚閾値未満に維持するためにより小さくなる。
【0027】
本体の内面および/または外面は光誘導部分の領域内に自由形式を有するが、眼鏡レンズはその外側に光学的に平面の球面を有すべきであれば、これは、粘着性または固体中間層の厚さの変動を生じ得る。眼鏡レンズを通した周囲の知覚は高曲率の自由形式面の場合に損なわれ得る。この場合、粘着性または固体中間層が一様な厚さを有し、第4の屈折率を有する材料からなるキャッピング層が本体から離れる方向に向く粘着性または固体中間層の側面上に貼り付けられれば有利である。ここで、第4の屈折率は第1の屈折率に対応し、キャッピング層は粘着性または固体中間層から離れる方向に向くその側面上に光学的に平面の球面を有する。
【0028】
本発明による撮像光学ユニットは本発明による少なくとも1つの眼鏡レンズを含むことにより識別される。
【0029】
本発明による一対のスマート眼鏡は本発明による少なくとも1つの撮像光学ユニットを含むことにより識別される。
【0030】
本発明による撮像光学ユニットにより得られる利点および本発明によるスマート眼鏡により得られる利点は本発明による眼鏡レンズにより得られる利点から直ちに浮かび上がる。したがって、これらの利点が参照される。
【0031】
本発明の別の機能、特性および利点は添付図を参照した例示的実施形態の以下の説明から浮かび上がる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】眼鏡レンズと
図1のスマート眼鏡の入力結合装置とを概略図で示す。
【
図4】本発明による眼鏡レンズの変形形態の例を示す。
【
図5】本発明による眼鏡レンズの変形形態の例を示す。
【
図6】本発明による眼鏡レンズの変形形態の例を示す。
【
図7】本発明による眼鏡レンズの変形形態の例を示す。
【
図8】本発明による眼鏡レンズの変形形態の例を示す。
【
図9】本発明による眼鏡レンズの変形形態の例を示す。
【
図10】本発明による眼鏡レンズの変形形態の例を示す。
【
図11】本発明による眼鏡レンズの変形形態の例を示す。
【
図12】本発明による眼鏡レンズの変形形態の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明について、本発明による眼鏡レンズを有する一対のスマート眼鏡の例を使用して以下に説明する。眼鏡レンズは、画像生成器上に提示される初期画像の仮想画像を生成する撮像光学ユニットの一部である。対応する一対のスマート眼鏡1を
図1に示す。眼鏡レンズ3を有する撮像光学ユニットは
図2に極めて概略的に示される。
【0034】
スマート眼鏡1は、2つの眼鏡耳部9、11を有する眼鏡フレーム7により保持される2つの眼鏡レンズ3、5を含む。眼鏡レンズはそれぞれ、眼鏡が装着されると使用者の眼の方向に向く内面13(
図2に視認可能)および使用者の眼から離れる方向に向く外面17、19(
図1と
図2に視認可能)を有する本体41を含む。本例示的実施形態では、画像生成器21(
図2に示す)が眼鏡耳部9内にまたは眼鏡耳部9と眼鏡レンズ17間に置かれる。前記画像生成器は、例えば液晶ディスプレイ(LCDまたはLCoSディスプレイ、LCoS:Liquid Crystal on Silicon、シリコン上液晶)として、発光ダイオードに基づくディスプレイ(LED:light-emitting diodeディスプレイ)として、または有機発光ダイオードに基づくディスプレイ(OLED:organic light-emitting diodeディスプレイ)として具現化され得る。入射面24、第1の鏡面27および第2の鏡面29を有し、ガラスまたは透明プラスチックで作られるプリズムとして具現化され得る入力結合装置23であって、入射面24および鏡面27、29はプリズムの面により形成される入力結合装置23が画像生成器21と眼鏡レンズ3間に撮像光学ユニットの一部として配置される。入力結合装置23を形成するプリズムのように、眼鏡レンズ3の本体41は有機ガラス(すなわち透明プラスチック)で生成され得る。しかし、鉱物ガラスまたは任意の他の透明無機材料での製造も可能である。入力結合装置23の助けを借りて、画像生成器から発する撮像ビーム経路は本体41の入力結合部分25を介し本体の内面13と外面17間に入力結合され得る。
【0035】
本例示的実施形態では、入力結合装置23を形成するブロックと眼鏡レンズ3は別個のユニットとして形成され、その後互いに固定化された。しかし、両方のユニットはまた、成形によりまたは処理によりモノリシック部品として生成され得る。ここで、入力結合装置23を形成するブロックと眼鏡レンズ3は同じ材料で生成されてもよいし異なる材料で生成されてもよい。
【0036】
画像生成器21から発する撮像ビーム経路を眼鏡レンズ3内に入力結合することに加えて、入力結合装置23はまた、画像生成器21により提示される初期画像の画素から発する撮像ビーム経路の発散ビームを平行にするように働き得る。この目的を達成するために、入射面24と第1の鏡面27および第2の鏡面29は、それに応じて湾曲された面を有し得る。一例として、入射面24は楕円面として具現化され得、一方、2つの鏡面27、29はそれぞれ双曲面として具現化される。併せて、眼鏡レンズ3と入力結合装置23はスマート眼鏡1の撮像光学ユニットを形成する。撮像光学ユニットは画像生成器21上に提示される初期画像の仮想画像を生成する。
【0037】
入射面24および2つの鏡面27、29により平行にされた撮像ビーム経路は、本体41の入力結合部分25を介し入力結合装置23により内面13と外面17間の本体41内に入力結合される。本体41では、次に、撮像ビーム経路は、本体41の外面17および内面13における全反射により、本ケースではフレネル構造31として具現化される出力結合構造へ誘導される。平行化された撮像ビーム経路は、眼鏡レンズ3を通ってそれから撮像光学ユニットの出力瞳33の方向に屈折的やり方で現われるようなやり方で本体41の内面17の方向に反射されるおかげでフレネル構造31から出力結合される。スマート眼鏡1が装着されると、出力瞳33は使用者の眼の瞳35の位置に置かれる。
【0038】
スマート眼鏡1の撮像光学ユニット内の使用に見られ得るフレネル構造31の例が
図3において説明される。示されたフレネル構造31はファセット39を有する。ファセット39は、本例示的実施形態では、ファセット39に入射する撮像ビーム経路の零光線が本体41の内面17の方向に反射されるようなやり方で配向される。本例示的実施形態では、ファセット39は部分的に鏡面化されるので、周囲から発生するビームは、出力瞳33の方向に、部分的に鏡面化されたファセット39を通過し得る。このようにして、出力瞳33の領域内にビーム経路が存在する。撮像ビーム経路は、撮像光学ユニットを備えるスマート眼鏡1を有する使用者が「仮想画像が周囲において空中浮揚する」という印象を受けるように、その上に重畳される周囲から発生するビーム経路を有する。
【0039】
フレネル構造31への経路上で、撮像ビーム経路の入力結合後本体41内には以下の4つの全反射が存在する:本体41の外面17の反射部分R1において発生する第1の全反射、本体41の内面13の反射部分R2において発生する第2の全反射、本体41の外面17の反射部分R3において再び発生する第3の全反射、本体41の内面13の反射部分R4において再び最後に発生する第4の全反射。フレネル構造31は本体41の外面に置かれ、撮像ビーム経路は第4の反射部分R4によりそれ自身へ反射される。次に、説明したように、撮像ビーム経路はフレネル構造31により撮像光学ユニットの出力瞳の方向に眼鏡レンズ3から出力結合される。
図3は画像生成器21から発する発散ビームの中心光線と2つの周縁光線とを示す。コリメーション光学ユニットを形成する入力結合装置23によるコリメーションにより、大いに平行化されたビーム経路が、眼鏡レンズ3内に存在し、次に、大いに平行化されたビーム経路としてフレネル構造31により出力結合される。
【0040】
本例示的実施形態では、眼鏡レンズ3は本体41に配置された補正レンズ43の形式の相補素子を含む。前記補正レンズはスマート眼鏡の使用者の屈折異常を補償する。本体41のように有機ガラスまたは鉱物ガラスから生成され得る補正レンズ43は、本体41と補正レンズ43間の中間層を形成する接着層45により本体41へ取り付けられる。ここで、本体の材料は第1の屈折率n1を有し、接着層45の接着剤は第2の屈折率n2を有する。補正レンズの材料は、特に本体材料の第1の屈折率n1に対応し得るが必ずしもそうである必要が無い屈折率を有する。
【0041】
全反射が、接着層45に対する本体41の界面を形成する本体41の内面13に発生し得るように、撮像ビーム経路の光線の入射角θEは、全反射が発生すべき表面素子の垂直な面に対して、全反射の発生の臨界角θGより大きくなければならない。ここで、臨界角は、第2の屈折率n2(すなわち中間層の接着剤45の屈折率)に対する第1の屈折率n1(すなわち本体41の材料の屈折率)の比により判断され、次式から計算され得る。
θG=arcsin(n2/n1) (1)
【0042】
反射面素子上の撮像ビーム経路の光線の入射角θEおよび本体41の材料の屈折率n1は、本体41および入力結合装置23の所与設計のために知られている。全反射が発生し得るように、接着剤により形成される中間層45の屈折率n2は、臨界角θGが入射角θE未満となるようなやり方で選択される必要がある。これは、次の不等式が反射面素子において満たされれば満たされる:
n2<n1 sin(θE) (2)
sin(θE)は常に1以下であるので、第2の屈折率n2は第1の屈折率n1未満でなければならない。ここで、n1よりどれぐらい小さいかは表面素子上の入射角θEに、したがって本体41および入力結合装置23の設計に、依存する。次に、入射角θEは本発明の範囲内に設定され、撮像ビーム経路の光線の少なくとも50%、特には少なくとも75%が反射部分において入射角θ>θEを有するようなやり方で選択される。本例示的実施形態では、入射角θEは、撮像ビーム経路の光線の少なくとも90%、より好適には少なくとも95%、理想的には100%が反射部分において入射角θ>θEを有するようなやり方で選択される。次に、好適な屈折率n2の上限は、不等式(2)の助けを借りて設定入射角θEに基づき設定される。最後に、好適な屈折率を有する材料が、設定された屈折率n2に基づき中間層に対して選択され得る。
【0043】
反射部分内には、反射部分全体にわたって見られるように光線の90%(または50%、75%、95%または100%)が入射角θ>θEを有する限り撮像ビーム経路の光線の90%(または50%、75%、95%または100%)未満が、入射角θ>θEを有するゾーンと光線の90%(または50%、75%、95%または100%)未満が入射角θ>θEを有するゾーンとが存在し得、これらのゾーンは空間的に非常に小さく維持されるので、仮想画像内の空間的強度変動は知覚されないか、または少なくとも厄介なものとして知覚されないかのいずれかである。ここで、光線の90%(または50%、75%、95%または100%)未満が入射角θ>θEを有するゾーンは従来より空間的に大きくなり得、入射角θ>θEを有する光線の一定割合はこれらのゾーン内で必要とされる割合により近づく。
【0044】
反射部分が撮像を共働整形または補正する自由形式面であれば、θEは、撮像ビーム経路の光線の少なくとも90%(または50%、75%または、95%、または100%)が、撮像を共働整形または補正する自由形式面の効果を損なわないように自由形式面の各点において入射角θ>θEを有するようなやり方で選択される。ここで、概して撮像ビーム経路の光線は完全には平行にされないがその代りに通常は例えば眼の方向に出力結合された撮像ビーム経路の最終コリメーションにより小さな広がり(出力結合構造により取り除かれる)を有するということに注意すべきである。
【0045】
本例示的実施形態では、本体41はn1=1.7の第1の屈折率を有するガラスからなる。最小入射角θEはほぼ55°であり、中間層45の接着材は第2の屈折率n2=1.3を有する。全反射の臨界角は結局49.9°(すなわち概算で50°)である。結局、全反射が55°の入射角において発生するということは明白である。全反射が入射角55°で発生し得るように、第2の屈折率n2(すなわち式2による接着材の屈折率)は1.39の値を越えてはならない。接着材の屈折率n2の異なる上限は、他の入射角θEの場合および/または本体材料の異なる屈折率n1の場合に発生するだろう。
【0046】
全反射が発生すべき複数の反射部分が本体41の領域内に存在すれば(本例示的実施形態では、全反射は内面13の反射部分R2、R4において発生する)、入射角θE1、θE2は反射部分R2、R4毎に設定され、入射角θE1、θE2は、撮像ビーム経路の光線の少なくとも75%、好適には90%、さらに好適には少なくとも95%、理想的には100%がそれぞれの反射部分R2,R4において入射角θ>θE2、θ>θE4を有するようなやり方で選択される。中間層の材料の屈折率n2を設定する目的のために、これらの入射角θE2、θE4の最小のものが、不等式(2)内に挿入される入射角θEとして選択される。これは、設定された屈折率n2が反射部分のそれぞれに好適であるということを保証する。
【0047】
図2を参照して説明した本発明による眼鏡レンズの例は、屈折異常を補正するための補正レンズ43を備えるだけある。前記補正レンズは低屈折率接着剤で作られた層45により本体41へ固定される。しかし、補正レンズ43に加えてまたはその代わりに、他の相補素子もまた本体41へ取り付けられ得る。(有機または鉱物)眼鏡でない相補素子の例は、本体41へ貼り付けられる膜または被覆である。これらは本体41全体、またはその一部だけのいずれかを覆い得る。さらに、相補素子は様々な機能を満たし得る。一例として、これらは、眼鏡レンズの蒸気曇りを防止する(曇り止め機能)、眼鏡を色付けするまたは銀色にする、分極をもたらす、入射UV光の量に依存して眼鏡レンズの色合いをもたらすまたはそれを修正する(例えばフォトクロミック被覆として)ように働き得る。加えて、エレクトロクロミック層(電圧が印加されれば光透過性を修正する)、電気光学系、署名/透かし彫り、回折光学素子(DOE)、ホログラフィ光学素子(HOE)、飾り/装飾要素が相補素子として本体41へ適用され得る。当然、本体41と複数の前述の相補素子とを結合する選択肢も存在する。
【0048】
本体41および/またはガラスで作られた相補素子の例示的材料は透明な有機または鉱物眼鏡であり、原理的に、無機ガラス状材料に加えて結晶またはセラミックス材料(例えば酸化物、ハロゲン化物)も使用され得る。特に、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、微晶質PA(ポリアミド)、およびCOP/COC(環状オレフィン重合体および共重合体:cyclic olefin polymers and copolymers)などの透明有機熱可塑性物質、そして例えばアクリル酸塩、ポリウレタン、ポリユリア、ポリチオウレタン、ADC(アリルジグリコールカーボネート:allyl diglycol carbonate)に基づく透明熱硬化性樹脂が有機ガラスとして使用され得る。
【0049】
原理的に、関連スペクトル範囲内で十分な透明性を有する構造用接着剤または感圧接着剤が接着剤として使用され得る。このための例は、アクリル酸塩、ウレタン、エポキシ/アミン類、エポキシ/チオール類、チオレンの群内に見出され、硫黄含有材料が、約1.54より大きい屈折率を有する高屈折率接着剤には特に興味深い。
【0050】
(1.32までの屈折率が実現され得る)低屈折率材料およびLSR(液状シリコーンゴム:liquid silicone rubber)のクラスからは特にフルオロアクリレートとフルオロウレタンアクリレートが言及されるべきである。これらの接着剤は特に中間層45として好適である。
【0051】
図2に示す例示的実施形態では、第2の屈折率n
2を有する接着層45は本体41と補正レンズ43間の接触面全体に存在する。しかし、全反射は本体41の光誘導部分47において(すなわち入力結合部分25と出力結合構造31間の領域において)だけ発生する必要がある。したがって、原理的に、高屈折率を有する異なる接着剤(特に、本体材料の第1の屈折率n
1に対応する屈折率を有する接着剤)もまた、この光誘導部分47の外側に使用され得る。しかし、製造の観点からは、同じ接着層45が接触面全体に使用されれば有利である。さらに、
図2は、補正レンズ43が本体41の入力結合部分25まで延伸するということを示す。補正レンズ43が入力結合部分25まで延伸しないが例えば反射部分R2、R4間の点までだけ延伸すれば、接着層45は入力結合部分まで延伸する必要は無い。これは、本体41の内面13が、ほぼ1.0の屈折率を有する空気への接触面(補正レンズ43が位置していない)を有するので、全反射の条件は接着層無しですらこの領域内で満たされるためである。
【0052】
低屈折率中間層の様々な構成を有する眼鏡レンズの例が
図4~
図12を参照して以下に説明される。
【0053】
図4は、本体41の内側における補正レンズ43に加えて薄膜49が相補素子として本体41の外面17へ貼り付けられた眼鏡レンズを示す。補正レンズ43のように、膜49は接着層51により本体41へ固定される。接着層51の接着剤は、式2に基づき選択された屈折率n
2であって、本体41の外面7において、入力結合部分25により本体41内へ入力結合された撮像ビーム経路の全反射を結局生ずる屈折率n
2を有する。
【0054】
図3に示すフレネル構造により形成された出力結合構造31の領域内では、その屈折率が第1の屈折率n
1(すなわち本体材料の屈折率)に対応するフィラー材を有する充填部53がフレネル構造の表面と接着層51により形成される中間層との間に置かれる。フィラー材の屈折率を本体材料の屈折率n
1へ適合させることにより、出力結合構造31が、それを通り結局厄介な視覚印象を生じる環境光内で視認されるのを回避することが可能である。
【0055】
一例として、膜49は、眼鏡レンズ3を通る透過を低減するための吸収、反射または偏光被覆、または色を有するサングラス部品であり得る。ここで、被覆または色は、接着剤が膜49を本体41へ接着する前に既に存在し得る、または膜49を本体41へ接着接合した後にそれへ適用され得る、またはその中に導入され得る。
【0056】
図4に示す変形実施形態の発展形態を
図5に示す。この発展形態は、膜49が本体41へ固定される接着層が、2つに分割されるという点で
図4に示す変形形態と異なる。光誘導部分では(すなわち出力結合構造31と入力結合部分25間の領域では)、
図4に説明した変形実施形態と同じ接着剤が使用される。したがって、光誘導部分の領域では、接着層は
図4の接着層51に対応する。対照的に、出力結合構造31を越えて、フレネル構造のフィラーとしても働く接着剤を有する接着層55が使用される。この接着剤は、第1の屈折率n
1へ整合される屈折率を有する。2つの接着剤間の切離線56はこの変形形態において視認可能であり得るが、この切離線56は概して中央視野外に置かれるので、眼鏡装着者にとって特に厄介であるようには思えない。
【0057】
図4に示す変形実施形態の別の発展形態を
図6に示す。この変形実施形態では、屈折率整合接着剤を有する接着層55が本体41の外面全体にわたって延伸する。屈折率整合接着剤の屈折率は本体材料の屈折率n
1に整合されるという事実のため、この層は、眼鏡レンズ3を通して見ることを妨害しない。次に、第2の屈折率n
2を有する接着剤で作られた接着層51が、屈折率整合接着剤を有する接着層55の上に配置される。屈折率整合接着層55の屈折率は本体材料の屈折率に対応するので、屈折率整合接着層55と第2の屈折率n
2を有する接着層51間の界面は、本体41と接着層51間の界面(
図4に存在する)とほぼ同じ臨界角θ
Gを有する。接着層55の屈折率を本体材料41の屈折率n
1に整合させるという理由で、この屈折率整合接着層55はその光学的振る舞いの観点で本体41の一部であると考えられ得る。互いに整合された屈折率は既に述べたように1000分の5以下、好適には最大1000分の1だけ互いに異なるということにここでは留意されたい。これらの差異は、一方では屈折率整合接着層55と第2の屈折率n
2を有する接着層51間の界面に対し他方では本体41と第2の屈折率n
2を有する接着層51間の界面に対し式1に従って設定される臨界角θ
Gの小さな偏差を生ずる。しかし、これらの小さな偏差は本発明の範囲内では無視され得るので、これらの臨界角は本発明の範囲内で同じであると考えられ得る。
【0058】
図6では、接着層51は屈折率整合接着層55全体にわたって延伸する。しかし、眼鏡レンズ3の光誘導部分内(すなわち入力結合部分25と出力結合構造31間に延伸する眼鏡レンズ部分内)だけに接着層51を設ける選択肢もまた存在する。次に、残りの部分では、屈折率整合接着層55は、光誘導部分内に追加的に存在する第2の屈折率n
2を有する接着層の厚さを補償するために光誘導部分よりも厚くなるだろう。2つの接着剤間の横方向切離線もまた、この変形形態では、眼鏡レンズ3を通過する環境光において視認可能であり得るが、
図5の切離線56のようなこの切離線は、概して中央視野外に置かれるので、眼鏡装着者により特に厄介なものとして知覚されない。
【0059】
図6では、第2の屈折率n
2を有する接着層51は屈折率整合接着層55へ直接貼り付けられる。しかし、
図7に示すように膜57が屈折率整合接着層55と第2の屈折率n
2を有する接着層51との間に置かれるという選択肢もある。膜57は、屈折率整合接着層55の屈折率に整合される屈折率を必ずしも有する必要は無い。膜57の屈折率が屈折率整合接着層55の屈折率と異なれば、そして本例のように一様な厚さを有すれば、これは、全層にわたって一様な影響を及ぼす屈折だけを生ずるので、視知覚は損なわれない。しかし、膜57の場合、満たされる必要がある膜57と第2の屈折率n
2を有する接着層51との間の界面における全反射の発生の条件が適用される。しかし、膜57はまた、その下に横たわる接着層55の屈折率、したがって第1の屈折率n
1へ整合され得る。この場合、臨界角θ
Gは、
図4の本体41と接着層51間の界面の臨界角に等しい。
【0060】
膜57は、屈折率整合接着層55の接着剤と第2の屈折率n2を有する層51の接着剤とが互いに劣悪に付着するだけであっても接着付与層として働き得るので、材料組み合わせの選択肢の拡大を容易にする。さらに、第2の屈折率n2を有する少なくとも接着層51は膜57が屈折率整合接着層55へ貼り付けられる前に膜57へ貼り付けられ得るので、膜は製造の観点から優れた効果を発揮する。膜は、中間層を硬化する際に恒久的または一時的形式として働き得る程度そして幾何学形状を予め定める程度に、眼鏡レンズの製造を簡略化し得る。この膜を硬化のためだけに使用し、これをその後取り除くことも考えられるだろう。この場合、膜の表面は、再び中間層から容易に取り外され得るようなやり方で処理される。さらに、層構造全体が屈折率整合接着層55に貼り付けられる前に機能層49(別の膜の形式のまたは被覆の形式の)を第2の屈折率n2を有する接着層51上へ既に貼り付けておくことも可能である。加えてまたはその代わりに、屈折率整合接着層55の助けを借りて膜57を本体41へ予めおよびその後接着接合することにより屈折率整合接着層55を膜57上へ貼り付けるという選択肢がある。別の代替案では、接着剤が両方の部品(すなわち膜57と本体41)へ塗布され、その後両方の部品は連結される。
【0061】
図8は眼鏡レンズ3の変形形態を示す。ここで、低屈折率接着剤を有する接着層51が、その屈折率が本体材料の屈折率n
1へ整合された接着剤を有する接着剤からなる別の接着層59の助けを借りて担体材として膜57に接着接合される。膜57自体は、その屈折率が本体材料の屈折率へ整合された接着剤を有する接着層55を介し本体41へ接着接合される。ここで、接着層55もまた、フレネル構造31を充填するように働く。これは、低屈折率接着剤がその化学成分、その粘度、その硬化時間、その硬化方法、硬化状態でのその剛率、または他の特性により本体41および/または膜57へ容易に貼り付けることができなければ、特に有利であり得る。したがって、その屈折率が本体材料の屈折率へ整合された接着層61もまた、
図8では、本体41と補正レンズ43に隣接する低屈折率接着剤を有する接着層45間に配置される。
【0062】
本発明による眼鏡レンズ3の別の変形実施形態を
図9に示す。この変形実施形態は、低屈折率接着剤を有する接着層51が本体41の表面へ直接貼り付けられるという点と、低屈折率接着剤もまたフレネル構造31を充填するために使用されるという点で、
図4に示す変形実施形態と異なる。次に、機能要素を形成する膜49は低屈折率接着剤へ貼り付けられる。眼鏡レンズ3を通る視野は、フレネル構造31の領域内の低屈折率接着層51の厚さの変動により損なわれる。しかし、フレネル構造31が、眼が真っ直ぐ前を見たときに中央視野の外側にある本体41の領域内に配置されれば、これは厄介ではない、またはほとんど厄介ではない。しかし、仮想画像の質は
図9に示す変形形態では損なわれない。
【0063】
図10は、内面13と外面17が光誘導部分の領域内に(すなわち入力結合部分25と出力結合構造31間)自由形式面63、65を有する眼鏡レンズ3を示す。ここで、自由形式面63、65により発生する面内の凹部は、補正レンズ43と機能要素を形成する膜49とが貼り付けられ得る球面が発生するように、低屈折率接着剤で作られた接着層45、51により充填される。しかし、自由形式面63、65の領域内の非常に強い曲率の場合、
図11に示すように、一様な厚さを有する低屈折率接着剤により接着層45、51を貼り付けることと、自由形式面の領域内の凹部を、本体材料の屈折率に整合された屈折率を有する接着剤で作られた追加接着層67、69で充填することが適切であり得る。これは、低屈折率接着剤を有する接着層の厚さを変動させるという理由で眼鏡レンズを通る視野内の障害が最小化されることを可能にする。
【0064】
本発明による眼鏡レンズ3のさらに別の変形実施形態を
図12に示す。この変形実施形態では、光は、その材料が本体41方向に増加する様々な屈折率を有する一連の膜71と接着剤73とにより屈折される。光屈折の助けを借りて接着層51に対する界面上の入射角θ
Eの増加を得ることが可能である。低屈折率接着剤を有する接着層51に対する界面上の入射角θ
Eは一連の膜71および接着層73により増加されるので、採用された接着剤に関する必要要件は、より大きな臨界角θ
Gが許容され得、したがってより高い屈折率を有する接着剤が使用され得るので、低減され得る。低屈折率接着剤を有する接着層51を生成するための可能な接着剤の選択は、低屈折率接着剤により接着層51における全反射を有利にすることにより増加される。説明した一連の膜および接着剤の代わりに、入射角θ
Eを増加するための屈折率勾配を有する材料もまたこの実施形態において使用され得る。
【0065】
本発明は、説明目的のための添付図を参照して例示的実施形態に基づき詳細に説明された。しかし、例示的実施形態は、本発明を実現するための概念を当業者へ提供すべきだけであり、本発明を、示された例示的実施形態に限定すべきではない。例示的実施形態における様々な点で既に説明したように、説明した例示的実施形態からの逸脱が本発明の範囲内であり得る。一例として、例示的実施形態において説明した反射出力結合の代わりの屈折出力結合または回折出力結合が存在し得る。屈折出力結合の原理は例えば独国特許出願公開第10 2014 115 341号明細書に記載されており、屈折出力結合構造の基本設計という観点でこれを参照する。反射または屈折出力結合構造の別の例は米国特許出願第2012/0002294A1号明細書に記載されており、同様にこれを参照する。さらに、回折格子に基づく構造の出力結合に関しては米国特許出願第2006/0126181A1号明細書と米国特許出願第2010/0220295A1号明細書が参照される。さらに、補正レンズは本体の内面上に配置される必要が無く、その代りに、本体の外面上に配置され得る。さらに、補正効果を、2つの補正レンズ間で分割する(そのうちの一方が内面上に配置され、他方は本体の外面上に配置される)ことが可能である。対応陳述がまた、本体上の相補素子として好適な他の機能要素へ適用される。さらに、個々の例示的実施形態の機能は互いに組み合わせられ得る。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲だけにより限定されるべきである。